(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5711044
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】電磁接触器、電磁接触器のガス封止方法及び電磁接触器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01H 50/54 20060101AFI20150409BHJP
H01H 50/14 20060101ALI20150409BHJP
H01H 49/00 20060101ALI20150409BHJP
H01H 1/66 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
H01H50/54 B
H01H50/14 B
H01H49/00 D
H01H1/66
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-112918(P2011-112918)
(22)【出願日】2011年5月19日
(65)【公開番号】特開2012-134121(P2012-134121A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2014年4月14日
(31)【優先権主張番号】特願2010-268952(P2010-268952)
(32)【優先日】2010年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】今村 清治
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小川 拓
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐一
(72)【発明者】
【氏名】高谷 幸悦
【審査官】
高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−197082(JP,A)
【文献】
特開平05−151870(JP,A)
【文献】
特開平09−320411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/00−50/92
H01H 49/00
H01H 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口孔を有するベース板と、固定端子及びパイプを貫通して固定した固定端子支持絶縁基板及び該固定端子支持絶縁基板の一面の外周縁部に一端が密着して接続された筒体部で構成される桶状の消弧室と、一端を開放した有底筒状のキャップとを備え、
前記消弧室と、当該消弧室の筒体部に一体に形成された前記ベース板と密着可能なフランジ部を有する第三の接続部材とで消弧室接続部が形成され、
前記キャップと、当該キャップの開放端面に一端が密着して接続される筒部及び該筒部の他端に連結された前記ベース板と密着可能なフランジ部を有する第二の接続部材とでキャップ接続部が形成され、
前記消弧室接続部と前記キャップ接続部とが前記ベース板の開口孔を介して連通するよう前記ベース板の一方の面に前記消弧室接続部における第三の接続部材のフランジ部を取り付け、前記ベース板の他方の面に前記キャップ接続部における第二の接続部材のフランジ部を取り付けたことを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記パイプを通じて前記消弧室及び前記キャップ内にガスを導入し、導入したガス圧が所定圧となったときに、当該パイプの開口部を閉塞してガス封止状態としたことを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電磁接触器のガス封止方法であって、前記パイプからガスを導入し、導入したガス圧が所定のガス圧力になった際に前記パイプの開口部を閉塞し、前記消弧室及び前記キャップ内にガスを封止したガス封止密封容器を形成したことを特徴とする電磁接触器のガス封止方法。
【請求項4】
桶状の消弧室に貫通固定された固定端子及びパイプと、消弧室の開放端部に連結する第一の接続部材の筒部とを同時にろう付けして消弧室接続部を形成する工程と、
有底筒状のキャップの開放端に半径方向外方に延長するフランジ部を有する第二の接続部材を備えたキャップ接続部を形成する工程と、
前記消弧室接続部及び前記キャップ接続部を、開口穴を形成したベース板に、当該開口孔を介して連通するように、前記第一の接続部材のフランジ部と前記第二の接続部材のフランジ部とを前記ベース板に密着させて配置し、各フランジ部を前記ベース板に溶接する工程と
を備えたことを特徴とする電磁接触器の製造方法。
【請求項5】
