(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.導電性微粒子
本発明の導電性微粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する少なくとも一層の導電性金属層とから構成される。そして、その表面に特定の大きさのクレーターを特定の個数有し、かつその表面に存在する特定の大きさの突起部の数は一定個数未満であるという表面形状を備えている。このような特定の表面形状を有することにより、本発明の導電性微粒子は、導電性微粒子の粒子径を極めて小さくしても良好な初期抵抗を発現しうるとともに、ショートの発生も抑制され、高い接続信頼性を発揮することが可能となる。
【0014】
1−1.粒子の表面形状
本発明の導電性微粒子が表面に有するクレーターとは、粒子表面の平滑部分において一部が窪んだ部分を指し、このクレーターは、窪んだ部分と粒子表面の平滑部分との境界の少なくとも一部に角度が付いており周縁が明確になっている(すなわち稜線が存在する)点で、単なる変形によって窪んだ凹部(この場合、窪んだ部分と粒子表面の平滑部分との境界はなだらかであり明確な周縁が見られない)と区別される。クレーターは、例えば、
図1のSEM像において符号1で示される部分である。
クレーターは、通常、導電性微粒子表面の導電性金属層が部分的に不存在になることにより形成される。詳しくは、基材粒子が適度に凝集した状態で導電性金属層を形成するためのメッキを施すことにより、その後、分散されて凝集が解かれた際に、他の粒子と隣接していてメッキが施されなかった部分が表に現れてクレーターとなる。また、クレーターは、導電性微粒子表面の導電性金属層の存在量(厚み)を部分的に少なくすることにより形成されることもある。このようなクレーターは、例えば、基材粒子が適度に凝集した状態で導電性金属層を形成するためのメッキを施した後に、分散されて凝集が解かれた状態とし、その後、さらにメッキを適量施すこと等により形成できる。
【0015】
前記クレーターの数は、導電性微粒子1個あたり0.2個以上3個以下であることが重要である。クレーターの数が前記範囲であることにより、接続時の圧着による導電性微粒子の電極の上からの転がりが抑制され、導通に寄与しない導電性粒子が増えることなく、十分に低い初期抵抗を発現させることができる。クレーターの数は、好ましくは0.3個以上、より好ましくは0.4個以上であり、好ましくは2個以下、より好ましくは1個以下である。クレーターの数が多すぎると、導電性金属層が被覆されていない面積が増えるので、抵抗値が上昇し導通不良の原因となり、クレーターの数が少なすぎると、接続時の圧着による導電性微粒子の電極の上からの転がりが抑制できず、導通に寄与しない導電性粒子が増えて初期抵抗が低下することになる。
【0016】
前記クレーターの個数は、後述する導電性金属層形成時の基材粒子の凝集度合いやメッキ処理後の再分散の程度に応じて決まり(すなわち、凝集度合いが高いほど、再分散の程度が強いほど、クレーターの個数は増える)、例えば、後述する導電性金属層の形成時にメッキ液反応液中の基材粒子の濃度を調整することで制御できる。具体的には、メッキ液反応液中の基材粒子の濃度を低減(希釈)すれば、凝集が低減し、クレーターの個数は低減する傾向となる。勿論、クレーターの大きさ(面積)の制御手段は、これらに限定されるものではなく、ほかにもメッキ液中に分散安定剤を添加し、基材粒子およびメッキ粒子の分散性を高めたり、メッキ後の再分散時に超音波等を用いて分散させるなどして、凝集度合いやメッキ処理後の再分散の程度を変更しうるあらゆる手段を採用できる。
【0017】
なお、クレーターの数は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて任意の個数(好ましくは10個以上、より好ましくは20個以上、さらに好ましくは30個以上)の導電性微粒子について各々の表面全体を観察し、得られたSEM像から求めることができる。詳しくは、得られたSEM像において、粒子の中心から直径の80%に当たる円周内を観察し、該円周内に中心があるクレーターの数nをカウントすることにより、下記式に基づき算術的に粒子1個あたりのクレーター数Nを求めることができる。
N=n×360/[180−(cos
-10.8)×2]=3.4n
そして、観察した任意の個数の導電性微粒子のSEM像から求めたクレーター数Nの平均値を、導電性微粒子1個あたりのクレーターの数とすればよい。具体的には、例えば実施例で後述するクレーターの数の求め方が好ましく採用される。
【0018】
前記クレーターの大きさは、SEM像上でのクレーターの平均長径をL(nm)とし、導電性微粒子の平均直径をD(nm)としたときにL/Dの値が0.05以上0.3以下となる大きさである。L/Dの値が前記範囲であることにより、接続時の圧着による導電性微粒子の転がりが抑制され、導通に寄与しない導電性粒子が増えることなく、十分に低い初期抵抗を発現させることができる。L/Dの値は、0.07以上であることが好ましく、より好ましくは0.08以上であり、0.25以下であることが好ましく、より好ましくは0.2以下である。クレーターが大きすぎると(換言すればL/Dの値が大きすぎると)、導電性金属層が被覆されていない面積が増えるので、抵抗値が上昇し導通不良の原因となり、クレーターが小さすぎると(換言すればL/Dの値が小さすぎると)、接続時の圧着による導電性微粒子の転がりが抑制できず、導通に寄与しない導電性粒子が増えて初期抵抗が低下することになる。
【0019】
前記クレーターの大きさ(面積)は、後述する導電性金属層形成時の基材粒子の凝集度合いやメッキ処理後の再分散の程度に応じて決まり(すなわち、凝集度合いが高いほど、再分散の程度が強いほど、クレーターの面積は大きくなる)、例えば、導電性金属層の膜厚を調整することで制御できる。具体的には、導電性金属層の膜厚を薄くすればクレーターの面積は小さくなり、膜厚を厚くすればクレーターの面積は大きくなる傾向となる。なお、導電性金属層の膜厚は、例えば、メッキ液の使用量や処理時間等によって変えることができる。また、クレーターの大きさ(面積)をさらに制御するには、導電性金属層の形成時に分散安定剤を用い、その添加量を調整すればよい。具体的には、分散安定剤の添加量を増やすと、凝集が低減し、クレーターの面積は小さくなる。勿論、クレーターの大きさ(面積)の制御手段は、これらに限定されるものではなく、ほかにもメッキ後の再分散時に超音波等を用いて分散させるなど、凝集度合いやメッキ処理後の再分散の程度を変更しうるあらゆる手段を採用できる。
【0020】
なお、クレーターの平均長径L及び導電性微粒子の平均直径Dは、例えば、クレーターの数を求める際と同様のSEM像から求めることができる。詳しくは、得られたSEM像において、粒子の中心から直径の80%に当たる円周内を観察し、該円周内に中心がある全てのクレーターについての長径(nm)を測定してその平均値lを算出するとともに、当該粒子の直径d(nm)を測定し、観察した任意の個数の導電性微粒子のSEM像から求めた平均値l及び直径dのそれぞれの平均値を、クレーターの平均長径L及び導電性微粒子の平均直径Dとすればよい。具体的には、例えば実施例で後述するクレーターの平均長径L/導電性微粒子の平均直径Dの値の求め方が好ましく採用される。
【0021】
本発明の導電性微粒子の表面に存在するSEM像上での長径50nm以上の突起部(以下「長径50nm以上の突起部」を単に「突起部」と称することがある)の数は、導電性微粒子1個あたり20個未満である。突起部は、例えば、
図1のSEM像において符号2で示される部分であり、通常、導電性金属層を構成する金属で構成されており、導電性金属層を構成する金属と、突起部を形成するする金属とは一体となっている。突起部の数が前記範囲であることにより、基材粒子の粒子径が小さいにも拘らず、突起部の剥がれに起因するショートの発生を抑制できる。突起部の数は、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下、さらに好ましくは3個以下、最も好ましくは0個である。
【0022】
前記突起部は、例えば特許文献1や特許文献2のように突起形成のための特別の処理を行わなければ、通常、形成されるものではなく、その個数は前記範囲に制御される。
【0023】
