(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る未発酵のビールテイスト飲料及びその製造方法、並びに泡持ち向上方法の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
本実施形態に係る飲料は、アルコールの含有量が1v/v%未満である未発酵のビールテイスト飲料である。
すなわち、酵母によるアルコール発酵を経ることなく製造される未発酵飲料であって、酒税法上で定義されるアルコール分が一度以上の酒類を除く飲料である。このような飲料としては、具体的には、低アルコールビール、ノンアルコールビール等と呼ばれるビールテイスト飲料が例示される。なお、本明細書において、ビールテイスト飲料とは、ビール様(風)飲料とも称され、ビールのような味わいを奏する、つまり、ビールを飲用したような感覚を飲用者に与える飲料を意味している。
【0010】
本実施形態に係る飲料におけるアルコールの含有量は、1v/v%未満の任意の濃度とすることができるが、さらに、0.5v/v%未満としてもよく、0.005v/v%未満としてもよく、実質的に0.0v/v%としてもよい。すなわち、原料に不可避的に含まれているアルコールや、添加されたアルコールが、1v/v%未満の任意の濃度含有されていてもよい。なお、アルコールの含有量は、15℃におけるエチルアルコールの容量を指す。
また、本実施形態に係る飲料は、圧入された炭酸ガスを含有し、発泡性を備えた飲料である。具体的には、本実施形態に係る飲料の20℃におけるガス圧は0.049MPa(0.5kg/cm
2)以上である。
【0011】
本実施形態に係る飲料は、飲料中における難消化性デキストリンの含有量が所定量以上に調整され、飲料の苦味価が所定値以上に調整されている。そのため、発泡した炭酸ガスが形成する泡の層の泡持ちが向上した飲料である。
ここで、泡持ちとは、発泡性を備えた飲料をグラスやジョッキ等の飲用容器に注ぎ入れた際に、その液面に形成される泡の層が、保持される度合いを意味する。そして、泡持ちが向上するという場合、液面に形成された所定の高さ以上の泡の層が、所定の高さまで降下する時間が長くなることを意味している。
このような発泡性飲料における泡持ちは、例えば、NIBEM値によって定量的に評価することができる。
NIBEM値は、ビール等の発泡性飲料における泡持ちを表す指標値であり、発泡性飲料を所定の容器に注いだ際に形成される泡の層が所定高さ降下するのに要する時間に基づいて算出される値である。NIBEM値は、数値が高いほど泡持ちが良いことを意味している。
【0012】
本実施形態に係る難消化性デキストリンは、澱粉の加水分解・熱分解により生成され、各種アミラーゼ、特にヒトの消化酵素によっても分解されない成分を有する多糖である。
そして、難消化性デキストリンは、整腸作用や血糖値上昇抑制作用といった有用な作用が認められている。
本実施形態に係る飲料においては、難消化性デキストリンは、苦味価に関わる他の成分と協同して働くことによって、飲料における泡持ちの向上に寄与している。難消化性デキストリンとしては、例えば、「パインファイバー」(登録商標)(松谷化学工業株式会社製)、「ファイバーソル」(松谷化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0013】
本実施形態に係る飲料中における、難消化性デキストリンの含有量は、0.50w/v%以上であれば特に制限されるものではないが、0.50w/v%以上5.00w/v%以下であることが好ましく、1.00w/v%以上3.00w/v%以下であることがより好ましく、2.00w/v%以上3.00w/v%以下であることがさらに好ましい。難消化性デキストリンの含有量が0.50w/v%以上であると、飲料において泡持ちの向上が認められる。その一方で、難消化性デキストリンの含有量が0.50w/v%未満であると、飲料において泡持ちの向上が認められ難い。また、難消化性デキストリンの含有量が5.00w/v%以下であると、難消化性デキストリンが飲用者に及ぼす過剰な生理学的作用が軽減される。その一方で、難消化性デキストリンの含有量が5.00w/v%を超えると、難消化性デキストリンが飲用者に及ぼす過剰な生理学的作用が無視できなくなる場合がある。
【0014】
