【課題を解決するための手段】
【0017】
そこで、本発明のこれらの目的および以下の記載に従ってさらに容易に明らかになるさらなる目的を実施するために、本発明の電極は、ナノ粒子形態の電子活性材(EAM)と、マトリクスとを含み、好ましくは、これらから成り、このマトリクスは、内部に組み込まれるグラフェンフレークと、任意にリチウムイオン源と、EAMに応じて任意に(H
2V
3O
8、例えば硫酸バナジウム(IV)に対する)安定剤とを含む熱分解生成物から成るという特徴を呈する。
【0018】
熱分解生成物は、好適な熱分解性の物質を熱分解することによって、例えば、本発明にも属する方法で得られる。
【0019】
良好な結合を得るため、最終生成物、即ち活性電極におけるナノ粒子材料に対するマトリクスの重量割合は、活性電極、即ち、電流集電体も電子活性コーティングもそれぞれ有していない電極の重量に対して10重量%、好ましくは5±2重量%である。マトリクスは、グラフェンに対する非晶質炭素材の比が約2:1〜約1:1、好ましくは約3:2でグラフェン酸化物を含む。
【0020】
ナノ粒子の形態で存在しているのであれば、EAMとしてあらゆるカソード材とアノード材を使用してもよい。第1の充電又は放電の前では、EAMは、Li
xH
2-xV
3O
8であり、式単位では、3つのV原子のうち少なくとも1つの酸化状態が4+であり、xは0.1〜1.5であり、通常は約1であるのが大変好ましい。この黄緑色のEAMは、第1の充電時に、リチウム(式単位ではLi
x)の少なくとも一部を除去できるという有利な特徴を有する。
【0021】
粒子系、特に繊維系の電極材を作製するための方法は、
(A)分散剤を含む電子活性前駆体物質を調製するステップと;
前記懸濁液は、
(i)可溶性リチウム源及びヒドロキシド源、特に水酸化リチウムと、
(ii)水溶性であり、電子活性材と混合されて熱分解性である、少なくとも部分的に有機性の物質と、
(iii)電子活性材(EAM)と、
(iv)グラフェン酸化物(GO)とを含有しており、
(B)液相から固体状の電子活性前駆体物質を分離するステップと、
(C)ステップ(B)の電子活性前駆体物質を乾燥させるステップと、
(D)ステップ(C)の電子活性前駆体物質を熱分解して活性電極材を得るステップと、
任意に、
(E)ステップ(B)の電子活性前駆体物質を基材、特に、電流集電体に塗布する、及び/又は、活性電極材を切削して成形し、電流集電体に活性電極材を配置するステップと、から構成される。
【0022】
さらに、そのような電極は、少なくとも1つのセパレーターで電極を覆い、電解質でセルを満たし、セルにアノードを設置し、セルを密閉することによって、セルに加工してもよい。
【0023】
以下に、使用する用語のいくつかをさらに定義する。
電子活性前駆体物質とは、熱分解ステップ前の含水物質又は乾燥物質である。
電子活性コーティング、活性電極又は活性電極材とは。それぞれ、電極として使用できる状態の熱分解された物質、又は電流集電体を有していない電極である。
【0024】
使用されるEAMに応じて、電極調製時に、例えば可溶性であり、例えば硫酸化したバナジウム(IV)などの好適な酸化状態にある金属を含む金属化合物などの安定剤を添加して、H
2V
3O
8を安定化させることによって、EAMを安定化させることが、有利であり、又は、必要でさえありうる。
【0025】
第1の特定の実施形態では、粒子系、特に繊維系の電極材を作製するための方法は、
(a)リチウム源及びヒドロキシド源、特に水酸化リチウムと、水溶性であり、電子活性材と混合されて熱分解性である、少なくとも部分的に有機性の物質とを含む溶液を調製するステップであって、その溶液は、有機溶媒及び/又は水、好ましくは水に、有機化合物、リチウム源及びヒドロキシド源を溶解することによって調製されるステップと、
(b)pHが確実に8〜10となるように維持しながら、グラフェン酸化物の水性分散剤/溶液を添加するステップと、
