(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5711122
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】赤外反射が制御されたエレクトロクロミック素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/153 20060101AFI20150409BHJP
G02F 1/15 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
G02F1/153
G02F1/15 502
G02F1/15 507
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-517969(P2011-517969)
(86)(22)【出願日】2009年7月10日
(65)【公表番号】特表2011-528131(P2011-528131A)
(43)【公表日】2011年11月10日
(86)【国際出願番号】FR2009051392
(87)【国際公開番号】WO2010007303
(87)【国際公開日】20100121
【審査請求日】2012年6月11日
(31)【優先権主張番号】0854865
(32)【優先日】2008年7月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】ブレッサン,エミリ
(72)【発明者】
【氏名】ギロン,ジャン−クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ロワイエ,バスティアン
(72)【発明者】
【氏名】バレンタン,エマヌエル
(72)【発明者】
【氏名】デュブルナ,サミュエル
【審査官】
佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−030181(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/053109(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/116184(WO,A1)
【文献】
特開平10−206902(JP,A)
【文献】
特開平06−043500(JP,A)
【文献】
特表2004−520632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/15−1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外反射が制御された、電気的に制御可能なタイプの、エレクトロクロミック素子であって、赤外範囲内で透明なキャリア基板(1a)と対向基板(1b)との間に、多層スタックを含み、
この多層スタックが連続して:
a)第1電極を形成する、該赤外範囲内で透明な金属グリッド(3)と;
b)イオン貯蔵第1エレクトロクロミック材料から成る層(EC1)、電解機能を有する少なくとも1つの層(EL1、EL2)、及び第2エレクトロクロミック材料から成る層(EC2)を含むエレクトロクロミック機能システム(5)と;
c)第2電極を形成する、赤外線を反射することができる金属層(7)と;
d)熱可塑性ポリマーから形成されたラミネーション中間層(9)とを含んでおり、
e)該基板(1a)及び該対向基板(1b)は、サファイア又はケイ素又はゲルマニウム又は硫化亜鉛又はセレン化亜鉛又はテルル化カドミウム又はフッ化カルシウム、又はフッ化バリウム又はフッ化マグネシウム、又は赤外線に対して透明なガラス、又はポリエチレンを含んでいる、ことを特徴とする、赤外反射が制御されたエレクトロクロミック素子。
【請求項2】
前記基板(1a)がサファイアを基材としており、そして該対向基板(1b)がガラスを基材としていることを特徴とする、請求項1に記載の赤外反射が制御されたエレクトロクロミック素子。
【請求項3】
前記金属グリッド(3)が単層タイプ又は多層タイプであって、そしてアルミニウム及び/又は白金及び/又はパラジウム及び/又は銅及び/又は金を基材としていて、並びに/又はこれらの金属の合金を基材としていて、及び/又は窒化チタンを基材としていることを特徴とする、請求項1に記載の赤外反射が制御されたエレクトロクロミック素子。
【請求項4】
前記イオン貯蔵層(EC1)が、酸化イリジウムを基材としていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の赤外反射が制御されたエレクトロクロミック素子。
【請求項5】
前記電解機能を有する層が二層タイプであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の赤外反射が制御されたエレクトロクロミック素子。
