【文献】
Andreas Heimdal,Doppler based ultrasound imaging methods fornoninvasive assessment of tissue viability,A dissertation submitted to the Norwegian University of Science and Technologyin partial fulfillment of the requirements for the degree of Doktor ingenior,ノルウェー,1999年 9月,pp.90-91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって前記生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
該物理量算出部によって算出された物理量の絶対値、前記相関演算における相関係数及び前記生体組織から得られた超音波のエコー信号の強度の三つのパラメータのうち、少なくとも二つのパラメータを用いた演算式であって、前記生体組織におけるシストのパラメータ特性が強調されてシスト以外とは区別できる演算値が得られる演算式の演算値を演算する演算部と、
該演算部の演算値に応じた表示形態を有する画像が表示される表示部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
前記演算部の演算値に応じた表示形態を有する画像と、前記物理量に応じた表示形態を有する弾性画像とを、前記表示部に切り替えて表示させる画像表示制御部を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
前記物理量算出部は、前記相関ウィンドウ間で複素相互相関の虚数部を演算して前記生体組織の歪みを算出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について
図1〜
図3に基づいて説明する。
図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信ビームフォーマ3、Bモードデータ作成部4、物理量データ作成部5、演算部6、表示制御部7、表示部8、操作部9、制御部10及び記憶部11を備える。
【0009】
前記超音波プローブ2は、生体組織に対して超音波を送信しそのエコーを受信する。この超音波プローブ2を生体組織の表面に当接させた状態で圧迫と弛緩を繰り返して、生体組織を変形させながら超音波の送受信を行なって取得されたエコーデータに基づいて、後述のようにBモード画像及びカラー画像が作成される。
【0010】
前記送受信ビームフォーマ3は、前記制御部10からの制御信号に基づいて前記超音波プローブ2を所定の走査条件で駆動させて音線毎の超音波の走査を行なう。また、送受信ビームフォーマ3は、前記超音波プローブ2で受信したエコーについて、整相加算処理等の信号処理を行なう。前記送受信ビームフォーマ3で信号処理されたエコーデータは、前記Bモードデータ作成部4及び前記物理量データ作成部5に出力される。
【0011】
前記Bモードデータ作成部4は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行い、Bモードデータを作成する。Bモードデータは、前記Bモードデータ作成部4から前記表示制御部7へ出力される。
【0012】
前記物理量データ作成部5は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに基づいて、生体組織における各部の弾性に関する物理量のデータ(物理量データ)を作成する(物理量算出機能)。前記物理量データ作成部5は、例えば上記特許文献1に記載されているように、一の走査面における同一音線上の時間的に異なるエコーデータに相関ウィンドウを設定し、この相関ウィンドウ間で複素相互相関の虚数部を演算して前記弾性に関する物理量を算出し前記物理量データを作成する。より詳細には、前記物理量データ作成部は、前記超音波プローブ2による生体組織の変形の前後(圧迫前と圧迫後、弛緩前と弛緩後)におけるエコー信号の波形の圧縮率を求める。ここでの波形の圧縮率は、相関ウィンドウ間における波形の圧縮率である。この結果、前記弾性に関する物理量として、歪みが得られる。前記物理量データ作成部5は、音線方向において複数の相関ウィンドウを設定して各相関ウィンドウについて歪みを算出する。従って、歪みは、一音線上における複数点(相関ウィンドウに対応する部分)について算出される。
【0013】
前記物理量データ作成部5は、本発明における物理量算出部の実施の形態の一例であり、また前記物理量算出機能は本発明における物理量算出機能の実施の形態の一例である。
【0014】
