(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一の取付部材を、筒状を呈する第二の取付部材の軸方向一方の開口部側に、該第二の取付部材と軸方向に離間して配置し、それら第一の取付部材と第二の取付部材とを本体ゴム弾性体で連結して、該第二の取付部材の軸方向一方の開口部を流体密に覆蓋する一方、該第二の取付部材の軸方向他方の開口部を可撓性膜で流体密に覆蓋することにより、該本体ゴム弾性体と該可撓性膜との間に非圧縮性流体が封入された流体室を形成すると共に、該流体室の内部に仕切部材を収容配置して、該流体室を該第二の取付部材の軸方向両側に仕切ることにより、壁部の一部が本体ゴム弾性体にて構成された主液室と、壁部の一部が該可撓性膜にて構成された副液室とを、該仕切部材を間に挟んだ両側に形成すると共に、それら主液室と副液室を相互に連通するオリフィス通路を該仕切部材に設けてなる流体封入式防振装置において、
前記仕切部材の前記副液室側の面に対して、環状乃至は筒状の挟持用突起が、前記第二の取付部材と同軸的に延びるように設けられていると共に、前記可撓性膜の外周部が、該挟持用突起の外周面と該第二の取付部材の内周面との間で、該第二の取付部材の縮径により挟持固定されていることを特徴とする流体封入式防振装置。
前記可撓性膜における前記副液室側の面の外周部に対して、環状乃至は筒状の外側周壁部が一体的に立設されて、該外側周壁部が、前記挟持用突起の外周面と前記第二の取付部材の内周面との間で挟持固定されている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
第一の係合部が、前記挟持用突起の外周面に設けられる一方、該挟持用突起と前記第二の取付部材との間での前記可撓性膜の外側周壁部の挟持固定状態下で、該第一の係合部に対して該第二の取付部材の軸方向に係合して、該挟持用突起と該第二の取付部材との間からの該外側周壁部の抜け止めをなす第二の係合部が、該外側周壁部の内周面に設けられている請求項2に記載の流体封入式防振装置。
前記可撓性膜における前記副液室側の面の外周部のうちの前記外側周壁部よりも内側部分に、該外側周壁部と間隔を隔てて同軸的に延びる環状乃至は筒状の内側周壁部が一体的に立設されて、該外側周壁部と該内側周壁部との間に、該外側周壁部の内周面と該内側周壁部の外周面とを両側側面とした、前記挟持用突起が嵌入される凹溝が形成されている請求項2又は請求項3に記載の流体封入式防振装置。
前記可撓性膜の外周部を前記挟持用突起の外周面との間で挟持固定する前記第二の取付部材の内周面部分にシールゴム層が設けられて、該可撓性膜の外周部が、該シールゴム層を介して、該挟持用突起の外周面と該第二の取付部材の内周面との間で挟持固定されている請求項1乃至請求項4のうちの何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
前記第二の取付部材における前記軸方向他方の開口部側の端部に、内フランジ部が一体的に周設されていると共に、前記挟持用突起と前記第二の取付部材との間での前記可撓性膜の外周部の挟持固定状態下で、該内フランジ部が、該可撓性膜の外周部における前記副液室側とは反対側の面に対して、該第二の取付部材の軸方向に係合して、該挟持用突起と該第二の取付部材との間からの該可撓性膜の外周部の抜けが阻止されるようになっている請求項1乃至請求項5のうちの何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
第一の取付部材を、筒状を呈する第二の取付部材の軸方向一方の開口部側に、該第二の取付部材と軸方向に離間して配置し、それら第一の取付部材と第二の取付部材とを本体ゴム弾性体で連結して、該第二の取付部材の軸方向一方の開口部を流体密に覆蓋する一方、該第二の取付部材の軸方向他方の開口部を可撓性膜で流体密に覆蓋することにより、該本体ゴム弾性体と該可撓性膜との間に非圧縮性流体が封入された流体室を形成すると共に、該流体室の内部に仕切部材を収容配置して、該流体室を該第二の取付部材の軸方向両側に仕切ることにより、壁部の一部が本体ゴム弾性体にて構成された主液室と、壁部の一部が該可撓性膜にて構成された副液室とを、該仕切部材を間に挟んだ両側に形成すると共に、それら主液室と副液室を相互に連通するオリフィス通路を該仕切部材に設けてなる流体封入式防振装置の製造方法であって、
前記第一の取付部材が、前記第二の取付部材の軸方向一方の開口部側に、該第二の取付部材と軸方向に離間配置された状態で、該第一の取付部材と該第二の取付部材とが前記本体ゴム弾性体で連結されることにより、該第二の取付部材の軸方向一方の開口部が流体密に覆蓋されてなる中間成形体を準備する工程と、
前記仕切部材として、厚さ方向の一方の面に対して、環状乃至は筒状の挟持用突起が、前記第二の取付部材と同軸的に延びるように設けられてなるものを準備する工程と、
前記中間成形体と前記仕切部材と前記可撓性膜とを所定の非圧縮性流体中に浸漬せしめる一方、前記第二の取付部材の内側に、該仕切部材を、該第二の取付部材の軸方向他方の開口部側に厚さ方向の他方の面を向けた状態で、該第二の取付部材の内側を軸方向の両側に仕切るように収容配置すると共に、該可撓性膜の外周部を、該仕切部材の前記挟持用突起の外周面と該第二の取付部材の内周面との間に挿入して、該第二の取付部材の前記軸方向他方の開口部を該可撓性膜にて覆蓋する工程と、
前記仕切部材が内側に収容配置されて、前記可撓性膜にて軸方向他方の開口部が覆蓋された前記第二の取付部材に対する縮径加工を、前記非圧縮性流体中で実施して、該仕切部材を該第二の取付部材の内周面にて挟持固定すると共に、該可撓性膜の外周部を、該挟持用突起の外周面と該第二の取付部材の内周面との間で挟持固定するとことにより、該仕切部材を間に挟んだ両側に、前記主液室と前記副液室とを、該仕切部材の前記オリフィス通路を通じて互いに連通せしめた状態で形成する工程と、