(c)ステップ(b)で調製された分散剤に電子活性材(EAM)を分散して均質化するステップと、
(d)圧力が増大した条件下で、グラフェン酸化物のリチウム化、自己集合及びグラフェンへの加熱分解のための水熱ステップを実施し、分散剤を含む電子活性前駆体物質を得るステップであって、前記分散剤は、高密度固体が浮遊する黒色の液体形態にあるステップと、
(e)洗浄しないで、液相から電子活性前駆体物質を分離するステップと、
(f)ステップ(e)の電子活性前駆体物質を基材、例えば電流集電体に塗布するステップと、
(g)電子活性前駆体物質を乾燥させるステップと、
(h)電子活性前駆体物質を熱分解して電極を得るステップと、を含む。
【0026】
第2の特定の実施形態では、本発明の方法は、
(a)有機溶媒及び/又は水、好ましくは水に、任意に安定化させたEAMを分散するステップと、
(b)グラフェン酸化物溶液を添加するステップと、
(c)ステップ(b)で得られた懸濁液を凍結するステップと、
(d)温めることによって、凍結した懸濁液を、好ましくは室温(RT)に解凍するステップと、
(e)リチウム源及びヒドロキシド源、特に水酸化リチウムと、水溶性であり、電子活性材と混合されて熱分解性である、少なくとも部分的に有機性の物質とを添加するステップと、
(f)電子活性前駆体物質を含む懸濁液が濃青色になるまで待ってから、電子活性前駆体物質を回収するステップと、
(g)初めに、有機溶媒及び/又は水の沸点未満の温度、例えば室温で、次に、有機溶媒及び/又は水の沸点超の温度で電子活性前駆体物質を乾燥させるステップと、
(h)乾燥した電子活性前駆体物質を熱分解して活性電極材を得るステップと、
(i)少なくとも30分間、高温の活性電極材を脱気し、(この脱気時間の間に)活性電極材を冷却するステップと、任意に、
(j)電極材を切削して成形し、電流集電体に配置するステップと、を含む。
【0027】
好適な熱分解物質は、約150〜約350℃、好ましくは約200℃で熱分解可能であり、カソード電子活性材(EAM)の場合は、特に、ヒドロキシカルボン酸及び糖を酸化し、アノードEAMの場合は、特に、ポリアニリンなどの酸素含有量の低い有機物質を還元する物質である。
【0028】
反応は、水中で実施されるのが好ましい。しかし、感水EAMの場合には、別の溶媒、例えば、水混和性の非プロトン性極性溶媒を使用してもよい。また、明細書において、溶媒という用語は、2つ以上の溶媒の混合物を含意する。非プロトン性極性溶媒の例には、アセトニトリル及び/又はテトラヒドロフランがある。水は、溶媒という用語には属していない。
【0029】
物質を含む有機部分は、ラクトースのような熱分解性糖などのあらゆる熱分解性物質であってもよいが、リチウム塩、特に、乳酸リチウム、クエン酸リチウムなどのヒドロキシカルボン酸リチウム、又は、リチウム化合物を含む別の熱分解性アニオンが好ましく、乳酸リチウムであるか、又は、乳酸リチウムを含むのが好ましい。乳酸リチウムは、熱分解を受けるための結合剤前駆体としての、及びリチウム源の一部としての役割を同時に果たす。ヒドロキシド源も存在する必要があることから、別の好適なリチウム源は、ヒドロキシド源の少なくとも一部としての役割を同時に果たす水酸化リチウムである。EAMが、H
2V
3O
8又は後のステップでLi
xH
2-xV
3O
8に変換されるLi
xH
2V
3O
8などの部分的にリチウム化された形態(式中、xは0.1〜1.5、好ましくは0.5〜1.5である)である場合は、ステップ(a)で調製された分散剤は、安定剤としてバナジウム(IV)源も含む。好ましい実施形態において、本発明の方法では、Li
xH
2-xV
3O
8(式中、xは0.1〜1.5、通常約1である)などの部分的にリチウム化されたH
2V
3O
8が、使用されるか、又は、直接生成される。
【0030】
