特許第5711085号(P5711085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5711085サムターン装置およびサムターン装置を備えた建具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5711085
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】サムターン装置およびサムターン装置を備えた建具
(51)【国際特許分類】
   E05B 3/00 20060101AFI20150409BHJP
   E05B 13/00 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   E05B3/00 A
   E05B13/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-201531(P2011-201531)
(22)【出願日】2011年9月15日
(65)【公開番号】特開2013-60783(P2013-60783A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2013年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】市川 岳郎
(72)【発明者】
【氏名】伊本 尚太
【審査官】 神崎 共哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−255135(JP,A)
【文献】 特開平10−184113(JP,A)
【文献】 特開2003−184388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サムターンケースに回転自在に装着され、錠装置の錠操作部に連結されて該錠装置を操作する錠操作軸にサムターンを着脱可能に連結したサムターン装置であって、
前記サムターンは、回転中心位置に設けられたガイド部を錠操作軸の位置決め部に回転自在に嵌合して、錠操作軸に空転自在に位置決めされるとともに、
ガイド部から離隔した位置に設けられた連結部を錠操作軸の被連結部に嵌合して、錠操作軸に回転方向に連結されるサムターン装置。
【請求項2】
前記連結部は、同一円周上に複数配置され、基部および突出部を設けて形成される請求項1記載のサムターン装置。
【請求項3】
前記連結部は突起状に形成されるとともに、
前記サムターンケースには、初期位置から作動位置まで移動操作可能で、初期位置において前記連結部の外周壁に形成された係止溝に係止してサムターンの離脱を規制し、作動位置において前記係止溝との係止が解除される着脱レバーが装着される請求項1または2記載のサムターン装置。
【請求項4】
前記連結部は、錠操作軸に形成される複数種の被連結部の一に嵌合可能な形状に形成され、異種の被連結部を有する錠操作軸へのサムターンの装着を禁止する請求項1から3のいずれかに記載のサムターン装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の前記サムターン装置をハンドル装置に備え、そのハンドル装置を備えた建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サムターン装置およびサムターン装置を備えた建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
錠装置を解錠キーなしに施解錠操作するために扉に固定されるサムターン装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
この従来例において、サムターン装置は、ベースに回転自在に装着されるサムターン軸に着脱サムターンを着脱自在に連結して形成され、着脱サムターンに与えた回転操作力をサムターン軸を介して錠装置に伝達して錠装置の施解錠操作を行うことができる。
【0004】
着脱サムターンは、回転中心上に配置される着脱軸の外周に突設される突起を有しており、該突起をサムターン軸の切欠部に嵌合させることにより着脱サムターンの回転力がサムターン軸に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-255135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来例において、突起が比較的細径の着脱軸に形成されるために、回転操作時における突起の応力負担が大きなために、着脱軸を強度の高い金属材料等により形成する必要が生じ、コストアップを招くという欠点がある。
【0007】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、製造コストを低減させることのできるサムターン装置の提供を目的とする。また、本発明の他の目的は、上記サムターン装置を備えた建具の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば上記目的は、
サムターンケース1に回転自在に装着され、錠装置2の錠操作部3に連結されて該錠装置2を操作する錠操作軸4にサムターン5を着脱可能に連結したサムターン装置であって、
前記サムターン5は、回転中心位置に設けられたガイド部6を錠操作軸4の位置決め部7に回転自在に嵌合して、錠操作軸4に空転自在に位置決めされるとともに、
ガイド部6から離隔した位置に設けられた連結部8を錠操作軸4の被連結部9に嵌合して錠操作軸4に回転方向に連結されるサムターン装置を提供することにより達成される。
