(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710984
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/38 20060101AFI20150409BHJP
H01H 50/40 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
H01H50/38 A
H01H50/40
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-4177(P2011-4177)
(22)【出願日】2011年1月12日
(65)【公開番号】特開2012-146526(P2012-146526A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2013年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】立川 裕之
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 優
(72)【発明者】
【氏名】柴 雄二
【審査官】
岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−019161(JP,A)
【文献】
実公昭45−021971(JP,Y1)
【文献】
実開昭60−107551(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 45/00−45/14
H01H 50/00−59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点部及び電源に接続される固定端子部を有する第1の固定接触子と、固定接点部及び負荷に接続される固定端子部とを有する第2の固定接触子と、前記第1の固定接触子及び第2の固定接触子間に配置され二つの固定接点部を有する第3の固定接触子とを有する固定接点と、
該固定接点を前記第1の固定接触子及び第2の固定接触子の固定端子部を外部に突出させて支持する接点支持筐体と、
前記第1の固定接触子の固定接点部及び前記第3の固定接触子の一方の固定接点部に接離可能な第1の可動接触子と前記第2の固定接触子の固定接点部及び前記第3の固定接触子の他方の固定接点部に接離可能な第2の可動接触子とを絶縁体を介して固定保持し、前記接点支持筐体内に配設された可動接点と、
前記可動接点を前記固定接点に対して接離可能に駆動する駆動機構と、
を備え、
前記固定接点及び前記可動接点の各接触子を挟むようにその配列方向と平行に一対の消弧用磁石体を、対向磁極面が同一極性となるように対向配置したことを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記一対の消弧用磁石体の対向磁極面がともにN極であることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記一対の消弧用磁石体の対向磁極面がともにS極であることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記一対の消弧用磁石体は、前記接点支持筐体の外側面に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電磁接触器。
【請求項5】
前記接点支持筐体の前記一対の消弧用磁石体と対向する内周面に消弧空間が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流路に介挿された固定接触子及び可動接触子を備えた電磁接触器に関し、固定接触子及び可動接触子の開極時すなわち電流遮断時に発生するアークを容易に消弧するようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車等の高圧の直流電源回路に用いられる電磁接触器として、従来、
図9及び
図10に示すように、ハウジング100に所定間隔を保って配設された一対の固定接点101,102と、これら一対の固定接点101,102に対向して接離可能に配設された一対の可動接点103,104を両端に備えた可動接点担持体105と、一対の固定接点101,102及び一対の可動接点103,104間の接点ギャップにそれぞれ生じるアークを消弧するための一対の消弧手段106、107とを備えたプランジャ型電磁継電器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、一対の消弧手段106,107のそれぞれは、接点ギャップを挟んで対面する磁極面の極性が反対となるようにハウジングに固定された一対の永久磁石で構成されている。
