(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、例えばノート型コンピュータなどの電子機器本体の盗難を防止するため、所定形状のセキュリティスロットを設け、ワイヤ錠などの施錠装置をこのセキュリティスロットに取り付けて錠止できるようにする構成が知られている。
【0003】
ワイヤ錠は、容易には切断されないワイヤや、報知器に導通された電気ケーブルが設けられ、デスク等にワイヤを結合固定したり、デスク等に固定された報知器に電気ケーブルを結合固定しておくことで、電子機器本体を持って行くことができないようにするものである。
【0004】
また、近年、電子機器の小型化が進むと共に、電子機器側面には多種類のコネクタや、ディスクドライブなどを配置するスペースを設けることが求められている。このため、電子機器の側面スペースをなるべく有効に活用するため、セキュリティスロットをヒンジ部に配置した機器が知られている。
【0005】
また、ヒンジ機構の下にキーロック機構を設けることで、ワイヤ錠による施錠と連動してヒンジ機構を開閉不能にし、ヒンジ部により連結される上側筐体と下側筐体を閉状態のままとさせる機器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ヒンジ部は、上側筐体と下側筐体とを連結する部分であるため、この上側筐体と下側筐体とを接続させるための各種のケーブルを、ヒンジ部経由で通す必要がある。すなわち、ヒンジ部を被装する外装部材の内側に、これらの各種のケーブルを通し得るだけの十分な空間を確保した構成とする必要がある。
さらに、ヒンジ部は上側筐体と下側筐体とを開閉可能に連結する可動部であるため、十分な信頼性を確保して開閉動作できるようにするための空間も必要となる。
【0008】
電子機器の小型化に向けた開発競争の中で、機器全体を小型化しつつ、それでいてヒンジ部としての構造的強度や開閉動作の信頼性も十分に確保し、なおかつ機器側面にはコネクタを配置するためのスペースも十分に確保することが求められていた。
【0009】
さらに、例えばノート型コンピュータの場合、上側筐体と下側筐体とを連結する2つのヒンジ部の間にバッテリが設けられる構成が一般的であり、このバッテリはなるべく大容量化が求められている。このため、ヒンジ部のスペースはさらに小さくすることが求められていた。
【0010】
また、上述した特許文献1のものは、こうしたヒンジ部のスペースをさらに小型化することについてまで考慮されたものではなかった。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上側筐体と下側筐体とを連結するヒンジ部にセキュリティスロットを配置し、そのヒンジ部にケーブルを通す構成でありながら、さらなる小型化を実現することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するために、本発明に係る電子機器は、上側筐体と下側筐体とが、軸方向が同一である2つのヒンジ部により開閉可能に連結されて構成された電子機器であって、上側筐体には、無線通信用のアンテナと、他の機能部とが設けられ、下側筐体には、制御手段と、無線通信制御手段とが設けられ、2つのヒンジ部には、それぞれ該ヒンジ部を被装する外装部材が設けられ、2つのヒンジ部の一方には、アンテナを無線通信制御手段に接続させるアンテナ用ケーブルが、該ヒンジ部を被装する外装部材の内側を通すように設けられ、2つのヒンジ部の他方には、他の機能部を制御手段に接続させる制御用ケーブルが、該ヒンジ部を被装する外装部材の内側を通すように設けられ、アンテナ用ケーブルは、制御用ケーブルよりも外径が細く、アンテナ用ケーブルが設けられるヒンジ部における軸方向の外側側面に、機器外部の施錠装置により錠止させるためのセキュリティスロットが設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、上側筐体と下側筐体とを連結するヒンジ部にセキュリティスロットを配置し、そのヒンジ部にケーブルを通す構成でありながら、さらなる小型化を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る電子機器をノート型コンピュータに適用した一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