固定端子支持絶縁基板に貫通固定された固定端子及びパイプと、前記固定端子支持絶縁基板の外周縁部に連結し、他端に第三の接続部材を一体に形成した筒体部とを同時にろう付けして消弧室と消弧室接続部とを同時に形成する工程と、
有底筒状のキャップの開放端に半径方向外方に延長するフランジ部を有する第二の接続部材を備えたキャップ接続部を形成する工程と、
前記消弧室接続部及び前記キャップ接続部を、開口孔を形成したベース板に、当該開口孔を介して連通するように、前記第三の接続部材のフランジ部と前記第二の接続部材のフランジ部とを前記ベース板に密着させて配置し、各フランジ部を前記ベース板に溶接する工程と
を備えたことを特徴とする電磁接触器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流路に介挿された固定接触子および可動接触子を備えた接点装置を備えた電磁接触器に関し、詳しくはこの電磁接触器および電磁接触器の内部にガスを封止するガス封止方法および電磁接触器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁接触器のガス密閉型構造(以下、カプセル構造という)は、
図5に示すような構造をしており、具体的には消弧室1内部に、固定接点26、可動接点27aを有する可動端子27、可動軸28、接触バネ29等が組み込まれている。また、キャップ8内には可動軸28が連結された可動鉄心30、復帰バネ31が組み込まれている。ここでは詳細については説明しない。
【0003】
まず、消弧室1と固定端子2および消弧室1と第一の接続部材4はろう付けにより接合され、キャップ8と第二の接続部材5は溶接(レーザ溶接またはマイクロTIG溶接)により接合されている。そして、ベース板7と第一の接続部材4はシール溶接で接合し、またベース板7と第二の接続部材5もシール溶接にて接合されている。このシール溶接は抵抗溶接(プロジェクション溶接)やレーザ溶接によって接合されている。
【0004】
ガス封入式のプロジェクション溶接では、
図6に示すように、ガス封入室14内の上部電極部15および下部電極部16が、ガス封入室14内に設置され常時ガス雰囲気18を保つようにガス19を流しておく必要があり、そのガス封入室14も大型にならざるを得ないという問題がある。特にシール溶接するためにカプセル構造13を複数個入れておき、終わる際に次のカプセル構造13と入れ替えるという時には、ガス封入室14の排気と充填を繰り返すことになり、かなりの時間を要するという問題がある。このような工程では、封入ガス消費量も多くなってしまうという問題がある。
【0005】
ガス封入式のレーザ溶接では、
図7に示すように水素ガス20を給排気できるチャンバー21内で、水素ガス20を給排するワーク24を複数個入れて、チャンバー21の外部から透明ガラス窓22越しからレーザ光25を入射させてワーク24をレーザ溶接する方法がある。しかし、この方法ではワーク24の一部にC字状の給排気孔23を設けておき、この給排気孔23をレーザ溶接する必要がある。密閉部品の一部にC字状の給排気孔23を予め精度良く加工しておくことと、C字状の給排気孔23を変形しないようにレーザ照射条件を設定し、溶接する必要があるため、技術的には容易な製造方法であるとは言えない。また、チャンバー21の透明ガラス窓22越しからレーザ溶接を行うため、溶接時におけるスパッタやヒュームなどが多く発生するため、透明ガラス窓22が汚染したり、チャンバー21内を汚染し易いという問題点がある。
【0006】
チャンバー21の透明ガラス窓22越しからのレーザ溶接以外の方法として、レーザ溶接ヘッドをチャンバー21内に入れて溶接する方法も開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法ではチャンバーの大きさが大型化してしまう問題もある。
上記に記載したようなガス封入式のプロジェクション溶接方法やレーザ溶接方法では、カプセル構造内のガス封入圧力が大気圧あるいは大気圧より若干高い圧力程度であればシール溶接は可能であるが、更にガス封止圧力が数気圧乃至それ以上のガス圧力となると、上記に記載したようなガス封入式のプロジェクション溶接方法のガス封止室、レーザ溶接方法のチャンバーでは、ガス封止圧力を確保しながら量産性良くシール溶接することが困難となる。
【0007】
一方、上記に記載した溶接方法とは別の方法として、
