(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キノンジアジド化合物が、芳香族環を1〜3個有する芳香族ポリヒドロキシ化合物と、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸および/または1,2−ナフキノンジアジド−4−スルホン酸とのエステルである、請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルまたはメタクリロイルを意味する。
「単量体」とは、重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物を意味する。
「(共)重合体」とは、単独重合体または共重合体を意味する。
【0021】
<感光性樹脂組成物>
本発明の感光性樹脂組成物は、ビニル系(共)重合体(I)、ビニル系共重合体(II)、感光性物質(III)および化合物(IV)を含み、さらに必要に応じて他の成分を含む。
【0022】
(ビニル系(共)重合体(I))
ビニル系(共)重合体(I)は、フェノール性の水酸基を有するビニル系単量体(a)(以下、単に単量体(a)とも記す。)を含む単量体混合物(α)を重合して得られた重合体であり、必要に応じてさらにカルボキシル基含有ビニル系単量体(c)(以下、単に単量体(c)とも記す。)を含む単量体混合物(α)を重合して得られた重合体である。
【0023】
単量体(a)は、1個以上の芳香族環を有し、芳香族環の水素原子の1個以上を水酸基に置換した単量体である。
単量体(a)としては、下記式(6)で表される単量体(a1)、下記式(7)で表される単量体(a2)、または下記式(8)で表される単量体(a3)が好ましい。
【0025】
R
11〜R
15は、各々独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基または炭素数1〜24のアラルキル基であり、R
11〜R
15のうち少なくとも1つが水酸基である。水酸基を除くR
11〜R
15としては、水素原子、炭素数1〜24のアルキル基が好ましく、単量体(a)の入手しやすさの点から、水素原子がより好ましい。
Zは、酸素原子またはNHである。
【0026】
単量体(a1)としては、入手しやすさの点から、下記式(6−1)で表される単量体(a1−1)または下記式(6−2)で表される単量体(a1−2)が好ましい。
また、単量体(a2)としては、入手しやすさの点から、下記式(7−1)で表される単量体(a2−1)が好ましい。
また、単量体(a3)としては、入手しやすさの点から、下記式(8−1)で表される単量体(a3−1)が好ましい。
【0028】
単量体混合物(α)における単量体(a)の割合は、単量体の合計の仕込み量100モル%のうち、5〜100モル%が好ましく、10〜95モル%がより好ましく、20〜90モル%がさらに好ましく、30〜80モル%が特に好ましい。単量体(a)の割合が5モル%以上であれば、レジスト膜の解像性が十分に高くなり、またレジスト膜の未露光部の膜減りが十分に抑えられる。解像性を向上させる点では90モル%以下が好ましい。
【0029】
単量体(c)は、解像性の向上のために必要に応じて用いられる。
単量体(c)としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0030】
単量体混合物(α)における単量体(c)の割合は、単量体の合計の仕込み量100モル%のうち、0〜30モル%が好ましく、5〜30モル%がより好ましく、10〜30モル%がさらに好ましい。単量体(c)の割合が5モル%以上であれば、レジスト膜の解像性が十分に高くなる。単量体(c)の割合が30モル%以下であれば、レジスト膜の未露光部の膜減りが十分に抑えられ、またレジスト膜のクラックが十分に抑えられる。
【0031】
単量体混合物(α)は、必要に応じてさらに単量体(a)および単量体(c)と共重合可能な他のビニル系単量体を含んでいてもよい。このようなビニル系単量体としては、例えばアクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、スチレン等のスチレン系単量体が挙げられる。
単量体混合物(α)における他のビニル系単量体の割合は、単量体の合計の仕込み量100モル%のうち、単量体(a)および単量体(c)を除く残部である。
【0032】
ビニル系(共)重合体(I)の質量平均分子量は、特に限定されるものではなく、5,000〜80,0000が好ましく、6,000〜30,000がより好ましく、7,000〜15,000が最も好ましい。質量平均分子量が80,000以下であれば、十分な解像度を得ることができる。質量平均分子量が5,000以上であれば、レジスト膜の耐久性を保持できる。
