特許第5710631号(P5710631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許5710631弁カートリッジのための弁インサート、電磁弁のための対応弁カートリッジ、そのような弁カートリッジを備える電磁弁および弁インサートの作製方法
<>
  • 特許5710631-弁カートリッジのための弁インサート、電磁弁のための対応弁カートリッジ、そのような弁カートリッジを備える電磁弁および弁インサートの作製方法 図000002
  • 特許5710631-弁カートリッジのための弁インサート、電磁弁のための対応弁カートリッジ、そのような弁カートリッジを備える電磁弁および弁インサートの作製方法 図000003
  • 特許5710631-弁カートリッジのための弁インサート、電磁弁のための対応弁カートリッジ、そのような弁カートリッジを備える電磁弁および弁インサートの作製方法 図000004
  • 特許5710631-弁カートリッジのための弁インサート、電磁弁のための対応弁カートリッジ、そのような弁カートリッジを備える電磁弁および弁インサートの作製方法 図000005
  • 特許5710631-弁カートリッジのための弁インサート、電磁弁のための対応弁カートリッジ、そのような弁カートリッジを備える電磁弁および弁インサートの作製方法 図000006
  • 特許5710631-弁カートリッジのための弁インサート、電磁弁のための対応弁カートリッジ、そのような弁カートリッジを備える電磁弁および弁インサートの作製方法 図000007
  • 特許5710631-弁カートリッジのための弁インサート、電磁弁のための対応弁カートリッジ、そのような弁カートリッジを備える電磁弁および弁インサートの作製方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710631
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】弁カートリッジのための弁インサート、電磁弁のための対応弁カートリッジ、そのような弁カートリッジを備える電磁弁および弁インサートの作製方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20150409BHJP
   B60T 15/36 20060101ALN20150409BHJP
【FI】
   F16K31/06 305G
   F16K31/06 305K
   F16K31/06 305D
   F16K31/06 385C
   F16K31/06 385A
   !B60T15/36 Z
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-535706(P2012-535706)
(86)(22)【出願日】2010年9月7日
(65)【公表番号】特表2013-508651(P2013-508651A)
(43)【公表日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】EP2010063085
(87)【国際公開番号】WO2011051036
(87)【国際公開日】20110505
【審査請求日】2012年4月27日
(31)【優先権主張番号】102009046202.3
(32)【優先日】2009年10月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100114487
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 幸作
(72)【発明者】
【氏名】ダイナーナン,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー,フリードリヒ
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ,アントン
(72)【発明者】
【氏名】フェルヒ,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】フリーク−シュミット,ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】フィア,エルマー
【審査官】 石井 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/059845(WO,A1)
【文献】 英国特許出願公開第2199674(GB,A)
【文献】 実開平02−041774(JP,U)
【文献】 特表2002−522728(JP,A)
【文献】 特開2004−340260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
