特許第5711013号(P5711013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5711013
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】抵抗ストリング型D/Aコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/76 20060101AFI20150409BHJP
   H03M 1/68 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   H03M1/76
   H03M1/68
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-59153(P2011-59153)
(22)【出願日】2011年3月17日
(65)【公開番号】特開2012-195825(P2012-195825A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2014年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】514231273
【氏名又は名称】リコー電子デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125874
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 純市
(72)【発明者】
【氏名】中谷 寧一
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2002/080371(WO,A1)
【文献】 特表2008−524963(JP,A)
【文献】 特開2010−171863(JP,A)
【文献】 特開2005−269023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/00−1/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
nビットのデジタルデータを被変換データとする抵抗ストリング型D/Aコンバータ回路であって、
第1の抵抗ストリング部と、
第2の抵抗ストリング部と、
データ反転回路と、
出力選択スイッチと、
変換されたアナログ電圧を出力する第1の出力端子及び第2の出力端子と
を備え、
前記第1の抵抗ストリング部及び前記第2の抵抗ストリング部は、(n−1)ビットの入力データに応じたアナログ電圧を夫々前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子に対して出力し、前記データ反転回路は、(n−1)ビットの入力データが変動するとき前記第1の抵抗ストリング部と前記第2の抵抗ストリング部との夫々の出力の電圧変動の方向が逆となるように制御し、
前記出力選択スイッチは、前記被変換データの所定ビットの“0”と“1”の切り替わりにより、前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子に対して、前記第1の抵抗ストリング部の出力電圧及び前記第2の抵抗ストリング部の出力電圧を切り替えて出力するものであり、
前記第1と第2の抵抗ストリング部は、夫々2(n−1)個の抵抗が直列に接続されて形成されており、各抵抗の接続点には、該接続点の電圧を取り出すためのスイッチが接続され、
更に、
前記第1の抵抗ストリング部の一端は、第1の基準電圧の入力端子と接続され、
前記第2の抵抗ストリング部の一端は、前記第1の基準電圧より低い第2の基準電圧の入力端子と接続され、
前記第1の抵抗ストリング部の他端と前記第2の抵抗ストリング部の他端とが、接続され、
更に、
前記被変換データのデジタルのコードに応じて前記スイッチを選択して、前記第1の抵抗ストリング部からのアナログ電圧出力と、前記第2の抵抗ストリング部からのアナログ電圧出力を、出力させるデコーダを備え、
前記スイッチに関しては、前記第1の基準電圧の入力端子側から数えて2(n−1)番目の抵抗と2(n−1)+1番目の抵抗との間を境界として、上側半分と下側半分を折り返した位置のものが同時にオンするものであり、
更に、
前記データ反転回路と前記第1の抵抗ストリング部及び前記第2の抵抗ストリング部との間に接続された制御回路(デコーダ)を備え、前記制御回路(デコーダ)は、第1の抵抗ストリング部のスイッチと第2の抵抗ストリング部のスイッチを共通線で制御する