【0003】
上記従来例のアーク消弧原理を
図10〜
図13を用いて説明する。今、
図10に示すように、可動接点担持体105が、固定接点101,102に可動接点103,104を接触させて固定接点101から可動接点103,104を通じて固定接点102に向かう電流が流れる通電状態から、可動接点担持体105を図示しないソレノイド部で可動接点103,104が固定接点101,102から上方に離間する方向に可動させて電流遮断状態とすると、固定接点101,102と可動接点103,104との間に
図11に示すようにアーク108が発生する。
【0004】
このとき、アーク108と直交する方向に一対の消弧手段106,107が配設されてその磁束φが
図12に示すように、紙面と直交する方向に発生しているので、この磁束φと電流の方向とからフレミングの左手の法則にしたがってアーク108を固定接点101,102の配列方向の外側に向かうローレンツ力が作用して、アークを
図9に示す固定接点101,102の配列方向外側に配置された消弧空間109側へと引き伸ばして消弧させる。
【0005】
また、電流の通電方向が固定接点102から可動接点104,103を介して固定接点101側に流れる逆方向となる場合には、
図13に示すように、固定接点101,102及び可動接点103,104間に発生するアークを固定接点101,102の配列方向内側に引き伸ばして消弧させる。
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来例にあっては、アークを引き伸ばしてアーク電圧を電源電圧より大きくすることで遮断している。アーク電圧はアーク電界値とアーク長の積で決まるため、より大きな電源電圧を遮断したい場合、アーク電界値を大きくするか、アーク長を長くすることが必要となる。
【0006】
雰囲気中におけるアーク電界値は、内圧、気体種類で決まっており、アーク電界は一般に気体圧力を上げることや、例えば水素等のアーク電界の大きい気体を使用することで大きくすることができる。しかし、気体圧力が大きい場合には容器の気密や、構造強度の強化が必要となり、容器が大きくなってしまうという未解決の課題がある。また、水素等のアーク電界の大きい気体を使用する場合、絶縁耐圧が劣化するため接点間のギャップを開ける必要があるため、可動接点担持体を進退駆動するソレノイド部のコイルが大きくなる等の未解決の課題がある。
【0007】
一方、アーク長を長くする場合は、そのアーク長を実現するだけのアークスペースを設ける必要があり、ハウジングが大きくなるという未解決の課題がある。
これらの未解決の課題を解決するために、固定接点の配列方向の外側にそれぞれ消弧用磁石体をそれらの対向面が異極となるように配置して、固定接点の配列方向と直交し、且つ固定接点及び可動接点の開閉方向と直交する方向における消弧用磁石体の両脇に消弧用磁石体の磁束に基づくローレンツ力によってアークを引き伸ばすための消弧空間を配置した電磁継電器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−235248号公報
【特許文献2】特開2008−226547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献2に記載の従来例にあっては、固定接点の配列方向外側に消弧用磁石体を配置するので、固定接点の配列方向の長さが長くなるという未解決の課題がある。また、消弧用磁石体の固定接点の配列方向と直交する両側に消弧空間を形成するので、電流の方向にかかわらずアークの干渉を防止することができるものであるが、より大きな電源電圧を遮断する場合にアークを引き伸ばすアーク長を確保するには、固定接点の配列方向と直交する方向の幅を長くせざるを得ず、電磁接触器を小型化するという要求には応えられないという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、大きな電源電圧を遮断する場合に、アークを引き伸ばすアーク長を長くしながら全体を小型化することが可能な電磁接触器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一の形態に係る電磁接触器は、固定接点部及び電源に接続される固定端子部を有する第1の固定接触子と、固定接点部及び負荷に接続される固定端子部とを有する第2の固定接触子と、前記第1の固定接触子及び第2の固定接触子間に配置され二つの固定接点部を有する第3の固定接触子とを有する固定接点と、該固定接点を前記第1の固定接触子及び第2の固定接触子の固定端子部を外部に突出させて支持する接点支持筐体と、前記第1の固定接触子の固定接点部及び前記第3の固定接触子の一方の固定接点部に接離可能な第1の可動接触子と前記第2の固定接触子の固定接点部及び前記第3の固定接触子の他方の固定接点部に接離可能な第2の可動接触子とを絶縁体を介して固定保持し、前記接点支持筐体内に配設された可動接点と、前記可動接点を前記固