を含むことを特徴とする流体封入式防振装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体乃至は防振支持体として、内部に封入された流体の流動作用を利用して、防振効果を得るようにした流体封入式防振装置が知られている。そして、かかる流体封入式防振装置の一種として、防振連結されるべき二つの部材のうちの一方に取り付けられる第一の取付部材を、それらのうちの他方に取り付けられる略円筒状の第二の取付部材の軸方向一方の開口部側に、軸方向に離間して配置し、それら第一の取付部材と第二の取付部材とを本体ゴム弾性体で連結して、第二の取付部材の軸方向一方の開口部を流体密に覆蓋する一方、第二の取付部材の軸方向他方の開口部を可撓性膜で流体密に覆蓋することにより、本体ゴム弾性体と可撓性膜との間に非圧縮性流体が封入された流体室を形成し、また、流体室の内部に仕切部材を収容配置して、流体室を第二の取付部材の軸方向両側に仕切ることにより、壁部の一部が本体ゴム弾性体にて構成された主液室と、壁部の一部が可撓性膜にて構成された副液室とを、仕切部材を間に挟んだ両側に形成し、そして、かかる仕切部材に設けられたオリフィス通路にて、それら主液室と副液室を相互に連通した構造を有するものがある。このような流体封入式防振装置は、振動入力時に、主液室と副液室との間に惹起される相対的な圧力変動によってオリフィス通路を流動する流体の共振作用等に基づいて、ゴム弾性体だけでは得られ難い防振効果が得られるようになっており、例えば、自動車用エンジンマウントやボデーマウント等として、好適に用いられている。
【0003】
ところで、例えば、特開2006−275255号公報(特許文献1)や特開2009−156431(特許文献2)等に明らかにされるように、上記の如き従来の流体封入式防振装置では、多くの場合、可撓性膜が、ゴム薄膜の外周縁部に対してリング状乃至は筒状の支持金具が加硫接着された一体加硫成形品として構成されている。そして、そのような可撓性膜が筒状の第二の取付部材内に収容されて、支持金具が第二の取付部材と同軸的に位置するように配置された状態で、第二の取付部材が縮径されることにより、支持金具が第二の取付部材の内周面にて挟持固定されている。かくして、可撓性膜が、第二の取付部材の本体ゴム弾性体にて覆蓋される開口部とは反対側の開口部を流体密に覆蓋した状態で、第二の取付部材に取り付けられるようになっている。
【0004】
このような構造を有する従来の流体封入式防振装置においては、一般に、第一の取付部材と第二の取付部材とが本体ゴム弾性体で連結されて、第二の取付部材の軸方向一方の開口部が流体密に覆蓋された一体加硫成形品からなる中間成形体と、支持金具が加硫接着された可撓性膜と、仕切部材とを、所定の非圧縮性流体中に浸漬して、中間成形体内に仕切部材と可撓性膜とを収容配置した状態で、第二の取付部材に対する縮径加工を実施することにより、可撓性膜の支持金具と仕切部材とが、第二の取付部材の内周面にて挟持固定されるようになっている。そうして、本体ゴム弾性体と可撓性膜との間に非圧縮性流体が封入された流体室が形成されると同時に、主液室と副液室とが一挙に且つ効率的に形成され得るようになっているのである。
【0005】
ところが、かかる従来の流体封入式防振装置では、可撓性膜が支持金具を有する一体加硫成形品にて構成されているため、例えば、可撓性膜がゴムの単一部材にて構成される場合に比して、支持金具を使用している分だけ、部品点数が増し、また、製造時において、支持金具を可撓性膜に対して加硫接着するための余分な工程を実施する必要があった。それ故、このような従来の流体封入式防振装置においては、製造コストと製作性とに関して、未だ改良の余地が存していたのである。
【0006】
一方、例えば、特開平8−4823号公報(特許文献3)等に明らかにされるように、ゴムの単一部材にて構成された可撓性膜を有する流体封入式防振装置も、従来から存在する。しかしながら、この流体封入式防振装置では、可撓性膜の外周部が、仕切部材と、仕切部材に対して副液室側に対向配置された、第二の取付部材とは別個の底金具との間で、第二の取付部材の軸方向において挟持固定されていた。即ち、かかる従来の流体封入式防振装置では、可撓性膜から支持金具が省略されているものの、可撓性膜を取り付けるのに、仕切部材や第二の取付部材とは別個の部材からなる底金具が必要であった。それ故、そのような従来の流体封入式防振装置においては、ゴム薄膜と支持金具との一体加硫成形品からなる可撓性膜が用いられる場合に比して、部品点数の削減が何等図られておらず、また、底金具を省略すると、可撓性膜を取り付けることができなかった。
【0007】
しかも、そのような流体封入式防振装置では、底金具が、第二の取付部材の副液室側の端部にかしめ固定されている。そのため、第二の取付部材の縮径により、仕切部材を第二の取付部材の内周面にて挟持固定する場合には、第二の取付部材に対して、縮径加工とかしめ加工の二つの加工を実施しなければならず、それによって、製作性が低下する可能性があった。また、かかる流体封入式防振装置においては、第二の取付部材に対するかしめ加工をスムーズに且つ確実に行うために、第二の取付部材の副液室側の端部に対して、軸直角方向外方に突出するショルダー部が周設されている。それ故、第二の取付部材、ひいては流体封入式防振装置の軸直角方向のサイズが、不可避的に大きくなってしまうといった問題をも内在していたのである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0022】
先ず、
図1には、本発明に従う構造を有する流体封入式防振装置の一の実施形態としての自動車用エンジンマウントが、その縦断面形態において概略的に示されている。かかる
図1から明らかなように、本実施形態の自動車用エンジンマウント(以下、単に、エンジンマウントと言う)は、第一の取付部材としての第一の取付金具10と、第二の取付部材としての第二の取付金具12を備えており、それら第一の取付金具10と第二の取付金具12とが、第二の取付金具12の軸方向(
図1の上下方向)に互いに離間配置されて、本体ゴム弾性体14により弾性的に連結されて、構成されている。
【0023】
そして、第一の取付金具10が自動車のパワーユニットに取り付けられる一方、第二の取付金具12が自動車のボデーに取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持せしめるようになっている。また、そのような装着状態下では、パワーユニット重量が及ぼされることにより、本体ゴム弾性体14が弾性変形して、第一の取付金具10と第二の取付金具12とが相互に接近して配置される。そして、かかる装着状態下において、防振すべき主たる振動が、第一の取付金具10と第二の取付金具12の接近/離隔方向(エンジンマウントの中心軸方向であって、