本実施形態に係る苦味価(Bitterness Unit;BU)は、ビールやビールテイスト飲料における苦味の度合いを表す指標値である。本実施形態に係る飲料における苦味価は、ASBC(American Society of Brewing Chemists)が採用するビールの苦味価の公定法(American Society of Brewing Chemists. Methods of Analysis (7th revised ed.), Beer-23A (1976))に従って、飲料から液液溶媒抽出されるイソ−α酸の量に基づいて算出される。
そのため、実施形態に係る飲料は、苦味価が所定値以上となる量のイソ−α酸を含有している。含有するイソ−α酸としては、α酸溶液を煮沸して得られるシス−イソフムロンやトランス−イソフムロン等のイソ−α酸であってもよく、α酸を化学的に変換して得られるρイソ−α酸、テトラヒドロイソ−α酸、及びヘキサヒドロイソ−α酸等であってもよい。なお、イソ−α酸の元となるα酸は、ホップから抽出することができる。したがって、本実施形態に係る飲料は、ホップを使用して製造されてもよい。
本実施形態に係る飲料においては、苦味価に関わるイソ−α酸は、難消化性デキストリンと協同して働くことによって、飲料の泡持ちの向上に寄与している。
【0015】
本実施形態に係る飲料における苦味価は、5.0以上であれば特に制限されるものではないが、5.0以上50.0以下であることが好ましく、7.2以上50.0以下であることがより好ましく、10.0以上50.0以下であることがさらに好ましい。苦味価が5.0以上であると、飲料において泡持ちの向上が認められる。その一方で、苦味価が5.0未満であると、飲料において泡持ちの向上が認められ難い。また、苦味価が50.0以下であると、飲料が呈する過剰な苦味を避けることができる。その一方で、苦味価が50.0を超えると、飲料が呈する苦味が過剰になる。
【0016】
本実施形態に係る飲料は、植物原料を使用して製造される飲料である。
本実施形態に係る飲料の製造においては、植物原料と冷水又は温水とを混合することによって調製される植物原料液が飲料の製造に使用される。したがって、本実施形態に係る飲料は、植物原料に由来する成分を含有する飲料である。
【0017】
植物原料としては、一般のビールテイスト飲料の製造に用いられる植物由来の原料であれば特に制限されるものではないが、穀物であることが好ましい。穀物としては、麦類、米、トウモロコシ、豆類、いも類、こうりやん、あわ、ひえ、きび等が挙げられる。麦類としては、大麦、小麦、燕麦、ライ麦等が、いも類としては、ばれいしょ、さつまいも等が、豆類としては、大豆、エンドウ、小豆、緑豆、空豆等が挙げられる。
なお、穀物としては、未発芽の穀物及び発芽した穀物のいずれでもよい。
本実施形態に係る飲料は、植物原料として、麦類、麦芽、大豆、エンドウ及びトウモロコシからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0018】
本実施形態に係る飲料は、植物原料からあらかじめ調製された糖化液を含有してもよく、植物原料に含まれる成分をあらかじめ抽出して得られるエキスを含有してもよい。
このような糖化液又はエキスとしては、特に、麦芽由来のエキス分を含有する麦汁及び/又は麦芽エキスを含有することができる。この場合、本実施形態に係る飲料中における麦芽由来のエキス分の含有量としては、2.0w/v%を超え6.0w/v%以下としてもよく、2.0w/v%以下としてもよく、1.0w/v%以下としてもよい。
なお、本明細書において、エキス分は、糖分、タンパク質、アミノ酸、苦味質、不揮発性有機酸、ミネラル、ポリフェノール、色素成分などからなる不揮発性固形分を意味するものとする。エキス分の含有量は、温度15℃の時において飲料百立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数を計測することによって求められる。
【0019】
本実施形態に係る飲料は、植物原料から分離精製された植物由来タンパクを含有してもよい。
植物由来タンパクは、一般のビールテイスト飲料の製造に用いられる植物から分離されるタンパクであれば特に制限されるものではないが、前記した穀物から分離されるタンパクであることが好ましい。
植物由来タンパクとしては、具体的には、豆類由来タンパクを含有することが好ましく、大豆タンパク又はエンドウタンパクを含有することがより好ましい。例えば、大豆タンパクとしては、「昭和フレッシュ」(昭和産業株式会社製)、エンドウタンパクとしては、「エンドウタンパク」(オルガノフードテック株式会社製)等が挙げられる。