なお、突起部の数は、例えば、クレーターの数を求める際と同様のSEM像から求めることができる。詳しくは、得られたSEM像において、粒子の中心から直径の80%に当たる円周内を観察し、該円周内に中心がある突起のうち長径が50nm以上の突起部の数mをカウントすることにより、下記式に基づき算術的に粒子1個あたりの突起部数Mを求めることができる。
M=m×360/[180−(cos
-10.8)×2]=3.4m
そして、観察した任意の個数の導電性微粒子のSEM像から求めた突起部数Mの平均値を、導電性微粒子1個あたりの突起部の数とすればよい。具体的には、例えば実施例で後述する突起部の数の求め方が好ましく採用される。
【0024】
1−2.基材粒子
基材粒子の粒子径は、個数平均粒子径で3.0μm以下である。本発明は微細な導電性微粒子の改良を目的とするものであり、基材粒子の粒子径が前記範囲内であれば、微細な導電性微粒子が得られ、微細化、狭小化された電極や配線の電気接続に対して、好適に使用できる。基材粒子の個数平均粒子径は、好ましくは2.8μm以下、より好ましくは2.8μm未満、さらに好ましくは2.7μm以下、より一層好ましくは2.6μm以下、さらに一層好ましくは2.5μm以下、なお一層好ましくは2.3μm以下、特に好ましくは2.1μm以下であり、1.0μm以上が好ましく、より好ましくは1.1μm以上、さらに好ましくは1.2μm以上、一層好ましくは1.3μm以上である。
【0025】
また基材粒子の粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、10.0%以下であることが好ましく、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、一層好ましくは4.5%以下、特に好ましくは4.0%以下、最も好ましくは3.0%以下である。このように粒子径の変動係数が小さい基材粒子は、単に一次粒子径の大きさが揃っているだけでなく、一次粒子径の単一分散性が極めて高い。そのため、このような基材粒子を用いれば、粒子径が揃っており、かつ凝集が抑制された導電性微粒子が得られる。
なお、本発明でいう基材粒子の個数平均粒子径やその変動係数等は、コールターカウンターにより測定することができ、その測定方法については実施例において後述する。
【0026】
基材粒子の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、回転楕円体状、金平糖状、薄板状、針状、まゆ状等のいずれでも良いが、球状が好ましく、特に真球状が好ましい。
【0027】
基材粒子は、樹脂成分を含む樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子を用いることで、弾性変形特性に優れた導電性微粒子が得られる。前記樹脂粒子としては、例えば、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル樹脂等のビニル重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリカーボネート類;ポリアミド類;ポリイミド類;フェノールホルムアルデヒド樹脂;オルガノポリシロキサン;等が挙げられる。これらの樹脂粒子を構成する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、高配線密度化と同時に小型化が進む半導体実装技術において、今後より一層微細な導電性微粒子の要望が高まると予想されるなか、例えば2.8μm未満の微細な粒子径領域で、粒度分布が狭く、圧縮変形特性が制御された粒子が得られ易いという観点から、ビニル重合体、アミノ樹脂、オルガノポリシロキサンが好ましく、ビニル重合体及びアミノ樹脂がより好ましく、特にビニル重合体が好ましい。ビニル重合体を含む材料は、ビニル基が重合して形成された有機系骨格を有し、加圧接続時の弾性変形に優れる。特に、ジビニルベンゼン及び/又はジ(メタ)アクリレートを重合成分として含むビニル重合体は、導電性金属被覆後の粒子強度の低下が少ない。
【0028】
1−2−1.ビニル重合体粒子
ビニル重合体粒子は、ビニル重合体により構成される。ビニル重合体は、ビニル系単量体(ビニル基含有単量体)を重合(ラジカル重合)することによって形成でき、このビニル系単量体はビニル系架橋性単量体とビニル系非架橋性単量体とに分けられる。なお、「ビニル基」には、炭素−炭素二重結合のみならず、(メタ)アクリロキシ基、アリル基、イソプロペニル基、ビニルフェニル基、イソプロペニルフェニル基のような官能基と重合性炭素−炭素二重結合から構成される置換基も含まれる。なお、本明細書において「(メタ)アクリロキシ基」、「(メタ)アクリレート」や「(メタ)アクリル」は、「アクリロキシ基及び/又はメタクリロキシ基」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」や「アクリル及び/又はメタクリル」を示すものとする。
【0029】
前記ビニル系架橋性単量体とは、ビニル基を有し架橋構造を形成し得るものであり、具体的には、1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体(単量体(1))、又は、1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基(カルボキシル基、ヒドロキシ基等のプロトン性水素含有基、アルコキシ基等の末端官能基等)を有する単量体(単量体(2))が挙げられる。ただし、単量体(2)によって架橋構造を形成させるには、当該単量体(2)の結合性官能基と反応(結合)可能な相手方単量体の存在が必要である。
【0030】
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(1)(1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体)の例として、例えば、アリル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート類;アルカンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等)、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等)等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族炭化水素系架橋剤(好ましくはジビニルベンゼン等のスチレン系多官能モノマー);N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等のヘテロ原子含有架橋剤等が挙げられる。
【0031】
これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類(多官能(メタ)アクリレート)や、芳香族炭化水素系架橋剤(特にスチレン系多官能モノマー)が好ましい。前記1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類(多官能(メタ)アクリレート)の中でも、前記1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(ジ(メタ)アクリレート)が特に好ましい。前記スチレン系多官能モノマーの中では、ジビニルベンゼンのように1分子中に2個のビニル基を有する単量体が好ましい。単量体(1)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシ基含有スチレン類等のヒドロキシ基を有する単量体;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類等のアルコキシ基を有する単量体;等が挙げられる。単量体(2)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記ビニル系非架橋性単量体としては、1分子中に1個のビニル基を有する単量体(単量体(3))か、もしくは相手方単量体が存在しない場合の前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)が挙げられる。
【0034】
