(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710888
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】基板切断装置及びこれを用いた基板切断方法
(51)【国際特許分類】
C03B 33/09 20060101AFI20150409BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20150409BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20150409BHJP
B23K 26/40 20140101ALI20150409BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
C03B33/09
B23K26/082
B23K26/38
B23K26/40
B28D5/00 Z
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-68321(P2010-68321)
(22)【出願日】2010年3月24日
(65)【公開番号】特開2010-229023(P2010-229023A)
(43)【公開日】2010年10月14日
【審査請求日】2010年3月24日
【審判番号】不服2013-24712(P2013-24712/J1)
【審判請求日】2013年12月16日
(31)【優先権主張番号】10-2009-0025451
(32)【優先日】2009年3月25日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲げん▼ ▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】盧 ▲てつ▼ 來
(72)【発明者】
【氏名】韓 圭 完
(72)【発明者】
【氏名】明 承 鎬
(72)【発明者】
【氏名】金 鐘 憲
(72)【発明者】
【氏名】金 俊 亨
(72)【発明者】
【氏名】金 成 坤
(72)【発明者】
【氏名】李 榕 秦
【合議体】
【審判長】
河原 英雄
【審判官】
中澤 登
【審判官】
真々田 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−21141(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/002705(WO,A1)
【文献】
国際公開第2003/013816(WO,A1)
【文献】
特表2008−508180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B23/00-35/26,40/00-40/04
B23K26/00-26/70
B28D 1/00- 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想の切断ラインに沿って切断される基板を支持するステージ部と、
前記切断ラインに沿って前記基板の一部を加熱するためのレーザービームを放出するレーザー発生部と、
前記レーザービームの光経路上に配置されて、前記切断ラインへ向かう前記レーザービームの傾斜角を揺らして光スイングさせる光スイング部と、
前記レーザービームによって加熱された前記基板を冷却する冷却部と
を含み、
前記レーザービームは、予め設定された光照射区間内で前記切断ラインに沿った方向に光スイングされ、
前記光照射区間は、前記切断ラインと同一な長さ方向を有して、前記切断ライン上に位置し、
前記光照射区間で前記基板が有する温度プロファイルは、前記基板の厚さ方向の上部において、二つ以上のピークを有する多ピークパターンに形成され、
前記二つ以上のピークは、前記切断ラインに垂直な方向ではなく、前記切断ラインに沿った方向に形成されることを特徴とする、基板切断装置。
【請求項2】
前記光スイング部及び前記ステージ部のうちの一つ以上を前記切断ラインと平行な方向に移送させる移送部をさらに含み、
前記光照射区間は、前記移送部によって前記切断ラインに沿って移動することを特徴とする、請求項1に記載の基板切断装置。
【請求項3】
前記冷却部は、前記光照射区間の移動方向を基準にして前記光照射区間の後尾端を冷却し、
前記冷却部によって冷却される直前の前記基板の上部と下部との間の温度差は50℃以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の基板切断装置。
