(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記存在させる工程において、前記組成物に前記部材を浸漬することにより、前記部材の少なくとも表面に前記組成物を直接接触させる、請求項1又は2に記載の製造方法。
前記存在させる工程において、前記積層体、又は、前記積層体とそれを収容した電池ケースとを備える構造体における前記部材の少なくとも表面に前記組成物を直接接触させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法は、セパレータと、正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する正極と、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料及び金属リチウムからなる群より選択される1種以上の材料を含有する負極とを備えるリチウムイオン二次電池の製造方法であって、相転移型ゲル化剤を、セパレータ、正極及び負極からなる群より選ばれる1種以上の部材の少なくとも表面上に存在させる工程と、セパレータを正極と負極とで挟むことにより、それらを積層して積層体を得る工程と、積層体を電解液に浸漬する工程とを含むものである。
【0015】
<セパレータ>
本実施形態に係るセパレータは、正負極の短絡防止、シャットダウン等の安全性付与の観点から、正極と負極との間に備えられるものである。セパレータは、少なくともその表面上に相転移型ゲル化剤が存在するものであると好ましく、イオン透過性が大きく、機械的強度に優れる絶縁性の薄膜が好ましい。
本実施形態に用いるセパレータの材質は、例えば、セラミック、ガラス、樹脂及びセルロースが挙げられる。樹脂としては、合成樹脂であっても天然樹脂(天然高分子)であってもよく、また、有機樹脂であっても無機樹脂であってもよいが、セパレータとしての性能に優れている観点から、有機樹脂であると好ましい。有機樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、並びに、液晶ポリエステル及びアラミドなどの耐熱樹脂が挙げられる。セパレータの相転移型ゲル化剤以外の材質は、高い耐熱性の観点から、セラミック及びガラスが好ましく、ハンドリング性及び耐熱性の観点から、ポリエステル、ポリアミド、液晶ポリエステル、アラミド、及びセルロースが好ましい。また、セパレータの相転移型ゲル化剤以外の材質は、コスト及び加工性の観点から、ポリオレフィンが好ましい。これらの材質のうち、樹脂を採用する場合、単独重合体である樹脂を用いてもよく、共重合樹脂を用いてもよく、また、複数種の樹脂の混合体及びアロイを用いてもよい。また、セパレータは、複数の材質の膜を積層した積層体であってもよい。セパレータが積層体の場合、各層の材質が互いに同じものであっても異なるものであってもよい。積層体のセパレータを作製する場合、ある層を別の層上に形成することを繰り返すことで順に積層して、すなわち逐次多層化して作製してもよく、それぞれ別に作製した複数の膜を張り合わせることで積層体を作製してもよい。
本実施形態に用いるセパレータの形態は、例えば、合成樹脂を製膜して製造した合成樹脂性微多孔膜、合成樹脂又は天然高分子を紡糸した繊維、ガラス繊維又はセラミック繊維を加工した織布、不織布、編布、抄紙、並びに、合成樹脂及びガラスの微粒子を配列して作製した膜が挙げられる。
セパレータは、複数の製法で作製した複数の膜を重ねることで得られてもよく、複数の製法で逐次多層化することで得られてもよい。
本実施形態のセパレータは、膜の補強、充放電の補助、耐熱性向上などの観点から、上記以外の成分、例えば、有機フィラー、無機フィラー、有機粒子又は無機粒子をセパレータの表面及び/又は内部に含んでもよい。
【0016】
本実施形態において、セパレータと正極との間、及び/又は、セパレータと負極との間の接着性を向上させる観点から、セパレータの少なくとも表面上に相転移型ゲル化剤が存在すると好ましく、この場合、相転移型ゲル化剤を含む組成物にセパレータの表面を直接接触させることにより、少なくともその表面上に相転移型ゲル化剤を存在させると好ましい。セパレータの表面上に相転移型ゲル化剤が存在するとは、セパレータの表面に直接相転移型ゲル化剤が接触していることを意味する。また、セパレータの表面上のみでなく、セパレータの内部にも相転移型ゲル化剤が存在してよい。セパレータの全体の表面積に対して、0.01%以上99.9%以下の面積にゲル化剤が存在していると、高い接着性を実現できるので好ましい。相転移型ゲル化剤の存在状態は、多数のゲル化剤分子が会合したネットワーク状であってもよく、少数のゲル化剤の会合体、あるいは単分子ごとに分散状態であってもよい。上記組成物は、溶液であってもよく、分散液であってもよく、さらに分散液は、液状であってもゲル状であってもスラリー状であってもよい。
相転移型ゲル化剤をセパレータ表面上に存在させる方法は特に限定されないが、例えば、相転移型ゲル化剤を含む組成物をセパレータ上にキャスト塗工する方法、相転移型ゲル化剤を含む組成物にセパレータを浸漬する方法が挙げられる。これらの方法によると、セパレータの表面上のみでなく、セパレータの内部にも相転移型ゲル化剤を存在させることも可能である。特にセパレータを浸漬する方法により、相転移型ゲル化剤を含む組成物をセパレータに含浸することになるため、セパレータ内部に相転移型ゲル化剤を存在させることがより容易になる。セパレータ内部(孔を含む)にも相転移型ゲル化剤が存在すると、セパレータの孔径、及び孔径分布の不均一性を改善することができ、充放電の安定化に寄与するという観点から有利である。また、セパレータ内部(孔を含む)に相転移型ゲル化剤が多く存在するほど、より高い接着性を実現できるので好ましい。一方で、セパレータ内部(孔を含む)における相転移型ゲル化剤の存在量が少ないほど、充放電容量、シャットダウン特性などのセパレータが本来有する機能を保持しやすい観点から好ましい。
セパレータ内部での相転移型ゲル化剤の存在量は、例えば、相転移型ゲル化剤を存在させたセパレータを電子顕微鏡で観察し、その観察画像を画像処理することで求めることができる。
【0017】
<相転移型ゲル化剤>
本実施形態で用いられる相転移型ゲル化剤とは、可逆的な物理相互作用で、ゾル−ゲルの転移が可能なゲルを形成することができるゲル化剤のことである。ここで、物理相互作用とは、例えば、温度(熱)変化、光の照射及び圧力の印加が挙げられる。相転移型ゲル化剤は、ポリマー型のゲル化剤及び非ポリマー型である低分子ゲル化剤に区別され得る。ポリマー型のゲル化剤としては、例えば、ポリビニリデンジクロライド(PVdF)及びPVdFを含む共重合体、ポリアクリロニトリル(PAN)及びPANを含む共重合体が代表的である。低分子ゲル化剤としては様々なものが知られており、そのいずれを用いてもよい。低分子ゲル化剤としては、例えば、特開平10−175901号公報に記載のフルオロ型のゲル化剤、特開2007−506833号公報、特開2009−155592号公報に記載のアミド基含有ゲル化剤、Chem.Rev.第97巻、p3133−3159(1997年)に記載の各種ゲル化剤が挙げられる。相転移型ゲル化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0018】
本実施形態における相転移型ゲル化剤は、電池特性の保持及びハンドリング性の観点から、低分子ゲル化剤を含むと好ましい。
【0019】
本実施形態に用いる低分子ゲル化剤としては、電気化学的安定性と電解液に対するゲル化能との観点から、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
Rf
1−R
1−X
1−L
1−R
2 (1)
Rf
1−R
1−X
1−L
1−R
3―L
2―X
2―R
4―Rf
2 (2)
R
5−O−Cy−X
3−Cm (3)
【0020】
上記一般式(1)及び(2)において、Rf
1及びRf
2はそれぞれ独立に、炭素数2〜20のパーフルオロアルキル基を示す。当該炭素数が2〜20であることにより、原料の入手とその化合物の合成とが容易となる。上記一般式(1)及び(2)で表される化合物(以下、「パーフルオロ化合物」とも記す。)の電解液への混合性、電解液の電気化学的特性、及びゲル化能の観点から、上記炭素数は2〜12であると好ましい。パーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロエチル基、パーフルオロn−プロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロn−ブチル基、パーフルオロt−ブチル基、パーフルオロn−ヘキシル基、パーフルオロn−オクチル基、パーフルオロn−デシル基及びパーフルオロn−ドデシル基が挙げられる。
【0021】
上記一般式(1)及び(2)において、R
1及びR
4はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜6の2価の飽和炭化水素基を示し、当該炭素数は2〜5であると好ましい。上記2価の飽和炭化水素基の炭素数が3以上である場合、分岐があってもなくてもよい。このような2価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチリデン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基及びn−ブテン基が挙げられる。
【0022】
また、X
1及びX
2はそれぞれ独立に、下記式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)、(1e)、(1f)及び(1g)で表される基からなる群より選ばれる2価の基を示す。これらの中では、電気化学的見地より、下記式(1a)、(1b)及び(1d)で表される基からなる群より選ばれる2価の基が好ましく、下記式(1a)又は下記式(1d)で表される2価の基であるとより好ましく、下記式(1d)で表される2価の基であると更に好ましい。
