特許第5710949号(P5710949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710949
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】スロットル装置
(51)【国際特許分類】
   B62K 23/04 20060101AFI20150409BHJP
   B62J 99/00 20090101ALI20150409BHJP
【FI】
   B62K23/04
   B62J99/00 J
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-270143(P2010-270143)
(22)【出願日】2010年12月3日
(65)【公開番号】特開2012-116423(P2012-116423A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】土切 明彦
(72)【発明者】
【氏名】谷口 友洋
【審査官】 田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−143508(JP,A)
【文献】 米国特許第03752006(US,A)
【文献】 特開2010−168025(JP,A)
【文献】 特表2010−513122(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0182514(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102007062180(DE,A1)
【文献】 特開2010−149684(JP,A)
【文献】 特開2009−227178(JP,A)
【文献】 実開平03−050905(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0107789(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 23/04
B62J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が具備するハンドルパイプの先端側に回転可能に配設され、運転者が操作可能なスロットル操作手段と、
該スロットル操作手段と連動して回転する磁石と、
該磁石からの磁力の変化を検出し、前記スロットル操作手段の操作角度を検出可能な検出手段と、
前記スロットル操作手段に対して初期位置に戻る方向に付勢するリターンスプリングと、
前記ハンドルパイプにおける前記スロットル操作手段の基端側近傍に固定されたケースと、
を具備し、前記検出手段で検出された前記スロットル操作手段の操作角度に基づき車両のエンジンが制御されるスロットル装置において、
前記検出手段は、前記ケース内に収容されるとともに、前記リターンスプリングは、前記ハンドルパイプ内に配設されるものとされ、
前記ハンドルパイプ内に圧入可能な外径を有し、前記ハンドルパイプの先端側内部に固定される固定部材と、
前記ハンドルパイプの先端側内部に配設され、前記スロットル操作手段と共に回転する回転部材と、
前記リターンスプリングを収容しつつ前記固定部材に取り付けられた収容部材と、
を具備するとともに、前記リターンスプリングは、一端が前記固定部材に固定されつつ他端が前記回転部材に固定され、且つ、前記回転部材を当該収容部材内で回転自在に取り付けることにより、前記固定部材を前記ハンドルパイプの最も先端側に位置させつつ当該リターンスプリング、固定部材、回転部材及び収容部材を一体化して前記ハンドルパイプの先端側内部にてリターンスプリング用ユニットが構成されたことを特徴とするスロットル装置。
【請求項2】
前記スロットル操作手段と連動して回転可能とされるとともに、周方向に亘ってギアが形成された連動部材と、
該連動部材のギアと噛み合う従動ギアが形成されて当該連動部材と連動して回転可能とされるとともに、前記磁石が一体的に形成された従動部材と、