ビニル系(共)重合体(I)の質量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の質量平均分子量である。
【0033】
(ビニル系共重合体(II))
ビニル系共重合体(II)は、下記式(1)で表されるビニル系単量体(b)(以下、単に単量体(b)とも記す。)および単量体(c)を含む単量体混合物(β)を重合して得られた、質量平均分子量が15,000〜120,000の重合体である。
【0035】
R
1は、水素原子またはメチル基であり、R
2は、炭素数1〜4の炭化水素基であり、R
3は、水素原子またはメチル基であり、kは、1〜90の整数である。
【0036】
単量体(b)としては、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸ポリエチレングリコール(ポリエチレングリコールの繰り返し単位(式(1)におけるk)が1〜90)、メタクリル酸ポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコールの繰り返し単位(式(1)におけるk)が1〜90)、アクリル酸ポリエチレングリコール(ポリエチレングリコールの繰り返し単位(式(1)におけるk)が1〜90)、アクリル酸ポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコールの繰り返し単位(式(1)におけるk)が1〜90)、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(ポリエチレングリコールの繰り返し単位(式(1)におけるk)が1〜90)、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール(ポリエチレングリコールの繰り返し単位(式(1)におけるk)が1〜90)等が挙げられる。中でもビニル系(共)重合体(I)との相溶性や重合性の点から、一般式(1)において、R
3がメチル基であり、かつkが1であるもの、又はR
3が水素原子あるいはメチル基であり、かつkが2〜90の整数であるものが好ましく、R
3がメチル基であり、かつkが1であるものがより好ましく、R
1が水素原子であり、R
2がエチル基であり、R
3メチル基であり、かつkが1であるもの、すなわちアクリル酸2−メトキシエチルが最も好ましい。
【0037】
単量体混合物(β)における単量体(b)の割合は、単量体の合計の仕込み量100モル%のうち、5〜30モル%が好ましく、7〜20モル%がより好ましく、9〜15モル%がさらに好ましい。単量体(b)の割合が5モル%以上であれば、レジスト膜に十分な柔軟性を持たせることができる。単量体(b)の割合が30モル%以下であれば、現像時の膜減り量を抑えることができる。
【0038】
単量体(c)は、解像性の向上のために用いられる。
単量体(c)としては、上述のビニル系(共)重合体(I)において例示したものと同様なものが挙げられる。
【0039】
単量体混合物(β)における単量体(c)の割合は、単量体の合計の仕込み量100モル%のうち、3〜30モル%が好ましく、5〜30モル%がより好ましく、10〜30モル%がさらに好ましい。単量体(c)の割合が5モル%以上であれば、レジスト膜の解像性が十分に高くなる。単量体(c)の割合が30モル%以下であれば、レジスト膜の未露光部の膜減りが十分に抑えられ、またレジスト膜のクラックが十分に抑えられる。
【0040】
単量体混合物(β)は、必要に応じてさらに単量体(b)および単量体(c)と共重合可能な他のビニル系単量体を含んでいてもよい。ただし、単量体(a)は含まない。このようなビニル系単量体としては、例えばアクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、およびスチレン等のスチレン系単量体が挙げられる。
単量体混合物(β)における他のビニル系単量体の割合は、単量体の合計の仕込み量100モル%のうち、単量体(b)および単量体(c)を除く残部である。
【0041】
ビニル系共重合体(II)の質量平均分子量は、15,000〜120,000であり、20,000〜100,000が好ましく、40,000〜80,000がより好ましい。質量平均分子量が15,000以上であれば、レジスト膜の耐エッチング性、耐メッキ性が十分に高くなる。質量平均分子量が120,000以下であれば、レジスト液とした際の他の成分との相溶性、および現像性が良好となる。
ビニル系共重合体(II)の質量平均分子量は、GPCによって測定されるポリスチレン換算の質量平均分子量である。
【0042】
(重合体の製造)
ビニル系(共)重合体(I)およびビニル系共重合体(II)は、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法で製造できる。重合法としては、乳化剤等の不純物の混入が少ない点から、溶液重合法または懸濁重合法が好ましい。
