特許第5710880号(P5710880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5710880連続移動するシート材をレーザ加工する方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710880
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】連続移動するシート材をレーザ加工する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/10 20060101AFI20150409BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20150409BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20150409BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20150409BHJP
【FI】
   B23K26/10
   B23K26/00 G
   B23K26/00 M
   B23K26/08 D
   B23K26/38 330
【請求項の数】21
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2009-547242(P2009-547242)
(86)(22)【出願日】2007年12月10日
(65)【公表番号】特表2010-516477(P2010-516477A)
(43)【公表日】2010年5月20日
(86)【国際出願番号】US2007086898
(87)【国際公開番号】WO2008091447
(87)【国際公開日】20080731
【審査請求日】2010年9月14日
【審判番号】不服2013-17182(P2013-17182/J1)
【審判請求日】2013年9月6日
(31)【優先権主張番号】60/886,881
(32)【優先日】2007年1月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11/949,582
(32)【優先日】2007年12月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593141632
【氏名又は名称】エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(72)【発明者】
【氏名】大迫 康
(72)【発明者】
【氏名】ウンラース,マーク
(72)【発明者】
【氏名】コスモフスキ,マーク
【合議体】
【審判長】 長屋 陽二郎
【審判官】 栗田 雅弘
【審判官】 久保 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−242410(JP,A)
【文献】 特開2004−298914(JP,A)
【文献】 特開平8−184833(JP,A)
【文献】 特開2005−53615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K26/00-26/42
B65G15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動している移動シート材を加工するシステムにおいて:
前記移動シート材を1つ又は複数のレーザビームで照射するように構成された1つ又は複数のレーザ加工ヘッドと、
前記移動シート材の第1の部分を取り外し可能に自身に固定させるように構成された移動真空チャックと
前記移動シート材と前記移動真空チャックとの間に移動可能に配置された担体と
を有し、
前記移動真空チャックは、前記担体に形成された吸引用の孔を通じて前記移動シート材を吸引するよう更に構成され、
1つ又は複数のレーザビームが停止又は遮断されるとき、前記担体は、前記移動シート材と前記移動真空チャックの間を移動するよう構成され、
前記移動真空チャックは、前記担体から離れて設けられて独立に移動可能であり、前記移動シート材の第1の部分が前記1つ又は複数のレーザビームによって加工されるとき、自身に固定された前記移動シート材と前記担体の速度を制御するように、レーザ加工領域を移動し、更に前記移動真空チャックは、前記移動シート材を移動させながらレーザ加工するために、前記1つ又は複数のレーザビームと前記移動シート材を協調動作させるものであり、さらに、前記移動シート材の全体を、前記レーザビームによる加工の間、定速かつ連続的に第1のローラから第2のローラまで前記移動真空チャックにより移動させる、前記システム。
【請求項2】