を具備するとともに、前記ケース内に当該連動部材及び従動部材が収容されたことを特徴とする請求項1記載のスロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットル操作手段の操作角度に基づき車両のエンジンが制御されるスロットル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の二輪車においては、スロットルグリップの回転角度をポテンションメータ等のスロットル開度センサにて検出し、その検出値を電気信号として当該二輪車が搭載する電子制御装置等に送るよう構成されたものが普及されるに至っている。そして、かかる検出信号に基づき電子制御装置が所定の演算を行い、その演算結果に基づいてエンジンの点火時期或いは排気バルブの開閉が制御されるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、上記構成のスロットル装置が開示されている。かかるスロットル装置は、スロットルグリップ(スロットル操作手段)と連動して回転可能なローラと、該ローラの外周面に形成された歯(ギア)と噛み合う歯(従動ギア)が形成された回転体と、回転体に一体的に形成された磁石と、該磁石の磁力の変化を検知してスロットルグリップの操作角度を検知する角度センサと、スロットルグリップを初期位置の方向に付勢するリターンスプリングと、これらローラ、回転体、磁石、角度センサ、リターンスプリングを収容するケースとから主に構成されていた。
【0004】
このスロットル装置によれば、スロットルグリップを把持しつつ操作して回転させると、ローラが連動して回転し、それと噛み合ったギアにて回転体が回転することとなる。この回転体の回転角度を角度センサにて検知することにより、スロットルグリップの操作角度が分かるので、当該操作角度に応じた電気信号を車両のECU等に送り、エンジンの出力制御が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−41259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のスロットル装置においては、ケース内に装置を構成する種々構成部品に加えてリターンスプリングが配設されているため、当該ケースが大型化してしまうという不具合があった。また、本出願人は、ケースの小型化を図るべく、角度センサを含む装置を構成する種々構成部品をハンドルパイプ内に配設させることを検討するに至ったが、その場合、角度センサの配線コードを取り出すために、例えばハンドルパイプに孔明け加工等を施す必要が生じてしまい、作業性及びコストが悪化してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ケースの小型化を図ることができるとともに、作業性及びコストの悪化を回避させることができるスロットル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、車両が具備するハンドルパイプの先端側に回転可能に配設され、運転者が操作可能なスロットル操作手段と、該スロットル操作手段と連動して回転する磁石と、該磁石からの磁力の変化を検出し、前記スロットル操作手段の操作角度を検出可能な検出手段と、前記スロットル操作手段に対して初期位置に戻る方向に付勢するリターンスプリングと、前記ハンドルパイプにおける前記スロットル操作手段の基端側近傍に固定されたケースとを具備し、前記検出手段で検出された前記スロットル操作手段の操作角度に基づき車両のエンジンが制御されるスロットル装置において、前記検出手段は、前記ケース内に収容されるとともに、前記リターンスプリングは、前記ハンドルパイプ内に配設されるものとされ、前記ハンドルパイプ内に圧入可能な外径を有し、前記ハンドルパイプの先端側内部に固定される固定部材と、前記ハンドルパイプの先端側内部に配設され、前記スロットル操作手段と共に回転する回転部材と、前記リターンスプリングを収容しつつ前記固定部材に取り付けられた収容部材とを具備するとともに、前記リターンスプリングは、一端が前記固定部材に固定されつつ他端が前記回転部材に固定され、且つ、前記回転部材を当該収容部材内で回転自在に取り付けることにより、前記固定部材を前記ハンドルパイプの最も先端側に位置させつつ当該リターンスプリング、固定部材、回転部材及び収容部材を一体化して前記ハンドルパイプの先端側内部にてリターンスプリング用ユニットが構成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項1記載のスロットル装置において、前記スロットル操作手段と連動して回転可能とされるとともに、周方向に亘ってギアが形成された連動部材と、該連動部材のギアと噛み合う従動ギアが形成されて当該連動部材と連動して回転可能とされるとともに、前記磁石が一体的に形成された従動部材とを具備するとともに、前記ケース内に当該連動部材及び従動部材が収容されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、検出手段は、ケース内に収容されるとともに、リターンスプリングは、ハンドルパイプ内に配設されたので、ケース内にリターンスプリングを配設させることがなく、且つ、ハンドルパイプ内に検出手段を配設させることがないことから、ケースの小型化を図ることができるとともに、作業性及びコストの悪化を回避させることができる。