ちなみに、算出される歪みは、生態組織の変位の方向に応じた符号を伴っている。前記超音波プローブによって圧迫を行なう時とその弛緩を行なう時とでは、符号は反対になるが、ある時間において、各部分(各点)において得られる演算結果は、同じ符号になるはずである。例えば、圧迫時においては各部において正の符号になり、弛緩時においては各部において負の符号になるはずである。しかし、シストにおいては、上述のようにエコー信号の信号強度が非常に小さい。これにより、S/N(signal to noise ratio)が悪いので、各部分において得られる演算結果の符号が同じにならない。
【0015】
前記演算部6は、前記物理量データ作成部5で得られた歪み、前記相関演算における相関係数及び生体組織から得られた超音波のエコー信号の強度の三つのパラメータのうち、少なくとも二つのパラメータを用いた演算式の演算値を算出する(演算機能)。詳細は後述する。前記演算部6は、本発明における演算部の実施の形態の一例である。また、前記演算機能は、本発明における演算機能の実施の形態の一例である。
【0016】
前記表示制御部7には、前記Bモードデータ作成部4からのBモードデータ及び前記演算部6で得られた演算値のデータが入力されるようになっている。前記表示制御部7は、
図2に示すように、Bモード画像データ作成部71、カラー画像データ作成部72、合成画像表示制御部73を有している。
【0017】
前記Bモード画像データ作成部71は、前記Bモードデータ作成部4によって得られたBモードデータを、エコーの信号強度に応じた輝度に対応する情報を有するBモード画像データに変換する。また、前記カラー画像データ作成部72は、前記演算部6によって得られた演算値のデータを、色に対応する情報に変換して、前記演算値に応じた色に対応する情報を有するカラー画像データを作成する。前記カラー画像データ作成部72は、前記演算値のデータを階調化し、各階調に割り当てられた色に対応する情報からなるカラー画像データを作成する。階調数は、例えば256である。
【0018】
前記合成画像表示制御部73は、前記Bモード画像データ及び前記カラー画像データを合成し、前記表示部8に表示する合成超音波画像の画像データを作成する。また、前記合成画像表示制御部73は、前記合成超音波画像の画像データを、
図3に示すように、Bモード画像BIとカラー画像CIとが合成された合成超音波画像UIとして前記表示部8に表示させる。前記カラー画像CIは、前記Bモード画像BIに設定された領域R内に表示される。前記カラー画像CIは、半透明で(背景のBモード画像が透けた状態で)表示される。
【0019】
前記表示部8は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などで構成される。前記操作部9は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0020】
前記制御部10は、CPU(Central Processing Unit)を有して構成され、前記記憶部11に記憶された制御プログラムを読み出し、前記物理量算出機能、前記演算機能などをはじめとする前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。
【0021】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について説明する。本例の超音波診断装置1は、生体組織において本例の抽出対象であるシストが抽出された画像を表示する。具体的に説明する。前記超音波プローブ2を被検体の体表面に当接させた状態で、生体組織に対する超音波の送受信を行なうことにより、エコー信号が取得される。超音波の送受信が行われる時には、前記超音波プローブ2によって生体組織に対する圧迫とその弛緩が行なわれる。
【0022】
超音波の送受信は二種類であり、Bモード画像用の超音波の送受信と、前記物理量データ作成部5が歪みを算出するための超音波の送受信とが、それぞれの送受信パラメータ(parameter)において行われる。
【0023】
エコー信号が取得されると、前記Bモードデータ作成部4が前記Bモードデータを作成する。また、前記物理量データ作成部5が相関演算を行なって生体組織の歪みを算出し、前記物理量データを作成する。前記物理量データ作成部5は、一音線上の複数点について相関演算を行ない、各点について歪みを算出する。
【0024】
前記物理量データが得られると、前記演算部6は、下記(式1)を用いて演算を行なう。
F(n)=P(n)×Q(n) ・・・(式1)
【0025】
上記(式1)において、nは歪みが算出される音線上の点(相関ウィンドウに対応する部分)を示す1〜Nまでの自然数である。また、P(n)は歪みに関する関数であり、Q(n)は相関演算における相関係数に関する関数である。具体的には、P(n)、Q(n)は下記(式2)及び(式3)である。
P(n)=k1×Abs(strain(n)) ・・・(式2)
Q(n)=k2×(1/xCorr(n)) ・・・(式3)
【0026】