【0009】
連結部8とガイド部6とが離隔した位置に設けられる本発明において、サムターン5を回転操作する際の連結部8、あるいは被連結部9における荷重負担は小さくなるために、金属等の高価な材料を使用する必要がなくなり、コスト低減が可能になる。
【0010】
また、サムターン装置は、
前記連結部8は、同一円周上に複数配置され、基部10および突出部9bを設けて形成するように構成される。
【0011】
さらに、サムターン装置は、
前記連結部8は突起状に形成されるとともに、
前記サムターンケース1には、初期位置から作動位置まで移動操作可能で、初期位置において前記連結部8の外周壁に形成された係止溝12に係止してサムターン5の離脱を規制し、作動位置において前記係止溝12との係止が解除される着脱レバ13ーが装着されるように構成することができる。
【0012】
本発明において、連結部8を着脱レバー13の係止部として利用することかできるために、着脱レバー13の移動に伴って係脱する部位を別途設定する場合に比して構造を簡単にすることが可能になる。
【0013】
また、サムターン装置は、
前記連結部8は、錠操作軸4に形成される複数種の被連結部9の一に嵌合可能な形状に形成され、異種の被連結部9を有する錠操作軸4へのサムターン5の装 着を禁止するように構成することが可能であり、この場合、サムターン5は、連結部8が嵌合可能な錠操作軸4にのみ連結することができるために、不正なサム ターン5を装着された不正解錠操作を防止できる。
なお、本発明によれば、
サムターンケース1に回転自在に装着され、錠装置2の錠操作部3に連結されて該錠装置2を操作する錠操作軸4にサムターン5を着脱可能に連結したサムターン装置であって、
前記サムターン5は、ガイド部6を錠操作軸4の位置決め部7に嵌合させるとともに、
ガイド部6から離隔した位置に設けられた連結部8を錠操作軸4の被連結部9に嵌合して錠操作軸4に回転方向に連結されるサムターン装置を提供することも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、連結部での荷重負担を小さくすることが可能になるために、金属に比して強度の小さな合成樹脂材等を使用することができ、コスト低減を図ることができる。
【0015】
また、連結部8と被連結部9との係止箇所はサムターン5の回転中心から離隔した位置で相互に係止するために、連結状態においてサムターン5のぐらつき、がたつきを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ハンドル装置を示す図で、(a)はインサイドハンドルと電気錠の位置関係を示す図、(b)は(a)のB方向矢視図である。
図2】ハンドル装置の玄関扉への装着状態を示す図で、(a)は屋外側壁面を示す図、(b)は屋内側壁面を示す図である。
図3】サムターン装置を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の2B-2B線断面図である。
図4】サムターン装置の分解斜視図である。
図5】サムターンの装着状態を示す説明図で、(a)は側面図、(b)は(a)においてサムターンを4B方向から見た平面図、(c)は錠操作軸を(a)の4C方向から見た図、(d)から(f)はキー違い形成部の変化を示す図である。
図6】着脱レバーを示す図で、(a)は分解図、(b)はロック状態を示す図、(c)はロック解除状態を示す図である。
図7】サムターン装置の取り付け状態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に本発明のサムターン装置が搭載されたハンドル装置を、図2に玄関扉(A)として構成された建具を示す。玄関扉(A)は、扉体15に電気錠(錠装置2)と、ハンドル装置とを装着して形成される。
【0018】
ハンドル装置は、屋外取付ベース14により扉体15の屋外側壁面に取り付けられるアウトサイドハンドル16と、屋内取付ベース17により扉体の屋内側壁面に取り付けられるインサイドハンドル18とを有する。
【0019】
また、上記電気錠2は、扉体15の上下に固定されており、各電気錠2には、図外のアクチュエータにより駆動され、図外のドア枠に固定されるストライク19に係脱して扉を施解錠するデッドボルト20が収容される。また、上方に配置される電気錠2には、デッドボルト20に加え、ラッチボルト21が収容され、該ラッチボルト21をストライク19に係止させることにより扉15の閉扉状態が維持される。
【0020】
上記電気錠2は商用電源(P)からの給電を受けて動作し、商用電源(P)からの電力は、ドア内配線29を経由して、先ず下方の電気錠2に導入された後、錠間配線30を経由して上方の電気錠2に供給される。
【0021】
アウトサイドハンドル16は、図1(b)における矢印R方向に回転操作可能であり、アウトサイドハンドル16を回転操作すると、ラッチボルト21のストライク19との係止が解除される。
【0022】
これに対し、インサイドハンドル18は軸(C)周りに回転操作可能であり、インサイドハンドル18の回転操作により同様にラッチボルト21の係止解除動作が行われる。
【0023】
サムターン装置は、各屋内取付ベース17に組み込まれ、図3以下に示すように、屋内取付ベース17のケースを兼ねるサムターンケース1にサムターン5、錠操作軸4、着脱レバー13、および底部カバー22を有し、サムターン5を回転操作することにより電気錠2に配置される錠操作部3を回転駆動してデッドボルト20を施解錠操作することができる(図7参照)。
【0024】
図5に示すように、上記サムターン5は合成樹脂材を射出成形、あるいは切削加工して形成され、円板状基部5aと、円板状基部5aの表面部に突設され、指で摘んでサムターン5に回転操作を与えるための操作突部5bと、円板状基部5aの裏面中心に立設されるガイド部6とを有する。