本実施形態のノート型コンピュータ100は、
図1、
図2に示すように、表示部11が設けられる上側筐体10と、CPUなどの主要部品が配置される下側筐体20とが、軸方向が同一である2つのヒンジ部30a,30bにより開閉可能に連結されて構成される。
【0017】
上側筐体10における表示部11の周囲には、CCD(Charge Coupled Device)を有する撮像部13と、無線LANなどに用いる無線通信用のアンテナ14とが設けられる。アンテナ14は、上側外装部材12の内側に配置される。
【0018】
下側筐体20には、ヒンジ部30の閉状態で上側筐体10と対向する面にトップカバー21が設けられ、このトップカバー21に、キーボード23と、電源スイッチカバー24と、クリックパッド41とが設けられる。
なお、
図1に示す構成は一例であり、撮像部13やアンテナ14などの位置はデザインや設計に応じて適宜定められてよい。また、例えばクリックパッド41に替えて、タッチパッドとマウスボタンを備える構成であってもよい。
【0019】
また、2つのヒンジ部30a,30bの内、電源スイッチカバー24に近い側のヒンジ部30aにおける軸方向の外側側面には、
図2に示すように、盗難防止用のワイヤ錠を接続して錠止するためのセキュリティスロット25が開設される。
このため、下側筐体20における電源スイッチカバー24に近い側の側面には、機器外部から各種規格に応じたコネクタのケーブルを接続させるための外部用コネクタ45(45a〜45c)と、ディスクドライブ46とが配置される。
【0020】
図3、
図4に、ノート型コンピュータ100の内部構造を示す。
図3は
図1からトップカバー21およびディスクドライブ46を取り外した状態を示し、
図4は
図3のC部拡大図を示す。
【0021】
上側筐体10と下側筐体20を連結する2つのヒンジ部30a,30bは、軸方向における上側筐体10と下側筐体20の両端に設けられる。そして、両端のヒンジ部30a,30bの間に、バッテリ42が着脱可能に設けられ、バッテリ用コネクタ43により下側筐体20に接続されるように構成される。
このため、2つのヒンジ部30a,30bは、バッテリ42よりも軸方向における外側に設けられ、バッテリ42に隣接する位置に配置される。
【0022】
また、下側筐体20には、不図示のCPUなど主要部品が実装されたマザーボード60が配置される。このマザーボード60に実装されたCPUなどの電子部品が、不図示のHDDなどに格納された所定のプログラムに基づいて処理を行うことにより、ノート型コンピュータ100全体の制御を行う。
このことにより、マザーボード60は、上側筐体10の表示部11における表示制御を行う表示制御手段として機能し、また、上側筐体10の撮像部13における撮像制御を行う撮像制御手段として機能し、さらに、上側筐体10に内蔵されたアンテナ14を用いて無線LANなど所定の無線通信を行う無線通信制御手段として機能する。
なお、
図3では、マザーボード60に実装された一部の部品を省略して示す。
【0023】
マザーボード60の表面に実装された所定のコネクタには、上側筐体10の表示部11に接続される表示用ケーブル51のコネクタ51aが差し込まれ、表示用ケーブル51がマザーボード60に接続される。
また、マザーボード60の表面に実装された所定のコネクタには、上側筐体10の撮像部13に接続される撮像用ケーブル52のコネクタ52aが差し込まれ、撮像用ケーブル52がマザーボード60に接続される。
また、マザーボード60の底面側に設けられた不図示のコネクタにより、上側筐体10のアンテナ14に接続されるアンテナ用ケーブル53がマザーボード60に接続される。
【0024】
こうして、上側筐体10の表示部11と、撮像部13と、アンテナ14とは、マザーボード60に接続され、マザーボード60は、表示部11における表示制御と、撮像部13における撮像制御と、アンテナ14による無線通信制御とを行う。
【0025】
ここで、アンテナ用ケーブル53の外径は、撮像用ケーブル52の外径よりも細く、その撮像用ケーブル52の外径は、表示用ケーブル51の外径よりも細い。
【0026】
この表示用ケーブル51および撮像用ケーブル52は、マザーボード60から、上述したセキュリティスロット25が設けられるヒンジ部30aとは軸方向における反対側の端部に設けられたヒンジ部30bを経由して、上側筐体10における表示部11および撮像部13まで接続されるように敷設される。