前記ビニル系非架橋性単量体のうち前記単量体(3)(1分子中に1個のビニル基を有する単量体)には、(メタ)アクリレート系単官能モノマーやスチレン系単官能モノマーが含まれる。(メタ)アクリレート系単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類が挙げられ、メチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。スチレン系単官能モノマーとしては、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン(エチルビニルベンゼン)、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン類、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類等が挙げられ、スチレンが好ましい。単量体(3)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記ビニル系単量体としては、少なくとも前記ビニル系架橋性単量体(1)を含む態様が好ましく、中でも前記ビニル系架橋性単量体(1)と前記ビニル系非架橋性単量体(3)とを含む態様(特に単量体(1)と単量体(3)との共重合体)が好ましい。具体的には、構成成分として、スチレン系単官能モノマー、スチレン系多官能モノマー、多官能(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種を含む態様が好ましい。さらに好ましくは、スチレン系多官能モノマー及び多官能(メタ)アクリレートを必須構成成分とする態様;スチレン系多官能モノマー及びスチレン系単官能モノマーを必須構成成分とする態様;多官能(メタ)アクリレート及びスチレン系単官能モノマーを必須構成成分とする態様;である。上記態様において、スチレン系単官能モノマーとしてはスチレンが好ましく、スチレン系多官能モノマーとしてはジビニルベンゼンが好ましく、多官能メタ(アクリレート)としてはジ(メタ)アクリレートが好ましい。従って、ジビニルベンゼン及びジ(メタ)アクリレートを必須構成成分とする態様;ジビニルベンゼン及びスチレンを必須構成成分とする態様;ジ(メタ)アクリレート及びスチレンを必須構成成分とする態様が特に好ましい。
【0036】
前記ビニル重合体粒子は、ビニル重合体の特性を損なわない程度に、他の成分を含んでいてもよい。この場合、ビニル重合体粒子は、ビニル重合体を50質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
前記他の成分としては、特に限定されないが、ポリシロキサン成分が好ましい。ビニル重合体粒子に、ポリシロキサン骨格を導入することで、加圧接続時の弾性変形に優れるものとなる。
【0037】
前記ポリシロキサン骨格は、シラン系単量体を用いることによって形成でき、このシラン系単量体はシラン系架橋性単量体とシラン系非架橋性単量体とに分けられる。また、シラン系単量体としてシラン系架橋性単量体を用いると、架橋構造を形成し得る。シラン系架橋性単量体により形成される架橋構造としては、ビニル重合体とビニル重合体とを架橋するもの(第一の形態);ポリシロキサン骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第二の形態);ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第三の形態);が挙げられる。
【0038】
第一の形態(ビニル重合体間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、テトラビニルシラン等の2つ以上のビニル基を有するシラン化合物が挙げられる。第二の形態(ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能性シラン系単量体;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性シラン系単量体等が挙げられる。第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のビニル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;が挙げられる。これらのシラン系架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記シラン系非架橋性単量体として、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルシラン等の2官能性シラン系単量体;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルシラン等の1官能性シラン系単量体等が挙げられる。これらのシラン系非架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
特に前記ポリシロキサン骨格は、ラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合(例えば、(メタ)アクリロイル基等のビニル基)を有する重合性ポリシロキサン由来の骨格であることが好ましい。つまり、ポリシロキサン骨格は、構成成分として、少なくとも前記第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体(好ましくは(メタ)アクリロイル基を有するもの、より好ましくは3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン)を加水分解及び縮合することにより形成されたポリシロキサン骨格であることが好ましい。
【0041】
前記ビニル重合体粒子に、ポリシロキサン骨格を導入する場合、ビニル系単量体の使用量は、シラン系単量体100質量部に対して100質量部以上が好ましく、より好ましくは200質量部以上、さらに好ましくは300質量部以上であり、700質量部以下が好ましく、より好ましくは600質量部以下、さらに好ましくは500質量部以下である。
【0042】
前記ビニル重合体粒子を構成する全単量体に占める架橋性単量体(ビニル系架橋性単量体及びシラン系架橋性単量体の合計)の割合は、弾性変形と復元力に優れる点から、20質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。架橋性単量体の割合が上記範囲内であれば、優れた弾性変形特性を維持しつつ、復元力を向上させることができる。架橋性単量体の割合の上限は、特に限定されないが、用いる架橋性単量体の種類によっては、架橋性単量体の割合が多すぎると硬くなりすぎて異方導電接続時に圧縮変形させるために高い圧力が必要となる場合がある。そのため、架橋性単量体の割合は、95質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0043】
前記ビニル重合体粒子は、例えば、ビニル系単量体を重合することによって製造することができるが、具体的には、(i)ビニル系単量体を重合成分として含む単量体組成物を用いて、従来公知の水性懸濁重合、分散重合、乳化重合する方法;(ii)シラン系単量体を用いてビニル基含有ポリシロキサンを得た後、このビニル基含有ポリシロキサンとビニル系単量体とを重合(ラジカル重合)する方法;(iii)シード粒子に、ビニル系単量体を吸収させた後、ビニル系単量体をラジカル重合する、いわゆるシード重合する方法;が好ましい。
【0044】
前記製造方法(i)では、ビニル系単量体として、前記2つ以上のビニル基を有するシラン化合物、ビニル基を有するジ又はトリアルコキシシラン等のビニル基を有するシラン化合物を併用してもよい。前記製造方法(ii)においては、少なくとも前記第三の形態を形成し得るシラン系架橋性単量体を用いることによって、ポリシロキサン骨格が導入されたビニル重合体粒子が得られる。
【0045】
前記製造方法(iii)において、シード粒子としては、非架橋又は架橋度の低いポリスチレン粒子、ポリシロキサン粒子を用いることが好ましい。シード粒子にポリシロキサン粒子を用いることで、ビニル重合体にポリシロキサン骨格を導入できる。