【請求項6】
前記電解層(EL1、EL2)が、酸化タンタル及び酸化タングステンを基材としていることを特徴とする、請求項5に記載の赤外反射が制御されたエレクトロクロミック素子。
【請求項7】
前記ラミネーション中間層(9)がポリビニルブチラール(PVB)又はエチレンビニル/アセテート又はポリウレタン(PU)を基材としていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の赤外反射が制御されたエレクトロクロミック素子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の素子が使用されていることを特徴とする、エネルギー散逸が制御されたパネル。
【請求項9】
前記パネルがグレージングを構成していることを特徴とする、請求項8に記載のパネル。
【請求項10】
建築用グレージング、自動車用グレージング、産業用乗り物のためのグレージング、又は公共の鉄道、船舶、及び航空機、農業用乗り物、建築現場機械のためのグレージング、バックミラー及びその他のミラー、画像取得装置のためのディスプレイ及びシャッターとしての、請求項8又は9に記載されたパネルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具体的には電気的に制御可能なパネル、特にグレージングを形成することを意図された、赤外反射が制御されたエレクトロクロミック素子に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外範囲内の光を反射する能力を有する「グレージング」が知られている。このようなグレージングは、種々多様な技術分野において適用される。
【0003】
従って、具体的には、グレージングは、例えば、建造物の種々の部屋がそれぞれの太陽光線照射に応じて確実に熱調節されるように、住宅用窓として使用されることがある。
【0004】
もちろん、グレージングは他の分野、例えば具体的には航空分野において、航空機の種々の窓を介して入射する赤外線を制御・調節するために使用されることもある。
【0005】
エレクトロクロミック素子は、イオン及び電子を可逆的且つ同時に挿入することができるエレクトロクロミック材料から成る層を含むことが知られている。エレクトロクロミック材料の酸化状態は、挿入状態及び放出状態に応じて、これらが好適な出力供給を介して供給されると、区別可能な色を有する。これらの状態のうちの一方は、他方よりも高い光透過率を有する。エレクトロクロミック材料は一般に酸化タングステンを基材としており、電子源、例えば透明な導電層、及びイオン(カチオン又はアニオン)源、例えばイオン伝導性電解質と接触させられなければならない。カチオンを可逆的に挿入することもできる対向電極を、巨視的には電解質が単一イオン媒体のように見えるように、エレクトロクロミック材料層と、前記層に対して対称的に連携させなければならないことが知られている。
対向電極は、色がニュートラルであるか、又は少なくとも透明であるか、又はエレクトロクロミック層が着色状態であるときに辛うじて色を有している層をベースとしなければならない。
【0006】
酸化タングステンはカソード・エレクトロクロミック材料であるので、すなわちその着色状態が最低減状態に相応するので、酸化ニッケル又は酸化イリジウムを基材とするアノード・エレクトロクロミック材料が一般に対向電極のために使用される。当該酸化状態において光学的にニュートラルな材料、酸化セリウム、又は電子伝導性ポリマー(ポリアニリン)のような有機材料又はプルシアンブルーを使用することも提案されている。
【0007】
現時点では、エレクトロクロミック・システムは、使用される電解質に応じて、2つのカテゴリーに分けることができる。
【0008】
第1のカテゴリーの場合、電解質は従って、ポリマー又はゲル、例えば欧州特許第0253713号公報及び同第0670346号公報に記載されているようなプロトン伝導性ポリマー、又は例えば欧州特許第0382623号公報、同第0518754号公報、及び同第0532408号公報に記載されているようなリチウムイオン伝導性ポリマーの形態を成していてよい。
【0009】
第2のカテゴリーの場合、電解質は、電気的に絶縁されたイオン伝導体を形成する鉱物層をベースとしてもよい。これらのエレクトロクロミック・システムはこの場合「全固体(all solid-state)」システムと呼ばれる。読者は欧州特許第0867752号公報及び同第0831360号公報を参照することができる。
【0010】
具体的には、2つの導電層が多層スタックのそれぞれの側に配置されている「全ポリマー(all polymer)」エレクトロクロミック・システムと呼ばれるもののような、他のタイプのエレクトロクロミック・システムも知られており、このようなシステムは、カソード着色ポリマーと、イオン伝導性の電子絶縁ポリマー(最も具体的にはH