【化4】
【0023】
L
1及びL
2はそれぞれ独立に、単結合、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい(すなわち置換されていなくてもよい)オキシアルキレン基、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい(すなわち置換されていなくてもよい)オキシシクロアルキレン基、又は、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい(すなわち置換されていなくてもよい)2価のオキシ芳香族基(−OAr−;Arは2価の芳香族基を示す。)を示す。オキシアルキレン基としては、例えば、炭素数2〜10のオキシアルキレン基、より具体的には、オキシエチレン基(−C
2H
4O−)及びオキシプロピレン基(−C
3H
6O−)が挙げられる。オキシシクロアルキレン基としては、例えば、炭素数5〜12のオキシシクロアルキレン基、より具体的には、オキシシクロペンチレン基、オキシシクロヘキシレン基、オキシジシクロヘキシレン基が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、ゲル化能及び電解液の安全性向上の観点から、2価のオキシ芳香族基が好ましい。アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい2価のオキシ芳香族基における2価の芳香族基は、いわゆる「芳香族性」を示す環式の2価の基である。この2価の芳香族基は、炭素環式の基であっても複素環式の基であってもよい。炭素環式の基は、その核原子数が6〜30であり、上述のとおりアルキル基若しくはハロゲン原子により置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。その具体例としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、アントラニレン基、フェナンスリレン基、ピレニレン基、クリセニレン基、フルオランテニレン基に代表される核を有する2価の基が挙げられる。
【0025】
複素環式の基は、その核原子数が5〜30であり、例えば、ピローレン基、フラニレン基、チオフェニレン基、トリアゾーレン基、オキサジアゾーレン基、ピリジレン基及びピリミジレン基に代表される核を有する2価の基が挙げられる。これらの中でも、2価の芳香族基として、フェニレン基、ビフェニレン基又はナフチレン基が好ましい。また、置換基である上記アルキル基としては、例えばメチル基及びエチル基が挙げられ、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
オキシシクロアルキレン基及びオキシ芳香族基には複数の環が接続されたものも含まれ、このような基として、例えば、オキシビフェニレン基、オキシターフェニレン基及びオキシシクロアルキルフェニレン基が挙げられる。
【0026】
上記一般式(1)中のR
2は、アルキル基若しくはハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルキル基若しくはハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていてもよいフルオロアルキル基、アリール基若しくはフルオロアリール基、又は、これらの基のうちの1種以上とこれらの基に対応する2価の基(例えば、アルキル基に対応するアルキレン基、アリール基に対応するアリーレン基)のうちの1種以上とが結合した1価の基(例えば、アルキレン基とアリール基とが結合したアラルキル基)を示す。R
2として、より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基及びn−デシル基に代表される炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。このアルキル基は、更にアルキル基又はハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0027】
フルオロアルキル基としては、炭素数1〜12のフルオロアルキル基(ただし、パーフルオロアルキル基を除く。)若しくは炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基が好ましい。炭素数1〜12のフルオロアルキル基(ただし、パーフルオロアルキル基を除く。)及び炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基として、具体的には、トリフルオロメチル基、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロn−ブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ドデカフルオロn―ヘキシル基及び1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロn−デシル基が挙げられる。フルオロアルキル基は、更にアルキル基又はハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0028】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基に代表される核原子数が6〜12のアリール基、フルオロアリール基としては、例えば、モノフルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基に代表される核原子数が6〜12のフルオロアリール基が挙げられる。
また、R
2は、上述のアルキル基、フルオロアルキル基、アリール基及びフルオロアリール基のうちの1種以上と、それらの基に対応する2価の基、すなわち、アルキレン基、フルオロアルキレン基、アリーレン基及びフルオロアリーレン基、のうちの1種以上とが結合した1価の基であってもよい。そのような基としては、例えば、アルキレン基とパーフルオロアルキル基とが結合した基(ただし、この基はフルオロアルキル基の1種でもある。)、アルキレン基とアリール基とが結合した基(アラルキル基)、フルオロアルキル基とフルオロアリーレン基とが結合した基が挙げられる。
【0029】
R
2は、本実施形態における効果をより有効且つ確実に奏する観点から、アルキル基又はフルオロアルキル基であると好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のフルオロアルキル基(ただし、パーフルオロアルキル基を除く。)又は炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基であるとより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜10のフルオロアルキル基(ただし、パーフルオロアルキル基を除く。)であると更に好ましい。
【0030】
上記一般式(2)中のR
3は、主鎖に酸素及び/又は硫黄原子を1つ以上有しても有しなくてもよく、かつ、アルキル基で置換されていてもいなくてもよい炭素数1〜18の2価の飽和炭化水素基を示す。当該炭素数は、1〜16であると好ましく、2〜14であるとより好ましい。R
3の炭素数によってもゲル化能を制御することができる。また、合成及び原料入手の観点から、当該範囲の炭素数が好ましい。
【0031】
パーフルオロ基を有するゲル化剤としては、例えば、Rf
1−R
1−O−R
2、Rf
1−R
1−S−R
2、Rf
1−R
1−SO
2−R
2、Rf
1−R
1−OCO−R
2、Rf
1−R
1−O−Ar−O−R
2(ここで、Arは2価の芳香族基を示す。以下同様。)、Rf
1−R
1−SO
2−Ar−O−R
2、Rf
1−R
1−SO
2−Ar−O−Rf
4、Rf
1−R
1−SO
2−Ar−O−Rf
3−Rf
4(ここで、Rf
3はフルオロアルキレン基、Rf
4はフルオロアルキル基を示す。)、Rf
1−R
1−SO−Ar−O−R
2、Rf
1−R
1−S−Ar−O−R
2、Rf
1−R
1−O−R
5−O−R
2(ここで、R
5は、アルキレン基を示す。)、Rf
1−R
1−CONH−R
2、Rf
1−R
1―SO
2―Ar
1−O−R
3−O−Ar
2−SO
2−R
4−Rf
2(ここで、Ar
1及びAr
2はそれぞれ独立に、2価の芳香族基を示す。以下同様。)、Rf
1−R
1−O−Ar
1−O−R
3−O−Ar
2―O―R
4―Rf
2、Rf
1−R
1−SO
2−Ar
1−O−R
6−O−R
7−O−Ar
2−O−R
4−Rf
2(ここで、R
6及びR
7はそれぞれ独立に、アルキレン基を示す。以下同様。)の一般式で表される化合物が挙げられる。より具体的には、Rf
1及びRf
2がそれぞれ独立に、炭素数2〜10のパーフルオロアルキル基、R
1が炭素数2〜4のアルキレン基、Arが(又はAr
1及びAr
2がそれぞれ独立に)p−フェニレン基又はp−ビフェニレン基、R
2が炭素数4〜8のアルキル基である上記各一般式で表される化合物、並びに、その二量体構造、例えば、Rf
1−R
1−O−Ar−O−R
2、Rf
1−R
1−SO
2−Ar−O−R
2、Rf
1−R
1−O−Ar
1−O−R
3−O−Ar
2―O―R
4―Rf
2、Rf
1−R
1−SO
2−Ar
1−O−R
6−O−R
7−O−Ar
2−O−R
4−Rf
2の一般式で表される化合物が挙げられる。
【0032】
上記一般式(3)において、Cyは置換又は無置換の核原子数5〜30の2価の芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。2価の芳香族炭化水素基は、いわゆる「芳香族性」を示す環式の2価の基である。この2価の芳香族炭化水素基は、炭素環式の基であっても複素環式の基であってもよい。これらの2価の芳香族炭化水素基は、置換基により置換されていてもよく、置換されていない無置換のものであってもよい。2価の芳香族炭化水素基の置換基は、合成、あるいは原料入手の容易性という観点から選ぶこともできる。あるいは、2価の芳香族炭化水素基の置換基は、ゲル化剤の溶解温度及びゲル化能の観点から選ぶこともできる。
