(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来、測定装置の校正時の温度範囲は例えば23℃±5℃程度であり、この温度範囲内で測定装置を校正するには厳格な室温管理が可能な設備を用意する必要があった。そのため、校正時の温度範囲が広範な測定装置が求められていた。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、情報処理装置における冷却ファンの動作を制御することはできるが、校正時の温度範囲を広範化した測定装置を実現できるものではなかった。
【0008】
本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたものであり、校正時の温度範囲の広範化を図ることができる測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る測定装置は、所定の基準信号を用いて校正される校正モードと、測定対象である電子機器(1)の電気的特性を測定する測定モードとを有する測定装置(10)であって、前記測定装置の外部温度を検知する外部温度検知手段(11)と、前記測定装置の内部温度を検知する内部温度検知手段(12)と、前記校正モードにおける予め定められた内部温度の目標温度のデータを記憶する目標温度記憶手段(13)と、前記測定装置の内部を冷却する冷却ファン(16)と、前記冷却ファンの回転を制御する冷却ファン回転制御手段(14)と、を備え、前記冷却ファン回転制御手段は、前記校正モード中に、前記外部温度が第1の外部温度から第2の外部温度までの温度範囲を示す校正温度範囲において前記目標温度を含む所定範囲内に前記内部温度が収まるよう前記冷却ファンの回転を制御するものであ
り、前記目標温度記憶手段は、前記校正温度範囲内の少なくとも一部の温度範囲において前記目標温度が平坦になるデータを記憶するものである構成を有している。
【0010】
この構成により、本発明の請求項1に係る測定装置は、校正モード中に、所定の外部温度範囲において、内部温度が目標温度範囲内に収まるよう冷却ファンの回転を制御するので、校正時の温度範囲の広範化を図ることができる。
【0012】
また、この構成により、本発明の請求項
1に係る測定装置は、内部温度をより正確に設定することができる。
【0013】
本発明の請求項
2に係る測定方法は、所定の基準信号を用いて校正される校正モードと、測定対象である電子機器(1)の電気的特性を測定する測定モードとを有する測定装置(10)を用いた測定方法であって、前記測定装置の外部温度を検知する外部温度検知ステップ(S13)と、前記測定装置の内部温度を検知する内部温度検知ステップ(S15)と、前記校正モードにおける予め定められた内部温度の目標温度のデータを
記憶する目標温度記憶手段(13)から前記内部温度の目標温度のデータを読み出す目標温度読出ステップ(S12)と、前記測定装置の内部を冷却する冷却ファン(16)の回転を制御する冷却ファン回転制御ステップ(S16〜S18)と、を含み、前記冷却ファン回転制御ステップで、前記校正モード中に、前記外部温度が第1の外部温度から第2の外部温度までの
温度範囲を示す校正温度範囲において前記目標温度を含む所定範囲内に前記内部温度が収まるよう前記冷却ファンの回転を制御
し、前記目標温度記憶手段は、前記校正温度範囲内の少なくとも一部の温度範囲において前記目標温度が平坦になるデータを記憶している構成を有している。
【0014】
この構成により、本発明の請求項3に係る測定装置は、校正モード中に、所定の外部温度範囲において、内部温度が目標温度範囲内に収まるよう冷却ファンの回転を制御するので、校正時の温度範囲の広範化を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、校正時の温度範囲の広範化を図ることができるという効果を有する測定装置及び測定方法を提供することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の測定装置を、電子機器の出力電圧を測定する電圧測定装置に適用した例を挙げて説明する。
【0018】