【0020】
本実施形態に係る飲料は、植物由来タンパクを加水分解して得られる植物由来タンパク分解物を含有してもよい。
植物由来タンパク分解物は、植物原料から分離精製された植物由来タンパクを熱処理、酸処理及び酵素処理のいずれで加水分解したものでもよく、分画されたものでもよい。
植物由来タンパク分解物としては、具体的には、豆類由来タンパク分解物を含有していることが好ましく、大豆タンパク分解物又はエンドウタンパク分解物を含有していることがより好ましく、大豆ペプチドを含有していることが特に好ましい。例えば、大豆ペプチドとしては、「ハイニュート−AM」(登録商標)(不二製油株式会社製)や「ハイニュート−DC6」(登録商標)(不二製油株式会社製)や「ソルピー5000」(登録商標)(日清オイリオ株式会社製)等が挙げられる。
【0021】
本実施形態に係る飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、安定剤等(これらを単に任意添加材料ということがある。)を含有してもよい。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素等を挙げることができる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプン等を挙げることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム等を挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール等を挙げることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸、コハク酸等を挙げることができる。塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等を挙げることができる。また、安定剤としては、ペクチン、水溶性大豆多糖類等を挙げることができる。具体的には、水溶性大豆多糖類として、「ソヤファイブ−S−LA200」(不二製油株式会社製)、「ソヤファイブ−S−LN」(不二製油株式会社製)、「ソヤファイブ−S−ZR100」(不二製油株式会社製)、「ソヤファイブ−S−DN」(不二製油株式会社製)、「ソヤアップR100」(不二製油株式会社製)、「ソヤアップM3000」(不二製油株式会社製)、「SM700」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)等を配合することができる。
【0022】
以上説明した本実施形態に係る飲料によれば、未発酵のビールテイスト飲料において、飲用容器に注ぎ入れた際に形成される泡の層の泡持ちが向上する効果が得られる。
また、本実施形態に係る飲料では、原料の組成を調節することなく、難消化性デキストリンの含有量及び苦味価のみを調整することによって、未発酵のビールテイスト飲料の泡持ちを向上させることができる。そのため、本実施形態に係る飲料によれば、使用する原料の組成に関わらず、泡持ちが付加的に向上した未発酵のビールテイスト飲料を提供することができる。
【0023】
次に、本発明の実施形態に係る未発酵のビールテイスト飲料の製造方法について説明する。
【0024】
本実施形態に係る製造方法は、植物原料を使用して、アルコールの濃度が1v/v%未満である未発酵のビールテイスト飲料を製造する方法である。
すなわち、原料の一部として植物由来の原料を使用し、アルコールの濃度が1v/v%未満であるビールテイスト飲料を、酵母によるアルコール発酵を経ることなく製造する方法に関する。
【0025】
本実施形態に係る製造方法は、特に、製造される飲料における難消化性デキストリンの濃度が0.50w/v%以上となるように植物原料液に難消化性デキストリンを混合する工程と、製造される飲料の苦味価が5.0以上となるように植物原料液の苦味価を調整する工程とを備えている。このような製造方法によれば、難消化性デキストリンの含有量が0.50w/v%以上であり、苦味価が5.0以上である未発酵のビールテイスト飲料を調製することができ、前記した泡持ちが向上したビールテイスト飲料の製造に好適である。
【0026】
