【実施例】
【0038】
本発明は、本発明の特定の実施形態を示す次の実施例によってさらに例示されるが、本発明を限定することを意味するものではない。
【0039】
布地および仕上げ剤
本発明に一致する仕上げ組成物で処理された種々の布地の実施例を表Iに記載する。布地は全て、リング紡績ヤーンを含む織布防護布地である。布地1〜3は、消防署のアウターシェル布地であり、布地4および5は、PBOを含有する消防署のアウターシェル布地であり、布地6は軍用防護布地である。
【表1】
【0040】
本発明に一致する種々の仕上げ組成物を表IIに記載する。これらの仕上げ組成物は、(a)Ridgewet NRW(以前はGenwet NRWと呼ばれた)、布地の浸透性を改善するための非再湿潤界面活性剤、(b)磨耗助剤ポリマーおよびペルフルオロアルキル含有ポリマーの専有ブレンドであるHipel340、(c)自己架橋アクリル系コポリマーであるFDP−61063、(d)自己架橋エチルアクリレートポリマーであるDicrylan TA−GP、(e)非イオン性フルオロポリマーであるUnidyne TG580、(f)カチオン性フルオロポリマーであるUnidyne TG581、(g)アルコキシル化脂肪族アミン誘導体であるCartafix U、(h)両方ともメラミンホルムアルデヒド架橋樹脂であるAerotex M3またはEccoresin M300、(i)メラミンホルムアルデヒド樹脂の自己架橋を促進するための触媒であるリン酸ジアンモニウム、(j)DA6で乳化されたポリエチレンエマルションであるAquasoft 706、(k)N−メチロールステアラミド反応性疎水性物質であるAurapel 330R、および(l)環状ホスホネート難燃性添加剤であるAmgardCTの種々の組み合わせを含む。全ての量は、浴の重量に基づくパーセンテージ(owb)として列挙される。
【0041】
表IIはまた、既知の仕上げ組成物SSTを含む。この組成物は、Ridgewet NRW、Eccoresin M300、リン酸ジアンモニウム、(m)Zonyl7040および(n)Zonyl FMX(Huntsmanから入手可能であり、DuPontにより製造されるフルオロポリマー)、および(o)Phobotex JVA(Huntsmanから入手可能なパラフィンワックスのエマルション)を含む。
【表2】
【0042】
仕上げ組成物は、布地1〜5を処理するために使用した。仕上げ剤Iは布地1、2および3を処理するために使用した。仕上げ剤IIは、布地4および5を処理するために使用した。さらに仕上げ剤IIIは、布地6を処理するために使用した。各実施例では、仕上げ剤をディップ仕上げパッド中で適用した。次いで仕上げ剤を乾燥および硬化させた。布地1〜5を乾燥させ、300〜400°Fで1〜5分間硬化させた。布地6を乾燥させ、280〜350°Fで1〜5分間硬化させた。処理された布地は、未処理の布地よりも改善された耐磨耗性および耐ピリング性を有する。改善された耐磨耗性および耐ピリング性は、少なくとも5〜10回の洗濯の間保持される。処理された布地は、未処理の布地の撥水特性および難燃特性を保持し、ランダム・タンブル・ピリング・テスターおよびテーバー磨耗のような標準ASTM試験方法によって測定される場合に、先行技術の仕上げ剤で処理された布地よりも、劇的に改善された耐磨耗性および耐ピリング性を示した。以下の実施例およびデータにおいて、布地は、表Iに示す組成を有し、表IIに示される仕上げ組成物で処理されたか、または先行技術の仕上げ剤SSTで処理された。
【0043】
<試験方法>
耐磨耗性は、H−18輪および各輪で500g荷重を用いるASTM D3884の繊維製品布地の耐磨耗性に関する標準試験方法(回転台、ダブルヘッド方法)に従って測定されており、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0044】
耐ピリング性は、ASTM D3512の繊維製品布地の耐ピリング性および他の関連する表面変化についての標準試験方法:ランダム・タンブル・ピリング・テスター方法に従って測定されており、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0045】
引張強度は、ASTM D5034の繊維製品布地の破断強度および弾性率についての標準試験方法(Grab Test)に従って測定されており、その開示は参照によって本明細書により組み込まれる。
【0046】
引裂強度は、ASTM D5733のTrapezoid手順による不織布の引裂強度に関する標準試験方法に従って測定されており、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0047】
