(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5711202
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】可変バルブタイミング機構用のロックピン
(51)【国際特許分類】
F01L 1/356 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
F01L1/356 E
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-256662(P2012-256662)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2013-108501(P2013-108501A)
(43)【公開日】2013年6月6日
【審査請求日】2013年10月17日
(31)【優先権主張番号】13/303,363
(32)【優先日】2011年11月23日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(72)【発明者】
【氏名】ヨンチン リン
(72)【発明者】
【氏名】ニール ベルナー
(72)【発明者】
【氏名】カイル ベルナー
(72)【発明者】
【氏名】野口 敏春
【審査官】
山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−125318(JP,A)
【文献】
特表2009−513865(JP,A)
【文献】
特開平11−229829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流体チャンバを有するハウジングであって、前記複数の流体チャンバの内の一つの流体チャンバは固定用ボアを有するというハウジングと、
前記ハウジング内に回転可能に支持されたロータであって、該ロータは径方向に延在する複数の翼板を有し、該複数の翼板の各々は前記複数の流体チャンバの内の一つの流体チャンバ内へと延在して前進側の流体チャンバおよび遅延側の流体チャンバを画成し、該ロータは前記複数の翼板の内の一つの翼板におけるピン用ボアを含む、というロータと、
シャンク区画と挿入区画とを有するロックピンであって、該ロックピンは前記ピン用ボア内で固定解除位置と固定位置との間で摺動可能に受容され、前記挿入区画はセグメント化された球形状であって、第1基部と、逆側の第2基部とを備える球形状を有し、前記第1基部および前記第2基部は離間され且つ平行であり、また、前記第1基部と前記第2基部とは、前記ロックピンの軸心に対して直交しており、前記セグメント化された球形状は、前記第1基部と前記第2基部との間に前記第1基部及び前記第2基部の直径よりも大きな直径を有する部分を備える、というロックピンとを備える、可変バルブタイミング機構。
【請求項2】
前記固定位置において前記挿入区画の少なくとも一部分は前記ハウジングの前記固定用ボア内に受容されることで、前記ハウジングと前記ロータとの間の相対回転を禁止する、請求項1に記載の可変バルブタイミング機構。
【請求項3】
前記第1基部は、前記ロックピンが前記固定位置に在るときに前記固定用ボア内に受容される、請求項2に記載の可変バルブタイミング機構。
【請求項4】
前記挿入区画の前記第2基部と前記シャンク区画との間にはショルダが延在する、請求項3に記載の可変バルブタイミング機構。
【請求項5】
前記第1基部は、前記ハウジングの前記固定用ボアの直径より小さな直径を有する、請求項4に記載の可変バルブタイミング機構。
【請求項6】
前記第2基部は、前記シャンク区画の直径より小さな直径を有する、請求項5に記載の可変バルブタイミング機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変バルブタイミング機構に関し、更に詳細には、セグメント化された球形状を有する挿入区画を含むロックピン(lock pin)を有する可変バルブタイミング機構に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の自動車の多くは、排気弁および吸気弁のバルブ開閉時期を変更するために、可変バルブタイミング機構を含んでいる。典型的に、可変バルブタイミング機構は、内燃エンジンの次回の始動に備え、該エンジンが作動停止している間に可変バルブタイミング機構を固定するためのロックピンを含んでいる。しかし、もし上記ロックピンが適切に係合または係合解除されなければ、上記可変バルブタイミング機構は、作動停止手順および始動手順の間において大きな騒音および振動を引き起こす。騒音および振動が大きくなる結果として、使用者の満足度は低くなると共に、エンジンの品質評価が影響を受ける。