図8に示した方法がある。すなわち、ベース板7とパイプ3とをろう付けまたははんだ付けで予め接合しておき、その後ベース板7と第一の接続板4,ベース板7と第二の接続板5とをレーザ溶接またはプロジェクション溶接にてシール溶接する。但しこの段階ではガス封入しながら溶接する必要はない。そして、最後の段階で、パイプ3を介してガスを封入して所定のガス圧力のもとでパイプ3を加圧ツールで潰して圧接して気密封止するか、ハンディタイプの超音波溶接機などで気密封止する。このような方法であればガス封入時のガス圧力は大気圧からそれ以上の高い圧力まで封入,封止が可能である。しかしこの場合,ベース板7に予めパイプ3を接合しておくことが必要となり、その方法としてベース板7にめっき処理,穴加工,そしてベース板7とパイプ3とのろう付けまたははんだ付けが必要となる。特に、ろう付けまたははんだ付けは、気密性を要する別工程のため余計な時間が発生してしまう。更に、はんだ付けの場合は、加熱温度が低いためベース板7を熱変形させることはないが、はんだ付け部に対しては強度面で長期的な信頼性が劣ってしまう。一方ろう付けは、高いろう付け温度となるためベース板7を熱変形させてしまう。
ここで、封入に使用されるガスの種類には、水素ガス、窒素ガス、水素と窒素の混合ガス、あるいは空気などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3835026号公報
【特許文献2】特開平4−182092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上より、本発明は上記に記載した様々な問題点に鑑みなされたものであり、従来のカプセル構造のガス封止する工程を簡略化し、安価で品質が安定した電磁接触器、電磁接触器のガス封止方法および電磁接触器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第
1の形態に係る電磁接触器は、開口孔を有するベース板と、固定端子及びパイプを貫通して固定した固定端子支持絶縁基板及び該固定端子支持絶縁基板の一面の外周縁部に一端が密着して接続された筒体部で構成される桶状の消弧室と、一端を開放した有底筒状のキャップとを備え、前記消弧室と、当該消弧室の筒体部に一体に形成された前記ベース板と密着可能なフランジ部を有する第三の接続部材とで消弧室接続部が形成され、前記キャップと、当該キャップの開放端面に一端が密着して接続される筒部及び該筒部の他端に連結された前記ベース板と密着可能なフランジ部を有する第二の接続部材とでキャップ接続部が形成され、前記消弧室接続部と前記キャップ接続部とが前記ベース板の開口孔を介して連通するよう前記ベース板の一方の面に前記消弧室接続部における第三の接続部材のフランジ部を取り付け、前記ベース板の他方の面に前記キャップ接続部における第二の接続部材のフランジ部を取り付けた構成とされている。
【0013】
また、本発明の第
2の形態に係る電磁接触器は、前記第
1の形態において、前記パイプを通じて前記消弧室及び前記キャップ内にガスを導入し、導入したガス圧が所定圧となったときに、当該パイプの開口部を閉塞してガス封止状態とした。
また、本発明の第
3の形態に係る電磁接触器のガス封止方法は、前記第1
又は2の形態の電磁接触器のガス封止方法であって、前記パイプからガスを導入し、導入したガス圧が所定のガス圧力になった際に前記パイプの開口部を閉塞し、前記消弧室及び前記キャップ内にガスを封止したガス封止密封容器を形成している。
【0014】
また、本発明の第
4の形態に係る電磁接触気の製造方法は、消弧室に貫通固定された固定端子及びパイプと、消弧室の開放端部に連結する第一の接続部材の筒部とを同時にろう付けして消弧室接続部を形成する工程と、有底筒状のキャップの開放端に半径方向外方に延長するフランジ部を有する
第二の接続部材を備えたキャップ接続部を形成する工程と、前記消弧室接続部及び前記キャップ接続部を、開口穴を形成したベース板に、当該開口孔を介して連通するように、前記第一の接続部材のフランジ部と前記第二の接続部材のフランジ部とを前記ベース板に密着させて配置し、各フランジ部を前記ベース板に溶接する工程とを備えている。
【0015】
また、本発明の第
5の形態に係る電磁接触器の製造方法は、固定端子支持絶縁基板に貫通固定された固定端子及びパイプと、前記固定端子支持絶縁基板の外周縁部に連結し、他端に第三の接続部材を一体に形成した筒体部とを同時にろう付けして消弧室と消弧室接続部とを同時に形成する工程と、有底筒状のキャップの開放端に半径方向外方に延長するフランジ部を有する
第二の接続部材を備えたキャップ接続部を形成する工程と、前記消弧室接続部及び前記キャップ接続部を、開口孔を形成したベース板に、当該開口孔を介して連通するように、前記第三の接続部材のフランジ部と前記第二の接続部材のフランジ部とを前記ベース板に密着させて配置し、各フランジ部を前記ベース板に溶接する工程とを備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガス封入式のプロジェクション溶接方法のようにガス封入、排気のための装置やガス封入室が不要となり、付随設備の省略による設備コストやガス消費量の削減に寄与できるほか、ガス封入、排気のための時間短縮などが可能となり生産性が大きく向上する。また、ガス封入式のレーザ溶接の場合、給排気用のチャンバー内でのレーザ溶接が不要になるほか、C字状給排気孔のような技術的にも精密さを要求されるようなレーザ溶接も不要になるため、ガス封入式のプロジェクション溶接と同様な効果を得ることが可能となる。さらに、レーザ溶接時のスパッタやヒュームなどの発生に対しては、大気中での溶接となるため、通常使用される排気装置でよく、チャンバー内の清掃やメンテナンスも不要となる。