【0013】
また、ハンドルパイプの先端側内部に固定される固定部材と、ハンドルパイプの先端側内部に配設され、スロットル操作手段と共に回転する回転部材とを具備するとともに、リターンスプリングは、一端が固定部材に固定されつつ他端が回転部材に固定されたので、より確実且つ精度よくリターンスプリングによる付勢力をスロットル操作手段に付与させることができる。
【0014】
さらに、リターンスプリングを収容しつつ固定部材に取り付けられた収容部材を有するとともに、回転部材を当該収容部材内で回転自在に取り付けることにより、当該リターンスプリング、固定部材、回転部材及び収容部材を一体化してハンドルパイプの先端側内部にてリターンスプリング用ユニットが構成されたので、リターンスプリングの取付時の作業性をより向上させることができる。
【0015】
請求項の発明によれば、スロットル操作手段と連動して回転可能とされるとともに、周方向に亘ってギアが形成された連動部材と、該連動部材のギアと噛み合う従動ギアが形成されて当該連動部材と連動して回転可能とされるとともに、磁石が一体的に形成された従動部材とを具備するとともに、ケース内に連動部材及び従動部材が収容されたので、検出手段によるスロットル操作手段の操作角度の検出をより確実且つ精度よく行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るスロットル装置の外観を示す斜視図
図2】(a)同スロットル装置を示す平面図(b)同スロットル装置を示す側面図
図3図2におけるIII−III線断面図
図4図2におけるIV−IV線断面図
図5図2におけるV−V線断面図
図6図2におけるVI−VI線断面図
図7図2におけるVII−VII線断面図
図8図2におけるVIII−VIII線断面図
図9】同スロットル装置におけるケース内部を示す分解斜視図
図10】同スロットル装置における内部構造(吸着部材を取り付ける前の状態)を示す斜視図
図11】同スロットル装置における内部構造(吸着部材を取り付けた状態)を示す斜視図
図12】同スロットル装置におけるリターンスプリング用ユニットを示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るスロットル装置は、二輪車のハンドルパイプ(操舵手段:ハンドルバー)に取り付けられたスロットルグリップの回転角度を検出し、その検出信号を二輪車が搭載するECU等電子制御装置に送るためのもので、図1図12に示すように、スロットル操作手段としてのスロットルグリップGと、スロットルパイプ1と、ハンドルパイプHにおけるスロットルグリップG近傍に固定されたケースCと、連動部材2と、従動部材3と、検出手段としての角度センサ5と、リターンスプリング7とから主に構成されている。
【0018】
スロットルパイプ1は、円筒状に形成された樹脂製部材から成り、二輪車(車両)のハンドルパイプHの先端に取り付けられるスロットルグリップGの内周面に固着され、当該ハンドルパイプHの外周面に沿ってスロットルグリップGと共に回転自在なものである。即ち、運転者がスロットルグリップGを把持しつつリターンスプリング7の付勢力に抗してハンドルパイプHの周方向へ回転操作するのに伴い、その内周面に固着されたスロットルパイプ1もハンドルパイプHの外周側で同一角度だけ回転し得るようになっているのである。
【0019】
スロットルグリップGは、ハンドルパイプHの先端側においてスロットルパイプ1と共に回転可能に配設されたもので、運転者が把持しつつ回転操作可能とされている。ハンドルパイプHの先端側内部には、図3、4、12に示すように、リターンスプリング用ユニットYが配設されている。このリターンスプリング用ユニットYは、固定部材8と、回転部材を構成する軸状部材9及び回転子10と、収容部材11とから主に構成されている。なお、図中符号Sa、Sbは、シール手段としてのOリングを示している。
【0020】
固定部材8は、ハンドルパイプH内に圧入可能な外径を有し、ハンドルパイプHの先端側内部に圧入されて固定されるものである。この固定部材8には、その中央における軸方向に貫通孔8a(図12参照)が形成されており、かかる貫通孔8aに回転部材における軸状部材9の軸部9aが挿通可能とされている。また、固定部材8の一端側には、収容部材11が取り付けられるようになっている。
【0021】