【0043】
例えば、ビニル系(共)重合体(I)およびビニル系共重合体(II)は、重合容器中にて60〜120℃程度に加温した有機溶媒存在下に、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のラジカル重合開始剤を混合溶解した単量体混合物を、数時間掛けて滴下し、重合を進行させる溶液重合法等、公知のラジカル重合法等によって単量体混合物を重合させることによって得ることができる。各単量体は混合して重合容器に供給して重合してもよいし、それぞれ単独で重合容器に供給してもよいし、いずれか2種の混合物ともう1種を別々に供給してもよい。
【0044】
(重合体の比率)
ビニル系(共)重合体(I)とビニル系共重合体(II)の合計100質量%中、ビニル系(共)重合体(I)とビニル系共重合体(II)の含有割合(質量比)は、20/80〜95/5が好ましく、50/50〜90/10がより好ましい。ビニル系(共)重合体(I)が20質量%以上、ビニル系共重合体(II)が80質量%以下であれば、レジスト膜の感度、解像性を損なわず、未露光部の膜減りが十分に抑えられる。ビニル系(共)重合体(I)が95質量%以下、ビニル系共重合体(II)が5質量%以上であれば、レジスト膜のクラックが十分に抑えられる。
【0045】
(感光性物質(III))
感光性物質(III)としては、公知の1,2−キノンジアジド−4−スルホン酸エステル化合物、1,2−キノンジアジド−5−スルホン酸エステル化合物、1,2−キノンジアジド−6−スルホン酸エステル化合物、1,2−キノンジアジド−7−スルホン酸エステル化合物、1,2−キノンジアジド−8−スルホン酸エステル化合物、ビスアジド化合物、ジアゾジスルホン系化合物、トリフェニルスルホニウム系化合物、ヨードニウム系化合物等が挙げられる。具体的には、トリヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類、テトラヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類、ペンタヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類、ヘキサヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類、(ポリヒドロキシ)アルカンの1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類等が挙げられる。
【0046】
感光性物質(III)としては、キノンジアジド化合物が好ましく、レジスト膜の感度、解像性の点から、芳香族環を1〜3個有する芳香族ポリヒドロキシ化合物と、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸および1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とのエステルが好ましく、下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物または下記式(5)で表される化合物と、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸および1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とのエステルが特に好ましい。
【0048】
感光性物質(III)の含有割合は、ビニル系(共)重合体(I)およびビニル系共重合体(II)の合計100質量部に対して、5〜70質量部が好ましく、5〜60質量部がより好ましく、5〜15質量部がさらに好ましい。感光性物質(III)の含有割合が5質量部以上であれば、レジスト膜のクラックが十分に抑えられる。感光性物質(III)の含有割合が70質量部以下であれば、レジスト膜の解像性が十分に高くなる。
【0049】
(化合物(IV))
化合物(IV)は、下記式(2)で表わされる化合物であり、レジスト膜のアルカリ溶解速度を向上させ、その結果、レジスト膜の解像性を向上させる成分である。
【0051】
Xは、炭素数1〜6の環状でない炭化水素基であり、レジスト膜の解像性の点から、炭素数1〜3のアルカントリイル基が好ましい。
lおよびmは、それぞれ1〜3の整数であり、レジスト膜の解像性の点から、1または2が好ましい。
nは、1または2であり、レジスト膜の解像性の点から、1が好ましい。
pおよびqは、それぞれ0または1であり、レジスト膜の解像性の点から、0が好ましい。
【0052】
化合物(IV)は、例えば、以下の方法によって製造できる。
