特許第5710563号(P5710563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5710563-作業機械 図000002
  • 特許5710563-作業機械 図000003
  • 特許5710563-作業機械 図000004
  • 特許5710563-作業機械 図000005
  • 特許5710563-作業機械 図000006
  • 特許5710563-作業機械 図000007
  • 特許5710563-作業機械 図000008
  • 特許5710563-作業機械 図000009
  • 特許5710563-作業機械 図000010
  • 特許5710563-作業機械 図000011
  • 特許5710563-作業機械 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710563
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/16 20060101AFI20150409BHJP
   B60J 7/00 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   E02F9/16 A
   B60J7/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-193110(P2012-193110)
(22)【出願日】2012年9月3日
(65)【公開番号】特開2014-47577(P2014-47577A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 章
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−192950(JP,A)
【文献】 実開平01−016419(JP,U)
【文献】 実開昭52−090818(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
B60J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、この車体に取り付けられる作業装置と、上記車体に設けられる運転席と、この運転席を覆うキャノピとを備え、
上記キャノピが、上記運転席の上方を覆う天蓋部と、この天蓋部を支持する支持部材と、上記天蓋部を退避させる方向の回動可能に上記支持部材を保持する回動機構とを有する作業機械において、
上記回動機構は、上記支持部材を仮想的な傾斜軸の回りに回動可能に保持する回動機構から成り、
上記支持部材が上記仮想的な傾斜軸の回りに回動しないように上記回動機構を係止する係止部を備えたことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
上記支持部材に固定されるブラケットを備え、
上記回動機構は、上記ブラケットに取り付けられ、傾斜状に配置される軸部と、上記軸部を上記仮想的な傾斜軸の回りに回動可能に保持する軸受部とを含むことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械において、
上記係止部は、上記軸受部及び上記軸部のうちの一方に形成され、鉛直方向に延設された複数の長溝と、上記軸受部及び上記軸部のうちの他方に形成され、上記長溝のそれぞれに適合するように形成された複数の穴部と、対応する上記長溝と上記穴部のそれぞれに挿入される複数のピンとを含むことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
上記キャノピの上記支持部材に、この支持部材を回動させる際に活用される取手を設けたことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業機械において、
上記車体に取り付けられるベース部と、このベース部に立設され、いずれか一方が上記ベース部に固定され、他方が上記一方に対して挿脱可能に設けられしかも上記回動機構に固定される外筒部と内筒部の組み合わせから成る支柱部と、上記ベース部に固定される上記支柱部の上記一方に対して上記他方を伸長させた状態に、または収縮させた状態に係止する係止部とを備えたことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席を覆うキャノピを備えたミニショベル等の作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は従来の作業機械を構成するミニショベルに備えられるキャノピを示す側面図、図9図8に示すキャノピを仮想的な鉛直軸回りに回動させた状態を示す側面図、図10図8に示すキャノピを鉛直面内の下方向に回動させた状態を示す側面図、図11図8に示すキャノピの天蓋部の回動に伴って形成され得る天蓋部の投影図形を示す従来のミニショベルの平面図である。
【0003】
従来の作業機械の一例として挙げたミニショベルは、図11に示すように、走行体51と、この走行体51上に配置される旋回体52と、この旋回体52に取り付けられ、掘削作業等を行う作業装置53とを備えている。旋回体52上に運転席54が設けられ、この運転席54を覆うように図8に示すキャノピ55が設けられている。