定接点に対して接離可能に駆動する駆動機構とを備え
、前記固定接点及び前記可動接点の各接触子を挟むようにその配列方向と平行に一対の消弧用磁石体を、対向磁極面が同一極性となるように対向配置したことを特徴としている。
【0011】
この構成によると、電源端子側において、第1の固定接触子の固定接点部と、第3の固定接触子の固接点部と、これらを接続する第1の可動接触子とで2つのアーク発生個所を形成するとともに、負荷端子側においても、第2の固定接触子の固定接点部と、第3の固定接触子の固定接点部と、これらを接続する第2の可動接触子とで2つのアーク発生個所を形成するので、計4個所のアーク発生個所を設けることができる。そして、各接点部で発生するアークを引き伸ばすための消弧用磁石体と、アーク電流方向と消弧用磁石体による磁束の方向に直交する方向に消弧空間を配置する。
【0012】
電源端子側では、第1の固定接触子及び第1の可動接触子の接点部を流れる電流と第3の固定接触子及び第1の可動接触子の接点部を流れる電流とが逆方向であるので、夫々に
発生するアークが干渉することはなく、隣接する接点部間の距離を小さくすることができる。同様に、負荷端子側での隣接する2つの接点部間の距離も小さくすることができる。
そして、電源側端子及び負荷側端子側は外部端子との固定用のためのネジ穴を有するため、小型化は難しく、各固定端子部のピッチを小さくする上では制約がある。
【0013】
しかしながら、本発明によれば、各固定端子部のピッチ間に第3の固定接触子を設け、アーク発生部の数を増加させてトータルでアーク長を延ばすことができるので、従来例と同等の大きさで高電圧を遮断でき
る。
【0014】
また、この構成によると、固定接点及び可動接点の各接触子を挟むように、一対の消弧用磁石体を配置し、両消弧用磁石体の対向磁極面が同一極性とされている。このため、両消弧用磁石体が互いに反発するか又は互いに吸引するので、一対の消弧用磁石体の対向磁極面から出る磁束又は対向磁極面に入る磁束がアーク発生部となる各固定接触子の固定接点部を横切りながら配列位置を通って流れる。このため、例えば電源側では、第1の固定接触子と第3の固定接触子の第1の可動接触子と接触する固定接点部では電流の方向が逆であり、磁束の横切る方向は同じであるので、各接触子の配列方向と直交して互いに逆方向の一方の永久磁石に向かうローレンツ力及び他方の永久磁石に向かうローレンツ力が作用し、これらのローレンツ力によって発生したアークを互いに逆方向に引き伸ばして消弧する。同様に、負荷側でも第2の固定接触子と第3の固定接触子の第2の可動接触子と接触する固定接点部とで、各接触子の配列方向と直交して互いに逆方向のローレンツ力が作用し、これらのローレンツ力によって発生したアークを互いに逆方向に引き伸ばして消弧する。したがって、総計のアーク長が長くなり、高電圧を遮断することができる。
【0015】
また、本発明の他の形態に係る電磁接触器は、前記一対の消弧用磁石体の対向磁極面がともにN極であることを特徴としている。
この構成によると、一対の消弧用磁石体から出た磁束は、電源側及び負荷側で夫々一対の消弧用磁石体間の中央部を通りながらアーク発生部を横切ることになり、各接触子の配列方向と直交する方向で互いに逆方向となるローレンツ力を発生する。
【0016】
また、本発明の他の形態に係る電磁接触器は、前記一対の消弧用磁石体の対向磁極面がともにS極であることを特徴としている。
この構成によると、一対の消弧用磁石体の背面から出た磁束は、電源側及び負荷側で夫々一対の消弧用磁石体間の中央部を通りながらアーク発生部を横切って一対の消弧用磁石体のS極に入ることになり、各接触子の配列方向と直交する方向で互いに逆方向となるローレンツ力を発生する。
【0017】
また、本発明の他の形態に係る電磁接触器は、前記一対の消弧用磁石体は、前記接点支持筐体の外側面に配置されていることを特徴としている。
この構成によれば、一対の消弧用磁石体が接点支持筐体の外側面に配置されているので、一対の消弧用磁石体の設置が容易となる。
