【実施例】
【0055】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0056】
<実施例1>
[粒子連結体の製造]
まず、ケッチェンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル(株)製、「ケッチェンブラックEC−600JD」、比表面積1270m
2/g)1.0gを、ポリアクリル酸2×10
−4mol/L水溶液に添加して、50℃にて5分間、超音波分散した。その後、当該水溶液をろ過し、ろ別された粉末を洗浄した。次に、ろ別された粉末を、塩化錫4.4×10
−1mol/L水溶液に添加して、25℃にて5分間、超音波分散した。その後、当該水溶液をろ過し、ろ別された粉末を洗浄した。続いて、ろ別された粉末を、塩化パラジウム5.6×10
−3mol/L水溶液に添加して、25℃にて5分間、超音波分散した。その後、当該水溶液をろ過し、ろ別された粉末を洗浄した。最後に、ろ別された粉末を、硝酸銀2×10
−2mol/L、硫酸アンモニウム7.5×10
−1mol/L、アンモニア2mol/L、および硫酸コバルト1×10
−1mol/Lの混合水溶液に添加して、25℃にて1分間、銀めっき処理を行った。銀めっき処理は、超音波および機械攪拌により、粉末を分散させながら行った。その後、当該水溶液をろ過し、ろ別された粉末を洗浄して、表面に銀めっき膜を有するケッチェンブラック粒子連結体を得た。ケッチェンブラック粒子連結体における銀めっき膜の含有割合は、ケッチェンブラック粒子連結体の全体を100体積%とした場合の10体積%であった。得られたケッチェンブラック粒子連結体は、本発明の第二連結体に含まれる。
【0057】
[導電膜の製造]
まず、アクリルゴムポリマー(日本ゼオン社製「ニポール(登録商標)AR14」)100質量部と、加工助剤のステアリン酸(花王社製「ルナック(登録商標)S30」)1質量部と、加硫剤の安息香酸アンモニウム(大内新興化学工業(株)製「バルノック(登録商標)AB−S」)2質量部と、をロール練り機にて混合し、エラストマー組成物を調製した。次に、調製したエラストマー組成物を、溶剤のメチルエチルケトン(MEK)に溶解させて、エラストマー溶液を調製した。続いて、調製したエラストマー溶液に、上記ケッチェンブラック粒子連結体を添加して、羽根攪拌の後、超音波洗浄槽で60分間処理することにより攪拌、混合して、導電塗料を調製した。ケッチェンブラック粒子連結体の配合量は、エラストマーおよび粒子連結体の全体を100体積%とした場合の、20体積%とした。それから、調製した導電塗料を、アクリル樹脂製の基材表面に、バーコート法により塗布した。その後、塗膜が形成された基材を、約170℃の乾燥炉内に約30分間静置して、塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させて、導電膜を得た。得られた導電膜の厚さは、10μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0058】
[粒子連結体の構造]
得られた導電膜を、液体窒素で凍らせた後、ピンセットで二つに割って断面を表出させた。当該断面を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製、「SEM−EDX S−3000」)により観察した。そして、ケッチェンブラック粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびケッチェンブラック粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は0.03μm、最長部分の長さは8μmであった。
【0059】
<実施例2>
[粒子連結体の製造]
実施例1と同様のケッチェンブラック1.0gについて、粗粉砕した後、銀ターゲットを用いたレーザーアブレーションにより、銀被覆処理を行った。レーザーアブレーションは、(株)奈良機械製作所製の装置を使用し、25℃にて2時間行った。このようにして、表面に銀被膜を有するケッチェンブラック粒子連結体を得た。ケッチェンブラック粒子連結体における銀被膜の含有割合は、ケッチェンブラック粒子連結体の全体を100体積%とした場合の1体積%であった。得られたケッチェンブラック粒子連結体は、本発明の第二連結体に含まれる。
【0060】
[導電膜の製造]
製造したケッチェンブラック粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。ケッチェンブラック粒子連結体の配合量は、実施例1と同様に、20体積%とした。また、導電膜の厚さは、10μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0061】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、ケッチェンブラック粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびケッチェンブラック粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は0.03μm、最長部分の長さは0.5μmであった。
【0062】
<実施例3>
[粒子連結体の製造]
