(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1については、画像情報全体の印字率のみを考慮して、サーマルヘッドの発熱を制御している。このため、上記特許文献1においては、印字率の分布によっては製版動作を開始することができる画像情報であっても、製版動作を開始させることができなかった。
【0008】
また、近年の製版長の長大化により、サーマルヘッドの保護の観点から、蓄熱の上限温度及び製版動作を開始する温度である製版開始温度を設定する必要がある。これらの温度制限をした場合には、上記特許文献1に加え、さらに、製版動作が可能な画像情報が限られてしまう虞がある。
本発明は、上記事情に鑑み、画像情報の印字率の分布を考慮することにより、製版動作の可能な範囲を拡大するとともに、その際のサーマルヘッドの蓄熱による影響を受けないサーマルヘッド制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)
複数のブロックにより形成されたサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドへ供給される画像情報に基づいて、少なくとも前記複数のブロック毎に印字率を算出する画像情報算出部と、
前記画像情報算出部における算出結果に基づいて、前記サーマルヘッドの制御を開始する制御部と、
を備えたことを特徴とするサーマルヘッド制御装置。
【0010】
(2)
前記画像情報算出部は、さらに、前記画像情報における製版長、及び前記画像情報全体の印字率を算出し、
前記制御部は、前記画像情報算出部における算出結果に基づいて、前記サーマルヘッドの制御を開始すること
を特徴とする(1)記載のサーマルヘッド制御装置。
【0011】
(3)
前記制御部は、前記サーマルヘッドの制御開始条件を格納した格納部と、を備えること
を特徴とする(2)記載のサーマルヘッド制御装置。
【0012】
(4)
前記画像情報算出部は、前記複数のブロック毎のブロック最大印字率を算出し、
前記制御部は、前記ブロック最大印字率が100%でない場合、前記格納部に格納された補正係数に基づいて、前記サーマルヘッドの制御を開始すること
を特徴とする(3)記載のサーマルヘッド制御装置。
【0013】
(5)
前記サーマルヘッドの温度を検知する温度検知部と、を備え、
前記制御部は、前記温度検知部による検知結果に基づいて、前記サーマルヘッドの制御を開始すること
を特徴とする(1)乃至(4)のいずれか一項に記載のサーマルヘッド制御装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第一のサーマルヘッド制御装置によれば、ブロック毎の印字率を算出するため、広範囲の製版動作が可能となる。
【0015】
本発明の第二のサーマルヘッド制御装置によれば、製版長および画像情報の全体印字率を考慮した上で、製版動作の可否を決定することができるので、サーマルヘッドの蓄熱による影響を受けず、より広範囲の製版動作が可能となる。
【0016】
本発明の第三のサーマルヘッド制御装置によれば、格納部のサーマルヘッド制御開始条件により、製版長及び全体印字率により、製版動作が可否を決定することができるので、サーマルヘッドの蓄熱の影響を受けず、さらにより広範囲の製版動作が可能となる。
【0017】
本発明の第四のサーマルヘッド制御装置によれば、ブロック最大印字率が100%でない場合、サーマルヘッドの制御を開始するため、ブロック毎に局所的に印字率が高い画像がない場合には、サーマルヘッドを蓄熱による影響から保護することができ、製版動作を可能とすることができる。
【0018】
本発明の第五のサーマルヘッド制御装置によれば、サーマルヘッドの温度を検知し、製版動作開始を決定することができるため、さらに、サーマルヘッドを蓄熱による影響から保護することができ、製版動作を可能とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本実施形態におけるサーマルヘッド制御装置を用いた製版装置100を説明する。
