特許第5711124号(P5711124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5711124
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】柔軟導電材料およびトランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20150409BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20150409BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20150409BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20150409BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20150409BHJP
   H02N 11/00 20060101ALN20150409BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08K9/02
   H01B1/22 Z
   H01B1/00 C
   H04R17/00
   !H02N11/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-520896(P2011-520896)
(86)(22)【出願日】2010年6月25日
(86)【国際出願番号】JP2010060829
(87)【国際公開番号】WO2011001910
(87)【国際公開日】20110106
【審査請求日】2011年11月21日
(31)【優先権主張番号】特願2009-154983(P2009-154983)
(32)【優先日】2009年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 渉
(72)【発明者】
【氏名】片山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 淳
(72)【発明者】
【氏名】吉川 均
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−238588(JP,A)
【文献】 特開昭59−078248(JP,A)
【文献】 特表2002−541616(JP,A)
【文献】 特開2004−285128(JP,A)
【文献】 特開平07−136489(JP,A)
【文献】 特開平03−129607(JP,A)
【文献】 特開平10−101962(JP,A)
【文献】 特開2009−054377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
C08K 3/00−13/08
H01B 1/00−19/04
H04R 1/00−31/00
H02N 1/00−99/00
C09J 1/00−201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーと、
該エラストマー中に分散され、炭素材料、金属酸化物、シリカ、樹脂から選ばれる一種以上の粒子を含む粒子連結体と、を有し、
該粒子連結体は、該粒子の表面に金属層が形成されている金属被覆粒子が複数連結されてなる第一連結体と、複数の該粒子が連結した連結体の表面に金属層が形成されてなる第二連結体と、の少なくとも一方を含み、
該第一連結体を構成する該金属被覆粒子および該第二連結体を構成する該粒子の平均粒子径は0.03μm以上2.2μm以下であり、
該第一連結体および該第二連結体の最長部分の長さは0.3μmより大きいことを特徴とする柔軟導電材料。
【請求項2】
前記エラストマーは、極性を有する請求項1に記載の柔軟導電材料。
【請求項3】
前記エラストマーは、架橋ゴムである請求項1に記載の柔軟導電材料。
【請求項4】
前記第一連結体および前記第二連結体における前記金属層の含有割合は、各々、該第一連結体または該第二連結体の全体を100体積%とした場合の1体積%以上75体積%以下である請求項1に記載の柔軟導電材料。
【請求項5】
前記第一連結体および前記第二連結体における前記金属層は、無電解めっき、蒸着、スパッタリング、レーザーアブレーションのいずれかにより形成されている請求項1に記載の柔軟導電材料。
【請求項6】
エラストマーからなる誘電膜と、該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、を備え、
複数の該電極は、請求項1に記載の柔軟導電材料から形成されていることを特徴とするトランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮可能な電極、配線等に好適な柔軟導電材料、およびそれから形成された電極を備えるトランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
トランスデューサには、機械エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うアクチュエータ、センサ等や、音響エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うスピーカ、マイクロフォン等がある。柔軟性を有し、小型で軽量なトランスデューサの材料として、誘電体エラストマー等の高分子材料が使用されている。例えば、誘電体エラストマーからなる誘電膜を、一対の電極で狭持して、アクチュエータを構成することができる(例えば、特許文献1参照)。この種のアクチュエータでは、電極間への印加電圧を変化させて、誘電膜を伸張、収縮させることにより、駆動対象部材を駆動させる。
【0003】
このようなトランスデューサでは、エラストマー等からなる誘電膜等の変形に、電極や配線が追従可能であることが要求される。すなわち、例えばアクチュエータでは、誘電膜の表裏に配置されている電極が、誘電膜の動きを妨げないように、誘電膜の伸縮に応じて伸縮可能であることが望ましい。電極や配線に使用できる材料として、例えば、エラストマー等のバインダーに、導電性カーボンや金属粉末を配合した導電材料がある(例えば、特許文献2〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−506858号公報
【特許文献2】特開2009−59856号公報
【特許文献3】特開2002−100237号公報
【特許文献4】特開2005−166322号公報
【特許文献5】特許第3609573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、カーボンブラックは、数十nmの一次粒子がストラクチャーといわれる連結構造を形成した二次粒子からなる。カーボンブラックをエラストマーに分散させると、ストラクチャーによる導電パスが形成されるため、エラストマーに導電性を付与することができる。また、導電パスは網目状に形成されるため、エラストマーを伸縮させても導電パスは切れにくく、電気抵抗が増加しにくい。しかし、カーボンブラック自体の電気抵抗が比較的大きいため、充填量を増加させたとしても、さらなる導電性の向上は難しい。
【0006】
これに対して、金属粉末の電気抵抗は、カーボンブラックよりも小さい。しかし、金属粉末は、ストラクチャーを形成しない。このため、導電パスを形成するためには、金属粒子同士を接触させるために、エラストマー中に金属粉末を比較的多量に充填する必要がある。この場合、エラストマー材料が硬くなり、柔軟性が低下する。よって、金属粉末を高充填したエラストマー材料を、例えばアクチュエータの電極に使用した場合には、誘電膜の伸縮に追従できないため、誘電膜の動きを阻害するおそれがある。また、伸張された時に、大きく電気抵抗が増加してしまうという問題もあった。
【0007】
