(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710645
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】パターニング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/302 20060101AFI20150409BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20150409BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20150409BHJP
H05B 33/28 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
H01L21/302 201Z
H05B33/10
H05B33/14 A
H05B33/28
H05B33/22 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-548842(P2012-548842)
(86)(22)【出願日】2011年12月16日
(86)【国際出願番号】JP2011079142
(87)【国際公開番号】WO2012081689
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2013年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2010-281994(P2010-281994)
(32)【優先日】2010年12月17日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、次世代高効率・高品質照明の基盤技術開発/有機EL照明の高効率・高品質化に係る基盤技術開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000108753
【氏名又は名称】タツモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
(72)【発明者】
【氏名】川口 敬史
(72)【発明者】
【氏名】五十川 良則
(72)【発明者】
【氏名】長畑 千聖
【審査官】
杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−099500(JP,A)
【文献】
特開平01−271935(JP,A)
【文献】
特開平04−165604(JP,A)
【文献】
特表2004−516651(JP,A)
【文献】
特開2006−173623(JP,A)
【文献】
竹添 法隆 他,"誘電体バリア放電Xe エキシマランプを用いたポリマーのフォトエッチング",ライトエッジ,ウシオ電機株式会社,1997年 2月,No.9 ,第10〜16頁,http://www.ushio.co.jp/documents/technology/lightedge/lightedge_09/ushio_le09-05.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 51/50
H05B 33/10
H05B 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に紫外線を照射することにより該基板表面を改質する基板処理工程と、
表面を改質した前記基板上に、金属微粒子を含有する導電膜を形成する成膜工程と、
前記導電膜上に設置された任意の開口部を有するマスクの上から真空紫外線を照射することにより前記開口部の下方のエッチング領域に位置する前記導電膜をドライエッチングするエッチング工程と、
前記基板表面に炭酸ガスを噴射することにより前記エッチング領域に残存する前記金属微粒子を除去する微粒子除去工程と、
を有するパターニング方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターニング方法であって、
前記微粒子除去工程後に、さらに、
前記導電膜表面に紫外線を照射することにより前記導電膜表面を改質する下層膜処理工程と、
表面を改質した前記導電膜上に機能膜を形成する上層膜形成工程と、
を実行するパターニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に形成された機能膜に所定のパターンを形成するパターニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板表面に形成された膜に対してドライエッチングにより所定のパターンを形成する技術は知られている(例えば、特許文献1等参照。)。ドライエッチングは湿式の現像工程を伴わないため簡便であり、パターニング用途に広く用いられている。
【0003】