図1は、製版装置100の概略構成図である。
【0021】
本実施形態における製版装置100は、
図1に示すように、画像データである画像情報を製版装置100に出力するコンピュータ101に接続されている。なお、ユーザは、操作パネル125を操作することにより、製版装置100を操作することも可能である。
【0022】
孔版原紙107は、孔版原紙を巻装した孔版原紙ロール105にて、回転自在に支持されている。なお、孔版原紙107は、製版動作の初期設定として、サーマルヘッド103及びプラテンローラ113の間に挟持され、さらに、カッター部117を通して配置される。製版動作前には、先端検知部114により、孔版原紙107の先端位置が検出され、製版開始位置が設定される。
【0023】
サーマルヘッド103は、図示しない主走査方向に複数の発熱体を有し、孔版原紙107をサーマルヘッド103に押し当てながら搬送するプラテンローラ113と対向して配置される。なお、プラテンローラ113は、ステッピングモータにより構成される第一のステッピングモータ110により駆動され、第一ガイドローラ109及び第二ガイドローラ111は孔版原紙107により連れ回るように構成される。
【0024】
カッター部117は、孔版原紙107を切断するための機構である。カッター部117は、サーマルヘッド103によって製版された孔版原紙107がコンピュータ101からの画像情報に基づいて、所定量搬送された場合、孔版原紙107を切断するように駆動される。製版された孔版原紙107は、第二のステッピングモータ115により、回転駆動される原紙搬送ローラ対119及び第三ガイドローラ対121により搬送され、孔版原紙トレイ123に排出される。
【0025】
なお、排出された製版済みの孔版原紙107は、印刷動作が開始されるために、ユーザにより、不図示のスクリーン枠型に張られる。そして、張られた孔版原紙107上に、インクがのせられ、スキージ動作によって、対象物に印刷が行われるものであるが、詳細は省略する。
次に、
図2を参照して、製版装置200の制御ブロック構成図を説明する。
【0026】
図2に示すように、製版装置200は、コンピュータ203に接続された画像情報受信部205を備える。コンピュータ203は、画像情報を製版装置200に供給するために備えられる。なお、本実施形態では、コンピュータ203が接続された形態を説明したが、これに限られず、スキャナ部を備え、スキャナ部で読み取った画像情報を製版装置200に出力してもよい。画像情報受信部205は、コンピュータ203から供給された画像
情報の製版長、画像情報の全体印字率、及び複数のブロック毎にブロック最大情報を受信し、制御部207に出力する。
【0027】
制御部207は、供給された画像情報を算出する画像情報算出部209と、後述する製版動作を開始する製版動作開始条件を格納した格納部211を備えており、画像情報算出部209と格納部211は接続されている。
【0028】
画像情報算出部209は、画像情報受信部205で受信された画像情報に基づいて、製版データを生成し、さらにこの製版データに基づいて、後述
する印字率を算出する。
【0029】
また、温度検知部213は、サーマルヘッド103に備えられ、製版動作開始時のサーマルヘッド103の温度を検知する。そして、温度検知部213は、サーマルヘッド103の温度の検知結果を制御部207に出力する。
【0030】
そして、制御部207は、温度検知部213で検知したサーマルヘッド103の温度と、画像情報算出部209にて算出された製版長、画像情報の全体印字率、及び複数のブロック毎にブロック最大印字率と、格納部211に格納された製版動作開始条件とに基づいて、サーマルヘッド駆動部215の製版動作開始の可否を決定するとともに、製版動作開始が可の場合には、製版データに基づく駆動信号を出力する。
【0031】
次に、
図1及び
図2を用いて、製版装置100の作用を説明する。
まず、コンピュータ203において編集された画像情報が画像情報受信部205に入力され、制御部207に出力される。
【0032】