一方、上記特許文献5には、表面が金属めっきされたカーボンブラックを樹脂に分散させたPTC組成物が開示されている。PTC組成物の母材は、ポリエチレン等の樹脂である。樹脂の弾性率は高いため、PTC組成物は硬く、柔軟性に乏しい。また、PTC組成物は、所定の温度範囲で電気抵抗が急増するという特性を有するものである。上記特許文献5によると、当該特性を発現させるために、カーボンブラックのめっき量を、1〜8質量%に限定している。めっき量が少量であるため、カーボンブラックの導電性の向上効果は小さい。このように、異なる目的で開発されたPTC組成物を、上記トランスデューサの電極等の材料に使用することはできない。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、軟らかく伸縮可能であって、伸張時にも電気抵抗が増加しにくい柔軟導電材料を提供することを課題とする。また、当該柔軟導電材料から形成された電極を備える柔軟なトランスデューサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するため、本発明の柔軟導電材料は、エラストマーと、該エラストマー中に分散された粒子連結体と、を有し、該粒子連結体は、粒子の表面に金属層が形成されている金属被覆粒子が複数連結されてなる第一連結体と、複数の粒子が連結した連結体の表面に金属層が形成されてなる第二連結体と、の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の柔軟導電材料は、エラストマーを母材とする。したがって、本発明の柔軟導電材料は、柔軟であり、伸縮可能である。このため、本発明の柔軟導電材料を、誘電膜等の弾性基材の表面に形成した場合には、当該弾性基材の変形に追従して変形することができる。つまり、本発明の柔軟導電材料は、弾性基材の動きを阻害しにくい。
【0011】
また、母材に分散される粒子連結体は、第一連結体と第二連結体との少なくとも一方を含む。つまり、第一連結体および第二連結体のいずれか一方のみを含んでいてもよく、両方を含んでいてもよい。第一連結体を構成する個々の金属被覆粒子は、表面に金属層が形成されている粒子である。形成されている金属層は、粒子表面の全体または一部を覆う金属被膜や、粒子表面の全体または一部に金属粒子が付着している態様を含む。このような金属被覆粒子が複数連結されているため、第一連結体の表面には、金属層が表出している。一方、第二連結体は、複数の粒子が連結した連結体の表面に金属層が形成されてなる。すなわち、第二連結体の表面には、金属層が表出している。
【0012】
エラストマー中に、第一連結体および第二連結体の少なくとも一方を分散させると、表出している金属層により、エラストマー中に導電パスを形成することができる。これにより、本発明の柔軟導電材料は、高い導電性を有する。また、形成された導電パスは、分散された粒子連結体により構築された網目構造を有している。このため、伸縮を繰り返しても、導電パスは切断されにくい。したがって、本発明の柔軟導電材料は、伸張時にも電気抵抗が増加しにくい。また、粒子連結体は、連結構造を有しない導電粒子と比較して、比較的少量で導電パスを形成することができる。このため、粒子連結体の配合により、エラストマーの柔軟性が低下するおそれは少ない。
【0013】
(2)また、本発明のトランスデューサは、エラストマーからなる誘電膜と、該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、を備え、複数の該電極は、上記(1)の柔軟導電材料から形成されていることを特徴とする。
【0014】
トランスデューサは、ある種類のエネルギーを他の種類のエネルギーに変換する装置である。トランスデューサには、機械エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うアクチュエータ、センサ等や、音響エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うスピーカ、マイクロフォン等が含まれる。本発明のトランスデューサによると、電極が上記本発明の柔軟導電材料から形成されている。よって、誘電膜が変形した場合でも、電極が変形に追従して伸縮する。このため、トランスデューサの動きが、電極により妨げられにくい。また、電極において、伸張時の導電性の低下は少なく、繰り返し変形した場合でも、内部抵抗による発熱が少ない。よって、本発明のトランスデューサは耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のトランスデューサの一実施形態である静電容量型センサの上面図である。
図2図1のII−II断面図である。
図3】本発明のトランスデューサの一実施形態であるアクチュエータの断面模式図であって、(a)はオフ状態、(b)はオン状態を各々示す。
図4】本発明のトランスデューサの一実施形態である発電トランスデューサの断面模式図であって、(a)は伸張時、(b)は収縮時を示す。
図5】本発明のトランスデューサの一実施形態であるスピーカの斜視図を示す。
図6図5のVI−VI断面図である。
図7】実施例4の導電膜の断面のSEM写真である。
図8】比較例3の導電膜の断面のSEM写真である。
図9】実施例9の導電膜の断面のSEM写真である。
図10】実施例10の導電膜の断面のSEM写真である。
【符号の説明】
【0016】
1:静電容量型センサ(トランスデューサ) 10:誘電膜 11a、11b:電極
12a、12b:配線 13a、13b:カバーフィルム 14:コネクタ
2:アクチュエータ(トランスデューサ) 20:誘電膜 21a、21b:電極
22:電源
3:発電トランスデューサ 30:誘電膜 31a、31b:電極
4:スピーカ(トランスデューサ)
40a:第一アウタフレーム 40b:第二アウタフレーム
41a:第一インナフレーム 41b:第二インナフレーム
42a:第一誘電膜 42b:第二誘電膜
43a:第一アウタ電極 43b:第二アウタ電極
44a:第一インナ電極 44b:第二インナ電極
45a:第一振動板 45b:第二振動板
430a、430b、440a、440b:端子 460:ボルト 461:ナット
462:スペーサ
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の柔軟導電材料、およびそれから形成された電極を備える本発明のトランスデューサの実施形態について説明する。
【0018】
<柔軟導電材料>
[エラストマー]
本発明の柔軟導電材料を構成するエラストマーとしては、ゴムおよび熱可塑性エラストマーの中から適宜選択すればよい。エラストマーの種類は、特に限定されるものではないが、常温下で柔軟であるという観点から、アクリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等が挙げられる。
【0019】
また、粒子連結体の分散性等を考慮すると、極性が大きいものが望ましい。極性の大小は、例えばSP値(溶解度パラメータ)により判断することができる。例えば、SP値が8以上のエラストマーは、極性が大きいと判断してよい。このようなエラストマーとしては、例えば、アクリルゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン等が挙げられる。
【0020】
エラストマーは、可塑剤、加工助剤、架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、軟化剤、着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。例えば、可塑剤を添加すると、エラストマーの加工性が向上すると共に、柔軟性をより向上させることができる。可塑剤としては、公知のフタル酸ジエステル等の有機酸誘導体、リン酸トリクレジル等のリン酸誘導体、アジピン酸ジエステル、塩素化パラフィン、ポリエーテルエステル等を使用すればよい。
【0021】