垂直可燃性は、ASTM D6413の繊維製品の難燃性についての標準試験方法(垂直試験)に従って測定されており、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0048】
水噴霧評価は、AATCC試験方法22(AATCC技術マニュアル)撥水性:噴霧試験に従って測定されており、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0049】
耐吸水性は、NFPA1971の建築物消火活動および近位消火活動のための保護アンサンブル、8.26耐吸水性試験に従って測定されており、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0050】
通気性は、連邦政府試験方法5450.1の通気性、衣類、較正されたオリフィス方法に従って測定されており、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0051】
布地サンプルを、それらを洗浄する前(BW)、5回の洗濯後(5x)、または10回の洗濯後(10x)のいずれかで試験した。全ての洗濯は、AATCC試験方法135の家庭洗濯後の布地の寸法変化に従った。具体的には、試料を機械サイクル1:通常/綿試験サイクル、洗浄温度V:60±3℃(140±5°F)、洗濯機条件:18±1galの水レベル、179±2spmの攪拌機速度、12分の洗浄時間、645±15rpmのスピン速度および6分の最終スピン時間での通常サイクル、ならびに乾燥機設定条件:高排気温度(66±5℃、150±10°F)および10分の冷却時間での綿/試験サイクルに従って洗浄および乾燥に供する。
【0052】
本明細書で言及される難燃性基準は、NFPA1951技術的救援時のための保護アンサンブル基準、NFPA1971建築物消火活動および近位消火活動のための保護アンサンブル基準、NFPA1977原野消火活動のための保護衣類および装備基準、NFPA2112突発的火事に対する作業員の保護のための難燃性衣服基準、NFPA70E作業場での電気安全要件のための基準、およびMIL−C−83429BおよびGL−PD−07−12の軍用規格であり、これらの開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0053】
<実験>
表Iの布地2のサンプルを、本発明の実施形態に従って布地仕上げ剤(特に表IIからの仕上げ組成物IIおよびIV−VI)で処理するか、または先行技術の仕上げ剤SSTで処理した。各布地サンプルを、H−18輪および各輪上の500g荷重を用いてASTM D3884に従って標準テーバー磨耗試験に供した。本発明に方法によれば、試料を圧力および磨耗動作を制御した条件下にて回転摩擦動作を用いて磨耗した。台に備え付けた試験試料を、2つの磨耗輪のスライド回転に対して垂直軸に向ける。1つの磨耗輪は周辺部に向かって外側の試料を擦り、他方は中央に向かって内側を擦る。得られた磨耗傷は、約30cm
2の面積にわたって交差した弧のパターンを形成する。
【0054】
各布地サンプルを250サイクルに供し、次いで糸破断に関して調査した。糸破断が観測されない場合は布地サンプルを250回の追加サイクルに供し、再び調査した。このプロセスを、各サンプルについて糸破断が観測されるまで続けた。耐磨耗性試験の結果を以下の表IIIに示す。本発明の実施形態で処理された布地サンプルは、先行技術の仕上げ組成物で処理された布地サンプルよりも破断前により多くのサイクルに耐えた。これらのデータは、先行技術の組成物で処理された布地サンプルよりも、耐磨耗性について少なくとも約100%の改善を示す。
【表3】
【0055】
表Iの布地4のサンプルを、本発明の実施形態に従う布地仕上げ剤(特に表IIからの仕上げ組成物IIおよびIV−VI)または先行技術仕上げ剤SSTで処理し、耐ピリング性を決定するために試験に供した。各布地サンプルを、ASTM D3512に従って標準耐ピリング性試験に供した。試験方法D3512に従って、試料を環境チャンバーで調整し、次いで綿片を用いてコルクで裏打ちしたシリンダー中でタンブルする。バイアスカット複製品を所定の回数試験する。サンプルをMacbeth Light Booth(日光条件)にて写真評価基準を用いて評価した。評価1は、非常に重度のピリングを示すが、評価5はピリングを全く示さない。試料を、60、90、および120分間にわたって試験した。これらの試験の結果を以下の表IVに示す。本発明の実施形態で処理された布地は、先行技術SSTの仕上げ組成物で処理された布地よりも耐ピリング性の改善を示した。