【請求項4】
前記光スイング部は、前記レーザー発生部から放出されたレーザービームを反射させる反射部と、前記反射部を駆動させる駆動部とを含むことを特徴とする、請求項1乃至3のうちの何れか一つに記載の基板切断装置。
【請求項5】
前記駆動部は、前記レーザービームのスイング速度が不均一になるように前記反射部の動きを選択的に調節することを特徴とする、請求項4に記載の基板切断装置。
【請求項6】
前記光照射区間は、長さが100mm以内であることを特徴とする、請求項1乃至5のうちの何れか一つに記載の基板切断装置。
【請求項7】
前記光スイング部によって前記光照射区間内で前記レーザービームがスイングされる速度は、0.1m/s乃至10m/sの範囲内に属することを特徴とする、請求項1乃至6のうちの何れか一つに記載の基板切断装置。
【請求項8】
前記レーザー発生部として、炭酸ガスレーザーを含む赤外線系レーザーを用いることを特徴とする、請求項1乃至7のうちの何れか一つに記載の基板切断装置。
【請求項9】
前記基板は、厚さが0.3mm以下であって、ガラス素材から形成されることを特徴とする、請求項1乃至8のうちの何れか一つに記載の基板切断装置。
【請求項10】
ステージ部に仮想の切断ラインに沿って切断される基板を装着する段階と、
光スイング部によって前記基板に対する傾斜角を揺らして光スイングさせたレーザービームを前記切断ラインに沿って照射して、前記基板の一部を加熱する段階と、
前記基板の加熱された領域を冷却して、前記切断ラインに沿って前記基板を切断する段階とを含み、
前記レーザービームは、予め設定された光照射区間内で前記切断ラインに沿った方向に光スイングされ、
前記光照射区間は、前記切断ラインと同一な長さ方向を有して、前記切断ライン上に位置し、
前記光照射区間で前記基板が有する温度プロファイルは、前記基板の厚さ方向の上部において、二つ以上のピークを有する多ピークパターンに形成され、
前記二つ以上のピークは、前記切断ラインに垂直な方向ではなく、前記切断ラインに沿った方向に形成されることを特徴とする、基板切断方法。
【請求項11】
前記光スイング部及び前記ステージ部のうちの一つ以上を前記切断ラインと平行な方向に移送させる段階をさらに含み、
前記光照射区間は、前記光スイング部及び前記ステージ部のうちの一つ以上が移送されることによって前記切断ラインに沿って移動することを特徴とする、請求項10に記載の基板切断方法。
【請求項12】
前記光照射区間の移動方向を基準にして前記光照射区間の後尾端が冷却され、
冷却される直前の前記基板の上部と下部との間の温度差は50℃以上であることを特徴とする、請求項10又は11に記載の基板切断方法。
【請求項13】
前記光照射区間は、長さが100mm以内であることを特徴とする、請求項10乃至12のうちの何れか一つに記載の基板切断方法。
【請求項14】
前記光照射区間内で前記レーザービームがスイングされる速度は、0.1m/s乃至10m/sの範囲内に属することを特徴とする、請求項10乃至13のうちの何れか一つに記載の基板切断方法。
【請求項15】
前記レーザービームを放出するレーザー発生部として、炭酸ガスレーザーを含む赤外線系レーザーを用いることを特徴とする、請求項10乃至14のうちの何れか一つに記載の基板切断方法。
【請求項16】
前記基板は、厚さが0.3mm以下であって、ガラス素材から形成されることを特徴とする、請求項10乃至15のうちの何れか一つに記載の基板切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板切断装置及びこれを用いた基板切断方法に関し、より詳しくは、レーザービームを用いてガラス基板を効果的かつ安定的に切断することができる基板切断装置及びこれを用いた基板切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板切断装置は、ガラス系の基板をベース基板として用いる平板表示装置を所望の製品サイズにするため、基板を切断するのに用いられる。平板表示装置は、有機発光表示装置及び液晶表示装置などを含む。平板表示装置は、薄型化が可能な長所があり、薄型化に対する要求が益々増大している。最近では、0.3mm以下の厚さの非常に薄いガラス基板を用いた平板表示装置の需要が増加している実情がある。
【0003】
一般に、基板切断装置は、透明なガラス基板を切断するために炭酸ガス(CO
