【課題を解決するための手段】
【0004】
  本課題は、請求項1記載の特徴を有するエアーバッグ装置により解決され、請求項3記載の特徴を有するエアーバッグ装置により解決され、そして、請求項4の特徴を有するエアーバッグ装置により解決される。本発明の実施形態はその従属請求項において特定される。
【0005】
  従って、自動車のハンドル用エアーバッグ装置が供給され、そのエアーバッグ装置は、
―  自動車の乗員を保護するための膨張可能なエアーバッグを有し、
―  そのエアーバッグは、膨張し車内に備え付けられると、或る部分にくぼみを有し、その部分はハンドルの正面の位置で自動車の床を指し、身体部分の方向にエアーバッグの膨張を低減し、自動車乗員の腹部の下に広がり、そうして、自動車の乗員がエアーバッグに衝突する間、身体部分にかかる負荷が最小化されるようになる。
【0006】
  特に、そのくぼみは、自動車の衝突の間、保護されるべき自動車乗員の腹部が、少なくとも部分的にそのくぼみの中に移動するように位置付けられ、そうして、この敏感な身体部分への負荷が低減されるようになる。しかし、自動車乗員の胸部と頭部範囲は、そのくぼみの上方のエアーバッグの一部に衝突することができ、そうして、エアーバッグは、良好な制止能力と腹部範囲への低減された負荷とを同時に与えるようになる。
【0007】
  そのくぼみは(ハンドルの正面の位置に関して)、ステアリング軸と垂直自動車軸(Z軸)とによって張られる平面がそのくぼみを通って(特に、くぼみの底を通って)わたるように位置付けられ、自動車垂直軸はハンドル軸を横切ることが考慮される。そして、そのくぼみは、ハンドルに関して“6時の位置”に配置され、即ち、横方向と長手方向の自動車方向とによって張られる平面(即ち水平面)よりも完全に下に位置し、その平面はハンドルの中心を通る。
【0008】
  特に、くぼみは、ステアリング軸と自動車垂直軸とによって張られる平面に関して対称的に配置される。自動車の乗員が、自動車シート上の通常の座席位置にあるとき、ステアリング軸と自動車乗員の背骨が位置する平面はそのくぼみを通り、そのくぼみは、例えば、自動車乗員に関して中央に配置される。
【0009】
  さらに、くぼみは、自動車シートの座席エリアに面し、即ち、自動車の乗員が通常の座席位置にいるとき、その乗員の大腿部に向く。また、エアーバッグとくぼみは、そのくぼみの底部分が少なくとも部分的に広がり、自動車シートの座席エリアに少なくとも実質的に平行に広がるように構成されることも考えられる。
【0010】
  そのくぼみにより、膨張したエアーバッグは、第1の中間部を含み、その第1の中間部は、ハンドルのハンドルリム平面に平行に渡る平面に沿って広がり、又は、自動車垂直方向で見て、その第1部分の横に隣接するエアーバッグの第2部分よりも小さい、自動車の床に向かう広がりを有する。特に、エアーバッグは、2つの側面部を含み、中間部の異なる側に配置され、その中間部よりも大きな、自動車の床に向かう広がりを有する。特に、中間部の外側の自動車の床に面する部分は、くぼみの底を形成し、一方、中間部の横に隣接するエアーバッグの他の部分は、くぼみの側壁を形成する。
【0011】
  例えば、くぼみは、その底が、垂直自動車方向でみて、実質的にハンドルのハンドルリムの下側のレベルに位置するよう構成される。ハンドルリムの“下側”は、自動車の床から最も近い距離のハンドルリムの部分である。しかし、そのくぼみの横に隣接するエアーバッグの範囲は、ハンドルリムを越え、自動車の床に向かって広がり、そして、ハンドルリムを安全に覆い、一方、そのくぼみは、自動車の乗員の腹部が遅れてエアーバッグに衝突するか、又は、全く衝突しないという効果を有する。
【0012】
  しかし、そのくぼみは、より深く形成することも考えられ、即ち、その底部は、ハンドルの中心を通って伸びる水平面と、ハンドルリムの下側との間に位置する。さらに、もちろん、そのくぼみは浅く伸びることも考えられ、即ち、そのくぼみ底部は、自動車垂直方向でみて、ハンドルリムの外側に位置し、即ち、ハンドルリムよりも小さい床までの距離を有する。