本実施形態に係る製造方法は、これらの工程が含まれる限り、飲料製造の分野で実施されている一般的な製法に準じて行うことができ、難消化性デキストリンを混合する工程と苦味価を調整する工程の順序は、特に制限されるものではない。
具体的には、本実施形態に係る製造方法は、主に、植物原料液調製工程と、発泡性付与工程と、無菌化工程と、充填工程と、を含んでなる。
【0027】
植物原料液調製工程では、植物原料と冷水又は温水とを混合することによって、飲料の製造に使用する植物原料液を調製する。このような植物原料と水の混合は、適宜の温度に加温しながら行ってもよい。
【0028】
植物原料としては、一般のビールテイスト飲料の製造に用いられる植物由来の原料であれば特に制限されるものではないが、前記した穀物を用いることが好ましく、特に、麦類、麦芽、大豆、エンドウ及びトウモロコシからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
麦芽は、麦類、例えば大麦を水に浸漬させた後、所定の温度及び湿度条件の下で発芽させることによって調製することができる。調製された麦芽は、焙燥されていることが好ましく、除根されていることが好ましく、粉砕されていることが好ましい。
【0029】
植物原料液は、植物原料からあらかじめ調製された糖化液を含有するように調製してもよい。
糖化液は、植物原料と冷水又は温水とを混合した後、所定温度に加温して保持し、植物原料が含む糖質を内在性加水分解酵素の作用で糖化することによって調製することができる。調製された糖化液は、固形物が除去されていることが好ましい。
また、植物原料液は、あらかじめ植物原料に含まれる成分を抽出して得られるエキスを含有するように調製してもよい。このようなエキスは、植物原料から成分を溶媒抽出したり、糖化液に含まれる成分を濃縮することによって得ることができる。
本実施形態に係る植物原料液は、特に、麦芽由来のエキス分を含有する麦汁及び/又は麦芽エキスを含有するように調製してもよい。この場合、製造される飲料中における麦芽由来のエキス分の含有量としては、2.0w/v%を超え6.0w/v%以下としてもよく、2.0w/v%以下としてもよく、1.0w/v%以下としてもよい。
【0030】
植物原料液は、植物原料から分離精製された植物由来タンパクを含有するように調製してもよい。植物由来タンパクは、植物原料と冷水又は温水とを混合した後、その溶液から分離抽出して得ることができる。
植物由来タンパクとしては、一般のビールテイスト飲料の製造に用いられる植物から分離されるタンパクであれば特に制限されるものではないが、前記した穀物から分離されるタンパクを使用することが好ましく、豆類由来タンパクを使用することがより好ましく、大豆タンパク又はエンドウタンパクを使用することがさらに好ましい。なお、このような植物由来タンパクとしては、あらかじめ、植物から分離抽出した後、所定の画分を精製したものを使用してもよい。
【0031】
植物原料液は、植物由来タンパクを加水分解して得られる植物由来タンパク分解物を含有するように調製してもよい。
植物由来タンパクの加水分解は、酸処理やアルカリ処理、又はプロテアーゼやペプチダーゼ等の分解酵素を用いた酵素処理により行うことができるが、酵素処理によることが好ましい。
植物由来タンパク分解物としては、具体的には、豆類由来タンパク分解物を使用することが好ましく、大豆ペプチド又はエンドウペプチドを使用することがより好ましく、大豆ペプチドを使用することが特に好ましい。
【0032】
本実施形態に係る植物原料液には、製造される飲料における難消化性デキストリンの含有量が0.50w/v%以上、好ましくは0.50w/v%以上5.00w/v%以下、より好ましくは1.00w/v%以上3.00w/v%以下、さらに好ましくは2.00w/v%以上3.00w/v%以下となるように難消化性デキストリンを混合する。
すなわち、植物原料液調製工程以降において、植物原料液の成分の濃度を調整することなく飲料を製造する場合は、植物原料液における含有量が、飲料中において達成しようとする含有量と同じ量となるように難消化性デキストリンを混合する。その一方で、植物原料液調製工程以降において、植物原料液の成分の濃度を調整して発泡性ビールテイスト飲料を製造する場合は、濃度調整の率に応じて量を加減して難消化性デキストリンを混合する。
【0033】
本実施形態に係る植物原料液の苦味価は、製造される飲料の苦味価が、5.0以上、好ましくは5.0以上50.0以下、より好ましくは7.2以上50.0以下、さらに好ましくは10.0以上50.0以下となるように調整する。