これら(式2)及び(式3)において、k1,k2は任意に設定される重み係数である。これらk1,k2はデフォルトで設定されていてもよいし、操作者が任意に設定できるようになっていてもよい。また、strain(n)は、前記音線上の点1〜Nにおける歪みの値であり、Abs(strain(n))は、歪みの絶対値を返す関数である。さらに、xCorr(n)は、前記音線上の点1〜Nにおける相関係数の値である。
【0027】
F(n)は、シストを抽出できる関数になっている。これについて具体的に説明する。例えば、圧迫時において、歪みとして、シストにおいては、「−0.1%」という値が得られ、腫瘤においては、「+0.01%」が得られ、それ以外の部分においては、「+0.1%」、「+0.3%」という値が得られたとする。また、弛緩時において、歪みとして逆の符号の値、すなわちシストにおいては、「+0.1%」が得られ、腫瘤においては、「−0.01%」が得られ、それ以外の部分においては、「−0.1%」、「−0.3%」という値が得られたとする。
【0028】
上述のような歪みの値が得られた場合、シストの歪みは他の部分と比較して硬いことを示す値になっているため、従来のように歪みの値に基づいて弾性画像を作成した場合、シストは硬いことを示す色で表示される。しかし、前記(式2)においては、歪みの絶対値が得られる。従って、P(n)の値は腫瘤よりもシストの方が大きくなり、腫瘤よりも軟らかいことを示す値になる。また、シストにおいては、他の部分と比べて相関係数が小さい。従って、前記(式3)によって得られるQ(n)の値も大きくなる。以上のことから、シストにおいては、F(n)の値が大きくなり、F(n)は、シストに見られるパラメータ特性が強調されてシスト以外とは区別できる演算値が得られる関数になっている。
【0029】
前記演算部6によって得られたF(n)の演算値は、前記表示制御部7へ入力される。そして、前記カラー画像データ作成部72は、F(n)の演算値に応じた色に対応する情報を有するカラー画像データを作成する。
【0030】
また、前記Bモード画像データ作成部71は、前記Bモードデータ作成部4で作成された前記Bモードデータに基づいてBモード画像データを作成する。
【0031】
前記Bモード画像データ及び前記カラー画像データが作成されると、前記合成画像表示制御部73は、これらBモード画像データ及びカラー画像データに基づいて合成超音波画像の画像データを作成し、
図3に示すように、前記表示部8に合成超音波画像UIを表示させる。
【0032】
前記合成超音波画像は、Bモード画像BIとカラー画像CIとが合成された画像である。前記カラー画像CIは、F(n)の演算値に応じた色を有する画像であり、青色、緑色、赤色などの色を有する。例えば、F(n)の演算値が小さい部分は、前記カラー画像CIにおいて青色で表示され、F(n)の演算値が大きい部分は、前記カラー画像CIにおいて赤色で表示される。この場合、シストにおいてはF(n)の演算値が大きいので、前記カラー画像CIにおいて赤色で表示される。従って、本例の超音波診断装置1によれば、シストが抽出された画像を表示することができる。
【0033】
一方、腫瘤においては、歪みの絶対値が小さく、なおかつ相関係数は必ずしも小さくはならない。このため、腫瘤においては、シストよりもF(n)の演算値が小さくなるので、前記カラー画像CIにおいて、腫瘤はシストとは異なる色で表示される。したがって、前記カラー画像CIにおいて、腫瘤とシストとを判別することができる
【0034】
ちなみに、上述においては、シストにおいて、F(n)の演算値が大きくなるようなP(n)及びQ(n)になっているが、シストにおいて、F(n)の演算値が小さくなるようなP(n)及びQ(n)になっていてもよい。具体的には、P(n)及びQ(n)は下記(式2′)及び(式3′)であってもよい。
P(n)=k1×{1/Abs(strain(n))} ・・・(式2′)
Q(n)=k2×xCorr(n) ・・・(式3′)
【0035】
P(n)及びQ(n)が、前記(式2′)及び(式3′)である場合、前記カラー画像CIにおいて、シストは青色で表示される。一方、腫瘤においては、F(n)の演算値はシストよりも大きくなるので、前記カラー画像CIにおいて、腫瘤はシストとは異なる色で表示される。
【0036】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。先ず、第一変形例について説明する。本例では、前記演算部6は、下記(式11)を用いて演算を行なう。
F(n)=P(n)×Q(n)×R(n) ・・・(式11)
【0037】
上記(式11)において、P(n)及びQ(n)は、上述の(式2)及び(式3)である。また、R(n)は、下記(式12)である。
R(n)=k3×(1/Intensity(n)) ・・・(式12)
【0038】
(式12)において、k3は任意に設定される重み係数である。このk3はデフォルトで設定されていてもよいし、操作者が任意に設定できるようになっていてもよい。また、Intensity(n)は、前記音線上の点1〜Nにおけるエコー信号の強度である。エコー信号の強度は、Bモード画像用の超音波の送受信によって得られたエコー信号の強度であってもよいし、前記物理量データ作成部5が歪みを算出するための超音波の送受信によって得られたエコー信号の強度であってもよい。
