(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された熱交換器のチューブは車載用エアコンに用いることを想定している。室内用エアコンは一つのサイクルで冷暖房を兼用するため、冷媒通路が広いチューブが要求される。よって、室内用エアコンの熱交換器のチューブは、車載用エアコンの熱交換器のチューブよりも高強度であることが要求される。具体的には、冷房時に熱交換器内で冷媒が膨張するため、圧力損失の低いチューブが求められており、内径の大きい(冷媒通路断面積の大きい)チューブの使用が検討される。しかし、チューブの内径を大きくするとチューブの破壊圧力が低下するため、特許文献1に開示されるよりもさらに高強度のチューブが要求される。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、強度及び耐食性に優れた熱交換器用偏平管およびこの偏平管を用いた熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱交換器用偏平管は、偏平管本体と、偏平管本体の表面に形成されたろう付用塗膜と、からなり、偏平管本体が、
Si:0.11〜1.0質量%、Fe:0.1〜0.7質量%、Mn:0.8〜1.5質量%、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金からなり、ろう付用塗膜が、Si粉末1.0〜5.0g/m
2と、KZnF
3からなるフラックス4.0〜10.0g/m
2と、バインダ0.5〜3.0g/m
2と、からな
り、
ろう付け後の偏平管本体における結晶粒の平均粒径が60〜200μmであることを特徴とする。
アルミニウム合金におけるSi及びFeの含有量は、Si:0.47〜1.0質量%、Fe:0.1〜0.45質量%であることが好ましい。
【0008】
本発明では、偏平管本体をなすアルミニウム合金が、Cu:0.3質量%以下、Mg:0.5質量%以下、Ti:0.3質量%以下、Zr:0.3質量%以下、及びCr:0.3質量%以下、の1種又は2種以上を含有することが好ましい。
また本発明では、偏平管本体をなすアルミニウム合金がZn:0.01〜0.5質量%をさらに含有することが好ましい。
【0009】
さらに本発明で
は、ろう付け後の偏平管本体の肉厚方向における結晶粒の数が2個以上であることが好ましい。なお、本発明における偏平管本体の肉厚方向とは、追って
図3を用いて説明するように、偏平管本体に形成される通路壁の幅方向を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の偏平管によれば、偏平管本体を構成するアルミニウム合金のSi、Fe、およびMn含有量を上述の範囲に設定することにより、特許文献1に開示される従来のアルミニウム合金よりも強度をさらに向上することができる。本発明によるアルミニウム合金は、破壊圧力に対する強度が高いため、偏平管本体の内径を大きくして偏平管本体内を循環する冷媒の膨張による圧力損失を低下することができ、室内用エアコンの熱交換器に好適に用いることができる。
また、本発明によれば、表面にZn含有フッ化物系フラックスを含むろう付用塗膜が表面に塗布されていることにより、ろう付け後に偏平管本体の表面に均一なZn犠牲層が形成され、偏平管の耐食性を確保することがでる。
さらに本発明において、偏平管本体が上述の範囲にてCu、Mg、Ti、Zr、Crの一種または二種以上を含有することにより、偏平管のさらなる高強度化を図ることができる。
また本発明において、偏平管本体が上述の範囲にてZnを含有することにより、耐食性を向上することができる。
本発明の偏平管本体において、フィンとろう付けされた後の偏平管本体の肉厚方向に複数の結晶粒を形成すると、破壊圧力に対する強度を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では、室内用エアコンの熱交換器に用いられる偏平管本体31のアルミニウム合金の組成と、ろう付け前の偏平管本体31のフィン4が接合される表面に塗布されるろう付用塗膜5の組成および塗布量に特徴を有している。