実施例1と同様のケッチェンブラック1.0gについて、銀ターゲットを用いたレーザーアブレーションにより、銀被覆処理を行った。レーザーアブレーションは、処理時間を4時間に変更した以外は、実施例2と同様にして行った。得られたケッチェンブラック粒子連結体における銀被膜の含有割合は、ケッチェンブラック粒子連結体の全体を100体積%とした場合の6体積%であった。得られたケッチェンブラック粒子連結体は、本発明の第二連結体に含まれる。
【0063】
[導電膜の製造]
製造したケッチェンブラック粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。ケッチェンブラック粒子連結体の配合量は、実施例1と同様、20体積%とした。また、導電膜の厚さは、10μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0064】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、ケッチェンブラック粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびケッチェンブラック粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は0.03μm、最長部分の長さは2μmであった。
【0065】
<実施例4>
[粒子連結体の製造]
カーボンブラック(旭カーボン(株)製、「旭#52」、比表面積20m
2/g)1.0gについて、実施例1と同様にして銀めっき処理を行った。試薬液量は、実施例1におけるケッチェンブラックの比表面積と試薬液量との関係に従って決定した(以下、実施例5〜9、11についても同じ)。銀めっき処理の時間は、10分間とした。得られたカーボンブラック粒子連結体における銀めっき膜の含有割合は、カーボンブラック粒子連結体の全体を100体積%とした場合の63体積%であった。得られたカーボンブラック粒子連結体は、本発明の第二連結体に含まれる。
【0066】
[導電膜の製造]
製造したカーボンブラック粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。カーボンブラック粒子連結体の配合量は、30体積%とした。また、導電膜の厚さは、30μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0067】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、カーボンブラック粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびカーボンブラック粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は0.3μm、最長部分の長さは12μmであった。
【0068】
<実施例5>
[粒子連結体の製造]
実施例4と同様のカーボンブラック1.0gについて、銀めっき処理の時間を20分間とした以外は実施例4と同様にして、銀めっき処理を行った。得られたカーボンブラック粒子連結体における銀めっき膜の含有割合は、カーボンブラック粒子連結体の全体を100体積%とした場合の73体積%であった。得られたカーボンブラック粒子連結体は、本発明の第二連結体に含まれる。
【0069】
[導電膜の製造]
製造したカーボンブラック粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。カーボンブラック粒子連結体の配合量は、45体積%とした。また、導電膜の厚さは、30μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0070】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、カーボンブラック粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびカーボンブラック粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は0.3μm、最長部分の長さは15μmであった。
【0071】
<実施例6>
[粒子連結体の製造]
シリカ(東ソーシリカ(株)製、「ニプシールE1011」、比表面積140m
2/g)1.0gについて、実施例1と同様にして銀めっき処理を行った。銀めっき処理の時間は、10分間とした。得られたシリカ粒子連結体における銀めっき膜の含有割合は、シリカ粒子連結体の全体を100体積%とした場合の61体積%であった。得られたシリカ粒子連結体は、本発明の第二連結体に含まれる。
【0072】
[導電膜の製造]
製造したシリカ粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。シリカ粒子連結体の配合量は、35体積%とした。また、導電膜の厚さは、20μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0073】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、シリカ粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびシリカ粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は1.5μm、最長部分の長さは12μmであった。