【0013】
  他の側面によれば、本発明は、自動車のハンドル用エアーバッグ装置に関連し、
―  自動車の乗員を保護するための膨張可能なエアーバッグを含み、
―  そのエアーバッグは、膨張し車内に取り付けられるとき、自動車の床に面する側面を含み、その側面は、自動車長手方向と横の自動車方向とによって張られる平面に実質的に平行に広がる。
【0014】
  例えば、本発明の第2側面に従ったエアーバッグは、その下側(即ち、自動車の床に面する側)が少なくとも実質的に平坦に形成され、特に、運転席の座席エリアに少なくとも実質的に平行に伸びるよう構成される。特に、エアーバッグは、自動車の床に面する側面が、自動車長手方向と自動車垂直方向とによって張られる平面(即ち、水平面)に平行に伸び、そして、長手方向自動車方向でエアーバッグの完全な膨張を実質的に越えて伸びるよう構成される。
【0015】
  本発明の第3の側面によれば、エアーバッグは、膨張し車内に取り付けられるとき、自動車垂直方向でみて自動車の床に向かって、実質的に、ハンドルのハンドルリムを越えて広がることはない。例えば、エアーバッグの下側(自動車の床に面する側)は、垂直方向にみたとき、少なくとも実質的にハンドルリムの下側のレベルで広がる。ハンドルリムの下側は、上述したように、ハンドルリムのセクションであり、自動車の床までの距離が最も小さい。しかし、エアーバッグの下側がハンドルの中心とハンドルリムの下側との間に位置することを除外しない。
【0016】
  特に、エアーバッグの下側は平坦に広がり、即ち、例えば、水平に、又は、水平に対して斜めに方向付けられる平面に沿って広がる。
【0017】
  本発明の第2と第3の側面によれば、エアーバッグはくぼみを有さず、しかし、その下側の外形により、エアーバッグは下向きに(自動車の床に向かって)短縮され(平坦化され)、それにより、小さな負荷、特に、自動車の乗員の腹部への小さな負荷が達成される。というのも、この身体部分は、自動車の乗員の上部身体部より遅く、エアーバッグに衝突するか、又は、全く衝突しないからである。
【0018】
  エアーバッグが、“実質的に”ハンドルのハンドルリムを越えて広がらないという表現は、膨張したエアーバッグがある程度ハンドルリムを越えて突出してもよいことを意味することに留意する。例えば、エアーバッグは、ハンドルの半径の20%まで、ハンドルリムを越えて下向きに突出することができる(自動車垂直方向で測定して)。
【0019】
  特に、エアーバッグ(本発明の第1、第2、又は第3の側面に従って)は、膨張した状態で、ステアリング軸と自動車横方向とによって張られる平面の上方に、その平面の下方よりも大きなボリュームを有し、ハンドルの中心を通って広がるように構成される。
【0020】
  本発明の他の実施形態によれば(第1、第2、又は第3の側面に従って)、エアーバッグの一部は、膨張し車内に取り付けられるとき、自動車乗員の胸部、特に胸骨に面し、エアーバッグに衝突する間、自動車乗員の胸部にかかる負荷を最小化するため、胸部くぼみを有する。その胸部くぼみのため、膨張状態のエアーバッグは、自動車長手方向でみて(X軸)、胸部くぼみの上方よりも小さい胸部くぼみの範囲の広がりを有する。これは、自動車の乗員がエアーバッグに衝突する間、特に、その乗員の頭部が効果的に制止され、一方で、胸部、特に胸骨の範囲にかかる負荷は小さいという効果を有する。なぜなら、保護される乗員の上部身体部分にかかる力は、胸部くぼみを越えて突き出る隣接エアーバッグ範囲を介してつくられるからである。従って、胸部より下に位置する身体部分の負荷を最小化する目的を持つ(下部)くぼみに加えて、エアーバッグは、別のくぼみ(胸部くぼみ)を有し、そのくぼみは胸部の高い負荷を緩和する。
【0021】
