【実施例1】
【0018】
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
本発明のガードケーブル1の概要を、
図1〜
図3に示した。即ち、道路の中央分離帯の箇所に約2mの間隔を置いて支柱3を立設し、上下方向に間隔をあけて3本のケーブル2を同ケーブル2の両端に設置した端部支柱4により20kNで引張して準備し、同支柱3、3間に架設して構築したガードケーブル1の概要を示した。
【0019】
前記支柱3は、縦横比が異なる平面視が長方形の角形鋼管支柱である。したがって、同支柱3は、平面視の長辺側が短辺側に対して弱軸側31となり、前記短辺側が長辺側に対して強軸側32を有する構成となる。前記弱軸側31と強軸側32の寸法は、例えば100×50mmであり、前記弱軸側31は衝突荷重に対して積極的に変形する性質を発揮する。
【0020】
上記構成の角管支柱3を、前記弱軸側31が車両の進行方向R、Lに相対峙する配置で、地中へ予め埋設された鞘管5の中空部内へ抜き挿し可能に差し込んで立設されている。
一般的に走行中の車両は大型車では15°以内、小型車では20°以内の角度でガードケーブル1へ衝突することが多く確認されており、上記のように支柱3の弱軸側31を道路の横断方向へ向けていれば、車両は必然的に支柱3の弱軸側31へ衝突する。すると、支柱3は確実に道路の延長方向R(対向車が衝突した場合はL)へ倒れて、車線上に飛び出る虞を緩和できる。
【0021】
前記鞘管5は、特に
図3に示すように、支柱3の下端部をその中空部内へ挿入可能な縦横比を有し、高さは例えば約500mmであり、地中レベルと鞘管5の上面とが略一致するように埋設されている。
【0022】
前記鞘管5の埋設方法としては、先ず鞘管5に収まる略同形の棒状部材(図示省略)を同鞘管5内に収めた状態で地中へ400mm圧入する。そして、鞘管5を地中へ残したまま棒状部材を抜き取り、同鞘管5のみを地中へ更に100mm打設すると、鞘管5は地中へ500mm埋設され、且つその内部には高さ方向に100mmの土が入った状態となる。そのため、鞘管5内へ支柱3が挿入されると、前記鞘管5内の高さ100mmの土が支柱3の下端部を支持して、同支柱3の位置決めが行える。因みに、鞘管5へ支柱3を挿入する深さ位置は約400mmとなる。
上記のように支柱3は、鞘管5とボルトやフックその他の機械的取付具を使用せずに容易に抜き挿し可能に位置決めされている。
勿論、鞘管5の埋設方法は、上記の限りではなく、事前に地上から400mm掘削して設けた坑内に、同鞘管5を地上から500mmの位置まで打設することで、その内部に高さ方向100mmの土が入った状態として実施しても良い。
【0023】
更に、前記支柱3の上端部の弱軸側31、31の上端部には、前記3本のケーブル2…を抜き挿し可能に上縁を開口して下方へ切り欠いたスリット6が形成され、同スリット6、6内に上下方向に間隔をあけたケーブル2を道路の延長方向へ貫通する様態で、前後に位置する支柱間に架設される。
スリット6の形状は、図示のように上下方向に二つの屈曲点を有する形状に形成されるが、この限りではなく図示することは省略したが、二つの変曲点を有する湾曲形状、一つの屈曲点を有する屈曲形状、一つの変曲点を有する湾曲形状、並びに上部を屈曲点、下部を湾曲点
とする形状としても同様に実施できる。
【0024】
上記スリット6は、一方の弱軸側31方向から見ると左右対称になる形状(両弱軸側31、31に正対する方向に見ると同一形状)として、両スリット6、6内の貫通する上下の空き幅に変化を持たせている。したがって、車両が支柱3の弱軸側31へ衝突して同支柱3が倒れることに伴い、各ケーブル2…は、スリット6、6の側面形状と上下方向の幅の変化とにより、水平方向の摩擦抵抗を受けながら、確実に一本ずつ順に抜け、ケーブル2と支柱3とで衝突荷重を効果的に吸収することができる。
【0025】
上記のような構成のガードケーブル1において、同支柱3のスリット6内にケーブル2を、その上下の間隔を保持し定着させる抜き挿し可能な
ガードケーブル定着部材が、同スリット6内に設置される。本発明の