ステップ(b)で使用されるグラフェン溶液は、欧州特許出願公開第2256087号に従って調製することができ、その開示内容は、本願明細書の理解に役立つものである。特定の実施例は、本願明細書中の実験の説明部分に記載されている。
【0031】
電子活性粒子は、熱分解された物質に基づく結合剤によって共に接着される。さらに、熱分解された物質、例えば、熱分解されたラクテートに関して、結合剤マトリクスは、グラフェンと、任意に、かつ、好ましくは、リチウム若しくはリチウム並びに遷移金属、例えばバナジウムとを含み、又は、熱分解された物質と、グラフェンと、任意に、かつ、好ましくは、リチウム若しくはリチウム並びにバナジウムなどの遷移金属から成ってもよい。主に、熱分解された物質は、非晶質炭素材によって形成されるが、酸素及び水素を含有する反応生成物を少量含んでもよい。
【0032】
良好な結合を得るため、最終生成物、即ち活性電極中のナノ粒子材料に対するマトリクスの重量割合は、少なくとも約2重量%であり、少なくとも3重量%が好ましく、上限は、活性電極、即ち、電流集電体も、電子活性コーティングもそれぞれない電極の重量に対して10重量%超えないようにする必要があり、5±2重量%が好ましい。また、これらの値は、結合剤の削減された、又は低い含有量を表す。最終的な電極において5±2重量%となるようにするためには、約5〜15mol%、好ましくは7〜13mol%、さらに好ましくは10mol%の熱分解性物質が使用され、グラフェンに対する非晶質炭素材の比が約2:1〜約1:1、好ましくは約3:2となるのに適した量でグラフェン酸化物が使用される。
【0033】
EAMが、ナノ粒子の形態で使用され、熱分解性物質が、それぞれアノード又はカソードに対して好適に選択されるのであれば、上に記載する結合方法は、あらゆるカソード材及びアノード材にも適用してもよい。そのようなEAMの例を以下に示す。
【0034】
カソード材は、酸化材料、特に、例えば、Li
xTPO
4、Li
xTSiO
4、Li
xTBO
3(式中、T=Mn、Fe)、Li
4V
3O
8(非特許文献5)、NaV
3O
8(非特許文献6)、Li
1.3-yCu
yV
3O
8(非特許文献7)などの酸化物材料、Li
xFePO
4、Li
xCoO
2、Li
xMn
2O
4、Li
x(Mn
uCo
vNi
yAl
z)O
2(式中、u+v+y+z≒1)と、Li
xH
2-xV
3O
8(式中、xは0〜1.5、好ましくは0.1〜1.5である)などである。
【0035】
アノード材は、Li
xC
6及びリチウム合金などの還元材料である。
【0036】
1つの好適なカソード材は、特に、部分的にリチウム化された形態のH
2V
3O
8であり、つまり、Li
xH
2-xV
3O
8である。
【0037】
Li
xH
2-xV
3O
8は、前述したように、又は、以下の実施例の1つで示すように、本発明の方法で調製してもよく、即ち、リチウム含有物質は電子活性前駆体物質の調製時に直接生成してもよい。
【0038】
例えば、第1の特定の実施形態において、圧力を増大することが望ましい場合、反応容器は密封される。均質化は、例えば、超音波及び/又は振盪によって実施される。第1の特定の実施形態のステップ(d)などのように、水熱ステップが実施される場合、温度は通常、150℃など、140〜160℃であり、そのような水熱ステップに必要な時間は通常、1.5時間など、約1〜2時間である。この水熱ステップの間、容器内の圧力は、グラフェン酸化物(GO)のリチウム化、自己集合及びグラフェンへの加熱分解が起こる間に、約3〜4バールに増大することが認められている。
【0039】
水熱ステップでは、懸濁液は、高密度固体が浮遊する黒色の液体に変化する。その後、この高密度固体浮遊物質は、液相から分離された後に、基材、特に電流集電体に塗布される電子活性前駆体物質である。液相からの固相のこの分離は、洗浄しないで実施されることが大変好ましい。
【0040】