【0074】
<実施例7>
[粒子連結体の製造]
珪酸ガラス(ポッターズバロティーニ(株)製、「EMB10」、比表面積0.5m
2/g)1.0gについて、実施例1と同様にして銀めっき処理を行った。銀めっき処理の時間は、10分間とした。得られた珪酸ガラス粒子連結体における銀めっき膜の含有割合は、珪酸ガラス粒子連結体の全体を100体積%とした場合の52体積%であった。得られた珪酸ガラス粒子連結体は、本発明の第一連結体に含まれる。
【0075】
[導電膜の製造]
製造した珪酸ガラス粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。珪酸ガラス粒子連結体の配合量は、40体積%とした。また、導電膜の厚さは、20μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0076】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、珪酸ガラス粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、および珪酸ガラス粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は2.0μm、最長部分の長さは14μmであった。
【0077】
<実施例8>
[粒子連結体の製造]
アクリル樹脂粉末(根上工業(株)製、「アートパール(登録商標)J−4PY」、比表面積0.4m
2/g)1.0gについて、実施例1と同様にして銀めっき処理を行った。銀めっき処理の時間は、5分間とした。得られたアクリル樹脂粒子連結体における銀めっき膜の含有割合は、アクリル樹脂粒子連結体の全体を100体積%とした場合の32体積%であった。得られたアクリル樹脂粒子連結体は、本発明の第一連結体に含まれる。
【0078】
[導電膜の製造]
製造したアクリル樹脂粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。この際、エラストマーとしては、実施例1とは異なるアクリルゴムポリマー(日本ゼオン社製「ニポールAR51」)を用いた。アクリル樹脂粒子連結体の配合量は、45体積%とした。また、導電膜の厚さは、60μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0079】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、アクリル樹脂粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびアクリル樹脂粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は2.2μm、最長部分の長さは24μmであった。
【0080】
<実施例9>
[粒子連結体の製造]
カーボンブラック(旭カーボン(株)製、「旭F−200」、比表面積55m
2/g)1.0gについて、実施例1と同様にして銀めっき処理を行った。銀めっき処理の時間は、10分間とした。得られたカーボンブラック粒子連結体における銀めっき膜の含有割合は、カーボンブラック粒子連結体の全体を100体積%とした場合の30体積%であった。得られたカーボンブラック粒子連結体は、本発明の第二連結体に含まれる。
【0081】
[導電膜の製造]
製造したカーボンブラック粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。この際、エラストマーとしては、実施例1とは異なるアクリルゴムポリマー(日本ゼオン社製「ニポールAR51」)を用いた。カーボンブラック粒子連結体の配合量は、35体積%とした。また、導電膜の厚さは、30μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0082】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、カーボンブラック粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびカーボンブラック粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は0.2μm、最長部分の長さは13μmであった。
【0083】
<実施例10>
[導電膜の製造]
まず、シリコーンゴムポリマー(信越化学工業(株)製「KE−1950−10」2液型)の1液に、実施例9にて製造したカーボンブラック粒子連結体を添加した。次に、2液を加えて、導電塗料を調製した。カーボンブラック粒子連結体の配合量は、エラストマーおよび粒子連結体の全体を100体積%とした場合の、35体積%とした。それから、調製した導電塗料を、アクリル樹脂製の基材表面に、バーコート法により塗布した。その後、塗膜が形成された基材を、約120℃の乾燥炉内に約10分間静置して、塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させた。さらに、約150℃の乾燥炉内に約1時間静置して、二次架橋を行い、導電膜を得た。得られた導電膜の厚さは、30μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0084】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、カーボンブラック粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびカーボンブラック粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は0.2μm、最長部分の長さは13μmであった。