また、伸縮性に富むという観点から、エラストマーとして架橋ゴムを使用することが望ましい。架橋方法は、硫黄架橋、パーオキサイド架橋、ウレタン架橋、エポキシ架橋、ヒドロシリル架橋等、橋架けによりゴム弾性を向上させる方法であればよい。この場合、後述する第一連結体および第二連結体における金属層の腐食等を考慮して、硫黄を含まない架橋剤、加硫促進剤等を選択するとよい。例えば、金属層が銀、ニッケル、銅から形成されており、アクリルゴムポリマーを架橋する場合には、架橋剤に安息香酸アンモニウム等を使用すると好適である。
【0022】
[粒子連結体]
エラストマーには粒子連結体が分散されている。粒子連結体は、第一連結体と、第二連結体と、の少なくとも一方を含む。
【0023】
第一連結体は、粒子の表面に金属層が形成されている金属被覆粒子が複数連結されてなる。第一連結体を構成する粒子は、自然状態では連結していない。しかし、表面に金属層を形成する金属被覆処理を行う際に、粒子同士が連結する。したがって、当該粒子に金属被覆処理を施すことにより、金属被覆粒子が複数連結した第一連結体が製造される。
【0024】
第二連結体は、複数の粒子が連結した連結体の表面に金属層が形成されてなる。第二連結体を構成する粒子は、自然状態で元々連結体を構成している。よって、連結体に金属被覆処理を施すことにより、表面に金属層が形成されて、第二連結体が製造される。
【0025】
第一連結体、第二連結体を構成する粒子には、例えば、グラファイトやカーボンブラック等の炭素材料、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物、シリカ等の無機物、アクリルやウレタン等の樹脂等を用いることができる。これらの粒子は、自然状態における連結構造の有無により、第一連結体、第二連結体のいずれかを構成する。なかでも、金属層を形成しやすい(例えば、めっきする際に水溶液に分散させやすい等)、金属層が剥離しにくい等の理由から、表面にカルボキシル基(COOH)、水酸基(OH)、カルボニル基(C=O)等が存在する金属酸化物の粒子、シリカ粒子、およびカーボンブラックが好適である。また、比重が小さいため、塗料化した際に沈降しにくいという理由から、シリカ粒子、樹脂粒子、およびカーボンブラックが好適である。以下、第一連結体および第二連結体についてまとめて説明する。
【0026】
第一連結体および第二連結体における金属層の形成は、粒子の種類や形状、金属の種類等に応じて、無電解めっき、蒸着、スパッタリング、レーザーアブレーション等の公知の方法から適宜選択すればよい。
【0027】
例えば、無電解めっきを行う場合には、水溶液中に粒子を充分に分散させることが重要である。例えば、超音波や機械攪拌により、脱アグロメレート処理を行い、めっき処理も、超音波および機械攪拌下で行うことが望ましい。このようなめっき処理により、攪拌方向に伸びるようにして連なる粒子連結体が得られる。粒子連結体が一方向に長さを持つと、少量で導電パスを形成することができる。なお、疎水性の粒子を用いる場合は、適宜、界面活性剤等の分散剤を用いてもよい。また、粒子の比重や大きさに応じて、機械攪拌の速度を調整することにより、連結状態を制御することができる。例えば、攪拌速度が大きすぎると、めっき層(金属層)が析出しにくくなる。反対に、攪拌速度が小さすぎると、粒子が沈殿しやすくなり、粒子の凝集体にめっきされてしまう。
【0028】
粒子の比表面積(窒素吸着法)は、0.4m/g以上1270m/g以下であることが望ましい。比表面積が小さすぎると粒子が大きくなるため、粒子連結体を形成しにくくなる。また、所望の導電性を発現させるために必要な粒子連結体の配合量が、多くなる。一方、比表面積が大きくなると、エラストマー中で粒子連結体が分散しにくくなる。このため、効率的な導電パスが形成されにくくなる。
【0029】
第一連結体および第二連結体における金属層の含有割合は、各々、第一連結体または第二連結体の全体を100体積%とした場合の1体積%以上であることが望ましい。1体積%未満の場合には、所望の導電性を得ることが難しい。5体積%以上とするとより好適である。また、金属層の含有割合は、各々、第一連結体または第二連結体の全体を100体積%とした場合の75体積%以下であることが望ましい。75体積%を超えると、粒子の連結構造が失われるおそれがある。よって、エラストマー中に分散した場合に、所望の導電パスを形成することが難しくなる。65体積%以下とするとより好適である。
【0030】
第一連結体および第二連結体を構成する粒子数は、10個以上であることが望ましい。また、第一連結体を構成する金属被覆粒子、および第二連結体を構成する粒子の平均粒子径は、各々3μm未満とすることが望ましい。平均粒子径が3μm以上になると、エラストマーの単位体積当たりの導電パスの数が少なくなるため、所望の導電性を得ることが難しくなる。ここで、導電性を向上するために、粒子連結体を多量に配合すると、柔軟導電材料の弾性率が高くなり、柔軟性が低下してしまう。本明細書では、第一連結体を構成する金属被覆粒子、および第二連結体を構成する粒子の平均粒子径として、次のように算出した値を採用する。
【0031】
すなわち、柔軟導電材料を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、一つの粒子連結体を構成する個々の金属被覆粒子または粒子の最短径を測定し、それらの平均値を平均粒子径とする。なお、第二連結体については、個々の粒子の最短径は、適宜、表面の金属層を含んで測定されている。
【0032】
また、第一連結体および第二連結体の最長部分の長さは、0.3μmより大きいことが望ましい。最長部分の長さが0.3μm以下の場合には、導電パスが形成されにくい。このため、所望の導電性を得るためには、粒子連結体を多量に配合しなければならない。その結果、柔軟導電材料の弾性率が高くなり、柔軟性が低下してしまう。また、柔軟導電材料を、薄膜に成形して使用する場合には、最長部分の長さを、膜厚以下にすることが望ましい。
【0033】
[製造方法]
本発明の柔軟導電材料は、例えば、エラストマー分のポリマー(適宜添加剤を含む)と粒子連結体とを、ニーダー、バンバリーミキサー等の加圧式混練機、二本ロール等により混練し、混練された材料を、金型成形や押出成形して製造することができる。また、次の方法により製造してもよい。まず、エラストマー分のポリマー(適宜添加剤を含む)を溶剤に溶解した溶液を調製する。次に、調製した溶液に、粒子連結体を添加して、超音波、ビーズミル、三本ロール等で攪拌、混合して導電塗料を調製する。この際、粒子連結体を所望の形状、大きさにするために、攪拌混合条件を調整する。続いて、調製した導電塗料を基材等に塗布し、加熱により乾燥させる。この場合、加熱時に、エラストマー分の架橋反応を進行させることができる。ここで、導電塗料の塗布方法は、既に公知の種々の方法を採用することができる。例えば、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、リソグラフィー等の印刷法の他、ディップ法、スプレー法、バーコート法等が挙げられる。導電塗料を用いると、柔軟導電材料からなる薄膜を、容易に製造することができる。
【0034】
エラストマーへの粒子連結体の配合量は、所望の導電性および柔軟性が実現できるように決定すればよい。例えば、柔軟導電材料(エラストマーおよび粒子連結体)全体を100体積%とした場合の、15体積%以上50体積%以下とすることが望ましい。20体積%以上45体積%以下とするとより好適である。
【0035】
本発明の柔軟導電材料は、トランスデューサの電極や配線等の材料に好適である。以下に、本発明の柔軟導電材料から形成された電極を備えたトランスデューサの例として、エラストマーセンサ、アクチュエータ、発電トランスデューサ、およびスピーカの実施形態を説明する。本発明のトランスデューサにおいても、上述した本発明の柔軟導電材料の好適な態様を採用することが望ましい。また、本発明のトランスデューサは、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0036】
<エラストマーセンサ>