ガードケーブル定着部材は、スリット6の上下方向に複数貫通させるケーブル2…の上下の間隔を保持する間隔保持材7と支柱3の上端部に被せて各ケーブルをスリット6内に定着させる蓋材9とから構成される。勿論、いずれか一方を
ガードケーブル定着部材として実施しても良い。
【0026】
以下、間隔保持材7と蓋材9とで成る
ガードケーブル定着部材の具体的構成を
図3〜
図7に基づいて、順に説明する。
先ず、間隔保持材7の構成について説明する。本実施例ではケーブル2を上下方向に3本使用するため、使用する間隔保持材7は上下のケーブルの間となるため2個である。勿論、ケーブルの数に応じて個数は変化する。図示した前記間隔保持材7は、軽量な樹脂製の略四角柱とされ、角形鋼管支柱3の中空部内へ抜き挿し可能に挿入可能な大きさとされている。
この間隔保持材7は、その上端部と下端部の短辺側の側面の略中央位置に、上下の間隔保持材7、7同士を積み重ね状態で連接する雄部70と雌部71とが相対峙する配置にそれぞれ2個ずつ設けられている(図
4及び図5を参照)。前記雄部70と雌部71は、図示の通り軸心が一致する位置に配置されているので所謂ロケット鉛筆の如くに上下の間隔保持材7、7同士を積み重ね状態に容易に連接できる。勿論この限りではなく、例えば最上段に配置される間隔保持材においては、上端部に雌部を設ける必要が無く、下端部に雄部70を設けるのみの構成で実施することができる。
また、間隔保持材7の下方にはケーブル2を貫通させる凹部73が設けられており、上下の間隔保持材7、7を連接した際に、ケーブル2が貫通できる隙間を有する形状に開口している。凹部73はこの限りではなく、間隔保持材7の上方に同様に設けることも好適に実施される。
【0027】
上記支柱3の中空部内へ抜き挿し可能な間隔保持材7には、支柱3の外周面を囲んでスリット6の左右方向への開きを防止する目的のリング部材8がスリット6へ挿入する繋ぎ部分を介して連結されている。
具体的には、
図6A、Bに示すように、間隔保持材7の長辺側の上端縁でスリット6へ挿入する繋ぎ部分に設けたフック受け部72と、リング部材8の長辺側の上端縁でスリット6へ挿入する繋ぎ部分に設けたフック部80とを互いに掛け合わせることで一体的に組み合わされる。これらの連結手段が上記のようにスリットへ挿入する繋ぎ部分に設けられるので、支柱3の中空部内へ挿入する際に、前記連結箇所がスリット6内を移動してスムーズな挿入作業が行える。このリング部材8を組み合わせた間隔保持材7は、図示例では第二ケーブル2bの上部へ位置する第二の間隔保持材7bとし、リング部材8を組み合わせないものを第一の間隔保持材7aとして、2種類の間隔保持材7を使用しているが、この限りではなく、リング部材8を組み合わせた間隔保持材7bを全てに使用して実施することもできる。
【0028】
上記構成の間隔保持材7の下端部には、飛散を防止する構造として下側に位置するケーブル2を掴み持つケーブル掴み部74が設けられている。具体的には、
図5、
図7に示すように、ケーブル掴み部74は間隔保持材7の下端部を平面的に見てその外形部から中心方向に向かって伸びる、L字形状の二本の腕部74a、74aから成る。前記外形部とは、図示例では短辺側の内側両側面である。この腕部74aと74aの先端は中央位置に開口可能な開き部Wを有する。この開き部Wからケーブル2を嵌め入れることが可能となるが、その開き部Wはケーブル2の直径よりかなり小径にしている。
【0029】
また、腕部74a、74aの両先端部は、対峙させたとき逆V字形状となるように片側に傾斜した形状に形成(
図3参照)されて下方の開き幅W1を広くしてケーブル2を押し込んで嵌め入れやすくしている。しかし、一度腕部74a間を貫通して挿入されたケーブル2は、腕部74aの上方の空き幅はケーブル2の直径よりかなり小径な上記開き部Wであり、抜け出ることが難しい構成である(
図8B参照)。したがって、支柱3の転倒に伴い間隔保持材7が支柱3から抜け出る際に、同間隔保持材7はケーブル2に繋がったまま抜けて掴み状態が保持されるので、どこかに飛散することがないのである。
【0030】
上記腕部74a、74aの配置としては、