【0004】
キャノピ55は、運転席54の上方を覆う天蓋部60と、この天蓋部60を支持する支持部材61と、図10に示すように、この支持部材61を鉛直面内の回動可能に保持する第1回動機構と、図9に示すように、第1回動機構を仮想的な鉛直軸の回りに回動可能に保持する第2回動機構とを備えている。
【0005】
支持部材61の下端部には第1ブラケット62が設けられている。この第1ブラケット62は第2ブラケット78に、軸部79を中心に鉛直面内の回動可能に取り付けられている。すなわち第1回動機構は、軸部79を含む構成となっている。この第1回動機構は、図示しないピンによってロック保持されることにより、図8に示す形態に、すなわち天蓋部60が運転席54を覆うように保持され、上述の図示しないピンを外すことにより、図10の矢印82に示すように、天蓋部55、支持部材61、及び第1ブラケット62が一体的に鉛直面内において回動する。
【0006】
上述した第2回動機構は、図8,9に示すように、車体すなわち旋回体52に取り付けられるベース部70と、このベース部70にブラケット73等を介して溶接固定される支柱部とを含んでいる。この支柱部は、ベース部70に固定される外筒部71と、この外筒部71に挿脱可能に設けられ、上述した第1回動機構に連結される第2ブラケット78が上端に固定される内筒部72とから成っている。内筒部72は、図8の矢印80で示すように外筒部71に対して伸縮可能に、また、図9の矢印81で示すように、仮想的な鉛直軸の回りに回動可能に保持されている。
【0007】
また、外筒部71に対して内筒部72を伸縮させた状態に、または収縮させた状態に係止するとともに、内筒部72を上述した仮想的な鉛直軸の回りに回動しないように外筒部71に係止する係止部を備えている。この係止部は、図9に示すように、外筒部71に形成され、鉛直方向に延設された複数の長溝、すなわち第1長溝74と第2長溝75と、内筒部72に形成され、第1,第2長溝74,75のそれぞれに適合するように形成された図示しない複数の穴部と、対応する第1,第2長溝74,75と図示しない複数の穴部のそれぞれに挿入される複数のピン、すなわち第1ピン76及び第2ピン77とを含んでいる。
【0008】
このようなミニショベルにあっては、地下における掘削作業、屋内における解体作業、低い位置に障害物がある場所での走行、潜り抜けのための走行などに際しては、キャノピ60が作業や走行の邪魔にならないように、このキャノピ60を倒して退避させることが行われる。
【0009】
すなわち、内筒部72を係止させているピン76,77を一旦外し、図8の矢印80で示すように、例えば伸長状態にある内筒部72を収縮させ、その後図9の矢印81で示すように、天蓋部60、支持部材61、第1ブラケット62、第2ブラケット78、及び内筒部72を一体的に、仮想的な鉛直軸の回りに例えば180°回動させ、この状態で上述したピン76,77を再び第1,第2長溝74,75及び図示しない穴部に挿入し、内筒部72を外筒部71に係止させる。次に、第1ブラケット62を第2ブラケット78に対してロック保持していた図示しないピンを一旦外し、図10の矢印82で示すように、天蓋部60、支持部材61、及び第1ブラケット62を鉛直面内を回動させ、天蓋部60が上下に位置する形態となったところで、再び図示しないピンによって第1ブロック62を第2ブロック78にロック保持させることが行われる。
【0010】
この種の従来技術は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−192950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように構成した図8−11に示す従来技術では、キャノピ55の天蓋部60を退避させるに際し、内筒部72を外筒部71に係止していた第1,第2ピン76,77の抜き取り及び挿入動作と、第1ブラケット62を第2ブラケット78にロック保持させていた図示しないピンの抜き取り及び挿入動作が必要になり、天蓋部60を退避させる作業が繁雑なものとなっていた。
【0013】
また、キャノピ55を図9に示すように回動させて退避させるに際し、ミニショベルの後方に天蓋部60が大きく突出する図11の投影図形90で示す円形の回動領域が必要となっていた。このために、ミニショベルの後方に障害物が存在するときには、天蓋部60が障害物に干渉する懸念があった。これにより、天蓋部60を退避させることができる場所に制約を受けていた。
【0014】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、キャノピの天蓋部を容易に退避させることができ、また天蓋部を退避させることができる場所に対する制約を緩和させることができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を達成するために、本発明は、車体と、この車体に取り付けられる作業装置と、上記車体に設けられる運転席と、この運転席を覆うキャノピとを備え、上記キャノピが、上記運転席の上方を覆う天蓋部と、この天蓋部を支持する支持部材と、上記天蓋部を退避させる方向の回動可能に上記支持部材を保持する回動機構とを有する作業機械において、上記回動機構は、上記支持部材を仮想的な傾斜軸の回りに回動可能に保持する回動機構から成り、上記支持部材が上記仮想的な傾斜軸の回りに回動しないように上記回動機構を係止する係止部を備えたことを特徴としている。