レーザ加工が始まると、前記移動シート材は、前記第1のローラから前記第2のローラへ連続して移動する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の部分が前記移動真空チャックに固定されていないとき、前記第1のローラと前記第2のローラの内の少なくとも1つが、前記移動シート材の速度を制御する、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記移動真空チャックは、前記移動シート材の第1の部分が前記1つ又は複数のレーザビームによって加工された後、前記移動シート材の前記第1の部分を解放し、前記1つ又は複数のレーザビームによる加工のために、前記移動シート材の第2の部分をチャック自身に取り外し可能に固定させるように、さらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記移動真空チャックに取り付けられたコンベイヤをさらに含み、前記コンベイヤは、前記移動真空チャックの速度を制御するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コンベイヤは、1つ又は複数のさらなる移動真空チャックを含み、それらの移動真空チャックが、前記1つ又は複数のレーザビームによって前記移動シート材の1つ又は複数の第2の部分の加工中、前記移動シート材の前記1つ又は複数の第2の部分に固定するように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ又は複数のレーザビームは、前記第1の部分及び前記1つ又は複数の第2の部分より部分品を個片化(singulate)するように構成され、前記移動真空チャック及び前記更なる移動真空チャックの内の少なくとも1つは、さらに、前記個片化された部分品を受入トレイに搬送するように構成されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記担体は、前記1つ又は複数のレーザビームによって加工された後の前記移動シート材の個片化された部分品を受け取って搬送するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記移動真空チャックは、前記移動シート材の前記個片化された部分品に正の空気圧を印加し、それら部分品を前記担体から受入トレイにイジェクトするように、さらに構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記担体は、穿孔された金属シートを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記金属シートは、前記個片化された部分品を搬送するコンベイヤベルトとして構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記移動シート材に対して前記1つ又は複数のレーザ加工ヘッドを移動させるように構成された移動ステージをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記移動真空チャックを前記移動シート材の前記第1の部分と位置合せするためのデータを提供するように構成された、1つ又は複数の位置センサーをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記移動シート材は、光学フィルムからなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
レーザビームで移動シート材を加工する方法であって、
前記移動シート材を第1のローラから第2のローラへ連続的に移動させるステップと、
前記移動シート材の第1の部分が前記第1のローラから前記第2のローラへ移動するとき、移動真空チャックを、前記移動シート材と移動真空チャックとの間に移動可能に配置された担体に形成された吸引用の孔を通じて前記移動シート材の前記第1の部分に取り外し可能に固定させるステップであり、前記移動真空チャックは前記担体から独立に設けられており独立に移動可能である、ステップと、
前記移動シート材の前記第1の部分が前記担体に形成された前記吸引用の孔を通じて固定された前記移動真空チャックを、前記レーザビームによる加工の間、前記移動シート材の全体と前記担体が定速かつ連続的に前記移動真空チャックによってレーザ加工領域を通過するように、第1のローラから第2のローラまで移動させるステップと、
前記移動シート材の前記第1の部分が前記移動真空チャックに固定されている状態で、前記移動シート材の前記第1の部分に前記レーザビームを照射するステップと、
を含む方法。
【請求項16】