下記式(2−a)(式中、l、pは上記と同じ意味を有する。)で示される化合物およびオキシ塩化リンを、アミド類(例えばN,N−ジメチルホルムアミド等)中で反応(ビルスマイヤー反応)させる。ついで、得られた反応混合物にシアン化ナトリウムを反応させた後、この反応混合物を酸またはアルカリの存在下で加水分解して下記式(2−b)(式中、l、n、p、Xは上記と同じ意味を有する。)で示される化合物を得る。ついで、この化合物と下記式(2−c)(式中、m、qは上記と同じ意味を有する。)で示される化合物とを、酸性触媒(例えば塩酸等)の存在下で縮合させる。その結果、化合物(IV)が得られる。
【0054】
化合物(IV)としては、レジスト膜の解像性の点から、下記式(2−1)で表される化合物または下記式(2−2)で表される化合物が特に好ましい。
【0056】
化合物(IV)の含有割合は、ビニル系(共)重合体(I)およびビニル系共重合体(II)の合計100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、1〜8質量部がより好ましく、2〜6質量部がさらに好ましい。化合物(IV)の含有割合が0.5質量部以上であれば、レジスト膜のアルカリ溶解速度が十分に高くなる。化合物(IV)の含有割合が10質量部以下であれば、レジスト膜の未露光部の膜減りが十分に抑えられる。
【0057】
(他の成分)
他の成分としては、ビニル系(共)重合体(I)およびビニル系共重合体(II)以外のアルカリ可溶性樹脂、レベリング剤、保存安定剤、可塑剤、吸光剤、架橋剤、接着助剤等が挙げられる。
アルカリ可溶性樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体等が挙げられる。
他の成分の含有割合は、感光性樹脂組成物の固形分100質量%中、0〜30質量%が好ましい。
【0058】
(ドライフィルム)
本発明の感光性樹脂組成物は、通常、ドライフィルム化して用いる。
ドライフィルムは、例えば、支持フィルムの表面に後述のレジスト液を塗布し、乾燥させてレジスト膜を形成することによって製造される。
レジスト膜の厚さは、ドライフィルムとしての実用性を考慮すると、3μm以上が好ましい。
【0059】
支持フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。コストの点およびドライフィルムの特性の点から、PETが好ましい。
【0060】
(レジスト液)
本発明の感光性樹脂組成物は、溶媒に溶解したレジスト液の状態で用いてもよい。レジスト液は、例えば、ビニル系(共)重合体(I)、ビニル系共重合体(II)、感光性物質(III)、化合物(IV)、および溶媒を混合する方法;懸濁重合法または溶液重合法で得られたビニル系(共)重合体(I)、およびビニル系共重合体(II)を含む溶液に、感光性物質(III)、化合物(IV)を添加する方法等によって調製される。
【0061】
溶媒としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(以下、MEKと記す。)、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン等の直鎖状もしくは分岐状ケトン;シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状ケトン等が挙げられる。
プロピレングリコールモノアルキルアセテート類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと記す。)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
プロピレングリコールモノアルキルエーテル類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
エチレングリコールモノアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
ジエチレングリコールアルキルエーテル類としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
エステル類としては、酢酸エチル、乳酸エチル等が挙げられる。
アルコール類としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、1−オクタノール等が挙げられる。
炭素数5〜11の脂肪族炭化水素系溶媒としては、ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジブチルブタン、2,3−ジブチルブタン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、n−ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、n−デカン、n−ドデカン等が挙げられる。