【0033】
炭素環式の基は、その核原子数が6〜30であり、置換基により置換されていてもよく、置換されていない無置換のものであってもよい。その具体例としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、アントラニレン基、フェナンスリレン基、ピレニレン基、クリセニレン基及びフルオランテニレン基に代表される核を有する2価の基が挙げられる。
複素環式の基は、その核原子数が5〜30であり、例えば、ピローレン基、フラニレン基、チオフェニレン基、トリアゾーレン基、オキサジアゾーレン基、ピリジレン基及びピリミジレン基に代表される核を有する2価の基が挙げられる。
Arは、原料入手容易性及び合成容易性の観点並びに電解液におけるゲル化能の観点から、置換又は無置換の核原子数6〜20の2価の芳香族炭化水素基であると好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、ターフェニレン基及びアントラニレン基からなる群より選ばれる基であるとより好ましい。
また、上記置換基としては、メチル基及びエチル基に代表されるアルキル基、並びにハロゲン原子が挙げられる。
【0034】
脂環式炭化水素基は、その核原子数が5〜30であり、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロオクチル基が挙げられる。
【0035】
芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基は、その核原子数が当該範囲内であれば複数の基が連結したり、炭素環と複素環との両者を有したり、芳香族基と脂環式基との両者を有したりしてもよい。
【0036】
上記一般式(3)において、R
5は主鎖の炭素数1〜20の置換若しくは無置換の1価の炭化水素基を示し、飽和であっても不飽和であってもよい。R
5は脂肪族炭化水素基であってもよく、更に芳香族炭化水素基を有していてもよい。その脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基における炭化水素基の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよい。1価の炭化水素基が1価の脂肪族炭化水素基である場合、分岐していてもよく分岐していなくてもよく、分岐鎖の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよい。また、この炭化水素基は、その鎖中に酸素原子及び/又は硫黄原子を有していてもよい。さらに、1価の炭化水素基が芳香族炭化水素基を有する場合、この芳香族炭化水素基が更に置換基を有していてもよく有していなくてもよい。ただし、この1価の炭化水素基は、上記一般式(3)で表される化合物(以下「化合物(3)」とも表記する。)が非水溶媒に溶解して、その非水溶媒を含む電解液をゲル化させるために、ベンジル基に代表されるアラルキル基等の、化合物(3)を非水溶媒に容易に溶解可能にする炭化水素基であると好ましい。また、その1価の炭化水素基の炭素数が21以上であると、原料の入手が困難となる傾向にある。R
5で示される1価の炭化水素基は、本実施形態における上記効果をより有効かつ確実に奏する観点から、炭素数4〜18のアルキル基であると好ましく、炭素数4〜14のアルキル基であると更に好ましい。また、R
5は、ゲル化能とハンドリング性との観点から、直鎖のアルキル基であると好ましい。
【0037】
上記一般式(3)において、X
3は下記式(3a)、(3b)、(3c)、(3d)、(3e)、(3f)及び(3g)(以下、(3a)〜(3g)と表記する。)で表される基からなる群より選ばれる2価の基、又は、下記式(3a)〜(3g)で表される基のうち2種以上が結合した2価の基を示す。これらのうち、下記式(3a)、(3e)及び(3g)で表される基のいずれかの2価の基であると好ましい。
【化5】
上記一般式(3)において、X
3は化合物(3)をリチウムイオン二次電池に用いた際に、長期にわたって安定である点とゲル化能とから選択すると好ましい。X
3が上記式(3a)で表される基である場合、そのゲル化剤を含む組成物は、非常に安定性が高いゲルとなる傾向にある。また、X
3が上記式(3e)で表される基である場合、そのゲル化剤を含む組成物は、ゲル−ゾルの転移を温度調整だけではなく、光照射によっても誘起できる点で用途拡大に繋がる。
【0038】
上記一般式(3)において、Cmは下記一般式(3z)で表される1価の基(クマリン部位)を示し、下記式(3z)中、複数のR
aは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。R
aがアルキル基である場合、その炭素数は1〜6であると好ましく、アルコキシ基である場合、その炭素数は1〜8であると好ましい。
【化6】
【0039】
相転移型ゲル化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0040】
本実施形態に係る相転移型ゲル化剤は、常法により合成されてもよく、市販品を入手してもよい。このゲル化剤のうち、パーフルオロ基を有するゲル化剤は、例えば、国際公開第2007/083843号、特開2007−191626号公報、特開2007−191627号公報、特開2007−191661号公報及び国際公開第2009/78268に記載の方法を参照して製造することができる。
【0041】
本実施形態に用いるパーフルオロ基を有するゲル化剤は、例えば、次のスキームによって合成することができる。まず、下記一般式(11a)で表されるチオール化合物を、乾燥THFなどの溶媒中、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、下記一般式(11b)で表される化合物でスルフィド化して、下記一般式(11c)で表される化合物を得る。
HS−Ar−OH (11a)
C
mF
2m+1C
pH
2pX
1 (11b)
C
mF
2m+1C
pH
2p−S−Ar−OH (11c)
【0042】
次いで、上記一般式(11c)で表される化合物を3−ペンタノンなどの溶媒中、K
2CO
3などのアルカリ金属化合物の存在下、下記一般式(11d)で表される化合物でエーテル化して、下記一般式(11e)で表される化合物を得る。
R
1X
2 (11d)
C
mF
2m+1C
pH
2p−S−Ar−O−R
1 (11e)
【0043】
そして、上記一般式(11e)で表される化合物を、酢酸などの触媒の存在下で、過酸化水素などの酸化剤により酸化することで、下記一般式(11j)で表されるパーフルオロ化合物が得られる。
C
mF
2m+1C
pH
2p−SO
2−Ar−O−R
1 (11j)
ここで、上記一般式(11j)で表されるパーフルオロ化合物の製造スキームにおける限り、Arは置換又は無置換の核原子数8〜30の2価の芳香族基を示し、R
1は飽和又は不飽和の炭素数1〜20の1価の炭化水素基を示し、mは2〜16の自然数を示し、pは0〜6の整数を示し、X
1は、例えばヨウ素原子などのハロゲン原子を示し、X
2は、例えば臭素原子などのハロゲン原子を示す。
【0044】
かかる合成法としては、例えば、国際公開第2009/78268に記載の合成法を参照することができる。
【0045】
また、Arがビフェニレン基やターフェニレン基などの複数の芳香環を単結合により結合した基である場合は、例えば下記合成法により、上記一般式(11j)で表されるパーフルオロ化合物を得ることができる。まず、下記一般式(11f)で表されるチオール化合物を、乾燥THFなどの溶媒中、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、上記一般式(11b)で表される化合物でスルフィド化して、下記一般式(11g)で表される化合物を得る。ここで、式(11f)及び(11g)中、m及びpは式(11j)におけるものと同義であり、X
3は、例えば臭素原子などのハロゲン原子を示し、Ar
2は、上記式(11j)におけるArを構成する2価の芳香族炭化水素基の一部を示す。
HS−Ar
2−X
3 (11f)
C
mF
2m+1C
pH
2p−S−Ar
2−X
3 (11g)
【0046】
次いで、上記一般式(11g)で表される化合物を、酢酸などの触媒の存在下で、過酸化水素などの酸化剤により酸化することで、下記化合物(11h)が得られる。ここで、式(11h)中、Ar
2、X
3、m及びpは、式(11g)におけるものと同義である。
C
mF
2m+1C
pH
2p−SO
2−Ar
2−X
3 (11h)
【0047】
そして、上記一般式(11h)で表される化合物と下記一般式(11i)で表される化合物とから、K
2CO
3などの塩基水溶液中、パラジウム触媒の存在下で、鈴木・宮浦カップリングにより、上記一般式(11j)で表されるパーフルオロ化合物を得る。ここで、式(11i)中、R
1は、上記式(11j)におけるものと同義であり、Ar
3は、上記式(11j)におけるArを構成する2価の芳香族炭化水素基のAr
2とは別の一部を示し、Ar
2とAr
3が単結合により結合したものがArとなる。
R
1−O−Ar
3−B(OH)
2 (11i)
【0048】
また、本実施形態に用いるパーフルオロ基を有するゲル化剤は、例えば、次のスキームによって合成することができる。すなわち、下記一般式(Ia)で表される化合物と下記一般式(IIa)で表される化合物とから、光延反応などの脱水縮合により、パーフルオロ基を有するゲル化剤の一種である下記一般式(IIIa)で表される化合物を合成することができる。ここで、式中、Y
1及びY
2はそれぞれ独立に、硫黄原子又は酸素原子である。
Rf
1−R
1−Y
1−Z−Y
2H (Ia)
Rf
2R