回転部材は、軸状部材9及び回転子10から成り、ハンドルパイプHの先端側内部に配設され、スロットルグリップG(スロットル操作手段)及びスロットルパイプ1と共に回転するよう構成されている。軸状部材9は、固定部材8の貫通孔8aに挿通可能な軸部9aと、十字状に形成された端部9bとを有して成り、軸部9aの先端には小判型に加工されたキー部9aaが形成されている。なお、軸状部材9は、図8に示すように、十字状の端部9bがスロットルパイプ1の十字状の溝1bと合致して嵌合した状態で組み付けられるようになっている。
【0022】
回転子10は、その中央に軸状部材9のキー部9aaと対応した小判型の貫通孔10aが形成された円筒状部材から成り、図7に示すように、当該貫通孔10aに軸状部材9のキー部9aaを合致させつつ挿通させることにより、回転方向に嵌合した状態で組み付けられるようになっている。而して、スロットルグリップG(スロットル操作手段)及びスロットルパイプ1の回転操作に伴い、軸状部材9及び回転子10(回転部材)が固定部材8に対して相対的に回転し得るようになっている。
【0023】
リターンスプリング7は、スロットルグリップG(スロットル操作手段)及びスロットルパイプ1に対して初期位置に戻る方向に付勢するための付勢手段から成り、一端が固定部材8に固定されつつ他端が回転部材を構成する回転子10に固定されて組み付けられている。これにより、スロットルグリップG(スロットル操作手段)及びスロットルパイプ1の回転操作は、リターンスプリング7の付勢力に抗して行われることとなり、当該回転操作を止めて操作力を緩めると、スロットルグリップG(スロットル操作手段)及びスロットルパイプ1がリターンスプリング7の付勢力にて初期位置に向かって自然と回転するようになっている。
【0024】
収容部材11は、内部に収容空間を有した容器状部材から成り、リターンスプリング7及び回転子10を収容しつつ固定部材8の一端に取り付けられたものである。しかるに、収容部材11内において、リターンスプリング7の捩り作用及び回転子10の回転動作が行われることとなる。このように、本実施形態においては、リターンスプリング7を収容しつつ固定部材8に取り付けられた収容部材11を有するとともに、回転部材(回転子10)を当該収容部材11内で回転自在に取り付けることにより、当該リターンスプリング7、固定部材8、回転部材(軸状部材9及び回転子10)及び収容部材11を一体化してリターンスプリング用ユニットYが構成されている。
【0025】
ケースCは、連動部材2、従動部材3及び角度センサ5(検出手段)を収容するための一対の半割り形状の樹脂製部品から成り、図9に示すように、ハンドルパイプHに取り付けた中間ケースCaを挟んで半割り形状部品のケースCを組み付けてボルトBにて締め上げることにより当該ハンドルパイプHにおけるスロットルグリップG(スロットル操作手段)の基端側近傍に固定されるよう構成されている。そして、ケースC内において、連動部材2及び従動部材3が回転自在とされるとともに、角度センサ5が形成された基板6が固定されるようになっている。
【0026】
連動部材2は、図5に示すように、スロットルグリップG(スロットル操作手段)と連動して回転可能とされるとともに、周方向に亘ってギア(歯面形状)が形成されたものであり、図10、11で示すように、スロットルパイプ1に形成された凹部1aに嵌合する凸部2aを有して構成されている。而して、凹部1aに凸部2aを嵌合した状態にて組み付けられることにより、スロットルグリップG及びスロットルパイプ1が回転するのと連動して連動部材2が回転し得るようになっている。
【0027】
従動部材3は、図5に示すように、その外周面に連動部材2のギア(歯面形状)と噛み合う従動ギアが形成されるとともに、当該連動部材2と連動して回転軸Lを中心として回転可能とされた歯車から成る。かかる従動部材3は、連動部材2と比較して小径の歯車とされており、スロットルグリップGの回転操作に伴って連動部材2が回転すると、当該連動部材2より大きな回転角で回転し得るようになっている。
【0028】
更に、従動部材3には、その回転軸L側に磁石4が一体的に形成されており、当該従動部材3と共に磁石4が回転し得るようになっている。即ち、従動部材3の中心部に磁石4が固定されて一体化されており、この磁石4の中心部を回転軸Lが貫通して固定されているのである。従動部材3と磁石4との一体化は、インサート成形、接着剤による貼着、圧入等による嵌め合い等、何れの方法であってもよい。
【0029】