その他の化合物としては、1,4−ジオキサン、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0062】
前記溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒としては、安全性の点、汎用的に用いられている点から、アセトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、MEK、PGMEA、乳酸エチル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等が好ましい。
【0063】
レジスト液の固形分濃度は、レジスト液の粘度の点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。レジスト液の固形分濃度は、ビニル系(共)重合体(I)、およびビニル系共重合体(II)の生産性の点から、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。
【0064】
(作用効果)
以上説明した本発明の感光性樹脂組成物は、特定のビニル系(共)重合体(I)および特定のビニル系共重合体(II)を含んでいるため、クラックが発生しにくいレジスト膜を形成できる。また、感光性物質(III)および特定の化合物(IV)を含んでいるため、レジスト膜の解像性がさらに良好となる。
一方、特許文献1の感光性樹脂組成物は、ビニル系重合体が特定の単量体(b)からなる構成単位を含まないため、ビニル系重合体が剛直で柔軟性に欠け、また現像液への溶解性が不十分であり、これを含むレジスト膜のクラックの抑制と解像性の両立が十分ではない。
【0065】
<パターン形成方法>
本発明のパターン形成方法は、下記の工程を有する方法である。
(A)感光性樹脂組成物からなるレジスト膜を基材表面に形成する工程。
(B)レジスト膜を露光して潜像を形成する工程。
(C)潜像が形成されたレジスト膜を、アルカリ性の現像液で現像処理してレジストパターンを形成する工程。
(D)レジストのない部分に加工を施し、所望のパターンを基材表面に形成する工程。
【0066】
(工程(A))
上述のレジスト液を用いる場合、パターンを形成する基材の表面に、レジスト液をスピナー、コーター等により塗布、乾燥し、基材表面にレジスト膜を形成する。
上述のドライフィルムを用いる場合、パターンを形成する基材とレジスト膜とが接するように、基材の表面にドライフィルムをラミネートする。
【0067】
(工程(B))
露光方法としては、紫外線露光法、可視光露光法等が挙げられる。
露光を選択的に行う方法としては、フォトマスクを用いる方法、レーザー光を用いた走査露光法が挙げられる。フォトマスクを用いる場合の露光方法としては、コンタクト露光法、オフコンタクト露光法のいずれも使用可能である。
上述のドライフィルムを用いた場合、支持フィルム越しにレジスト膜を露光して潜像を形成した後、支持フィルムを剥離する。
【0068】
(工程(C))
現像液としては、アルカリ類の水溶液が挙げられる。
アルカリ類としては、無機アルカリ類(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等)、第一アミン類(エチルアミン、n−プロピルアミン等)、第二アミン類(ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等)、第三アミン類(トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等)、アルコールアミン類(ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、第四級アンモニウム塩(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド等)、環状アミン類(ピロール、ピペリジン等)等が挙げられる。
【0069】
アルカリ類の水溶液には、アルコール類、界面活性剤、芳香族水酸基含有化合物等を適当量添加してもよい。
現像液としては、通常のプリント配線板における回路形成プロセスと同じ工程を利用できることから、1質量%炭酸ナトリウム水溶液が特に好ましい。
【0070】
(工程(D))
加工方法としては、公知のエッチング、メッキ等が挙げられる。
【0071】
<プリント配線板>
本発明の感光性樹脂組成物は、COF;ビルドアップ工法による多層プリント配線板;タッチパネルセンサ回路、タブレット端末等に用いられる引出配線等における回路形成プロセスにおけるレジストとして有用である。
本発明のプリント配線板は、本発明の感光性樹脂組成物を用いて製造したものである。具体的には、基材(絶縁板、シート等)上に導体の配線を形成したものである。これらに電子部品を実装し、目標とする電子回路としての機能を持たせる。
【0072】
<プリント配線板の製造方法>
