(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように従来の棺桶では、棺表面に一旦、化粧布を張り付けると、化粧布の張り替えが困難となる。針(ステープル)や釘を多く使用するため、火葬時に金属片の燃え残りが問題となることもある。
【0006】
昨今、葬儀の際には、故人の思い出や縁の品を棺に納品するといったことが普通に行われる。最近では、葬儀の様式が多様化に伴って、故人の着物、服など
の布地を、棺桶の化粧布として使用したいといった要請も生じている。
【0007】
これに対し、棺桶の化粧布を簡単に張り替える手段としては、画鋲のような取り外しのできる押しピンで板面に化粧布を留めることが考えられるが、このような棺桶では、押しピンの取り付け・取り外しの作業が面倒になるし、棺桶の外観に押しピンが見えると、製品としての品質低下を招く。
また、予め棺桶のサイズに合わせて化粧布を袋状に縫い付けておき、棺桶に被せる方法もあるが、このような棺桶では、棺桶の表面と化粧布との間に緩みや弛みが生じて、外観が不格好になってしまう。
【0008】
このような現状の下、本発明者らは、棺表面に化粧布を張り付けるための新たな固定手段について検討を重ね、各種の試作品を作製した。この結果、棺桶の外観として通常見えない箇所に、枠体と入れ子
との嵌め合い構造を設けておき、これらの間に化粧布を挟んで固定することにより、化粧布を着脱可能にした棺桶を完成するに至った。
本発明の目的は、棺表面に化粧布を簡単に張り付けることができ、しかも、張り付けた後の化粧布を簡単に取り替えることができる棺桶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[第1発明]
前記課題を解決するための第1発明の棺桶は、
底板と、
この底板の左右に立ち上げられる側板と、
前記底板の前後に立ち上げられる妻板と、
前記側板および前記妻板の上方に載置される蓋板とを備え、
前記側板、前記妻板および前記蓋板のうち少なくとも前記蓋板の外側面に化粧布が張り付けられてなる棺桶において、
前記蓋板の内側面における外周部に沿って設けられる枠体と、
前記枠体の枠内に着脱可能に収められる入れ子と、
前記蓋板の外側面から当該蓋板の内側面に向けて折り返される前記化粧布とを備え、
前記枠体に前記入れ子が収められるとき、前記枠体と前記入れ子との間に、折り返された前記化粧布の端部が挟まれることにより、前記蓋板に前記化粧布が固定される構成とした。
【0010】
第1発明における蓋板に化粧布を張り付ける場合の手順としては、例えば、蓋板の外側面を化粧布で覆い、その両端部を蓋板の内側面に折り返す。そして、折り返した化粧布の端部を枠体の内側に入れる。この状態で枠体に入れ子を押し込み、化粧布を引っ張りながら蓋板に固定する。
【0011】
第1発明の構成によれば、蓋板と化粧布との固定手段として、枠体と入れ子とが採用されるため、針(ステープル)、釘などの留め具や接着剤を使用しなくても、蓋板に化粧布を張り付けることができる。
枠体に対して入れ子が着脱可能であるため、枠体と入れ子とにより蓋板に化粧布を張り付けた後であっても、化粧布を取り外して張り替えることができる。
枠体と入れ子とによる化粧布の張り付け作業は、何度も繰り返し行えるものであり、必ずしも棺桶の製造工場で行う必要はない。葬儀場や棺桶の販売店で好みの化粧布を選択してから蓋板に張り付けることもできる。さらには、故人の思い出や縁のある布地を化粧布として蓋板に張り付けるといった要請にも容易に応えることが可能になる。
【0012】
[第2発明]
前記課題を解決するための第2発明の棺桶は、
底板と、
この底板の左右に立ち上げられる側板と、
前記底板の前後に立ち上げられる妻板と、
前記側板および前記妻板の上方に載置される蓋板とを備え、
前記側板、前記妻板および前記蓋板のうち少なくとも前記側板の外側面に化粧布が張り付けられてなる棺桶において、
前記側板の内側面における外周部に沿って設けられる枠体と、
前記枠体の枠内に着脱可能に収められる入れ子と、
前記側板の外側面から前記側板上部の内側面に向けて折り返される前記化粧布とを備え、