B60T 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁の弁カートリッジのための弁インサートであって、
弁インサート(18)が、板状金属ストリップからなる一体的なスリット付スリーブとして作製されており、流体流れ(42)の流入および/または流出開口として少なくとも1つの半径方向孔(18.2)を備え、弁体(19)の主弁座(19.1)が内部に配置される、弁インサートにおいて、
前記少なくとも1つの半径方向孔(18.2)が、前記流体流れ(42)の流体特性に意図的に影響を及ぼすようにラッパ状の幾何学形状に構成されており、
前記少なくとも1つの半径方向孔(18.2)の有効横断面が、前記流体流れ(42)の方向に流入領域(18.5)で狭隘部(18.7)まで狭められており、流出領域(18.6)で前記狭隘部(18.7)から始まって拡大されている、
ことを特徴とする、電磁弁の弁カートリッジのための弁インサート。
【請求項2】
前記狭隘部(18.7)までの前記流入領域(18.5)の長さが、前記狭隘部(18.7)から始まる前記流出領域(18.6)の長さよりも短く構成されており、これにより、前記流体流れ(42)が加速される、請求項1に記載の弁インサート。
【請求項3】
前記狭隘部(18.7)までの前記流入領域(18.5)の長さが、前記狭隘部(18.7)から始まる前記流出領域(18.6)の長さよりも長く構成されており、これにより、前記流体流れ(42)が減速される、請求項1に記載の弁インサート。
【請求項4】
カプセル(12)と、該カプセル(12)の内部を可動に案内される磁気アンカ(14)と、第1端部が前記カプセル(12)に押し込まれ、前記流体流れ(42)の流入および/または流出開口として少なくとも1つの半径方向孔(18.2)を有する一体的なスリット付スリーブとして構成された弁インサート(18)と、主弁座(19.1)を有する弁体(19)とを備え、生成された磁力によって移動させられる前記磁気アンカ(14)が、前記弁インサート(18)の内部を案内されるプランジャ(16)を移動させ、該プランジャが密閉要素(16.2)を有する閉鎖要素(16.1)を備え、前記密閉要素(16.2)が、密閉機能を果たすために前記弁体(19)の前記主弁座(19.1)に密閉状態に進入する、電磁弁のための弁カートリッジにおいて、
前記弁インサート(18)が、請求項1から3までのいずれか一項にしたがって構成されていることを特徴とする、弁カートリッジ。
【請求項5】
請求項4に記載の弁カートリッジ(10)を備えることを特徴とする、電磁弁。
【請求項6】
板状金属ストリップ(18′)に少なくとも1つの孔(18.2)を設け、
前記少なくとも1つの孔(18.2)の少なくとも1つのエッジ領域(18.5,18.6)を、所望の流体特性に依存してエンボスおよび/または切削加工プロセスにより成形し、
前記板状金属ストリップ(18′)を一体的なスリット付スリーブの形に曲げ加工し、該曲げ加工は、前記成形された少なくとも1つのエッジ領域(18.5,18.6)が前記一体的なスリット付スリーブの内側に向くように実行される、
ことにより、前記少なくとも1つの孔(18.2)にラッパ状の幾何学形状を付与することを特徴とする、電磁弁の弁カートリッジのための弁インサートの作製方法。
【請求項7】
板状金属ストリップ(18′)に少なくとも1つの孔(18.2)を設けるプロセスは、前記少なくとも1つの孔(18.2)に付与すべきラッパ状の幾何学形状に依存して、選択した工具によって実施される、請求項6に記載の作製方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの孔(18.2)の少なくとも1つのエッジ領域(18.5,18.6)を成形するプロセスは、前記少なくとも1つの孔(18.2)に付与すべきラッパ状の幾何学形状に依存して、選択した工具によって実施される、請求項6または7に記載の作製方法。
【請求項9】
前記板状金属ストリップ(18′)を一体的なスリット付スリーブの形に曲げ加工するプロセスは、前記少なくとも1つの孔(18.2)に付与すべきラッパ状の幾何学形状に応じて、選択した工具によって実施される、請求項6から8までのいずれか一項に記載の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の前段部分に記載の弁カートリッジのための弁インサート、電磁弁のための対応した弁カートリッジ、対応した電磁弁、および独立請求項7の前段部分に記載の弁インサートの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術により、特に、例えばアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)、アクセラレーション・スピン・レギュレーションシステム(ASRシステム)またはエレクトロニック・スタビリティ・プログラムシステム(ESPシステム)で使用することができる液圧ユニットのための電磁弁が既知である。電磁弁は技術的構成部品としてガスまたは流体の流出入を制御するか、あるいは流れ方向を制御もしくは調整するための役割を果たす。