図1中の略上下方向)に入力されることとなる。なお、便宜上、以下の説明中、上下方向とは、
図1中の上下方向をいうこととする。
【0024】
より詳細には、第一の取付金具10は、略円柱形状を有している。この第一の取付金具10の上端部には、径方向外方に所定寸法突出し且つ周方向に連続して延びる外フランジ部15が一体形成されており、また、上端面の中央部には、軸方向に延びる雌ネジ孔16が設けられている。そして、この雌ネジ孔16に対して、図示しないパワーユニットに固設された取付ボルトが螺入されることによって、第一の取付金具10が、パワーユニットに固定的に取り付けられるようになっている。なお、
図1中、17は、位置決めピンである。
【0025】
一方、第二の取付金具12は、全体として、略円筒形状を有している。また、この第二の取付金具12にあっては、軸方向中間部に段付け部18が設けられて、この段付け部18よりも上側部分が、大径部20とされている一方、段付け部18よりも下側部分が、大径部20よりも所定寸法だけ径の小さな小径部22とされている。更に、かかる第二の取付金具12における小径部22の大径部20側とは反対側の端部となる下側開口部の周縁部には、径方向内方に所定寸法突出し且つ周方向に連続して延びる内フランジ部24が一体形成されている。
【0026】
そして、第一の取付金具10が、第二の取付金具12の上方に離間して、第二の取付金具12と略同軸上に配置されており、また、それら第一の取付金具10と第二の取付金具12との間に、本体ゴム弾性体14が介装されている。
【0027】
この本体ゴム弾性体14は、全体として、大径の略円錐台形状を呈し、大径側端面(下端面)において下方に開口する凹所26を有して、構成されている。そして、かかる本体ゴム弾性体14にあっては、小径側端面(上端面)に対して、第一の取付金具10が、外フランジ部15が一体形成される上端部を除く部分において本体ゴム弾性体14に埋め込まれた状態で、加硫接着されている一方、凹所26を取り囲む大径側端面に対して、第二の取付金具12の大径部20の内周面の全面と小径部22の内周面の上端側部分とが加硫接着されている。要するに、本体ゴム弾性体14は、第一の取付金具10と第二の取付金具12を備えた一体加硫成形品として形成されている。これによって、第二の取付金具12の上側開口部が、本体ゴム弾性体14によって流体密に覆蓋されている。
【0028】
なお、第二の取付金具12における小径部22の内周面の軸方向中間部分と下端側部分とには、それらの部分の略全面を覆う内側シールゴム層28が、本体ゴム弾性体14と一体的に形成されている。かかる内側シールゴム層28は、小径部22の下端部に一体形成された内フランジ部24の上面の全面と先端面の全面も、それぞれ被覆している。
【0029】
また、第二の取付金具12の小径部22における下端部の内側には、可撓性膜としてのダイヤフラム30が、第二の取付金具12の下側開口部(小径部22の大径部20側とは反対側の開口部)の全体を覆うように配置されている。このダイヤフラム30は、変形容易なように弛みを持たせた薄肉円板形状を有している。そして、このようなダイヤフラム30が、後述するように、第二の取付金具12の下端部に対して、その下側開口部を流体密に覆蓋するように装着されている。
【0030】
かくして、本実施形態のエンジンマウントでは、第二の取付金具12の上下両側(軸方向両側)を覆蓋する本体ゴム弾性体14とダイヤフラム30の対向面間に、非圧縮性流体31が封入された流体室32が形成されている。なお、かかる非圧縮性流体31としては、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等が採用されるが、特に後述する流体の共振作用に基づく防振効果を有利に得るために、本実施形態では、0.1Pa・s以下の低粘性流体が好適に採用される。
【0031】
また、第二の取付金具12の内部には、仕切部材34が収容配置されており、流体室32中に組み付けられている。この仕切部材34は、全体として略厚肉の円板形状を有しており、かかる仕切部材34が流体室32内で軸直角方向に広がった状態で第二の取付金具12に固定されることにより、流体室32が、仕切部材34を挟んだ上下両側に仕切られている。そして、仕切部材34の上側には、本体ゴム弾性体14の前記凹所26の内側空間からなり、壁部の一部が本体ゴム弾性体14にて構成された、主液室としての受圧室36が形成されている一方、仕切部材34の下側には、壁部の一部がダイヤフラム30で構成された、副液室としての平衡室38が形成されている。即ち、受圧室36は、振動入力時に本体ゴム弾性体14の弾性変形に伴って振動が入力されて内圧変動が生ぜしめられるようになっている一方、平衡室38は、ダイヤフラム30の変形に基づいて容易に容積変化が許容されて、内圧変化が吸収されるようになっている。
【0032】
また、流体室32を二つに仕切って、受圧室36と平衡室38とを画成する仕切部材34は、仕切部材本体40と蓋体42とが互いに重ね合わされて、組み付けられることによって形成されている。
【0033】
仕切部材本体40は、
図2乃至
図4に示されるように、硬質の合成樹脂材料やアルミニウム合金等の金属材料を用いて形成された、所定の厚さを有する略円形ブロック体からなっている。そして、この仕切部材本体40の上面の中央部には、円形凹所44が設けられており、かかる円形凹所44の底部には、大径の円形状を呈する通孔46が形成されている。
【0034】
また、仕切部材本体40の外周面には、側方に向かって開口する周溝48が、1周に満たない長さで連続して延びるように形成されている。更に、仕切部材本体40の上面の外周部には、周溝48の周方向一端部に対応位置する部位に、矩形の切欠部50が設けられている一方、下面の外周部には、周溝48の周方向他端部に対応位置する部位に、略長円状の貫通孔52が設けられている。かくして、周溝48が、その周方向の一端部において、切欠部50を通じて上方に開口し、また、周方向の他端部において、貫通孔52を通じて下方に開口している。そして、それにより、ここでは、切欠部50が、周溝48を、その周方向の一端部において上方に開口させる上側開口部54とされており、また、貫通孔52が、周溝48を、その周方向の他端部において下方に開口させる下側開口部56とされている。