ことを特徴とする抵抗ストリング型D/Aコンバータ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、D/A(デジタル/アナログ)変換回路に関し、特に、差動出力端子を有する抵抗ストリング型D/A変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
差動入出力増幅回路を用いた演算増幅回路において、その出力電圧のDCオフセット電圧が可変である回路を構成する場合、演算増幅回路に対して加算回路を付加し、その加算回路においてDCオフセット電圧調整用電圧源(例えば、D/Aコンバータ)を配置する。
【0003】
抵抗ストリング型D/Aコンバータは、回路的に単調増加性が確保されているため、DCオフセット電圧調整用電圧源に用いられることが多い。
【0004】
従来、図6に示すように、差動入出力増幅回路を用いた演算増幅回路53において、その出力電圧のDCオフセット電圧が可変である回路を構成する場合、演算増幅回路53に加算回路62を付加し、その加算回路62内でDCオフセット電圧調整用電圧源(例えば、抵抗ストリング型D/Aコンバータ64)を用いている。この場合、差動入出力増幅回路53では、反転信号及び非反転信号(INM、IMP)に対して、夫々にDCオフセット電圧が加えられる。このことに対応するために、加算回路62内に同一の抵抗ストリング型D/Aコンバータ(64、64’)を二つ設けて、二つのDCオフセット電圧を形成している。このように加算回路62を構成すると、同一の回路(抵抗ストリング型D/Aコンバータ)を二つ配置することになるため、加算回路の全体面積が増大してしまう。また、加算回路における回路電流も増加することになる。
【0005】
引用文献1は、2つの出力を有する抵抗ストリング型D/Aコンバータ回路を開示している。引用文献1のD/Aコンバータ回路は、第一の出力に対して第一の上下ビットデコーダを、第二の出力に対して第二の上下ビットデコーダを有し、高電位側基準電圧から低電位側基準電圧の間に直列接続されている抵抗体の各ノードからは、各々2個のスイッチが設けられている。第一のデコーダによる第一のデコード結果、及び、第二のデコーダによる第二のデコード結果に応じてそれぞれのスイッチがオンし、それぞれのD/A変換の結果としてDAOUT1及びDAOUT2から電圧が出力されるようになっている。このため、引用文献1の構成では、出力端子を一つ有する従来の抵抗ストリング型D/Aコンバータ回路に比べて、抵抗体を除く構成回路が2倍になってしまい、結局、素子数及び面積が増加する、という問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シングル出力の抵抗ストリング型D/Aコンバータと略同等の素子数とセル面積を保ちながら、差動出力電圧を得られる抵抗ストリング型D/Aコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するために為されたものである。本発明に係る抵抗ストリング型D/Aコンバータ回路は、
nビットのデジタルデータを被変換データとする抵抗ストリング型D/Aコンバータ回路であって、
第1の抵抗ストリング部と、
第2の抵抗ストリング部と、
データ反転回路と、
出力選択スイッチと、
変換されたアナログ電圧を出力する第1の出力端子及び第2の出力端子と
を備え、
前記第1の抵抗ストリング部及び前記第2の抵抗ストリング部は、(n−1)ビットの入力データに応じたアナログ電圧を夫々前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子に対して出力し、前記データ反転回路は、(n−1)ビットの入力データが変動するとき前記第1の抵抗ストリング部と前記第2の抵抗ストリング部との夫々の出力の電圧変動の方向が逆となるように制御し、
前記出力選択スイッチは、前記被変換データの所定ビットの“0”と“1”の切り替わりにより、前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子に対して、前記第1の抵抗ストリング部の出力電圧及び前記第2の抵抗ストリング部の出力電圧を切り替えて出力するものであり、
前記第1と第2の抵抗ストリング部は、夫々2(n−1)個の抵抗が直列に接続されて形成されており、各抵抗の接続点には、該接続点の電圧を取り出すためのスイッチが接続され、
更に、
前記第1の抵抗ストリング部の一端は、第1の基準電圧の入力端子と接続され、
前記第2の抵抗ストリング部の一端は、前記第1の基準電圧より低い第2の基準電圧の入力端子と接続され、
前記第1の抵抗ストリング部の他端と前記第2の抵抗ストリング部の他端とが、接続され、
更に、