【0003】
ドイツ国特許出願公開第102007053134号明細書には、例えば、電磁弁のための弁カートリッジおよびこのような弁カートリッジを備える対応した電磁弁が記載されている。ここに記載の弁カートリッジは、カプセルと、カプセル内を可動に案内された磁気アンカと、カプセル内に第1端部を押し込んだ弁インサートと、弁インサートの第2端部に圧入された弁体と、主弁座とを備える。生成された磁力によって移動した磁気アンカは、弁インサート内を案内されるプランジャを移動させる。プランジャは密閉要素を有する閉鎖要素を備え、密閉要素は、密閉機能を果たすために弁体の主弁座に密閉状態で進入する。この場合、弁インサートは一体的なスリット付スリーブとして構成されており、弁体は、キャップ状スリーブとして構成されている。スリーブとして構成された弁体は、主弁座が弁インサート内に配置されるように、スリット付スリーブとして構成された弁インサートの第2端部に圧入される。一体的なスリット付スリーブとして構成された弁インサートは、例えば、板状金属ストリップの圧延によって作製することができ、弁体は、例えばキャップ状の深絞り加工部品として作製することができる。弁カートリッジの構成では、後に得られる弁インサートの内部孔の形状が、圧延前に板状金属ストリップの対応した表面に付与される。このようにして、圧延前に板状金属ストリップの対応した表面に簡単に加工を施すことによって任意の好ましい形状を体積平衡溝に付与することができる。電磁弁の弁インサートは、流入もしくは流出開口として構成された1つ以上の半径方向孔を有している。これらの半径方向孔は、弁が開かれた状態で電磁弁の設計および作用点に応じて所定の体積流量を貫流させるための機能を有する。貫流量については、半径方向孔の横断面サイズが重要な意味を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第102007053134号明細書
【発明の概要】
【0005】
これに対して、独立請求項1に記載の特徴を有する本発明による電磁弁の弁カートリッジのための弁インサートは、半径方向孔として構成された弁インサートの少なくとも1つの流入および/または流出開口が流体流れのためにラッパ状の幾何学形状により構成されており、これにより、流体流れの流体特性に意図的に影響が及ぼされるという利点を有する。この場合、弁インサートは板状金属ストリップからなる一体的なスリット付スリーブとして作製されている。
【0006】
本発明による弁インサートは、弁カートリッジもしくは電磁弁に挿入することができ、これにより、有利には流体特性に意図的に影響が及ぼされる。
【0007】
独立請求項7に記載の特徴を有する本発明による電磁弁の弁カートリッジのための弁インサートの作製方法は、板状金属ストリップに少なくとも1つの孔が設けられ、この少なくとも1つの孔の少なくとも1つのエッジ領域が所望の流体特性に依存してエンボス加工および/または切削加工プロセスにより成形され、これにより、スリット付きスリーブの形への板状金属ストリップの成形プロセス後に少なくとも1つの孔のためにラッパ状の幾何学形状が付与されるという利点を有する。
【0008】
本発明の実施形態により、ラッパ状のラバルノズルの形態に類似した幾何学形状を有する半径方向孔を弁インサートに形成することにより、流体案内もしくは流体特性に意図的に影響を及ぼすことが可能となる。半径方向孔のラッパ状の幾何学形状は、例えば打抜き、切取り、穿孔またはパンチングを行い、エンボス加工および/または切削加工により対応した半径方向孔にエッジ面取り部またはエッジ丸みを設け、次いで曲げ加工またはローラバニシング加工などにより板状金属ストリップをスリット付スリーブの形に成形することにより作製することができる。本発明の実施形態により、有利には、対応機能を実行した場合に圧力調整具合および音響を改善することができる。液圧媒体においては、対応した電磁弁の自動排気特性を改善することができ、これにより、作動時に形成された気泡/ガス泡の排出により生じる振動および騒音を低減もしくは除去することができる。一般に、液圧式および空圧式電磁弁において、本発明により流体抵抗および流体形式に影響を及ぼし、半径方向孔の前方における圧力上昇もしくは半径方向孔の後方における圧力降下を行うことにより、流体案内を最適化し、電磁弁音響を改善することができる。要約すれば、本発明の利点は、電磁弁の改善された通気特性、改善された振動特性、改善された音響、および半径方向孔として構成された流入もしくは流出開口のラッパ状の幾何学形状により最適化された電磁弁機能である。
【0009】
従属請求項に記載の構成の手段および改良形態により独立請求項1に記載の弁インサートおよび独立請求項7に記載の弁インサートの作製方法の有利な改良形態が可能である。
【0010】