本発明の柔軟導電材料を、電極および配線の材料として使用したエラストマーセンサの一例として、静電容量型センサの実施形態を説明する。まず、本実施形態の静電容量型センサの構成について説明する。図1に、静電容量型センサの上面図を示す。図2に、図1のII−II断面図を示す。図1図2に示すように、静電容量型センサ1は、誘電膜10と一対の電極11a、11bと配線12a、12bとカバーフィルム13a、13bとを備えている。
【0037】
誘電膜10は、ウレタンゴム製であって、左右方向に延びる帯状を呈している。誘電膜10の厚さは、約300μmである。
【0038】
電極11aは、長方形状を呈している。電極11aは、誘電膜10の上面に、スクリーン印刷により三つ形成されている。同様に、電極11bは、長方形状を呈している。電極11bは、誘電膜10を挟んで電極11aと対向するように、誘電膜10の下面に三つ形成されている。電極11bは、誘電膜10の下面に、スクリーン印刷されている。このように、誘電膜10を挟んで、電極11a、11bが三対配置されている。電極11a、11bは、本発明の柔軟導電材料からなる。
【0039】
配線12aは、誘電膜10の上面に形成された電極11aの一つ一つに、それぞれ接続されている。配線12aにより、電極11aとコネクタ14とが結線されている。配線12aは、誘電膜10の上面に、スクリーン印刷により形成されている。同様に、配線12bは、誘電膜10の下面に形成された電極11bの一つ一つに、それぞれ接続されている(図1中、点線で示す)。配線12bにより、電極11bとコネクタ(図略)とが結線されている。配線12bは、誘電膜10の下面に、スクリーン印刷により形成されている。配線12a、12bは、本発明の柔軟導電材料からなる。
【0040】
カバーフィルム13aは、アクリルゴム製であって、左右方向に延びる帯状を呈している。カバーフィルム13aは、誘電膜10、電極11a、配線12aの上面を覆っている。同様に、カバーフィルム13bは、アクリルゴム製であって、左右方向に延びる帯状を呈している。カバーフィルム13bは、誘電膜10、電極11b、配線12bの下面を覆っている。
【0041】
次に、静電容量型センサ1の動きについて説明する。例えば、静電容量型センサ1が上方から押圧されると、誘電膜10、電極11a、カバーフィルム13aは一体となって、下方に湾曲する。圧縮により、誘電膜10の厚さは小さくなる。その結果、電極11a、11b間のキャパシタンスは大きくなる。このキャパシタンス変化により、圧縮による変形が検出される。
【0042】
次に、本実施形態の静電容量型センサ1の作用効果について説明する。本実施形態の静電容量型センサ1によると、誘電膜10、電極11a、11b、配線12a、12b、カバーフィルム13a、13bは、いずれもエラストマー材料からなる。このため、静電容量型センサ1の全体が柔軟であり、伸縮可能である。また、電極11a、11bは伸縮可能であるため、誘電膜10の変形に追従して変形することができる。さらに、電極11a、11bおよび配線12a、12bは、伸張されても電気抵抗の増加が小さい。このため、静電容量型センサ1の応答性は良好である。なお、本実施形態の静電容量型センサ1には、誘電膜10を狭んで対向する電極11a、11bが、三対形成されている。しかし、電極の数、大きさ、配置等は、用途に応じて、適宜決定すればよい。
【0043】
<アクチュエータ>
本発明の柔軟導電材料を電極の材料に使用したアクチュエータの実施形態を説明する。図3に、本実施形態のアクチュエータの断面模式図を示す。(a)はオフ状態、(b)はオン状態を各々示す。図3に示すように、アクチュエータ2は、誘電膜20と電極21a、21bとを備えている。誘電膜20は、ウレタンゴム製である。電極21a、21bは、誘電膜20の表裏に、それぞれ配置されている。電極21a、21bは、配線を介して電源22に接続されている。オフ状態からオン状態に切り替える際は、一対の電極21a、21b間に電圧を印加する。電圧を印加すると、発生したクーロン力により、誘電膜20の膜厚は薄くなる。その分だけ、誘電膜20は、図3(b)中白抜き矢印で示すように、電極21a、21b面に対して平行方向(横方向)に伸張する。これにより、アクチュエータ2は、図3中、横および上下方向の駆動力を出力する。
【0044】
ここで、電極21a、21bは、本発明の柔軟導電材料からなる。電極21a、21bは伸縮可能であるため、誘電膜20の変形に追従して変形することができる。すなわち、誘電膜20の動きが電極21a、21bにより妨げられにくい。このため、より大きな変位量を得ることができる。さらに、電極21a、21bは、伸張されても電気抵抗の増加が小さい。このため、クーロン力の維持が可能である。また、内部抵抗による発熱が少ないため、電極21a、21bは、劣化しにくい。すなわち、アクチュエータ2は耐久性に優れる。
【0045】
なお、複数の誘電膜と電極とを交互に積層させた積層構造とすると、より大きな力を発生させることができる。この際懸念される応答性の低下に対しても、本発明は効果的である。積層構造を採用することにより、アクチュエータの出力が大きくなり、駆動対象部材をより大きな力で駆動させることができる。
【0046】
<発電トランスデューサ>
本発明の柔軟導電材料を電極の材料に使用した発電トランスデューサの実施形態を説明する。図4に、本実施形態の発電トランスデューサの断面模式図を示す。(a)は伸張時、(b)は収縮時を各々示す。図4に示すように、発電トランスデューサ3は、誘電膜30と電極31a、31bとを備えている。誘電膜30は、ウレタンゴム製である。電極31a、31bは、誘電膜30の表裏に、それぞれ固定されている。電極31a、31bには、導線が接続されており、電極31bは、接地されている。
【0047】
図4(a)に示すように、発電トランスデューサ3を圧縮し、誘電膜30を電極31a、31b面に対して平行方向に伸張すると、誘電膜30の膜厚は薄くなり、電極31a、31b間に電荷が蓄えられる。その後、圧縮力を除去すると、図4(b)に示すように、誘電膜30の弾性復元力により誘電膜30は収縮し、膜厚が厚くなる。その際、電荷が放出され発電される。
【0048】
ここで、電極31a、31bは、本発明の柔軟導電材料からなる。すなわち、電極31a、31bは伸縮可能である。このため、誘電膜30の動きが、電極31a、31bにより妨げられにくい。また、電極31a、31bにおいて、伸張時の導電性の低下は少なく、繰り返し変形した場合でも、内部抵抗による発熱が少ない。よって、発電トランスデューサ3は耐久性に優れる。
【0049】
<スピーカ>
本発明の柔軟導電材料を電極の材料に使用したスピーカの実施形態を説明する。まず、本実施形態のスピーカの構成について説明する。図5に、本実施形態のスピーカの斜視図を示す。図6に、図5のVI−VI断面図を示す。図5図6に示すように、スピーカ4は、第一アウタフレーム40aと、第一インナフレーム41aと、第一誘電膜42aと、第一アウタ電極43aと、第一インナ電極44aと、第一振動板45aと、第二アウタフレーム40bと、第二インナフレーム41bと、第二誘電膜42bと、第二アウタ電極43bと、第二インナ電極44bと、第二振動板45bと、八つのボルト460と、八つのナット461と、八つのスペーサ462と、を備えている。
【0050】
第一アウタフレーム40a、第一インナフレーム41aは、各々、樹脂製であって、リング状を呈している。第一誘電膜42aは、柔軟であり、円形の薄膜状を呈している。第一誘電膜42aは、第一アウタフレーム40aと第一インナフレーム41aとの間に張設されている。すなわち、第一誘電膜42aは、表側の第一アウタフレーム40aと裏側の第一インナフレーム41aとにより、所定の張力を確保した状態で、挟持、固定されている。第一振動板45aは、樹脂製であって、円板状を呈している。第一振動板45aは、第一誘電膜42aよりも小径である。第一振動板45aは、第一誘電膜42aの表面の略中央に配置されている。第一アウタ電極43aは、本発明の柔軟導電材料からなり、リング状を呈している。第一アウタ電極43aは、第一誘電膜42aの表面に貼着されている。第一インナ電極44aも、本発明の柔軟導電材料からなり、リング状を呈している。第一インナ電極44aは、第一誘電膜42aの裏面に貼着されている。第一アウタ電極43aと第一インナ電極44aとは、第一誘電膜42aを挟んで、表裏方向に背向している。図6に示すように、第一アウタ電極43aは、端子430aを備えている。第一インナ電極44aは、端子440aを備えている。端子430a、440aには、外部から電圧が印加される。