また、本発明の他の形態に係る電磁接触器は、前記接点支持筐体の前記一対の消弧用磁石体と対向する内周面に消弧空間が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、電流供給側から電流受給側に発生するアークを、一対の消弧用磁石体の磁束によるローレンツ力によって、電流供給側の固定接触子の側面から固定接触子及び可動接触子の側面から離れた消弧空間を通って可動接触子の背面側に至るように、又はその逆の方向に引き伸ばすことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、所定間隔を保って配置された第1の固定接触子及び第2の固定接触子間に第3の2つの固定接点部を有する第3の固定接触子を配置した固定接点を設けるとともに、第1の固定接触子の固定接点部及び第3の固定接触子の一方の固定接点部間に対向する第1の可動接触子と、第3の固定接触子の他方の固定接点部及び第2の固定接触子の固定接点部に対向する第2の可動接触子とを絶縁体で支持した可動接点を設けることにより、電磁接触器でのアーク発生部の数を増加させることができる。このため、各アーク発生部で、アークの消弧を行うことにより、総計のアーク長を長くして高電圧を遮断することができる。このため、従来と同等の大きさで従来に比較して高電圧を遮断できる。
【0019】
また、電源側において、第1の可動接触子と接触する第1の固定接触子の固定接点部と、第3の固定接触子の一方の固定接点部とで電流の方向が逆方向となる。このため、それぞれのアーク発生部で引き伸ばされる消弧空間の方向が異なることになり、双方で発生するアークが互いに干渉することはなく、隣接する接点部間の距離を短くすることができる。同様に、負荷側でも隣接する接点部間の距離を短くすることができ、固定接点の接触子の配列方向の長さを短くすることができる。
【0020】
しかも、第1の固定接触子及び第2の固定接触子は、外部端子を固定するためのねじ穴を有するので、小型化が難しいため、第1の固定接触子及び第2の固定接触子間のピッチを小さくするには制約がある。この制約を踏まえて、第1の固定接触子及び第2の固定接触子間に第3の固定接触子を配置することにより、第1の固定接触子及び第2の固定接触子間の空間を有効利用することができる。
【0021】
さらに、隣接する接点部に流れる電流の向きが逆方向になるので、ローレンツ力も逆向きに作用する。すなわち、可動接触子の延長方向と直交する両脇の何れに向かってアークが引き伸ばされるかは接点部に流れる電流の向きによって決まる。そのため、可動接触子の延長方向と直交する両脇の双方に消弧空間を設けることにより、アーク電流の向きすなわち接点部を流れる電流の向きにかかわらず、アークの消弧を行うことができ、電源から負荷側に電流を供給する場合や負荷側から回生電流が電源側に戻される場合の双方で十分な消弧機能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の電磁接触器の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の接点機構を示す長手方向の縦断面図である。
【
図3】消弧用磁石体で発生する磁束を示す説明図である。
【
図4】電磁接触器の付勢時における電流流路を示す縦断面図である。
【
図5】電磁接触器の付勢時から非付勢時としたときのアーク発生状態を示す縦断面図である。
【
図6】永久磁石の磁束と電流の方向とによって発生するローレンツ力の作用方向を示す
図5におけるA−A線上の断面図である。
【
図7】アークの引き伸ばし状態を示す
図6におけるB−B線上の断面図である。
【
図8】アークの引き伸ばし状態を示す
図6におけるC−C線上の断面図である。
【
図10】従来例における通電状態における接点部と消弧手段との関係を示す模式図である。
【
図11】従来例におけるアークの発生状況を示す説明図である。
【
図12】従来例における遮断状態におけるアークと電流の向きと消弧手段による磁束の向きとの関係を示す模式図である。
【
図13】従来例における電流の向きが逆となった状態の
図12と同様の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の電磁接触器の一例を示す斜視図である。この
図1において、1は電磁接触器であって、この電磁接触器1は、上部の接点機構2と下部の駆動機構3とで構成されている。
接点機構2は、絶縁材料で形成された直方体状の接点支持筐体4と、この接点支持筐体4に支持された導電性を有する固定接点5及び可動接点6とを備えている。
【0024】
固定接点5は、
図2に示すように、接点支持筐体4の上面板4aに所定間隔を保って固定支持された第1の固定接触子7及び第2の固定接触子8と、これら第1の固定接触子7及び第2の固定接触子8間の上面板4aの下面側に、これら第1の固定接触子7及び第2の固定接触子8と所定の絶縁距離を保って固定支持された第3の固定接触子9とを備えている。
【0025】
ここで、第1の固定接触子7及び第2の固定接触子8のそれぞれは、
図2に示すように、接点支持筐体4の上面板4aから上方に突出し、上面から雌ねじ部11が形成された円柱状の固定端子部12と、この固定端子部12の下面に連接する固定端子部12の直径より小さい直径の固定接点部13とで構成されている。
そして、第1の固定接触子7の固定端子部12が例えば数百Vの高圧直流電源に接続された外部接続端子が接続され、第2の固定接触子8の固定端子部12が負荷に接続される。