  エアーバッグ範囲は、自動車横方向から見て、胸部くぼみの底部の横に配置されてもよく、即ち、エアーバッグは、胸部くぼみの範囲よりも、自動車長手方向で、その胸部くぼみの側面と上方に、より大きい広がりを有する。胸部くぼみは、下側で(自動車の床に向かって)、自動車長手方向でより大きな広がりを有する別のエアーバッグ範囲によって区切られることも可能である。
【0022】
  例えば、胸部くぼみの底部は、平坦に形成される。しかし、これは、必要ではない。むしろ、胸部くぼみの底部は、少なくとも実質的にライン状に形成され、即ち、胸部くぼみは、溝の形状を有し、例えば、ハンドルの前方運転位置に関して、自動車垂直方向と平行に方向づけられることが考慮される。
【0023】
  エアーバッグは、胸部くぼみが配置されるエアーバッグの部分(横の部分)が、横と垂直の自動車方向によって張られる平面に少なくとも実質的に平行に広がるよう構成される。
【0024】
  本発明の他の実施形態によれば、胸部くぼみは、エアーバッグに接続される少なくとも1つのテサーによって生成され、そのテサーはエアーバッグの内部に伸び、そのテサーは、エアーバッグの膨張状態で、ハンドルに面するエアーバッグの部分と、ハンドルから離れているエアーバッグの部分との間に伸びる。特に、そのテサーの長さは、自動車長手方向で、エアーバッグの広がりを低減するよう選ばれ、そうして、胸部くぼみが生成される。
【0025】
  ハンドルから離れている端部で、テサーの幅を使用し、胸部くぼみは寸法が決められる。例えば、自動車垂直方向での広がりである。ハンドルに面するテサーの端部は、ハンドルから離れているテサーの端部よりも小さく、それによって、一方では、エアーバッグの入口開口部(下の説明を参照)の範囲内でテサーの接続が可能であり、他方では、充分に大きい胸部くぼみが生成され得る。
【0026】
  特に、エアーバッグは、入口開口部を含み、その開口部を通して、ガス発生器のガスがエアーバッグに流入する。テサーは、ハンドル側で、入口開口部の範囲で、エアーバッグに接続されることができ、即ち、ハンドルに面する端部で接続される。さらには、入口開口部のリム部は、クランプ(例えば、エアーバッグ内部に位置するディフューザ、又は、取り付けリングで)を介して、エアーバッグ装置の一部(例えば、モジュールハウジングやガス発生器キャリア)に固定され、テサーに隣接する端部の接続は、エアーバッグのこの固定リム部内で実現される。それにより、エアーバッグが開く間、テサーの衝突の力は、そのリム部を介して伝達される。ハンドルから離れているテサーの終端は、他の部分で、エアーバッグの内側に接続される。
【0027】
  エアーバッグは、特にはエアーバッグ素材(布地)から作製される点に留意する。例えば、エアーバッグは、エアーバッグ素材の2つのエアーバッグ層(プレカット)から作製され、その2つのエアーバッグ層は、円周のシームに沿って、相互に接続される。例えば、テサーは、ハンドルに隣接した端部によって第1エアーバッグ層に接続され、そして、他の端部によって第2エアーバッグ層に接続される。例えば、テサーはエアーバッグ素材によって作製されてもよい。
【0028】
  テサーのエアーバッグへの接続は、例えば、縫合、溶接、及び/又は、接着によって実現され、特には、ハンドルに隣接するテサーの端部のエアーバッグへの接続は、ライン状、即ち、接続ラインに沿って、例えば、縫合、溶接、又は、接着シームを介して行われ、特に、その接続は直線的に伸びる。
【0029】
  例えば、テサーが少なくとも部分的に伸びる平面は、ステアリング軸と垂直自動車方向とによって張られる平面に対して、斜めに方向付けられる。特に、テサーの方向付けは、接続ラインの方向付けによって決定され、その接続ラインに沿って、ハンドルから離れている端部は、エアーバッグに接続される。例えば、この接続ラインは、そのテサーが或る平面に沿って(少なくともハンドルから離れている端部の範囲で)伸びるように方向づけられ、その平面は、エアーバッグの(下部)くぼみを通るように方向付けられる。別言すれば、テサーは下部くぼみに向かって方向づけられ、その下部くぼみは、自動車乗員の下部身体範囲にかかる負荷を低減する目的を有する。この方向づけにより、下部くぼみの幾何形状は、テサーを介して影響をうけ、特に、下部くぼみの深さは、テサーの方向に依存してもよい。