【0017】
また、ガス封入式のプロジェクション溶接方法やレーザ溶接方法のようなカプセル構造内への高いガス圧力の封止に対しては、本発明のガス封入方法では、ガス圧力確保の観点で量産性低下の問題もなく、自由な圧力設定や調整が可能となり、大幅な生産性向上が可能となる。
一方、背景技術で記載した従来のベース板にパイプを設置する方式に対しては、ろう付け工程はセラミック消弧室と凸状部を有するベース板とのろう付けと、ベース板とパイプとのろう付け(又ははんだ付け)と2つの工程が必要であったが、本発明の製造方法では、全て消弧室側でろう付けする工程だけとすることができ、製造工程の工数を削減できる。即ちパイプのろう付け工程が固定端子や接続部材と一緒に炉中ろう付けが可能となったため作業の簡素化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る電磁接触器の第1の実施形態を示す正面断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態を示す電磁接触器の斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の変形例を示す電磁接触器の正面断面図であって、(a)は第1の変形例、(b)は第2の変形例をそれぞれ示す。
【
図4】本発明に係る電磁接触器の第2の実施形態を示す正面断面図である。
【
図6】従来のガス封入式のプロジェクション溶接を示す模式図である。
【
図7】従来のガス封入式のレーザ溶接を示す模式図である。
【
図8】
図5及び
図6に示す溶接方法以外の方法を示す従来の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を
図1〜
図4に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る電磁接触器の第1の実施形態を示すカプセル構造の断面図である。
図2は、
図1に示した電磁接触器のカプセル構造外観の斜視図で、
図3(a),(b)は本発明の第1の実施形態の変形例を示した電磁接触器のカプセル構造の断面図である。
図4は本発明に係る電磁接触器の第2の実施形態を示すカプセル構造の断面図である。
【0020】
すなわち、
図1に示す実施例において、下端面を開放した例えばセラミックスを焼成して一体形成した桶状の消弧室1と、この消弧室1の上側側壁面に一対の例えば銅製の固定接触子2が所定間隔を保って貫通してろう付けにより接合されている。さらに、消弧室1の上側側壁面には、例えば銅製の中空のパイプ3が同様に貫通してろう付けにより接合されている。
【0021】
固定端子2とパイプ3をろう付けした消弧室1の開口端部1aに、第一の接続部材4の延伸した凸状に形成された筒部4aをろう付けにより接合することで、消弧室接合部6が組立てられる。これら消弧室1に対する固定接触子2、パイプ3及び第1の接続部材4の筒部4aの接合は、炉内で同時にろう付けすることにより一体化することができる。このとき、消弧室1には、固定端子2、パイプ3及び第一の接続部材4の筒部4aのろう付け位置に、メタライズ処理を行って金属層又は金属膜を形成し、その金属層又は金属膜にNiめっきを施して置く。また、第1の接続部材4は鉄系材料であるため、例えば電気Niメッキなどをしてろう付け性を確保することが好ましい。また、消弧室1を構成するセラミックス材料の膨張係数と銅製の固定端子2やパイプ3の膨張係数との差を考慮して応力歪が発生しないような形状にすることはいうまでもない。
【0022】
そして、組立てられた消弧室接合部6は、第一の接続部材4の筒部4aに一体に連結されたフランジ部4bをベース板7に密着させてシール溶接にて接合する。
また、一端が封止された有底筒状のキャップ8は、第2の接続部材5の延伸した凸状をなす筒部5aをキャップ5の開口端部8aにシール溶接にて接合することでキャップ接続部12が組み立てられる。このキャップ接続部12をベース板7に取り付けるには、第二の接続部材5に設けたフランジ部5bをベース板7に密着させてシール溶接する。
【0023】
その際、消弧室接合部6とキャップ接合部12とが、ベース板7に設けた開口孔7aを介して互いに連通するように取り付ける。これにより、電磁接触器のカプセル構造部13が組み立てられる。
消弧室接合部6の消弧室1と固定端子2とパイプ3と第一の接続部材4を接合する方法は、真空ろう付けによって同時行える。
