(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710856
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】ウレアウレタン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/12 20060101AFI20150409BHJP
C08G 18/50 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
C08G18/12
C08G18/50 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2008-82404(P2008-82404)
(22)【出願日】2008年3月27日
(65)【公開番号】特開2009-235214(P2009-235214A)
(43)【公開日】2009年10月15日
【審査請求日】2011年3月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原 大史
(72)【発明者】
【氏名】小野 哲哉
【審査官】
前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−091414(JP,A)
【文献】
特開2009−091379(JP,A)
【文献】
特開2009−242600(JP,A)
【文献】
特開2002−194281(JP,A)
【文献】
特開平09−278858(JP,A)
【文献】
特開平08−034829(JP,A)
【文献】
特開2002−272878(JP,A)
【文献】
特開平06−016765(JP,A)
【文献】
特開平02−292317(JP,A)
【文献】
特開平08−100042(JP,A)
【文献】
特開平06−192380(JP,A)
【文献】
特開平02−173029(JP,A)
【文献】
米国特許第5621043(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00− 18/87
C08L 75/00− 75/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端イソシアネートプレポリマーと下記化学式に示す芳香族アミンとを含むウレアウレタン樹脂組成物であって、末端イソシアネートプレポリマー
の合成に使用される全てのポリオールが分子量1000〜3000
であり、ポリエステルポリオール或いはポリカーボネートジオールが全
てのポリオール
を100重量%として50〜80重量%配合されることを特徴とするウレアウレタン樹脂組成物。
上記式で m=1〜2、n=2〜3、Rがポリエーテルである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手作業で扱うことができるウレアウレタン樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の剥落防止工法におけるウレア樹脂及びウレアウレタン樹脂は、分子量が小さいアミン化合物とポリイソシアネートの反応で得られ、反応速度が速く、機械強度の発現が速い、塗布厚を厚くし易く、エポキシ樹脂を用いた剥落防止の工法と違い、シートを使用しないなどの利点があった。
【0003】
コンクリート構造物表層に、シランカップリング剤配合のエポキシ樹脂プライマーの層を設け、その上に引張強度が7N/mm
2以上、引張破断伸びが50〜800%のポリウレタン又はポリウレアからなる0.8〜4mmの層を設けることで湿潤状態においても施工が可能で、短時間の施工で、しかも繊維シートを用いることなく形成することができる剥落防止用の表面構造体及びその構築方法が開示されている。(特許文献1)
【0004】
ポリアルキレンエーテルアミノベンゾエートの一部であるポリアルキレン基がテトラヒドロフランと3メチルテトラヒドロフランのランダム共重合体から得られるポリアルキレンエーテルポリアミンであり、ポリイソシアネート化合物、又は、末端イソシアネートプレポリマーと反応させ、ポリウレア又はポリウレタンウレア樹脂を製造とし、これらは低温液状性を有する、ポリアルキレンエーテルポリアミンを使用することにより、低温混合、常温硬化を可能とし、作業性及び樹脂の物性が改良されたポリウレア、あるいはポリウレタンウレアのエラストマーの製造方法が開示されている。(特許文献2)
低温時(5℃)には硬化時間が遅くなり、触媒を使用して硬化時間を促進した場合は、発泡などの不具合が起きることがあった。
【特許文献1】特開2005−213842号公報
【特許文献2】特開平6−271640号公報
【特許文献3】特開昭63−202612公報
【特許文献4】特開平1−121380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
手作業で扱うことができる可使時間を確保し、低温時の硬化性、作業性が良好のウレアウレアウレタン樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、末端イソシアネートプレポリマーと下記化学式に示す芳香族アミンとを含むウレアウレタン樹脂組成物であって、末端イソシアネートプレポリマーの合成に使用される全てのポリオールが分子量1000〜3000であり、ポリエステルポリオール或いはポリカーボネートジオールが全てのポリオールを100重量%として50〜80重量%配合されることを特徴とするウレアウレタン樹脂組成物