【0035】
一方、蓋体42は、
図2及び
図3から明らかなように、円形の中心孔58を有する円環板からなり、硬質の合成樹脂材料やアルミニウム合金等の金属材料を用いて形成されている。また、かかる蓋体42は、仕切部材本体48の円形凹所44の内径よりも僅かに小さな外径と、円形凹所44の深さよりも所定寸法だけ小さな厚さとを有していると共に、中心孔58の径が、仕切部材本体40に設けられた円形の通孔46の径と略同一の大きさとされている。
【0036】
そして、そのような蓋体42が、仕切部材本体40に対して、中心孔58を通孔46に連通させるように、円形凹所44内に嵌入されて、円形凹所44の底面に重ね合わされた状態で組み付けられている。また、かかる組付状態下で、蓋体42の外周面と仕切部材本体40の円形凹所44の内周面とが、例えば、溶着や接着、或いは溶接等、仕切部材本体40と蓋体42の材質等に応じた接合方式により一体的に接合されている。かくして、仕切部材34が、仕切部材本体40と蓋体42との一体組付品として構成されている。そして、かかる仕切部材34の中心部に、厚さ方向に貫通する円形の透孔60が、互いに連通した中心孔58と通孔46とにて形成されているのである。
【0037】
また、そのような仕切部材34は、可動板62を有している。この可動板62は、ダイヤフラム30よりも厚い厚さと、仕切部材34の透孔60の径(仕切部材本体40の通孔46と蓋体42の中心孔58のそれぞれの径)よりも大きな径とを有するゴム板にて、構成されている。そして、このような可動板62が、その外周部において、仕切部材本体40の円形凹所44の底面の外周部と、蓋体42の下面との間で挟持固定されている。
【0038】
これにより、可動板62が、仕切部材本体40と蓋体42とにて挟持された外周部よりも中心側の部分にて、中心孔60を上部開口部側と下部開口部側とに流体密に仕切るように、仕切部材34の厚さ方向中間部に配設されており、また、そのような配設状態下で、可動板62の中心側の部分が、中心孔60内において、上下方向(厚さ方向)に弾性変形可能とされている。
【0039】
そして、
図1に示されるように、上記の如き構造とされた仕切部材34が、第二の取付金具12(流体室32)内に、第二の取付金具12と同軸上で、軸直角方向に広がり、且つ蓋体42側を上側とした状態で配置されている。また、かかる配置状態下で、後述するように、第二の取付金具12に対する絞り加工等が行われて、第二の取付金具12が縮径されることにより、仕切部材34が、内側シールゴム層28を介して、第二の取付金具12の小径部22の内周面にて挟圧保持されて、固定されている。
【0040】
また、そのような仕切部材34の流体室32内への固定状態下において、仕切部材34の上面が、受圧室44内に露呈されている一方、その下面が、平衡室46内に露呈されている。そして、かかる仕切部材34の上面に設けられた上側開口部54が、受圧室44内に開口している一方、その下面に設けられた下側開口部56が、平衡室46内に開口している。
【0041】
さらに、仕切部材34の流体室32内への固定状態下において、仕切部材34の仕切部材本体40に設けられた周溝48の側方への開口部が、周溝48の全周に亘って、第二の取付金具12の小径部22の内周面に固着された内側シールゴム層28にて流体密に覆蓋されている。これによって、かかる周溝48からなるオリフィス通路64が、仕切部材34に対して、蓋体42に設けられた上側開口部54と仕切部材本体40に設けられた下側開口部56とを通じて、受圧室36と平衡室38とに連通する状態で形成されている。そして、このようなオリフィス通路64を通じて、受圧室36と平衡室38との間での流体流動が許容されるようになっている。
【0042】
かくして、本実施形態のエンジンマウントにあっては、自動車への装着状態下で、第一の取付金具10と第二の取付金具12との間に、それらの接近/離隔方向(
図1中、上下方向)の振動が入力されると、受圧室36と平衡室38との間に相対的な圧力差が生ずることに基づいて、それら両室36,38間において、オリフィス通路64を通じての非圧縮性流体31の流動が生ずるようになっている。そして、ここでは、オリフィス通路64が、低周波数域にチューニングされており、それによって、低周波大振幅振動が入力された際に、オリフィス通路64を通じて流動する非圧縮性流体31の共振作用に基づいて有効な防振効果が発揮されるようになっている。
【0043】
また、本実施形態のエンジンマウントにおいては、仕切部材34に対して、その中心孔58を上下方向に二分するように配設された可動板62の上面が、かかる中心孔58の上側の開口部を通じて受圧室36内に露呈されている一方、その下面が、中心孔58の下側の開口部を通じて平衡室38内に露呈されている。これによって、可動板62が、受圧室36と平衡室38との間の内圧差に基づいて受圧室36側や平衡室38側(上下方向)に弾性変形するようになっており、以て、中乃至高周波小振幅振動が入力されたときに、そのような可動板62の弾性変形作用に基づいて、有効な低動ばね効果が発揮されて、優れた振動絶縁効果が得られるようになっている。
【0044】
そして、本実施形態のエンジンマウントにあっては、第二の取付金具12に対して、その下側開口部を流体密に覆蓋するように固定されて、仕切部材34との間で平衡室38を形成するダイヤフラム30が、特別な構造を有しており、また、そのようなダイヤフラム30の第二の取付金具12への固定構造が、ダイヤフラム30を、その外周部において、仕切部材34と第二の取付金具12との間で挟持固定するようにした、従来装置には見られない特殊な構造とされているのである。
【0045】
より詳細には、
図1、
図5及び
図6から明らかなように、ダイヤフラム30は、従来装置に装着される、リング状の支持金具等が加硫接着された一体加硫成形品からなるダイヤフラムとは異なって、支持金具等を何等有しない、ゴムの単一部材からなる薄肉で円形のゴム板にて構成されている。
【0046】