【0026】
また、第3の固定接触子9は、
図2に示すように、左右方向の長さに対し幅が狭く、第1の固定接触子7及び第2の固定接触子8間に延長する導電性の平板部14と、この平板部14の長手方向両端部側における下面から左右方向に比較的短い所定間隔を保って下方に突出する2つの円柱状の固定接点部15,16とで構成されている。ここで、固定接点部15,16の突出高さは、第3の固定接触子9を
図2に示すように接点支持筐体4の上面板4aに固定した状態で、固定接点部15,16の下面位置が第1及び第2の固定接触子7,8の固定接点部13の下面と面一即ち同一水平面上となるように設定されている。
【0027】
また、可動接点6は、第1の固定接触子7の固定接点部13と第3の固定接触子9の固定接点部15と対向する第1の可動接触子21と、第3の固定接触子9の固定接点部16と第2の固定接触子8の固定接点部13と対向する第2の可動接触子22と、これら第1の可動接触子21及び第2の可動接触子22を固定支持する絶縁碍子で構成される絶縁体23とを備えている。そして、絶縁体23がシャフト24を介して接点機構2の下側に設けられた駆動機構3に連結されている。
【0028】
駆動機構3は、図示しないが、励磁コイルを巻装したコイルボビンの内周側に磁性材料で構成されるコア部とプランジャとが配設され、プランジャにシャフト24が固定されている。そして、励磁コイルが非通電状態であるときには、
図2に示すように、第1の固定接触子7、第2の固定接触子8及び第3の固定接触子9の各固定接点部13,15及び16から第1及び第2の可動接触子21,22が下方に所定距離だけ離間して接点機構2が開成状態になる。この接点機構2の開成状態から励磁コイルに通電すると、プランジャが上方に移動してシャフト24を介して絶縁体23と第1及び第2の可動接触子21,22とが上方に移動する。これによって、第1の可動接触子21が第1の固定接触子7の固定接点部13と第3の固定接触子9の固定接点部15との間に接触する。これと同時に、第2の可動接触子22が第3の固定接触子9の固定接点部16と第2の固定接触子8の固定接点部13との間に接触する。このため、接点機構2が閉成状態となる。
【0029】
一方、接点支持筐体4の固定接点5の第1の固定接触子7、第2の固定接触子8及び第3の固定接触子9の配列方向と平行な両外側面4b及び4cにそれぞれ消弧用磁石体31及び32が互いに対向されて例えば接着剤で固定されている。ここで、消弧用磁石体31及び32は、厚み方向に着磁されており、対向磁極面すなわち内側面が同一のN極とされ、それらの背面側即ち外側面がS極とされている。
【0030】
そして、消弧用磁石体31及び32は、左右方向の中心部が第3の固定接触子9の左右方向の中心部と一致し、且つ左右両端部が少なくとも第1の固定接触子7及び第3の固定接触子9間と第2の固定接触子8及び第3の固定接触子9間となるように配置されている。このため、消弧用磁石体31及び32のN極から出る磁束が、平面から見て
図3に示すように、電源側の固定接触子7及び9と第1の可動接触子21との間を固定接点5の配列方向に横切って通るとともに、負荷側の固定接触子9及び8と第2の可動接触子22との間を固定接点5の配列方向に横切って通るように配置されている。
【0031】
すなわち、消弧用磁石体31及び32のN極から出る磁束は、平面からみて、左右方向の中央部で左右に分かれ、その一方の磁束φ1が第3の固定接触子9の固定接点部15と第1の可動接触子21との対向面間を通り、第1の固定接触子7の固定接点部13と第1の可動接触子21との対向面間を通ってから接点支持筐体4の外側を通って消弧用磁石体31及び32のS極に至る磁路を形成する。また、他方の磁束φ2が第3の固定接触子9の固定接点部16と第2の可動接触子22との対向面間を通り、第2の固定接触子8の固定接点部13と第2の可動接触子22との対向面間を通ってから接点支持筐体4の外側を通って消弧用磁石体31及び32のS極に至る磁路を形成する。
【0032】
さらに、
図7及び
図8に示すように、接点支持筐体4の第1の固定接触子7の固定接点部13、第3の固定接触子9の固定接点部15及び第1の可動接触子21と消弧用磁石体31及び32との間の内周面に消弧空間34及び35が形成されているとともに、第3の固定接触子9の固定接点部16、第2の固定接触子8の固定接点部13及び第2の可動接触子22と消弧用磁石体31及び32との間の内周面にも上記消弧空間34及び35が延長して形成されている。
【0033】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、第1の固定接触子7の固定端子部12に高電圧直流電源に接続された外部接続端子を接続し、第2の固定接触子8の固定端子部12に負荷に接続された外部接続端子を接続しているものとする。