であり、可使時間を確保し、低温時の指蝕硬化時間を速めることができる。
上記式で m=1〜2、n=2〜3、Rがポリエーテルである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によりウレアウレタン樹脂組成物において、手塗り可能な作業性、可使時間を確保し、また、低温時の指蝕硬化時間が速くなるため、作業時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は可使時間を手塗り可能な範囲になるようにするため、硬化性、作業性が悪くなるのを解消するために、鋭意検討した結果のものである。
【0009】
芳香族アミン樹脂
本発明は手作業で扱うために、可使時間を確保するために下記、化1の芳香族アミンを使用する。そのため、芳香族アミンは分子内に芳香環を有する、特に芳香環とアミノ基が直接結合しているような分子が使用される。また、同一分子内に2つ以上のアミンを有するものである。
特許文献4に記載されたアミンで、可使時間が確保でき、物性も良好であるが、低温硬化性改善が克服すべき課題となっていた。
【0010】
【化1】
Rの構造はポリエーテル、ポリエステル等があげられる。m=1〜2、n=2〜3、Rがポリエーテル
上記芳香族アミンの内、m=1、n=2で、Rがポリエーテルの市販製品としてエラスマー1000P(イハラケミカル(株)、商品名、アミン価80〜90)、VERSALINKP−1000(エアプロダクツジャパン(株)、商品名、、アミン価80〜90)がある。
【0011】
末端イソシアネートプレポリマー
本発明の末端イソシアネートプレポリマーは、分子量1000〜3000のポリオールから調成され、その中ポリエステルポリオール或いはポリカーボネートジオールが50〜80重量%、好ましくは60〜70重量%が配合され、汎用の手法により任意のポリイソシアネートとの反応によって得られる。
前記50〜80重量%の範囲では低温時の硬化性もよく、作業性も良好である。
また 末端イソシアネートプレポリマーは粘度は10Pa・s以下、好ましくは3〜10Pa・sであることが望ましい。この範囲で、混合等の手作業の扱いが容易にできる。
【0012】
前記ポリイソシアネートは2以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物で、汎用のポリウレタンエラストマー製造に使用されている任意のポリイソシアネートでよい。例としてヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、トリス(6−イソシアネートヘキシル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートの付加体、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)及びこれら2,4−TDIと2,6−TDIの混合物、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、キシレンジイソシアネート(XDI)、メタキシリレンジイソシアネート(MXDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ビフェニルジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジトルエン−4,4′−ジイソシアネート(TODI)、ジアニシジンジイソシアネート(DADI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート(TTI)(以上()内は略号)が挙げられる。
【0013】
ウレアウレタン樹脂
前記末端イソシアネートプレポリマーと芳香族アミンを末端イソシアネートプレポリマーのイソシアネート基官能基と芳香族アミンのアミノ基の比を1.0:0.5〜0.99の範囲で配合する。さらに好ましくは1.0:0.6〜0.8が好ましい。このとき、強度・伸び率がもっとも優れる。
【0014】
その他の配合物
樹脂の物性向上と作業性調整、接着剤の粘度調整、揺変性付与等のために充填剤、希釈剤等を配合することができる。
充填材としては重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、珪酸アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、カーボンブラック、微粉末チタン、硅砂、クレー、タルク、微粉末シリカなどが配合できる。
希釈剤はフタル酸エステル類、脂肪族2塩基酸エステル類、リン酸エステル類など汎用のものが使用できる。このうち構造中にエステルを含む希釈剤は、それ自体も促進剤として作用することもあり、有用である。ジイソノニルアジペート(DINA)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート(DOP)、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート(DOA)、トリフェニルホスフェート(TPP)、ジメチルセバケート(DMS)、ビス(ブチルジグリコール)アジペート(BXA)(以上()内は略号)などが好ましい。
また、汎用の消泡剤、接着助剤、老化防止剤、安定剤などの添加剤を必要に応じて配合する。
次に、実施例、比較例をあげ、表1に結果を示し、詳細を記す。
【実施例1】
【0015】