電流集電体(又は他の基材)に塗布されると、残存液は、例えば、紙又はティッシュペーパーを電流集電体の固体析出物に押し付けても乾いたままとなるまで、紙又はティシュペーパーに染み込ませることによって除去される。これは、例えば、紙又はティッシュペーパーで覆ったフラットプレスによってバッチ式に、又は、例えば、紙又はティッシュペーパーで覆ったロール又はロールシステムによって連続的に実施してもよい。この乾燥法には、電極の圧縮が同時に達成されるという利点がある。
【0041】
次に、電極は、さらに乾燥、例えば、空気乾燥される。この乾燥ステップにおける温度は、存在する溶媒の沸点未満である必要があり、水の場合は、85℃など、80〜90℃である。これらの温度では、約100μmの層厚さを得るためには、乾燥時間が約10分あれば十分であるとわかった。乾燥時間は、層厚さに依存しており、50〜500μmの好ましい範囲に対しては、約5〜約60分である。次いで、最後のステップ、熱分解ステップは、好適に部分的にリチウム化されたH
2V
3O
8に対しては、例えば、220℃など、200〜250℃の熱分解温度で実施される。このステップの間、有機物質、例えばラクテートは、主に非晶質炭素材に対して反応する。大気中で熱分解ステップを実施してもよく、少なくとも5分かかる。冷却は、高温の電極を真空処理し、次に、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスによって処理し、再び真空処理することによって実施される。真空処理が後に続く不活性ガス処理は、1回より多く実施してもよい。従って、冷却は、真空下で継続される。少なくとも実験室規模における不活性ガス処理及び真空処理に適した容器は、グローブボックスである。冷却時及び冷却後の脱気は、第1の特定の実施形態では少なくとも1時間実施され、第2の特定の実施形態では少なくとも30分間実施され、揮発性熱分解生成物の除去を行う。
【0042】
熱分解ステップの間に適用されうる温度が低いのは、任意に、かつ、好ましくは、部分的にリチウム化されるH
2V
3O
8などの特定のEAMの温度を下げる効果に、少なくとも部分的に起因する。
【0043】
電子活性材及び任意に結合剤に関する粒子、微粒子という用語は、ナノ粒径又はマイクロ径粒子、特に、他の寸法より少なくとも約20倍超の一寸法を有する伸長粒子を表す。また、他の寸法より少なくとも約20倍超の一寸法を有するこのような粒子は、繊維とも呼ばれる。例えば、非伸長粒子の通常の粒径は、500nm未満であり、特に、ナノ粒子は、5〜500nm、好ましくは、5〜400nm、さらに好ましくは20〜300nmの平均粒径を有する。伸長粒子の場合では、好適な寸法は、幅が200nm未満、好ましくは約100nmであり、長さが最大約100μm、好ましくは約10μmである。
【0044】
繊維が長過ぎる場合は、分散時にすりつぶして繊維を短くしてもよい。
【0045】
第2の特定の実施形態では、Li
xH
2-xV
3O
8(式中、x=0〜1.5、好ましくは0.1〜1.5)が使用される場合、この化合物は、硫酸バナジルの添加によって安定化させるのが好ましい。好ましい実施形態では、硫酸バナジルが水に溶解され、次に、H
2V
3O
8が添加され、分散される。次に、GO溶液が、攪拌しながら滴加される。
【0046】
第2の特定の実施形態では、少なくとも部分的に熱分解性の有機化合物、好ましくは、乳酸リチウム、リチウム及びヒドロキシド源、例えば水酸化リチウムを添加する前に、懸濁液を凍結し、解凍することがさらに有利であることがわかっている。これらの2つの物質を添加する好ましい順序は、最初にラクテートであり、ラクテートが溶解したら、水酸化リチウムを添加する。
【0047】
次に、得られた青色の懸濁液は、濾過され、室温で予め乾燥され、その後、水の沸点超で乾燥する。次に、乾燥した電子活性前駆体物質は、熱分解温度で作動する熱分解オーブンに移される。次に、そのような熱分解された物質は、任意に、1又は複数の脱気/ガス添加サイクルによって確立される不活性ガス雰囲気中で、少なくとも30分間脱気される。この排気時間の間に、活性電極は周囲温度に冷却される。