【0013】
まず、偏平管本体31を構成する組成の限定理由を説明する。
偏平管本体31は、Si:0.05〜1.0質量%、Fe:0.1〜0.7質量%、Mn:0.8〜1.5質量%、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有する。
<Si:0.05〜1.0質量%>
Siは添加量に応じてアルミニウムマトリックス中に固溶し、強度および耐食性を向上させる。
また、Siの添加により生成するAl−Si系金属間化合物が再結晶の起点となり、結晶粒径を微細にし、破壊圧力に対する強度を向上させる効果を有する。また、合金中にFeが含まれる場合、合金中に析出するAl−Fe系金属間化合物が強カソードになり耐食性低下を引き起こすが、FeとSiとを同時に添加すると、Al−Fe系金属間化合物をAl−Fe−Si系金属間化合物として析出させることにより耐食性低下を抑制する。さらに、Siの添加により電位が上昇するため、偏平管本体31の表面に形成されたろう付用塗膜5の防食効果を増大させる。
強度および耐食性向上の効果を得るために、本発明はSiを0.05質量%以上含有させる。しかし、含有量が多くなると融点を低下させ、また、押出性を低下させる。そこで、本発明はSiの含有量を1.0質量%以下とする。好ましいSiの含有量は0.30〜0.90質量%、より好ましいSiの含有量は0.3〜0.7質量%である。
【0014】
<Fe:0.1〜0.7質量%>
Feは、Al−Fe系あるいはAl−Fe−Mn系金属間化合物の生成および組織の微細化により強度を向上させる。また、Feは、偏平管本体31とフィン4とのろう付け時にろう付用塗膜5から拡散するSiの析出を促進し、ろう付用塗膜5の犠牲防食効果を増大させる。さらに、Mnの析出も促し押出性を向上させる。さらに、Fe系の晶出物が材料中に微細に存在するため、それらが孔食の発生源となり深い孔食の発生を抑制する効果がある。
これら効果を得るために、本発明はFeを0.1質量%以上含有させる。しかし、含有量が多くなるとAl−Fe系金属間化合物が過剰に生成し、カソードの過剰分布による耐食性低下、Al−Fe−Mn系の巨大金属間化合物の生成による鋳造性と押出性の低下を引き起こすので、Feの含有量は0.7質量%以下とする。好ましいFeの含有量は0.1〜0.60質量%、より好ましいFeの含有量は0.15〜0.45質量%である。
【0015】
<Mn:0.8〜1.5質量%>
Mnは、添加量に応じてアルミニウムマトリックス中に固溶しあるいはAl−Mn系金属間化合物として析出し、強度を向上させる。また、Mnの添加は、偏平管本体31とフィン4とのろう付け時にろう付用塗膜5から拡散するSiの析出を促進し、ろう付用塗膜5の犠牲防食効果を増大させる。さらに高温での変形抵抗が高まるのでろう付け性を向上させる効果を有する。またさらにMn添加により、Al−Fe系金属間化合物がAl−Fe−Mn系金属間化合物として析出するので耐食性低下を抑制する。
これら効果を得るために、本発明はMnを0.8質量%以上含有させる。しかし、含有量が多くなると粗大なAl−Mn系金属間化合物が多数生成し、押出性が著しく低下する。そこで、本発明はMnの含有量を1.5質量%以下とする。好ましいMnの含有量は0.85〜1.45質量%、より好ましいMnの含有量は1.0〜1.30質量%である。
【0016】
本発明は偏平管本体31を構成するアルミニウム合金が、上述の元素の他、Cu:0.3質量%以下、Mg:0.5質量%以下、Ti:0.3質量%以下、Zr:0.3質量%以下、及びCr:0.3質量%以下、の1種又は2種以上を含有することもできる。これらの任意元素は、偏平管本体31の強度のさらなる向上に寄与する。
<Cu:0.3質量%以下>
Cuの添加は、強度の向上と電位の上昇に効果がある。しかし、含有量が多くなると、融点を低下させ、押出性が低下するとともに腐食速度が増加し、耐食性が低下する。そこで、本発明はCuの含有量を0.3質量%以下とする。好ましいCuの含有量は、0.01〜0.2質量%である。
【0017】