少なくとも1つの半径方向孔の効果的な横断面が流体流れ方向に流入領域では狭隘部まで狭められており、流出領域では狭隘部から始まって拡大されていることは特に有利である。半径方向孔の形状は流体特性に影響を及ぼすので、流入もしくは流出開口として構成された半径方向孔のラッパ状の形状は幾何学的にラバルノズルの形状に近いものとなっている。改善された流体案内特性により、流入もしくは流出開口として構成された半径方向孔に付与されたラッパ状の幾何学形状部の内部における流体速度の変化に起因して弁音響にポジティブな影響が及ぼされる。
【0011】
本発明による弁インサートの構成では、狭隘部までの流入領域の長さが狭隘部から始まる流出領域の長さよりも短く、これにより、過度な圧縮衝撃が生じることなしに流体流れが加速される。代替的に、狭隘部までの流入領域の長さは、狭隘部から始まる流出領域の長さよりも長く構成されており、これにより、流体流れが減速される。流体流れの遅延が望ましい場合には流体流れを圧縮衝撃により制動することができ、弁の用途に応じて、遅延された圧力形成または圧力減衰を行うことができる。流入もしくは流出開口として構成された半径方向孔の内部における流体速度の変化により負圧を生成することができ、これにより、場合によって形成される電磁弁内の気泡もしくはガス泡が、これにより生じた差圧により、半径方向孔を介して電磁弁から排出される。
【0012】
本発明による方法の構成では、板状金属ストリップに少なくとも1つの孔を設けるための形式および/またはパラメータは、少なくとも1つの孔に付与されるべきラッパ状の幾何学形状に依存して選択された工具形状により決定される。少なくとも1つの孔は、例えば、打抜き、パンチング、切取りまたは穿孔によって薄板ストラップに設けることができ、使用される工具の幾何学形状により、少なくとも1つの孔のために、例えば直線形、楕円形、円錐形などの形状を規定することができる。
【0013】
本発明による方法の別の構成では、エンボス加工および/または切削加工プロセスの形式および/またはパラメータは、少なくとも1つの孔に付与されるべきラッパ状の幾何学形状に依存して、選択した工具形状により決定される。少なくとも1つの孔に望ましいラッパ状幾何学形状の設計に応じて、エンボス加工および/または切削加工深さおよび/またはエンボス加工および/または切削加工形状を規定することができる。したがって、エンボス加工および/または切削加工プロセスにより、例えば孔部エッジ領域に面取り部または丸みを設けることができる。この場合、板状金属ストリップは孔の領域でラッパ形状のバリエーションに応じて一方側または両側を成形することができる。
【0014】
本発明による方法の別の構成では、少なくとも1つの孔に付与されるべきラッパ状の幾何学形状に依存したスリット付スリーブへの成形プロセスの形式およびパラメータは、選択した工具形状により決定される。スリット付スリーブへの板状金属ストリップの成形は、例えば、ローラバニシング加工または曲げ加工などによって行うことができる。
【0015】
要約すれば、適宜な工具形状によって、電磁弁の弁インサートの少なくとも1つの半径方向孔にラッパ形状のほぼ任意のバリエーションを意図的に設けることができ、これにより、流体流れに意図的な影響が及ぼされる。
【0016】
少なくとも1つのラッパ状の半径方向孔を有する本発明による弁インサートは、例えば、通電されていない状態で開かれている、または閉じられている電磁弁で使用することができる。
【0017】
本発明の有利な実施形態を図面に示し、以下に説明する。図面では、同じ参照符号は同じもしくは類似機能を果たす構成成分もしくは要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電磁弁のための本発明による弁カートリッジの一実施例を示す概略的な断面図である。
図2図1に示した弁カートリッジのための本発明による弁インサートを示す概略的な側面図である。
図3図2に示した弁インサートの概略的な断面図である。
図4図3の詳細を示す概略図である。
図5図1に示した弁カートリッジのための図1図4に示した弁インサートの作製方法の実施例における異なる段階を示す図である。
図6図1に示した弁カートリッジのための図1図4に示した弁インサートの作製方法の実施例における異なる段階を示す図である。
図7図1に示した弁カートリッジのための図1図4に示した弁インサートの作製方法の実施例における異なる段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、本発明による電磁弁のための弁カートリッジ10の一実施例は、カプセル12と、カプセル12の内部を可動に案内される磁気アンカ14と、以下に図2図4を参照して詳細に説明する、第1端部がカプセル12に押し込まれた本発明による弁インサート18と、主弁座19.1を有する弁体19とを備える。弁インサート18の内部ではプランジャ16が長手方向に可動に案内されており、プランジャ16は、密閉要素16.2を有する閉鎖要素16.1を備え、密閉要素16.2は、密閉機能を果たすために密閉状態で弁体19の主弁座19.1に進入する。プランジャ16は、磁気アンカ14によって戻しばね17の力に抗して弁インサート18の内部を移動することができ、この場合、磁気アンカ14は、図示しない磁石アセンブリによって生成される磁力によって移動させられる。