前記枠体に前記入れ子が収められるとき、前記枠体と前記入れ子との間に、折り返された前記化粧布の端部が挟まれることにより、前記側板に前記化粧布が固定される構成とした。
【0013】
第2発明における側板に化粧布を張り付ける場合の手順としては、例えば、底板の下に化粧布を敷き、この化粧布の左右を折り上げて側板の外側面を覆い、その両端部を側板の内側面に折り返す。そして、折り返した化粧布の端部を枠体の内側に入れる。この状態で枠体に入れ子を押し込み、化粧布を引っ張りながら側板に固定する。
【0014】
第2発明の構成によれば、側板と化粧布との固定手段として、枠体と入れ子とを採用するため、針(ステープル)、釘などの留め具や、接着剤を使用しなくても、側板に化粧布を張り付けることができる。
枠体に対して入れ子が着脱可能であるため、枠体と入れ子とにより側板に化粧布を張り付けた後であっても、化粧布を取り外して張り替えることができる。
加えて、第1発明と同様に、葬儀場や販売店で好みの化粧布を選択して側板に張り付けたり、故人の思い出や縁のある布地を化粧布として側板に張り付けることも可能になる。
【0015】
[第3発明]
前記課題を解決するための第3発明の棺桶は、
底板と、
この底板の左右に立ち上げられる側板と、
前記底板の前後に立ち上げられる妻板と、
前記側板および前記妻板の上方に載置される蓋板とを備え、
前記側板、前記妻板および前記蓋板のうち少なくとも前記側板の外側面に化粧布が張り付けられてなる棺桶において、
前記底板の下側面における外周部に沿って設けられる枠体と、
前記枠体の枠内に着脱可能に収められる入れ子と、
前記側板の外側面から前記底板の下側面に向けて折り返される前記化粧布とを備え、
前記枠体に前記入れ子が収められるとき、前記枠体と前記入れ子との間に、折り返された前記化粧布の端部が挟まれることにより、前記底板に前記化粧布が固定される構成とした。
【0016】
第3発明における側板に化粧布を張り付ける場合の手順としては、例えば、側板の外側面を化粧布で覆い、その上端部を側板の内側面に折り返して留める。なお、この留め手段としては、第2発明の構成を採用することが可能である。
化粧布の下端部は、底板の下側面に沿って折り曲げ、折り曲げた化粧布の端部を枠体の内側に入れる。この状態で枠体に入れ子を押し込み、化粧布を引っ張りながら底板に固定する。
【0017】
第3発明の構成によれば、底板と化粧布との固定手段として、枠体と入れ子とを採用するため、針(ステープル)や釘などの留め具や接着剤を使用しなくても、側板に化粧布を張り付けることができる。
枠体に対して入れ子が着脱可能であるため、枠体と入れ子とにより側板に化粧布を張り付けた後であっても、化粧布を取り外して張り替えることができる。
加えて、葬儀場や販売店で好みの化粧布を選択して側板に張り付けたり、故人の思い出や縁のある布地を化粧布として側板に張り付けることも可能になる。
【0018】
[第4発明]
前記課題を解決するための第4発明の棺桶は、第2発明または第3発明の棺桶であって、前記側板に代えて、前記妻板に前記化粧布が張り付けられる構成とした。
【0019】
第4発明の構成によっても、化粧布の固定手段として、枠体と入れ子とを採用するため、針(ステープル)や釘などの留め具や接着剤を使用しなくても、妻板に化粧布を張り付けることができる。
枠体に対して入れ子が着脱可能であるため、枠体と入れ子とにより妻板に化粧布を張り付けた後であっても、化粧布を取り外して張り替えることができる。
加えて、葬儀場や販売店で好みの化粧布を選択して妻板に張り付けたり、故人の思い出や縁のある布地を化粧布として妻板に張り付けることも可能になる。
【0020】
[第5発明]
前記課題を解決するための第5発明の棺桶は、第1〜4発明のいずれか一に記載の棺桶であって、
前記入れ子を構成する一対の割り板と、
前記一対の割り板が隣り合う位置でこれらの割り板同士を連結するヒンジとを備え、
前記一対の割り板が前記ヒンジを介して同一平面上に連なる展開状態と、前記ヒンジを介してそれぞれ異なる平面上に折り曲げられる折曲状態とが切り替え可能になっており、
加えて、
前記枠体の互いに向き合う内向きの枠面に、それぞれ当該枠面の長さ方向に沿って形成される一対の受け溝と、