磁石4と対向する位置には、図4に示すように、所定の電気回路が形成された基板6が固定されており、当該基板6の表裏面にそれぞれ角度センサ5が形成されている。この角度センサ5は、磁石4からの磁力の変化を検出し、スロットルグリップG(スロットル操作手段)の操作角度を検出可能なものである。即ち、スロットルグリップG及びスロットルパイプ1、連動部材2の回転に伴い従動部材3及び磁石4が回転すると、その磁石4から生じる磁力(磁界)の変化により角度センサ5の出力信号が増減するので、その出力信号に基づいてスロットルグリップGの回転角度を検出し得るようになっている。かかる検出信号は、基板6から延出された配線コードを介して二輪車が具備するECUに送られ、当該検出信号に基づいたエンジンの制御(スロットルグリップG及びスロットルパイプ1の回転角度に基づいた出力制御)が行われる。
【0030】
尚、本実施形態によれば、基板6の表裏面にそれぞれ角度センサ5が配設されており、それぞれの角度センサ5から2つの出力信号を出力させるよう構成されている。これにより、検出信号が2重信号系を構成しており、出力電圧が互いに逆向きに変化するようになっており、一方の角度センサ5或いは配線が壊れたとき、その角度センサ5からの出力電圧はダウンして出力信号の和が異なってくるので、当該一方の角度センサ5又は配線に不具合があることが認識できる。この場合であっても、他方の角度センサ5による出力に基づき各種制御が行われ、安全を確保することができる。
【0031】
而して、本スロットル装置によれば、角度センサ5によりスロットルグリップG及びスロットルパイプ1の回転角を非接触にて検出することができるので、機械的機構を有するものに比べ、装置の耐久性を向上させることができる。また、角度センサ5は、基板6と共に所定の樹脂にてモールドされており、当該角度センサ5に対する防水効果が向上されている。なお、磁石4は、永久磁石であっても、他の磁界を生じ得るもの(例えばプラスチック磁石等)であってもよい。
【0032】
吸着部材12は、磁石4の磁力により当該磁石4を吸着する磁性体から成るものであり、本実施形態においては、板状の鉄又は合金鋼(SUSと称されるステンレス鋼(SUS430等)など)から成るものとされる。具体的には、吸着部材12は、図11に示すように、連動部材2及び従動部材3の一方の面(角度センサ5と対向する面とは反対側の面)を覆いつつ当該ケースC内に固定されており、従動部材3の一方の面から臨ませた磁石4がその磁力にて吸着部材10に吸着されるよう組み付けられている。
【0033】
更に、吸着部材12は、図4で示すように、連動部材2及び従動部材3を挟んだ状態でネジnにて中間ケースCaに固定されているとともに、従動部材3の回転軸Lの一端が支持されるようになっている。即ち、吸着部材12の所定部位には、同図中拡大図で示すように、孔12aが形成されており、当該孔12aに回転軸Lの一端が挿通されて回転自在に支持されているのである。
【0034】
上記構成により、スロットルグリップGを回転操作しない状態においては、従動部材3は、磁石4が吸着部材12に吸着することによって固定されているとともに、スロットルグリップGを回転操作すると、磁石4の磁力による吸着力に抗して従動部材3が磁石4と共に回転することとなり、角度センサ5により磁石4からの磁力の変化を検出し、スロットルグリップG(スロットル操作手段)の操作角度が検出されることとなる。
【0035】
本実施形態によれば、角度センサ5(検出手段)は、ケースC内に収容されるとともに、リターンスプリング7は、ハンドルパイプH内に配設されたので、ケースC内にリターンスプリング7を配設させることがなく、且つ、ハンドルパイプH内に角度センサ5(検出手段)を配設させることがないことから、ケースCの小型化を図ることができるとともに、ハンドルパイプHを孔明け加工等して角度センサ5の配線コードを取り出す必要がなく、作業性及びコストの悪化を回避させることができる。
【0036】
また、ハンドルパイプHの先端側内部に固定される固定部材8と、ハンドルパイプHの先端側内部に配設され、スロットルグリップG(スロットル操作手段)と共に回転する回転部材(軸状部材9及び回転子10)とを具備するとともに、リターンスプリング7は、一端が固定部材8に固定されつつ他端が回転部材(回転子10)に固定されたので、より確実且つ精度よくリターンスプリング7による付勢力をスロットルグリップG(スロットル操作手段)に付与させることができる。
【0037】
さらに、リターンスプリング7を収容しつつ固定部材8に取り付けられた収容部材11を有するとともに、回転部材(軸状部材9)を当該収容部材11内で回転自在に取り付けることにより、当該リターンスプリング7、固定部材8、回転部材(軸状部材9及び回転子10)及び収容部材11を一体化してリターンスプリング用ユニットYが構成されたので、リターンスプリング7の取付時の作業性をより向上させることができる。