前記被変換データのデジタルのコードに応じて前記スイッチを選択して、前記第1の抵抗ストリング部からのアナログ電圧出力と、前記第2の抵抗ストリング部からのアナログ電圧出力を、出力させるデコーダを備え、
前記スイッチに関しては、前記第1の基準電圧の入力端子側から数えて2(n−1)番目の抵抗と2(n−1)+1番目の抵抗との間を境界として、上側半分と下側半分を折り返した位置のものが同時にオンするものであり、
更に、
前記データ反転回路と前記第1の抵抗ストリング部及び前記第2の抵抗ストリング部との間に接続された制御回路(デコーダ)を備え、前記制御回路(デコーダ)は、第1の抵抗ストリング部のスイッチと第2の抵抗ストリング部のスイッチを共通線で制御する
【発明の効果】
【0008】
本発明を利用することにより、同程度の分解能を有するシングル出力の抵抗ストリング型D/Aコンバータと比較して、素子数を僅かに増加させることで、略同等の回路面積でありながら、差動出力電圧(信号)を得ることができる。この差動出力電圧(信号)は、差動入出力増幅回路における反転信号及び非反転信号に対して夫々加えられるべきDCオフセット電圧となり得る。
【0009】
また、本発明に係る抵抗ストリング型D/Aコンバータは、一連の抵抗体を使用しているのでコモンモード雑音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る抵抗ストリング型D/Aコンバータの回路図である。
図2】(1)は、データ反転回路の回路図の例である。(2)は、下位ビット反転回路の回路図の例である。(3)は、出力切替回路の回路図の例である。
図3】差動入出力増幅回路における、本発明に係る抵抗ストリング型D/Aコンバータの利用例を示すブロック図である。
図4】(1)は、被変換データが“00h”から“3Fh”まで段階的に変化する場合の、内部ノードMB0の電位の変化と内部ノードMB1の電位の変化を示すグラフである。(2)は、被変換データが“00h”から“3Fh”まで段階的に変化する場合の、出力端子OUTの電位の変化と出力端子OUTBの電位の変化を示すグラフである。(3)は、D/Aコンバータの出力電圧を示すグラフである。
図5】(1)に示す表は、本発明に係る上位ビットデコーダへの入力データ(D3、D4)と出力データ(G0〜G3)の関係を示している。(2)に示す表は、従来技術の上位ビットデコーダの入力データ(D3〜D5)と出力データ(G0〜D7)の関係を示している。(3)に示す表においては、従来技術の下位ビット反転回路及び下位ビットデコーダへの、入力データ(D0〜D3)と出力データ(L0〜L7)の関係を示すと同時に、本発明に係る下位ビット反転回路及び下位ビットデコーダへの、入力データ(D0〜D3)と出力データ(L0〜L7)の関係を示している。
図6】差動入出力増幅回路における、従来の抵抗ストリング型D/Aコンバータの利用例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、本明細書中では、例えば、「/D5」は、D5の反転信号であることを表している。
【0012】
1.第1の実施形態
1.1.抵抗ストリング型D/Aコンバータの構成
図1は、本発明の第1の実施形態に係る抵抗ストリング型D/Aコンバータの回路図である。図1(1)は、被変換データ(Data0〜Data5)が入力するデータ反転回路11及び出力切替回路12の回路図を示している。図1(2)は、データ反転回路11及び出力切替回路12が出力するデータ(D0〜D5、/D5)を入力してD/A変換を行い更に差動出力する抵抗ストリング型D/Aコンバータの本体部の回路図を示している。
【0013】
被変換データ(Data0〜Data5)のうち、Data5が最上位ビット(MSB)であり、Data0が最下位ビット(LSB)である。第1の実施形態に係る抵抗ストリング型D/Aコンバータは、入力される被変換データ(Data0〜Data5)に応じてデジタル・アナログ変換を行い、デジタル・アナログ変換後の出力電圧を差動出力端子OUT、OUTBから出力する。出力OUTと出力OUTBは、図4(2)に示すように、一方が階段状に単調増加し他方が階段状に単調減少する、相補的な電圧を夫々出力する。
【0014】
図1(2)に示す抵抗ストリング型D/Aコンバータの本体部においては、高電位側基準電圧入力端子VRTと低電位側基準電圧入力端子VRBの間で、2個(即ち、64個)の抵抗が直列に接続され、それぞれの抵抗の間には、そのノード電圧を取り出すためのスイッチ(SW1A〜SW32A、SW1B〜SW32B)が接続されている。
【0015】