そして、かかるダイヤフラム30にあっては、その上面、つまり、ダイヤフラム30の第二の取付金具12への固定状態下で受圧室36側となる面の外周縁部(外周部)に対して、外側周壁部66が、一体形成により立設されている。この外側周壁部66は、ダイヤフラム30の厚さ方向に延びる中心軸に沿って上方に所定高さで突出し且つ周方向に連続して延びるゴムの円環体又は円筒体からなり、ダイヤフラム30の外周縁部よりも中心側部分と略同一の厚さを有している。これによって、ダイヤフラム30の外周縁部が、その他の部分よりも硬くされている。
【0047】
また、そのような外側周壁部66の先端側の内周面部分には、第二の係合部としての環状係合凸部68が、一体的に周設されている。この環状係合凸部68は、ダイヤフラム30の中心軸側に向かって所定高さで突出し、且つ外周側周壁部66の周方向に連続して延びる突条形態を有している。そして、かかる環状係合凸部68にあっては、その突出先端面(内周面)が、上方に向かって(外周側周壁部66の先端に向かって)次第に拡径するテーパ面からなる案内面70とされている一方、その下側側面(下面)が、水平に広がる平坦な円環面からなる係合面72とされている。
【0048】
さらに、外側周壁部66の基部側の内周面部分には、環状凹部74が、形成されている。この環状凹部74は、環状係合凸部68の係合面72と、係合面72に対向位置するダイヤフラム30の外周部の上面部分とを両側の側面とし、且つ外側周壁部66の環状係合凸部68よりも基部側の内周面部分を底面とした凹溝形態を呈している。また、かかる環状凹部74の底面は、一定の径をもって上下方向に延びる円筒面形状とされている。
【0049】
一方、
図1、
図2及び
図4に示されるように、仕切部材34(仕切部材本体40)の下面、つまり、仕切部材34の流体室32内への配置状態下で平衡室38側となる面の外周部には、挟持用突起76が、一体形成で立設されている。この挟持用突起76は、仕切部材34の中心軸に沿って下方に突出し且つ周方向に連続して、仕切部材34と同軸的に延びる円環状乃至は高さの低い円筒状を呈している。
【0050】
そのような挟持用突起76の先端側の外周面部分には、第一の係合部としての環状係合凸部78が、一体的に周設されている。この環状係合凸部78は、仕切部材34の中心軸側とは反対側に向かって所定高さで突出して、挟持用突起76の周方向に連続して延びる突条形態を有している。そして、かかる環状係合凸部78にあっては、その突出先端面(外周面)が、一定の径をもって上下方向(軸方向)に延びる円筒面からなる先端側挟持面80とされている一方、その上側側面(上面)が、水平に広がる平坦な円環面からなる係合面82とされている。
【0051】
さらに、挟持用突起76の基部側の外周面部分には、環状凹部84が、形成されている。この環状凹部84は、挟持用突起76の係合面82と、係合面82に対向位置する仕切部材34(仕切部材本体40)の外周部の下面とを両側の側面とし、且つ挟持用突起76の環状係合凸部78よりも基部側の外周面部分を底面とした凹溝形態を呈している。
【0052】
また、かかる環状凹部84の底面が、基部側挟持面86とされている。この基部側挟持面86は、ダイヤフラム30の外周部の上面に一体形成された外側周壁部66の環状係合凸部68の案内面70に対応したテーパ面、即ち、案内面70と略同一のテーパ角度をもって、上方に向かって次第に拡径するテーパ面形状を有している。
【0053】
なお、ここでは、挟持用突起76の環状係合凸部78の幅(
図2にW
1 にて示される寸法)が、ダイヤフラム30の環状凹部74の幅(
図5にW
2 にて示される寸法)と略同一か又はそれよりも僅かに小さな寸法とされている。更に、ダイヤフラム30の環状係合凸部68の幅(
図5にW
3 にて示される寸法)が、挟持用突起76の環状凹部84の幅(
図2にW
4 にて示される寸法)と略同一か又はそれよりも僅かに小さな寸法とされている。
【0054】
そして、
図1及び
図7に示されるように、本実施形態のエンジンマウントにあっては、仕切部材34が、第二の取付金具12の小径部22の内側において流体室32内に配置された状態下で、挟持用突起76が、平衡室38側(下側)に向かって、第二の取付金具12と同軸的に延びるように配置されている。また、かかる配置状態下において、挟持用突起76の外周面、即ち、先端側挟持面80と基部側挟持面86とが、第二の取付金具12の小径部22の内周面に固着された内側シールゴム層28の内周面と対向位置している。換言すれば、挟持用突起の先端側及び基部側挟持面80,86が、第二の取付金具12の小径部22の内周面に対して、内側シールゴム層28を介して対向位置している。
【0055】
さらに、仕切部材34が上記のようにして流体室32内に配置されると共に、ダイヤフラム30が第二の取付金具12の下側開口部を覆蓋するように配置された状態下で、ダイヤフラム30の外側周壁部66が、互いに対向配置された仕切部材34の挟持用突起76の先端側及び基部側挟持面80,86と、第二の取付金具12の小径部22の内周面に固着された内側シールゴム層28の内周面との間に挿入配置されている。また、そのような挿入状態下で、ダイヤフラム30の外側周壁部66の環状係合凸部68が、仕切部材34の挟持用突起76の環状凹部84内に突入している一方、挟持用突起76の環状係合凸部78が、外側周壁部66の環状凹部74内に突入している。更に、外側周壁部66の係合面72と挟持用突起76の係合面82とが、前者を上側にした状態で、上下方向(第二の取付金具12の軸方向)において互いに係合している。
【0056】
そして、かくの如きダイヤフラム30の外側周壁部66と仕切部材34の挟持用突起76の配置状態下において、後述するように、仕切部材34を第二の取付金具12の小径部22にて挟圧固定するために、第二の取付金具12が縮径されることにより、ダイヤフラム30の外側周壁部66が、仕切部材34の挟持用突起76の先端側及び基部側挟持面80,86と、第二の取付金具12の小径部22の内周面との間で、内側シールゴム層28を介して、挟圧保持されて、固定されている。
【0057】
また、そのような仕切部材34の挟持用突起76と第二の取付金具12との間でのダイヤフラム30の外側周壁部66の挟持固定状態下では、外側周壁部66の係合面72と挟持用突起76の係合面82とが上下方向において互いに係合していることにより、仕切部材34の挟持用突起76と第二の取付金具12との間からの外側周壁部66の抜け出しが阻止されるようになっている。
【0058】