ドライエッチングの種類には、反応ガス中に材料を曝す方法(反応性ガスエッチング)とプラズマによりガスをイオン化・ラジカル化してエッチングする反応性イオンエッチングなどが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−116639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のドライエッチング処理では、プロセスガスとして、Xe、Kr、Ar、Ne、Heなどの希ガス、あるいは塩素系やフッ素系の反応性ガスを供給する必要があり、プロセスコストが高く、環境負荷も大きくなる問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、プロセスコストや環境負荷を大幅に軽減出来るパターニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のパターニング方法は、基板上に機能膜を形成する成膜工程と、機能膜上に設置された任意の開口部を有するマスクの上から真空紫外線を照射することにより開口部の下方に位置する機能膜をドライエッチングするエッチング工程と、を有する。
【0008】
本発明のパターニング方法では、真空紫外線を照射するので、含酸素雰囲気でドライエッチングが可能である。例えば、乾燥空気をプロセスガスに用いることが可能となる。また、大気中に置かれた基板に対して不活性ガスとしてN
2を供給しても良い。したがって、特殊なプロセスガスを用いることがなく、プロセスコストや環境負荷を大幅に軽減可能である。
【0009】
また、本発明のパターニング方法では、前記成膜工程の前に基板表面に紫外線を照射することにより基板表面を改質する基板処理工程を有する。これによると、基板表面と、次工程で成膜される機能膜との密着性が改善され、膜厚の均質化が得られる。また、改質と同時に各種素材の表面に残留する有機物の汚染物質や素材自体から滲み出る油分を真空紫外線と活性酸素により酸化洗浄することが可能である。
【0010】
また、本発明のパターニング方法では、n層(nは2以上の整数。)に積層された異なる機能膜の各層について前記成膜工程と前記エッチング工程を繰り返すことで、同一パターンでパターンが形成されたn層の機能膜を得ることが可能となる。
【0011】
なお、機能膜の例としては、導電性ポリマーに金属微粒子が含有された導電膜が挙げられる。この場合、導電膜のエッチング工程後に基板表面に炭酸ガスを噴射することによりエッチング領域に残存する金属微粒子を除去することが可能となる。機能膜の他の例としては、正孔注入層、導電膜上の陽極バッファ層、バッファ層上のp型半導体層などがある。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパターニング方法によれば、プロセスコストや環境負荷を大幅に軽減出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のパターニング方法を説明するための図(断面図)である。
【
図2】本発明のパターニング方法を説明するための図(断面図)である。
【
図3】本発明のパターニング方法を説明するための図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のパターニング方法を添付図面に示す好適実施形態に基づいて説明する。
【0015】
図1〜
図3は、パターニング方法を説明するための断面図である。
【0016】
本発明のパターニング方法は、
図1(d)に示すように、基板1の表面に成膜された機能膜にドライエッチングにより所定のパターンを形成する方法である。
【0017】
本実施形態の本実施形態のパターニング方法は、基板表面に紫外線を照射することにより基板表面を改質する基板処理工程[1]と、基板上に機能膜を形成する成膜工程[2]と、機能膜上に設置された任意の開口部を有するマスクの上から真空紫外領域の紫外線を照射することにより前記開口部の下方に位置する前記機能膜をドライエッチングするエッチング工程[3]と、を有する。
【0018】
[1]基板処理工程
まず、
図1(a)に示すように、基板1の表面に紫外線11を照射する。基板1は、紫外線11の照射により表面改質が進行するような素材で出来ている。具体的には、ガラス基板や樹脂基板が好適に用いられる。樹脂基板の例としては、太陽電池セルや有機EL素子用の樹脂基板として有用なPENフィルム(2軸延伸ポリエチレン2,6−ナフタレート)やPETフィルム(2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)が挙げられる。
【0019】
基板処理工程では、紫外光源として、エキシマランプ(株式会社クォークテクノロジー製)を好適に使用できる。エキシマランプからは、波長172nmの真空紫外線が出射される。なお、基板処理工程で用いる紫外光源はこれに限らず、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、紫外線LEDを使用することも可能である。
【0020】
紫外線照射による基板表面の改質原理について、基板1として樹脂基板、紫外線11として真空紫外線を使用した場合を例にして説明する。
【0021】
真空紫外線を基板表面に照射すると、高いエネルギーにより表面分子の主鎖や側鎖の大部分が切断され、表面からは素材に含まれる水素原子が分離される。この水素原子は、大気中の酸素から紫外光により生成された活性酸素(例えば、OHラジカルなど。)と結合してアシル基(COH)、ヒドリキシル基(OH)、カルボキシル基(COOH)などが表面に形成される。これにより、基板表面の物理的性質および化学的性質が改質(平滑性や親水性の向上など)される。この結果、基板表面と、次工程で成膜される機能膜との密着性が改善され、膜厚の均質化が得られる。また、改質と同時に各種素材の表面に残留する有機物の汚染物質や素材自体から滲み出る油分を真空紫外線と活性酸素により酸化洗浄することが可能である。