前記レーザビームによる加工後、前記移動シート材の前記第1の部分を前記移動真空チャックから解放するステップと、
前記移動シート材が前記第1ローラから前記第2ローラへの移動することを止めることなく、前記移動真空チャックを取り外し可能に前記移動シート材の第2の部分に固定させるステップと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記移動真空チャックに取り付けられたコンベイヤを使って、前記移動真空チャックを所定の速度で動かすステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記コンベイヤを使って、コンベイヤに取り付けられた1つ又は複数のさらなる移動真空チャックを移動させるステップと、
前記移動シート材が前記第1のローラから前記第2のローラへ移動するとき、レーザ加工のために、前記2つ以上のさらなる移動真空チャックを前記移動シート材の2つ以上の部分に取り外し可能に固定させるステップと、
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記移動真空チャック上の個片化された前記移動シート材の部分品を受入トレイへ搬送することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の部分が前記レーザビームによって加工された後、前記移動真空チャックから前記担体と前記移動シート材の前記第1の部分とを取り外すステップと、
前記担体上の個片化された前記移動シート材の部分品を搬送するステップと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記移動シート材に対してレーザ加工ヘッドを移動させるステップと、をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、レーザ加工に関する。特に本開示は、連続的に移動又は展開するシート材を加工するレーザ加工システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工は、数々の種類の加工物を対象に実施され、様々なレーザを使用してさまざまな加工を行うことができる。レーザを使用して、例えば、単一レイヤ又はマルチレイヤの加工物にホール及び/又はブラインド・ビアを形成してよい。半導体ウエハー加工には、様々なタイプのレーザマイクロ加工が含まれる。例えば、スクライビング、ダイシング、ドリル穴あけ、半導体リンク(ヒューズ)の除去、熱アニール、及び/又はパッシブな薄膜または薄膜構成部品のトリミングを含む。
【0003】
レーザを使用して、プラスチックや光学フィルムなどのシート材を加工してよい。大判のプラスチック又は光学シートは、例えば、携帯電話、カーナビ装置、携帯端末(PDA)、ラップトップ・コンピュータ、テレビジョン受像機、及びその他の電子機器で使用されるフラットパネルディスプレイで用いるより小さい部分品に切断してよい。一般には、シート状のプラスチック又はフィルム材の切断には、機械的なパンチングマシンが使用される。パンチングマシンは高速であるが、金型の頻繁な交換・整備に伴う多くの休止時間のために実効スループットは低下する。さらに、大判のシート材の切断へのレーザ使用は、高速での直線切削に制限されていた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ここで開示する実施形態では、移動しているシート材をレーザ加工するシステム及び方法が提供される。一の実施形態では、移動しているシート材を加工するシステムは、前記移動シート材に1つ又は複数のレーザビームを照射するように構成された1つ又は複数のレーザ加工ヘッドと、前記移動シート材の第1の部分を取り外し可能にチャック自身に固定するように構成されている真空チャックとを含む。真空チャックは、さらに、前記第1の部分が前記1つ又は複数のレーザビームによって加工されるとき、前記移動シート材の速度を制御するように構成される。
【0005】
別の実施形態では、レーザビームでシート材を加工する方法は、前記シート材を第1のローラから第2のローラへ移動させることと、前記シート材の第1の部分が前記第1のローラから前記第2のローラへ移動するとき、前記シート材の前記第1の部分にチャックを取り外し可能に固定されることとを含む。前記方法は、前記チャックを既定の速度で移動させることと、前記シート材の前記第1の部分が前記移動チャックに固定されている状態で、前記シート材の前記第1の部分に前記レーザビームを照射することとをさらに含む。
【0006】