【0016】
このように構成した本発明は、キャノピの天蓋部を運転席の上方から退避させる際には、係止部による回動機構に対する係止を解き、回動機構を介して天蓋部を支持する支持部材を仮想的な傾斜軸の回りに回動させればよい。すなわち、支持部材を仮想的な傾斜軸の回りに回動させる1動作によって、天蓋部を容易に退避させることができる。また、天蓋部を退避させる際に天蓋部の回動によって形成され得る投影図形を、車体の幅方向に対応する径寸法に比べて、車体の前後方向に対応する径寸法が短くなる楕円形とすることができる。これにより、作業機械の後部から後方に向かって天蓋部が突出する寸法を小さく抑えることができる。したがって、本発明は、作業機械の後方に存在する障害物に天蓋部が干渉する虞を少なくし、天蓋部を退避させることができる場所に対する制約を緩和させることができる。
【0017】
また本発明は、上記発明において、上記支持部材に固定されるブラケットを備え、上記回動機構は、上記ブラケットに取り付けられ、傾斜状に配置される軸部と、上記軸部を上記仮想的な傾斜軸の回りに回動可能に保持する軸受部とを含むことを特徴としている。
【0018】
また本発明は、上記発明において、上記係止部は、上記軸受部及び上記軸部のうちの一方に形成され、鉛直方向に延設された複数の長溝と、上記軸受部及び上記軸部のうちの他方に形成され、上記長溝のそれぞれに適合するように形成された複数の穴部と、対応する上記長溝と上記穴部のそれぞれに挿入される複数のピンとを含むことを特徴としている。
【0019】
また本発明は、上記発明において、上記キャノピの上記支持部材に、この支持部材を回動させる際に活用される取手を設けたことを特徴としている。
【0020】
また本発明は、上記発明において、上記車体に取り付けられるベース部と、このベース部に立設され、いずれか一方が上記ベース部に固定され、他方が上記一方に対して挿脱可能に設けられしかも上記回動機構に固定される外筒部と内筒部の組み合わせから成る支柱部と、上記ベース部に固定される上記支柱部の上記一方に対して上記他方を伸長させた状態に、または収縮させた状態に係止する係止部とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、天蓋部を支持する支持部材を仮想的な傾斜軸の回りに回動可能に保持する回動機構と、支持部材が仮想的な傾斜軸の回りに回動しないように回動機構を係止する係止部を備えたことから、係止部による回動機構に対する係止を解いた後、回動機構を介して行われる1回動動作で天蓋部を容易に退避させることができ、従来よりも短時間でキャノピの天蓋部を退避させて運転席の上方を開放空間とすることができる。また本発明は、天蓋部を退避させることができる場所に対する制約を従来に比べて緩和させることができ、優れた実用性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る作業機械の一実施形態を構成するミニショベルを示す側面図である。
図2図1に示すミニショベルに備えられるキャノピを示す側面図である。
図3図2に示すキャノピの背面図である。
図4図1に示すミニショベルにおいてキャノピの天蓋部を運転席の上部に配置した通常状態を示す要部側面図である。
図5図1に示すミニショベルにおいてキャノピの天蓋部を運転席の後方に退避させた状態を示す要部側面図である。
図6】キャノピの天蓋部の回動に伴って形成され得る天蓋部の投影図形を示す図1に示すミニショベルの平面図である。
図7図1に示すミニショベルに備えられるキャノピの支持部材を回動させる際の仮想的な中心軸を形成する傾斜軸の各設置形態を説明する側面図である。
図8】従来の作業機械を構成するミニショベルに備えられるキャノピを示す側面図である。
図9図8に示すキャノピを仮想的な鉛直軸回りに回動させた状態を示す側面図である。
図10図8に示すキャノピを鉛直面内の下方向に回動させた状態を示す側面図である。
図11図8に示すキャノピの天蓋部の回動に伴って形成され得る天蓋部の投影図形を示す従来のミニショベルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る作業機械の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0024】
図1は本発明に係る作業機械の一実施形態を構成するミニショベルを示す側面図である。
【0025】
本発明に係る作業機械は、例えばミニショベルから成っている。図1に示すように、このミニショベルは、走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2と、この旋回体2に上下方向の回動可能に取り付けられ、掘削作業等を行う作業装置3とを備えている。走行体1と旋回体2とによって車体が構成されている。旋回体2上には運転席4を配置してある。また、この旋回体2に運転席4を覆うキャノピ5を設けてある。旋回体2の後部位置には、重量バランスを確保するカウンタウェイト6を備えている。