+又はLi
+イオンのためのポリマー)と、最後にアノード着色ポリマー(例えばポリアニリン又はポリピロール)とを含んでいる。
【0011】
最後に、ビオロゲン材料とエレクトロクロミック材料とを組み合わせる「アクティブ」システムと呼ばれるシステムが、本発明の意味において知られている。アクティブ・システムは、例えば導電性電極/鉱物層又はエレクトロクロミック特性を有するポリマー/ビオロゲン/導電性電極特性を有する層(液体、ゲル又はポリマー)という配列を有している。
【0012】
可逆的挿入材料を基材とするこれらのシステムは、ビオロゲン・システムよりも広い波長範囲で吸収を変調するのを可能にするので、特に有利である。これらのシステムは可視光においてだけでなく、具体的には赤外線においても可変に吸収することができ、このことはシステムに、有効な光学的及び/又は熱的な役割を与え得るので、特に有利である。
【0013】
これらの種々のシステムは、1つ又は2つ以上の電気化学的にアクティブな層をサンドイッチする2つの導電層を含む。今や、これら2つの導電層間に電位差が形成されると、システムの透過/吸収状態、換言すればシステムの透明度レベルは、この電位差によって制御される。
【0014】
「電気的に制御可能」であることが望まれるグレージングをこのシステムによって形成する場合には、もちろん、これらの導電層の透明度が優先されるので、導電層は、薄膜分野において通常直面する厚さ範囲内で導電性であり透明でもある材料から形成されなければならない。
【0015】
通常は、ドープ型金属酸化物材料、例えばフッ素ドープ型酸化錫(SnO
2:F)又は錫ドープ型酸化インジウム(ITO)が採用される。この材料は、種々様々な基板上に、具体的にはガラス上に熱分解によって、例えばCVDと呼ばれる技術によって、又は低温堆積、具体的にはスパッタリング真空技術を用いて、熱蒸着されてよい。
【0016】
しかしながら、これらの材料を基材とする層が透明であり続ける厚さに関しては、これらの材料が十分に導電性でない限りは全体的には満足のゆくものではなく、従って、必要な状態変化を引き起こすためにシステムの末端を横切るように適切な電圧が印加されると、広い表面の不均質な状態変化が生じるのに伴って、システムの応答時間又は切換時間が増大することが判っている。
【0017】
より正確に述べるならば、例えば、2つの導電層が錫ドープ型酸化インジウム(ITO)を基材としている事例において、約3〜5Ω/squareであるベース層又はボトム層の抵抗率は、トップ層の場合にはその厚さが小さいことにより60〜70Ω/squareに増大する。具体的には、ベース層の厚さが約500nmの場合には、事実上、多層スタック内に発生する機械的歪みによる理由から、トップ層自体の厚さは約100nmにすぎないことが知られている。
【0018】
素子の切換時間、すなわちシステムがその最透明状態から最不透明状態へ切り換わるのに必要となる時間を長くしてしまうのは、トップ層とボトム層との間のこのような抵抗率差である。
【0019】
言うまでもなく、大抵の用途、具体的には建築用及び自動車用グレージング部門において、それが透明度が制御されたエレクトロクロミックグレージングであるのか、或いは、反射が制御されたエレクトロクロミックグレージングであるのかにかかわらず、使用者は、できる限り迅速且つ均一に変化させたいと望むため、このような欠陥を受け入れることは極めて難しいと感じる。
【0020】
さらに、多くの用途において、具体的にはそのシステムが、反射が電気的に制御される赤外システムである場合には、その使用中に曝される外的攻撃、例えば具体的には環境的攻撃(例えば悪天候)、又は機械的攻撃(例えば衝撃又は引掻き)からシステムを保護することは重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、従来の約10分の1という迅速な切換時間を有する、赤外反射が電気的に制御可能な素子であって、その着色状態と漂白状態との間に相当な反射差を有し、これに加えて使用中に曝露されるリスクのある種々のタイプの外的攻撃から保護される素子を提案することによって、これら種々の欠点を是正することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
従って、本発明の1つの課題は、赤外反射が制御され
た、電気的に制御可能なタイプの、エレクトロクロミック素子であっ
て、赤外範囲内で透明なキャリア基板(1a)と対向基板(1b)との間に、多層スタックを含み、
この多層スタックが連続して:
a)第1電極を形成する、該赤外範囲内で透明な金属グリッド(3)と;