本発明のプリント配線板の製造方法は、本発明の感光性樹脂組成物を用いる方法である。具体的には、本発明のパターン形成方法によってレジストパターンが形成された回路形成用基材をエッチングまたはメッキして配線を形成し、必要に応じてさらに電子部品を実装する方法である。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例における評価方法は、下記の通りである。
【0074】
(質量平均分子量)
東ソー社製のGPCを用いて、ビニル系重合体の質量平均分子量(Mw)を測定した。
前記測定は、分離カラムとして昭和電工社製、Shodex GPC K−805L(商品名)を3本直列にしたものを用い、溶媒としてテトラヒドロフラン(流量:1.0mL/分)を用い、検出器として示差屈折計を用い、標準ポリマーとしてポリスチレンを用い、測定温度40℃、注入量0.1mLの条件で行った。
【0075】
(表面状態評価)
JIS K 5600−5−1:塗料一般試験方法、耐屈曲性(円筒形マンドレル法)を参考にして、ドライフィルムを、直径2mmの円筒の外周に沿って折り曲げ、クラックの発生を目視にて観察し、下記の基準で評価した。
○:クラックが発生しない。
×:クラックが確認された。
【0076】
(解像性)
レジスト膜を、10μmのラインアンドスペースパターンを形成するように超高圧水銀灯で露光し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液(pH約11.6)にて2分間現像を行った後、パターン形状を電子顕微鏡にて観察し、下記の基準で評価した。
◎:露光部が完全に溶解している。
○:パターンのエッジ部分に若干の残渣が残る。
△:露光部に若干の残渣が残る。
×:露光部に残渣が多く残る。
【0077】
(製造例1)
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、MEK40質量部を入れた。フラスコ内を攪拌しながら内温を80℃に上げた。
その後、下記の化合物を混合した滴下溶液を、滴下漏斗を用いて6時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度で1時間保持した。
前記式(7−1)で表される単量体(a2−1)(パラヒドロキシスチレン)40モル%、
メタクリル酸20モル%、
メタクリル酸メチル15モル%、
スチレン10モル%、
アクリル酸エチル15モル%、
前記単量体の合計100質量部に対して7質量部の重合開始剤(大塚化学社製、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル)、および
MEK100質量部。
【0078】
その後、さらに、フラスコ内溶液に、MEK10質量部および2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル1質量部を混合した滴下溶液を60分間かけて滴下した。さらに、フラスコ内溶液を80℃で3時間保持し、ビニル系共重合体(I−1)溶液を得た。
【0079】
(製造例2、3)
単量体の仕込み量を表1に示す量に変更した以外は、製造例1と同様の操作でビニル系共重合体(I−2)溶液およびビニル系共重合体(I−3)溶液を得た。
【0080】
(製造例4)
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、MEK50質量部を入れた。フラスコ内を攪拌しながら内温を85℃に上げた。
その後、下記の化合物を混合した滴下溶液を、滴下漏斗を用いて4時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに85℃の温度で1時間保持した。
アクリル酸2−メトキシエチル11.5モル%
メタクリル酸16.8モル%、
メタクリル酸メチル2.7モル%、
スチレン17モル%、
アクリル酸エチル43.1モル%、
アクリル酸2−エチルヘキシル8.9モル%
前記単量体の合計100質量部に対して0.6質量部の重合開始剤(大塚化学社製、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル)。
【0081】
その後、さらに、フラスコ内溶液に、MEK20質量部および2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル1質量部を混合した滴下溶液を60分間かけて滴下した。さらに、フラスコ内溶液を85℃で2時間保持し、温度を室温まで下げた。その後、前記フラスコ内溶液に、MEK30質量部を添加して、ビニル系共重合体(II−1)溶液を得た。
【0082】
(製造例5)
フラスコに入れるMEKを45質量部に変更し、重合開始剤の仕込み量を単量体の合計100質量部に対して0.2質量部に変更し、温度を室温まで下げた後に添加するMEKを70質量部に変更した以外は、製造例4と同様の操作でビニル系共重合体(II−2)溶液を得た。