【0003】
図5Aから
図5Cを参照すると、公知であるロックピン100は、概略的に円筒状の形状を有する挿入区画110を備えている。
図5Aおよび
図5Bの挿入区画110は、固定用ボア(lock bore)112からの確実な係合解除を実現する、と言うのも、
図5Bに最適に見られる如く挿入区画110の直線状の外部側面視輪郭形状は、固定用ボア112に関するロックピン110の傾斜を阻止するからである。しかし、直線状の外部側面視輪郭形状によると、固定用ボア112内におけるロックピン110の係合が不確実なものとなる。
図5Cに最適に見られる如く、挿入区画110および固定用ボア112の夫々の直径が類似していると、僅かな誤整列により、ロックピン100と固定用ボア112との確実な係合が妨げられる。誤整列の場合、挿入区画110の末端114は固定用ボア112の縁部に当接し、係合を妨げると共に、大きな騒音および振動を引き起こす。
【0004】
図6Aから
図6Cにはロックピンの代替実施形態が開示されており、公知である第2のロックピン200は、先細状の円筒形状を有する挿入区画210を含んでいる。挿入区画210の先細状の円筒形状によれば、該挿入区画210は固定用ボア212の直径より小さな直径の末端214を有することから、固定用ボア212内におけるロックピン200の確実な係合を実現する。しかし、挿入区画210の先細状の円筒形状の直線状の外部側面視輪郭形状によると、ロックピン200は係合解除の間において填(はま)り込んで動かなくなり、詰まりが生じ易い。係合解除の間にロックピン200が傾斜された場合、固定用ボア212に対する該ロックピンの誤整列により、挿入区画210の直線状の外部側面視輪郭形状は、固定用ボア212の把持効果により詰まらされる。挿入区画210と固定用ボア212との間における結果的な詰まりは、可変バルブタイミング機構の大きな騒音および振動に帰着する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
故に、当業界においては、エンジンの作動停止手順および始動手順の間において付加的な騒音および振動を回避するために、填り込みなしで容易に固定および固定解除されるロックピンを提供するという要望が在る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述された公知のロックピンの不都合を克服することにより当該ロックピンの確実な係合および係合解除を実現するというロックピンを有する可変バルブタイミング機構を提供する。
【0007】
要約すると、上記可変バルブタイミング機構は、ハウジングと、ロータと、ロックピンとを含む。上記ハウジングは、複数の流体チャンバを含み、該複数の流体チャンバの内の一つの流体チャンバは固定用ボアを含む。上記ロータは、上記ハウジング内に回転可能に支持される。上記ロータは、中央部分と、該中央部分から径方向に延在する複数の翼板とを含む。上記翼板の各々は、上記ハウジングの各流体チャンバ内へと延在し、前進側の流体チャンバおよび遅延側の流体チャンバを画成する。上記複数の翼板の内の一つの翼板は、ピン用ボア(pin bore)を含む。上記ロックピンは、シャンク区画および挿入区画を含む。該挿入区画は、セグメント化された球形状を備える。上記ロックピンは上記ピン用ボア内において固定解除位置と固定位置との間で摺動可能に受容される。上記固定位置において、上記ロックピンの上記挿入区画の一部分は上記ハウジングの上記固定用ボア内に受容されることで、上記ハウジングと上記ロータとの間の相対回転を禁止する。
【0008】
幾つかの図を通して同様の参照符号は同様の部材を指すという添付図面と併せて以下の詳細な説明を読破すれば、本発明の更に良好な理解が得られよう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】可変バルブタイミング機構の斜視図である。
【
図1B】上記可変バルブタイミング機構の部分的概略図である。
【
図2A】ロータを完全前進位置とした上記可変バルブタイミング機構の断面図である。
【
図2B】完全遅延位置における上記可変バルブタイミング機構の断面図である。
【
図3A】固定位置におけるロックピンを示す上記可変バルブタイミング機構の側断面図である。
【
図3B】固定解除位置におけるロックピンを示す上記可変バルブタイミング機構の側断面図である。
【
図4C】固定用ボア内へのロックピンの係合を示す図である。
【
図4D】固定用ボアからのロックピンの係合解除を示す図である。
【
図5C】固定用ボア内へと上記公知のロックピンを係合する上での困難さを示す部分的概略図である。