画像情報算出部209は、画像情報受信部205で受信された画像情報に基づいて、製版データを生成する。また、制御部207は、上述したように温度検知部213の検知結果及び画像情報算出部209の算出結果、及び格納部211格納された製版動作開始条件とに基づいて、製版動作開始の可否を決定する。製版可能と判断された場合、制御部207は、サーマルヘッド103の駆動を開始するように、サーマルヘッド駆動部215に製版データに基づく駆動信号を出力する。
【0033】
また、駆動信号が出力された場合、先端検知部114にて検知された状態の孔版原紙107について、第一のステッピングモータ110の駆動が開始され、第一ガイドローラ109及び第二ガイドローラ111によって孔版原紙107が搬送され、サーマルヘッド103によって製版動作が開始される。そして、孔版原紙107は、第一ガイドローラ109及び第二ガイドローラ111によって搬送されるとともに、サーマルヘッド駆動部215によってサーマルヘッド103の各発熱体が製版データに基づき駆動されて1走査ライン毎の穿孔処理が行われる。
【0034】
そして、孔版原紙107は、第二のステッピングモータ115により製版開始から所定量搬送された場合、カッター部117により、製版された孔版原紙107が切断される。そして、原稿搬送ローラ対119によりさらにニップされて、製版済の孔版原紙107が搬送される。そして、第三ガイドローラ121により搬送され、製版済の孔版原紙107が孔版原紙トレイ123に排出され、一連の製版動作が終了する。
【0035】
次に、
図3を参照して、画像情報の例として2つのパターンに基づいて、製版長、全体印字率及びブロック最大印字率との関係を実験結果に基づいて説明する。
【0036】
なお、本実施形態において、製版長L(mm)、全体印字率W(%)、ブロック最大印字率Y(%)は、以下のように定義される。
【0037】
製版長Lは、供給された画像情報においての
図3(a)及び(b)に矢印で示される搬送方向における製版される領域の最大長さである。
【0038】
全体印字率Wは、分子を製版される領域においてサーマルヘッドで穿孔されるデータ数にし、分母を製版される領域においてサーマルヘッドで穿孔されるデータ数に穿孔されないデータ数を加えたもの、の値である。
【0039】
ブロック最大印字率Yは、本実施形態においては4つのブロックに分けているため、それぞれのブロックの印字率のうち、最大の値を示すものである。
【0040】
なお、
図3(c)に示すように、サーマルヘッド103において、複数のブロックとは、主走査方向に配置されたサーマルヘッド全体を略均等に分割した1つの領域であって、サーマルヘッド駆動信号が出力された場合に、略同時に発熱する発熱体の集合を表す。なお、本実施形態においては(1)乃至(4)の4つのブロックに分割しているが、この数に限られるものではない。また、主走査方向で互い違いに千鳥状に配置されている場合であっても、ブロックを形成することができる。
【0041】
図3には、画像情報(a)及び(b)において、それぞれ全体印字率Wが50%の画像情報を示している。しかしながら、ブロック最大印字率Yは、
図3(a)においては、(1)及び(4)のブロックでは0%であっても、(2)及び(3)のブロックでは100%となるため、結果として100%である。一方、
図3(b)のブロック最大印字率においては、(1)乃至(4)のブロックで市松模様により、それぞれ50%となるため、結果として50%である。
【0042】
図3(a)及び(b)の画像情報において、製版動作を開始する際に温度検知部213により検知された温度は45℃、製版長は800mmで実験を行った。それぞれ実験後のサーマルヘッドの温度を測定した結果を示す。
【0043】
画像情報(a)については、サーマルヘッドの蓄熱による影響により、ピーク温度は68.0℃に達した。画像情報(b)については、ピーク温度が61.9℃に達した。なお、ピーク温度とは、サーマルヘッド103の製版がされている間にとりうる最大温度である。
【0044】
このように、
図3(b)に示されるように、ブロック最大印字率Yが50%と比較的低い画像情報の場合は、ピーク温度は、