植物原料液や飲料の苦味価は、液中のイソ−α酸の濃度を表している。そのため、植物原料液調製工程では、製造される飲料において、苦味価が所定値以上となるときのイソ−α酸の濃度を達成するように、植物原料液のイソ−α酸の濃度を調整する。
すなわち、植物原料液調製工程以降において、植物原料液の成分の濃度を希釈することなく飲料を製造する場合は、植物原料液における苦味価が、飲料中において達成しようとする苦味価と同じ値となるようにイソ−α酸を含有させることができる。なお、植物原料液における苦味価が、飲料中において達成しようとする苦味価の値以上である場合は、イソ−α酸を新たに含有させなくてもよい。その一方で、植物原料液調製工程以降において、植物原料液の成分の濃度を希釈して飲料を製造する場合は、濃度希釈の率に応じて量を加減してイソ−α酸を含有させる。
【0034】
植物原料液にイソ−α酸を含有させる方法としては、植物原料液にα酸を含有させた後、植物原料液を煮沸する方法を用いることができる。
植物原料液にα酸を含有させるには、植物原料液にホップを加えればよい。植物原料液をホップの存在下において煮沸することによって、ホップに由来するα酸をイソ−α酸に変換させることができる。具体的には、イソ−α酸の含有量は、ホップの使用量、煮沸時間等を変えることによって調整することができる。
加えるホップとしては、任意の品種を用いることができ、生鮮のホップ、又は乾燥したホップ、例えば、プレスホップ、ホップパウダー、ホップペレットの形態としたものを用いることができる。
【0035】
また、植物原料液にイソ−α酸を含有させる方法としては、α酸を化学的に変換して得られるρイソ−α酸、テトラヒドロイソ−α酸、ヘキサヒドロイソ−α酸等の誘導体を、植物原料液に添加する方法を用いることができる。これら誘導体としては、市販されているものを用いればよい。
【0036】
また、植物原料液にイソ−α酸を含有させる方法としては、ホップに由来する成分を溶媒抽出して得られるホップエキスを、植物原料液に添加する方法を用いることができる。
ホップエキスは、抽出されたα酸が、あらかじめイソ−α酸に変換されているものが好ましい。イソ−α酸に変換されていないホップエキスを用いる場合は、ホップエキスを飲料原液に添加した後に煮沸を行う。
ホップエキスは、例えば、ホップの毬花に含まれる成分を溶媒抽出することによって調製される。溶媒としては、飲料製造上許容される溶媒、例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸メチル、グリセリン、ジエチルエーテル等を用いることができる。
【0037】
植物原料液には、前記した任意添加材料を添加してもよい。また、植物原料液調製工程において、植物原料液に水を混合し、植物原料液における各成分の濃度が、製造される飲料の成分の濃度となるように調整してもよい。
このようにして調製された飲料を、必要に応じて冷却して、後工程に供する。
【0038】
発泡性付与工程では、調製された植物原料液に炭酸ガスを混合して、製造される飲料に発泡性を付与する。
炭酸ガスを混合する方法としては、植物原料液に炭酸ガスを圧入する方法、植物原料液に炭酸水を混合する方法のいずれでもよい。
すなわち、植物原料液の成分の濃度が、製造される飲料の成分の濃度に既に調整されている場合には、炭酸ガスを圧入することにより、発泡性を備える飲料が調製される。その一方で、植物原料液の成分の濃度が、製造される飲料の成分の濃度に調整されていない場合には、所定の混合比で炭酸水を混合して成分の濃度を調整することにより、発泡性を備える飲料が調製される。
なお、このような工程は、充填工程と併せた一体の工程として行うことができる。
【0039】
無菌化工程では、殺菌処理又は除菌処理を行うことによって、製造される飲料を無菌化する。
殺菌処理としては、用いた植物原料や飲料のpH等に応じて、例えば、65℃以上の所定温度で加熱処理を行う。なお、殺菌処理は、発泡性付与工程の前に植物原料液に対して行うことができ、或いは充填工程の後に容器詰め飲料に対して行うことができる。
除菌処理としては、発泡性付与工程の前に植物原料液に対してろ過を行う。ろ過材としては、珪藻土や樹脂性フィルタを用いることができる。
【0040】
充填工程では、調製された飲料を、洗浄済みの缶、瓶、ペットボトル等の製品容器に充填することによって容器詰め飲料が製造される。