この状態で、駆動機構3の図示しない励磁コイルが非通電状態であるときには、駆動機構3内に配設された図示しない復帰スプリングによって可動接点6のシャフト24が下方に移動され、
図2に示すように、第1の可動接触子21が第1の固定接触子7の固定接点部13及び第3の固定接触子9の固定接点部15から下方に所定距離離間しているとともに、第2の可動接触子22が第2の固定接触子8の固定接点部13及び第3の固定接触子9の固定接点部16から下方に所定距離離間した釈放状態となっている。このため、第1の固定接触子7及び第2の固定接触子8間が非導通状態となって、高圧直流電源からの電流が負荷に供給されない電流遮断状態となっている。
【0034】
この接点機構の開成状態から駆動機構3の図示しない励磁コイルに通電すると、駆動機構3内に配設された図示しないプランジャが復帰スプリングに抗して上方に移動し、これによって可動接点6のシャフト24が上方に移動される。このため、
図4に示すように、第1の固定接触子7の固定接点部13及び第3の固定接触子9の固定接点部15に第1の可動接触子21が接触するとともに、第3の固定接触子9の固定接点部16及び第2の固定接触子8の固定接点部13に第2の可動接触子22が接触する投入状態となる。
【0035】
したがって、第1の固定接触子7の固定端子部12に入力される電流が第1の固定接触子7の固定接点部13から第2の可動接触子21を通って第3の固定接触子9の固定接点部15に入り、平板部14を通って固定接点部16から第2の可動接触子22を介して第2の固定接触子8の固定接点部13に入り、この第2の固定接触子8の固定端子部12から負荷に電流が供給される電流供給状態となる。
【0036】
その後、電流供給状態を解除するために、駆動機構3の励磁コイルへの通電を遮断すると、図示しないプランジャが復帰スプリングによって下降を開始するので、接点機構2では、
図5に示すように、第1の可動接触子21が第1の固定接触子7の固定接点部13及び第3の固定接触子9の固定接点部15から離間するとともに、第2の可動接触子22が第3の固定接触子9の固定接点部16及び第2の固定接触子8の固定接点部13から離間することになる。このとき、電源側では、第1の可動接触子21と第1の固定接触子7の固定接点部13及び第3の固定接触子9の固定接点部15との間でアーク36が発生する。これと同時に負荷側でも第2の可動接触子22と第3の固定接触子9の固定接点部16及び第2の固定接触子8の固定接点部13との間でアーク36が発生し、計4つのアークが発生する。このため、電源側及び負荷側でともにアークによって電流の通電状態が継続されることになる。
【0037】
このとき、前述したように、消弧用磁石体31及び32の対向磁極面がN極であるので、このN極が出た磁束が、電源側では、第1の可動接触子21と第1の固定接触子7の固定接点部13及び第3の固定接触子9の固定接点部15との間を固定接触子の配列方向に左側に横切る。このため、第1の固定接触子7の固定接点部13と第1の可動接触子21との間では、
図6に示すように、電流が紙面に対して下向きに流れるので、フレミングの左手の法則によって、固定接触子の配列方向と直交して消弧用磁石体32側となるローレンツ力が作用する。これに対して、第3の固定接触子7の固定接点部15と第1の可動接触子21との間では、電流が紙面に対して上向きに流れるので、フレミングの左手の法則によって固定接触子の配列方向と直交して消弧用磁石体31側となるローレンツ力が作用する。
【0038】
同様に、負荷側では、消弧用磁石体31及び32の対向磁極面のN極から出た磁束が、第3の固定接触子9の固定接点部16及び第2の固定接触子8の固定接点部13と第2の可動接触子22との間を固定接触子の配列方向に右側に横切る。このため、第3の固定接触子9の固定接点部16と第2の可動接触子22との間では、
図6に示すように、電流が紙面に対して下向きに流れるので、フレミングの左手の法則によって、固定接触子の配列方向と直交して消弧用磁石体31側となるローレンツ力が作用する。これに対して、第2の固定接触子8の固定接点部13と第2の可動接触子22との間では、電流が紙面に対して上向きに流れるので、フレミングの左手の法則によって固定接触子の配列方向と直交して消弧用磁石体32側となるローレンツ力が作用する。
【0039】
このため、第1の固定接触子7の固定接点部13と第1の可動接触子21との間ではアークが、
図7に示すように、消弧空間35内に引き伸ばされて、第1の固定接触子7の固定接点部13の基部側から第1の可動接触子21の底面側に向かう状態となる。
また、第3の固定接触子9の固定接点部15と第1の可動接触子21との間ではアークが、