【0083】
(製造例6)
重合開始剤の仕込み量を単量体の合計100質量部に対して3質量部に変更した以外は、製造例4と同様の操作でビニル系共重合体(II−3)溶液を得た。
【0084】
(製造例7)
単量体の仕込み量を表1に示す量に変更した以外は、製造例4と同様の操作でビニル系共重合体(II−4)溶液を得た。
【0085】
【表1】
【0086】
表中、単量体(a1−1)は、前記式(6−1)で表される単量体(大阪有機化学工業社製)であり;単量体(a2−1)は、前記式(7−1)で表される単量体(パラヒドロキシスチレン)であり;2−MTAはアクリル酸2−メトキシエチルであり;MAAはメタクリル酸であり;MMAはメタクリル酸メチルであり;Stはスチレンであり;EAはアクリル酸エチルであり;2−EHAはアクリル酸2−エチルヘキシルである。
【0087】
(化合物(IV)の合成例)
式(2−1)で表される化合物の合成:
4−ヒドロキシマンデル酸16.8質量部、フェノール37.6質量部および10%塩酸170質量部を混合した混合物を60〜65℃で2時間反応させた。反応終了後、前記混合物に、イオン交換水300質量部およびアセトン300質量部を混合した混合物を加えて60℃で分液した。得られた有機層をイオン交換水で洗浄した。洗浄後の有機層を減圧条件で濃縮し、得られた濃縮残分に、アセトン5質量部およびトルエン80質量部を混合した混合液を添加して、再結晶化し、前記式(2−1)で表される特定の化合物(IV)を得た。
1H−NMRおよびIRから目的の化合物が得られたことを確認した。
【0088】
式(2−2)で表される化合物の合成:
フェノール94質量部、レブリン酸58質量部、水45質量部および濃硫酸180質量部を混合した混合物を20℃で20時間反応させた。反応終了後、前記混合物に、イオン交換水300質量部および酢酸エチル300質量部を混合した混合物を加えて分液した。得られた有機層に重炭酸ナトリウム水溶液を加え、有機層を抽出した。得られた重炭酸塩抽出物を酸性にして、エーテルで抽出し、真空脱揮して前記式(2−2)で示される特定の化合物(IV)を得た。
1H−NMRおよびIRから目的の化合物が得られたことを確認した。
【0089】
(実施例1)
ビニル系共重合体(I−1)溶液70質量部、ビニル系共重合体(II−1)溶液30質量部、感光性物質(III)として前記式(3)で表される化合物(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸(3モル)とのエステル10質量部、特定の化合物(IV)として前記式(2−1)で表される化合物2質量部およびMEK200質量部を混合し、レジスト液を得た。
【0090】
厚さ16μmのPETフィルムの表面に前記レジスト液を、乾燥後の厚さが5μmとなるように塗布し、乾燥させて、ドライフィルムを形成し、前記ドライフィルムの評価を行った。結果を表3に示す。
【0091】
(実施例2
、3、5〜9
、参考例4、比較例1)
ビニル系(共)重合体(I)の種類および配合量、ビニル系共重合体(II)の種類および配合量、感光性物質(III)の種類、特定の化合物(IV)の種類を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてドライフィルムを得て、前記ドライフィルムの評価を行った。結果を表3に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
表中、(III−1)は、前記式(3)で表される化合物(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸(3モル)とのエステルであり;(III−2)は、前記式(4)で表される化合物(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸(2モル)とのエステルであり;(III−3)は、前記式(5)で表される化合物(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸(3モル)とのエステルであり;(III−4)は、下記式(9)で表される化合物(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸(2モル)とのエステルである。
【0094】
【化12】
【0095】
【表3】
【0096】
評価の結果、いずれの実施例も耐クラック性および解像性が良好であった。特に、単量体(c)を原料に含むビニル系共重合体(I)および質量平均分子量が60,000のビニル系共重合体(II)を用いたものは解像性が非常に優れていた。比較例1は、ビニル系共重合体(II)の原料に単量体(b)を含まないため、耐クラック性が悪く、解像性も不十分であった。