【0038】
また更に、スロットルグリップG(スロットル操作手段)と連動して回転可能とされるとともに、周方向に亘ってギアが形成された連動部材2と、該連動部材2のギアと噛み合う従動ギアが形成されて当該連動部材2と連動して回転可能とされるとともに、磁石4が一体的に形成された従動部材3とを具備するとともに、ケースC内に連動部材2及び従動部材3が収容されたので、角度センサ5(検出手段)によるスロットルグリップG(スロットル操作手段)の操作角度の検出をより確実且つ精度よく行わせることができる。
【0039】
なお、磁石4の磁力により当該磁石4を吸着する磁性体から成る吸着部材12を具備したので、スロットルグリップG(スロットル操作手段)の操作がない状態では磁石4が吸着部材10に吸着して従動部材3を固定させることができ、二輪車(車両)のエンジン駆動や走行時に生じる振動が付与されても高精度にスロットルグリップG(スロットル操作手段)の操作角度を検出することができる。かかる磁石4の吸着力は、従動部材3を固定し得るものの、スロットルグリップGの操作時に付与される回転力に比べれば極めて小さいため、当該スロットルグリップGの操作性に悪影響を及ぼすことはない。
【0040】
また、連動部材2、従動部材3及び角度センサ5(検出手段)を収容するケースCを具備するとともに、吸着部材12は、当該連動部材2及び従動部材3の一方の面を覆いつつ当該ケースC内に固定されたので、当該吸着部材12が連動部材2および従動部材3の一方の面を覆うカバーとしての機能と、スロットルグリップG(スロットル操作手段)の操作がない状態での従動部材3を固定させる機能とを兼ね備えることができる。
【0041】
更に、吸着部材12は、従動部材3の回転軸Lの一端が支持されるので、当該吸着部材12が従動部材3の回転軸Lの受け部材としての機能と、連動部材2および従動部材3を覆うカバーとしての機能と、スロットルグリップG(スロットル操作手段)の操作がない状態での従動部材3を固定させる機能とを兼ね備えることができる。また更に、吸着部材12は、板状の鉄又は合金鋼から成るので、安価且つ確実にスロットルグリップG(スロットル操作手段)の操作がない状態での従動部材3を固定させることができる。
【0042】
特に、本実施形態においては、ケースC内に板状の鉄又は合金鋼から成る吸着部材12を配設しているので、スロットルグリップG(スロットル操作手段)の操作がない状態での従動部材3の固定に加え、当該ケースCの強度を向上させることができ、補強材としての機能を兼ね備えることができる。
【0043】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば検出手段としての角度センサ5が基板6の一方の面のみに1つ形成されたもの等としてもよい。更に、本実施形態においては、二輪車のハンドルパイプに取り付けられたものとされているが、操舵手段としてハンドルパイプを有する他の車両(例えばATVやスノーモービル等)に取り付けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
検出手段がケース内に収容されるとともに、リターンスプリングがハンドルパイプ内に配設されるものとされ、ハンドルパイプ内に圧入可能な外径を有し、ハンドルパイプの先端側内部に固定される固定部材と、ハンドルパイプの先端側内部に配設され、スロットル操作手段と共に回転する回転部材と、リターンスプリングを収容しつつ固定部材に取り付けられた収容部材とを具備するとともに、リターンスプリングは、一端が固定部材に固定されつつ他端が回転部材に固定され、且つ、回転部材を当該収容部材内で回転自在に取り付けることにより、固定部材をハンドルパイプの最も先端側に位置させつつ当該リターンスプリング、固定部材、回転部材及び収容部材を一体化してハンドルパイプの先端側内部にてリターンスプリング用ユニットが構成されたスロットル装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 スロットルパイプ
2 連動部材
3 従動部材
4 磁石
5 角度センサ(検出手段)
6 基板
7 リターンスプリング
8 固定部材
9 軸状部材(回転部材)
10 回転子(回転部材)
11 収容部材
12 吸着部材
G スロットルグリップ(スロットル操作手段)
H ハンドルパイプ
C ケース
Y リターンスプリング用ユニット
図1
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