このように2個(即ち、64個)の抵抗が直列に接続されて形成される抵抗ストリング部は、回路的には連続した一本の抵抗体とみなされ得る。ここで、半導体集積回路のレイアウト面積の制約から、抵抗体は折り返されて行列状に配置されている。これにより、行、列それぞれの位置を上位ビット及び下位ビットのデコードの結果として選択することで、所定の電圧が差動出力端子OUT、OUTBから取り出される。
【0016】
図1(2)に示すように抵抗ストリング部(抵抗体)を折り返して配置していることにより、低電位側基準電圧入力端子VRB側から見て奇数番目の行と偶数番目の行とにおいて電圧の大小関係が左右逆転してしまう。即ち、奇数番目の行では図1の左に進む程、電位が高くなるが、偶数番目の行では図1の右に進む程、電位が高くなる。よって、選択されている行が奇数番目のものか偶数番目のものかによって列の選択位置を入れ替えるために、下位ビットデータ反転回路16が用意されている。図2(2)は、下位ビット反転回路16の回路図の例である。この下位ビットデータ反転回路16により、データD3が“0”のときと“1”のときの下位ビットデコーダ15の出力データ(L7〜L0)の並びが反転することで、抵抗間のノード電圧の大小関係の反転に対応している。つまり、入力データに対して出力データの大小関係を反転させる回路となっている。図5(3)に示す表においては、下位ビット反転回路16及び下位ビットデコーダ15への、入力データ(D0〜D3)と出力データ(L0〜L7)の関係を示している。
【0017】
なお、上位ビットのデコードの結果は、個々の抵抗の間に接続されるスイッチを選択することで反映される。下位ビットのデコードの結果は、各列に一つ備わるスイッチ(S00〜S07、S10〜S17)を選択することで反映される。スイッチS00、S10のゲートには下位ビットデコーダ15の出力データL0が、スイッチS01、S11のゲートには出力データL1が、スイッチS02、S12のゲートには出力データL2が、スイッチS03、S13のゲートには出力データL3が、スイッチS04、S14のゲートには出力データL4が、スイッチS05、S15のゲートには出力データL5が、スイッチS06、S16のゲートには出力データL6が、スイッチS07、S17のゲートには出力データL7が、夫々繋がっている。
【0018】
特に、本実施形態の抵抗ストリング型D/Aコンバータでは、高電位側基準電圧入力端子VRTに近い抵抗R1A〜抵抗R32Aと、それら抵抗の間に接続するスイッチSW1A〜スイッチSW32Aと、列ごとに設定されるスイッチ(SW10、SW11・・・SW17)とは、第1の抵抗ストリング部17を構成している。更に、低電位側基準電圧入力端子VRBに近い抵抗R1B〜抵抗R32Bと、それら抵抗の間に接続するスイッチSW1B〜スイッチSW32Bと、列ごとに設定されるスイッチ(SW00、SW01・・・SW07)とは、第2の抵抗ストリング部18を構成している。
【0019】
後で説明するように、第1の抵抗ストリング部17の形成する電圧は、内部ノードMB1の電位として表れ、第2の抵抗ストリング部18の形成する電圧は、内部ノードMB0の電位として表れる。第1の抵抗ストリング部17の形成する電圧は、被変換データ(Data0〜Data5)が“00h”から“3Fh”へと変化していくと、図4(1)に示すように、中央まで単調に減少し、中央以降単調に増加する。第2の抵抗ストリング部18の形成する電圧は、被変換データ(Data0〜Data5)が“00h”から“3Fh”へと変化していくと、同様に図4(1)に示すように、中央まで単調に増加し、中央以降単調に減少する。本実施形態の抵抗ストリング型D/Aコンバータは、被変換データ(Data0〜Data5)の“00h”と“3Fh”の中央(即ち、“1Fh”と“20Fh”の間)において、内部ノードMB0の出力と、内部ノードMB1の出力とを切り替えることにより、図4(2)に示すような、一方が階段状に単調増加し他方が階段状に単調減少する、相補的な電圧出力である、出力OUTと出力OUTB(即ち、差動出力電圧)を形成する。この切り替えは、(後で説明する)出力選択スイッチ19が、被変換データData5の非反転データD5及び反転データ/D5とに基づいて行う。
【0020】
1.2.抵抗ストリング型D/Aコンバータの動作
図面に従って、第1の実施形態に係る抵抗ストリング型D/Aコンバータの動作を説明する。まず、被変換データ(Data0〜Data5)はデータ反転回路11に入力され、データ反転回路11はデータD0〜D4を出力する。図2(1)は、データ反転回路11の回路図の例を示している。
【0021】