2OH (IIa)
Rf
1−R
1−Y
1−Z−Y
2−R
2−Rf
2 (IIIa)
【0049】
また、上記一般式(IIIa)で表される化合物において、Y
1及び/又はY
2が硫黄原子である場合に、その硫黄原子を更にスルホニル化又はスルホキシド化することにより、パーフルオロ基を有するゲル化剤の別の一種である下記一般式(IVa)で表される化合物を合成することができる。ここで、Y
3及びY
4の少なくとも一方は、SO基又はSO
2基であり、Y
3及びY
4の一方がSO基又はSO
2基である場合の他方は硫黄原子又は酸素原子である。
Rf
1−R
1−Y
3−Z−Y
4−R
2−Rf
2 (IVa)
【0050】
上記一般式(Ia)で表される化合物は、例えば、下記式(Va)で表される化合物の活性水素(チオール基又は水酸基の水素原子)を、アルカリ条件下で、パーフルオロアルカンハロゲン化物(例えばヨウ化物)のパーフルオロアルキル基で置換することにより合成することができる。
HY
1−Z−Y
2H (Va)
また、上記式(IIa)で表される化合物は、パーフルオロアルカンハロゲン化物(例えばヨウ化物)のアルケノールへの付加反応により得られるアルカノールのハロゲン化物を、更に還元することにより合成することができる。
【0051】
ここで、上記一般式(IIIa)又は(IVa)で表されるパーフルオロ化合物(ゲル化剤)の製造スキームにおける限り、Rf
1及びRf
2はそれぞれ独立に、主鎖の炭素数2〜18の置換又は無置換のパーフルオロアルキル基を示し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、単結合又は主鎖の炭素数1〜8の置換若しくは無置換の2価の炭化水素基を示し、Zは置換又は無置換の核原子数5〜30の2価の芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。
【0052】
ただし、本実施形態に用いるパーフルオロ基を有するゲル化剤の合成方法は上記の方法に限定されない。
【0053】
また、本実施形態に係る化合物(3)はクマリン型のゲル化剤であり、化合物(3)として、例えば、液晶討論会講演予稿集p44(2007)に記載の化合物を用いることができる。
【0054】
また、アゾ基を有する化合物(3)、すなわちX
3が上記式(3e)で表される化合物(3)は、例えば、下記のような反応経路で合成することができる。
【化7】
【0055】
このように合成されるアゾ基を有する化合物(3)としては、例えば、下記式(3I)で表される化合物(以下、「化合物(3I)」とも表記する。)及び下記式(3II)で表される化合物(以下、「化合物(3II)」とも表記する。)が挙げられる。
【化8】
【0056】
以下、化合物(3I)及び(3II)の合成方法について詳細に説明する。
〔化合物(3I)の合成方法〕
(工程1:化合物(a)の合成)
【化9】
ナスフラスコに濃硝酸及び濃硫酸の混合溶液を加える。当該ナスフラスコを氷浴で冷却しながら、クマリンを、混合溶液の温度が20℃を超えないように徐々に加える。クマリンを全量加え終えたら氷浴を外し、室温で1時間攪拌して反応させる。当該反応液を水中に注ぎ、析出した固体を濾取する。濾取した固体を、トルエンで再結晶を行い、淡黄色の固体の化合物(a)を得る。
【0057】
(工程2:化合物(b)の合成)
【化10】
ナスフラスコにおいて、化合物(a)をエタノール及びトルエンの混合溶液に溶かして、Pd/Cの存在下、水素添加反応を行う。水素添加反応後、Pd/Cを濾取し、濾液をエバポレーターで濃縮する。析出した固体をトルエンで再結晶を行い、黄色固体の化合物(b)を得る。
【0058】
(工程3:化合物(c)の合成)
【化11】
ナスフラスコにおいて、5℃の氷冷下、12Nの塩酸水溶液を調製する。当該水溶液中に、化合物(b)及び亜硝酸ナトリウム(NaNO
2)を加えて、20分間攪拌する。さらに、フェノール、水酸化ナトリウム及び水の混合溶液を加えて攪拌する。析出した固体をトルエンで再結晶を行い、化合物(c)を得る。
【0059】
(工程4:化合物(3I)の合成)
【化12】
ナスフラスコにおいて、化合物(c)を3−ペンタノンに溶解する。得られた溶液中に、1−ブロモオクタン及び炭酸カリウムを加えて15時間還流を行う。得られた固体をトルエンで再結晶させ、カラムクロマトグラフィーで精製して化合物(3I)を得る。なお、上記カラムクロマトグラフィーにおいて、充填剤としてシリカゲルを用い、展開溶媒としてクロロホルムを用いる。
【0060】
〔化合物(3II)の合成方法〕
【化13】
ナスフラスコにおいて、化合物(c)を3−ペンタノンに溶解する。得られた溶液中に、1−ブロモヘキサン及び炭酸カリウムを加えて15時間還流を行う。得られた固体をトルエンで再結晶を行い、カラムクロマトグラフィーで精製して化合物(3II)を得る。なお、上記カラムクロマトグラフィーにおいて、充填剤としてシリカゲルを用い、展開溶媒としてクロロホルムを用いる。
【0061】
ただし、化合物(3)の製造方法は、上記方法に限定されるものではない。
【0062】
<溶媒>
本実施形態の製造方法において、セパレータ、あるいは後述の正極又は負極の表面上に相転移型ゲル化剤を存在させる場合、それらの部材が相転移型ゲル化剤を含む組成物としての溶液又は分散液に浸漬されることにより、その表面上に相転移型ゲル化剤が存在してもよい。分散液として、スラリー状、ゲル状の分散体を用いてもよい。相転移型ゲル化剤を含む組成物は、非水溶媒を含み、相転移型ゲル化剤をその非水溶媒に溶解又は分散させることが好ましい。
非水溶媒としては、様々なものを用いることができる。その具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール及びオクタノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル,プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、δ―バレロラクトン,ε―カプロラクトンなどの酸エステル類、ジメチルケトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、3−ペンタノン及びアセトンなどのケトン類、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、フルオロベンゼン及びヘキサフルオロベンゼンなどの炭化水素類、ジメチルエーテル,ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、クラウンエーテル類、グライム類、テトラヒドロフラン及び含フッ素エーテルなどのエーテル類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、エチレンジアミン及びピリジンなどのアミド類、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、トランス−2,3−ブチレンカーボネート、シス−2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、トランス−2,3−ペンチレンカーボネート、シス−2,3−ペンチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート及びメチルトリフルオロエチルカーボネートなどのカーボネート類、アセトニトリル、プロピオニトリル、アジポニトリル及びメトキシアセトニトリルなどのニトリル類、N−メチルピロリドン(NMP)などのラクタム類、スルホラン及び3−メチルスルホランなどのスルホン類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、シリコンオイル及び石油などの工業オイル類、並びに、食用油が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0063】
非水溶媒として、イオン液体を用いることもできる。イオン液体とは、有機カチオンとアニオンとを組み合わせたイオンからなる液体である。
有機カチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウムカチオン、トリアルキルイミダゾリウムカチオン等のイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ジアルキルピロリジニウムイオン、ジアルキルピペリジニウムイオンが挙げられる。
【0064】
これらの有機カチオンのカウンターとなるアニオンとしては、例えば、PF
6アニオン、PF
3(C
2F
5)
3アニオン、PF
3(CF
3)
3アニオン、BF
4アニオン、BF
2(CF
3)
2アニオン、BF
3(CF
3)アニオン、ビスオキサラトホウ酸アニオン、Tf(トリフルオロメタンスルフォニル)アニオン、Nf(ノナフルオロブタンスルホニル)アニオン、ビス(フルオロスルフォニル)イミドアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルフォニル)イミドアニオン、ジシアノアミンアニオン、ハロゲン化物アニオンを用いることができる。
【0065】
本実施形態に用いる相転移型ゲル化剤を含む組成物中の相転移型ゲル化剤の含有量は任意であるが、組成物が非水溶媒を含む場合、その非水溶媒に対する含有比(相転移型ゲル化剤/非水溶媒)として、質量基準で、0.01〜50であると好ましく、0.1〜20であるとより好ましい。これらの成分の含有比が当該範囲内にあることにより、セパレータ及び正極若しくは負極間の接着性を容易に高めることができる。
【0066】
本実施形態に係る相転移型ゲル化剤を含む組成物は、更にリチウム塩を含むことが好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池中でのリチウム塩の分散性がより良好となる。なお、リチウム塩及びその濃度は、後述の電解液におけるものと同様であればよいので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0067】