ここで、第一及び第二の接続部材4,5は底膨張率の材料、ベース板7は磁性材料、キャップ8は非磁性材料を用いて形成することが好ましい。
【0024】
実際上は、カプセル構造部13を組み立てる際に、前述した
図4で説明したように、ベース板7の一方の面に、消弧室1内に配置される可動接点27aを配置した可動端子27、この可動端子27を支持する可動軸28、この可動軸28の周りに配置された可動接点27aを固定接点26に押圧する接触バネ29を配置し、他方の面に、開口孔7aを貫通して延長される可動軸28に連結された可動鉄心30及び復帰バネ31を配置して置く。そして、ベース板7に、可動端子27、可動軸28、接触バネ29を覆うように消弧室接続部6を配置するとともに、可動軸28、可動鉄心30及び復帰バネ31を覆うようにキャップ接続部12を配置して、これら消弧室接続部6及びキャップ接続部12をベース板7にシール溶接する。
【0025】
そして、電磁接触器のカプセル構造部13が組み立てられると、先ず、パイプ3にガス排気装置を接続してカプセル構造部13内のガスを排気し、次いで、パイプ3にガス供給源(図示せず)を接続し、パイプ3を介してガス供給源から加圧ガスを消弧室1内に導入する。そして、導入したガス圧が所定圧力となった際に、パイプ3の開口部3aを封止工具で閉塞する。それによって、消弧室1及びキャップ8内に所内圧のガスを封止することができる。
【0026】
このように、ガス封止方法には、ガスの排気、ガスの導入、ガス圧保持のまま封止という工程が必要となるが、これら一連の作業工程は、ガス排気装置及びガス供給源の双方が接続されたワンタッチ式パイプをパイプ3に着脱することにより行うことができ、サイクルタイムの高速化を図ることができる。
ここで、ガス供給源から供給するガスの種類には、水素ガス、窒素ガス、水素と窒素の混合ガス、あるいはエアなどがある。
【0027】
このガス封止方法は、パイプ3からのガス封入であるため、ガス圧力の選択に自由度があり、また圧力調整し易い。また、封止方法は極めて短時間でパイプ3の開口部3aを閉塞することができるので、生産性が高くなる。もちろんパイプ3の封止方法としてはハンディタイプの超音波溶接機でも可能であり、封止する方法を限定するものではない。
このように、上記第1の実施形態によると、消弧室1に固定端子2、パイプ3及び第一の接続部材4を同時にろう付けすることができる。このため、消弧室1への固定端子2及びパイプの接続と、消弧室接続部6の形成とを同時に行うことができ、消弧室1及び消弧室接続部6の形成工程を簡略化することができる。また、消弧室1及びキャップ8へのガスの封止も容易に行うことができる。
【0028】
なお、上記第1の実施形態においては、パイプ3を消弧室1の上側側壁に貫通して固定した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、
図3(a)に示すように、消弧室1に固定された固定端子2に対して直角方向の壁面を貫通させて接合させるようにしてもよい。このように、消弧室1の側壁にパイプ3を接合する場合には、パイプ3の設置スペースに自由度があるという効果がある。
【0029】
また、上記第1の実施形態においては、消弧室1に固定端子2とパイプ3とを個別に貫通配置した場合について説明したが、これに限定されるものでなく、
図3(b)に示すように構成することもできする。すなわち、本実施例では、一対の固定端子2のうちの一方の固定端子に、消弧室1の側壁の外側となる部位と側壁の内側となる可動接点との接触部から外れた部位とに斜めに貫通する段付きの通気孔2aを形成し、この通気孔2aの大径部にパイプ3を接合するようにしている。
【0030】
この場合には、消弧室1へパイプ3用の穴加工が不要になり、消弧室1への穴加工はセラミックスの焼成前段階で策定しておくにしても、セラミックスの焼成後に穴加工するにしても消弧室1への加工数低減は時間及び工数面で効果的である。更に、パイプ3を固定端子2に設けた通気孔2aに接合する方が、パイプ3及び固定端子2が同じ材料であるので、ろう付けし易いという効果もある。
なお、上記第1の実施形態では、キャップ8と第二の接続部材5とが別体で構成されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、キャップ8の開放端部に半径方向に外方に突出するフランジ部を形成することにより、キャップ8と第二の接続部材5とを一体に形成するようにしてもよい。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態を
図4について説明する。