データ反転回路11は、最上位の被変換データData5が“0”であれば、下位の被変換データData0〜Data4をそのまま出力し、最上位の被変換データData5が“1”であれば、下位の被変換データData0〜Data4を反転させて出力する回路である。
【0022】
データ反転回路11の出力するデータのうち、データD0〜D2は、下位ビットデータ反転回路16を経て下位ビットデコーダ15に入力されてデコードされる。ここで、図2(2)は、下位ビット反転回路16の回路図であり、図5(3)に示す表は、下位ビット反転回路16及び下位ビットデコーダ15への、入力データ(D0〜D3)と出力データ(L0〜L7)の関係を示す表である。よって、図5(3)に示すように、L0〜L7のいずれかが“High”出力となり、スイッチS10〜S17のうちの一つ、及びスイッチS00〜S07のうちの一つが、オンすることで、第1の抵抗ストリング部17からの列(即ち、電圧)、及び、第2の抵抗ストリング部18からの列(即ち、電圧)を選択する。
【0023】
一方、データ反転回路11の出力するデータのうち、データD3、D4は、上位ビットデコーダ13に入力されデコードされる。ここで、図5(1)に示す表は、上位ビットデコーダ13への入力データ(D3、D4)と出力データ(G0〜G3)の関係を示す表である。よって、図5(1)に示すように、上位ビットデコーダ13の出力データG0〜G3のいずれかが“High”となり、第1の抵抗ストリング部17のスイッチ、及び第2の抵抗ストリング部18のスイッチにおいて、夫々1行分(即ち、8個分)オンとなる。このような1行分のオン動作と、入力データD0〜D4による下位ビットデータ反転回路16・下位ビットデコーダ15の動作とによって、図1(2)における内部ノードMB1の出力電圧は第1の抵抗ストリング部17からの電圧となり、内部ノードMB0の出力電圧は第2の抵抗ストリング部18からの電圧となる。
【0024】
ここで、図1(2)に示す第1の抵抗ストリング部17におけるノード2が、第1の抵抗ストリング部17内の最小電位((VRT−VRB)/2)を示すノードとなる。同様に、図1(2)に示す第2の抵抗ストリング部18におけるノード1が、第2の抵抗ストリング部18内の最大電位((VRT−VRB)/2−1LSB)を示すノードとなる。なお、「1LSB」は、図1(2)に示すように、一つの抵抗に対応する電位差である。
【0025】
更に、被変換データ(Data0〜Data5)が、“00h”から“3Fh”まで変動する場合の、第1の抵抗ストリング部17の内部ノードMB1の電位変動と、第2の抵抗ストリング部18の内部ノードMB0の電位変動とを、図4(1)に示している。内部ノードMB1の電位は、被変換データ(Data0〜Data5)が“00h”から“3Fh”へと変化していくと、「1LSB」ずつ、中央まで単調に階段状に減少し、中央以降単調に階段状に増加する。内部ノードMB0の電位は、被変換データ(Data0〜Data5)が“00h”から“3Fh”へと変化していくと、「1LSB」ずつ、中央まで単調に階段状に増加し、中央以降単調に階段状に減少する。
【0026】
内部ノードMB0の電位は、入力データ(被変換データ)(Data0〜Data5)が“00h”から増加するにつれて「1LSB」ずつ増加する。このとき、内部ノードMB1の電位は、VRTの電位から「1LSB」ずつ減少する。被変換データ(Data0〜Data5)が“1Fh”から“20h”に移るとき、被変換データData5が“0”から“1”に変化する。そうすると、データ反転回路11の作用により、下位ビットデコーダ15は、被変換データ(Data0〜Data5)が“00h”から“1Fh”まで変動するときと逆の出力を、被変換データ(Data0〜Data5)の“20h”から“3Fh”の間に、行う(図5(3)参照)。このとき、内部ノードMB0の電位は、「1LSB」ずつ減少し、内部ノードMB1の電位は、VRTの電位から「1LSB」ずつ増加する。よって、図4(1)に示すような、電位の変動を行うことになる。
【0027】
次に、被変換データData5によって、出力選択スイッチ19内のスイッチのオンオフが制御される。つまり、被変換データData5が“0”のとき出力切替回路12(図2(3)参照)により出力されるデータD5、/D5が“0”、“1”となり、スイッチSWA0、SWA1がオフしスイッチSWB0、SWB1がオンする。被変換データData5が“1”のとき出力切替回路12(図2(3)参照)により出力されるデータD5、/D5が“1”、“0”となり、スイッチSWA0、SWA1がオンしスイッチSWB0、SWB1がオフする。これにより、内部ノードMB0、MB1の電圧の出力先が、被変換データData5によって、出力端子OUTと出力端子OUTBとのいずれかに切り替わり、図4(2)に示すように、出力端子OUTは、VRB(の電位)から(VRT−1LSB)(の電位)まで、出力することが可能となる。出力端子OUTBは、(VRT−1LSB)からVRBまで、出力することが可能となる。また、「VOUT=OUT−OUTB」とD/Aコンバータの出力電圧を定義すると、図4(3)に示すように、出力電圧VOUTは、{−(VRT−VRB)+(1LSB/2)}から{(VRT−VRB)−(1LSB/2)}まで、変動することになる。