<Mg:0.5質量%以下>
Mgは強度を向上させる目的で添加する。しかし、含有量が多くなると高温変形抵抗が大きくなり特に押出性が低下し、ろう付け性も低下する恐れがある。そこで、本発明はMgの含有量を0.5質量%以下とする。好ましいMgの含有量は0.01〜0.35質量%である。
【0018】
<Ti:0.3質量%以下>
Tiは強度を向上させる目的で添加する。しかし、含有量が多くなると押出性が低下する恐れがある。そこで、本発明はTiの含有量を0.3質量%以下とする。好ましいTiの含有量は0.02〜0.15質量%である。
【0019】
<Zr:0.3質量%以下>
Zrは強度を向上させる目的で添加する。しかし、含有量が多くなると押出性が低下する恐れがある。そこで、本発明はZrの含有量を0.3質量%以下とする。好ましいZrの含有量は0.02〜0.15質量%である。
【0020】
<Cr:0.3質量%以下>
Crも強度を向上させる目的で添加する。しかし、含有量が多くなると押出性が低下する恐れがある。そこで、本発明はCrの含有量を0.3質量%以下とする。好ましいCrの含有量は0.02〜0.15質量%である。
【0021】
本発明の偏平管本体31を構成するアルミニウム合金は、上述の組成の他、Zn:0.01〜0.5質量%をさらに含有することもできる。
<Zn:0.01〜0.5質量%>
Znは耐食性の向上にとって有効な元素である。しかし、0.5質量%を超えて含有すると、耐食性が劣化するとともに、合金の融点が低下することにより押出性の低下を招く恐れがある。したがって、Znを含有させる場合、Zn:0.01〜0.5質量%とする。好ましいZnの含有量は0.05〜0.25質量%である。
【0022】
次に、偏平管本体31の表面に塗布されるろう付用塗膜5を構成する各組成物および塗布量の限定理由について説明する。
ろう付用塗膜5は、Si粉末:1.0〜5.0g/m
2、KZnF
3からなるフラックス:4.0〜10.0g/m
2、バインダ:0.5〜3.0g/m
2を含有する。
<Si粉末>
Si粉末は、ろう付時に溶融してろう液となり偏平管本体31を構成するAlと反応し、ヘッダーパイプ1、2と偏平管本体31を、また、偏平管本体31とフィン4を、各々接合するろうを形成する。このろう液にフラックス中のZnが均一に拡散し、偏平管本体31の表面に均一に広がる。液相であるろう液内でのZnの拡散速度は固相内の拡散速度より著しく大きいので、偏平管本体31の表面のZn濃度がほぼ均一となり、これにより均一なZn拡散層が形成され、偏平管本体31の耐食性を向上することができる。
【0023】
Si粉末塗布量:1.0〜5.0g/m
2
Si粉末の塗布量が少ないと、ろう付性が低下し、一方、過剰に塗布しても、ろう付性が十分に得られない。このため、塗膜におけるSi粉末の含有量は1.0〜5.0g/m
2とする。
通常、Si粉末粒度D(50)は1〜6μmのものが用いられる。なお、D(50)とは、体積割合で小さい粒から累積し、全体の50%となる粒の粒径のことである。これはレーザ光散乱法で測定することができる。
【0024】
<KZnF
3からなるフラックス>
KZnF
3からなるフラックスは、ろう付けに際し、偏平管本体31の表面にZn拡散層を形成し、耐孔食性を向上させる効果がある。また、ろう付け時に偏平管本体31の表面の酸化物を除去し、ろうの広がり、ぬれを促進してろう付性を向上させる作用を有する。
フラックス塗布量:4.0〜10.0g/m
2
KZnF
3からなるフラックスの塗布量が4.0g/m
2未満であると、Zn拡散層の形成が不十分になり、偏平管本体31の耐食性が低下する。また、被ろう付材(偏平管本体31)の表面酸化皮膜の破壊除去が不十分なためにろう付不良を招く。一方、塗布量が10.0g/m
2を超えると、フィレット7(
図2(b))の特に共晶部のZn濃縮が顕著になり、フィレット7の耐食性が低下して、フィン4の偏平管本体31からの脱落を加速する。このため、KZnF
3からなるフラックスの塗布量を4.0〜10.0/m
2とする。
通常、フラックス粒度D(50)は1〜6μmのものが用いられる。D(50)は、Si粉末粒の度と同じである。