ポリシロキサン粒子としては、前記第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体を含む組成物を、(共)加水分解縮合して得られるポリシロキサン粒子が好ましく、特にビニル基含有ポリシロキサン粒子が好ましい。ポリシロキサン粒子がビニル基を有する場合、得られるビニル重合体粒子が、ビニル重合体とポリシロキサン骨格がポリシロキサンを構成するケイ素原子を介して結合するため、弾性変形性及び接触圧に特に優れたものとなる。ビニル基含有ポリシロキサン粒子は、例えば、ビニル基を有するジ又はトリアルコキシシランを含むシラン系単量体(混合物)を(共)加水分解縮合することによって製造できる。
【0046】
また、前記ビニル重合体粒子がポリシロキサン骨格を含む場合、基材粒子に加熱処理を施すことも好ましい態様である。前記加熱処理は空気雰囲気下又は不活性雰囲気下で行うことが好ましく、不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)で行うことがより好ましい。前記加熱処理の温度は120℃(より好ましくは180℃、さらに好ましくは200℃)以上が好ましく、熱分解温度(より好ましくは350℃、さらに好ましくは330℃)以下が好ましい。前記加熱処理の時間は、0.3時間(より好ましくは0.5時間、さらに好ましくは0.7時間)以上が好ましく、10時間(より好ましくは5.0時間、さらに好ましくは3.0時間)以下が好ましい。
【0047】
1−2−2.アミノ樹脂粒子
アミノ樹脂粒子は、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合物により構成されるものが好ましい。
前記アミノ化合物としては、例えば、ベンゾグアナミン、シクロヘキサンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン、アセトグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、スピログアナミン等のグアナミン化合物、メラミン等のトリアジン環構造を有する化合物等の多官能アミノ化合物が挙げられる。これらの中でも、多官能アミノ化合物が好ましく、トリアジン環構造を有する化合物がより好ましく、特にメラミン、グアナミン化合物(特にベンゾグアナミン)が好ましい。前記アミノ化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0048】
アミノ樹脂粒子は、アミノ化合物中、グアナミン化合物を10質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。アミノ化合物中のグアナミン化合物の含有割合が上記範囲であれば、より粒度分布がシャープであり、粒子径が精密にコントロールされたものとなる。なお、アミノ化合物として、グアナミン化合物のみを用いることも好ましい。
【0049】
アミノ樹脂粒子は、例えば、水性媒体中でアミノ化合物とホルムアルデヒドを反応(付加縮合反応)させることにより得られる。通常、この反応は加熱下(50〜100℃)で行う。また、ドデシルベンゼンスルホン酸、硫酸等の酸触媒の存在下で反応を行うことにより、架橋度を高めることができる。
アミノ樹脂粒子の製造方法としては、例えば、特開2000−256432号公報、特開2002−293854号公報、特開2002−293855号公報、特開2002−293856号公報、特開2002−293857号公報、特開2003−55422号公報、特開2003−82049号公報、特開2003−138023号公報、特開2003−147039号公報、特開2003−171432号公報、特開2003−176330号公報、特開2005−97575号公報、特開2007−186716号公報、特開2008−101040号公報、特開2010−248475号公報等に記載のアミノ樹脂架橋粒子及びその製造方法を適用することが好ましい。
【0050】
具体例としては、前記多官能アミノ化合物とホルムアルデヒドを、水性媒体(好ましくは塩基性の水性媒体)中で反応(付加縮合反応)させて縮合物オリゴマーを生成させ、該縮合物オリゴマーが溶解又は分散する水性媒体にドデシルベンゼンスルホン酸や硫酸等の酸触媒を混合して硬化させることによって、架橋されたアミノ樹脂粒子を製造することができる。縮合物オリゴマーを生成させる段階、架橋構造のアミノ樹脂とする段階は、いずれも、50〜100℃の温度で加熱された状態で行うことが好ましい。また、付加縮合反応を、界面活性剤の存在下で行うことにより、粒度分布のシャープなアミノ樹脂粒子が得られる。
【0051】
1−2−3.オルガノポリシロキサン粒子
オルガノポリシロキサン粒子は、ビニル基を含有しないシラン系単量体(シラン系架橋性単量体、シラン系非架橋性単量体)の1種又は2種以上を(共)加水分解縮合することによって得られる。
前記ビニル基を含有しないシラン系単量体としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の3官能性シラン系単量体;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するジ又はトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0052】
1−3.導電性金属層
本発明の導電性微粒子は、前記基材粒子の表面に形成された少なくとも一層の導電性金属層を有する。導電性金属層を構成する金属としては特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、鉛、アルミニウム、クロム、パラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、スズ、コバルト、インジウム及びニッケル−リン、ニッケル−ホウ素等の金属や金属化合物、及び、これらの合金等が挙げられる。これらの中でも、金、ニッケル、パラジウム、銀、銅、錫が導電性に優れた導電性微粒子となることから好ましい。また、コスト的な観点からは、ニッケル、ニッケル合金(Ni−Au、Ni−Pd、Ni−Pd−Au、Ni−Ag、Ni−P、Ni−B、Ni−Zn、Ni−Sn、Ni−W、Ni−Co、Ni−Ti);銅、銅合金(CuとFe、Co、Ni、Zn、Sn、In、Ga、Tl、Zr、W、Mo、Rh、Ru、Ir、Ag、Au、Bi、Al、Mn、Mg,P、Bからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素との合金、好ましくはAg、Ni、Sn、Znとの合金);銀、銀合金(AgとFe、Co、Ni、Zn、Sn、In、Ga、Tl、Zr、W、Mo、Rh、Ru、Ir、Au、Bi、Al、Mn、Mg、P、Bからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素との合金、好ましくはAg−Ni、Ag−Sn、Ag−Zn);錫、錫合金(たとえばSn−Ag、Sn−Cu,Sn−Cu−Ag,Sn−Zn、Sn−Sb、Sn―Bi―Ag、Sn―Bi―In、Sn−Au、Sn―Pb等)等が好ましい。これらの中でもニッケル、ニッケル合金が好ましい。
【0053】
導電性金属層がニッケル又はニッケル合金から形成されたニッケル系金属層である場合、ニッケル合金を構成するニッケル以外の金属としては、Niと共析し合金被膜を形成し得るものであれば良いが、特に好ましくは、リン(P)、ホウ素(B)、タングステン(W)、コバルト(Co)等が挙げられる。これらの金属はニッケル合金において1種のみを含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよい。ニッケル合金におけるニッケルの含有率は50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0054】
なお、前記ニッケル系金属層には、本発明の効果を損なわない範囲で、ニッケルやニッケル合金以外の他の金属成分からなる相が含まれていてもよい。他の金属成分からなる相としては、例えば、ニッケル系金属層中に他の金属成分が粒状で分散した形態が挙げられる。他の金属成分としては、例えば、上述したニッケル合金を構成するニッケル以外の金属が挙げられる。このようにニッケル系金属層が他の金属成分からなる相を有する場合、ニッケル系金属層におけるニッケル系金属(ニッケル又はニッケル合金)の含有率は、ニッケル系金属層100質量%に対して90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
【0055】