【
図6B】上記第2の公知のロックピンの側面図である。
【
図6C】固定用ボアから上記第2の公知のロックピンを係合解除する上での困難さを示す部分的概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、内燃エンジンのための可変バルブタイミング機構であって、固定用ボアに対して確実に係合かつ係合解除されることでロータとハウジングとの間の相対回転を禁止しまたは許容するロックピンを提供するという可変バルブタイミング機構としての有用性を有している。上記ロックピンに、セグメント化された球形状を有する挿入区画を備えることにより、該ロックピンは、固定用ボアに関して上記挿入区画の末端が更に小さな直径であることから上記固定用ボア内へと容易に挿入され得ると共に、非線形であるが故に該ロックピンと上記固定用ボアとの間の詰まり作用を回避しながら上記固定用ボアから容易に係合解除され得る。
【0011】
図1を参照すると、内燃エンジンのための可変バルブタイミング機構は、概略的に10で表される。上記エンジンはクランク軸を含み、その場合に該エンジンの各ピストンの往復運動は該クランク軸の回転運動へと変換される。上記クランク軸からの駆動力は、タイミング・チェーン12が、夫々、タイミング・ギヤ18および20を介して吸気側カムシャフト14および排気側カムシャフト16へと伝達する。吸気側カムシャフト14は、可変バルブタイミング機構10を備えると共に、上記クランク軸に対する該吸気側カムシャフト14の前進量を調節すべく構成される。吸気側カムシャフト14の回転により各吸気弁22が起動される一方、排気側カムシャフト16の回転により各排気弁24が起動される。
【0012】
可変バルブタイミング機構10は、タイミング・ギヤ18に対して固定されたハウジング26と、当該ロータ28の中央部分を貫通延在するボルト30を介して吸気側カムシャフト14に対して固定されたロータ28とを含んでいる。ハウジング26はタイミング・ギヤ18に対して固定されることから、該タイミング・ギヤ18およびハウジング26が上記クランク軸と同期的に回転される如く、該クランク軸の回転はタイミング・チェーン12を介してタイミング・ギヤ18およびハウジング26に対して伝達される。吸気側カムシャフト14は、ボルト30によりロータ28に対して締着された一端部を有している。ロータ28は、該ロータ28がハウジング26に対して回転可能である如く、該ハウジング26内に回転可能に受容される。
【0013】
図2Aおよび
図2Bを参照すると、ハウジング26は、該ハウジング26の外周縁から内方に延在する複数の突出部32を含む。各突出部32は、ハウジング26内に複数の流体チャンバ34を画成する。ロータ28は、該ロータ28の中央部分から外径方向に延在する複数の翼板を含む。各翼板36は、夫々の流体チャンバ34を、前進側のチャンバ38および遅延側のチャンバ40に二分する。
【0014】
図2Aに最適に見られる如く、ロータ28の中央部分には前進側の弧状オイル通路42が配備される。該前進側の弧状オイル通路42からは複数のポート44が径方向に延在し、前進側のオイル通路42を前進側の各流体チャンバ38に接続する。
図2Bは、
図2Aの深度とは異なる深度にて得られた断面を示している。
図2Bを参照すると、ロータ28の中央部分には遅延側の弧状オイル通路46が配備される。該遅延側の弧状オイル通路46からは複数のポート48が径方向に延在し、遅延側のオイル通路42を遅延側の各流体チャンバ40に接続する。
【0015】
可変バルブタイミング機構10は、オイル・パンからのオイルをオイルポンプを介して制御弁を通して受容するオイル圧力回路に対して接続される。車両の電子制御ユニット(ECU)は、吸気側カムシャフト14の実際の前進量、すなわちバルブタイミングを制御するために、上記制御弁を通してオイル圧力を制御する。前進側の弧状通路42および遅延側の弧状通路46は、上記制御弁のチャネルと連通している。各吸気弁22のバルブタイミングを制御するために、オイル・パンからのオイルはオイルポンプにより上記制御弁を通して前進側の弧状チャネル42および遅延側の弧状チャネル46へと駆動されることで、前進側の各チャンバ38および遅延側の各チャンバ40を夫々充填する。前進側のチャンバ38および遅延側のチャンバ40内の所定量のオイル圧力によれば、ロータ28は、ハウジング26に関して回転することが許容される。従って、タイミング・チェーン12およびタイミング・ギヤ18を介してハウジング26に対して伝達されるクランク軸の回転により、吸気側カムシャフト14は回転される。ハウジング26の回転は、前進側の各チャンバ38および遅延側の各チャンバ40内の上記所定量のオイル圧力により、ロータ28に対し、詳細には各翼板36に対して伝達される。