【0051】
第二アウタフレーム40b、第二インナフレーム41b、第二誘電膜42b、第二アウタ電極43b、第二インナ電極44b、第二振動板45b(以下、「第二部材」と総称する。)の構成、材質、形状は、上記第一アウタフレーム40a、第一インナフレーム41a、第一誘電膜42a、第一アウタ電極43a、第一インナ電極44a、第一振動板45a(以下、「第一部材」と総称する。)の構成、材質、形状と、同様である。また、第二部材の配置は、上記第一部材の配置と、表裏方向に対称である。簡単に説明すると、第二誘電膜42bは、第二アウタフレーム40bと第二インナフレーム41bとの間に張設されている。第二振動板45bは、第二誘電膜42bの表面の略中央に配置されている。第二アウタ電極43bは、第二誘電膜42bの表面に印刷されている。第二インナ電極44bは、第二誘電膜42bの裏面に印刷されている。第二アウタ電極43bの端子430b、第二インナ電極44bの端子440bには、外部から電圧が印加される。
【0052】
第一部材と第二部材とは、八つのボルト460、八つのナット461により、八つのスペーサ462を介して、固定されている。「ボルト460−ナット461−スペーサ462」のセットは、スピーカ4の周方向に所定間隔ずつ離間して配置されている。ボルト460は、第一アウタフレーム40a表面から第二アウタフレーム40b表面までを貫通している。ナット461は、ボルト460の貫通端に螺着されている。スペーサ462は、樹脂製であって、ボルト460の軸部に環装されている。スペーサ462は、第一インナフレーム41aと第二インナフレーム41bとの間に、所定の間隔を確保している。第一誘電膜42aの中央部裏面(第一振動板45aが配置されている部分の裏側)と、第二誘電膜42bの中央部裏面(第二振動板45bが配置されている部分の裏側)と、は接合されている。このため、第一誘電膜42aには、図6に白抜き矢印Y1aで示す方向に、付勢力が蓄積されている。また、第二誘電膜42bには、図6に白抜き矢印Y1bで示す方向に、付勢力が蓄積されている。
【0053】
次に、本実施形態のスピーカの動きについて説明する。端子430a、440aと端子430b、440bとを介して、第一アウタ電極43aおよび第一インナ電極44aと、第二アウタ電極43bおよび第二インナ電極44bと、には、初期状態(オフセット状態)において、所定の電圧(オフセット電圧)が印加されている。スピーカ4の動作時には、端子430a、440aと端子430b、440bとに、逆位相の電圧が印加される。 例えば、端子430a、440aに、オフセット電圧+1Vが印加されると、第一誘電膜42aのうち、第一アウタ電極43aと第一インナ電極44aとの間に配置されている部分の膜厚が薄くなる。並びに、当該部分が径方向に伸張する。これと同時に、端子430b、440bに逆位相の電圧(オフセット電圧−1V)が印加される。すると、第二誘電膜42bのうち、第二アウタ電極43bと第二インナ電極44bとの間に配置されている部分の膜厚が厚くなる。並びに当該部分が径方向に収縮する。これにより、第二誘電膜42bは、第一誘電膜42aを引っ張りながら、図6に白抜き矢印Y1bで示す方向に、自身の付勢力により弾性変形する。反対に、端子430b、440bにオフセット電圧+1Vが印加され、端子430a、440aに逆位相の電圧(オフセット電圧−1V)が印加されると、第一誘電膜42aは、第二誘電膜42bを引っ張りながら、図6に白抜き矢印Y1aで示す方向に、自身の付勢力により弾性変形する。このようにして、第一振動板45a、第二振動板45bを振動させることにより空気を振動させ、音声を発生させる。
【0054】
次に、本実施形態のスピーカ4の作用効果について説明する。本実施形態のスピーカ4によると、第一アウタ電極43a、第一インナ電極44a、第二アウタ電極43b、および第二インナ電極44bは、伸縮可能である。このため、第一誘電膜42a、第二誘電膜42bの変形に追従して変形することができる。すなわち、第一誘電膜42a、第二誘電膜42bの動きが、電極43a、44a、43b、44bにより妨げられにくい。さらに、電極43a、44a、43b、44bは、伸張されても電気抵抗の増加が小さい。このため、スピーカ4の応答性は良好である。
【実施例】
【0055】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0056】
<実施例1>
[粒子連結体の製造]
まず、ケッチェンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル(株)製、「ケッチェンブラックEC−600JD」、比表面積1270m/g)1.0gを、ポリアクリル酸2×10−4mol/L水溶液に添加して、50℃にて5分間、超音波分散した。その後、当該水溶液をろ過し、ろ別された粉末を洗浄した。次に、ろ別された粉末を、塩化錫4.4×10−1mol/L水溶液に添加して、25℃にて5分間、超音波分散した。その後、当該水溶液をろ過し、ろ別された粉末を洗浄した。続いて、ろ別された粉末を、塩化パラジウム5.6×10−3mol/L水溶液に添加して、25℃にて5分間、超音波分散した。その後、当該水溶液をろ過し、ろ別された粉末を洗浄した。最後に、ろ別された粉末を、硝酸銀2×10−2mol/L、硫酸アンモニウム7.5×10−1mol/L、アンモニア2mol/L、および硫酸コバルト1×10−1mol/Lの混合水溶液に添加して、25℃にて1分間、銀めっき処理を行った。銀めっき処理は、超音波および機械攪拌により、粉末を分散させながら行った。その後、当該水溶液をろ過し、ろ別された粉末を洗浄して、表面に銀めっき膜を有するケッチェンブラック粒子連結体を得た。ケッチェンブラック粒子連結体における銀めっき膜の含有割合は、ケッチェンブラック粒子連結体の全体を100体積%とした場合の10体積%であった。得られたケッチェンブラック粒子連結体は、本発明の第二連結体に含まれる。
【0057】
[導電膜の製造]
まず、アクリルゴムポリマー(日本ゼオン社製「ニポール(登録商標)AR14」)100質量部と、加工助剤のステアリン酸(花王社製「ルナック(登録商標)S30」)1質量部と、加硫剤の安息香酸アンモニウム(大内新興化学工業(株)製「バルノック(登録商標)AB−S」)2質量部と、をロール練り機にて混合し、エラストマー組成物を調製した。次に、調製したエラストマー組成物を、溶剤のメチルエチルケトン(MEK)に溶解させて、エラストマー溶液を調製した。続いて、調製したエラストマー溶液に、上記ケッチェンブラック粒子連結体を添加して、羽根攪拌の後、超音波洗浄槽で60分間処理することにより攪拌、混合して、導電塗料を調製した。ケッチェンブラック粒子連結体の配合量は、エラストマーおよび粒子連結体の全体を100体積%とした場合の、20体積%とした。それから、調製した導電塗料を、アクリル樹脂製の基材表面に、バーコート法により塗布した。その後、塗膜が形成された基材を、約170℃の乾燥炉内に約30分間静置して、塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させて、導電膜を得た。得られた導電膜の厚さは、10μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0058】
[粒子連結体の構造]