【0041】
以上説明した本実施形態に係る製造方法によれば、飲用容器に注ぎ入れた際に形成される泡の層の泡持ちが向上した未発酵のビールテイスト飲料を製造することができる。
また、本実施形態に係る製造方法によれば、製造される飲料における難消化性デキストリンの含有量及び苦味価のみを調整することによって、製造される未発酵のビールテイスト飲料の泡持ちを付加的に向上させることができる。
【0042】
次に、本発明の実施形態に係る未発酵のビールテイスト飲料の泡持ち向上方法について説明する。
本実施形態に係る泡持ち向上方法は、苦味価が5.0以上である植物原料液に難消化性デキストリンを添加する工程を備えている。
植物原料液は、アルコールの濃度が1v/v%未満であるビールテイスト飲料を、酵母によるアルコール発酵を経ることなく製造する方法において、植物原料と水とを混合することによって調製される溶液である。混合される植物原料としては、一般のビールテイスト飲料の製造に用いられる植物由来の原料であれば特に制限されるものではないが、前記した穀物であることが好ましい。
難消化性デキストリンが添加される植物原料液の苦味価は、5.0以上、好ましくは5.0以上50.0以下、より好ましくは7.2以上50.0以下、さらに好ましくは10.0以上50.0以下である。このような植物原料液の苦味価は、植物原料液にイソ−α酸を含有させることによりあらかじめ調整してもよい。
難消化性デキストリンは、植物原料液を使用して製造される飲料における含有量が0.50w/v%以上、好ましくは0.50w/v%以上5.00w/v%以下、より好ましくは1.00w/v%以上3.00w/v%以下、さらに好ましくは2.00w/v%以上3.00w/v%以下となるように添加することが好ましい。
このような本実施形態に係る泡持ち向上方法によれば、泡持ちが向上した未発酵のビールテイスト飲料を容易に調製することができる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明の実施例を例示して、本発明についてより具体的に説明する。
【0044】
難消化性デキストリンの含有量及び苦味価が、未発酵のビールテイスト飲料の泡持ちに与える影響を、実施例に係る飲料を製造して評価した。
以下の試験において、難消化性デキストリンとしては、「パインファイバー」(登録商標)(松谷化学工業株式会社製)を用い、植物由来の原料としては、麦汁及び大豆ペプチドの少なくとも一方を使用した。麦汁は、粉砕された大麦麦芽と50℃の温水とを混合し、65℃に加温して保持することによって糖化した後、この糖化液から穀皮を除去し、試験に応じて、ホップを加えて煮沸して、又はホップを加えることなく調製した。
【0045】
また、試料の苦味価は、次の手順で算出した。
まず、試料をガス抜きして、約20℃に調温し、次いで、沈殿管に10mL採取し、0.5mLの6N塩酸、20mLの吸光分析用イソオクタン(2,2,4−トリメチルペンタン)及び2〜3個のガラス球を加えた。
続いて、沈殿管に蓋をして、20℃±1℃の下、130±5rpm(振幅2〜3cm)で15分間に亘って振とうを行った後、3000rpmで3分間に亘って遠心分離を行い、溶液を相分離させた。
その後、分離したイソオクタン層を光路長が10mmの石英セルに採取し、スリット幅が2mm以下の分光光度計を用いて波長275nmにおける吸光度を測定した。
この計測された吸光度に係数50を乗じた値を試料の苦味価とした。
【0046】
また、試料の泡持ちは、次の手順で計測したNIBEM値に基づいて評価した。
まず、試料を瓶詰めし、INPACK2000(HAFFMANS社製)を用いてガス圧を測定した。この試料を、約20℃に調温した後、標準グラスに注ぎ入れ、液面に形成された泡の層が降下する時間をNIBEM−T(HAFFMANS社製)を用いて計測し、各試料のNIBEM値を取得した。
【0047】
はじめに、麦汁を使用して実施形態に係る飲料を製造し、飲料中における難消化性デキストリンの含有量の増大に伴う泡持ちの向上の程度を評価した。
評価対象サンプルは、ホップを加えて煮沸した麦汁を使用して調製し、難消化性デキストリンの含有量が表1に示される濃度となるサンプル(No.1−1〜No.1−5に係るサンプル)をそれぞれ調製した。
なお、各サンプルは、500mL瓶に充填して、2.4kg/cm
2に加圧された炭酸ガス雰囲気下に3〜4日間に亘って静置することで発泡性を付与した。