【0027】
また、アンテナ用ケーブル53は、マザーボード60から、上述したセキュリティスロット25が設けられるヒンジ部30aを経由して、上側筐体10におけるアンテナ14まで接続されるように敷設される。
【0028】
マザーボード60よりも、ヒンジ部30a,30bの軸方向におけるヒンジ部30a側には、
図3に示すように、第1サブ基板61が配置される。また、第1サブ基板61よりも軸方向と垂直な方向におけるヒンジ部30a側には、第2サブ基板62が配置される。第1サブ基板61および第2サブ基板62は、不図示の配線部によりマザーボード60に接続される。
【0029】
第1サブ基板61には、メモリ用コネクタ63が設けられ、例えばDIMM(Dual In-line Memory Module)などのメモリを挿抜可能に配置できるようになっている。また、機器の外側側面に向けて、所定規格のコネクタに対応する外部用コネクタ45b、45cが設けられる。
【0030】
第2サブ基板62には、
図4に示すように、電源スイッチカバー24により押下される電源スイッチ64が設けられると共に、機器の外側側面に向けて、所定規格のコネクタに対応する外部用コネクタ45aが設けられる。電源スイッチ64は、ノート型コンピュータ100の主電源のスイッチであり、設定に応じて主電源のON/OFF操作等に用いられる。
【0031】
このため、
図3に示すように、上述したアンテナ用ケーブル53は、第1サブ基板61および第2サブ基板62の位置を通過し、さらにヒンジ部30aを経由して、上側筐体10におけるアンテナ14まで接続されるように敷設される。
【0032】
また、
図3に示すように、下側筐体20における、上述したセキュリティスロット25が設けられるヒンジ部30aに対して軸方向における反対側の側面には、放熱ファン47からの空気を機器外部に排出する排気口48と、所定規格のコネクタに対応する外部用コネクタ45(45d〜45i)が配置される。
【0033】
このように、本実施形態のノート型コンピュータ100では、セキュリティスロット25がヒンジ部30aにおける軸方向の外側側面に設けられるため、下側筐体20の側面スペースを、各種の規格に対応するための複数の外部用コネクタ45(45a〜45i)を備えるためのスペースや、ディスクドライブ46を配置するためのスペースとして利用できるようになっている。
【0034】
ヒンジ部30a,30bは、
図4に示すように、上側筐体10に連設された上側ヒンジ片31と、下側筐体20に連設された下側ヒンジ片32とが回動可能に連結されて構成される。
【0035】
上側ヒンジ片31は、上側筐体10に連設されて構造的強度を保持する上側接続片33と、ヒンジ部30の回動によるトルクを大きくするための抵抗部34と、この上側接続片33や抵抗部34を被装する上側ヒンジ外装12aと、を備えて構成される。
上側ヒンジ外装12aは、表示部11における表示面以外の上側筐体10全体を被装する上側外装部材12と一体として設けられ、上側筐体10と下側筐体20とを接続するケーブルを内側に通せるようになっている。
【0036】
下側ヒンジ片32は、下側筐体20に連設されて構造的強度を保持する下側接続片35と、ヒンジ部30の回動によるトルクを大きくするための抵抗部36と、を備えて構成される。また、下側ヒンジ片32を被装するヒンジカバー22が、トップカバー21に嵌め込まれるよう設けられる。
【0037】
このため、アンテナ用ケーブル53は、
図3〜
図5に示すように、マザーボード60から、ヒンジ部30aにおける下側ヒンジ片32を被装するヒンジカバー22と下側ヒンジ片32との間を通過し、ヒンジ部30aにおける上側ヒンジ外装12aの内側を通って、上側筐体10のアンテナ14に接続される。
【0038】
また、表示用ケーブル51および撮像用ケーブル52は、マザーボード60から、ヒンジ部30bにおける下側ヒンジ片32を被装するヒンジカバー22と下側ヒンジ片32との間を通過し、ヒンジ部30bにおける上側ヒンジ外装12aの内側を通って、上側筐体10の表示部11、撮像部13に接続される。
【0039】
ヒンジ部30aにおける軸方向の外側側面には、上述のように、セキュリティスロット25が開設される。このため、
図4、