得られた導電膜を、液体窒素で凍らせた後、ピンセットで二つに割って断面を表出させた。当該断面を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製、「SEM−EDX S−3000」)により観察した。そして、ケッチェンブラック粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびケッチェンブラック粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は0.03μm、最長部分の長さは8μmであった。
【0059】
<実施例2>
[粒子連結体の製造]
実施例1と同様のケッチェンブラック1.0gについて、粗粉砕した後、銀ターゲットを用いたレーザーアブレーションにより、銀被覆処理を行った。レーザーアブレーションは、(株)奈良機械製作所製の装置を使用し、25℃にて2時間行った。このようにして、表面に銀被膜を有するケッチェンブラック粒子連結体を得た。ケッチェンブラック粒子連結体における銀被膜の含有割合は、ケッチェンブラック粒子連結体の全体を100体積%とした場合の1体積%であった。得られたケッチェンブラック粒子連結体は、本発明の第二連結体に含まれる。
【0060】
[導電膜の製造]
製造したケッチェンブラック粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。ケッチェンブラック粒子連結体の配合量は、実施例1と同様に、20体積%とした。また、導電膜の厚さは、10μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0061】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、ケッチェンブラック粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびケッチェンブラック粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は0.03μm、最長部分の長さは0.5μmであった。
【0062】
<実施例3>
[粒子連結体の製造]
実施例1と同様のケッチェンブラック1.0gについて、銀ターゲットを用いたレーザーアブレーションにより、銀被覆処理を行った。レーザーアブレーションは、処理時間を4時間に変更した以外は、実施例2と同様にして行った。得られたケッチェンブラック粒子連結体における銀被膜の含有割合は、ケッチェンブラック粒子連結体の全体を100体積%とした場合の6体積%であった。得られたケッチェンブラック粒子連結体は、本発明の第二連結体に含まれる。
【0063】
[導電膜の製造]
製造したケッチェンブラック粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。ケッチェンブラック粒子連結体の配合量は、実施例1と同様、20体積%とした。また、導電膜の厚さは、10μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0064】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、ケッチェンブラック粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびケッチェンブラック粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は0.03μm、最長部分の長さは2μmであった。
【0065】
<実施例4>
[粒子連結体の製造]
カーボンブラック(旭カーボン(株)製、「旭#52」、比表面積20m/g)1.0gについて、実施例1と同様にして銀めっき処理を行った。試薬液量は、実施例1におけるケッチェンブラックの比表面積と試薬液量との関係に従って決定した(以下、実施例5〜9、11についても同じ)。銀めっき処理の時間は、10分間とした。得られたカーボンブラック粒子連結体における銀めっき膜の含有割合は、カーボンブラック粒子連結体の全体を100体積%とした場合の63体積%であった。得られたカーボンブラック粒子連結体は、本発明の第二連結体に含まれる。
【0066】
[導電膜の製造]
製造したカーボンブラック粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。カーボンブラック粒子連結体の配合量は、30体積%とした。また、導電膜の厚さは、30μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0067】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、カーボンブラック粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびカーボンブラック粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は0.3μm、最長部分の長さは12μmであった。
【0068】
<実施例5>
[粒子連結体の製造]
実施例4と同様のカーボンブラック1.0gについて、銀めっき処理の時間を20分間とした以外は実施例4と同様にして、銀めっき処理を行った。得られたカーボンブラック粒子連結体における銀めっき膜の含有割合は、カーボンブラック粒子連結体の全体を100体積%とした場合の73体積%であった。得られたカーボンブラック粒子連結体は、本発明の第二連結体に含まれる。
【0069】
[導電膜の製造]
製造したカーボンブラック粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。カーボンブラック粒子連結体の配合量は、45体積%とした。また、導電膜の厚さは、30μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0070】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、カーボンブラック粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびカーボンブラック粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は0.3μm、最長部分の長さは15μmであった。
【0071】
<実施例6>
[粒子連結体の製造]
シリカ(東ソーシリカ(株)製、「ニプシールE1011」、比表面積140m/g)1.0gについて、実施例1と同様にして銀めっき処理を行った。銀めっき処理の時間は、10分間とした。得られたシリカ粒子連結体における銀めっき膜の含有割合は、シリカ粒子連結体の全体を100体積%とした場合の61体積%であった。得られたシリカ粒子連結体は、本発明の第二連結体に含まれる。
【0072】
[導電膜の製造]
製造したシリカ粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。シリカ粒子連結体の配合量は、35体積%とした。また、導電膜の厚さは、20μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0073】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、シリカ粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびシリカ粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は1.5μm、最長部分の長さは12μmであった。
【0074】
<実施例7>
[粒子連結体の製造]
珪酸ガラス(ポッターズバロティーニ(株)製、「EMB10」、比表面積0.5m/g)1.0gについて、実施例1と同様にして銀めっき処理を行った。銀めっき処理の時間は、10分間とした。得られた珪酸ガラス粒子連結体における銀めっき膜の含有割合は、珪酸ガラス粒子連結体の全体を100体積%とした場合の52体積%であった。得られた珪酸ガラス粒子連結体は、本発明の第一連結体に含まれる。