別の実施形態においては、レーザ加工システムは、シート材をレーザビームで照射する手段と、前記シート材の複数部分が前記レーザビームで照射されているとき、前記シート材の前記複数部分を保持する手段と、前記シート材の第1の部分と第2の部分とが前記レーザビームで照射されているとき、前記保持手段を一定速度で移動させる手段と、前記第1の部分の照射と前記第2の部分の照射の間、停止させることなく、前記シート材をレーザ加工エリアに送り込む手段とを含む。
【0007】
更に別の態様、及び利点は、添付の図面を参照しながら進める好適な実施形態についての以下の詳細な記述から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】フィルムを加工する従来システムを説明している。
図1B】フィルムを加工する従来システムを説明している。
図1C】フィルムを加工する従来システムを説明している。
図2】ある実施形態による、シート材を加工するシステムのブロック図である。
図3】ある実施形態による、シート材を加工するシステムのブロック図である。
図4】ある実施形態による、シート材を加工するシステムのブロック図である。
図5】ある実施形態による、シート材を加工するシステムのブロック図である。
図6A】別の実施形態による、シート材を加工するシステムのブロック図である。
図6B】別の実施形態による、シート材を加工するシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
レーザを使用して、プラスチックまたは光学フィルムなどの大判のシート材を加工することができる。プラスチックまたは光学フィルムのシートは、例えば、携帯電話、カーナビ装置、携帯端末(PDA)、ラップトップ・コンピュータ、テレビジョン受像機、及びその他の電子機器のフラットパネルディスプレイで用いてよい。
【0010】
レーザシステムを使用して、ロール状に巻いたシート材(例えばフィルム)を特定のモニターサイズの小さい部分品に切断することは、2次加工(conversion)と呼ばれる。2次加工工程に於いては、ロール状に巻いたシート材は、一般に、展開され、加工のために別の部材の上にセットされる。2次加工されたシート材の部分品は、次に集められる。ロール状に巻いたシート材が、多層フィルム間に接着材を含む偏光フィルムの場合、例えば、2次加工された部分品のへりが下部の部材にくっつく傾向がある。このような場合、2次加工された部分品を、生産性を低下させることなく、収容するのは一般に難しい。
【0011】
一般に、通常の2次加工システムは、パターン化されたブレードが平板に埋め込まれ、フィルムを2次加工するのに使用されるダイ切断システムをベースにしている。このようなシステムでは、柔軟性のあるゴムのような部材がローラ状のコンベイヤで使用され、2次加工された部分品が収集される。
【0012】
(A.3ステージによるビーム位置決め)
これから、図を参照する。図に於いては、同様の参照数字は、同様の構成要素を参照している。明確にするために、参照数字の第1桁は、対応する要素が最初に使用される図の番号を示している。以下の説明では、本発明の実施形態の完全な理解のために、多くの具体的な詳細が与えられている。しかし、当業者は、本発明が、前記の具体的詳細の1つ又は複数を用いることなしに、或いは他の方法、構成要素、又は素材を用いて、実施してよいことを理解することになる。さらに、ある場合には、本発明の特徴を分かりにくくしないように、周知の構造、素材、又は動作については詳細に示していない、又は詳細に説明していない。さらに、説明している機能、構造又は特徴は、適切な方法で、1つ又は複数の実施形態にまとめてよい。
【0013】
ロール状に巻いたフィルム又は個別フィルムシートなどのある素材は、一般に、パンチ機構又は通常のレーザ加工システムの下に位置決めされ、その場に固定することによって加工される。例えば、図1A,1B、及び1Cは、フィルム110を加工する通常のシステム100を図解している。図1Aで示されているように、フィルム110は、まず移動ステージ113上を(矢印112によって示されるように)2次加工システム114下の加工エリアに移される。その加工システムは、X及びYステージ上に、ガルボ(galvo)を有する(又は有していない)パンチ機構又は通常のレーザシステムを備えている。
【0014】
図1Bで示されているように、フィルム110は、加工エリアに位置決めされた後、2次加工システム114は、(矢印116によって示すように)加工を行う。2次加工システム114がパンチ機構又は通常のレーザシステムを備えている場合、フィルム110を搬送する移動ステージ113は、加工(例えばダイシング)が行われている間、停止させねばならない。ある精度で切断ブレード又はレーザビームをフィルム110上に位置決める必要がある又は望ましい場合、2次加工システム114はフィルム110を加工する前に、位置合せ処理を行う必要がある場合がある。図1Cに示されているように、加工後、移動ステージ113は、2次加工されたフィルム110を(矢印118で示されるように)加工エリアから移動させる。