図3(a)よりおよそ6.1℃ほど低い結果が得られた。本実施形態におけるサーマルヘッド103の最大許容温度Tmaxは67℃としてある。よって、本実施形態においては、製版中ならびに製版後の温度が67℃以下となる条件においてのみ製版するため、
図3(a)の画像情報の場合については製版不可となるが、
図3(b)の画像情報の場合について製版可能である。このように、全体印字率Wが50%で同一であっても、ブロック最大印字率Yが100%と50%のように異なる場合には、ブロック最大印字率Yによって製版可能な場合もある。
【0045】
次に、
図4を参照して、制御部207における格納部211に格納された製版動作開始条件の一例を説明する。縦軸に全体印字率Wをとり、横軸に画像情報全体から得られる製版長Lをとる。図中実線部分及びハッチング領域は、全体印字率Wに基づいた製版動作開始が可能な領域である。また図中実線部分は、許容全体印字率Zであり、製版長L及び全体印字率Wとの関係において、製版開始動作が許容される全体印字率の閾値である。
【0046】
製版長Lが0mm〜286mm以下の場合には、全体印字率が100%であるいわゆるベタ画像でも蓄熱の影響が少なく、製版可能となる。なお、製版長Lが0mm〜286mm以下の場合には、全体印字率が100%以下の画像情報であっても、製版動作開始が可能となる。
【0047】
製版長Lが286mmより大きく420mm以下の場合には、印字率が直線的に下降し、420mmの場合で全体印字率がおよそ70%以下でなければ製版動作を開始することができない。また、製版長Lが420mmより大きく800mm以下の場合には、上記と同様に印字率が直線的に下降し、800mmの場合で全体印字率はおよそ35%以下でなければ、製版動作を開始することができない。なぜなら、製版長Lが長大な場合については、製版長が長くなるにつれて、サーマルヘッドの蓄熱が増大するからである。
【0048】
次に、
図5及び
図6を参照して、本実施形態における製版装置の製版動作開始フロー、及びブロック最大印字率Yにより決定される補正係数Sを説明する。
【0049】
ステップ601にて、PCから画像情報が転送されると、ステップ603において、画像情報算出部209により画像情報が製版データに生成される。そして、画像情報から全体印字率W、サーマルヘッドのブロック最大印字率Y、製版長Lの画像情報が得られる。
【0050】
ステップ605にて、温度検知部により、サーマルヘッドの温度が検知される。本実施形態において、検知された温度Tが45℃より大きい場合には、ステップ607にて、操作パネル125上にエラー表示がなされ、製版動作は開始されない。ここで、本実施形態について、温度Tを45℃と設定した理由を説明する。仮に45℃よりも高い温度に設定した場合にあっては、製版開始温度が比較的高くなることにより、サーマルヘッドの温度が製版開始後に前述した最大許容温度Tmaxに到達することが早くなることで、製版可能な範囲を狭めることになり、好ましくない。また、45℃よりも低い温度に設定した場合にあっては、次の製版動作開始までに、サーマルヘッドの温度を設定温度以下に低下させねばならず、次の製版動作までの待機時間が長くなることにより、好ましくない。したがって、本実施形態においては、温度Tを45℃と設定している。
【0051】
ステップ605にて、検知された温度Tが45℃以下である場合には、全体印字率Wが
図4で示した製版動作開始条件の範囲内であるか否かが判断される。全体印字率Wが製版動作開始条件の範囲内であれば、製版動作が開始される。
【0052】
ステップ607にて、全体印字率Wが
図4で示した製版動作開始条件の範囲内でない場合には、ブロック最大印字率Yにより判断される。ブロック最大印字率Yが100%の場合には、ステップ609にて、エラー表示がなされ製版動作は開始されない。これはブロック最大印字率が100%の場合だと、画像情報上に、局所的にベタ画像があることになり、このベタ画像によってサーマルヘッドの温度が上昇してしまうためである。
【0053】