前記導電性金属層は、単層でも多層(二層以上)であってもよい。導電性金属層が多層である場合、基材粒子と導電性金属層との密着性等の観点から、ニッケル系金属層を最も内側(換言すれば基材粒子の表面)に配し、ニッケル又はニッケル合金以外の金属からなる層(以下「その他の金属層」と称する)をニッケル系金属層の表面に配することが好ましい。その他の金属層を構成する金属としては、例えば、銅、銀、錫、金、パラジウム等の金属のほか、これらの金属から選択される1種以上の金属を含む合金が挙げられる。これらの中でも、金またはパラジウムが導電性微粒子表面の酸化を抑えるとともに、電気的接続に供した際の抵抗を下げる効果が得られる点で好ましい。
【0056】
前記導電性金属層の厚さは、導電性微粒子表面のクレーターの個数や大きさを所定の範囲に制御するうえで、0.010μm以上が好ましく、より好ましくは0.030μm以上、さらに好ましくは0.050μm以上であり、0.20μm以下が好ましく、より好ましくは0.18μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下、一層好ましくは、0.12μm以下、特に好ましくは0.080μm以下である。また、基材粒子が微細な粒子径である本発明の導電性微粒子においては、導電性金属層の厚さが上記範囲内であれば、導電性微粒子を異方性導電材料として用いる際に、安定した電気的接続が維持できる。なお、導電性金属層が異なる組成の層を複数設けてなる場合、複数の金属層の合計の膜厚を前記範囲とすればよい。
【0057】
前記導電性金属層を所定の膜厚に制御するには、導電性金属層を形成するにあたり、例えば、後述する無電解メッキ処理を行う際の基材粒子濃度(メッキ液反応液に対する基材粒子の量)、メッキ液の濃度、あるいはメッキ液のpHや温度、無電解メッキ処理時間等を調整すればよい。具体的には、基材粒子濃度を高くしたり、メッキ液の濃度を低くしたり、或いは無電解メッキ処理時間を短くすると、導電性金属層の膜厚は薄くなる。
【0058】
導電性金属層の膜厚は、例えば、導電性金属層を硝酸や王水等の酸性溶液により溶解させ、金属層成分をICP発光分析装置を用いて分析することにより求められる。詳しくは、導電性金属層がニッケル単層構造である場合および導電性金属層がニッケル・金多層構造である場合の膜厚の求め方について、実施例で後述する。かかる方法にて金属種を適宜変更することにより、あらゆる金属種の導電性金属層の膜厚を求めることができる。なお、実施例で後述する方法を種々の金属に応用する際には、多層構造の場合、基材粒子の表面に形成する層の金属をニッケルに置き換えて、その上に形成する層の金属を金に置き換えればよい。
【0059】
導電性金属層の形成方法は、特に限定されず、例えば、基材粒子表面に無電解メッキ法、電解メッキ法等によってメッキを施す方法;基材粒子表面に真空蒸着、イオンプレーティング、イオンスパッタリング等の物理的蒸着方法により導電性金属層を形成する方法;のような従来公知の方法を採用することができる。これらの中でも特に、無電解メッキ法が、大掛かりな装置を必要とせず容易に導電性金属層を形成できる点で好ましい。以下、無電解メッキ法による導電性金属層の形成について詳細に説明する。
【0060】
無電解メッキ法により導電性金属層を形成する際には、エッチング工程、触媒化工程を経た後、無電解メッキ工程を行うことが好ましい。
前記エッチング処理工程では、例えばクロム酸、無水クロム酸−硫酸混合液、過マンガン酸等の酸化剤;塩酸、硫酸、フッ酸、硝酸等の強酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ溶液;等を用いて、基材粒子の表面に微小な凹凸を形成させる。これにより、凹凸のアンカー効果によって後述する無電解メッキ工程後の基材粒子と導電性金属層との密着性の向上を図ることができる。
【0061】
前記触媒化工程では、基材粒子の表面にメッキ析出の基点となる触媒層(パラジウム触媒などの層)を形成する。触媒層を形成する方法は特に限定されず、無電解メッキ用として市販されている触媒化試薬を用いて行えばよい。例えば、二塩化パラジウムと二塩化スズとを含む溶液を触媒化試薬とし、これに基材粒子を浸漬することにより基材粒子表面に触媒金属を吸着させ、その後、硫酸や塩酸などの酸や水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液で前記パラジウムイオンを還元することにより、基材粒子表面にパラジウム核を析出させる方法(キャタリスト−アクセレレーション法)や、スズイオン(Sn
2+)を含有する溶液(二塩化スズ溶液など)に基材粒子を接触させることによりスズイオンを基材粒子表面に吸着させた後、パラジウムイオン(Pd
2+)を含有する溶液(二塩化パラジウム溶液など)に浸漬させることにより、基材粒子表面にパラジウム核を析出させる方法(センシタイジング−アクチベーティング法)等が好ましく採用される。なお、前記スズイオン含有溶液やパラジウムイオン含有溶液に基材粒子を浸漬する際の液温及び浸漬時間は、各イオンが基材粒子に充分に吸着できる範囲で適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、液温は10℃〜60℃が好ましく、浸漬時間は1分〜120分が好ましい。
【0062】
前記無電解メッキ工程では、前記触媒化工程にて触媒層(例えばパラジウム核)を形成した基材粒子(以下「触媒化基材粒子」と称する)表面に、無電解メッキ処理を施して導電性金属層を形成する。無電解メッキ処理は、還元剤と所望の金属塩を溶解したメッキ液中に触媒化基材粒子を浸漬することにより、触媒を起点として、メッキ液中の金属イオンを還元剤で還元し、基材粒子表面に所望の金属を析出させて、導電性金属層を形成するものである。
【0063】
前記無電解メッキ工程では、まず、触媒化基材粒子を水に十分に分散させ、触媒化基材粒子の水性スラリーを調製する。このとき、導電性微粒子表面のクレーターの個数及び大きさを所定の範囲に制御しうるように、触媒化基材粒子(基材粒子)をメッキ処理を行う水性媒体に適度に分散させておくことが肝要である。触媒化基材粒子を水性媒体に分散させる手段としては、例えば、通常攪拌装置、高速攪拌装置、コロイドミル又はホモジナイザーのような剪断分散装置等従来公知の分散手段を採用すればよく、必要に応じて超音波を併用してもよい。
【0064】
触媒化基材粒子を水性媒体に分散させる際には、分散安定剤を添加することができる。分散安定剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤、及び水溶性高分子等が挙げられる。アニオン系界面活性としては、カルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系、リン酸エステル系の界面活性剤を用いることができる。カチオン系界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩系及びアルキルアミン塩系の界面活性剤を用いることができる。ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンエーテル系の界面活性剤を用いることができる。両性イオン界面活性剤としては、ベタイン系及びアミノ酸系の界面活性剤を用いることができる。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジノン、ヒドロキシエチルセルロースなどを用いることができる。これら分散安定剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。前記分散安定剤を用いる場合、その添加量はその種類にもよるが、導電性微粒子表面のクレーターの個数及び大きさを所定の範囲に制御するうえで、無電解メッキ浴の体積に対して、0.1g/L以上とすることが好ましく、より好ましくは1g/L以上、さらに好ましくは3g/L以上である。
【0065】
触媒化基材粒子の水性スラリーを調製する際には、水性スラリー中の触媒化基材粒子の濃度を、導電性微粒子表面のクレーターの個数及び大きさが所定の範囲になるよう調整することが好ましい。具体的には、得られた水性スラリーに後述の無電解メッキ液を添加し終えた状態で、メッキ液反応液(水性スラリーと無電解メッキ液の混合物)中の基材粒子(触媒化基材粒子)の濃度が好ましくは0.7g/L以上、より好ましくは0.75以上、さらに好ましくは0.8以上であり、好ましくは5g/L以下、より好ましくは4g/L以下、さらに好ましくは3g/L以下となるようにするのがよい。