【表4】
【0056】
表Iの布地2および4のサンプルを、本発明の実施形態に従う布地仕上げ剤(特に表IIからの仕上げ組成物IIおよびIV−VI)または先行技術の仕上げ剤SSTで処理し、引張強度、引裂強度、難燃性、撥水性および通気性を決定するために種々の試験に供した。
【0057】
引張強度は、荷重下で布地を破断するのに必要な応力である。布地サンプルを、ASTM D5034に従う標準引張試験に供した。この方法に従って、試料を引張機のクランプに中央にて取り付け、試料が破断するまで応力を加える。破断応力および試験試料の伸びについての値を、試験機と連動した機械測り、ダイアル、自動記録チャート、またはコンピュータから得る。各布地の引張強度を縦糸方向(w)および横糸方向(f)にて試験した。これらの試験結果を以下の表Vに示す。これらの結果に基づくと、本発明に従う仕上げ組成物は、布地の引張強度について悪影響を与えない。
【表5】
【0058】
引裂強度は、布地の裂け始めまたは裂けの継続もしくは成長のいずれかに必要な応力である。各布地サンプルをまた、ASTM D5733に従って標準引裂強度試験に供した。この方法に従って、二等辺四辺形のアウトラインを引裂強度決定用に切断した四角形試料にマークする。試料を四辺形の最小辺の中央にてスリットをいれ、引裂き始める。試料にマークされた四辺形の非平行側部を、引張試験機の平行ジョーにクランプする。ジョーの分離を連続的に増加させて応力を適用し、試料を横断する引裂きを成長させる。同時に、顕在する応力を記録する。引裂きを継続するための最大応力を自動チャート記録機またはマイクロプロセッサデータ収集システムから計算する。各布地の引裂強度を、縦糸方向(w)および横糸方向(f)にて決定した。これらの試験の結果を以下の表VIに示す。これらの結果に基づくと、本発明に従う仕上げ組成物は、布地の引裂強度に悪影響を与えない。
【表6】
【0059】
布地の難燃特性をASTM D6413に従って試験した。この方法に従って、布地を垂直に吊り下げ、直火に曝す。炭化長および残炎を各布地について決定する。各布地の炭化長を、縦糸方向(w)および横糸方向(f)にて決定した。本明細書に記載される布地についてこの試験結果を以下の表VIIに示す。これらの結果に基づくと、本発明に従う仕上げ組成物は、布地の難燃特性に悪影響を与えない。
【表7】
【0060】
布地の耐水性をAATCC試験方法22およびNFPA1971、8.26を用いて決定した。AATCC試験方法22に従って、水を制御された条件下で試験試料の緊張面に対して噴霧し、湿潤したパターンを生成させるが、そのサイズは布地の撥水性に依存する。評価は、基準チャートに基づいて写真にて湿潤パターンを比較することで達成される。NFPA1971、8.26に従って、試料を、刺繍用フープに取り付け、ある体積の水を試料に噴霧する。吸い取り紙を使用して過剰の水を除去し、4インチ×4インチ平方をサンプルから切断する。湿潤サンプルを計量し、乾燥し、再び計量する。%吸水(PWA)を、湿潤および乾燥重量の差に基づいて決定する。これらの試験の両方の結果を以下の表VIIIに示す。これらの結果に基づくと、本発明の仕上げ組成物は、布地の撥水特性に悪影響を与えず、これらの布地はNFPA1971の耐水性の要件を満たす。
【0061】
布地の通気性は、連邦試験方法5450.1を用いて決定した。この方法に従って、試料を布オリフィスにわたって僅かな引張で、平滑状態でクランプする。空気は、吸入ファンによって布および較正されたオリフィスを通って引き込まれる。布にかかる圧力降下は、ファンモーターの速度を調節することによって必要な圧力降下に調節される。布を通過する空気体積をこの値およびオリフィスの較正から計算する。この試験の結果を以下の表VIIIに示す。これらの結果に基づくと、本発明の仕上げ組成物は、布地の通気特性に悪影響を与えず、これらの布地はNFPA1971の通気性の要件を満たす。
【表8】
【0062】
図2〜
図7に示されるサンプルを、H−18輪および各輪にて500gの荷重を用いて、耐磨耗性についてASTM D3884試験に供したが、これは上記で記載されたものであった。
【0063】
図2は、表Iからの布地1の2つのサンプルを示す。左の布地サンプルは、表IIに記載される仕上げ組成物Iで処理した。右の布地サンプルは、表IIに記載されるSST仕上げ組成物で処理した。両方の布地サンプルの耐磨耗性を、上述のASTM規格に従って試験した。布地サンプルは試験前に洗濯しなかった。本発明の実施形態に従って処理された布地サンプルは、既知の仕上げ組成物で処理された布地サンプルよりも改善された耐磨耗性を示す。