【0030】
  本発明の他の実施形態によれば、胸部くぼみが、少なくとも2つのテサーによって、又は、少なくとも1つのテサーの2つのセクションによって生成される。特に、そのテサー又はそのセクションは、エアーバッグの膨張状態で、ステアリング軸と自動車垂直軸とによって張られる平面の異なる側に配置される。
【0031】
  胸部くぼみが単一のテサーの2つのセクションによって形成されるとき、その2つのセクションのハンドルから離れている端部は、例えば、ねじれ又は曲げを介して互いに一体的に接続される。
【0032】
  別言すれば、テサーは、エアーバッグ内に配置され、エアーバッグに接続される前に折り畳まれ、そうして、ねじれ又は曲げ、2つのセクション(特に、同じ長さを有する)が作られるようになる。従って、テサーは、特にねじれ又は曲げの範囲で、例えば、そのねじれ又は曲げに続くラインに沿って、エアーバッグに接続される。
【0033】
  胸部くぼみは、2つのテサー又は1つのテサーの2つのセクションによって排他的に形成されることが考慮される。しかし、2つより多いテサーが供給されることも可能であり、例えば、少なくとも2つのテサー(又は、1つのテサーの2つのセクション)が、ステアリング軸と自動車垂直軸とによって張られる平面の両側に供給され、それらのテサーは、(自動車垂直方向で)互いに或る距離を有する。
【0034】
  特に、テサー又は単一テサーのセクションは、ステアリング軸と自動車垂直方向とによって張られる平面に関して対称に配置され、即ち、ステアリング軸と自動車垂直軸方向とによって張られる平面は、テサーに関して対称面を表す。また、エアーバッグの下部くぼみ、及び/又は、胸部くぼみは、この対称面に関して対称的に形成されることも可能である。例えば、完全なエアーバッグは、ステアリング軸と自動車垂直方向とによって張られる平面に関して、少なくとも実質的に対称的に形成されることができる。
【0035】
  本発明の他の実施形態によれば、エアーバッグは、補強層を含み、その補強層を介して、ハンドルから離れているテサーの端部がエアーバッグに接続される。特に、その補強層はエアーバッグを保護し、特に、エアーバッグの膨張開始時の高熱から保護し、そして、エアーバッグの更なる膨張の間の高い機械的力から保護する。補強層がテサーと統合的に形成されることは考慮可能である。例えば、胸部くぼみは、上述したように、統合形成されたテサーの2つのセクションによって実現されることが可能であり、補強層はテサーに一体的に接続されてもよく、即ち、テサーの2つのセクションは、他の胸部くぼみを形成し、その補強層は1つの同じプレカットから形成される。
【0036】
  本発明は、また、本発明に係るエアーバッグ装置を含むハンドルに関連する。
  
なお、ハンドルに面するテサーの端部が、ハンドルから離れている端部よりも細くなり得る。
  また、テサーが広がる平面は、ステアリング軸と自動車垂直方向とによって張られる平面に関して、部分的に斜めに方向づけられ得る。
  テサーは或る平面に少なくとも部分的に沿って広がることができ、平面はくぼみを通るように方向づけられる。
  胸部くぼみは、少なくとも2つのテサー、又は、少なくとも1つのテサーの2つの部分によって生成されることができ、エアーバッグの膨張状態で、ステアリング軸と自動車垂直方向とによって張られる平面の異なる側に配置される。
  ハンドルから離れているテサーの2つの部分の端部が、ねじり又は曲げを介して、互いに統合的に接続され得る、そして、前記テサーは、ねじり又は曲げの範囲で前記エアーバッグに接続され得る。
  少なくとも2つのテサーは、平面の各側に配置され得る。
  テサー、又は、テサーの部分は、ステアリング軸と自動車垂直方向とによって張られる平面に関して、対称に配置され得る。