2)レーザー及び冷却手段を備えている。つまり、基板切断装置は、炭酸ガスレーザーで切断しようとするラインに沿ってガラス基板を瞬間加熱して熱による圧縮応力を発生させ、さらに冷却手段で加熱された部位を瞬間冷却して引張応力を発生させる。このような熱衝撃がガラス基板に加えられると、微細なマイクロクラックが発生して、ガラス基板が切断される。
【0004】
しかし、ガラス基板の厚さが薄くなるほど、温度差による応力でクラックを円滑に発生させて安定的にガラス基板を切断するのが難しくなる。これは、厚さの薄いガラス製のコップのほうが熱湯を注いでも割れにくい原理と同一である。
【0005】
従って、従来の基板切断装置は、薄いガラス基板を切断するのが難しい問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述した背景技術の問題を解決するためのものであって、本発明の第1の目的は、厚さの薄いガラス基板も効果的かつ安定的に切断することができる基板切断装置を提供することである。
【0007】
本発明の第2の目的は、前記基板切断装置を用いて基板を切断する基板切断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態による基板切断装置は、仮想の切断ラインに沿って切断される基板を支持するステージ(stage)部と、前記切断ラインに沿って前記基板の一部を加熱するためのレーザービームを放出するレーザー発生部と、前記レーザービームの光経路上に配置されて、前記切断ラインへ向かう前記レーザービームの傾斜角を揺らして光スイング(beam swing)させる光スイング部と、前記レーザービームによって加熱された前記基板を冷却する冷却部とを含む。
【0009】
前記レーザービームは、予め設定された光照射区間内で光スイングされ、前記光照射区間は、前記切断ラインと同一な長さ方向を有して、前記切断ライン上に位置する。
【0010】
前記光照射区間は、長さが100mm以内である。
【0011】
前記光スイング部によって前記光照射区間内で前記レーザービームがスイングされる速度は、0.1m/s乃至10m/sの範囲内に属することができる。
【0012】
前記光照射区間で前記基板が有する温度プロファイル(thermal profile)は、二つ以上のピークを有する多ピークパターンに形成され、前記二つ以上のピークは互いに異なるパターンに形成される。
【0013】
前記基板切断装置は、前記光スイング部及び前記ステージ部のうちの一つ以上を前記切断ラインと平行な方向に移送させる移送部をさらに含むことができ、前記光照射区間は、前記移送部によって前記切断ラインに沿って移動する。
【0014】
前記冷却部は、前記光照射区間の移動方向を基準にして前記光照射区間の後尾端を冷却し、前記冷却部によって冷却される直前の前記基板の上部と下部との間の温度差は50℃以上である。
【0015】
前記光スイング部は、前記レーザー発生部から放出されたレーザービームを反射させる反射部と、前記反射部を駆動させる駆動部とを含むことができる。
【0016】
前記駆動部は、前記レーザービームのスイング速度が不均一になるように前記反射部の動きを選択的に調節することができる。
【0017】
前記レーザー発生部として、炭酸ガス(CO
2)レーザーを含む赤外線系レーザーを用いることができる。
【0018】
前記基板は、厚さが0.3mm以下であって、ガラス系の素材から形成される。
【0019】
また、本発明の実施形態による基板切断方法は、ステージ(stage)部に仮想の切断ラインに沿って切断される基板を装着する段階と、前記基板に対する傾斜角を揺らして光スイング(beam swing)させたレーザービームを前記切断ラインに沿って照射して、前記基板の一部を加熱する段階と、前記基板の加熱された領域を冷却して、前記基板を前記切断ラインに沿って切断する段階とを含む。
【0020】
前記レーザービームは、予め設定された光照射区間内で光スイングされ、前記光照射区間は、前記切断ラインと同一な長さ方向を有して、前記切断ライン上に位置する。
【0021】
前記光照射区間は、長さが100mm以内である。
【0022】
前記光照射区間内で前記レーザービームがスイングされる速度は、0.1m/s乃至10m/sの範囲内に属することができる。
【0023】
前記光照射区間で前記基板が有する温度プロファイル(thermal profile)は、二つ以上のピークを有する多ピークパターンに形成され、前記二つ以上のピークは互いに異なるパターンに形成される。