【0085】
<実施例11>
[粒子連結体の製造]
カーボンブラック(三菱樹脂(株)製、「#3050B」、比表面積50m
2/g)1.0gについて、ニッケルめっき処理を行った。まず、カーボンブラックの粉末を塩化パラジウム水溶液で処理する工程までを、実施例1と同様にして行った。次に、ろ別された粉末を、「トップニコロン(登録商標)F−153A」(奥野製薬工業(株)製)100ml/L、および「トップニコロンF−153B」(同上)200ml/Lの混合水溶液に添加して、80℃にて20分間、ニッケルめっき処理を行った。ニッケルめっき処理は、超音波および機械攪拌により、粉末を分散させながら行った。得られたカーボンブラック粒子連結体におけるニッケルめっき膜の含有割合は、カーボンブラック粒子連結体の全体を100体積%とした場合の15体積%であった。得られたカーボンブラック粒子連結体は、本発明の第二連結体に含まれる。
【0086】
[導電膜の製造]
製造したカーボンブラック粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。カーボンブラック粒子連結体の配合量は、30体積%とした。また、導電膜の厚さは、10μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0087】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、カーボンブラック粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびカーボンブラック粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は0.03μm、最長部分の長さは1.5μmであった。
【0088】
<比較例1>
[導電膜の製造]
銀粉末(DOWAエレクトロニクス(株)製、「AG2−1C」を、実施例1にて調製したエラストマー溶液に添加して、導電塗料を調製した。銀粉末の配合量は、50体積%とした。それから、調製した導電塗料を、アクリル樹脂製の基材表面に、バーコート法により塗布した。その後、塗膜が形成された基材を、約170℃の乾燥炉内に約30分間静置して、塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させて、導電膜を得た。得られた導電膜の厚さは、10μmであった。
【0089】
<比較例2>
[導電膜の製造]
まず、アクリルゴムポリマー(同上)100質量部と、加工助剤のステアリン酸(同上)1質量部と、加硫促進剤のジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(大内新興化学工業(株)製「ノクセラー(登録商標)PZ」)2.5質量部と、加硫剤のジメチルジチオカルバミン酸鉄(大内新興化学工業(株)製「ノクセラー(登録商標)TTFE」)0.5質量部と、をロール練り機にて混合し、エラストマー組成物を調製した。次に、調製したエラストマー組成物を、溶剤のメチルエチルケトン(MEK)に溶解させて、エラストマー溶液を調製した。続いて、調製したエラストマー溶液に、実施例1で使用したケッチェンブラックをそのまま添加して、導電塗料を調製した。ケッチェンブラックの配合量は、20体積%とした。そして、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。得られた導電膜の厚さは、10μmであった。
【0090】
<比較例3>
[導電膜の製造]
銀粉末の配合量を、20体積%とした以外は、比較例1と同様にして、導電膜を製造した。得られた導電膜の厚さは、10μmであった。
【0091】
以上、製造した実施例および比較例の各導電膜における、エラストマーおよび粒子連結体についての詳細を、表1にまとめて示す。
【表1】
【0092】
<評価方法>
製造した導電膜について、柔軟性および導電性を評価した。以下、各々の評価方法について説明する。
【0093】
[柔軟性]
導電膜の柔軟性を評価するために、弾性率を測定した。各導電膜について、JIS K6254(2003)に規定された低変形引張試験を行い、静的せん断弾性率を算出した。
【0094】
[導電性]
導電膜の体積抵抗率を、JIS K6271(2008)に準じて測定した。体積抵抗率の測定は、伸張の程度を変えて三種類行った。すなわち、一つ目は、自然状態(伸張なし)で測定し、二つ目は、伸張率50%で伸張した状態で測定し、三つ目は、伸張率100%で伸張した状態で測定した。ここで、伸張率は、次式(I)により算出した値である。
伸張率(%)=(ΔL
0/L
0)×100・・・(I)
[L
0:試験片の標線間距離、ΔL