【0022】
[2]成膜工程
次に、
図1(b)に示すように、基板1上に機能膜2を形成する。機能膜の種類としては、導電膜、正孔注入層、導電膜上の陽極バッファ層、バッファ層上のp型半導体層などがある。導電膜の材料としては、Ag含有ポリマー、カーボンナノチューブ、Agナノ粒子、ITOなどを挙げることが出来る。
【0023】
機能膜2は、機能膜2の材料を基板1上に湿式塗布した後、乾燥することにより形成することが出来る。湿式塗布の例としては、スリットコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、スクリーン印刷などを挙げることが出来る。乾燥は、風乾に、ホットプレート、オーブン、赤外線ヒータなどによる加熱を組み合わせて行うことが出来る。
【0024】
[3]エッチング工程
次に、
図1(c)に示すように、機能膜2上に任意の開口部4Aを有するマスク4を設置し、真空紫外線12を照射する。これにより、開口部4Aの下方に位置する部分をエッチング領域2Aとして機能膜2がドライエッチングされる。その結果、機能膜2に、マスク4の開口部4Aの配置に応じた所定のパターンが形成される(
図1(d)参照。)。
【0025】
エッチング工程で用いる真空紫外線12としては、エキシマランプから出射される波長172nmの真空紫外線を好適に用いることが出来る。
【0026】
エッチング工程は、含酸素雰囲気で行うことが出来る。例えば、乾燥空気をプロセスガスに用いることが可能となる。また、大気中に置かれた基板1に対して不活性ガスとしてN
2を供給しても良い。つまり、特殊なプロセスガスを使わないので、プロセスコストおよび環境負荷が大幅に軽減される。
【0027】
なお、機能膜2にAgなどの金属微粒子が含まれる場合、エッチング工程後、
図2(a)のように金属微粒子5が基板表面のエッチング領域2Aに残ることがあり、アスペクト比への影響が懸念される。そこで、
図2(b)に示すように、エッチング工程後に基板表面に炭酸ガスを噴射することによりエッチング領域に残存する金属微粒子を吹き飛ばして除去するようにしても良い。
【0028】
また、
図3に示すように、上記のようにして所定のパターンを形成した機能膜2上に異なる機能膜3を上述の成膜行程と同様にして成膜し(
図3(a)参照。)、さらにこの上層の機能膜3を上述のエッチング工程と同様にしてドライエッチングする(
図3(b)参照。)ことにより、下層の機能膜2と同一パターンで上層の機能膜3のパターニングが可能となる。下層の機能膜2の例としてはAg含有ポリマーやITO、上層の機能膜3の例としては正孔注入層を挙げることが出来る。このような機能膜の組み合わせは有機EL素子の製造に好適である。なお、上層の機能膜3を塗布する前に、下層の機能膜2に紫外線を照射すれば、当該機能膜2の硬度が増し、安定して機能膜3を成膜することが可能となる。
【0029】
さらに、同様の成膜およびエッチング工程を繰り返すことにより、同一パターンでパターンが形成されたn層(nは2以上の整数。)の異なる機能膜を得ることが出来る。
【0030】
本発明のパターニング方法を用いて機能膜のエッチング可能性を調べた。実験は以下の要領で行った。
【0031】
[実験1]
ガラス基板上へ約50〜70nmに塗布された透明導電膜のサンプルを3つ得た。それぞれ実施例1〜3とする。そして、これらのサンプルに波長172nmの真空紫外線を照射時間を変えて照射し、透明導電膜の膜厚の変化を調べた。結果を表1に示す。
【0033】
表1に示すように、真空紫外線照射により、透明導電膜の膜厚が有意に減少し、ドライエッチングが行われていることが確認された。なお、紫外線照射の代わりに湿式によるエッチングも試みたが、希硝酸、希フッ化水素酸、希塩酸ともに透明導電膜が固形化し、理想的なエッチングが出来なかった。
【0034】
また、表1に示す結果に基づくと、エッチング深さは、実施例1のサンプルで31.8nm、実施例2のサンプルで35.3nm、実施例3のサンプルで34.5nmであった。エッチング深さは、30〜60秒で飽和し、それ以上照射時間を長くしてもエッチングレートほとんど変わらないことがわかる。
【0035】
次に、本発明のパターニング方法を用いて実際に機能膜のパターニングを行った。実験は以下の要領で行った。
【0036】
[実験2]
<成膜条件>
基板には無アルカリガラス基板を使用し、その上にAg含有ポリマー導電膜をスリットコート法により膜厚80nmで塗布し、風乾5分、60℃のホットプレート上で5分、さらに120℃のオーブン内で5分乾燥した。なお、オーブンの代わりに赤外線ヒータを用いても良い。
【0037】
<エッチング条件>
基板上に所定の開口を有するマスクを設置し、基板表面には窒素ガスを流量20L/minで供給した。紫外光源には、エキシマランプ(波長172nm)を使用した。光源から基板表面までの距離(照射距離)は4mm、照射強度は40mW/cm
2、照射時間は300秒とした。
【0038】
このような条件でパターニングを行うことにより、実験1の結果から見て導電膜に所定のパターンでパターニングが行われているものと推定される。
【0039】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0040】
1−基板
2,3−機能膜
2A,3A−エッチング領域
4−マスク
5−金属微粒子
11−紫外線
12−真空紫外線