【0025】
<バインダ>
ろう付用塗膜5には、Si粉末、KZnF
3からなるフラックスに加えてバインダを含む。バインダの例としては、好適にはアクリル系樹脂を挙げることができる。
バインダの塗布量が0.5g/m
2未満であると、ろう付性が低下する。一方、バインダの塗布量が3.0g/m
2を超えても、ろう付性が低下する。このため、バインダの塗布量を0.5〜3.0/m
2とする。なお、バインダは、通常、ろう付の際の加熱により蒸散する。
【0026】
次に、本発明の偏平管3の製造方法について説明する。
偏平管本体31は、アルミニウム合金ビレットを半連続鋳造法によって作製し、熱間押出を行なうことで製造される。押出性の向上のためにビレットの均質化処理を行うことが好ましい。なお、熱間押出前にビレットを加熱する工程は均質化処理を兼ねているとみなすことができる。
【0027】
このように製造された偏平管本体31は、
図3の断面図に示されるように、平坦な表面(上面)3aおよび裏面(下面)3bと、これら表面3aと裏面3bとを繋ぐ円弧状の側面3dとを備える。偏平管本体31の内部には、複数の通路3cと通路壁3fとが形成され、通路3cは、隣接した通路壁3fにより隔てられている。なお、通路3cの個数は5つに限られず、側面3dの形状は円弧状に限られるものではない。
それぞれの通路壁3fに1個又はそれ以上の個数の結晶粒が形成される。例えば、
図3の図中左側の通路壁3fには結晶粒Cが1つ形成された例を示し、また、図中右側の通路壁3fには結晶粒Cが2つ形成されている例を示している。
【0028】
熱間押出を行った後、通常は冷間加工を行うが、本発明ではこの冷間加工を低歪で行う(低歪加工)。後に行われるろう付け時に偏平管本体31は再結晶されるが、この冷間加工を加工率5%以下で行うことで偏平管本体31に再結晶の核を多く存在させることができる。これにより、ろう付け後の偏平管本体31の通路壁3fの幅方向(肉厚方向)の結晶粒の数を2個以上にすることができる。このようにすると、偏平管本体31に対して圧力が負荷されても、通路壁3fにおける隣り合う結晶粒同士のずれによりアルミニウム合金の伸びが吸収されるため、偏平管本体31の破壊圧力に対する強度が向上する。なお、通路壁3fの幅方向の結晶粒の数を2個以上にする上で、冷間加工の加工率はあくまでも最も支配的な要因ではあるが、ろう付けの温度などの条件も関与するので、実際に結晶粒の数を制御するにはこれらの条件も考慮する必要がある。なお、冷間加工の加工率が10%以上となると、偏平管本体31の通路壁3fの幅方向における結晶粒の数が1個になりやすい傾向がある。
【0029】
偏平管本体31の表面へのろう付用塗膜5の塗布方法は特に限定されるものではなく、スプレー法、シャワー法、フローコータ法、ロールコータ法、刷毛塗り法など適宜な方法を用いることができる。ろう付用塗膜5の偏平管本体31への塗布範囲は、偏平管本体31とフィン4とが確実に接合されるのであれば、偏平管本体31の全表面としてもよく、また、偏平管本体31の一部表面としてもよい。
【0030】
本発明の偏平管本体31を使用した室内用エアコンの熱交換器100は、車載用エアコンの熱交換器とほぼ同じ工程で製造される。
すなわち、
図2(a)に示すように、ろう付用塗膜5が塗布された偏平管本体31の一端をヘッダーパイプ1のスリット6に挿入し、また、フィン4を偏平管本体31に組み付ける。このように組み付けられた熱交換器組立体101をろう材の融点以上の温度に加熱しろう付用塗膜5を溶解させ、
図2(b)に示すようにヘッダーパイプ1、2と偏平管本体31、偏平管本体31とフィン4とが接合された熱交換器100が製造される。
【0031】
また、
図4に示すプレートフィン40の複数のスリット60に複数の偏平管本体31が挿入・接合されてなる熱交換器200は、次のように製造される。プレートフィン40の気流方向の前後縁両端部を切り欠いてスリット60(偏平溝)を複数段設け、これらのスリット60にプレートフィン40の前後縁両端からろう付用塗膜5が塗布された複数の偏平管本体31を挿入し、プレートフィン40に偏平管本体31に組み付ける。そして、偏平管本体31をろう材の融点以上の温度に加熱しろう付用塗膜5を溶解させ、偏平管本体31とプレートフィン40とが接合されることで、熱交換器200が製造される。