【0015】
従って、2次加工に使用される全体時間は、フィルム110を加工する前にフィルム110を所定位置に着けるのに必要な時間と、フィルム110を加工するのに必要な時間とを含む。スループットは、加工が行われる前にフィルム110を所定の位置に動かして配置するのに必要な時間と、(必要であれば)2次加工システム114を調整するのに必要な時間まで劇的に低下する。故に、本開示によって、非加工時間の除去又は削減が可能となり、総スループットが向上する。さらに、本開示は、光学フィルムの機械的及び光学的ストレスを削減することができる。ストレスは、加工エリア上にフィルムをフラットに保持するために、ダンサー(加工エリア前後に配置された重し)による反復的な通常のプロセスによって引き起こされる場合がある。さらに、ある実施形態においては、レーザ加工中の素材の連続的流れは、素材中に光学的異方性をもたらし、好都合でよい。例えば、偏光フィルムの場合、誘起された異方性によって画質が大幅に改善される。
【0016】
図2,3,4、及び5は、ある実施形態による、シート材210を加工するシステム200のブロック図である。システム200は、レーザ212と、複数の真空チャック214(12個示されている)と、真空チャック214をレーザ212の加工エリアを通過させるように構成された平行移動ステージ又はコンベイヤ216とを含む。一の実施形態に於いては、システム200は、シート材210に対してレーザビーム212を移動させるためのX及びYステージ(図示せず)も含む。例えば、X及びYステージは、ガントリーシステムを含んでよい。加えて、或いは別の実施形態に於いては、システム200は、レーザ212からのレーザビームをさらに、シート材210と位置合せするように構成されたガルボ(galvo)(図示せず)を含んでよい。
【0017】
上述したように、シート材210は、例えば、プラスチック又は光学フィルムを含んでよい。一の実施形態に於いては、シート材210は、約1mmと約2mmの間の厚さを有している。しかし、ここに開示する実施形態は、この範囲の厚さに限定されない。実際、システム200は、1mmより大幅に小さい厚さと2mmより大幅に大きい厚さを有する素材を加工するように構成してよい。ある実施形態では、システム200は、シート材210が第1のローラから第2のローラへ移されるときにシート材210を加工する。他の実施形態では、システム200は、素材210の個別部分品又は個別シートを加工する。
【0018】
シート材210が、個別シートを含む、又は第1のローラから第2のローラへ移されるかどうかに関わらず、真空チャック214は、コンベイヤ216が真空チャック214とシート材210を(矢印218で示すように)一定速度で移動させる間、シート材210をしつかりと保持するように構成される。コンベイヤ216及び真空チャック214が、シート材210を移動させている間、レーザ212は、コンベイヤ216上方のX及びYステージ上のガルボブロックからシート材210に対して(矢印220で示されているように)レーザビームを当てる。
【0019】
レーザビーム位置決めは、ガルボ、X及びYステージ、そしてコンベイヤ216によって協調連携される。従って、全体加工時間は、繰り返し位置合せに必要とされる追加時間を含まない、又はレーザ212下の加工エリアへ素材の出し入れの繰り返しに必要とされる時間を含まない、ビーム送達時間を含む。
【0020】
技術者は、本開示より、全ての実施形態において、ガルボ及び/又はX及びYステージが必要であるわけではないことを理解するだろう。例えば、一の実施形態では、システム200は、加工対象のシート材210を移動させるコンベイヤ216と、作業面に入射するレーザビームを移動させるX及びYステージのガントリーを含む。又ここで開示されるシステムは、ビームの焦点又は平行ビームサイズを調整するためのZ方向に対するステージなどの追加ステージをサポートしてよい。
【0021】
一の実施形態による、複合ビーム・ポジショナーは、ビームの移動を停止することなくシート材210を加工するために、低速と高速の移動を提供する。一の実施形態では、移動全体は、3個以上の異なる動き、即ち低速、中間、及び高速の移動から構成されてよい。しかし、基本的アルゴリズムは、通常の複合ビーム・ポジショナーのものと同じで良い。ガントリーの速度は、一定に維持するか、又はビーム位置決めの調整のためにモニターしてよい。
【0022】