ステップ609にて、ブロック最大印字率Yが100%より小さい場合には、ステップ611にて、このブロック最大印字率Yを基に、
図4で示された製版長Lに基づき設定された許容全体印字率Z、及び後述する
図6で示された補正係数Sを取得する。
【0054】
ステップ613にて、条件式:全体印字率W≦許容全体印字率Z*補正係数Sを算出することにより、この条件式を満たす場合には、製版動作開始となる。この条件式を満たさない場合には、エラー表示となり、製版動作が開始されない。
【0055】
ここで、
図6による補正係数S及び上述した条件式について説明する。許容全体印字率Zは、印字率100%のブロックがある画像情報の実験結果に基づいて設定された値である。したがって、本実施形態においては、ステップ607でNoであった場合でも、例えば、ブロック最大印字率Yが50%であれば、ブロック最大印字率Yが100%の場合に比べ、サーマルヘッドの温度上昇が比較的緩やかとなる。このように、本実施形態においては、この温度上昇が緩やかになった分について、製版動作を広範囲にすることが主な目的である。このため、
図6に示す補正係数Sは、すべて1より大きな値であり、ブロック最大印字率Yが低くなればなるほどより大きい値に設定する。したがって、許容全体印字率Zに、
図6で示した1より大きい値の補正係数Sを乗じ、許容全体印字率Z*補正係数Sの値と全体印字率Wを比較し、上記条件式を満たした場合には、製版動作を可能とし、結果として、製版動作の範囲を広げることが可能となっている。
【0056】
したがって、本実施形態においては、製版長L、全体印字率W及びブロック最大印字率Yを加味することで、より製版動作が可能となる条件を広範囲とすることができる。なお、ステップ607乃至ステップ613までをサブルーチンαとする。
【0057】
以上のフローにより、
図3(a)及び(b)の画像情報を基に、ステップ605にて、温度が45℃以下と判断された場合について、サブルーチンαを用いて説明する。
【0058】
<画像情報(a)について>
製版長L :800mm
全体印字率W :50%
ブロック最大印字率Y:100%
【0059】
本実施形態においては、ステップ607において、全体印字率Wが50%及び製版長Lが800mmであるため、許容全体印字率Zと比較するとNOとなる。次に、ステップ609にて、ブロック最大印字率が100%となるため、NOで、エラー表示となり、製版動作が開始されない。
【0060】
<画像情報(b)>
製版長L :800mm
全体印字率W :50%
ブロック最大印字率Y:50%
【0061】
本実施形態においては、ステップ607において、全体印字率Wが50%及び製版長Lが800mmであるため、許容全体印字率Zと比較するとNOとなる。次に、ステップ609にて、ブロック最大印字率Yが100%ではないため、YESとなる。ステップ611において、ブロック最大印字率Yから全体印字率Wに対する補正係数Sを選択するため、
図6に示された補正係数表を確認する。
【0062】
図3(b)における画像情報においては、ブロック毎に、それぞれブロック最大印字率Y50%となるため、補正係数Sは1.53となる。
ブロック最大印字率Y 50%の場合の補正係数S:1.53
また、許容全体印字率Zの閾値を確認する。
製版長L 800mmの場合の許容全体印字率Z:34%
Z*S=34×1.53≒52%
【0063】
ステップ613において、W(50%)はZ*S(52%)よりも小さいため、製版動作開始となる。
【0064】
このように、全体印字率Wのみで判断した場合には、画像情報(a)及び(b)は双方とも製版動作不可となってしまう。しかしながら、本実施形態においては、さらにブロック最大印字率Yを考慮するため、
図3(b)の画像情報は製版開始可能となり、サーマルヘッドの蓄熱の影響を受けることなく、製版開始条件をさらにより広範囲にすることができる。
【0065】
次に、
図7を参照して、本発明の他の実施形態を説明する。本発明の他の実施形態においては、サーマルヘッド103を冷却する冷却ファンの動作を追加したものである。サーマルヘッド103は、製版動作が開始されると、蓄熱を開始するため、サーマルヘッド自体の温度が上昇する。本実施形態においては、サーマルヘッドの蓄熱による温度上昇の影響を防ぐため、冷却ファンを用いている。