【0048】
電極の最適化は、炭素でコーティングされ、自己組織化された、好ましくは、部分的にリチウム化された電極材を作成する最適化された方法に関し、セルが組み立てられる際に材料の電気化学的性能が改善されている。
【0049】
すでに上に記載したように、本発明の方法で使用されるための好適なEAMは、H
2V
3O
8であり、小さい繊維の形態で天然に存在している。さらに好適なEAMは、電極調製処理の間に、部分的にリチウム化されるH
2V
3O
8であり、Li
xH
2-xV
3O
8(式中、xが0.1〜1.5であり、好ましくは0.5〜1.5であり、xが1に近いことがさらに好ましい)が得られる。この部分的にリチウム化されたEAMは、バッテリー内でLi
yH
2-xV
3O
8に変換することができ、式中(それぞれ充電又は放電に応じて)、xは上に定義するとおりであり、yは0〜4.5である。部分的にリチウム化されたEAMを使用することによって、組み込まれるいくつかのリチウムには「ストレスが無く」、充電放電サイクル時の仕事量が減少する。
【0050】
本発明のカソードの良好な特性は、Li
xH
2-xV
3O
8が、熱分解された物質、例えば、主にカーボンを含み、酸素、水素及びリチウムも含む可能性のある物質のコーティングを実施するリチウムイオンでコーティグされていることによるものと思われる。
【0051】
あらゆる理論によって制約されることを意図せず、発明者らは、本発明のマトリクスによる便益が、マトリクス物質の量が低いということのみならず、ナノ粒子カーボン及び/又はグラファイトグラフェン層、むしろグラフェンフレークの代わりに、粒子より弾性が高く、低重量及び高表面積にもかかわらず、いくつかのEAMナノ粒子に広がり、熱分解された導電層に埋め込まれる電子導電性「充填剤」として使用されるという事実であることも前提としている。
【0052】
従来技術に関するH
2V
3O
8と比較すると、本発明のLi
xH
2-xV
3O
8カソードは、サイクルの安定性(又はサイクルの各回数)、電気容量及び高電力負荷に関して、かなり良好な結果をもたらす。本発明のカソードは、最大2C(即ち、約800A/kg)の電流密度における電子活性材の電気容量が400Ah/kgであるなどの、極めて高い電流速度能力を示している。驚くべきことに、電流範囲の負荷が20〜2000A/kgであれば、電気容量の損失の可能性がほぼないことが判明した。
【0053】
特に、本発明のLi
xH
2-xV
3O
8カソードは、30サイクルの間ほぼ理論上のサイクル容量が得られ、電気容量は、2番目のサイクルでは、430Ah/kgなどの少なくとも400Ah/kgであり、20サイクル後の電気容量は依然として400Ah/kg超であり、30サイクル後でも依然として約380Ah/kgであり、これは、材料が、20サイクルを超えてもほぼ一定(1C)であることを意味することを特徴とする。さらに、カソードは、プラトーが3.5から4.2ボルトに延長することを特徴とする。実際に使用可能な電気容量は、250〜350Ah/kg(約300A/kgの1Cレート)である。このように広範囲であるのは、電気容量が材料配置に依存しているという事実による。2.7V平均では、実用特定電荷が410Ah/kgであり、1107Wh/kgの単一電極特有のエネルギーを生じさせる。従って、バッテリー全体で約400Wh/kgを実現し、これは今日の市販のバッテリーのおよそ2倍である。
【0054】
測定された電極の炭素含有量は、(先の共同出願では、依然として10〜15重量%であることに比して)活性電極に対して5±2重量%であり、使用したアノードはリチウムであった。
【0055】