さらに、ダイヤフラム30の外側周壁部66の挟持固定状態下では、第二の取付金具12の縮径により、第二の取付金具12の下側端部に一体形成された内フランジ部24が軸直角方向内方に変位している。そうして、かかる内フランジ部24の先端側の上面部分が、ダイヤフラム30の外周部の下面に対して、内側シールゴム層28を介して上下方向に係合している。これによっても、仕切部材34の挟持用突起76と第二の取付金具12との間からの外側周壁部66の抜け出しが阻止されるようになっている。
【0059】
このように、本実施形態のエンジンマウントにあっては、ゴムの単一部材からなるダイヤフラム30の外周縁部に一体形成された外側周壁部66が、仕切部材34の挟持用突起76と第二の取付金具12との間において、抜け止め対策が施された状態で挟持固定されており、それによって、第二の取付金具12の下側開口部が、ダイヤフラム30にて確実に流体密に覆蓋されるようになっているのである。
【0060】
ところで、上記如き構造とされた本実施形態のエンジンマウントは、例えば、以下のような手順に従って作業が進められることにより、有利に製造されることとなる。
【0061】
すなわち、先ず、第一の取付金具10が、筒状の第二の取付金具12の大径部20側の開口部の側に、第二の取付金具12と軸方向に離間配置された状態で、それら第一の取付金具10と第二の取付金具12とが本体ゴム弾性体14にて相互に連結されて、第二の取付金具12の大径部20側の開口部が流体密に覆蓋されてなる中間成形体88(
図8参照)を、公知の金型成形等による一体加硫成形を実施し、作製して、準備する。
【0062】
また、その一方で、
図2乃至
図4に示される如き構造を有する仕切部材34と、
図5及び
図6に示される如き構造を有するダイヤフラム30とを、それぞれ別途に作製乃至は成形して、準備する。
【0063】
次いで、
図8に示されるように、中間成形体88と仕切部材34とダイヤフラム30とを、所定の収容器内に収容された非圧縮性流体31中に状態で浸漬すると共に、かかる非圧縮性流体31中に予め配置された支持台92に、中間成形体88を上下反転させた状態で載置して、支持させる。
【0064】
その後、
図9に示されるように、支持台92に支持された中間成形体88における第二の取付金具12の小径部22側の開口部を通じて、仕切部材34を、かかる小径部22内に収容して、小径部22の内側が、上下方向に仕切られるように配置する。また、それと共に、ダイヤフラム30も、第二の取付金具12の小径部22側の開口部を通じて、小径部22内に収容配置する。
【0065】
そして、そのような仕切部材34とダイヤフラム30の小径部22内への収容下において、仕切部材34を、挟持用突起76が上方に向かって突出する向きとした状態で、仕切部材本体40の蓋体42側の面の外周部を、本体ゴム弾性体14の大径側の端面(第一の取付金具10の固着側とは反対側の端面)に載置するように重ね合わせて、位置させる。また、かかる仕切部材34の挟持用突起76に対して、ダイヤフラム30の外側周壁部66を外嵌する。更に、そのような外嵌状態下で、外側周壁部66の環状係合凸部68を挟持用突起76の環状凹部84内に、また、挟持用突起76の環状係合凸部78を外側周壁部66の環状凹部74内に、それぞれ突入させると共に、外側周壁部66の係合面72と挟持用突起76の係合面82とを上下方向において相互に係合させる。
【0066】
かくして、第二の取付金具12の小径部22内において、仕切部材34とダイヤフラム30とを相互に組み付ける。また、それと共に、ダイヤフラム30の外側周壁部66を、仕切部材34の挟持用突起76の外周面からなる先端側及び基部側挟持面80,86と、第二の取付金具12の小径部22の内周面及び内側シールゴム層28の内周面との間に挿入して、第二の取付金具12の小径部22側の開口部がダイヤフラム30にて覆蓋されるように、ダイヤフラム30を配置する。
【0067】
なお、前記したように、仕切部材34の外側周壁部66は、その環状係合凸部68の先端面がテーパ面からなる案内面70とされており、また、ダイヤフラム30の外周縁部が、外側周壁部66の形成によって、他の部分よりも硬くされている。そのため、挟持用突起76の環状係合凸部78の先端側挟持面80を、外側周壁部66の環状係合凸部68の案内面70に摺動させつつ、挟持用突起76を外側周壁部66内に押し込むようにするだけで、外側周壁部66を挟持用突起76に外嵌する操作と、それら外側周壁部66と挟持用突起76の各係合面72,82の係合操作とが、極めて簡単に且つスムーズに実施される。
【0068】
本工程では、仕切部材34とダイヤフラム30とが、非圧縮性流体31中に浸漬された状態で、第二の取付金具12の小径部22内で相互に組み付けられていたが、それら仕切部材34とダイヤフラム30とを、非圧縮性流体31中に浸漬した状態で、第二の取付金具12の外部において相互に組み付けても良く、或いは非圧縮性流体31に浸漬する前に、相互に組み付けても良い。
【0069】
次に、
図10に示されるように、公知の絞り型94を用いて、第二の取付金具12に対する八方絞り等の縮径加工を実施する。これにより、仕切部材34を第二の取付金具12の小径部22の内周面にて挟持固定する。また、それと同時に、ダイヤフラム30の外側周壁部66を、仕切部材34の挟持用突起76の先端側及び基部側挟持面80,86と第二の取付金具12の小径部22の内周面との間で、内側シールゴム層28を介して挟持固定する。
【0070】
かくして、仕切部材34を間に挟んだ両側に、受圧室36と平衡室38とがオリフィス通路64を通じて互いに連通した状態で形成されてなる目的とするエンジンマウントを得るのである。
【0071】
このように、本実施形態のエンジンマウントにあっては、ダイヤフラム30がゴムの単一部材にて構成されているにも拘わらず、かかるダイヤフラム30の外周縁部に一体的に立設された外側周壁部66が、仕切部材34の挟持用突起76と第二の取付金具12の小径部22との間で挟持固定されることにより、第二の取付金具12の小径部22側の開口部が、ダイヤフラム30にて流体密に確実に覆蓋されて、仕切部材34を間に挟んだ両側に受圧室36と平衡室38とが形成されるようになっている。
【0072】