図5に示すように、ヒンジ部30aにおける上側ヒンジ片31の外側側面には、例えば所定の金属など、高い剛性を有する材料で構成された錠止片37が凸設され、固定部38により固定される。固定部38における固定は、例えばビス止めや溶接など、固定可能な任意の固定方法であってよい。
【0040】
また、セキュリティスロット25に取り付けられるワイヤ錠200は、
図5(A)に示すように、シリンダ機構などの施錠機構を備えた錠本体202に、L字型の2つのフック201が先端をそれぞれ外側に向けた反対方向を向くように設けられると共に、ワイヤ部203を備える。
このことにより、ワイヤ錠200のワイヤ部203を机にくくりつけるなどして取り外し不能とし、ワイヤ錠200をセキュリティスロット25に錠止することで、ノート型コンピュータ100を持ち去り不能とするようになっている。
【0041】
ここで、ヒンジ部30aにおける軸方向の外側側面には、錠止片37および上側ヒンジ外装12aにセキュリティスロット25の穴が開設される。このため、
図5(A)に示すようにワイヤ錠(施錠装置)200が錠止される際、上側ヒンジ外装12aにおけるセキュリティスロット25の穴から錠止片37におけるセキュリティスロット25の穴までフック201が差し込まれ、錠本体202への施錠操作によりフック201が回転されることで、ワイヤ錠200を十分な強度によりノート型コンピュータ100に固定できるようになっている。
【0042】
以上のように、本実施形態のノート型コンピュータ100では、
図5(A)(B)に示すように、セキュリティスロット25が設けられるヒンジ部30aの側に、外径のより細いアンテナ用ケーブル53のみを通し、軸方向における反対側のヒンジ部30bに、外径のより太い表示用ケーブル51および撮像用ケーブル52を通すように構成している。
【0043】
このため、セキュリティスロット25をヒンジ部30aの外側側面に配置し、ヒンジ開閉の動作にも十分な信頼性を確保した構成でありながら、ヒンジ部30a,30bをさらに小型化できる構成となっている。
【0044】
近年のノート型コンピュータにおける小型化に向けた開発競争の中では、さらなる小型化を実現しつつも、バッテリ42はより大型化し、外部用コネクタ45はより多く備えることが求められる。また、バッテリ42は2つのヒンジ部30a,30bの間に配置される構成が一般的でもあり、スペース配分として望ましい。
【0045】
このため、上述のように2つのヒンジ部30a,30bはバッテリ42よりも軸方向における外側に配置されることとなる。このため、小型化に向けた開発のためには、ヒンジ部30をより小型化しつつ、セキュリティスロット25もヒンジ部30に配置し、かつ、上側筐体10と下側筐体20とを接続するケーブルも十分な信頼性を確保して通せる構成とすることが求められる。
【0046】
本実施形態によれば、上側筐体10と下側筐体20とを接続するケーブルを十分な信頼性で通し、開閉動作にも十分な空間をヒンジ部30に確保できる構成でありながら、ノート型コンピュータ100のさらなる小型化を実現することができる。
【0047】
また、マザーボード60から第1サブ基板61および第2サブ基板62を通過した位置に設けられるヒンジ部30aに、表示用ケーブル51および撮像用ケーブル52よりも外径の細いケーブルであるアンテナ用ケーブル53を通すように配置しているため、下側筐体20内部のスペースをより有効活用することができ、ケーブルの重量もより軽くすることができる。
【0048】
なお、上述した各実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形して実施することが可能である。
【0049】
例えば、上述した撮像部13がさらにマイクを備えた構成であってもよい。この場合、マザーボード60がそのマイクを制御する音声制御部としての機能をさらに備え、撮像用ケーブル52が、撮像部13およびマイクをマザーボード60に接続させる構成となる。
【0050】
また、ノート型コンピュータ100が撮像部13および撮像用ケーブル52を備えていない構成であっても、本発明は同様に実現することができる。
【0051】
また、トップカバー21とヒンジカバー22は上述のように別体であってもよく、一体であってもよい。一体である場合、その一体とされたトップカバーにおける下側ヒンジ片32を被装する外装部分が、上述した実施形態におけるヒンジカバー22に対応する構成とすることで、上述した実施形態を同様に実現することができ、同様の効果を得ることができる。