この第2の実施形態では、桶状の消弧室を一体に形成する場合に代えて、端子支持絶縁板と第三の接続部材とで消弧室を形成するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、固定端子支持絶縁基板40を備えている。この固定端子支持絶縁基板40には、前述した一対の固定端子2を固定する貫通孔40a及びパイプ3を固定する貫通孔40bが形成されている。また、固定端子支持絶縁基板40は、貫通孔40a及び40bを形成した板状のセラミック基材に、貫通孔40a及び40bの周り及び一方の面の外周縁部40cに銅箔などの金属をメタライズ処理してセラミック絶縁基板として構成されている。
【0032】
そして、固定端子支持絶縁基板40の貫通孔40aに固定端子2が挿通されてろう付けされ、貫通孔40bにパイプ3が挿通されてろう付けされている。
さらに、固定端子支持絶縁基板40には、その下面における外周縁部40cに金属製の角筒状の筒体部41がろう付けされている。この筒体部41の他端には、半径方向外方に突出するフランジ部42aを有する第三の接続部材42が一体に形成されている。
【0033】
そして、固定端子支持絶縁基板40とこれにろう付けされた筒体部41とで下面を開放した桶状の消弧室1が形成され、この消弧室1と第三の接続部材42のフランジ部42aとで消弧室接続部6が構成されている。なお、固定端子支持絶縁基板40と固定端子2及びパイプ3とのろう付け及び固定端子支持絶縁基板40の外周縁部40cと筒体部41とのろう付けは、例えば炉内ろう付け処理によって同時にろう付け処理を行うことが好ましい。
【0034】
また、筒体部41の内周面にはセラミック製の絶縁角筒体43が配置され、この絶縁角筒体43のベース板7側に絶縁底板44によって閉塞されている。
一方、ベース板7の開口孔7aの下面側には、有底筒状のキャップ45が配置されている。このキャップ45の開放端部には第二の接続部材46が一体に形成されている。この第二の接続部材46は、筒部46aとこの筒部46aの開放端から半径方向外方に突出するフランジ部46bとで構成されている。
【0035】
そして、消弧室接続部6及びキャップ接続部12がベース板7の開口孔7aを介して連通するように第三の接続部材42のフランジ部42a及び第二の接続部材46のフランジ部46bがベース板7に密着されてシール溶接されている。
この第2の実施形態でも、第二及び第三の接続部材46,42は底膨張率の材料、ベース板7は磁性材料、キャップ45は非磁性材料を用いて形成することが好ましい。
【0036】
実際上は、カプセル構造部13を組み立てる際に、前述した
図4で説明したように、ベース板7の一方の面に、消弧室1内に配置される可動接点27aを配置した可動端子27、この可動端子27を支持する可動軸28、この可動軸28の周りに配置された可動接点27aを固定接点26に押圧する接触バネ29を配置し、他方の面に、開口孔7aを貫通して延長される可動軸28に連結された可動鉄心30及び復帰バネ31を配置して置く。そして、ベース板7に、可動端子27、可動軸28、接触バネ29を覆うように消弧室接続部6を配置するとともに、可動軸28、可動鉄心30及び復帰バネ31を覆うようにキャップ接続部12を配置して、これら消弧室接続部6及びキャップ接続部12をベース板7にシール溶接する。
【0037】
この第2の実施形態でも、端子支持絶縁板21への固定端子2、パイプ3及び第三の接続部材42のろう付けを同時に行うことができ、消弧室1への固定端子2及びパイプの接続と、消弧室接続部6の形成とを同時に行うことができ、消弧室1及び消弧室接続部6の形成工程を簡略化することができる。
しかも、固定端子支持絶縁基板40を平板状のセラミック基材にメタライジング処理するので、複数のセラミック基材を配置した状態で同時にメタライジング処理を行うことができ、生産性を向上させることができる。また、固定端子支持絶縁基板40と筒体部41とをろう付けする場合のろう付け治具が簡単な構造で済み、組み立て治具を安価に構成することができる。
【0038】
また、消弧室1及びキャップ8へのガス封止は、前述した第1の実施形態と同様のガス封止方法を適用することができる。
なお、上記第2の実施形態ではキャップ45と第二の接続部材46とが一体に形成されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、前述した第1の実施形態と同様にキャップ45と第二の接続部材46とを別体で構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 消弧室
1a 消弧室開口端部
2 固定端子、
2a 段付通気孔
3 パイプ
3a パイプ開口部
4 第一の接続部材
4a 筒部
4b フランジ部
5 第二の接続部材
5a 筒部
5b フランジ部
6 消弧室接合部
7 ベース板
8 キャップ
12 キャップ接合部
13 電磁接触器のカプセル構造部
40 固定端子支持絶縁基板
41 筒体部
42 第三の接続部材
42a フランジ部
43 絶縁角筒体
44 絶縁底板
45 キャップ
46 第二の接続部材