【0028】
なお、図2(3)は、出力切替回路12の回路図の例であり、被変換データData5をそのままデータD5として出力し、同時に反転させてデータ/D5として出力する回路である。
【0029】
また、図1(2)に示すように、第1の抵抗ストリング部17と第2の抵抗ストリング部18は、両者の境となる中心横線AA’に関して、対称に配置されている。つまり、被変換データ(Data0〜Data5)に応じてオンする電圧選択のためのスイッチは、低電位側基準電圧入力端子(VRT)側から数えて32(=2(6−1))番目の抵抗と33(=2(6−1)+1)番目の抵抗を境にして、下側半分と上側半分を折り返した位置のものが同時にオンすることになる。
【0030】
以上のように構成された抵抗ストリング型D/Aコンバータを動作することにより、入力するデジタルデータの値に比例した相補的な二つのアナログ電圧を得ることができる。
【0031】
1.3.抵抗ストリング型D/Aコンバータの具体的動作
具体的に、被変換データ(Data0〜Data5)が、“1Fh”、“20h” 、“21h”と変化したときの、第1の実施形態に係る抵抗ストリング型D/Aコンバータの動作について説明する。
【0032】
(1)被変換データ(Data0〜Data5)が“1Fh”の場合。
まず、被変換データ(Data0〜Data5)が“1Fh”のとき、Data0〜Data4は“1”であり、Data5は“0”である。下位ビットデコーダ15の出力は、図5(3)の表に示すように、L0=“High”(その他の出力L1〜L7は“Low”)となり、スイッチS00、及びスイッチS10がオン状態となる。
【0033】
一方、上位ビットデコーダ13の出力は、図5(1)の表に示すように、G03=“High”となり、第1の抵抗ストリング部17のスイッチSW25A、SW26A・・・SW32Aの8個、及び、第2の抵抗ストリング部18のスイッチSW25B、SW26B・・・SW32Bの8個が、同時にオン状態となる。
【0034】
これら上位ビットデコーダ13及び下位ビットデコーダ15により、内部ノードMB0は、ノード1の電位になり、内部ノードMB1は、ノード2の電位となる。また、被変換データData5が“0”であるので、出力選択スイッチ19における、スイッチSWB0及びスイッチSWB1がオンとなり、出力端子OUTにはノード1の電位が、出力端子OUTBにはノード2の電位が、それぞれ出力される。
【0035】
(2)被変換データ(Data0〜Data5)が“20h”の場合。
被変換データ(Data0〜Data5)が“20h”のとき、Data0〜Data4は“0”であり、Data5は“1”である。ここで、被変換データData5が“1”である場合、データ反転回路11によって、データD0〜D4=“High”となる(図2(1)参照)ため、下位ビットデコーダ15の出力は、L0=“High”(その他の出力L1〜L7は“Low”)のままである。
【0036】
上位ビットデコーダ13の出力も、データD3、D4の値が共に“High”のままであるので、G03=“High”である。
【0037】
被変換データData5が“0”から“1”に変わったため、出力選択スイッチ19への入力データD5、/D5の極性が反転する。その結果、出力端子OUTにはノード2の電圧が、出力端子OUTBにはノード1の電圧が、それぞれ出力される。
【0038】
(3)被変換データ(Data0〜Data5)が“21h”の場合。
さらに被変換データ(Data0〜Data5)が“21h”になった場合、下位ビットデコーダ15の出力は、L1=“High”(その他の出力L0、L2〜L7は“Low”)となり、スイッチS01、及びスイッチS11がオン状態になる。これにより、それぞれの出力電圧は抵抗一つ分、つまり1LSB分だけ変動する。
【0039】
以上のことから、被変換データが“00h”から“3Fh”まで段階的に変化する場合、第1の抵抗ストリング部17の選択電圧(ノードMB1の電位)は、被変換データが“00h”のとき(VRT−1LSB)の電位であり、“1Fh”のとき(VRT−VRB)/2の電位となる。また、“20h”のときも(VRT−VRB)/2の電位となり、“3Fh”のとき(VRT−1LSB)の電位に戻る。このことは、図4(1)の上部グラフに示されている。