【0032】
[実施例]
表1、2に示す組成のアルミニウム合金(表1、2の残部はAl及び不可避不純物)を溶製し、均質化処理後、熱間押出を行い
図3に示す横断面形状(肉厚0.5mm×幅10mm×全体厚5mm:側面のR2.5mm)の偏平管本体31を作成した。
熱間押出の後、チューブ表面の荒れを観察し、以下の基準で押出性を評価した。
押出性:良好;○ 荒れ発生;△ 割れ発生;×
その結果を表5、6に示す。
【0033】
次に、熱間押出により偏平管本体31を作製した後、偏平管本体31に冷間圧延を行った。なお、冷間圧延の加工率は、実施例42の偏平管本体31の加工率を10%とした他は、全ての実施例および比較例の偏平管本体31について5%以下とした。
【0034】
低歪加工が施された偏平管本体31の表面に、表3、4に示す組成のろう材塗膜をロール塗布し乾燥させた後、アルミニウム合金製のプレートフィン40に偏平管本体31を組み付け、590〜600℃で3分間保持するろう付けを行い、
図4に示す熱交換器200を作製した。その後、ろう材の接合状況を観察し以下の基準でろう付性の評価を行った。
ろう付性:接合率90%以上;○ 接合率70%以上90%未満;△ 接合率70%未満;×
また、ろう付後の熱交換器100をSWAAT(ASTM規格G85−85)20日の腐食試験に供し、試験後の偏平管本体31に生じた腐食深さを測定し、耐食性を評価した。
チューブ耐食性:腐食深さが肉厚の1/4未満;○
腐食深さが肉厚の1/4以上1/2未満;△
腐食深さが肉厚の1/2以上;×
さらに、ろう付後の偏平管本体31に耐圧試験を行った。具体的には、偏平管本体31の通路3cに内圧を負荷し、破壊が生じる圧力を測定した。評価基準は以下の通りである。
破壊圧力:15MPa以上;○ 15MPa未満;×
また、ろう付後に、偏平管本体31の結晶粒Cの平均粒径と、通路壁3fの幅方向における結晶粒Cの個数とを求めた。
以上の結果を表5、6に示す。
【0035】
表5、6より、以下のことがわかった。
Si、Fe、Mnを本発明の範囲内で含むと、押出性、ろう付け性、耐食性、破壊圧力に対する強度がともに優れる。
これに対し、Siが本発明の範囲より少ないと、破壊圧力に対する強度が劣り、Siが本発明の範囲より多いと、押出性が劣る(比較例1、2)。
Feが本発明の範囲より少ないと、破壊圧力に対する強度が劣り、Feが本発明の範囲より多いと、耐食性が劣化する(比較例3、4)。
Mnが本発明の範囲より少ないと、破壊圧力に対する強度が劣り、Mnが本発明の範囲より多いと、押出性が劣る(比較例5、6)。
また、ろう付用塗膜を構成するSi粉末、KZnF
3からなるフラックス、バインダが本発明の範囲内で塗布されると、押出性、ろう付け性、耐食性、破壊圧力に対する強度がともに優れる。
これに対し、Si粉末の塗布量が本発明の範囲を外れると、ろう付け性が劣る(比較例7、8)。
KZnF
3からなるフラックスの塗布量が本発明の範囲より少ないと、ろう付け性が劣り、ろう付用塗膜の塗布量が本発明の範囲より多いと、耐食性が劣る(比較例9、10)。
バインダの塗布量が本発明の範囲を外れるとろう付け性が劣る(比較例11、12)。
【0036】
Cu、Mg、Zn、Ti、Zr、Crを本発明の範囲で含有すると、破壊圧力に対する強度が向上する(実施例17〜34)。
また、偏平管本体31の通路壁3fの幅方向における結晶粒の数が2個以上であると、破壊圧力に対する強度が優れる(実施例41、実施例42)。
【0043】
上記の実施の形態では、
図1および
図4に示す室内用エアコンの熱交換器に用いられる偏平管3について説明したが、本発明の偏平管3はこの用途に限定されるものではない。また、偏平管本体31は、
図3に示す形態に限定されず、通路3cの形状や個数を変更することもできる。この他にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。