【0024】
前記基板切断方法は、前記光スイング部及び前記ステージ部のうちの一つ以上を前記切断ラインと平行な方向に移送させる段階をさらに含むことができ、前記光照射区間は、前記光スイング部及び前記ステージ部のうちの一つ以上が移送されることによって前記切断ラインに沿って移動する。
【0025】
前記光照射区間の移動方向を基準にして前記光照射区間の後尾端が冷却され、冷却される直前の前記基板の上部と下部との間の温度差は50℃以上である。
【0026】
前記レーザービームを放出するレーザー発生部として、炭酸ガス(CO
2)レーザーを含む赤外線系レーザーを用いることができる。
【0027】
前記基板は、厚さが0.3mm以下であって、ガラス系の素材から形成される。
【発明の効果】
【0028】
本発明の基板切断装置により、厚さの薄いガラス基板も効果的かつ安定的に切断することができる。
また、本発明の基板切断方法により、厚さの薄いガラス基板を効果的かつ安定的に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1実施形態による基板切断装置を示した斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による実験例における光照射区間の温度プロファイルを示したグラフである。
【
図4】本発明の第1実施形態による実験例における基板の温度分布を示したグラフである。
【
図5】比較例における光照射区間の温度プロファイルを示したグラフである。
【
図6】比較例における基板の温度分布を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は多様な形態に具現され、ここで説明する実施形態に限られない。
【0031】
本発明を明確に説明するために、説明上不要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似した構成要素については、同一な参照符号を付ける。
【0032】
また、図面に示された各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜上任意に示したものであるため、本発明は必ずしも示されたものに限られない。
【0033】
図面では、多様な層及び領域を明確に表現するために、厚さを拡大して示した。そして、図面においては、説明の便宜上、一部の層及び領域の厚さを誇張して示した。層、膜、領域、板などの部分がある部分の「上」または「上部」にあるという時、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。
【0034】
以下、
図1を参照して、本発明の第1実施形態による基板切断装置100について説明する。
【0035】
図1に示したように、基板切断装置100は、ステージ(stage)部20、レーザー発生部30、光スイング部(beam swing)50、冷却部60、及び移送部80を含む。ステージ部20は、切断される基板10を支持する。例えば、基板10は、ガラス系の素材から形成されたガラス基板である。しかし、本発明による第1実施形態において、基板10がガラス基板にだけ限定されるのではなく、ガラス以外の非金属材料から形成された基板であってもよい。そして、ステージ部20に装着された基板10は、仮想の切断ライン(CL)に沿って切断される。
図1において、点線で示された切断ライン(CL)はこれから切断されるラインを示し、実線で示された切断ライン(CL)は切断されたラインを示す。
【0036】
レーザー発生部30は、切断ライン(CL)に沿って基板10を加熱するためのレーザービーム(LB)を放出する。レーザー発生部30としては、炭酸ガス(CO
2)レーザーなどの赤外線系レーザーが用いられる。炭酸ガスレーザーは、10600nmの波長を有するレーザービームを照射することができる。10600nmの波長を有するレーザービームは、水分子またはヒドロキシ基物質によく吸収され、ガラスに対する吸収性も非常に高い。しかし、本発明の第1実施形態において、レーザー発生部30として用いられる赤外線系レーザーが炭酸ガスレーザーに限定されるのではなく、波長が約780nm以上のレーザービームを照射することができる多様なレーザーが用いられる。
【0037】