【0026】
図2図1に示すミニショベルに備えられるキャノピを示す側面図、図3図2に示すキャノピの背面図である。
【0027】
これらの図2,3に示すように、キャノピ5は、運転席4の上方を覆う例えば合成樹脂製の天蓋部10と、この天蓋部10を支持する支持部材11とを備えている。支持部材11には、この支持部材11を回動させる際に活用される取手11aを設けてある。また、天蓋部10を運転席4の上方から後方に退避させる方向の回動可能に支持部材11を保持する回動機構を備え、この回動機構は、支持部材11を仮想的な傾斜軸、例えば水平面に対して45°傾く仮想的な傾斜軸の回りに回動可能に保持する回動機構から成っている。なお、上述の仮想的な傾斜軸は、旋回体2の後方位置から前方位置に向かって次第に下降するように形成される傾斜軸となっている。
【0028】
また、支持部材11の下端部に固定される第1ブラケット12を備え、上述した回動機構は、第1ブラケット12に取り付けられ、傾斜状に配置される図示しない軸部と、この図示しない軸部を上述した仮想的な傾斜軸の回りに回動可能に保持する軸受部13とを含んでいる。すなわち、上述した図示しない軸部と軸受部13は、上述した仮想的な傾斜軸に応じて、例えば水平面に対して45°傾くように設置してある。
【0029】
また、本実施形態に係るミニショベルは、支持部材11が上述した仮想的な傾斜軸の回りに回動しないように上述した回動機構を係止する係止部を備えている。この係止部は、例えば軸受部13に形成され、鉛直方向に延設された複数の長溝、すなわち第1長溝14及び第2長溝15と、軸受部13に保持される上述の図示しない軸部に形成され、第1,第2長溝14,15のそれぞれに適合する図示しない第1穴部及び第2穴部と、対応する第1,第2長溝14,15と、上述の図示しない第1,第2穴部のそれぞれに挿入される複数のピン、すなわち第1ピン16及び第2ピン17を含む構成にしてある。
【0030】
また、本実施形態は、旋回体2に取り付けられるベース部20と、このベース部20に立設される支柱部とを備えている。支柱部は、例えばベース部20にブラケット23等を介して溶接固定される外筒部21と、この外筒部21に対して挿脱可能に設けられ、上端部に第2ブラケット30が溶接固定された内筒部22の組み合わせから成っている。第2ブラケット30は、回動機構を構成する軸受部13に溶接固定してある。
【0031】
また、本実施形態は、支柱部の外筒部21に対して内筒部22を伸長させた状態に、または収縮させた状態に係止する別の係止部を備えている。この係止部は、例えば外筒部21に形成され、鉛直方向に延設された複数の長溝、すなわち第1長溝24及び第2長溝25と、内筒部22に形成され、第1,第2長溝24,25のそれぞれに適合するように形成された複数の穴部、すなわち第1穴部26及び第2穴部27と、対応する第1,第2長溝24,25と第1,第2穴部26,27のそれぞれに挿入される複数のピン、すなわち第1ピン28及び第2ピン29とを含んでいる。なお、第1穴部26と第2穴部27の組み合わせは、内筒部22の立設方向に沿って例えば2組設けてある。
【0032】
図4図1に示すミニショベルにおいてキャノピの天蓋部を運転席の上部に配置した通常状態を示す要部側面図、図5図1に示すミニショベルにおいてキャノピの天蓋部を運転席の後方に退避させた状態を示す要部側面図、図6はキャノピの天蓋部の回動に伴って形成され得る天蓋部の投影図形を示す図1に示すミニショベルの平面図である。
【0033】
上述のように構成した本実施形態に係るミニショベルにあっては、上述したような地下における掘削作業、屋内における解体作業、低い位置に障害物がある場所での走行、潜り抜けのための走行などに際してキャノピ5を運転席4の後方に退避させる場合には、以下の動作が行われる。
【0034】
今例えば図4に示すように、キャノピ5の支柱部を構成する内筒部22を伸長させ、天蓋部10を運転席4の上方を覆うように配置させている状態とする。この状態から内筒部22を外筒部21に係止させていた第1,第2ピン28,29を一旦抜き、内筒部22を下降すなわち収縮させ、第1,第2ピン28,29を再び外筒部21の第1,第2長溝24,25及び内筒部22の対応する第1,第2穴部26,27に挿入する。これにより、内筒部22が収縮した状態で外筒部21に係止される。
【0035】
次に、回動機構の図示しない軸部を軸受部13に係止させていた第1,第2ピン16,17を一旦抜き、例えば支持部材11に設けた取手11aを把持して、同図4の矢印19で示すように支持部材11を仮想的な傾斜軸18の回りに回動させる。このとき、支持部材11に支持された天蓋部10は自身の自重も活用されて下方に回動する。
【0036】
このようにして図5に示すように、天蓋部10が上下方向に配置される形態となったとき、第1,第2ピン16,17を再び軸受部13の第1,第2長溝14,15、及び図示しない軸部に形成された図示しない第1,第2穴部に挿入する。これにより図示しない軸部が軸受部13に係止される。すなわち、天蓋部10が動かないように安定して保持される。
【0037】