加工対象素材がレーザ212の下に移動される前に、当該素材のラフな位置合せを真空チャック214上で行ってよい。例えば、図3と4は、コンベイヤ216に沿ったあるポイントの近傍に配置された位置センサー310を図示して(2台示されている)おり、そのポイントで真空チャック214がシート材210と位置合せされる。他の実施形態では、センサー310は、各真空チャック214上に又はチャック214の周囲に設置してよい。センサー310は、例えば、電荷結合素子(CCD)でよく、又は真空チャック214に対してシート材210の位置をセンスする任意の他のセンサーでよい。このようなセンサー310は、X及び/又はY方向に平行に配置してよい。
【0023】
幾つかの実施形態では、所定のサイズの小さい部分品(piece)が、シート材210から個片化(singulate)される。このような実施形態においては、図4に示すように、個片化された部分品410は、真空引きをオフ又は僅かに空気の正圧を印加して、個片化された部分品410を、チャック214から近くの受入トレイ412に放出させることによって、真空チャック214から回収してよい。個片化された部分品410を放出した後、真空チャック214は、未加工シート材210の別の部分との位置合せのために、真空引きがオンとなっている位置へコンベイヤ216によって搬送されてよい。別の実施形態では、工程が、個片化された部分品410の放出を含まない場合、真空チャック214は、前後に動かされ(例えば、コンベイヤ216の周りを回ることなく)、又は水平と垂直の動きの組み合わせで移動され、真空引きがオンとなっている元の位置合せ位置に真空チャック214を戻してよい。
【0024】
スループットを改善するために、デュアルヘッド又は多重ヘッドシステムを考慮してもよい。このような実施形態において、素材の流れに直交するY方向に於ける2つのヘッドの動きは、シート材210に対するスムーズなビーム移動に影響を与える可能性のある振動を低減できるようにミラーイメージで良い。
【0025】
デュアルヘッドシステム500の一例が図5に示されている。この例示的実施形態では、2つのレーザ経路の各々は、CWレーザ510と、サブマイクロ秒のレーザパワーコントローラ/シャッターとして構成されたAOM512とを含む。AOM512は又、CWレーザ510に対するパルサーとして構成されている。別の実施形態では、AOM512は、パルスレーザに対するパルスピッカーとして構成してよい。AOM512は、パルスエネルギー及び繰り返し周波数を調整するようにも構成してよく、加工は、一定速度の期間のみならず、加速及び減速期間にも行うことができる。
【0026】
各レーザ経路は、AOM512によって選択された偏角に応じ、AOM512からのレーザビームを、第1のレンズ516、アパーチャ518、及び第2のレンズ519を介して、レーザビームをビームスプリッタ522又はビームダンプ524へ向かわせるように構成された第2のミラー520へ向かわせる第1のミラー514などの光学系を含む。一の実施形態では、ビームスプリッタ522は、レーザビームの一部を、AOM512に対してレーザパワー制御を行うように構成されたパワーモニター523に向かわせる。各ビームスプリッタ522は又、レーザビームの一部を、X、Yステージ(ガントリー)528上に配置されたそれぞれの加工ヘッド526に向かわせる。各加工ヘッド526は、それぞれのレーザビームを、追加ステージ作業面530上に位置合せされたシート材210に向かわせる。
【0027】
(B.インデックスフリーなフィルム2次加工システム)
図6Aと6Bは、別の実施形態による、シート材を加工するシステム600のブロック図である。この実施形態は、シート材210が1つ又は複数の加工ヘッド614(2個示されている)によって加工されるとき、シート材210を第1のローラ610から第2のローラ612へ正確に供給する方法を提供する。技術者は、ここに於ける開示により、2個以上の加工ヘッド614は、シート材210の流れの方向616と平行な方向に(図6Aと6Bに示されるように)及び/又はシート材210の流れの方向616と直交する方向に整列してよいことを理解されるであろう。
【0028】
システム600は、シート材210が第1のローラ610から第2のローラ612へ移動するとき、シート材210の動きを、X及びYリニアステージ、真空チャック618、及びX及びYガルバノメータの動きと協調させることによって、インデックスフリーなフィルムの2次加工を行う。ある実施形態では、システム600は又、シート材210の動きをZステージと協調させる。
【0029】