【0025】
また、ガイド部6の中心から適宜間隔離隔した位置に突起状の連結部8が複数個設けられる。各連結部8は、同一円周上に配置される円弧状の基部10から中心方向に突出部11を突出させて形成される。
【0026】
一方、錠操作軸4は、図5に示すように、円板部4aの裏面に連結軸部4bを突設して形成される。図4に示すように、この錠操作軸4は、円板部4aをサムターンケース1に開設される装着開口1aの裏面に突設される摺動突部1bと着脱レバー13により挟み付けて装着され、装着状態において、連結軸部4bは底部カバー22に開設した軸挿通孔22aに挿通し、回転軸を提供する。錠操作軸4と摺動突部1bとの間には、電気錠2の施解錠状態を表示するためのシート23が介装される。
【0027】
また、連結軸部4bの先端には後述するサムターンスピンドル24に回転方向に連結するためのセレーション4cが形成される。
【0028】
さらに、円板部4a、および連結軸部4bには、円板部4a表面に開放され、連結軸部4bと同心の位置決め部7が開設される。位置決め部7は上記サムターン5のガイド部6が嵌合可能な径寸法に形成される。
【0029】
上記錠操作軸4の円板部4aの表面には、被連結部9が形成される。被連結部9は、上記サムターン5の連結部8が嵌合可能な凹部として形成される。図5に示すように、被連結部9も連結部8と同様に、円弧状の基部9aから突出部9bを突出させた形状に形成されており、図5(b)、および(d)から(f)に示すように、突出部9bの位置を変更した4種が設定され、サムターン5にも被連結部9に嵌合可能な連結部8が4種類設定される。
【0030】
従って本例において、図5(b)に示す被連結部9を有する錠操作軸4がサムターンケース1に保持されている場合、この被連結部9に嵌合可能な連結部8を有するサムターン5のみが錠操作軸4に連結してデッドボルト20の施解錠操作が可能になる。
【0031】
なお、以上においては、連結部8は、円弧状の基部10から中心方向に突出部11を突出させて形成される場合が示されているが、基部10を接線方向に延びる直線により形成するとともに、その中心から突出部11を突設したT字形状に形成することもできる。さらに、ガイド部6は筒形状に形成される場合を示したが、溝形状に形成し、位置決め部7をガイド部6に嵌合するピンにより形成することもできる。
【0032】
さらに、図5(a)、図6に示すように、連結部8の基部10の外周壁には、サムターンケース1に装着される着脱レバー13が係脱する係止溝12が水平方向に形成される。着脱レバー13は、サムターン5の回転中心、すなわち、ガイド部6に直交する面内で初期位置と作動位置との間でスライド操作可能であり、圧縮スプリング13aにより初期位置側に付勢される。
【0033】
また、着脱レバー13は、中央部に小径部25aと大径部25bとが連結されたロック用開口25を有し、一端をサムターンケース1から露出させて配置され、先端部をサムターンケース1内に押し込むようにして初期位置から作動位置に移動させることができる。
【0034】
図6はサムターン5の連結部8と着脱レバー13のロック用開口25の関係を示すもので、(a)に示すように、ロック用開口25の小径部25aの径(Da)は、連結部8に形成される係止溝12の外周径(D12)にほぼ等しく、大径部25bの径(Db)は、連結部8の外周径よりやや大寸に形成され、さらに、大径部25bと小径部25aとの中心間距離(d)は、着脱レバー13のストロークに一致する。
【0035】
図6(b)は着脱レバー13が初期位置にあるときの関係を示すもので、初期位置において上記ロック用開口25の小径部25aの内周壁面は連結部8の係止溝12に摺接している。この状態で、連結部8に着脱レバー13が噛み込んでいるために、サムターン5をサムターンケース1から引き抜くことはできず、かつ、小径部25aの内周壁と係止溝12とは同一円で接するために、サムターン5の回転操作に支障を来さない。
【0036】
この状態から図6(c)に示すように、着脱レバー13をサムターンケース1内に押し込んで作動位置に移動させると、大径部25bの中心がサムターン5の回転中心に移動する。この状態で、ロック用開口25と連結部8との干渉が解消されるために、以後、サムターン5を自由に引き抜くことができる。図6(c)に示すように、一旦着脱レバー13を作動位置に移動させると、サムターン5の回転角度にかかわらず、どの回転位置でもサムターン5の抜去、装着が可能になる。
【0037】
以上のようにして構成されるサムターン装置は、図7に示すように、中継機構26を介して電気錠2の錠操作部3に連結される。本例において、中継機構26は、電気錠2の錠操作部3に嵌合されるサムターン座26a、サムターン座26a内に挿入されるサムターンカム26b、およびサムターンスピンドル24からなり、サムターン装置の錠操作軸4のセレーション4cは、サムターンスピンドル24に噛合して電気錠2のデッドボルト20を手動で操作可能にする。
【0038】
これら中継機構を所定位置に保持した後、サムターン装置にはバックプレート27が固定され、バックプレート27と扉表面の間にゴムシート28を介装した状態で扉15に固定される。
【符号の説明】
【0039】
1 サムターンケース
2 錠装置
3 錠操作部
4 錠操作軸
5 サムターン
6 ガイド部
7 位置決め部
8 連結部
9 被連結部
10 基部
11 突出部
12 係止溝
13 着脱レバー
A 玄関扉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7