【0016】
エンジンが動作する間において、上記制御弁は前進側の各チャンバ38および遅延側の各チャンバ40内のオイル圧力を変化させ、ハウジング26に対してロータ28が回転することを許容する。各吸気弁22のバルブタイミングを変更するために、前進側のチャンバ38および遅延側のチャンバ40内のオイル圧力を変化させることにより、クランク軸に対する吸気側カムシャフト14の回転位相は可変である。
【0017】
ロータ28を固定し、ハウジング26内における該ロータ28の相対回転を禁止するために、ロックピン54が配備される。該ロックピン54は、ロータ28の各翼板36の内の一つの翼板に形成されたピン用ボア50内に摺動可能に受容される。ロックピン54とピン用ボア50との間の摩擦を減少するために、翼板36における該ピン用ボア50内には、スリーブ52が挿入される。該スリーブ52は、ピン用ボア50内におけるロックピン54の摺動移動により引き起こされる摩耗を減少する。故に、スリーブ54は、中空の円筒形状を有して形成される。
【0018】
図3Aおよび
図3Bを参照すると、ハウジング26内には固定用ボア56が配備される。固定用ボア56は、ロックピン54とピン用ボア50とを有する翼板36が配備される流体チャンバ34内に配備される。固定用ボア56内には、耐摩耗性スリーブ58が選択的に配備される。
【0019】
ロックピン54はピン用ボア50内において、
図3Bに見られる如き固定解除位置と、
図3Aに見られる如き固定位置との間で摺動可能に受容される。固定解除位置において、ロックピン54は固定用ボア56から係合解除されると共に、ハウジング26内におけるロータ28の相対回転が許容される。しかし、固定位置において、以下において相当に詳細に記述されるロックピン54の一部分は、上記ハウジングの固定用ボア56内に係合されることで、ハウジング26内におけるロータ28の回転を禁止する。
【0020】
ピン用ボア50、ロックピン54、固定用ボア56は、夫々、翼板36および流体チャンバ34内において、エンジン始動に適した位置に配備される。
図2Aは、エンジンの次回の始動手順を予期して、完全前進位置において固定されたロータ28を示している。当然ながら、ピン用ボア50、ロックピン54および固定用ボア56の位置は、固定手順に必要とされる機能に依存して変更可能であることは理解される。
【0021】
図3Aおよび
図3Bを参照すると、圧縮スプリングの如き付勢部材60は、ピン用ボア50の底部表面64上の一端と、ロックピン54のキャビティ62内に受容された他端とを有している。付勢部材60は、ロックピン54を固定位置に向けて付勢する。可変バルブタイミング機構10が動作する間、オイルポンプからのオイルは上記制御弁を通して遅延側の弧状チャネル46へと送給され、次に各ポート48を介して遅延側の各チャンバ40へと送給される。
図2Aに最適に見られる如く、ピン用ボア50からは経路66が翼板36まで延在する。該経路66は、オイルが遅延側のチャンバ40からピン用ボア50内へと流れることを許容する。経路66に対しては案内部68が連通することで、遅延側のチャンバ40からの加圧オイルが、ロックピン54とピン用ボア50との間の空間として画成されたピン用チャンバ70内へと及ぶことを許容する。
【0022】
図4Aおよび
図4Bを参照すると、ロックピン54は、シャンク区画72および挿入区画74を備えている。シャンク区画72は、溝78により相互接続されたフランジ76を含んでいる。ロックピン54は選択的に、一体片の単体的な構造として形成される。溝78は、以下において相当に詳細に記述される付勢部材60の付勢力を克服すべく、ピン用チャンバ70内のオイルが加圧されることを許容する。
【0023】
挿入区画74は、ロックピン54の軸心Aと同軸的である
方向において湾曲された外部側面視輪郭形状を有している。更に、挿入区画74の外部側面視輪郭形状は、軸心Aに対して概略的に直交する
方向においても湾曲されることで、挿入区画74に対して概略的に球形状を提供している。該球形セグメント形状は挿入区画74に対して非線形の外部側面視輪郭形状を提供することで、固定用ボア56に対するロックピン54の容易な係合および係合解除を許容する。
【0024】
挿入区画74の球形状は、該挿入区画74の末端における第1基部B1と、端部の近傍の第2基部B2とによりセグメント化される。第1基部B1および第2基部B2は、離間され且つ平行である。第1基部B1および第2基部B2は、上記軸心上に中心を有する円形部分であって、該長手軸心Aと同軸的に延在するという円形部分である。詳細には、挿入区画74の球形セグメント形状の第1基部B1は、固定用ボア56の直径より小さい直径を有している。