【0039】
ここで、シストにおいては、エコー信号の強度は小さいので、R(n)は大きい値になる。従って、シストにおいては、F(n)の演算値は大きくなる。
【0040】
また、前記(式11)において、P(n)及びQ(n)は、上述の(式2′)及び(式3′)であってもよい。この場合、R(n)は下記(式12′)である。
R(n)=k3×Intensity(n) ・・・(式12′)
この場合、シストにおいては、F(n)の演算値は小さくなる。
【0041】
以上説明した本例においても、シストにおいてはF(n)の演算値が大きくなるか小さくなるので、シストが抽出された画像を表示することができる。
【0042】
次に、第二変形例について説明する。本例では、前記演算部6は、下記(式21)を用いて演算を行なう。
F(n)=P(n)×R(n) ・・・(式21)
【0043】
上記(式21)において、P(n)及びR(n)は、上述の(式2)及び(式12)である。この場合、シストにおいては、F(n)の演算値は大きくなる。また、上記(式21)において、P(n)及びR(n)は、上述の(式2′)及び(式12′)であってもよい。この場合、シストにおいては、F(n)の演算値は小さくなる。
【0044】
以上説明した本例においても、シストにおいてはF(n)の演算値が大きくなるか小さくなるので、シストが抽出された画像を表示することができる。
【0045】
次に、第三変形例について説明する。本例では、前記演算部6は、下記(式31)を用いて演算を行なう。
F(n)=Q(n)×R(n) ・・・(式31)
【0046】
上記(式31)において、Q(n)及びR(n)は、上述の(式3)及び(式12)である。この場合、シストにおいては、F(n)の演算値は大きくなる。また、上記(式31)において、Q(n)及びR(n)は、上述の(式3′)及び(式12′)であってもよい。この場合、シストにおいては、F(n)の演算値は小さくなる。
【0047】
以上説明した本例においても、シストにおいてはF(n)の演算値が大きくなるか小さくなるので、シストが抽出された画像を表示することができる。
【0048】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、以下の説明では、第一実施形態と異なる事項について説明する。
【0049】
図4に示す本例の超音波診断装置20は、第一実施形態と同様に、超音波プローブ2、送受信ビームフォーマ3、Bモードデータ作成部4、物理量データ作成部5、演算部6、表示制御部7、表示部8、操作部9、制御部10及び記憶部11を備える。ただし、本例の超音波診断装置20においては、物理量データ作成部5で作成された物理量データが、前記演算部6のみならず、前記表示制御部7にも入力される。また、前記表示制御部7は、
図5に示すように、Bモード画像データ作成部71、カラー画像データ作成部72、合成画像表示制御部73のほか、弾性画像データ作成部74を有している。この弾性画像データ作成部74は、前記物理量データを、色に対応する情報に変換して、歪みに応じた色に対応する情報を有する弾性画像データを作成する。前記弾性画像データ作成部74は、前記演算値のデータを階調化し、各階調に割り当てられた色に対応する情報からなる弾性画像データを作成する。階調数は、例えば256である。弾性画像データに基づいて表示される弾性画像の色のバリエーションは、前記カラー画像CIと同じでもよく、例えば歪みが小さい場合は青、歪みが大きい場合は赤で表示されるようになっていてもよい。
【0050】
本例の作用について説明する。本例の超音波診断装置20では、前記合成画像表示制御部73が、前記
図3に示すように、Bモード画像BIとカラー画像CIとが合成された合成超音波画像UIと、
図6に示すように、Bモード画像BIと弾性画像EIとが合成された合成超音波画像UI′とを、前記表示部8に切り替えて表示させる。前記合成画像表示制御部73は、前記操作部9における操作者の入力に基づいて、前記合成超音波画像UIと前記合成超音波画像UI′とを切り替えて表示させるようになっていてもよい。前記合成画像表示制御部73は、本発明における画像表示制御部の実施の形態の一例である。
【0051】
また、前記合成画像表示制御部73は、
図7に示すように、前記合成超音波画像UIと前記合成超音波画像UI′とを並べて前記表示部8に表示させてもよい。
【0052】
第二実施形態の超音波診断装置20によれば、第一実施形態と同様の効果を得ることができるほか、操作者が、前記合成超音波画像UIと前記合成超音波画像UI′とを切り替えて表示したり並べて表示したりすることにより、シストと腫瘤とをより確実に判別することができる。
【0053】
以上、本発明を上記各実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。