<正極>
本実施形態のリチウムイオン二次電池において、正極は、正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する材料を用いる。そのような材料としては、例えば、下記一般式(6a)及び(6b)で表される複合酸化物、トンネル構造及び層状構造の金属カルコゲン化物及び金属酸化物、オリビン型リン酸化合物が挙げられる。
Li
xMO
2 (6a)
Li
yM
2O
4 (6b)
ここで、式中、Mは遷移金属から選ばれる1種以上の金属を示し、xは0〜1の数、yは0〜2の数を示す。
【0068】
より具体的には、例えば、LiCoO
2に代表されるリチウムコバルト酸化物;LiMnO
2、LiMn
2O
4、Li
2Mn
2O
4に代表されるリチウムマンガン酸化物;LiNiO
2に代表されるリチウムニッケル酸化物;Li
zMO
2(MはNi、Mn、Co、Al及びMgからなる群より選ばれる2種以上の元素を示し、zは0.9超1.2未満の数を示す)で表されるリチウム含有複合金属酸化物;LiFePO
4で表されるリン酸鉄オリビンが挙げられる。また、正極活物質として、例えば、S、MnO
2、FeO
2、FeS
2、V
2O
5、V
6O
13、TiO
2、TiS
2、MoS
2及びNbSe
2に代表されるリチウム以外の金属の酸化物なども例示される。さらには、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリピロールに代表される導電性高分子も正極活物質として例示される。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極が、正極活物質として、リチウム含有化合物を含むことが好ましい。
【0069】
また、正極活物質としてリチウム含有化合物を用いると、高電圧及び高エネルギー密度を得ることができる傾向にあるので好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、リチウムを含有するものであればよく、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物及びリチウムと遷移金属元素とを含むケイ酸金属化合物(例えばLi
tM
uSiO
4、Mは上記式(6a)と同義であり、tは0〜1の数、uは0〜2の数を示す。)が挙げられる。より高い電圧を得る観点から、特に、リチウムと、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、バナジウム(V)及びチタン(Ti)からなる群より選ばれる1種以上の遷移金属元素とを含む複合酸化物並びにリン酸化合物が好ましい。
【0070】
より具体的には、かかるリチウム含有化合物としてリチウムを有する金属酸化物、リチウムを有する金属カルコゲン化物及びリチウムを有するリン酸金属化合物が好ましく、例えば、それぞれ下記一般式(7a)、(7b)で表される化合物が挙げられる。
Li
vM
IO
2 (7a)
Li
wM
IIPO
4 (7b)
ここで、式中、M
I及びM
IIはそれぞれ1種以上の遷移金属元素を示し、v及びwの値は電池の充放電状態によって異なるが、通常vは0.05〜1.10、wは0.05〜1.10の数を示す。
【0071】
上記一般式(7a)で表される化合物は一般に層状構造を有し、上記一般式(7b)で表される化合物は一般にオリビン構造を有する。これらの化合物において、構造を安定化させる等の目的から、遷移金属元素の一部をAl、Mg、その他の遷移金属元素で置換したり結晶粒界に含ませたりしたもの、酸素原子の一部をフッ素原子等で置換したものも挙げられる。更に、正極活物質表面の少なくとも一部に他の正極活物質を被覆したものも挙げられる。
【0072】
正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0073】
正極活物質の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.05μm〜100μm、より好ましくは1μm〜10μmである。正極活物質の数平均粒子径は湿式の粒子径測定装置(例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布計、動的光散乱式粒度分布計)により測定することができる。あるいは、透過型電子顕微鏡にて観察した粒子100個をランダムに抽出し、画像解析ソフト(例えば、旭化成エンジニアリング株式会社製の画像解析ソフト、商品名「A像くん」)で解析し、その相加平均を算出することでも得られる。この場合、同じ試料に対して、測定方法間で数平均粒子径が異なる場合は、標準試料を対象として作成した検量線を用いてもよい。
【0074】
正極は、例えば、下記のようにして得られる。すなわち、まず、上記正極活物質に対して、必要に応じて、導電助剤やバインダー等を加えて混合した正極合剤を溶剤に分散させて正極合剤含有ペーストを調製する。次いで、この正極合剤含有ペーストを正極集電体に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、それを必要に応じて加圧し厚みを調整することによって、正極が作製される。
ここで、正極合剤含有ペースト中の固形分濃度は、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。
正極集電体は、例えば、アルミニウム箔、又はステンレス箔などの金属箔により構成される。
【0075】
本実施形態の正極は、セパレータと正極との間の接着性を向上させる観点から、その表面上に相転移型ゲル化剤が存在すると好ましい。正極の表面上に相転移型ゲル化剤が存在するとは、正極の表面に直接相転移型ゲル化剤が接触していることを意味する。正極の全体の表面積に対して、0.01%以上10%以下の面積にゲル化剤が存在していると、電池特性と接着性とを高いレベルで両立することができるので好ましい。相転移型ゲル化剤の存在状態は、多数のゲル化剤分子が会合したネットワーク状であってもよく、少数のゲル化剤の会合体、あるいは単分子ごとに分散状態であってもよい。
【0076】
相転移型ゲル化剤を正極表面上に存在させる方法は特に限定されないが、例えば、相転移型ゲル化剤を含む組成物を正極上にキャスト塗工する方法、正極合剤中に相転移型ゲル化剤を混合して塗工する方法、相転移型ゲル化剤を含む組成物に正極を浸漬する方法が挙げられる。あるいは、電解液と相転移型ゲル化剤とを混合することにより、正極表面上にゲル化剤を存在させることもできる。これらの方法によると、正極の表面上のみでなく、正極の内部にも相転移型ゲル化剤を存在させることも可能である。特に正極を浸漬する方法により、相転移型ゲル化剤を含む組成物を正極に含浸することになるため、正極内部に相転移型ゲル化剤を存在させることがより容易になる。正極内部にも相転移型ゲル化剤が存在すると、相転移型ゲル化剤と正極との密着性や親和性がより強固になるという観点から有利である。相転移型ゲル化剤は上述したものと同様であればよいので、ここではその詳細な説明を省略する。なお、リチウムイオン二次電池を製造する過程において、セパレータ及び正極の両方の表面上に相転移型ゲル化剤を存在させる場合、それらの相転移型ゲル化剤は互いに同じものであっても異なるものであってもよい。
【0077】
<負極>
本実施形態のリチウムイオン二次電池において、負極は、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料及び金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を用いる。本実施形態のリチウムイオン二次電池において、負極は、負極活物質として、金属リチウム、炭素材料、リチウムと合金形成が可能な元素を含む材料、及び、リチウム含有化合物からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有すると好ましい。そのような材料としては、金属リチウムの他、例えば、ハードカーボン、ソフトカーボン、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素コロイド、カーボンブラックに代表される炭素材料が挙げられる。これらのうち、コークスとしては、例えば、ピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークスが挙げられる。また、有機高分子化合物の焼成体は、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものである。なお、本実施形態においては、負極活物質に金属リチウムを採用した電池もリチウムイオン二次電池に含めるものとする。
【0078】
更に、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料としては、リチウムと合金を形成可能な元素を含む材料も挙げられる。この材料は金属又は半金属の単体であっても合金であっても化合物であってもよく、また、これらの1種又は2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものであってもよい。
【0079】
なお、本明細書において、「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを有するものも含める。また、合金が、その全体として金属の性質を有するものであれば非金属元素を有していてもよい。その合金の組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物又はこれらのうちの2種以上が共存する。
【0080】
このような金属元素及び半金属元素としては、例えば、チタン(Ti)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)及びイットリウム(Y)が挙げられる。