【0040】
同様に、第2の抵抗ストリング部18の選択電圧(ノードMB0の電位)は、“00h”及び“3Fh”のときVRBの電位であり、“1Fh”及び“20h”のとき((VRT−VRB)/2−1LSB)の電位となる。このことは、図4(1)の下部グラフに示されている。
【0041】
被変換データの最上位ビットData5の状態によって、出力選択スイッチ19により、MB0とMB1とを切り替えることで、出力端子OUT、及び、出力端子OUTBの出力が、夫々、VRBから(VRT−1LSB)まで、及び、(VRT−1LSB)からVRBまで変動する。このことは、図4(2)のグラフに示されている。
【0042】
このように、本発明を利用することにより、同じ分解能を有するシングル出力の抵抗ストリング型D/Aコンバータと比較して、素子数を僅かに増加させれば、略同等の回路面積でありながら、差動出力電圧(信号)を得ることができる。
【0043】
図3に示すような差動入出力増幅回路を用いた演算増幅回路3において、その出力電圧のDCオフセット電圧が可変である回路を構成する場合、演算増幅回路3に加算回路2を付加し、その加算回路2内で、通常、DCオフセット電圧調整用電圧源(抵抗ストリング型D/Aコンバータ1)が用いられる。この場合、差動入出力増幅回路3では、反転信号及び非反転信号(INM、IMP)に対して夫々にDCオフセット電圧が加えられるが、図3に示すように、加算回路2内に本発明に係るD/Aコンバータ1を一つ設ければ、差動出力信号により、二つのDCオフセット電圧を形成することができる。このとき、加算回路2の全体の面積を削減することができる。同時に、加算回路2における回路電流も削減できる。
【0044】
以上のように、第1の実施形態に係る抵抗ストリング型D/Aコンバータは、第1の抵抗ストリング部17、第2の抵抗ストリング部18、データ反転回路11、及び、出力選択スイッチ19を備える、6ビットの抵抗ストリング型D/Aコンバータである。この抵抗ストリング型D/Aコンバータにおいて、第1の抵抗ストリング部17及び第2の抵抗ストリング部18は、5(即ち、6−1)ビットの入力データに応じたアナログ電圧を出力するものであり、且つ、下位5ビットの入力データが変動するとき第1の抵抗ストリング部17と第2の抵抗ストリング部18との電圧変動方向が逆である。更に、データ反転回路11は、被変換データ2−1と被変換データ2との間を境界として、下位5ビットの被変換データを反転させて第1の抵抗ストリング部17及び第2の抵抗ストリング部18に出力する。更に、出力選択スイッチは、最上位の被変換データの“0”と“1”の切り替わりにより、二つの出力端子に対して、第1の抵抗ストリング部17のアナログ電圧出力と、第2の抵抗ストリング部18のアナログ電圧出力とを切り替える。このように抵抗ストリング型D/Aコンバータを構成することにより、入力するデジタルデータの値に比例した相補的な二つのアナログ電圧(差動出力電圧)を得ることができる。
【0045】
2.その他の実施形態
以上の第1の実施形態では、6ビットのデジタルデータを被変換データとするD/Aコンバータを示しているが、本発明に係る抵抗ストリング型D/Aコンバータの被変換データ(入力データ)は、6ビットに限定されるものではなく、それ以外のビット数のデータを被変換データ(入力データ)として扱う抵抗ストリング型D/Aコンバータにおいても、本発明を実現することは当然ながら可能である。
【0046】
例えば、被変換(入力)データがnビットであれば、第1の抵抗ストリング部と第2の抵抗ストリング部は、夫々、2(n−1)個の抵抗が直列に接続されて形成されればよい。下位(n−1)ビットの入力データが変動するとき第1の抵抗ストリング部と第2の抵抗ストリング部との電圧変動方向は逆となるように構成されればよい。更に、データ反転回路は、被変換データ2(n−1)−1と被変換データ2(n−1)との間を境界として、下位(n−1)ビットの被変換データを反転させて出力するものであればよい。
【符号の説明】
【0047】
11・・・データ反転回路、12・・・出力切替回路、13・・・上位ビットデコーダ、15・・・下位ビットデコーダ、16・・・下位ビット反転回路、17・・・第1の抵抗ストリング部、18・・・第2の抵抗ストリング部、19・・・出力選択スイッチ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【特許文献1】特開2005−210592号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6