図4Cに最適に見られる如く、第1基部B1の更に小さな直径によれば、固定用ボア56内へとロックピン54が係合する間において、該ロックピン54と固定用ボア56との間の整列における更に大きな許容差が可能とされる。
【0025】
挿入区画74と固定用ボア56との間の誤整列の場合において、挿入区画74の湾曲された外部輪郭形状によれば、ロックピン54の該挿入部分74は、固定用ボア56との係合へと案内される。更に、
図4Cに見られる如く、固定用ボア56を有する流体チャンバ34内における翼板36の早期の回転もしくは誤整列の場合における固定用ボア56からの挿入区画74の係合解除であって、ロックピン54の傾斜に帰着するという係合解除の間に、挿入区画74の湾曲された外部輪郭形状は、詰まりを回避することで、騒音および振動を減少する。詳細には、上記セグメント化された球形状の非線形の外部側面視輪郭形状は軸心Aに向けて湾曲することから、第1基部B1は固定用ボア56の縁部との接触を回避する。
【0026】
挿入区画74は、シャンク部分72が該挿入部分74の第1基部B1および第2基部B2の直径より大きな直径を有する如く、第2基部B2をシャンク部分72に対して接続するショルダ80を備えている。これに加え、挿入部分74は、第1基部B1と第2基部B2との間における直径であって、該第1基部B1および第2基部B2の直径より大きな直径を有すべく配備される。上記非線形の外部側面視輪郭形状によれば、挿入区画74は、該挿入区画74と固定用ボア56の内部との間において点−ライン間接触(point to line contact)を有することが許容される。挿入部分74の湾曲部上の一点のみが、固定用ボア56の内側面に接触することから、挿入部分74と固定用ボア56との間の摩擦の量が減少されることで、固定用ボア56からのロックピン54の容易な係合解除が許容される。
【0027】
可変バルブタイミング機構10の理解を更に良好に促進するために、その動作が次に論じられる。経路66および溝68を介してオイルがピン用ボア50に進入するにつれ、そのオイルは、ロックピン54とスリーブ52との間の開放領域として画成されたピン用チャンバ70を加圧し、且つ、該オイルは、付勢部材60の付勢力に抗して、ロックピン54を
図3Bに見られる固定解除位置へと押しやる。ピン用チャンバ70内のオイル圧力が、付勢部材60により生成されるスプリング力を超過したとき、オイル圧力は付勢部材60を克服して、ロックピン54を固定位置から固定解除位置へと移動させる。これにより、固定用ボア56からのロックピン54の係合解除は、ロータ26とハウジング28との間の相対回転を許容する。
【0028】
エンジンが作動停止されている間、上記オイルポンプにより提供された圧力は低下することにより、前進側のチャンバ38および遅延側のチャンバ40内のオイル圧力を低下させる。従って、ピン用チャンバ70内のオイル圧力は低下されることで、ロックピン54が固定解除位置から固定位置へと移動される如く、付勢部材60の付勢力がピン用チャンバ70内のオイル圧力を克服することが許容される。固定用ボア56内へのロックピン54の係合時に、ロータ28は固定位置に在ることで、ハウジング26内における該ロータ28の回転を阻止する。
【0029】
同様に、エンジンの始動の間において、オイルポンプにより確立されたオイル圧力は、各流体チャンバ34内において、詳細には前進側の各チャンバ38および遅延側の各チャンバ40内において増大する。ピン用チャンバ70内のオイル圧力は、付勢部材60の付勢力を克服すべく増大されることにより、ロックピン54が、
図3Aに見られる固定位置から
図3Bに見られる固定解除位置に向けて移動することが許容される。固定解除位置において、ロックピン54はもはや、ハウジング26に対するロータ28の相対回転を禁止しないことにより、可変バルブタイミング機構10が各吸気弁22の開閉時期を変更することを許容する。
【0030】
上記内容からは、本発明は、固定位置へのおよび固定解除位置からの容易な係合および係合解除を提供する非線形の湾曲された外部輪郭形状を有する可変バルブタイミング機構用ロックピンを提供することが理解され得る。但し、本発明を記述してきたが、当業者であれば、添付の各請求項の有効範囲により定義される本発明の精神から逸脱せずに、該発明に対する多くの改変は明らかであろう。
【符号の説明】
【0031】
10 可変バルブタイミング機構
26 ハウジング
28 ロータ
34 流体チャンバ
36 翼板
38 前進側の流体チャンバ
40 遅延側の流体チャンバ
50 ピン用ボア
54 ロックピン
56 固定用ボア
74 挿入区画