それ故、かかるエンジンマウントでは、従来装置とは異なって、ダイヤフラム30に対して支持金具を加硫接着する必要が解消され、それによって、部品点数の削減が有利に図られ得ると共に、ダイヤフラム30に支持金具を加硫接着するための工程も効果的に省略され得る。また、仕切部材34を第二の取付金具12の内周面に挟持固定させるために実施される第二の取付金具12の縮径加工によって、ダイヤフラム30の外側周壁部66が、仕切部材34の挟持用突起76と第二の取付金具12の小径部22との間で挟持固定されるところから、ダイヤフラム30を第二の取付金具12に取り付けるためだけの特別な操作を実施する必要がなく、そのような操作を行うための手間やコストが有利に省かれ得る。
【0073】
さらに、本実施形態のエンジンマウントにおいては、ゴムの単一部材からなるダイヤフラム(30)を、仕切部材(34)と、第二の取付金具12とは別個の底金具等との間で挟持固定するようにした従来装置とは異なって、ゴムの単一部材からなるダイヤフラム30の外側周壁部66が、仕切部材34と第二の取付金具12との間で挟持固定されている。そのため、底金具等の余分な部材を使用することなく、ダイヤフラム30が確実に取り付けられ得る。これによっても、部品点数の削減が有利に図られ得る。
【0074】
また、底金具を用いる場合には、底金具を第二の取付金具(12)に対してかしめ固定することによって、ダイヤフラム(30)が底金具と第二の取付金具作業(12)との間で挟持固定されるが、本実施形態のエンジンマウントでは、ダイヤフラム30の外側周壁部66を仕切部材34と第二の取付金具12との間で挟持固定するのに、かしめ固定操作を何等行うことなく、上記のように、単に、仕切部材34を第二の取付金具12の内周面に挟持固定させる第二の取付金具12の縮径加工を実施するだけで済む。これによっても、ダイヤフラム30を固定するための操作に要する手間やコストが、有利に軽減され得ることとなる。
【0075】
しかも、本実施形態のエンジンマウントにおいては、底金具が第二の取付金具12にかしめ固定されないところから、かしめ固定を行うために、第二の取付金具12に対して軸直角方向に突出するショルダー部を形成する必要が全くない。それ故、第二の取付部材12、ひいてはエンジンマウント全体が、かかるショルダー部の形成によって大型化するようことも、効果的に回避され得る。
【0076】
従って、かくの如き本実施形態のエンジンマウントにあっては、ダイヤフラム30が、エンジンマウント全体の大型化を招くことなしに、十分に低いコストで、しかも効率的な工程の実施によって、仕切部材12と第二の取付金具12との間で固定され得る。そして、その結果として、製造コストの低下と製作性の向上とが、極めて効果的に実現され得るのである。
【0077】
また、本実施形態のエンジンマウントでは、ダイヤフラム30の上面の外周縁部に外側周壁部66が一体的に立設されていることにより、ダイヤフラム30の外周部が他の部位よりも硬くされており、また、そのような外側周壁部66が、仕切部材34の挟持用突起76と第二の取付金具12の小径部22との間に挟持固定されるようになっている。そのため、例えば、外側周壁部66を何等有しないダイヤフラム30の、中心側部分と同一硬さとされた外周部を、仕切部材34の挟持用突起76と第二の取付金具12の小径部22との間で挟持固定させる場合に比して、ダイヤフラム30の一部(外側周壁部66)を仕切部材34の挟持用突起76と第二の取付金具12の小径部22との間に配置させるための作業が、より容易に且つスムーズに実施され得る。
【0078】
また、かかるエンジンマウントにおいては、外側周壁部66の形成によってダイヤフラム30の外周部が硬くされているため、例えば、長期使用等によるダイヤフラム30の外周部のヘタリが効果的に抑制され得る。それ故、そのようなヘタリに起因して、ダイヤフラム30の弾性変形量や弾性変形後のダイヤフラム30の形状等が、使用開始当初に比べて変化してしまい、それに伴って、防振特性が変わってしまうようなことも、効果的に防止され得る。
【0079】
さらに、本実施形態のエンジンマウントでは、ダイヤフラム30の外側周壁部66に一体形成された環状係合凸部68の係合面72と仕切部材34の挟持用突起76に一体形成された環状係合凸部78の係合面82との上下方向の係合によって、挟持用突起76と第二の取付金具12との間からの外側周壁部66の抜け出しが防止されるようになっている。また、第二の取付金具12の小径部22側の端部に一体形成された内フランジ部24がダイヤフラム30の外周部に係合することによっても、挟持用突起76と第二の取付金具12との間からの外側周壁部66の抜け出しが防止されるようになっている。それ故、かかるエンジンマウントにおいては、所望の防振特性が、より長期に亘って、安定的に確保され得ることとなる。
【0080】
更にまた、本実施形態のエンジンマウントにあっては、ダイヤフラム30の外側周壁部66が、仕切部材34の挟持用突起76と第二の取付金具12との間で、内側シールゴム層28を介して挟持固定されている。即ち、ダイヤフラム30の外側周壁部66と内側シールゴム層28とが、仕切部材34の挟持用突起76と第二の取付金具12との間で相互に密接配置されている。これによって、仕切部材34と第二の取付金具12との間のシール性が、より効果的に確保され得るのである。
【0081】
次に、
図11及び
図12には、本発明に従う構造を有する流体封入式防振装置の別の実施形態としての自動車用エンジンマウントが示されている。本実施形態の自動車用エンジンマウント(以下、単に、エンジンマウントと言う)は、前記第一の実施形態に係るエンジンマウントに対して、主に、ダイヤフラムの構造が異なっている。従って、そのような本実施形態のエンジンマウントに関しては、前記第一の実施形態に係るエンジンマウントと同一の構造とされた部材及び部位について、
図1と同一の符号を
図11及び
図12に記載することにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0082】
すなわち、
図11及び
図12から明らかなように、本実施形態のエンジンマウントにおいては、ダイヤフラム30の上面の外周縁部に対して、外側周壁部66が一体的に立設されている。この外側周壁部66は、前記第一の実施形態に係るエンジンマウントのダイヤフラム30の外周縁部に一体的に立設された外側周壁部66と同一の構造を有している。