【0075】
[導電膜の製造]
製造した珪酸ガラス粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。珪酸ガラス粒子連結体の配合量は、40体積%とした。また、導電膜の厚さは、20μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0076】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、珪酸ガラス粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、および珪酸ガラス粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は2.0μm、最長部分の長さは14μmであった。
【0077】
<実施例8>
[粒子連結体の製造]
アクリル樹脂粉末(根上工業(株)製、「アートパール(登録商標)J−4PY」、比表面積0.4m/g)1.0gについて、実施例1と同様にして銀めっき処理を行った。銀めっき処理の時間は、5分間とした。得られたアクリル樹脂粒子連結体における銀めっき膜の含有割合は、アクリル樹脂粒子連結体の全体を100体積%とした場合の32体積%であった。得られたアクリル樹脂粒子連結体は、本発明の第一連結体に含まれる。
【0078】
[導電膜の製造]
製造したアクリル樹脂粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。この際、エラストマーとしては、実施例1とは異なるアクリルゴムポリマー(日本ゼオン社製「ニポールAR51」)を用いた。アクリル樹脂粒子連結体の配合量は、45体積%とした。また、導電膜の厚さは、60μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0079】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、アクリル樹脂粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびアクリル樹脂粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は2.2μm、最長部分の長さは24μmであった。
【0080】
<実施例9>
[粒子連結体の製造]
カーボンブラック(旭カーボン(株)製、「旭F−200」、比表面積55m/g)1.0gについて、実施例1と同様にして銀めっき処理を行った。銀めっき処理の時間は、10分間とした。得られたカーボンブラック粒子連結体における銀めっき膜の含有割合は、カーボンブラック粒子連結体の全体を100体積%とした場合の30体積%であった。得られたカーボンブラック粒子連結体は、本発明の第二連結体に含まれる。
【0081】
[導電膜の製造]
製造したカーボンブラック粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。この際、エラストマーとしては、実施例1とは異なるアクリルゴムポリマー(日本ゼオン社製「ニポールAR51」)を用いた。カーボンブラック粒子連結体の配合量は、35体積%とした。また、導電膜の厚さは、30μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0082】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、カーボンブラック粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびカーボンブラック粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は0.2μm、最長部分の長さは13μmであった。
【0083】
<実施例10>
[導電膜の製造]
まず、シリコーンゴムポリマー(信越化学工業(株)製「KE−1950−10」2液型)の1液に、実施例9にて製造したカーボンブラック粒子連結体を添加した。次に、2液を加えて、導電塗料を調製した。カーボンブラック粒子連結体の配合量は、エラストマーおよび粒子連結体の全体を100体積%とした場合の、35体積%とした。それから、調製した導電塗料を、アクリル樹脂製の基材表面に、バーコート法により塗布した。その後、塗膜が形成された基材を、約120℃の乾燥炉内に約10分間静置して、塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させた。さらに、約150℃の乾燥炉内に約1時間静置して、二次架橋を行い、導電膜を得た。得られた導電膜の厚さは、30μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0084】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、カーボンブラック粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびカーボンブラック粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は0.2μm、最長部分の長さは13μmであった。
【0085】
<実施例11>
[粒子連結体の製造]
カーボンブラック(三菱樹脂(株)製、「#3050B」、比表面積50m/g)1.0gについて、ニッケルめっき処理を行った。まず、カーボンブラックの粉末を塩化パラジウム水溶液で処理する工程までを、実施例1と同様にして行った。次に、ろ別された粉末を、「トップニコロン(登録商標)F−153A」(奥野製薬工業(株)製)100ml/L、および「トップニコロンF−153B」(同上)200ml/Lの混合水溶液に添加して、80℃にて20分間、ニッケルめっき処理を行った。ニッケルめっき処理は、超音波および機械攪拌により、粉末を分散させながら行った。得られたカーボンブラック粒子連結体におけるニッケルめっき膜の含有割合は、カーボンブラック粒子連結体の全体を100体積%とした場合の15体積%であった。得られたカーボンブラック粒子連結体は、本発明の第二連結体に含まれる。
【0086】
[導電膜の製造]
製造したカーボンブラック粒子連結体を使用して、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。カーボンブラック粒子連結体の配合量は、30体積%とした。また、導電膜の厚さは、10μmであった。製造した導電膜は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。
【0087】
[粒子連結体の構造]
実施例1と同様にして、カーボンブラック粒子連結体を構成する粒子の平均粒子径、およびカーボンブラック粒子連結体の最長部分の長さを測定した。その結果、平均粒子径は0.03μm、最長部分の長さは1.5μmであった。
【0088】
<比較例1>
[導電膜の製造]
銀粉末(DOWAエレクトロニクス(株)製、「AG2−1C」を、実施例1にて調製したエラストマー溶液に添加して、導電塗料を調製した。銀粉末の配合量は、50体積%とした。それから、調製した導電塗料を、アクリル樹脂製の基材表面に、バーコート法により塗布した。その後、塗膜が形成された基材を、約170℃の乾燥炉内に約30分間静置して、塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させて、導電膜を得た。得られた導電膜の厚さは、10μmであった。
【0089】
<比較例2>
[導電膜の製造]