【0064】
図3は、表Iからの布地1の2つのサンプルを示す。左の布地サンプルを表IIに記載される仕上げ組成物Iで処理した。右の布地サンプルをSST仕上げ組成物で処理した。両方の布地の耐磨耗性を上述のASTM規格に従って試験した。布地サンプルを試験の前に10回洗濯した。本発明の実施形態に従って処理した布地サンプルは、既知の仕上げ組成物で処理された布地サンプルよりも改善された耐磨耗性を示す。
【0065】
図4は、表Iからの布地2の2つのサンプルを示す。左の布地サンプルは、表IIに記載される仕上げ組成物Iで処理した。右の布地サンプルは、SST仕上げ組成物で処理した。両方の布地サンプルの耐磨耗性を上述のASTM規格に従って試験した。布地サンプルは試験前に洗濯しなかった。本発明の実施形態に従って処理された布地サンプルは、既知の仕上げ組成物で処理された布地サンプルよりも改善された耐磨耗性を示す。
【0066】
図5は、表Iからの布地2の2つのサンプル、およびSafety Componentsから入手可能なFusion布地の1つのサンプルを示す。左および中央にある布地サンプルは表Iからの布地2であり、右の布地サンプルはFusionである。Fusionは、50/50p−アラミド/m−アラミドブレンド布地である。左端にある布地2のサンプルは、表IIに記載される仕上げ組成物Iで処理した。中央に示される布地2のサンプルは、SST仕上げ組成物で処理した。3つの布地サンプルの耐磨耗性は、上述のASTM規格に従って試験した。布地サンプルは、試験前に5回洗濯した。左端にある布地サンプルは、本発明の実施形態に従って処理したものであり、SST仕上げ組成物で処理された布地サンプルおよびFusion布地よりも改善された耐磨耗性を示す。
【0067】
図6は、表Iからの布地2の2つのサンプルを示す。左の布地サンプルは、表IIに記載される仕上げ組成物Iで処理した。右の布地サンプルは、SST仕上げ組成物で処理した。両方の布地サンプルの耐磨耗性は、上述のASTM規格に従って試験した。布地サンプルは、試験前に10回洗濯した。本発明の実施形態に従って処理した布地サンプルは、既知の仕上げ組成物で処理された布地サンプルよりも改善された耐磨耗性を示す。
【0068】
図7は、表Iからの布地3の2つのサンプル、およびSafety Componentsから入手可能なMatrix布地の1つのサンプルを示す。左および中央にある布地サンプルは、表Iからの布地3であり、右の布地サンプルはMatrixである。Matrix布地は、60/40p−アラミド/PBI布地である。左の布地3のサンプルは、表IIに記載の仕上げ組成物Iで処理した。中央にある布地3のサンプルは、SST仕上げ組成物で処理した。3つの布地サンプルの耐磨耗性は、上述のASTM規格に従って試験した。布地サンプルは試験前に5回洗濯した。左の布地サンプルは、本発明の実施形態に従って処理したが、SST仕上げ組成物で処理された布地サンプルおよびMatrix布地よりも改善された耐磨耗性を示す。
【0069】
図8および
図9に示されるサンプルは、上記で記載した耐ピリング性についてのASTM D3512に供した。
【0070】
図8は、表Iからの布地2の2つのサンプルを示す。左の布地サンプルは、表IIに記載された仕上げ組成物Iで処理した。右の布地サンプルはSST仕上げ組成物で処理した。両方の布地サンプルの耐ピリング性は、上述のASTM規格に従って試験した。布地サンプルは、試験前に洗濯しなかった。本発明の実施形態で処理された布地サンプルは、既知の仕上げ組成物で処理された布地サンプルよりも改善された耐ピリング性を示す。
【0071】
図9は、表Iから布地5の2つのサンプルを示す。底部にある布地サンプルは、表IIに記載の仕上げ組成物Iで処理した。上部の布地サンプルは、SST仕上げ組成物で処理した。両方の布地サンプルの耐ピリング性は、上述のASTM規格に従って試験した。布地サンプルは、試験前に10回洗濯した。本発明の実施形態に従って処理された布地サンプルは、既知の仕上げ組成物で処理された布地サンプルより改善された耐ピリング性を示す。
【0072】
上述のものは、本発明の代表的な実施形態および特定の利益について例示、説明、および記載の目的で提供する。例示され、記載された実施形態の変更および適応は、当業者に明らかであり、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく行なうことができる。