【0081】
これらの中でも、長周期型周期表における4族又は14族の金属元素及び半金属元素が好ましく、特に好ましいのはチタン、ケイ素及びスズである。
【0082】
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、マグネシウム(Mg)、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン(Ti)、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン及びクロム(Cr)からなる群より選ばれる1種以上の元素を有するものが挙げられる。
【0083】
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、マグネシウム、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン及びクロムからなる群より選ばれる1種以上の元素を有するものが挙げられる。
【0084】
チタンの化合物、スズの化合物及びケイ素の化合物としては、例えば酸素(O)又は炭素(C)を有するものが挙げられ、チタン、スズ又はケイ素に加えて、上述の第2の構成元素を有していてもよい。
また、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料としてリチウム含有化合物も挙げられる。リチウム含有化合物としては、正極材料として例示したものと同じものを用いることができる。
【0085】
負極活物質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0086】
負極活物質の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.1μm〜100μm、より好ましくは1μm〜10μmである。負極活物質の数平均粒子径は、正極活物質の数平均粒子径と同様にして測定される。
【0087】
負極は、例えば、下記のようにして得られる。すなわち、まず、上記負極活物質に対して、必要に応じて、導電助剤やバインダー等を加えて混合した負極合剤を溶剤に分散させて負極合剤含有ペーストを調製する。次いで、この負極合剤含有ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、それを必要に応じて加圧し厚みを調整することによって、負極が作製される。
ここで、負極合剤含有ペースト中の固形分濃度は、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。
負極集電体は、例えば、銅箔、ニッケル箔又はステンレス箔などの金属箔により構成される。
【0088】
本実施形態の負極は、セパレータと負極との間の接着性を向上させる観点から、その表面上に相転移型ゲル化剤が存在すると好ましい。負極の表面上に相転移型ゲル化剤が存在するとは、負極の表面に直接相転移型ゲル化剤が接触していることを意味する。負極の全体の表面積に対して、0.01%以上10%以下の面積にゲル化剤が存在していると、電池特性と接着性とを高いレベル両立することができるので好ましい。相転移型ゲル化剤の存在状態は、多数のゲル化剤分子が会合したネットワーク状であってもよく、少数のゲル化剤の会合体、あるいは単分子ごとに分散状態であってもよい。
相転移型ゲル化剤を負極表面上に存在させる方法は特に限定されないが、例えば、相転移型ゲル化剤を含む組成物を負極上にキャスト塗工する方法、負極合剤中に相転移型ゲル化剤を混合して塗工する方法、相転移型ゲル化剤を含む組成物に負極を浸漬する方法が挙げられる。あるいは、電解液と相転移型ゲル化剤とを混合することにより、負極表面上にゲル化剤を存在させることもできる。これらの方法によると、負極の表面上のみでなく、負極の内部にも相転移型ゲル化剤を存在させることも可能である。特に負極を浸漬する方法により、相転移型ゲル化剤を含む組成物を負極に含浸することになるため、負極内部に相転移型ゲル化剤を存在させることがより容易になる。負極内部にも相転移型ゲル化剤が存在すると、相転移型ゲル化剤と正極との密着性や親和性がより強固になるという観点から有利である。相転移型ゲル化剤は上述したものと同様であればよいので、ここではその詳細な説明を省略する。なお、リチウムイオン二次電池を製造する過程において、セパレータ及び負極の両方の表面上に相転移型ゲル化剤を存在させる場合、それらの相転移型ゲル化剤は互いに同じものであっても異なるものであってもよい。
【0089】
正極及び負極の作製にあたって、必要に応じて用いられる導電助剤としては、例えば、グラファイト、アセチレンブラック及びケッチェンブラックに代表されるカーボンブラック、並びに炭素繊維が挙げられる。導電助剤の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.1μm〜100μm、より好ましくは1μm〜10μmであり、正極活物質の数平均粒子径と同様にして測定される。また、バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンを含有する共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム及びフッ素ゴムが挙げられる。
<電解液>
本実施形態において用いられる電解液は、(I)非水溶媒と、(II)リチウム塩とを含有すると好ましい。
(I)非水溶媒としては、様々なものを用いることができるが、例えば非プロトン性溶媒が挙げられる。リチウムイオン二次電池の電解液として用いる場合、その充放電に寄与する電解質であるリチウム塩の電離度を高めるために、非プロトン性極性溶媒が好ましい。その具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、トランス−2,3−ブチレンカーボネート、シス−2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、トランス−2,3−ペンチレンカーボネート、シス−2,3−ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロエチレンカーボネートに代表される環状カーボネート;γ−ブチロラクトン、ε―カプロラクトン、δ―バレロラクトン及びγ−バレロラクトンに代表されるラクトン;スルホラン、3−メチルスルホランに代表される環状スルホン;テトラヒドロフラン、クラウンエーテル及びジオキサンに代表される環状エーテル;メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート及びメチルトリフルオロエチルカーボネートに代表される鎖状カーボネート;アセトニトリル、プロピオニトリルに代表されるニトリル;ジメチルエーテル、ジメトキシエタン、グライム、含フッ素エーテルに代表される鎖状エーテル;プロピオン酸メチルに代表される鎖状カルボン酸エステル;鎖状エーテルカーボネート化合物、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0090】
(I)非水溶媒は、リチウム塩の電離度を高めるために環状の非プロトン性極性溶媒を1種類以上含むことが好ましい。同様の観点から、(I)非水溶媒は、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートに代表される環状カーボネートを1種類以上含むことがより好ましい。環状の化合物は誘電率が高く、リチウム塩の電離を助けると共にゲル化能を高める。
【0091】
(I)非水溶媒として、イオン液体を用いることもできる。イオン液体とは、有機カチオンとアニオンとを組み合わせたイオンからなる液体である。
有機カチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウムカチオン、トリアルキルイミダゾリウムカチオン等のイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ジアルキルピロリジニウムイオン、ジアルキルピペリジニウムイオンが挙げられる。
【0092】
これらの有機カチオンのカウンターとなるアニオンとしては、例えば、PF
6アニオン、PF
3(C
2F
5)
3アニオン、PF
3(CF
3)
3アニオン、BF
4アニオン、BF
2(CF
3)
2アニオン、BF
3(CF
3)アニオン、ビスオキサラトホウ酸アニオン、Tf(トリフルオロメタンスルフォニル)アニオン、Nf(ノナフルオロブタンスルホニル)アニオン、ビス(フルオロスルフォニル)イミドアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルフォニル)イミドアニオン、ジシアノアミンアニオンを用いることができる。
【0093】
電解質として使用される(II)リチウム塩の具体例としては、例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、Li
2SiF
6、LiOSO
2C
kF
2k+1〔kは1〜8の整数〕、LiN(SO
2C
kF
2k+1)
2〔kは1〜8の整数〕、LiPF
n(C
kF
2k+1)
6-n〔nは1〜5の整数、kは1〜8の整数〕、LiBF
n((C
kF
2k+1)
4-n〔nは1〜3の整数、kは1〜8の整数〕、LiB(C
2O
2)
2で表されるリチウムビスオキサリルボレート、LiBF
2(C
2O
2)で表されるリチウムジフルオロオキサリルボレート、LiPF
3(C
2O
2)で表されるリチウムトリフルオロオキサリルフォスフェートが挙げられる。
【0094】
また、下記一般式(a)、(b)又は(c)で表されるリチウム塩を電解質として用いることもできる。
LiC(SO
2R
11)(SO
2R
12)(SO
2R
13) (a)
LiN(SO
2OR
14)(SO
2OR
15) (b)
LiN(SO
2R
16)(SO
2OR
17) (c)