0:試験片の標線間距離の伸張による増加分]
<評価結果>
実施例および比較例の導電膜の評価結果を、上記表1にまとめて示す。表1中、評価結果には、自然状態(伸張なし)の体積抵抗率を「Rv0」と、伸張率50%で伸張した状態の体積抵抗率を「Rv50」と、伸張率100%で伸張した状態の体積抵抗率を「Rv100」と、表記している。まず、各導電膜の柔軟性および導電性を考察する。次に、各導電膜の電極への適用を考察する。
【0095】
[柔軟性]
表1に示すように、実施例の導電膜については、弾性率が15MPa以下であり、軟らかいことが確認された。特に、粒子連結体としてケッチェンブラック、シリカ、珪酸ガラスを用いた実施例1〜3、6、7の導電膜では、弾性率が低くなった。これに対して、比較例1の導電膜は、粒子連結体ではなく、銀粉末をそのままアクリルゴムに分散させて製造されている。銀粉末は、連結構造を持たない。よって、アクリルゴム中に導電パスを形成させるために、配合量が多くなった。したがって、比較例1の導電膜は、弾性率が高く、硬くなった。
【0096】
[導電性]
表1に示すように、実施例の導電膜は、いずれも自然状態において高い導電性を示した。また、いずれにおいても、伸張時における体積抵抗率の増加が小さかった。これに対して、粒子連結体を有しない比較例1の導電膜では、伸張時に大幅に体積抵抗率が増加した。つまり、伸張時に導電性が低下した。また、比較例1と比較して、銀粉末の配合量が少ない比較例3の導電膜では、導電パスが形成されていない。このため、導電性が得られなかった。また、比較例2の導電膜は、ケッチェンブラックをそのままアクリルゴムに分散させて製造されている。金属層を有しないため、比較例2の導電膜では体積抵抗率が大きい。つまり、導電性が低い。
【0097】
実施例の導電膜の一例として、
図7に、実施例4の導電膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した写真を示す。また、比較のため、
図8に、比較例3の導電膜の断面をSEMで観察した写真を示す。
図7と
図8とを比較してわかるように、粒子連結体を分散させた実施例4の導電膜においては、粒子の連結構造が見られる。一方、銀粉末を分散させた比較例3の導電膜においては、粒子の連結構造は見られない。つまり、導電パスが形成されていない。このため、比較例3の導電膜では、導電性が得られなかった。
【0098】
また、実施例2の導電膜と実施例3の導電膜とを比較すると、レーザーアブレーションの処理時間の違いにより、金属層の含有割合が異なることがわかる。そして、金属層の含有割合が大きい実施例3の導電膜の方が、体積抵抗が小さくなった。つまり、金属含有量が多い分だけ、導電性が向上した。
【0099】
また、
図9に、実施例9の導電膜の断面をSEMで観察した写真を示す。
図10に、実施例10の導電膜の断面をSEMで観察した写真を示す。
図9と
図10とを比較すると、実施例9の導電膜において、粒子連結体の分散状態がより均一であることがわかる。一方、実施例10の導電膜では、粒子連結体の分散状態に粗密が散見される。これは、母材のエラストマーの極性の違いによると考えられる。すなわち、アクリルゴムのSP値は9程度であるのに対して、シリコーンゴムのSP値は7程度である。したがって、アクリルゴムを母材とする実施例9の導電膜の方が、粒子連結体の分散性が良好である。これにより、実施例9の導電膜は、実施例10の導電膜と比較して、伸張時に導電パスが切断されにくいと考えられる。その結果、伸張時の体積抵抗率の増加が抑制される。
【0100】
[アクチュエータ、エラストマーセンサの電極への適用]
上述したように、本発明の柔軟導電材料は、柔軟性および導電性が高く、伸張時にも電気抵抗が増加しにくいことが確認された。そこで、アクチュエータ、エラストマーセンサの電極に要求される弾性率、体積抵抗率の目標値を各々設定し、上記実施例および比較例の導電膜について、電極としての適用性を検討した。検討結果を、表2に示す。表2中、○印は、目標値に達していることを示し、×印は、目標値に達していないことを示す。
【表2】
【0101】
表2に示すように、実施例3、6の導電膜については、柔軟性、導電性共に、アクチュエータおよびエラストマーセンサの目標値を満足するものであった。つまり、実施例3、6の導電膜は、アクチュエータおよびエラストマーセンサのどちらの電極にも好適であるといえる。また、実施例1、2、11の導電膜については、アクチュエータの目標値には達しているものの、エラストマーセンサの導電性の目標値には達していなかった。したがって、実施例1、2、11の導電膜は、アクチュエータの電極に好適であるといえる。さらに、実施例4、5、7〜10の導電膜については、エラストマーセンサの目標値には達しているものの、アクチュエータの弾性率の目標値には達していなかった。したがって、実施例4、5、7〜10の導電膜は、エラストマーセンサの電極に好適であるといえる。
【0102】
一方、比較例1の導電膜は、弾性率が大きく柔軟性に乏しい。このため、アクチュエータおよびエラストマーセンサのいずれの電極にも不適である。また、比較例2の導電膜は、導電性が低い。このため、アクチュエータおよびエラストマーセンサのいずれの電極にも不適である。また、比較例3の導電膜は、導電性を有しない。このため、アクチュエータおよびエラストマーセンサのいずれの電極にも不適である。