まず、本実施形態における構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態における電圧測定装置10は、測定対象である電子機器1の出力電圧を測定する測定モードと、基準信号を用いて電圧測定装置10を校正する校正モードとを有する。測定モード時には電圧測定装置10に電子機器1が接続され、校正モード時には電圧測定装置10に校正装置30が接続される。
図1は、校正モード時の状態を示している。
【0020】
電圧測定装置10は、温度制御系の構成と、測定系の構成と、を有している。
【0021】
まず、温度制御系の構成として電圧測定装置10は、外部温度センサ11、内部温度センサ12、目標温度記憶部13、冷却ファン回転制御部14、駆動信号出力部15、冷却ファン16を備えている。
【0022】
外部温度センサ11は、電圧測定装置10の外部温度(周囲温度)を検知し、外部温度を示す外部温度検知信号を冷却ファン回転制御部14に出力するようになっている。なお、外部温度センサ11は、本発明に係る外部温度検知手段を構成する。
【0023】
内部温度センサ12は、電圧測定装置10の内部温度を検知し、内部温度を示す内部温度検知信号を冷却ファン回転制御部14に出力するようになっている。なお、内部温度センサ12は、本発明に係る内部温度検知手段を構成する。
【0024】
目標温度記憶部13は、電圧測定装置10の内部温度の目標温度のデータを記憶するようになっている。ここで、電圧測定装置10の外部温度が例えば23℃において、内部温度が時間経過とともに収束する収束温度を目標温度として予め実験により求めておく。また、目標温度記憶部13は、目標温度が適用される第1の外部温度から第2の外部温度までの温度範囲(以下「校正温度範囲」という。)のデータを記憶するようになっている。なお、目標温度記憶部13は、本発明に係る目標温度範囲記憶手段を構成する。
【0025】
冷却ファン回転制御部14は、外部温度センサ11から電圧測定装置10の外部温度を示す外部温度検知信号を、内部温度センサ12から電圧測定装置10の内部温度を示す内部温度検知信号を、目標温度記憶部13から目標温度のデータをそれぞれ入力し、内部温度及び目標温度に基づいて冷却ファン16の回転数を設定するようになっている。なお、冷却ファン回転制御部14は、本発明に係る冷却ファン回転制御手段を構成する。
【0026】
駆動信号出力部15は、冷却ファン回転制御部14が設定した回転数になるようPWM信号のデューティ比を決定し、PWM信号を冷却ファン16に出力するようになっている。
【0027】
冷却ファン16は、例えば、PWMによるパルス信号のデューティ比で回転数が決定される回転数可変型の直流モータ16aと、直流モータ16aによって回転する羽根16bと、を備えている。
【0028】
ここで、冷却ファン回転制御部14による温度制御について
図2に基づき説明する。
図2において、横軸は外部温度、縦軸は内部温度を示している。この例では、外部温度が23℃での目標温度を50℃とし、目標温度範囲としては50℃±2.5℃としている。従来は、図中に点線で示した直線が示す関数に基づいて外部温度範囲が決定されていた。すなわち、目標温度範囲が50℃±2.5℃に対して、従来の外部温度範囲は、23℃±5℃(18℃〜28℃)であった。
【0029】
これに対し、本実施形態における冷却ファン回転制御部14は、実線に示すような温度特性を得ることができるものである。すなわち、冷却ファン回転制御部14は、電圧測定装置10の外部温度が13℃(第1の外部温度)から33℃(第2の外部温度)までの校正温度範囲において電圧測定装置10の内部を目標温度範囲内の温度(50℃±2.5℃)に収まるよう冷却ファン16の回転を制御するものである。
【0030】
ここで、図示のように、本発明に係る校正温度範囲(13℃〜33℃)は、従来の校正温度範囲(18℃〜28℃)を含み、従来よりも広範な温度範囲において目標温度が平坦になっている。ここで、