【0066】
次に、所望の導電性金属の塩、還元剤、錯化剤及び各種添加剤等を含有する無電解メッキ液に、上記で調製した触媒化基材粒子の水性スラリーを添加することにより、無電解メッキ反応を生じさせる。無電解メッキ反応は、触媒化基材粒子の水性スラリーを添加すると速やかに開始する。また、この反応は水素ガスの発生を伴うので、水素ガスの発生が認められなくなった時点をもって無電解メッキ反応を終了すればよい。
【0067】
前記無電解メッキ液に含有させる導電性金属塩としては、導電性金属層を構成する金属として例示した金属の塩化物、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。例えば、導電性金属層としてニッケル層を形成する場合には、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等のニッケル塩等を無電解メッキ液に含有させればよい。導電性金属塩は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。無電解メッキ液中における導電性金属塩の濃度は、所望の膜厚の導電性金属層が形成されるように、基材粒子のサイズ(表面積)等を考慮して適宜決定すればよい。
【0068】
前記無電解メッキ液に含有させる還元剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、テトラヒドロホウ酸カリウム、グリオキシル酸、ヒドラジン等が挙げられる。還元剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0069】
前記無電解メッキ液に含有させる錯化剤としては、導電性金属のイオンに対して錯化作用のある化合物が使用できる。例えば、ニッケルに対して錯化作用のある化合物としては、クエン酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸またはそれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩などのカルボン酸(塩);グリシン等のアミノ酸;エチレンジアミン、アルキルアミン等のアミン類;その他のアンモニウム(塩)、EDTA、ピロリン酸(塩);などが挙げられる。錯化剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0070】
前記メッキ液を、触媒化基材粒子の水性スラリーに滴下する際の液温は、適宜調整すればよいが、導電性微粒子表面のクレーターの個数及び大きさを所定の範囲に制御するうえでは、液温は50℃以上100℃未満が好ましい。
前記無電解メッキ液のpHは、限定されないが、導電性微粒子表面のクレーターの個数及び大きさを所定の範囲に制御するうえでは、好ましくは4〜14である。なお、無電解メッキ液のpHは、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア水等のアルカリ性水溶液、硫酸、塩酸等の酸性水溶液を適宜添加することで調整できる。
【0071】
前記無電解メッキ反応の終了後、反応系内から導電性金属層が形成された基材粒子を取り出し、必要に応じて、洗浄、乾燥を施すことにより、導電性微粒子を得ることができる。このとき、最終的に導電性微粒子を得る前に、導電性微粒子表面のクレーターの個数及び大きさを所定の範囲に制御するため、必要に応じて、乾燥後の導電性微粒子に対して、ビーズミルや各種攪拌機による凝集の解砕処理を施したり、さらに、水や有機溶媒中で超音波による分散処理を施したり、メッシュ等による凝集粒子の除去操作を行うことができる。これら処理や操作は、単独で行ってもよいし、複数を組み合わせて行ってもよい。
【0072】
無電解メッキ工程は、必要に応じて繰返し行ってもよい。例えば金属種の異なる無電解メッキ液を用いて無電解メッキ工程を繰返すことにより、基材粒子の表面に異種金属を幾層にも被覆できる。具体的には、基材粒子にニッケルメッキを施してニッケル被覆粒子を得た後、該ニッケル被覆粒子をさらに無電解金メッキ液に投入して金置換メッキを行うことにより、最外層が金層で覆われ、その内側にニッケル層を有する導電性微粒子が得られる。
【0073】
本発明は、微細な導電性微粒子を電気的接続に供した際の接続信頼性を高めること(具体的には、初期抵抗を低く抑え、ショートの発生を回避すること)を目的とするものである。したがって、本発明において導電性微粒子の粒子径は、個数平均粒子径で、1.1μm以上が好ましく、より好ましくは1.2μm以上、さらに好ましくは1.3μm以上、一層好ましくは1.4μm以上であり、4.0μm以下が好ましく、より好ましくは3.5μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下、一層好ましくは3.0μm未満、より一層好ましくは2.8μm以下、さらに一層好ましくは2.7μm以下、なお一層好ましくは2.6μm以下、特に好ましくは2.5μm以下、最も好ましくは2.4μm以下である。個数平均粒子径がこの範囲内であれば、微細化、狭小化された電極や配線を対象とした電気的接続においても好適に使用できる。なお、導電性微粒子の個数平均粒子径は、例えばフロー式粒子像解析装置を用いて求めることができる。
【0074】
2.異方性導電材料
本発明の異方性導電材料は、上述した本発明の導電性微粒子を含有する。例えば、異方性導電材料としては、前記導電性微粒子がバインダー樹脂に分散してなるものが挙げられる。異方性導電材料の形態は特に限定されず、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等様々な形態が挙げられる。これらの異方性導電材料を相対向する基板同士や電極端子間に設けることにより、良好な電気的接続が可能になる。なお、本発明の導電性微粒子を用いた異方性導電材料には、液晶表示素子用導通材料(導通スペーサー及びその組成物)も含まれる。
【0075】
前記バインダー樹脂としては、絶縁性の樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0076】
なお、本発明の異方性導電材料は、前記バインダー樹脂中に導電性微粒子を分散させ、所望の形態とすることで得られるが、例えば、バインダー樹脂と導電性微粒子とを別々に使用し、接続しようとする基板間や電極端子間に導電性微粒子をバインダー樹脂とともに存在させることによって接続してもかまわない。
【0077】
本発明の異方性導電材料において、導電性微粒子の含有量は、用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、異方性導電材料の全量に対して0.01体積%以上が好ましく、より好ましくは0.03体積%以上、さらに好ましくは0.05体積%以上であり、50体積%以下が好ましく、より好ましくは30体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下である。導電性微粒子の含有量が少なすぎると、十分な電気的導通が得られ難い場合があり、一方、導電性微粒子の含有量が多すぎると、導電性微粒子同士が接触してしまい、異方性導電材料としての機能が発揮され難い場合がある。
【0078】
本発明の異方性導電材料におけるフィルム膜厚、ペーストや接着剤の塗工膜厚、印刷膜厚等については、使用する導電性微粒子の粒子径と、接続すべき被接続体(電極等)の仕様とを考慮し、接続すべき被接続体間に導電性微粒子が狭持され、且つ接続すべき被接続体が形成された接合基板同士の空隙がバインダー樹脂層により充分に満たされるように、適宜設定することが好ましい。
【0079】
本発明の異方性導電材料には、導電性微粒子および前記バインダー樹脂とともに、必要に応じて充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、酸化防止剤、各種カップリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導向上剤、有機溶剤等を配合することができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0081】
1.分析方法
1−1.基材粒子及びシード粒子の粒子径及び変動係数(CV値)
粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径を測定し、個数平均粒子径(個数基準の平均分散粒子径)、粒子径の標準偏差を求めるとともに、下記式に従って粒子径の個数基準のCV値(変動係数)を算出した。
粒子の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/個数平均粒子径)
なお、基材粒子の測定では、基材粒子0.005部に、乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製「ハイテノール(登録商標)N−08」)の1%水溶液20部を加え、超音波で10分間分散させた分散液を測定試料とした。シード粒子の測定では、加水分解、縮合反応で得られた分散液を、乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製「ハイテノール(登録商標)N−08」)の1%水溶液により希釈したものを測定試料とした。
【0082】
1−2.導電性微粒子の表面形状観察
走査型電子顕微鏡(SEM)(倍率25000倍)を用いて任意の30個の導電性微粒子について各々の表面全体を観察し、得られたSEM像から、下記の方法により、導電性微粒子1個あたりのクレーターの数、クレーターの平均長径(L)/導電性微粒子の平均直径(D)の値、および、導電性微粒子1個あたりの突起部(長径50nm以上の突起部)の数を求めた。
【0083】
(クレーターの数)
得られたSEM像において、粒子の中心から直径の80%に当たる円周内を観察し、該円周内に中心があるクレーターの数nをカウントし、下記式に基づき算術的に粒子1個あたりのクレーター数Nに換算した。
N=n×360/[180−(cos
-10.8)×2]=3.4n
そして、30個の導電性微粒子のSEM像から求めたクレーター数Nの平均値を、導電性微粒子1個あたりのクレーターの数とした。
【0084】
(クレーターの平均長径L/導電性微粒子の平均直径Dの値)
得られたSEM像において、粒子の中心から直径の80%に当たる円周内を観察し、該円周内に中心がある全てのクレーターについての長径(nm)を測定してその平均値lを算出するとともに、当該粒子の直径d(nm)を測定した。そして、30個の導電性微粒子のSEM像から求めた平均値lと直径dをそれぞれ平均し、30個の平均値lの平均値をクレーターの平均長径Lとし、30個の直径dの平均値を導電性微粒子の平均直径Dとして、L/Dを求めた。
【0085】
(突起部の数)
得られたSEM像において、粒子の中心から直径の80%に当たる円周内を観察し、該円周内に中心がある突起のうち長径が50nm以上の突起部の数mをカウントし、下記式に基づき算術的に粒子1個あたりの突起部数Mに換算した。
M=m×360/[180−(cos
-10.8)×2]=3.4m
そして、30個の導電性微粒子のSEM像から求めた突起部数Mの平均値を、導電性微粒子1個あたりの長径50nm以上の突起部の数とした。
【0086】
(導電性金属層の膜厚)
前記導電性金属層の膜厚は、実施例4以外の例の単層構造(ニッケル層)、実施例4の多層構造(ニッケル層/金層)のいずれの場合も、以下の方法で求めた。なお、各実施例、比較例において得られた導電性微粒子におけるニッケル層はいずれも、ニッケルとリンとを含む組成であるため、下記式(1)、下記式(3)中のWとしてはニッケルおよびリンの合計含有率を採用して、導電性金属層の膜厚を求めた。
まず、導電性微粒子を構成する導電性金属層を完全に溶解させるため、導電性微粒子0.05gに王水8mLを添加して80℃で攪拌した。
次に、導電性金属層を溶解させた溶液中における全金属元素の濃度をICP発光分析装置(理学電機社製「CIROS120」)により分析し、下記式(1)からニッケル層の厚みを算出した。なお、式(1)中、rは基材粒子の半径(μm)、tはニッケル層の厚み(μm)、d
Niはニッケル層の密度、d
baseは基材粒子の密度、Wはニッケル層の構成成分の含有率(質量%)、Xは金層の構成成分(Au)の含有率(質量%)である。
【0087】
【数1】
【0088】
続いて、上記Xが0超である場合(実施例4)は、以下の式(2)から金層の厚みを算出した。なお、式(2)中、aは金層の厚み(μm)、d
Auは金層の密度、d
(base+Ni)は基材粒子にニッケル層を設けた粒子(以下「ニッケル品」と称する)の密度、Xは金の含有率(質量%)である。ここで、ニッケル品の密度d
(base+Ni)は計算式(3)を使用して算出した。なお、式(3)中、d
Niはニッケル層の密度、d
baseは基材粒子の密度、Wはニッケル層構成成分の含有率(質量%)である。
【0089】
【数2】
【0090】
2.導電性微粒子の製造
2−1.基材粒子の作製
(製造例1)
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水1800部、25%アンモニア水24部、メタノール600部を入れ、攪拌下、滴下口から、単量体(シード形成モノマー)としての3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン50部を添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、シード粒子とするオルガノポリシロキサン粒子の分散液を調製した。このポリシロキサン粒子(シード粒子)の個数基準の平均分散粒子径は1.26μmであった。
【0091】
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製「ハイテノール(登録商標)NF−08」)の20%水溶液5.0部をイオン交換水200部に溶解させた溶液に、単量体(吸収モノマー)として、スチレン50部及び、ジビニルベンゼン(新日鐡化学社製「DVB960」:ジビニルベンゼン96%、ビニル系非架橋性単量体(エチルビニルベンゼン等)4%含有品)150部と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−65」)2部とを溶解した溶液を加え、乳化分散させて単量体成分(吸収モノマー)の乳化液を調製した。乳化分散の開始から2時間後、得られた乳化液を、ポリシロキサン粒子(シード粒子)の分散液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から2時間後、混合液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子が単量体(吸収モノマー)を吸収して肥大化していることが確認された。
【0092】
次いで、窒素雰囲気下で反応液を65℃まで昇温させて、65℃で2時間保持し、単量体のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下280℃で1時間焼成し基材粒子(1)を得た。この基材粒子(1)の粒子径を測定したところ、個数平均粒子径は2.5μm、変動係数(CV値)は3.8%であった。
【0093】
(製造例2)
製造例1において、ポリシロキサン粒子(シード粒子)の分散液を調製するにあたり、イオン交換水の使用量を1600部に、メタノールの使用量を800部に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、基材粒子(2)を得た。なお、シード粒子の個数基準の平均分散粒子径は1.40μmであった。この基材粒子(2)の粒子径を測定したところ、個数平均粒子径は2.8μm、変動係数(CV値)は3.6%であった。
【0094】
(製造例3)
製造例1において、ポリシロキサン粒子(シード粒子)の分散液を調製するにあたり、イオン交換水の使用量を1400部に、メタノールの使用量を1000部に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、基材粒子(3)を得た。なお、シード粒子の個数基準の平均分散粒子径は1.40μmであった。この基材粒子(3)の粒子径を測定したところ、個数平均粒子径は3.2μm、変動係数(CV値)は3.2%であった。
【0095】
2−2.導電性金属層の形成
(実施例1)