システム600は、シート材210の2次加工された部分品の切れ目の無い回収も行う。システム600は、シート材210の2次加工された部分品を受け取り、それらの2次加工された部分品をさらなる加工のために(例えば、使用者又はロボット装置によって)収容できる場所に運ぶように(図6Aの矢印622で示されるように)構成された担体620を含む。一の実施形態に於いて、担体620は、シート材210と真空チャック618の間に配置された金属シートを含む。技術者は、ここに於ける開示により、他の実施形態に於いては、担体620は、プラスチックなどの非金属性素材を含んでよいことを理解できるだろう。一の実施形態では、担体620は、コンベイヤのベルトを形成し、そのベルトは、レーザビームが停止又は遮断されているときに(図6A)、シート材210と真空チャック618の間を移動する。
【0030】
一の実施形態では、シート材210は、2次加工の間、第1のローラ610から第2のローラ612へ途切れることなく移動する。シート材210を加工するために、システム600は、加工ヘッド614と真空チャック618をそれぞれの最初の位置に位置付ける。図6Bに示すように、真空チャック628は、真空をオンにして(矢印624で示すように)、シート材210及び担体620の金属シートを真空チャック618に対して定位置に一時的に固定する。金属シートは、真空チャック618が担体620の金属シートに接触させた状態でシート材210を吸引できるように適切に穿孔されている。そして、下部のステージは、シート材210を既知の速度で、既知の位置に供給するように、真空チャック618を動かし、それによって、加工ヘッド614のX及びYのリニアステージとX及びYのガルバノメータとの正確な動き協調が可能となる。
【0031】
真空チャック618がシート材210を移動させている間に、加工ヘッド614は、それぞれのレーザビームを作動させ(又は遮断を解き)、シート材210の部分品を加工する。2次加工パターン1セットに対して2次加工プロセスの完了後、レーザビームは停止(又は遮断)される。その後、真空チャック618は、真空引きを停止し、その結果、シート材210及び担体620の金属シートは真空チャック618から離れる。一の実施形態では、シート材210のスムーズな分離を行うために、真空チャック618は、担体620の金属シートの孔を通して空気を送り出してよい。分離後、第1のローラ610及び/又は第2のローラ612は、シート材210を供給し続け、2次加工された部分品は、担体620に残る。そして、担体620は、シート材210の2次加工された部分品を収容場所まで運ぶ(図6Aの矢印622を参照)。
【0032】
第1のローラ610から第2のローラ612へ供給されているシート材210の1つの部分に対する2次加工が完了した後、真空チャック618、X及びYステージ、及びX及びYのガルバノメータは、シート材210のさらなる部分との再位置合せにために、それぞれの元の位置に戻る。
【0033】
シート材210が2次加工されているとき、残骸、又はシート層間に使用されていた接着剤が、不都合なことに、担体620の金属シートの表面にくっつく場合がある。システム600がシート材210と担体620の異なる部分を真空チャック618に固着させ続けると、残骸と接着材は、シート材210の異なる部分間で転送されるおそれがある。一の実施形態に従い、このような汚染転送を避けるため、担体620の金属シートは、シート材210の各部分に位置合せされる前に、清掃される。
【0034】
ある実施形態では、第1のローラ610及び/又は第2のローラ612は、シート材210の正確な速度制御を行わない。むしろ、下部のリニアステージを持つ真空チャック620が2次加工の間、速度と位置の正確な基準を提供する。しかし、ローラ610と612によって与えられる速度と真空チャック620によって与えられる速度との不都合に大きな差を避けるために、システム600は、速度コントローラとフィードバックセンサーを備え、相対速度を制御してよい。こうして、シート材210の各部分は、真空チャック618と迅速に位置合せすることができる。又速度制御によって、連続したシート材全体又はロール状に巻いたシート材全体の加工工程を通して、シート材210を、第1のローラ610から第2のローラ612へ実質的に一定速度で供給することが可能となる。
【0035】
ある実施形態に於いては、真空チャック618は、担体620の金属シートの移動だけを行う。他の実施形態に於いては、担体620の金属シートは、真空チャック618に固定されていないときは、他のローラ628(4個が示されている)によって駆動される。あるこのような実施形態に於いては、システム600は、適切な速度制御とフィードバックを備え、担体620の金属シートの速度と真空チャック618の速度との差を低減する。
【0036】
当業者には、上記で説明した実施形態の詳細に対して、本発明の基本的な原理から逸脱することなしに、多くの変更が可能であることは明らかである。本発明の範囲は、従って、後続の請求範囲によってのみ決定されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B