【0020】
図1に示すように、カプセル12は、雰囲気に対して密閉する弁構成部材として流体ブロック40を有する固定領域41の方向に細長く構成されている。したがって、固定力は弁インサート18によってではなく、固定ブッシュ18.1によって吸収される。本発明による弁カートリッジの図示の実施例では、カプセル12の内部で弁インサート18を軸線方向に変位することによってプランジャ16の最大行程を調節することができる。磁気アンカ14と弁インサート18との間の最小エアギャップ15は、アンカ14を挿入した状態で弁インサート18の内部で弁体19を軸線方向に変位することにより調節することができる。調節されたエアギャップ15は、カプセル12と弁インサート18との間のかしめ結合部21によって固定することができ、弁インサート18には、かしめ結合部21を形成するために環状溝18.3を構成してもよい。このように、かしめ結合部21により作業エアギャップ15が保持され、付加的に液圧による作用力が吸収され得る。プランジャ16のための戻しばね17は流れ領域の外部に配置されており、戻しばね17はばね支持部23で支持され、ばね支持部23は、図示の実施例では、弁インサート18に挿入された締付けスリーブとして構成されている。戻しばね17を貫流スペースからずらす(流れ領域の外部におく)ことにより、プランジャ16の摩耗を低減し、主弁座19.1と、弁インサート18に設けられた対応する半径方向孔部18.2との間の貫流率を高めることができる。
【0021】
図1に示すように、弁体19はキャップ状のスリーブとして構成されている。スリーブとして構成された弁体19は、例えば深絞り加工部材として構成されており、圧入領域を介して、スリット付スリーブとして構成された弁インサート18の第2端部に圧入され、これにより、主弁座19.1は弁インサート18の内部に配置される。離間領域を介して弁体19の主弁座19.1は圧入領域から分離され、これにより、弁インサート18への弁体19の圧入プロセスによる主弁座19.1の変形が防止される。液圧力は、スリット付スリーブとして構成された弁インサート18によって吸収される。弁体19の圧入による弁インサート18の拡開を防止するために、図示の実施例では補強リング22が弁インサートの第2端部に被せ嵌められる。被せ嵌められた補強リング22は、有利には弁体19の圧入時に弁インサート18の形状安定性を増大する。本発明による弁カートリッジ10の図示しない代替的な実施形態では、スリット付スリーブとして構成された弁インサート18の接合部を少なくとも弁インサート18の第2端部で相互に結合することができ、これにより、弁体19の圧入時に弁インサート18の形状安定性が増大される。スリット付スリーブとして構成された弁インサート18の接合部は、例えば溶接および/または接着および/または噛合いによって相互に結合してもよい。
【0022】
図1に示すように、プラスチックインサートとして構成された弁下部20は弁インサート18に対して軸線方向に当接し、支持されており、弁下部20はドーム部により弁体19の内部スペースに密閉状態で押し込まれており、外面輪郭により周方向の流体ブロック40に対して密閉している。さらに、図示の弁下部20は偏心的に配置され、方向付けされた貫流機能を構成する逆止弁20.1を備える。付加的に、弁下部20はフラットフィルタ20.2を収容する。
【0023】
図1から図4に示すように、弁インサート18は、流出開口として、周囲に対称的に配置され、弁インサート19に対して横方向に位置する3つの半径方向孔18.2を備え、流入開口として内部孔18.4を備える一体的なスリット付スリーブとして構成されている。半径方向孔18.2は、弁が開かれた状態で所定の流体体積流量42を電磁弁の設計および作用点に応じて貫流させる機能を果たす。図示の実施例では、弁インサート18の内部孔18.4はほぼ完全な円形、または極めて完全に近い円形を有し、内部孔18.4ではプランジャ16が案内される。電磁弁が開かれた状態で、流体流れ42は主弁座19.1、および半径方向孔18.2として構成された流出開口を貫流する。この場合、半径方向孔18.2の形状は流体特性に影響を及ぼす。本発明によれば、半径方向孔部18.2はそれぞれラッパ状の幾何学形状に構成されており、これにより、流体流れ42の流体特性に意図的に影響が及ぼされる。
【0024】