基材粒子(1)に、水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング処理を施し、その後、二塩化スズ溶液に接触させた後、二塩化パラジウム溶液に浸漬させること(センシタイジング−アクチベーション法)により、パラジウム核を形成させた。次に、パラジウム核を形成させた基材粒子10gをイオン交換水6000mL部に添加し、超音波照射により十分に分散させた。得られた基材粒子の懸濁液を70℃に加熱し攪拌しながら、該懸濁液の中に、70℃に加熱した乳酸52.2g/L、リンゴ酸10.0g/L、硫酸ニッケル110.0g/L、次亜リン酸ナトリウム230g/L(pH4.6に調整)を含む無電解ニッケル液700mLを滴下して、基材粒子(1)の無電解ニッケルメッキを行った。このとき滴下速度は10mL/分とし、液温は70℃に保持した。水素ガスの発生が停止したことを確認した後、さらに液温を70℃に保持しながら60分間攪拌を行った。その後、固液分離を行い、イオン交換水、メタノールで洗浄した後、100℃で12時間真空乾燥を行い、導電性微粒子(1)を得た。得られた導電性微粒子のニッケル層の膜厚は0.10μmであった。また、この導電性微粒子表面のクレーター個数、L/D値及び突起部の数は表1に示すとおりであった。
【0096】
(実施例2)
実施例1において、無電解ニッケル液の使用量を700mLから770mLに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で基材粒子(1)に無電解ニッケルメッキを施し、その後、実施例1と同様に操作して、導電性微粒子(2)を得た。得られた導電性微粒子のニッケル層の膜厚は0.11μmであった。また、この導電性微粒子表面のクレーター個数、L/D値及び突起部の数は表1に示すとおりであった。
【0097】
(実施例3)
実施例1において、イオン交換水の使用量を6000mLから4000mLに変更し、無電解ニッケル液の使用量を700mLから560mLに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で基材粒子(1)に無電解ニッケルメッキを施し、その後、実施例1と同様に操作して、導電性微粒子(3)を得た。得られた導電性微粒子のニッケル層の膜厚は0.08μmであった。また、この導電性微粒子表面のクレーター個数、L/D値及び突起部の数は表1に示すとおりであった。
【0098】
(実施例4)
実施例1において、イオン交換水の使用量を6000mLから10000mLに変更し、無電解ニッケル液の使用量を700mLから560mLに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で基材粒子(1)に無電解ニッケルメッキを施し、その後、実施例1と同様に操作して、ニッケルメッキを施した粒子を得た。次いで、得られたニッケルメッキ粒子を、5g/Lのシアン化金カリウム、12g/Lのクエン酸三ナトリウム、10g/Lのエチレンジアミン4酢酸4ナトリウムを含有する置換金メッキ液に加え、0.03μmの金メッキ厚みになるまで置換金メッキを行った。その後、固液分離を行い、イオン交換水、メタノールで洗浄した後、100℃で12時間真空乾燥を行い、ニッケルメッキ及び金メッキを施した導電性微粒子(4)を得た。得られた導電性微粒子のニッケル層の膜厚は0.06μm、金層の膜厚は0.03μmであった。また、この導電性微粒子表面のクレーター個数、L/D値及び突起部の数は表1に示すとおりであった。
【0099】
(実施例5)
実施例1において、イオン交換水の使用量を6000mLから10000mLに変更し、無電解ニッケル液の使用量を700mLから440mLに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で基材粒子(2)に無電解ニッケルメッキを施し、その後、実施例1と同様に操作して、導電性微粒子(5)を得た。得られた導電性微粒子のニッケル層の膜厚は0.07μmであった。また、この導電性微粒子表面のクレーター個数、L/D値及び突起部の数は表1に示すとおりであった。
【0100】
(実施例6)
実施例1において、イオン交換水の使用量を6000mLから11500mLに変更し、無電解ニッケル液の使用量を700mLから810mLに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で基材粒子(2)に無電解ニッケルメッキを施し、その後、実施例1と同様に操作して、導電性微粒子(6)を得た。得られた導電性微粒子のニッケル層の膜厚は0.13μmであった。また、この導電性微粒子表面のクレーター個数、L/D値及び突起部の数は表1に示すとおりであった。
【0101】
(比較例1)
実施例1において、イオン交換水の使用量を6000mLから14000mLに変更し、無電解ニッケル液の使用量を700mLから1200mLに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で基材粒子(1)に無電解ニッケルメッキを施し、その後、実施例1と同様に操作して、導電性微粒子(C1)を得た。得られた導電性微粒子のニッケル層の膜厚は0.17μmであった。また、この導電性微粒子表面のクレーター個数、L/D値及び突起部の数は表1に示すとおりであった。
【0102】
(比較例2)
実施例1において、イオン交換水の使用量を6000mLから300mLに変更し、無電解ニッケル液の使用量を700mLから810mLに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で基材粒子(2)に無電解ニッケルメッキを施し、その後、実施例1と同様に操作して、導電性微粒子(C2)を得た。得られた導電性微粒子のニッケル層の膜厚は0.13μmであった。また、この導電性微粒子表面のクレーター個数、L/D値及び突起部の数は表1に示すとおりであった。
【0103】
(比較例3)
実施例1において、イオン交換水の使用量を6000mLから10000mLに変更し、このイオン交換水にパラジウム核を形成させた基材粒子を添加して超音波照射により分散させるにあたり、シリカ微粒子の水分散体(日本触媒社製「シーホスター(登録商標)KE−W50(平均粒子径50nm)」)0.5部を加えることにより、基材粒子の表面にシリカ粒子を付着させたこと以外は、実施例1と同様の方法で基材粒子(1)に無電解ニッケルメッキを施し、その後、実施例1と同様に操作して、シリカ粒子を核とする突起を表面に有する導電性微粒子(C3)を得た。得られた導電性微粒子のニッケル層の膜厚は0.10μmであった。また、この導電性微粒子表面のクレーター個数、L/D値及び突起部の数は表1に示すとおりであった。
【0104】
(比較例4)
実施例1において、イオン交換水の使用量を6000mLから500mLに変更し、無電解ニッケル液の使用量を700mLから710mLに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で基材粒子(3)に無電解ニッケルメッキを施し、その後、実施例1と同様に操作して、導電性微粒子(C4)を得た。得られた導電性微粒子のニッケル層の膜厚は、0.13μmであった。また、導電性微粒子表面のクレーター個数、L/D値及び突起部の数は表1に示すとおりであった。
【0105】
3.異方性導電材料の作製と評価
実施例および比較例で得られた導電性微粒子を用い、下記の方法で異方性導電材料(異方性導電フィルム)を作製し、その接続抵抗を下記の方法で評価した。評価結果は表1に示す。
【0106】
すなわち、導電性微粒子1部に、バインダー樹脂としてのエポキシ樹脂(三菱化学社製「JER828」)100部と、硬化剤(三新化学社製「サンエイド(登録商標)SI−150」)2部と、トルエン100部とを加え、さらにφ1mmのジルコニアビーズ50部を加えて、ステンレス鋼製の2枚攪拌羽根を用いて300rpmで10分間攪拌して分散させ、得られたペースト状組成物を剥離処理を施したPETフィルム上にバーコーターにて塗布して乾燥させることにより、異方性導電フィルムを得た。
【0107】
得られた異方性導電フィルムを、抵抗測定用の線を有した全面アルミ蒸着ガラス基板と30μmピッチに銅パターンを形成したポリイミドフィルム基板との間に挟みこみ、10MPa、190℃の圧着条件で熱圧着した後、電極間の初期抵抗値を測定した。初期抵抗値が3Ω未満の場合を「◎」、3Ω以上5Ω未満の場合を「○」、5Ω以上の場合を「×」と評価した。また、このときにショート発生の有無も併せて確認した。
【0108】
【表1】