図2に示した例では、前述の目標温度記憶部13が記憶する第1の外部温度は13℃、第2の外部温度は33℃であり、13℃から33℃までの範囲が校正温度範囲である。目標温度範囲の平坦領域は、冷却ファン16の送風能力に応じて定められたものである。目標温度範囲の平坦領域において、冷却ファン16の回転数は、外部温度が高くなるに従って増加し、外部温度が低くなるに従って減少する。冷却ファン16の回転数が最低回転数になったとしても、電圧測定装置10内のデバイス(例えばCPU)の温度がそのデバイスの使用上限温度を超えないよう、例えば実験により校正温度範囲が予め求められている。
【0031】
前述のように、冷却ファン回転制御部14は温度制御を実施するので、電圧測定装置10は、従来の外部温度範囲よりも広範な外部温度範囲で校正が実施できることとなる。
【0032】
次に、
図1に戻り、測定系の構成として電圧測定装置10は、モード切替部21、モード切替スイッチ22、24及び25、電圧測定部23、補正値メモリ26、補正部27、表示部28を備えている。
【0033】
モード切替部21は、測定モードと、校正モードとを切り替えるようになっている。このモードの切り替えは、例えば、電圧測定装置10の操作キー(図示せず)を測定者が操作することにより実行される。また、モード切替部21は、現在のモードを示す信号を冷却ファン回転制御部14に出力するようになっている。
【0034】
モード切替スイッチ22、24及び25は、それぞれ、モード切替部21から制御信号を受けて動作するようになっている。モード切替スイッチ22は、測定モード時に選択する端子22aと、校正モード時に選択する端子22bと、を備えている。同様に、モード切替スイッチ24は端子24a及び24bを備え、モード切替スイッチ25は端子25a及び25bを備えている。
【0035】
なお、
図1では、モード切替スイッチ22、24及び25が物理的なスイッチで構成されるイメージを示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。これらのモード切替スイッチ22、24及び25は、測定モードと校正モードとを切り替え可能とする構成であればよい。
【0036】
電圧測定部23は、測定モード時に電子機器1の出力電圧を測定し、校正モード時に後述の基準信号の電圧を測定するようになっている。
【0037】
補正値メモリ26は、校正モードにおいて、校正装置30から受信する補正値のデータを記憶するようになっている。
【0038】
補正部27は、測定モードにおいて、電圧測定部23が測定した測定電圧を補正値メモリ26が記憶した補正値に基づいて補正するようになっている。
【0039】
表示部28は、補正部27が補正した後の測定電圧を表示するようになっている。
【0040】
校正装置30は、校正のための基準信号を電圧測定部23に出力する基準信号出力部31と、電圧測定部23の測定電圧を補正する補正値を算出して補正値メモリ26に書き込む補正値書込部32と、を備えている。
【0041】
基準信号出力部31は、校正モードにおいて、例えば、振幅の実効値が1Vの所定周波数の正弦波信号を基準信号として出力するようになっている。
【0042】
補正値書込部32は、校正モードにおいて、基準信号出力部31が出力した基準信号の電圧と、電圧測定部23の測定電圧とを比較して補正値を算出し、算出した補正値のデータを補正値メモリ26に書き込むようになっている。
【0043】
具体的には、補正値書込部32は、校正モードにおいて、実効値が1Vの基準信号を電圧測定部23に入力したときの、電圧測定部23の測定電圧の実効値が1.1Vであった場合、1Vを1.1Vで除した値を補正値とするようになっている。その結果、補正部27は、測定モードにおいて、この補正値を補正値書込部32から読み出して、電圧測定部23が測定した測定電圧に乗算することにより補正することができる。
【0044】
次に、本実施形態における電圧測定装置10の校正モードに係る動作について、
図1の機能ブロック図を適宜参照し、
図3に示すフローチャートに基づき説明する。
【0045】
冷却ファン回転制御部14は、冷却ファン16の回転数を所定の回転数(例えば最高回転数)にするための信号を駆動信号出力部15に出力する。駆動信号出力部15は、冷却ファン回転制御部14によって設定された回転数になるデューティ比のPWM信号を冷却ファン16に出力し、冷却ファン16を駆動する(ステップS11)。
【0046】
冷却ファン回転制御部14は、目標温度記憶部13から目標温度Tc、校正温度範囲Twのデータを取得する(ステップS12)。