光スイング部50は、レーザー発生部30から放出されて基板10上の切断ライン(CL)に向かうレーザービーム(LB)の光経路上に配置される。光スイング部50は、基板10に対するレーザービーム(LB)の傾斜角を微小に揺らして光スイング(beam swing)させる。つまり、レーザービーム(LB)は、光スイング部50によって予め設定された光照射区間(LBD)内で光スイングされる。光照射区間(LBD)は、切断ライン(CL)と同一な長さ方向を有して、切断ライン上に位置する。ここで、傾斜角は、基板10の板面に光スイングされたレーザービーム(SLB)が入射される角度をいう。つまり、基板10に対するレーザービーム(LB)の傾斜角を揺らすというのは、レーザービーム(LB)が基板10に入射される角度を変化させることを意味する。従って、光スイングされたレーザービーム(SLB)は、基板10の板面に入射される角度が所定の範囲内で変わるようになる。また、光スイングされたレーザービーム(SLB)がスイングされる方向は、切断ライン(CL)及び光照射区間(LBD)の長さ方向と平行である。
【0038】
図1の参照符号SLBは光スイングされたレーザービームを示す。光スイングされたレーザービーム(SLB)は、光照射区間(LBD)内で直線往復的に切断ライン(CL)に沿って基板10を加熱する。つまり、レーザービーム(SLB)が瞬間的に照射されるスポット領域が光照射区間(LBD)内で直線往復するようになる。
【0039】
光スイング部50は、
図2に示したように、レーザー発生部30から放出されたレーザービーム(LB)を反射させる反射部51と、反射部51を駆動する駆動部52とを含む。駆動部52は、
図2に示された構成以外にモータ及び制御部などの構成をさらに含むことができる。駆動部52は、反射部51の動きを調節して、レーザー発生部30から放出されたレーザービーム(LB)を光スイングさせる。この時、駆動部52は、レーザービーム(LB)のスイング速度が不均一になるように反射部51の動きを選択的に調節することができる。つまり、駆動部52は、反射部51が動く速度を不均一に選択的に調節することができる。
【0040】
また、光スイング部50は、反射部51及び駆動部52を収納するケーシング55をさらに含むことができる。ケーシング55は、レーザー発生部30から放出されたレーザービーム(LB)を内部に流入させるための光流入口551と、反射部51及び駆動部52によって光スイングされたレーザービーム(SLB)を基板10(
図1に図示)方向に照射するための光照射口555とを含む。光スイングされたレーザービーム(SLB)のスイング幅は光照射口555の大きさによって調節することができる。
【0041】
また、図示しなかったが、光スイング部50は、必要に応じて光スイングされたレーザービーム(SLB)が光照射区間(LBD)内で均一な焦点を有するように光照射口555に配置されたレンズをさらに含むこともできる。
【0042】
また、本発明の第1実施形態において、光スイング部50が
図2に示された構造に限定されるのではない。従って、光スイング部50は、多様な光学的な方法によって基板10に対するレーザービーム(LB)の傾斜角を微小に揺らして光スイング(beam swing)させることができる。
【0043】
図1に戻ってさらに説明すると、移送部80は、ステージ部20を切断ライン(CL)と平行な方向に移送させる。
図1の参照符号SDは移送部80がステージ部20を移送させる方向を示す。つまり、光照射区間(LBD)は、移送部80によって切断ライン(CL)に沿って移動する。しかし、本発明の第1実施形態がこれに限定されるのではなく、移送部80がステージ部20の代わりに光スイング部50及びレーザー発生部30を移送させることもできる。つまり、移送部80は、ステージ部20または光スイング部50を移送させて、光スイング部50によって光スイングされたレーザービーム(SLB)が照射される光照射区間(LBD)を切断ライン(CL)に沿って移動させる役割を果たす。
【0044】
冷却部60は、光スイングされたレーザービーム(SLB)によって加熱された基板10を冷却する。具体的には、冷却部60は、光照射区間(LBD)の移動方向(X軸方向)を基準にして光照射区間(LBD)の後尾端(CP)を冷却する。
【0045】
以下、本発明の第1実施形態による基板切断装置100の動作様態を具体的に説明する。
【0046】
まず、光スイング部50によって光スイングされたレーザービーム(SLB)が切断ライン(CL)上に位置した光照射区間(LBD)内の基板10を瞬間的に加熱する。この時、光照射区間(LBD)の基板10には熱による圧縮応力が発生する。そして、光スイングされたレーザービーム(SLB)が照射される光照射区間(LBD)は、移送部80によって切断ライン(CL)に沿って相対的に移動する。