ここで、式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16及びR
17は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す。
【0095】
これらの電解質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの電解質のうち、電池特性や安定性に加え、ゲル化能を高める観点から、LiPF
6、LiBF
4及びLiN(SO
2C
kF
2k+1)
2〔kは1〜8の整数〕が好ましい。
【0096】
電解質の濃度は任意であり特に限定されないが、電解質は、電解液中に好ましくは0.1〜3モル/リットル、より好ましくは0.5〜2モル/リットルの濃度で含有される。
【0097】
本実施形態において用いられる電解液は、相転移型ゲル化剤を含むことが好ましい。電解液が相転移型ゲル化剤を含むと、リチウムイオン二次電池で求められる安全性と電池の特性とを満足することに特に優れるので、リチウムイオン二次電池において好適に使用される。また、電解液が相転移型ゲル化剤を含む場合、その電解液は、上記相転移型ゲル化剤を含む組成物としての役割を兼ねてもよい。
相転移型ゲル化剤の含有量は任意であるが、非水溶媒との含有比として、質量基準で、相転移型ゲル化剤:非水溶媒が0.1:99.9〜10:90であると好ましく、0.3:99.7〜5:95であるとより好ましい。これらの成分の含有比が当該範囲内にあることにより、上記電解液を用いたリチウムイオン二次電池は、特に高い電池特性を示す。また、ゲル化能とハンドリング性とを共に良好にすることができる。なお、ゲル化剤の電解液への含有量が多いほど、電解液は相転移点が高く強固なゲルとなり、ゲル化剤の含有量が少ないほど、電解液の粘度が低く取り扱いやすくなる。相転移型ゲル化剤は上述したものと同様であればよいので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0098】
本実施形態に用いる、相転移型ゲル化剤を含有する電解液は、可逆的な物理相互作用でゾル‐ゲルの転移が起こる電解質用液である。例えば、ある温度以下の温度でゲルであり、そのある温度よりも高い温度でゾルであるゲル電解質溶液である。本実施形態のリチウムイオン二次電池において、電解液がそのようなゲル電解質溶液であると、注液等のハンドリング性に優れると共に、漏液低減などの安全性が高いレベルで確保できる傾向にある。そのような観点から、物理変化が温度変化である場合、上記ある温度、すなわちゲルとゾルとの相転移温度が50〜150℃の範囲にあるとより好ましい。
【0099】
非水溶媒と電解質であるリチウム塩と相転移型ゲル化剤との混合比は目的に応じて選択できるが、電解質の濃度、相転移型ゲル化剤の含有量の両方が上述の好ましい範囲、さらにはより好ましい範囲にあると望ましい。このような組成で電解液を作製することにより、電池特性及び取扱い性を更に良好なものとすることができる。
【0100】
本実施形態に用いる電解液の調製方法は、上記各成分を混合する方法であれば特に限定されず、電解質と非水溶媒と相転移型ゲル化剤との混合順は問わない。例えば、所定量の電解質と非水溶媒とを混合して予備電解液を調製した後、相転移型ゲル化剤をその予備電解液に混合して本実施形態に用いる電解液を得ることができる。あるいは、全ての成分を所定量で同時に混合して本実施形態に用いる電解液を得ることも可能である。相転移型ゲル化剤を含む電解液を一度加熱して、混合物中の各成分が均一になった状態で室温に冷却すると好ましい。
【0101】
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、例えば、
図1に概略的に断面図を示すリチウムイオン二次電池である。
図1に示されるリチウムイオン二次電池100は、セパレータ110と、そのセパレータ110を両側から挟む正極120と負極130と、さらにそれらの積層体を挟む正極集電体140(正極の外側に配置)と、負極集電体150(負極の外側に配置)と、それらを収容する電池外装である電池ケース160とを備える。正極120とセパレータ110と負極130とを積層した積層体は、上述した電解液に含浸されている。これらの各部材としては上述のものを用いることができ、上述で説明していない部材は、従来のリチウムイオン二次電池に備えられるものと同様のものを用いることができる。また、
図1に明示していないが、正極120とセパレータ110との間、及び/又は、負極130とセパレータ110との間には相転移型ゲル化剤が存在しており、その相転移型ゲル化剤により、正極120及びセパレータ110、並びに/又は、負極130及びセパレータ110が接着されている。
【0102】
以下、本実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法における各工程について、より詳細に説明する。本実施形態の製造方法は、下記の各工程を有する以外は、従来のリチウムイオン二次電池の製造方法と同様であってもよい。
<工程(1)相転移型ゲル化剤を存在させる工程>
この工程(1)では、相転移型ゲル化剤を、セパレータ、正極及び負極からなる群より選ばれる1種以上の部材の少なくとも表面上に存在させる。存在させる方法は、例えば、上述のとおりである。好ましくは、その部材表面に相転移型ゲル化剤を含む組成物に直接接触させ、より好ましくは、その部材を上記組成物に浸漬する。特に部材がセパレータである場合、セパレータを組成物に浸漬することにより、セパレータの表面全体が組成物で濡れるのはもちろんのこと、組成物がセパレータに含浸し、セパレータが内部に有する孔の一部又は全部にまで組成物が浸み込むことが可能となる。
【0103】
組成物をセパレータに含浸させる方法としては、例えば、セパレータを組成物が収容されている槽内で、その組成物に浸漬させるディップ法、セパレータ上に組成物を配置して含浸させる方法が挙げられる。組成物がゲル状である場合、その組成物の膜を予め作製しておき、セパレータ上に配置して含浸することもできる。含浸させる際に加熱、加圧又は減圧を施すとしたりすると含浸させやすく、より短時間で含浸できる傾向にある。また、含浸後に組成物に含まれ得る溶媒の一部又は全部を揮発させて、相転移型ゲル化剤及び溶媒の含浸量を調整してもよい。
【0104】
なお、セパレータと各電極とを積層した後述の積層体の状態で、相転移型ゲル化剤を上記部材の少なくとも表面上に存在させる処理を施してもよく、積層体を電池ケースに収容した状態で、相転移型ゲル化剤を上記部材の少なくとも表面上に存在させる処理を施してもよい。これらの処理において、相転移型ゲル化剤を上記部材の少なくとも表面上に存在させるには、例えば、相転移型ゲル化剤を含む組成物に積層体を浸漬する方法、相転移型ゲル化剤を含む組成物を積層体に吹き付ける方法、積層体の断面方向から相転移型ゲル化剤を含む組成物を注入する方法、積層体近傍に相転移型ゲル化剤を含む組成物を配置して積層体全体に拡散させることで存在させる方法が挙げられる。
【0105】
<工程(2)積層体の作製工程>
この工程(2)では、セパレータを正極と負極とで挟むことにより、それらを積層して積層体を得る。積層体を作製する方法は、公知の方法により行うことができる。例えば、正極と負極とを、その間にセパレータを介在させた積層状態で巻回して巻回構造の積層体に成形したり、それらを折り曲げや複数層の積層などによって、交互に積層した複数の正極と負極との間にセパレータが介在する積層体に成形したりする。積層体を構成するセパレータ、正極及び負極は、それぞれ独立に、少なくとも表面に相転移型ゲル化剤が存在するものであってもよく、存在しないものであってもよい。例えば、工程(1)で得られた、少なくとも表面に相転移型ゲル化剤が存在するセパレータを、表面に相転移型ゲル化剤が存在しない正極と負極とで挟み、上記方法により積層してもよい。
工程(2)では、相転移型ゲル化剤を含む組成物から形成されたゲル状膜を予め作製しておき、セパレータとゲル状膜とを重ねたものを正極と負極とで挟み、折り曲げや積層によって積層体を形成すると同時に、相転移型ゲル化剤をセパレータ内部に含浸させることもできる。セパレータとゲル状膜とを重ねたものは、セパレータの両面にゲル状膜を存在させることもできるし、セパレータの片面にのみゲル状膜を存在させることもできる。セパレータの両面にゲル状膜が存在すると、相転移型ゲル化剤によりもたらされる効果が高いので好ましい。
【0106】
<工程(3)電解液への浸漬工程>
工程(3)では、工程(2)を経て得られた積層体を電解液に浸漬する。この工程(3)において、電池ケース(外装)内にて、積層体を電解液に浸漬してもよい。この場合、電解液を電池ケース内部に注液し、上記積層体を電解液に浸漬して封印することによって、リチウムイオン二次電池を作製することもできる。
また、工程(2)を経て得られた、正極、負極及びセパレータのいずれの表面上にも相転移型ゲル化剤が存在しない積層体を、工程(1)を経て、すなわち相転移型ゲル化剤を含む組成物(ただし電解質を含まない。)に浸漬して、積層体における各部材の少なくとも表面上に相転移型ゲル化剤を存在させた後、浸漬した組成物にリチウム塩、並びに、必要に応じてその他の添加剤及び非水溶媒を添加して、電解液を作製することにより、積層体を電解液に浸漬してもよい。このような方法によると、工程(1)では、セパレータの内部(孔を含む)に浸み込みやすい組成に相転移型ゲル化剤を含む組成物を用いることができ、工程(3)では、電解液として最適な組成に調整することもできるので、好ましい。
【0107】
本実施形態のリチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、例えば、円筒形、楕円形、角筒型、ボタン形、コイン形、扁平形及びラミネート形などが好適に採用される。
【0108】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【実施例】