【0047】
外部温度センサ11は、電圧測定装置10の外部温度Toutを検知し(ステップS13)、冷却ファン回転制御部14は、外部温度センサ11からの外部温度検知信号を入力する。
【0048】
冷却ファン回転制御部14は、外部温度Toutが校正温度範囲Tw内か否かを判断する(ステップS14)。ステップS14において、外部温度Toutが校正温度範囲Tw外であれば校正モードを終了し、外部温度Toutが校正温度範囲Tw内であればステップS15に進む。
【0049】
内部温度センサ12は、電圧測定装置10内の内部温度Tinを検知し(ステップS15)、冷却ファン回転制御部14は、内部温度センサ12からの内部温度検知信号を入力する。
【0050】
冷却ファン回転制御部14は、外部温度センサ11が検知した外部温度Toutにおいて電圧測定装置10の内部温度Tinが目標温度Tcになるよう、内部温度Tinをモニタしながら冷却ファン16の回転数をフィードバック制御する。
【0051】
具体的には、冷却ファン回転制御部14は、内部温度Tinと目標温度Tcとを比較する(ステップS16)。なお、目標温度Tcには所定の公差(例えば±1℃)を含ませて内部温度Tinと比較してもよい。
【0052】
ステップS16において、内部温度Tinが目標温度Tcよりも高い場合(Tin>Tc)は、冷却ファン回転制御部14は、冷却ファン16の回転数を現在の回転数よりも増加させた回転数情報を含む信号を駆動信号出力部15に出力する。
【0053】
駆動信号出力部15は、冷却ファン16の回転数が、冷却ファン回転制御部14によって設定された回転数になるデューティ比のPWM信号を冷却ファン16に出力する。その結果、冷却ファン16の回転数が増加させられ(ステップS17)、後述のステップS20に進む。
【0054】
一方、ステップS16において、内部温度Tinが目標温度Tcよりも低い場合(Tin<Tc)は、冷却ファン回転制御部14は、冷却ファン16の回転数を現在の回転数よりも減少させた回転数情報を含む信号を駆動信号出力部15に出力する。
【0055】
駆動信号出力部15は、冷却ファン16の回転数が、冷却ファン回転制御部14によって設定された回転数になるデューティ比のPWM信号を冷却ファン16に出力する。その結果、冷却ファン16の回転数が減少し(ステップS18)、後述のステップS20に進む。
【0056】
また、ステップS16において、内部温度Tinが目標温度Tcと一致した場合(Tin=Tc)は、校正装置30によって校正処理が行われ(ステップS19)、モード切替部21によって、校正処理を終了するか否かが判断される(ステップS20)。
【0057】
ステップS20において、校正処理を終了すると判断された場合は校正処理を終了し、校正処理を終了すると判断されなかった場合はステップS13に戻る。
【0058】
以上のように、本実施形態における電圧測定装置10は、校正モード中に、所定の外部温度範囲において、内部温度が目標温度範囲内に収まるよう冷却ファン16の回転を制御する構成としたので、校正時の温度範囲の広範化を図ることができる。
【0059】
具体的には、
図2に示したように、従来の校正作業は外部温度が18℃〜28℃の条件下で行う必要があったが、本実施形態では外部温度が13℃〜33℃の範囲に広範化される。また、本実施形態における電圧測定装置10で、従来の外部温度範囲である18℃〜28度の条件下で校正作業を行えば、外部温度が13℃〜33℃の範囲の場合よりも校正データの測定確度が改善されるので、電圧測定装置10そのものの測定確度も向上する。
【0060】
なお、前述の実施形態において、電子機器の出力電圧を測定する電圧測定装置に適用した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、スペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、RF信号発生器、ネットワークアナライザ、RF信号パワーメータ、電界強度測定装置等に適用してもよい。特に、温度変化により変動しやすい特性(例えば電圧レベル)を測定するものには好適であり、実施形態と同様な効果が得られる。