【0047】
次に、冷却部60は、光照射区間(LBD)の移動方向(X軸方向)を基準にして光照射区間(LBD)の後尾端(CP)を瞬間的に冷却する。この時、冷却された部位には引張応力が発生する。
【0048】
このように急激な温度変化による熱衝撃が基板10に加えられると、微細なマイクロクラックが発生する。そして、このようなマイクロクラックによって基板10は切断ラインに沿って切断される。
【0049】
従って、基板10の厚さが薄くなるほど、基板10の上部と下部との間の急激な温度差が発生しにくいため、マイクロクラックが所望の方向に形成されなかったり、安定的に発生しなかったりする。
【0050】
しかし、本発明の第1実施形態によれば、光スイング部50によって光スイングされたレーザービーム(SLB)が光照射区間(LBD)の基板10を加熱するため、基板が例えば0.05mm以上0.3mm以下の厚さの薄いガラス系の素材から形成されたガラス基板であっても効果的かつ安定的に切断することができる。また、0.3mm以上の厚さの厚いガラス系の素材から形成されたガラス基板も安定的に切断することができる。
【0051】
これは、光スイングされたレーザービーム(SLB)によって加熱された光照射区間(LBD)の基板10が有する温度プロファイル(thermal profile)が、
図3に示された二つのピークを有する双ピークパターンに形成されるためである。この時、二つのピークは互いに異なるパターンに形成される。
図3に示された温度プロファイルから分かるように、光スイングされたレーザービーム(SLB)によって加熱された光照射区間(LBD)の基板10の温度分布は、非常に複雑で不均一になる。このため、加熱及び冷却を経る過程において基板10の内部により多くの圧縮応力及び引張応力が発生して、基板10にとり強い熱衝撃を安定的に加えることができるようになる。
【0052】
従って、0.3mm以下の厚さの薄いガラス系の素材から形成されたガラス基板も切断ライン(CL)に沿って効果的かつ安定的に切断することができるようになる。
【0053】
また、
図3では、双ピークパターンの温度プロファイルだけを示したが、本発明の第1実施形態がこれに限定されるのではない。従って、光照射区間(LBD)で基板10が有する温度プロファイルは、三つ以上のピークを有する多ピークパターンに形成されることもある。温度プロファイルが有するピークの数が増加するほど、熱衝撃によって基板10はより効果的に切断される。そして、温度プロファイルが有するピークの数は光スイング部50の駆動部52が反射部51の動きを調節して増加させることができる。
【0054】
また、光照射区間(LBD)は、長さが10mm以上100mm以下であるのが好ましい。光照射区間(LBD)の長さが100mmより長いと、光スイングされたレーザービーム(SLB)で光照射区間(LBD)の基板10の平均温度及び最高温度を高くするのが難しく、温度プロファイルを所望のパターンに形成するのが難しい。
【0055】
また、光スイング部50によって光スイングされたレーザービーム(SLB)は、光照射区間(LBD)内で0.1m/s乃至10m/sの範囲内の速度でスイングされる。つまり、0.1m/s乃至10m/sの範囲内の速度でレーザービーム(SLB)が瞬間的に照射されるスポット領域が光照射区間(LBD)内で直線往復するようになる。レーザービーム(SLB)のスイング速度が0.1m/sより遅かったり、10m/sより速くなったりすると、前述したような適切な温度プロファイルを得ることが難しい。
【0056】
また、冷却部60によって冷却される直前の基板10の上部と下部との間の温度差が50℃以上600℃以下であるのが好ましい。つまり、基板10の上部と下部との間の温度差が50℃以上である時に、基板10を冷却するのが好ましい。これは、基板10の上部と下部との間の温度差が大きいほど、冷却時の急激な温度変化による熱衝撃がより強くなるためである。
【0057】
このような構成によって、基板切断装置100は、基板10を効果的かつ安定的に切断することができる。
【0058】
以下、
図1及び
図3乃至
図6を参照して、本発明の第1実施形態による実験例及び比較例を対照して説明する。
【0059】
実験例は、光照射区間(LBD)の基板10が光スイングされたレーザービーム(SLB)によって加熱されるため、