b)イオン貯蔵第1エレクトロクロミック材料から成る層(EC1)、電解機能を有する少なくとも1つの層(EL1、EL2)、及び第2エレクトロクロミック材料から成る層(EC2)を含むエレクトロクロミック機能システム(5)と;
c)第2電極を形成する、赤外線を反射することができる金属層(7)と;
d)熱可塑性ポリマーから形成されたラミネーション中間層(9)とを含んでおり、
e)該基板(1a)及び該対向基板(1b)
は、サファイア又はケイ素又はゲルマニウム又は硫化亜鉛又はセレン化亜鉛又はテルル化カドミウム又はフッ化カルシウム、又はフッ化バリウム又はフッ化マグネシウム、又は赤外線に対して透明なガラス、又はポリエチレンを含んでいる、ことを特徴とする、赤外反射が制御されたエレクトロクロミック素子である。
【0023】
好ましくは、基板はサファイアを基材とし、そして対向基板は具体的にはガラスを基材とすることになる。さらに、イオン貯蔵層は好ましくは、酸化イリジウムを基材とすることになる。
【0024】
単層タイプ又は多層タイプであってよい金属グリッドは、アルミニウム及び/又は白金及び/又はパラジウム及び/又は銅及び/又は好ましくは金を基材としていてよく、並びに/又はこれらの金属の合金を基材としていてよく、及び/又は窒化チタンを基材としていてよい。
【0025】
本発明の1実施態様の場合、電解機能を有する層は二層タイプとなり、そして具体的には、酸化タンタル又は酸化タングステンを基材とすることになる。
【0026】
ラミネーション中間層はポリビニルブチラール(PVB)又はエチレンビニル/アセテート、又は好ましくはポリウレタン(PU)を基材としていてよい。このラミネーション中間層
が、電極に電流をもたらす接続素子が支持されることを
確実なものとすることができる。
【0027】
本発明の別の主題は、上記特徴のうちの1つに従う素子を採用している、エネルギー散逸が制御されたパネルである。
【0028】
別の態様によれば、本発明の主題は、建築用グレージング、自動車用グレージング、産業用乗り物のためのグレージング、又は公共の鉄道、船舶、及び航空機、農業用乗り物、建築現場機械のためのグレージング、バックミラー及びその他のミラー、画像取得装置のためのディスプレイ及びシャッターとして、上記パネルを使用することである。
【0029】
添付の図面を参照しながら非限定的な例によって、本発明の1実施態様を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明による、赤外反射が制御されたエレクトロクロミック素子を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、素子をシーリングするように意図された手段の一例を示す概略的な縦断面図である。
【
図3】
図3は、3μm〜5μmの波長で変化する照明に対応する、着色状態と漂白状態との間の、本発明によるエレクトロクロミック素子の反射率の変化を示す曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明による、赤外反射が制御されたエレクトロクロミック素子を示している。この素子は、具体的には部屋の窓を製造するために適用されるように意図されている。この窓に対しては、各窓への固有の太陽光線照射を考慮に入れるように、入射する熱束流を調節することが望ましい。
【0032】
一般に、このような素子は、キャリア1aと対向基板1bとの間に、赤外範囲で透明な金属グリッド3と、エレクトロクロミック機能システム5と、赤外線を反射することができる金属層7と、素子をラミネートするように意図された熱可塑性ポリマーシート9とを含む多層スタックから形成されている。
【0033】
より正確に述べるならば、この素子は従って下記のA)、B)、及びC)を含む:
−A) 波長範囲1〜30μm内の赤外範囲で透明のキャリア基板1aであって、前記基板は具体的には、サファイアを基材とするが、しかしこれはケイ素、ゲルマニウム、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、テルル化カドミウム(CdTe)、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、赤外線に対して透明なガラス、又はポリエチレンから形成されていてもよい;
−B) 好ましくは金から形成された金属グリッド3であって、しかしこれは具体的には、アルミニウム、白金、パラジウム、又は銅から形成されていてもよい。このグリッドは、当該赤外スペクトル範囲に応じて、金属合金を基材としていてよく、又は多層タイプであってもよい。この金属グリッドはまた、電流供給機能を備えた素子を提供することになる;そして
−C) 2つの最も外側のエレクトロクロミック電気活性層EC1及びEC2をそれ自体がベースとするエレクトロクロミック機能システム5であって、層EC1及びEC2の間に、電解機能を有する1つ又は2つ以上の層EL