【0109】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、セパレータ及びリチウムイオン二次電池の各種特性は下記のようにして測定、評価された。
【0110】
(i)セパレータの接着性評価(1)
評価に用いたセパレータ上に電極を載置し、5kgf/cm
2の力で3秒間、電極をセパレータに向かって押圧した後の、セパレータと電極との接着性を評価した。結果は下記のように判断した。
A:上下を逆にした状態(すなわちセパレータを上側にして電極を下側にした状態)でセパレータを持ち上げても電極が剥離しない。
B:押圧を解除した後でも電極からセパレータがずれないが、上下を逆にした状態でセパレータを持ち上げようとすると電極が剥離する。
C:押圧を解除すると電極からセパレータがずれる。
【0111】
(ii)セパレータの接着性評価(2)
負極、セパレータ及び正極をこの順に積層した積層体に、その積層方向に5kgf/cm
2の力が加わるように押さえ部材を配置して電池を作製し、この電池を25℃環境下で充放電を100サイクル行った。なお、1Cで4.2VまでのCC‐CV充電―1Cで3.0VまでのCC放電の条件であり、充電と放電を1回ずつ実施すると1サイクルと数えることとした。100サイクルの充放電を実施した後の電池を放電状態で解体し、セパレータと電極との間の接着性を評価した。評価は5個の電池を作製して実施し、結果は下記のように判断した。
A:いずれの電池においても電極とセパレータとは十分に接着しており、押さえ部材を取り除いても、それらの間にずれは生じない。
B:全てではないがいくつかの電池において、正極及び負極の両方又はいずれか一方の電極とセパレータとの接着性が不十分であり、押さえ部材を取り除くとそれらの間にずれが生じるものがある。
C:いずれの電池においても電極とセパレータとの接着性は不十分であり、押さえ部材を取り除くと、それらの間でずれが生じる。
【0112】
(合成例1)
相転移型ゲル化剤として下記構造式(イ)で表される化合物(以下「化合物(イ)」とも表記する。)を以下のとおり合成した。合成は国際公開2010/095572号公報に記載の方法で行った。
【化14】
【0113】
(合成例2)
相転移型ゲル化剤として下記構造式(ロ)で表される化合物(以下「化合物(ロ)」と表記する。)を上記合成例1と同様の方法により合成した。
【化15】
【0114】
(合成例3)
相転移型ゲル化剤として下記構造式(ハ)で表される化合物(以下「化合物(ハ)」と表記する。)をMol.Cryst.Liq.Cryst.Vol.439、p209−220に記載の合成法に従って合成した。
【化16】
【0115】
(製造例1)
<電解液の調製>
エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを体積比で1:2になるように混合し、混合液を得た。この混合液に、LiPF
6を1モル/Lになるよう添加してゲル化されていない電解液(X)を作製した(以下、ゲル化剤添加前の電解液を「母電解液」という。)。この母電解液(X)100質量部に対して、ゲル化剤として上記合成例1で合成した化合物(イ)を1質量部添加し、95℃に加熱して均一に混合した後、25℃に降温して電解液(a)を得た。
なお、電解液(a)は降温時に92℃からゾル−ゲルの転移が始まった。
【0116】
(製造例2)
母電解液(X)100質量部に対して、ゲル化剤として上記合成例2で合成した化合物(ロ)を1質量部添加し、80℃に加熱して均一に混合した後、25℃に降温して電解液(b)を得た。
なお、電解液(b)は降温時に76℃からゾル−ゲルの転移が始まった。
【0117】
(製造例3)
母電解液(X)100質量部に対して、ゲル化剤として上記合成例3で合成した化合物(ハ)を2質量部添加し、80℃に加熱して均一に混合した後、25℃に降温して電解液(c)を得た。
なお、電解液(c)は降温時に75℃からゾル−ゲルの転移が始まった。
【0118】
(製造例4)
N−メチル−2−ピロリドン100質量部に対して、ゲル化剤として上記合成例1で合成した化合物(イ)を5質量部添加し、95℃に加熱して均一に混合した後、25℃に降温してゲル化剤含有溶液(d)を得た。
【0119】
<正極の作製>
正極活物質として数平均粒子径11μmのリチウムのニッケル、マンガン及びコバルト混合酸化物と、導電助剤として数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末及び数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、混合酸化物:グラファイト炭素粉末:アセチレンブラック粉末:PVDF=100:4.2:1.8:4.6の質量比で混合した。得られた混合物にN−メチル−2−ピロリドンを固形分68質量%となるように投入して更に混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを直径16mmの円盤状に打ち抜いて正極(α)を得た。
【0120】
また、正極(α)に対し、活物質が塗布されている面にゲル化剤含有溶液(d)を0.1mL塗布した。次いで、その塗布後のものを80℃に加温したホットプレート上に10分静置して、正極表面への溶液の浸漬を均一化させ、さらに80℃に設定した真空乾燥機で1時間加熱してN−メチル−2−ピロリドンを除去し、正極(α−2)を得た。
【0121】
<負極の作製>
負極活物質として数平均粒子径12.7μmのグラファイト炭素粉末(I)及び数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(II)と、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース溶液(固形分濃度1.83質量%)と、ジエン系ゴム(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の数平均粒子径:120nm、分散媒:水、固形分濃度40質量%)とを、グラファイト炭素粉末(I):グラファイト炭素粉末(II):カルボキシメチルセルロース溶液:ジエン系ゴム=90:10:1.44:1.76の固形分質量比で全体の固形分濃度が45質量%になるように混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ10μmの銅箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを直径16mmの円盤状に打ち抜いて負極(β)を得た。
【0122】
また、負極(β)に対し、活物質が塗布されている面にゲル化剤含有溶液(d)を0.1mL塗布した。次いで、その塗布後のものを80℃に加温したホットプレートに10分静置して、負極表面への溶液の浸漬を均一化させ、さらに80℃に設定した真空乾燥機で1時間加熱してN−メチル−2−ピロリドンを除去し、負極(β−2)を得た。
【0123】
<セパレータの作製>
セパレータとしてポリエチレンからなる微多孔膜(膜厚25μm、空孔率50%、孔径0.1μm〜1μm)を直径24mmの円盤状に打ち抜いてセパレータ(γ)を得た。
【0124】
(実施例1)
電解液(a)を95℃に加熱し、その中にセパレータ(γ)を1分間浸漬した後取り出し、室温まで降温してセパレータ(A)を得た。セパレータ(A)の上に、正極(α)を活物質の層がセパレータ側になるように載置し、(i)セパレータの接着性評価(1)を実施した。評価結果を表1に示す。
【0125】
【表1】
(実施例2〜4、比較例1〜4)
電解液を表1に記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして、セパレータ(B)、(C)及び(D)を作製した。また、電極とセパレータとの組合せを表1に示すように変更して(i)セパレータの接着性評価(1)を実施した。評価結果を表1に示す。
【0126】
(実施例5〜10)
電解液を表2に記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして、セパレータを作製した。また、電極とセパレータとの組合せを表2に示すように変更して(i)セパレータの接着性評価(1)を実施した。評価結果を表2に示す。
【表2】
【0127】
(実施例11)
<電池組み立て>
上述のようにして作製した正極(α)と負極(β)とでセパレータ(γ)を挟んで積層した積層体を、SUS製の円盤型電池ケースに挿入した。次いで、この電池ケース内に95℃に加熱した電解液(a)を0.5mL注入し、積層体を電解液(a)に浸漬した。その後、上記電池ケースを密閉してリチウムイオン二次電池(小型電池)を作製した。なお、当該電池において、積層体上に、積層体の積層方向に5kgf/cm
2の押圧力が印加されるように押さえ部材としてのバネを載置した。このリチウムイオン二次電池を80℃で2時間保持した後、25℃まで降温してリチウムイオン二次電池(1)を得た。
【0128】
リチウムイオン二次電池(1)について、(ii)セパレータの接着性評価(2)の方法で評価した。評価結果を表3に示す。なお、セパレータ(γ)を電解液(a)に浸漬したことになるので、表中、浸漬後のセパレータを上述と同様にセパレータ(A)とした。
【0129】
【表3】
【0130】
(実施例12〜20、比較例5、比較例6)
電池部材として表3に記載のものを用いた以外は実施例11と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、その電池について、実施例11と同様にして、(ii)セパレータの接着性評価(2)の方法で評価した。評価結果を表3に示す。なお、セパレータ(γ)を電解液(b)に浸漬したことになるもの、電解液(c)に浸漬したことになるもの、及び母電解液(X)に浸漬したことになるものについて、表中、浸漬後のセパレータを上述と同様に、それぞれセパレータ(B)、(C)及び(D)とした。
【0131】
上記実施例に示すように、少なくとも表面に相転移型ゲル化剤が存在する部材を用いると、高い接着性が認められる。