図3および図4にさらに示すように、それぞれの半径方向孔18.2の有効横断面は流体流れ42の方向に流入領域18.5で狭隘部18.7まで狭まり、流出領域18.6で狭隘部18.7から始まって拡大している。狭隘部18.7までの流入領域18.5の長さは狭隘部18.7から始まる流出領域18.6の長さよりも短いので、流体流れ42はより低い第1速度Vからより高い第2速度Vに加速される。流体流れ42を減速するために、図示していない代替的な実施形態では狭隘部までの流入領域の長さを狭隘部から始まる流出領域の長さよりも長く構成することもでき、これにより、流れは圧縮衝撃によって制動され、弁の用途に応じて、遅延された圧力形成または圧力減衰を行うことができる。ラッパ状の幾何学形状により、半径方向孔18.2はラバルノズルの形状に近い。これにより、過度な圧縮衝撃が生じることなしに流体流れを加速または減速することができる。
【0025】
半径方向孔18.2の内部の流体速度を変更することにより負圧を生成することができ、これにより、場合によって電磁弁の内部に形成される気泡もしくはガス泡が、生じた差圧により半径方向孔18.2を通って弁から放出される。流体案内特性の改善により、半径方向孔18.2に形成されたラッパ形状部の内部における流体速度の変化によって弁音響に好ましい影響を及ぼすことができる。本発明による弁インサート18の実施形態は、作動時に形成された気泡/ガス泡が排出された場合に生じる振動および騒音の減衰もしくは除去を可能にし、液圧式電磁弁の自動通気特性を改善する。さらに、液圧および/または空圧式電磁弁において個々の半径方向孔部18.2にラッパ状の幾何学形状を適宜に構成し、例えば流体抵抗または流体形式(層状/乱流)に影響を及ぼすことにより、または半径方向孔部18.2の前方で圧力を上昇させるための流体の圧縮衝撃により、または半径方向孔部18.2の後方で圧力を降下させるための流体膨張(ラバルノズル原理)により、流体案内を最適化し、電磁弁音響を改善することができる。
【0026】
一体的なスリット付スリーブとして構成された弁インサート18は、以下に図5図7を参照して説明するように、例えば、板状金属ストリップ18′の圧延によって作製することができる。プランジャ16が磁石アセンブリによって生じた磁束により軸線方向に移動した場合に押しのける体積を補償し、通気もしくは充填を行うために、プランジャ16には軸線方向に延在する少なくとも1つの体積平衡溝が設けられている。しかしながら、代替的には少なくとも1つの体積平衡溝は弁インサート18の内部孔に設けてもよい。
【0027】
図5図7に示すように、本発明による弁インサート18を作製するためには、適宜な穿孔工具50によって板状金属ストリップ18′の内部に少なくとも1つの孔18.2が設けられる。少なくとも1つの孔18.2は、例えば、板状金属ストリップ18′の打抜き、パンチング、切取りまたは穿孔によって設けることができる。少なくとも1つの孔18.2を設けた後、少なくとも1つの孔18.2の縁部領域が、流入領域18.5および/または流出領域18.6を形成するために少なくとも1つの孔18.2の所望の流体特性に依存してエンボス加工および/または切削加工プロセスで適宜なエンボス加工および/または切削加工工具を用いて成形される。エンボス加工および/または切削加工プロセスでは、例えば、流入領域18.5および/または流出領域18.6を形成するために孔部エッジに所定の深さを有する面取り部または丸みを設けてもよい。板状金属ストリップ18′は、少なくとも1つの孔18.2の領域で、少なくとも1つの孔18.2の所望のラッパ状幾何学形状に依存して、一方側または両側を成形することができる。次いで板状金属ストリップ18′は、成形プロセスで、ラッパ状の幾何学形状を有する少なくとも1つの半径方向孔18.2を備える一体的なスリット付スリーブ18の形に成形される。成形プロセスは、適宜な工具54を用いて、例えば板状金属ストリップ18′の曲げ加工またはローラバニシング加工によって実施してもよい。
【0028】
板状金属ストリップ18′の内部に少なくとも1つの孔18.2を設けるための工具の直線形、楕円形、円錐形の形状、エンボス加工部および/または切削加工部の形状および深さ、ならびに成形方法の形式ならびにパラメータによって、少なくとも1つの半径方向孔18.2のラッパ形状をほぼ任意のバリエーションで電磁弁の弁カートリッジ10の弁インサート18に設けることができる。
【0029】
本発明の実施形態では、打抜き、切取り、穿孔またはパンチングを行い、エッジ面取り部またはエッジ丸みのエンボス加工および/または切削加工を行い、次いで曲げ加工またはローラバニシング加工により板状金属ストリップを成形して、有利には「ラッパ」の形状の弁インサートに半径方向孔を構成することにより、流体案内もしくは流体特性に意図的に影響を及ぼすことが可能になる。本発明の利点は、電磁弁の改善された通気特性、改善された振動特性、改善された音響、および半径方向孔の本発明によるラッパ状の孔幾何学形状により最適化された電磁弁機能にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7