【0083】
また、かかるダイヤフラム30にあっては、その上面の外周部のうち、外側周壁部66の形成部分よりも中心側に位置する部分に、内側周壁部96が、一体的に立設されている。この内側周壁部96は、外側周壁部66よりも所定寸法だけ低い高さと、外側周壁部66の厚さと略同一の厚さとを有する環状乃至は高さの低い円筒状を呈している。そして、ダイヤフラム30の上面の外周部において、外側周壁部66の基部側の内周面部分(環状凹部74の底面)に対して、仕切部材34の挟持用突起76の環状係合凸部78が形成される先端部の厚さと略同一の距離だけ離間した位置に、対向位置して、鉛直上方に延びるように配置されている。換言すれば、内側周壁部96は、ダイヤフラムの上面の外周縁部よりも中心側に偏倚した位置に、外側周壁部挟持用突起76の先端部の厚さと同一寸法の間隔を隔てて、外側周壁部66と同軸的に延びるように立設されているのである。
【0084】
そして、そのように、外側周壁部66と内側周壁部96とが、ダイヤフラム30の上面の外周縁部とそれよりも中心部側において、互いに所定の間隔を隔てて同軸的に延びるように立設されていることで、ダイヤフラム30の外周部が、それよりも中心側の部分よりも、更に有利に硬くされている。また、ダイヤフラム30の上面の外周部に対して、外側周壁部66と内側周壁部96との間に、外側周壁部66の内周面と内側周壁部96の外周面とを両側の側面とした凹溝98が、周設されている。
【0085】
かかる凹溝98は、外側周壁部66の内周面と内側周壁部96の外周面とからなる両側側面の間隔が、挟持用突起76の先端部の厚さと略同一の寸法とされている。また、外側周壁部66の内周面からなる一方の側面が、挟持用突起76の外周面(先端側及び基部側挟持面80,86)と同一の形状を有していると共に、内側周壁部96の外周面からなる他方の側面が、挟持用突起76の先端部の内周面と同一の形状を有している。これによって、挟持用突起76が、凹溝98内に嵌入可能とされている。
【0086】
そして、本実施形態のエンジンマウントにおいては、仕切部材34が、縮径された第二の取付金具12の小径部22の内周面にて挟持固定された状態下で、仕切部材34の挟持用突起76が、ダイヤフラム30の凹溝98内に嵌入されている。また、かかる状態下で、凹溝98の一方の側壁部を構成する外側周壁部66が、挟持用突起76の先端側及び基部側挟持面80,86(外周面)と第二の取付金具12の小径部22の内周面との間で、内側シールゴム層28を介して、挟圧保持されて、固定されている一方、内側周壁部96が、その外周面において、挟持用突起76の内周面に密接している。
【0087】
かくして、本実施形態のエンジンマウントにあっても、ダイヤフラム30の外側周壁部66が、仕切部材34の挟持用突起76と第二の取付金具12の小径部22との間で挟持固定されており、それによって、前記第一の実施形態に係るエンジンマウントにおいて奏される作用・効果と同様な作用・効果が有効に享受され得る。
【0088】
そして、本実施形態においては、特に、外側周壁部66と内側周壁部96とが、ダイヤフラム30の上面の外周部に同軸的に延びるように立設されて、ダイヤフラム30の外周部が、それよりも中心側の部分よりも効果的に硬くされている。それ故、ダイヤフラム30の凹溝98内に、挟持用突起76を嵌入させる操作が容易となっており、また、それによって、前記したような仕切部材34とダイヤフラム30とを組み付ける作業や、非圧縮性流体31中で、ダイヤフラム30の外側周壁部66を、仕切部材34の挟持用突起76と第二の取付金具12の小径部22との間に挿入させるように配置する作業が、より一層容易に且つスムーズに実施され得る。そして、それらの結果として、エンジンマウントの製作性の向上が、更に効果的に高められ得るのである。
【0089】
また、ダイヤフラム30の外周部が、それよりも中心側の部分よりも十分に硬くされているところから、例えば、長期使用等によるダイヤフラム30の外周部のヘタリにより、ダイヤフラム30の弾性変形量や弾性変形後のダイヤフラム30の形状等が、使用開始当初に比べて変化してしまい、それに伴って、防振特性が変わってしまうようなことも、より一層効果的に防止され得る。
【0090】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態に関する具体的な記載によって、何等限定的に解釈されるものではない。
【0091】
例えば、挟持用突起76は、仕切部材34の平衡室38(副液室)側の面に対して、第二の取付金具12と同軸的に延びるように一体形成されておれば、その形状等が、特に限定されるものではない。従って、環状係合凸部78等を省略して、挟持用突起76の外周面の形状を円筒面形状やテーパ面形状としても、何等差し支えない。
【0092】
また、挟持用突起76は、仕切部材34の仕切部材本体40に対して、必ずしも一体形成により立設されている必要はない。例えば、挟持用突起76を仕切部材34とは別体で形成して、かかる挟持用突起76を仕切部材34の平衡室38側の面に固着したり、係り止めしたりすることも可能である。
【0093】
さらに、例えば、ダイヤフラム30の外周部に外側周壁部66を何等形成せずに、かかるダイヤフラム30の外周部を、仕切部材34の挟持用突起76と第二の取付金具12との間で、内側シールゴム層28を介して、或いはそれを介さずに、挟持固定しても良い。
【0094】
なお、ダイヤフラム30の外周部に外側周壁部66を形成する場合にあっても、かかる外側周壁部66の形状は、特に限定されるものではない。外側周壁部66は、その内周面形状が、例えば、仕切部材34の挟持用突起76の外周面形状に対応して、適宜に変更され得るのである。
【0095】
また、仕切部材34の構造も、従来より公知の構造が適宜に採用され得る。そして、仕切部材34から可動板62を省略することも可能である。
【0096】
加えて、本発明を自動車のエンジンマウントに適用したものの具体例を示したが、本発明は、その他、自動車用ボデーマウントや自動車以外の各種装置に用いられる流体封入式防振装置に対して、何れも、有利に適用され得ることは、勿論である。
【0097】
その他、一々列挙はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。