図8に示すように、消弧空間34内に引き伸ばされて、第3の固定接触子9の固定接点部15の基部側から第1の可動接触子21の底面側に向かう状態となって消弧される。
【0040】
同様に、負荷側でも、第3の固定接触子9の固定接点部16と第2の可動接触子22との間ではアークが消弧空間34側に引き伸ばされて消弧され、第2の固定接触子8の固定接点部13と第2の可動接触子22との間でアークが消弧空間35側に引き伸ばされて消
弧される。
一方、電磁接触器1の投入状態で、負荷側から直流電源側に回生電流が流れている状態で、釈放状態とする場合には、前述した
図6における電流の方向が逆となることから、ローレンツ力が固定接触子の配列方向を挟む線対象側に反転することを除いては同様の消弧機能が発揮される。
【0041】
このため、投入状態から釈放状態とする際に発生するアークを従来例に比較して2つ増加させて計4つのアークを発生することができ、それぞれのアークについて消弧空間34又は35側に引き伸ばすので、引き伸ばした総計のアーク長を大きくすることができ、従来と同等の大きさでより大きな高電圧を遮断することができる。
しかも、電源側及び負荷側のそれぞれで、発生するアークを引き伸ばす消弧空間が異なるので、互いのアークが干渉することはなく、隣接する固定接点部間の距離を短くすることができる。
【0042】
また、第1の固定接触子7及び第2の固定接触子8は、固定端子部12に外部接続端子との固定用のねじ穴を形成するため小型化することは難しいため、各固定接触子7及び8間のピッチを短くすることには制約がある。この制約がある固定接触子7及び8間の空間部に第3の固定接触子9を配置するので、空間を有効利用することができ、全体の構成が大型化することなくアークの消弧機能を向上させることができる。
【0043】
さらに、固定接点部と可動接触子との間に流れる電流の向きが逆になれば、ローレンツ力の向きも逆向きに作用する。すなわち、可動接触子21及び22の延長方向の両脇すなわち消弧用磁石体31及び32の何れの側にアークが引き伸ばされるかは、固定接点部と可動接触子との間に流れる電流の向きによって決まる。そのため、可動接触子の延長方向の両脇すなわち消弧用磁石体31及び32側にそれぞれ消弧空間34及び35を設けることにより、アーク電流の向きすなわち固定接点部及び可動接触子間に流れる電流の向きにかかわらず、確実なアークの消弧機能を発揮することができる。
【0044】
以上のように本実施形態によると、接点部に流れる電流の向きにかかわらず、高電圧の電源に対して十分なアーク消弧機能を有する小型の電磁接触器を提供することができる。
なお、上記実施形態においては、消弧空間34及び35が電源側及び負荷側に延長して形成されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電源側及び負荷側との中間部に隔壁を形成して、電源側及び負荷側で異なる消弧空間とすることもできる。この場合には、第3の固定接触子9の固定接点部15と第1の可動接触子21との間で発生するアークと、体3の固定接触子9の固定接点部16と第2の可動接触子22との間で発生するアークとを隔壁で分離することができるので、両者の干渉を確実に防止することができる。
【0045】
また、上記実施形態においては、消弧用磁石体31及び32の対向磁極面をN極とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、消弧用磁石体31及び32の対向磁極面をS極とすることもできる。この場合には、消弧用磁石体31及び32の外面側のN極から出た磁束が電源側では、第1の固定接触子7の固定接点部13及び第1の可動接触子21間を通り、第3の固定接触子9の固定接点部15及び第1の可動接触子21間を通って消弧用磁石体31及び32のS極に入ることになる。同様に、負荷側では、第2の固定接触子8の固定接点部13及び第2の可動接触子22間を通り、第3の固定接触子9の固定接点部16及び第2の可動接触子22間を通って消弧用磁石体31及び32のS極に入ることになる。このため、上記した実施形態におけるローレンツ力の作用方向が逆となることを除いては上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1…電磁接触器、2…接点機構、3…駆動機構、4…接点支持筐体、4a…上面板、4b,4c…側面部、5…固定接点、6…可動接点、7,8,9…固定接触子、11…雌ねじ部、12…固定端子部、13…(第1、第2の固定接触子の)固定接点部、14…平板部、15,16…(第3の固定接触子の)固定接点部、21,22…可動接触子、23…絶縁体、24…シャフト、31,32…消弧用磁石、34,35…消弧空間、36…アーク、100…ハウジング、101,102…固定接点、103,104…可動接点、105…可動接点担持体、106,107…永久磁石、108…アーク