本発明のカソード及びアノードの大きな便益は、マトリクスの量が低いということである。ポリマーの代わりに熱分解生成物、グラファイトの代わりにグラフェンを使用することによって、マトリクスの量は、導電性充填剤粒子、例えば、グラフェンフレークの代わりにグラファイトを含む熱分解されたマトリクスを使用する先の共同出願の10〜15重量%に比して、電子活性材又は活性電極それぞれに対して、多くとも10重量%、好ましくは、5±2重量%に大幅に減少することができる。
【0056】
好適な電流集電体は、チタン、ニッケル又は(現時点で、好ましくは)グラファイトである。また、アルミニウムもありうるが、腐食性であることから、アルミニウムはあまり好ましくない。
【0057】
これらのカソード及び類似して作製されるカソード及び/又はアノードは、あらゆる充電式リチウムイオンバッテリーに使用してもよいが、電解質に関しては、炭酸エチレンと炭酸エチルメチル及び/若しくは炭酸ジメチルとの混合物中のLiPF
6、又はLiPF
6より安定性があることがわかったLiPF
3(C
2F
5)
3から選択されるのが好ましい。
【0058】
組み立てられたセルを検討すると、予期しなかった結果がいくつか得られた。組み立てられたセル(水熱法によって調製されるH
2V
3O
8電極)が、例えば約30℃で保存された状態であった場合、開路電圧(OCV)値は、4日間で約200mV減少した。減衰(電位対時間)の正確な形状は、未だに特徴付けられていない。組み立て直後、OCVは3.50Vの状態にあった。3日保存後では、OCVは3.45Vに等しく、4日保存後では、OCVは3.30Vに低下した。
【0059】
OCVの低下は、経年劣化及び/又は平衡過程に起因すると考えられる。この過程は、バッテリー性能に大きな影響を及ぼす。組み立てられたセルを30℃で3日間に対応する条件下で保存すると、理論上の電気容量(420〜450Ah/kg)値に近づく。
【0060】
また、改良された充電技術が開発された。安定したH
2V
3O
8電極は、充電放電(電位対時間)時に非対称的に挙動する特性を有する。それらの放電曲線は、3つの電気活性領域を示すが、充電時では、2つの領域のみが観察可能である。最小電位(2V)でのデインターカレーションは、充電曲線では発生しない。しかし、欠損したリチウムが2.7Vで抽出されることから、アノード容量及びカソード容量は、等しい状態である。2〜2.7Vで充電する際の電気化学的挙動は、さらに調査され、放電時に生成される相の1つに相関する可能性がないことが判明した。さらに、発明者らは、この範囲で不可逆過程が引き起こされる危険性があることを発見した。従って、発明者らは、この相を回避することを試み、充電開始時にサイクリックボルタンメトリー(CV)ステップをプログラミングすることによって、2Vでのデインターカレーションを人為的に抑制することが可能であることを発見した。この考えとは、2.7V付近で電極を素早く分極し、選択した電流で定電流充電を開始することであった。この手順によって、さらに高い電位での抽出が多くなるという利益を得て、2Vのプラトーが徐々に消失し、最終的には、2.5Vでプラトーが長く継続するようになった。この処理によって、バッテリーの保存可能期間を増大することができる。
【0061】
従って、充電は、1.6〜2.8Vの第1のサイクリックボルタンメトリー(CV)ステップと、第1のステップの直後に実施される、2.8〜4.1Vの定電流ステップであって、第1のデインターカレーションプラトーを2Vから2.5Vにシフトする、第2のステップと、の2つステップで実施するのが好ましい。
【0062】
負荷前の約15分間、完全に放電したバッテリーを保存することによって、ほとんど同じ結果又は同一の結果を得ることができる。第1の負荷ステップと同じように、保存することによって、2V超で物質平衡及び電位平衡が緩和される。
【0063】
以下の詳細な記載を考慮することによって、本発明はさらによく理解され、上に記載したもの以外の目的が明らかとなる。そのような記載は、添付の図面を参照している。