クラレポリオールP−2010((株)クラレ、商品名、 ポリエステルポリオール(分子量2000、2官能))を48重量部、エクセノール903(旭硝子(株)、商品名、ポリエーテルポリオール(分子量1500、3官能))を12重量部混合し、ミリオネートMT(日本ポリウレタン(株)、商品名、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、NCO33.6重量%)を40重量部加え80℃3時間反応させて得られた末端イソシアネートプレポリマーを50重量部と、エラスマー1000Pを50重量部配合したものを実施例1とした。
【実施例2】
【0016】
クラレポリオールP−2050((株)クラレ、商品名、 ポリエステルポリオール(分子量2000、2官能))を42重量部、URIC H−56(伊藤製油(株)、商品名、ひまし油変性ポリオール(分子量1500、3官能))を18重量部混合し、ミリオネートMTを40重量部加え80℃3時間反応させて得られた末端イソシアネートプレポリマーを50重量部と、エラスマー1000Pを50重量部配合したものを実施例2とした。
【実施例3】
【0017】
T4671(旭化成ケミカルズ(株)、商品名、ポリカーボネートジオール、分子量1000、2官能)を36重量部、アデカポリエーテルP3000((株)ADEKA、商品名、ポリーエーテルポリオール、分子量3000、2官能)を24重量部混合し、ミリオネートMTを40重量部加え80℃3時間反応させて得られた末端イソシアネートプレポリマーを50重量部と、VERSALINKP−1000を50重量部配合したものを実施例3とした。
【実施例4】
【0018】
T5651(旭化成ケミカルズ(株)、商品名、ポリカーボネートジオール、分子量1000、2官能)を36重量部、URIC H−56を24重量部混合し、ミリオネートMTを40重量部加え80℃3時間反応させて得られた末端イソシアネートプレポリマーを50重量部と、エラスマー1000Pを50重量部配合したものを実施例4とした。
【実施例5】
【0019】
マキシモールFSK−1200(川崎化成工業(株)社、商品名、 ポリエステルポリオール(分子量1200、2官能))を30重量部とアデカポリエーテルP3000を30重量部混合し、ミリオネートMTを40重量部加え80℃3時間反応させて得られた末端イソシアネートプレポリマーを50重量部と、VERSALINKP−1000を50重量部配合したものを実施例5とした。
【0020】
比較例1
プレミノールPML−4002(旭硝子(株)、商品名、ポリエーテルポリオール(分子量4000、2官能))30重量部、URIC H−56を30重量部混合し、ミリオネートMTを40重量部加え80℃3時間反応させて得られた末端イソシアネートプレポリマーを50重量部と、エラスマー1000Pを50重量部配合したものを比較例1とした。
【0021】
比較例2
クラレポリオールP−2050を25重量部、HS2G−270B(豊国製油(株)、商品名、ひまし油変性ポリオール(分子量430、2官能))を25重量部混合し、ミリオネートMTを50重量部加え80℃3時間時間反応させて得られた末端イソシアネートプレポリマーを50重量部と、エラスマー1000Pを50重量部配合したものを比較例2とした。
【0022】
比較例3
T4671(旭化成ケミカルズ(株)、商品名、 ポリカーボネートジオール(分子量1000、2官能))を54重量部、アデカポリエーテルP3000を6重量部混合し、ミリオネートMTを40重量部加え80℃3時間時間反応させて得られた末端イソシアネートプレポリマーを50重量部と、VERSALINKP−1000を50重量部配合したものを比較例3とした。
【0023】
比較例4
クラレポリオールP−1010((株)クラレ、商品名、ポリエステルポリオール、分子量1000、2官能)を18重量部、アデカポリエーテルP2000((株)ADEKA、商品名、ポリーエーテルポリオール、分子量2000、2官能)を42重量部混合し、ミリオネートMTを40重量部加え80℃3時間時間反応させて得られた末端イソシアネートプレポリマーを50重量部と、VERSALINKP−1000を50重量部配合したものを比較例4とした。
【0024】
比較例5
クラレポリオールP−1010((株)クラレ、商品名、ポリエステルポリオール、分子量1000、2官能)を60重量部、ミリオネートMTを40重量部加え80℃3時間反応させて得られた末端イソシアネートプレポリマーを50重量部と、エラスマー1000Pを50重量部配合したものを比較例5とした。
【0025】
比較例6
アデカポリエーテルP2000を60重量部、ミリオネートMTを40重量部加え80℃3時間反応させて得られた末端イソシアネートプレポリマーを50重量部と、VERSALINKP−1000を50重量部配合したものを比較例6とした。
【0026】
【表1】
【0027】
硬化時間測定:本発明における硬化時間の測定はドライングレコーダー(太裕機器(株)、商品名、塗料乾燥時間測定器)を使用し測定した。
ドライングレコーダーは、ガラスステージに塗布した塗料の上を、測定時間をかけて、針が移動し、塗料が乾燥すると、針によるキズがつかなくなることを利用して、キズの長さから塗料の乾燥時間を測定する装置である。実施例・比較例の樹脂組成物を低温5℃条件下において、ガラス板に膜厚1mmで塗布し、指蝕硬化時間が5時間以内のものを○それ以上のものを×とした。
【0028】
粘度:末端イソシアネートプレポリマーの粘度を、23℃、50%RH条件下でB型粘度計(BH型ローター番号No.6で20rpm又はBM型ローター番号No.4で60rpm)で測定した。
【0029】
作業性:上記粘度10Pa・s以下を○、それ以外を×とした。