なお、図5に示すように、運転席4の後方に天蓋部10を退避させている状態から、図4に示すように天蓋部10を運転席4の上方の正規の位置に戻すには、上述と逆の動作を行えばよい。
【0038】
このように構成された本実施形態に係るミニショベルによれば、支持部材11を仮想的な傾斜軸18の回りに回動させる1動作によって、天蓋部10を容易に退避させることができる。すなわち、短時間のうちにキャノピ5の天蓋部10を運転席4の後方に退避させ、運転席4の上方を開放空間とすることができる。
【0039】
また、図6に示すように、天蓋部10を退避させる際に天蓋部10の回動によって形成され得る投影図形40を、車体の幅方向に対応する径寸法に比べて、車体の前後方向に対応する径寸法が短くなる楕円形とすることができる。これにより、当該ミニショベルから後方に向かって天蓋部10が突出する寸法を小さく抑えることができる。したがって、本実施形態は、当該ミニショベルの後方に存在する障害物に天蓋部10が干渉する虞を少なくし、天蓋部10を退避させることができる場所に対する制約を緩和させることができる。これにより、本実施形態は優れた実用性を確保することができる。
【0040】
なお、上記実施形態では、支持部材11及び天蓋部10の回動中心を形成する仮想的な傾斜軸18を水平面に対して45°傾斜させた傾斜軸に設定してあるが、本発明は、仮想的な傾斜軸18をこのように水平面に対して45°の角度に設定することには限られない。
【0041】
図7図1に示すミニショベルに備えられるキャノピの支持部材を回動させる際の仮想的な中心軸を形成する傾斜軸の各設置形態を説明する側面図である。
【0042】
この図7において、仮想的な傾斜軸18Aは、上述した45°の傾斜軸18と同等であり、このときのミニショベルの後部位置は、同図7に示す後部位置41Aとなる。キャノピ5の天蓋部10Aは、当該ミニショベルの後方部分に干渉しない範囲で可能な限り接近させた位置に保たれる。
【0043】
しかし、キャノピ5が備えられる例えばミニショベルが、上述の後部位置41Aよりも後方に突出する後部位置41Bを有する少し大型のミニショベルである場合には、仮想的な傾斜軸を同図7に示すように、水平面に対する角度45°よりも少し大きい角度を形成する傾斜軸18Bに設定すればよい。これにより、キャノピ5の天蓋部10は、後部位置41Aよりも後方に突出する後部位置41Bを有する当該ミニショベルの後方部分に干渉しない範囲で可能な限り接近した位置に保たれる。
【0044】
また逆に、キャノピ5が備えられる例えばミニショベルが、上述の後部位置41Aよりも前方に位置する後部位置41Cを有する少し小型のミニショベルである場合には、仮想的な傾斜軸を同図7に示すように、水平面に対する角度45°よりも少し小さい角度を形成する傾斜軸18Cに設定すればよい。これにより、キャノピ5の天蓋部10は、後部位置41Aよりも前方に位置する後部位置41Cを有する当該ミニショベルの後方部分に干渉しない範囲で可能な限り接近した位置に保たれる。
【0045】
なお、上記実施形態では、回動機構を係止する第1,第2ピン16,17が挿入される第1,第2長溝14,15を軸受部13に形成し、第1,第2長溝14,15に適合する図示しない第1,第2穴部を軸受部13に保持される図示しない軸部に形成した構成にしてあるが、これとは逆に、第1,第2長溝14,15を図示しない軸部に形成し、第1,第2長溝14,15に適合する図示しない第1,第2穴部を軸受部13に形成する構成にしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、支柱部を係止する第1,第2ピン28,29が挿入される第1,第2長溝24,25を外筒部21に形成し、第1,第2長溝24,25に適合する第1,第2穴部26,27を内筒部22に形成したが、これとは逆に、第1,第2長溝24,25を内筒部22に形成し、第1,第2長溝24,25に適合する第1,第2穴部26,27を外筒部21に形成する構成にしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、支柱部を構成する外筒部21をベース部20に固定し、回動機構に固定される内筒部22を外筒部21に対して挿脱可能に設けた構成にしてあるが、これとは逆に、内筒部22をベース部20に固定し、外筒部21を回動機構に固定するようにし、この外筒部21を内筒部22に対して着脱可能に設けた構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
2 旋回体(車体)
3 作業装置
4 運転席
5 キャノピ
6 カウンタウェイト
10 天蓋部
10A 天蓋部
10B 天蓋部
10C 天蓋部
11 支持部材
11a 取手
12 第1ブラケット
13 軸受部
14 第1長溝
15 第2長溝
16 第1ピン
17 第2ピン
18 傾斜軸
18A 傾斜軸
18B 傾斜軸
18C 傾斜軸
20 ベース部
21 外筒部
22 内筒部
23 ブラケット
24 第1長溝
25 第2長溝
26 第1穴部
27 第2穴部
28 第1ピン
29 第2ピン
30 第2ブラケット
40 投影図形
41A 後部位置
41B 後部位置
41C 後部位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11