得られた各サンプルにおける苦味価は、28.7であり、全窒素量(TN)は、32.6mg/100mL(タンパク量換算では、0.20g/100mL)であった。
【0048】
表1に、No.1−1〜No.1−5に係る各サンプルについて、計測されたNIBEM値を苦味価及びサンプルの組成と共に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、難消化性デキストリンの含有量が0.00w/v%であるNo.1−1に係るサンプルについては、NIBEM値は、237であった。
その一方で、難消化性デキストリンを、それぞれ所定濃度となるように混合したNo.1−2〜No.1−5に係るサンプルについては、NIBEM値は、難消化性デキストリンの混合量に応じてそれぞれ増加していた。
【0051】
以上の結果から、NIBEM値の増加は、難消化性デキストリンの混合量の増加と比例関係にあることが示唆され、未発酵のビールテイスト飲料中における難消化性デキストリンの含有量が増大すると、泡持ちが向上し得ることが認められた。
特に、難消化性デキストリンの含有量が0.50w/v%以上である場合においては、泡持ちの向上の程度が十分に認められた。
【0052】
次に、原料の組成を変えて実施形態に係る飲料を製造し、飲料中における難消化性デキストリンの含有量の増大に伴う泡持ちの向上の程度を評価した。
評価対象サンプルは、ホップを加えて煮沸した麦汁と、大豆ペプチドとを含有するように調製し、難消化性デキストリンの含有量が表2に示される濃度となるサンプル(No.2−1〜No.2−2に係るサンプル)をそれぞれ調製した。
なお、各サンプルは、500mL瓶に充填して、2.4kg/cm
2に加圧された炭酸ガス雰囲気下に3〜4日間に亘って静置することで発泡性を付与した。
得られた各サンプルにおける苦味価は、概算で7.2であり、全窒素量(TN)は、21.5mg/100mL(タンパク量換算では、0.13g/100mL)であった。
【0053】
表2に、No.2−1〜No.2−2に係る各サンプルについて、計測されたNIBEM値を苦味価及びサンプルの組成と共に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示すように、難消化性デキストリンの含有量が0.00w/v%であるNo.2−1に係るサンプルについては、NIBEM値は、210であった。
その一方で、難消化性デキストリンの含有量が1.00w/v%であるNo.2−2に係るサンプルについては、NIBEM値は、224に増加していた。
【0056】
以上の結果から、未発酵のビールテイスト飲料中における難消化性デキストリンの含有量が増大すると、未発酵のビールテイスト飲料の原料に依らず、泡持ちが向上し得ることが認められた。
【0057】
次に、飲料の苦味価の増大に伴う泡持ちの向上の程度を、難消化性デキストリンの存在下及び非存在下のそれぞれにおいて評価した。
評価対象サンプルは、ホップを加えていない麦汁を使用して調製し、イソ−α酸を混合して苦味価を調整することによって、難消化性デキストリンの含有量及び苦味価が表3に示される値となるサンプル(No.3−1〜No.3−10に係るサンプル)をそれぞれ調製した。
なお、各サンプルは、500mL瓶に充填して、2.4kg/cm
2に加圧された炭酸ガス雰囲気下に3〜4日間に亘って静置することで発泡性を付与した。
得られた各サンプルにおける全窒素量(TN)は、8.2mg/100mL(タンパク量換算では、0.05g/100mL)であった。
【0058】
表3に、No.3−1〜No.3−10に係る各サンプルについて、計測されたNIBEM値を苦味価及びサンプルの組成と共に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
表3に示すように、難消化性デキストリンの含有量が0.00w/v%であり且つ苦味価が0であるNo.3−1に係るサンプルについては、NIBEM値は、85であった。また、難消化性デキストリンの含有量が1.00w/v%であり且つ苦味価が0であるNo.3−6に係るサンプルについては、NIBEM値は、87であった。
一方、難消化性デキストリンの非存在下において苦味価を増大させたNo.3−2〜No.3−5に係る各サンプルでは、NIBEM値は、難消化性デキストリンの混合量に応じて一定程度の増加を示した。