nが配置されている。
【0034】
層EC1及びEC2は、下記化合物のうちの少なくとも1つを、単独又は混合物として含む:酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化錫、酸化ビスマス、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化イリジウム、酸化アンチモン、酸化タンタル、及び/又は付加的な金属、例えばチタン、レニウム又はコバルト。そして層ELは電解機能を有しており、この層は実際には、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化アンチモン、酸化ニオビウム、酸化クロミニウム、酸化コバルト、酸化チタン、酸化錫、酸化ニッケル及び酸化亜鉛、これらを任意にはアルミニウム、ジルコニウム、アルミニウム又はケイ素で合金したもの、任意にはアルミニウム又は窒化ケイ素で合金したもの、任意にはアルミニウム又はホウ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム又は酸化バナジウムで合金したもの、任意にはアルミニウム又は酸化錫亜鉛で合金したもの、から選択された材料(これらの酸化物のうちの少なくとも1つは任意には水素化又は窒化されている)を基材とした少なくとも1つの層を組み合わせることによって形成することができる。
【0035】
本発明のこの実施態様の場合、エレクトロクロミック機能システム5は従って:
− 水和酸化イリジウムIrO
xH
yから形成された、厚さ70nmのアノード・エレクトロクロミック材料第1層EC1;
− 電解機能を有する、厚さ100nmの酸化タングステンWO
3第1層EL1;
− 電解機能を有する、厚さ100nmの水和タンタル第2層EL2;及び
− 酸化タングステンH
xWO
3を基材とする、厚さ380nmのカソード・エレクトロクロミック材料第2層EC2
を含んでおり;
−D) 赤外線を反射することができる金属層7は、素子の作業スペクトル範囲内で最適化される。具体的には金を基材とするこの金属層は従って、高導電性金属酸化物、例えばアルミニウム又はフッ素、SnO
2−ZnO、アルミニウム、白金、パラジウム、又は銅でドープされた酸化亜鉛を基材としてもよい。この金属層は、本発明によれば、2つの機能、つまり赤外線反射機能と、エレクトロクロミック層のための電流供給機能とを提供する;
−E) 熱可塑性ポリマーシート9は、ラミネートされたグレージングを得る目的で素子をラミネートするように意図されている。好ましくはこれは、ポリウレタン(PU)のシートであってよいが、しかしポリビニルブチラール(PVB)又はエチレンビニル/アセテート(EVA)を基材としてもよい。このポリマーシートは、エレクトロクロミック層EC1及びEC2に電流を供給する接続素子のための支持機能を満たすと有利である。任意には、基板1aの外面は、反射防止層12で被覆される。
【0036】
本発明によれば、エレクトロクロミック機能システム5は、もちろん、素子が提供しようと意図している結果に応じて、種々様々に形成することができる。
【0037】
図2に示されているように、本発明による素子は、これを外側からも内側からもシーリングすることができる手段を備えており、ひいては、2つの基板1a及び1bの内面と接触している第1周方向シール部材11を含んでいる。このシール部材11は、外部の化学的攻撃に対するバリアとして、そして蒸気の形態の水に対するバリアとして作用するように形成されている。
【0038】
素子はまた、第2周方向シール部材13を含んでいる。第2周方向シール部材13も、2つの基板1a及び1bの内面と接触しており、そして第1シール部材11の周面上に位置決めされている。これは液体水を通さないバリアを形成し、そして周方向溝を機械的に補強する手段を提供して、薄い基板が、ラミネート作業中又は連続的な取り扱い作業中に破断するのを防止する。
【0039】
本発明は、エレクトロクロミック層に電流を供給するために使用されるTCO、つまり透明導電性酸化物を使用せずに済むので特に有利である。これらの酸化物は、通常のエレクトロクロミック素子の低い切換速度の原因である。
【0040】
本発明によるグレージング上で行われた測定では、面積3x3cm
2のグレージングに対して1秒、面積30x30cm
2のグレージングに対して7秒、そして面積1m
2のグレージングに対して50秒のオーダーの切換時間が可能になった。
【0041】
さらに、
図3に示されているように、本発明による、赤外反射が制御されたエレクトロクロミック素子の着色状態と漂白状態との間の反射率の変化は、波長3nm〜5nmの赤外線に対して約15%であるので、有効である。