図7に示すように、間隔保持材7を平面的に見て略対角線上となる配置にすることが好適に実施される。腕部74aを対角に設けることで、ケーブル2を
ケーブル掴み部74
へ押し込む際に、腕部74
aとケーブル2とに角度が生じ、
図8A、Bに示したように、腕部74a、74aの先端の逆V字形状により前記開き部W(W1)が開きやすくなり、容易にケーブル2の嵌め入れが行え、ケーブル2を挿入する凹部73内へ収まると、
図8Bに示すように、前記小径の開き部Wによってケーブル2をしっかり掴むことができる。
因みに、上記した腕部74aは、L字形状である必要はない。複数本のケーブル2はこの間隔保持材7によりスリット6内において鉛直方向の同軸上で且つ支柱の鉛直方向の中心軸に交わるように架設されるので(
図5参照)、下側に位置するケーブル2を掴み持つ腕部74aは間隔保持材7の下端部を平面的に見てその外形部から中心方向に向かって伸びておれば、湾曲形状でも実施可能である。
【0031】
次に、
ガードケーブル定着部材を構成する雨水の進入を防止する上記蓋部9について説明する。蓋部9は樹脂製で支柱3の外形より大きく抜き挿し可能な形状とされており、
図4、
図5、
図9に示すように、下方に第三ケーブル2cを貫通させる凹部90が設けられている。また、その下端部にケーブル掴み部91が、上述した腕部74aを有するケーブル掴み部74と同様の構成と形状で設けられており、腕部91a、91aの先端にケーブル2cを嵌め入れ可能な開き部Wが設けられている。勿論、腕部91aの先端の形状も腕部74aと同様で奏する効果も同じである(
図9参照)。したがって、車両の衝突により支柱3が転倒することに伴って蓋部9が飛散することなく、前記第三ケーブル2cから抜けることなく繋がったままで掴み状態を保持して二次的被害が生じることを可及的に防止できる。
【0032】
ここで、
図4〜
図6、
図8から支柱3の前記スリット6、6内にケーブル2a〜cを定着させる手順を説明する。
先ず、スリット6、6内へ第一ケーブル2aが上方から挿入される。そのあと、支柱3の中空部内へリング部材8を組み合わせていない間隔保持材7aが挿入され、その下端部に設けたケーブル掴み部74の開き部Wからケーブル2aを嵌め入れて同ケーブル2aの上面に載置する。複数本のケーブル2はこの間隔保持材7によりスリット6内において鉛直方向の同軸上で且つ支柱の鉛直方向の中心軸に交わるように架設される。
【0033】
次に、第二のケーブル2bをスリット6、6内へ挿入し、第二の間隔保持材7bを支柱3の中空部内へ挿入する。この際、用意する第二の間隔保持材7bとは、上述したリング部材8を組み合わせたものであることが好ましい(
図6B参照)。挿入方法としては、間隔保持材7bは支柱3の中空部内へ、前記リング部材8は、支柱3の外周位置にくるように配置すると、両者を連結する係止め手段(フック受け部72、フック部80)が、支柱3のスリット6内に収まる位置となるのでスムーズに挿入することができる。
上記のように挿入した第二の間隔保持材7bは、その下端部の短辺側の二側面に設けた上記雄部70の軸芯を、第一の間隔保持材7
aのやはり上端部の短辺側の二側面に設けた上記雌部71へ合わせて挿入すると、上下の間隔保持材7a、7bを連接できると共に、間隔保持材7bのケーブル掴み部74の開き部W(W1)からケーブル2bを嵌め入れて同ケーブル2bの上面に載置させることができる。
続いて、第三のケーブル2cを挿入して、スリット6、6内へ3本のケーブル2を貫通させ、雨水の進入防止及びケーブルとの定着部として、支柱3の上端部に樹脂製の蓋材9が被せられる。この際にもやはり、蓋材9の下端部に設けたケーブル掴み部91の上記開き部W(W1)からケーブル2cを嵌め入れる。
【0034】
したがって、支柱3の弱軸側31へ車両が衝突して、支柱3が車両の進行方向へ倒れるに伴い、ケーブル2cがその衝突荷重により先ず蓋材9を外し、その後、各ケーブル2c〜2aが間隔保持材7a、7bと共にスリット6から抜け出る。その際には、間隔保持材7と蓋材9の各掴み部74、91によって各ケーブル2a〜2cにそれぞれぶら下がり飛散することを確実に防止することができる。