図3に示したように、光照射区間(LBD)の基板10が有する温度プロファイルが双ピークパターンに形成される。また、光スイングされたレーザービーム(SLB)によって加熱された光照射区間(LBD)の基板10は、
図4に示したように、冷却時点で上部と下部との間の温度差が相対的に大きくなる。
【0060】
このような温度プロファイルを有する状態で光照射区間(LBD)の後尾端(CP)を急速に冷却すると、基板10に強い熱衝撃が加えられるようになる。従って、基板10は切断ライン(CL)に沿って効果的かつ安定的に切断される。
【0061】
一方、比較例は、基板が光スイングされない一般的なレーザービーム(LB)によって直接加熱されるため、
図5に示したように、光照射区間(LBD)の基板10が有する温度プロファイルが単一ピークパターンに形成される。また、一般的なレーザービーム(LB)によって加熱された光照射区間(LBD)の基板は、
図6に示したように、冷却時点で上部と下部との間の温度差が相対的に非常に小さくなる。
【0062】
このような温度プロファイルを有する状態で光照射区間(LBD)の後尾端(CP)を急速に冷却すると、基板10に加えられる熱衝撃は実験例と比べて相対的に弱くなる。
【0063】
従って、比較例は、実験例に比べて安定的に基板10を切断する能力が低いことが分かる。特に、比較例の場合、0.3mm以下の厚さの薄い基板を切断するのは容易でないことが予想できる。
【0064】
このように、実験例及び比較例の対照によって、本発明の第1実施形態による基板切断装置100が効果的かつ安定的に基板10を切断することができることが分かる。
【0065】
以下、
図1の基板切断装置100を用いて基板を切断する方法を説明する。
【0066】
まず、仮想の切断ライン(CL)に沿って切断しようとする0.3mm以下の厚さのガラス系の素材から形成されたガラス基板10をステージ部に装着する。この時、基板10の厚さが必ずしも0.3mm以下である必要はなく、0.3mm以上であってもよい。また、基板10が必ずしもガラス系の素材である必要はなく、ガラス以外の非金属材料から形成された基板10であってもよい。
【0067】
次に、基板10に対する傾斜角を微小に揺らして光スイングさせたレーザービーム(SLB)を切断ライン(CL)に沿って照射して、基板10の一部を加熱する。ここで、レーザービーム(SLB)は、炭酸ガス(CO
2)レーザーから放出される。そして、レーザービーム(SLB)は、予め設定された光照射区間(LBD)内で光スイングされる。光照射区間(LBD)は、切断ライン(CL)と同一な長さ方向を有して、切断ライン(CL)上に位置する。また、光照射区間(LBD)は、長さが100mm以内であり、光照射区間(LBD)内でレーザービーム(SLB)がスイングされる速度は、0.1m/s乃至10m/sの範囲内である。
【0068】
また、光スイングされたレーザービーム(SLB)によって加熱された光照射区間(LBD)で基板10が有する温度プロファイル(thermal profile)は、二つ以上のピークを有する多ピークパターンに形成され、二つ以上のピークは互いに異なるパターンに形成される。
【0069】
次に、光照射区間(LBD)を切断ライン(CL)に沿って移動させる。そして、光照射区間(LBD)の移動方向を基準にして光照射区間(LBD)の後尾端(CP)を冷却する。この時、冷却される直前の基板10の上部と下部との間の温度差は50℃以上になる。
【0070】
このように、基板10が光スイングされたレーザービーム(SLB)によって急速に加熱されて、さらに冷却されると、熱衝撃によってマイクロクラックが発生して、基板10は切断ライン(CL)に沿って安定的に切断される。
【0071】
このような基板切断方法によって、基板10をより効果的かつ安定的に切断することができる。
【0072】
以上で、本発明を好ましい実施形態によって説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲の概念及び範囲を逸脱しない限り、多様な修正及び変形が可能であることを本発明が属する技術分野に従事する者であれば簡単に理解することができる。
【符号の説明】
【0073】
100 基板切断装置、
10 基板、
20 ステージ部、
30 レーザー発生部、
50 光スイング部、
51 反射部、
52 駆動部、
55 ケーシング、
555 光照射口、
60 冷却部、
80 移送部、
CL 切断ライン、
CP 後尾端、
LB レーザービーム、
LBD 光照射区間、
SLB レーザービーム。