これに対し、難消化性デキストリンの存在下において苦味価を増大させたNo.3−7〜No.3−10に係る各サンプルでは、NIBEM値は、難消化性デキストリンの混合量に応じて、難消化性デキストリンの非存在下において示した値をさらに上回る増加を示した。
【0061】
以上の結果から、NIBEM値の増加は、苦味価の増加と比例関係にあることが示唆され、未発酵のビールテイスト飲料において苦味価が増大すると、泡持ちが向上し得ることが認められた。
また、一般のビールテイスト飲料における苦味価の範囲、特に、苦味価が5.0以上である範囲においては、泡持ちの向上の程度が十分に認められた。
また、苦味価の増大に伴う泡持ちの向上は、難消化性デキストリンの含有量が1.00w/v%である場合において、より顕著であることが認められ、苦味価に関与する成分と難消化性デキストリンとが相乗効果を奏することが示唆された。
【0062】
次に、難消化性デキストリンの含有量が、飲料の泡持ちに与える影響を、未発酵のビールテイスト飲料とアルコール発酵を経て製造されたビールのそれぞれにおいて評価した。
評価対象サンプルは、未発酵のビールテイスト飲料については、アルコールの含有量が1v/v%未満であり、麦芽及びホップを使用した市販ビールテイスト飲料を用いて、難消化性デキストリンの含有量が表4に示される値となるサンプル(No.4−1〜No.4−2に係るサンプル)を調製し、アルコール発酵を経た飲料については、麦芽が100%の市販ビールを用いて、難消化性デキストリンの含有量が表4に示される値となるサンプル(No.4−3〜No.4−4に係るサンプル)を調製した。
【0063】
表4に、No.4−1〜No.4−4に係る各サンプルについて、計測されたNIBEM値を苦味価と共に示す。なお、「−」は未発酵のサンプル、「+」はアルコール発酵を経て製造されたサンプルを表している。
【0064】
【表4】
【0065】
表4に示すように、No.4−1〜No.4−4に係る各サンプルの苦味価は、No.3−1〜No.3−10に係るサンプルの評価で泡持ちの向上が認められた範囲にある値であり、未発酵のサンプル(No.4−1〜No.4−2に係るサンプル)においては、難消化性デキストリンの含有量が増大するに伴い、NIBEM値は増加を示した。
その一方で、アルコール発酵を経て製造されたサンプル(No.4−3〜No.4−4に係るサンプル)においては、難消化性デキストリンの含有量が増大しても、NIBEM値は有意な変化を示さなかった。
【0066】
以上の結果から、アルコール発酵を経て製造され、アルコールの含有量が1v/v%以上であるビールにおいては、飲料中における難消化性デキストリンの含有量が増大しても、泡持ちが向上しないことが認められた。
したがって、難消化性デキストリンの含有量の増大に伴う泡持ちの向上は、アルコールの含有量が1v/v%未満である未発酵のビールテイスト飲料における特有の効果であることが示唆された。
【0067】
次に、難消化デキストリンに代えてポリデキストロースを含有する未発酵のビールテイスト飲料を製造し、飲料中におけるポリデキストロースの含有量の増大に伴う泡持ちの向上の程度を評価した。
評価対象サンプルは、麦汁及び/又は大豆ペプチドを使用して、アルコール発酵を経ることなく、原料組成及びポリデキストロースの含有量が表5に示される値となるサンプル(No.5−1〜No.5−7に係るサンプル)をそれぞれ調製した。なお、ポリデキストロースとしては、「ライテスII」(登録商標)(ダニスコジャパン株式会社製)を用いた。
なお、各サンプルは、500mL瓶に充填して、2.4kg/cm
2に加圧された炭酸ガス雰囲気下に3〜4日間に亘って静置することで発泡性を付与した。
【0068】
表5に、No.5−1〜No.5−7に係る各サンプルについて、計測されたNIBEM値をサンプルの組成と共に示す。
【0069】
【表5】
【0070】
表5に示すように、それぞれ原料の組成が異なるNo.5−1〜No.5−5に係るサンプル及びNo.5−6〜No.5−7に係るサンプルのいずれの系列についても、サンプル中のポリデキストロースの含有量の増大に伴い、NIBEM値は、低下傾向を示した。
【0071】
以上の結果から、未発酵のビールテイスト飲料中におけるポリデキストロースの含有量が増大しても、泡持ちは向上しないことが認められ、未発酵のビールテイスト飲料における泡持ちを向上する作用は、難消化性デキストリンに特有の作用であることが示唆された。