まず、アクリルゴムポリマー(同上)100質量部と、加工助剤のステアリン酸(同上)1質量部と、加硫促進剤のジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(大内新興化学工業(株)製「ノクセラー(登録商標)PZ」)2.5質量部と、加硫剤のジメチルジチオカルバミン酸鉄(大内新興化学工業(株)製「ノクセラー(登録商標)TTFE」)0.5質量部と、をロール練り機にて混合し、エラストマー組成物を調製した。次に、調製したエラストマー組成物を、溶剤のメチルエチルケトン(MEK)に溶解させて、エラストマー溶液を調製した。続いて、調製したエラストマー溶液に、実施例1で使用したケッチェンブラックをそのまま添加して、導電塗料を調製した。ケッチェンブラックの配合量は、20体積%とした。そして、実施例1と同様にして、導電膜を製造した。得られた導電膜の厚さは、10μmであった。
【0090】
<比較例3>
[導電膜の製造]
銀粉末の配合量を、20体積%とした以外は、比較例1と同様にして、導電膜を製造した。得られた導電膜の厚さは、10μmであった。
【0091】
以上、製造した実施例および比較例の各導電膜における、エラストマーおよび粒子連結体についての詳細を、表1にまとめて示す。
【表1】
【0092】
<評価方法>
製造した導電膜について、柔軟性および導電性を評価した。以下、各々の評価方法について説明する。
【0093】
[柔軟性]
導電膜の柔軟性を評価するために、弾性率を測定した。各導電膜について、JIS K6254(2003)に規定された低変形引張試験を行い、静的せん断弾性率を算出した。
【0094】
[導電性]
導電膜の体積抵抗率を、JIS K6271(2008)に準じて測定した。体積抵抗率の測定は、伸張の程度を変えて三種類行った。すなわち、一つ目は、自然状態(伸張なし)で測定し、二つ目は、伸張率50%で伸張した状態で測定し、三つ目は、伸張率100%で伸張した状態で測定した。ここで、伸張率は、次式(I)により算出した値である。
伸張率(%)=(ΔL/L)×100・・・(I)
[L:試験片の標線間距離、ΔL:試験片の標線間距離の伸張による増加分]
<評価結果>
実施例および比較例の導電膜の評価結果を、上記表1にまとめて示す。表1中、評価結果には、自然状態(伸張なし)の体積抵抗率を「Rv0」と、伸張率50%で伸張した状態の体積抵抗率を「Rv50」と、伸張率100%で伸張した状態の体積抵抗率を「Rv100」と、表記している。まず、各導電膜の柔軟性および導電性を考察する。次に、各導電膜の電極への適用を考察する。
【0095】
[柔軟性]
表1に示すように、実施例の導電膜については、弾性率が15MPa以下であり、軟らかいことが確認された。特に、粒子連結体としてケッチェンブラック、シリカ、珪酸ガラスを用いた実施例1〜3、6、7の導電膜では、弾性率が低くなった。これに対して、比較例1の導電膜は、粒子連結体ではなく、銀粉末をそのままアクリルゴムに分散させて製造されている。銀粉末は、連結構造を持たない。よって、アクリルゴム中に導電パスを形成させるために、配合量が多くなった。したがって、比較例1の導電膜は、弾性率が高く、硬くなった。
【0096】
[導電性]
表1に示すように、実施例の導電膜は、いずれも自然状態において高い導電性を示した。また、いずれにおいても、伸張時における体積抵抗率の増加が小さかった。これに対して、粒子連結体を有しない比較例1の導電膜では、伸張時に大幅に体積抵抗率が増加した。つまり、伸張時に導電性が低下した。また、比較例1と比較して、銀粉末の配合量が少ない比較例3の導電膜では、導電パスが形成されていない。このため、導電性が得られなかった。また、比較例2の導電膜は、ケッチェンブラックをそのままアクリルゴムに分散させて製造されている。金属層を有しないため、比較例2の導電膜では体積抵抗率が大きい。つまり、導電性が低い。
【0097】
実施例の導電膜の一例として、図7に、実施例4の導電膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した写真を示す。また、比較のため、図8に、比較例3の導電膜の断面をSEMで観察した写真を示す。図7図8とを比較してわかるように、粒子連結体を分散させた実施例4の導電膜においては、粒子の連結構造が見られる。一方、銀粉末を分散させた比較例3の導電膜においては、粒子の連結構造は見られない。つまり、導電パスが形成されていない。このため、比較例3の導電膜では、導電性が得られなかった。
【0098】
また、実施例2の導電膜と実施例3の導電膜とを比較すると、レーザーアブレーションの処理時間の違いにより、金属層の含有割合が異なることがわかる。そして、金属層の含有割合が大きい実施例3の導電膜の方が、体積抵抗が小さくなった。つまり、金属含有量が多い分だけ、導電性が向上した。
【0099】
また、図9に、実施例9の導電膜の断面をSEMで観察した写真を示す。図10に、実施例10の導電膜の断面をSEMで観察した写真を示す。図9図10とを比較すると、実施例9の導電膜において、粒子連結体の分散状態がより均一であることがわかる。一方、実施例10の導電膜では、粒子連結体の分散状態に粗密が散見される。これは、母材のエラストマーの極性の違いによると考えられる。すなわち、アクリルゴムのSP値は9程度であるのに対して、シリコーンゴムのSP値は7程度である。したがって、アクリルゴムを母材とする実施例9の導電膜の方が、粒子連結体の分散性が良好である。これにより、実施例9の導電膜は、実施例10の導電膜と比較して、伸張時に導電パスが切断されにくいと考えられる。その結果、伸張時の体積抵抗率の増加が抑制される。
【0100】
[アクチュエータ、エラストマーセンサの電極への適用]
上述したように、本発明の柔軟導電材料は、柔軟性および導電性が高く、伸張時にも電気抵抗が増加しにくいことが確認された。そこで、アクチュエータ、エラストマーセンサの電極に要求される弾性率、体積抵抗率の目標値を各々設定し、上記実施例および比較例の導電膜について、電極としての適用性を検討した。検討結果を、表2に示す。表2中、○印は、目標値に達していることを示し、×印は、目標値に達していないことを示す。
【表2】
【0101】
表2に示すように、実施例3、6の導電膜については、柔軟性、導電性共に、アクチュエータおよびエラストマーセンサの目標値を満足するものであった。つまり、実施例3、6の導電膜は、アクチュエータおよびエラストマーセンサのどちらの電極にも好適であるといえる。また、実施例1、2、11の導電膜については、アクチュエータの目標値には達しているものの、エラストマーセンサの導電性の目標値には達していなかった。したがって、実施例1、2、11の導電膜は、アクチュエータの電極に好適であるといえる。さらに、実施例4、5、7〜10の導電膜については、エラストマーセンサの目標値には達しているものの、アクチュエータの弾性率の目標値には達していなかった。したがって、実施例4、5、7〜10の導電膜は、エラストマーセンサの電極に好適であるといえる。
【0102】
一方、比較例1の導電膜は、弾性率が大きく柔軟性に乏しい。このため、アクチュエータおよびエラストマーセンサのいずれの電極にも不適である。また、比較例2の導電膜は、導電性が低い。このため、アクチュエータおよびエラストマーセンサのいずれの電極にも不適である。また、比較例3の導電膜は、導電性を有しない。このため、アクチュエータおよびエラストマーセンサのいずれの電極にも不適である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
柔軟なアクチュエータは、例えば、産業、医療、福祉ロボット用の人工筋肉、電子部品冷却用や医療用等の小型ポンプ、医療用器具等に用いられる。本発明の柔軟導電材料は、このような柔軟なアクチュエータの電極、配線等に好適である。その他、本発明の柔軟導電材料は、静電容量型センサ等のエラストマーセンサの電極および配線、発電、発光、発熱、発色等を行う柔軟なトランスデューサの電極および配線、スピーカ、マイクロフォン等に使用される柔軟電極、ウェアラブルデバイス等に使用されるフレキシブル配線板等に有用である。また、コピー、プリンター等のOA機器に用いられ、柔軟性および導電制御性の両方を必要とする帯電部材、現像部材、転写部材の電極層や表層等にも好適である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10