【0066】
ステップ701において、PCから画像情報が転送されると、ステップ703において、画像情報算出部209により画像情報が製版データに生成される。画像情報から全体印字率W、サーマルヘッドのブロックごとのブロック最大印字率Y、製版長Lの画像情報が得られる。
【0067】
また、ステップ705にて、温度検知部により検知されたサーマルヘッドの温度に基づいて、製版動作開始またはエラー表示にて分かれる。なお、製版動作開始前の全体印字率・製版長・ブロック最大印字率の制御については、
図6に示すステップ607から613までに示したとおりの、ステップ707にてサブルーチンαで説明されるため、省略する。
【0068】
ステップ709にて、製版動作が開始されると、ステップ710にて、サーマルヘッド103は、ステップ703にて孔版原紙に対して加圧動作を行う。加圧動作を行った後、ステップ711にて、冷却ファンの動作が開始される。
【0069】
ステップ713にて、蓄熱による影響で温度が増大していくため、最大許容温度Tmaxを超えないように制御される。Tmaxを超える場合には、エラー表示がなされ、製版動作を停止する。なお、本実施形態においても、Tmaxは67℃と設定している。
【0070】
ステップ715にて、画像情報がすべて製版された状態になると、製版動作が終了となる。
【0071】
ステップ717にて、製版動作終了となった場合にあっては、ステップ719にて、サーマルヘッドが次の製版動作可能な製版動作開始温度以下になっているか否かを確認する。サーマルヘッドが製版動作開始温度以下の場合には、ステップ721にて、冷却ファンを停止し、ステップ725にて、サーマルヘッドの減圧動作を行う。ステップ719にて、温度が製版開始温度より大きい場合には、サーマルヘッドの加圧動作を維持した状態で、冷却ファンにて製版動作開始温度になるまで冷却を行う。
【0072】
ここで製版動作開始温度になるまでサーマルヘッドの加圧状態を維持した理由について説明する。加圧状態を維持しなかった場合には、次の製版動作開始までに、孔版原紙が冷却ファンの送風により、サーマルヘッド直下でばたついてしまう虞がある。孔版原紙がばたついた状態で搬送されてしまうと、次の製版動作開始において、水平状態で搬送されず、孔版原紙が搬送不良となってしまう虞がある。本実施形態においては、冷却ファン動作中に、サーマルヘッドの加圧動作を維持するように構成したため、孔版原紙のばたつきを押さえることができる。
【0073】
また、加圧動作状態は、
図1に示すようなプラテンローラ113により、孔版原紙107をサーマルヘッド103に押し当てている状態である。サーマルヘッドを、減圧動作で空気(気体)に晒しておく状態よりも、加圧動作でプラテンローラにより孔版原紙(固体)をサーマルヘッドに押し当てている状態の方が、気体よりも固体のほうが熱伝導率が高いため、サーマルヘッドを放熱させる効果がある。本実施形態において、発明者は、減圧動作と加圧動作について、双方のサーマルヘッドのピーク温度を測定した。加圧動作状態は、減圧動作状態よりも、サーマルヘッドのピーク温度は約5℃低い結果になり、放熱効果を確認できた。
【0074】
ステップ725にて、サーマルヘッドの減圧動作の後、一連の製版動作が終了となる。
【0075】
なお、本実施形態においては、冷却ファン停止の条件を製版開始温度(本実施形態においては45℃)とした。より好ましくは、冷却ファンを駆動及び停止する閾値温度Tfanを製版開始温度よりも下限の値(例えば、45℃より低い35℃)と設定してもよい。なぜなら、サーマルヘッド内で、製版開始温度まで下がったとしても、サーマルヘッドに蓄積された熱により、製版開始温度よりも若干温度上昇する虞があるからである。若干の温度上昇により、冷却ファンの動作及び製版開始動作が、サーマルヘッドの蓄熱により一義的に定まらず、冷却ファン及びサーマルヘッドの駆動効率を悪くしてしまう虞があるからである。