前記一対の割り板の前記ヒンジと反対側の端部に、前記一対の受け溝に挿入可能な形状をもって形成される一対の突出部とを備え、
前記枠体と前記入れ子との間に前記化粧布の端部が挟まれるとき、前記割り板が屈曲状態から展開状態に切り替わって前記一対の受け溝に前記一対の突出部が嵌め込まれる構成とした。
【0021】
第5発明の構成によれば、枠体に入れ子を収める場合に、入れ子(一対の割り板)が屈曲状態から展開状態に切り替わり、同時に枠体の受け溝に入れ子(一対の割り板)の突出部が嵌まり込む。このとき、受け溝と突出部との間に化粧布を挟むことにより、化粧布の布面が受け溝側に引っ張られる。この結果、化粧布の張り付ける際に、化粧布に皺や弛みが生じにくくなり、棺桶の仕上がりが良好になる。
さらには、受け溝と突出部との間に化粧布が咬まれるように留められることから、棺表面(蓋板、側板または妻板)からの化粧布の脱落を効果的に防止することができる。
【0022】
[第1〜5発明]
第1〜5発明において、棺の用途(人用、ペット用等)や種類(寝棺、座棺等)は、特に限定されることはない。蓋形状は、平板状(平棺)の他、蒲鉾状(アール棺)であってもよい。
底板、側板、妻板および蓋板の材料は、木材(合成材や集成材)、段ボール材等を採用することができる。
化粧布の材料については、特に限定されず、綿、絹などの天然繊維の他、合成繊維または半合成繊維を採用してもよい。紙、樹脂等からなるシートまたはフィルムを化粧布として採用することも可能である。これらのシートまたはフィルムにはメッセージや写真、送り絵などをプリントしてよい。
割り板のヒンジは、金属や樹脂等からなる蝶番を採用する他、段ボール材や布材を折り曲げてなるものを採用してもよい。
【0023】
なお、第1〜5発明は、単独で適用してもよいし、これらの発明を必要に応じて組み合わせて適用することもできる。また、第1〜5発明に本明細書に記載される他の発明を組み合わせてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、強化段ボール材を用いた組立式棺桶に本発明を適用した例である。なお、以下に記載の実施形態およびその変形例は、本発明を適用した形態の一例であり、発明の範囲がこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0026】
[組立式棺桶の構成]
実施形態による棺桶の外観を
図1に示した。
棺桶10は、箱状の棺本体12と、前後2枚の蓋板13,13とからなるもので、これらの外側面に化粧布Da〜Dcが張り付けられる。棺本体12の内側には、フリル状の内布Fが取り付けられる。
棺桶10の寸法は、例えば長さ(長辺)が170〜200cm程度、幅(短辺)が50〜70cm程度、棺本体12と蓋板13を含めた高さが40〜50cm程度である。
【0027】
棺本体12および蓋板13の主要部分は、強化段ボール材により形成される。これらの段ボール面を覆い隠すように化粧布Da〜Dcが張り付けられている。棺本体12の四隅部、および蓋板13の前後端部には、木材からなる端材15が表れる。これらの端材15は、これらの四隅部および端部を強化するとともに、棺本体12の組立時に板材同士の継ぎ合わせの強度を確保する役割を果たす。
【0028】
なお、棺本体12および蓋板13の主要部分を形成する材料は、段ボール材に限られず、檜(ヒノキ)、欅(ケヤキ)、杉(スギ)、樅(モミ)等の木材を採用してもよく、これらの木材は、無垢材であってもよいし、合成材、集成材、圧縮成形材(パーティクルボード等)などの木質材料であってもよい。各板の全部または一部に樹脂を採用することも可能である。
【0029】
図2に示すように、棺本体12は、底板12Aと、側板12B,12Bと、妻板12Cとを有している。底板12Aの左右に側板12B,12Bが立ち上げられ、底板12Aの前後に妻板12Cが立ち上げられる。側板12B,12Bおよび妻板12Cの上に蓋板13が載置される。
本実施形態では、棺本体12が組立式になっている。すなわち、
図3に示すように、側板12Bは、所定の高さ位置で内向きに折り畳み可能になっており、
図3実線の状態から二点鎖線の起立姿勢に立ち上げられる。このように起立姿勢に保持された状態でその前後端に妻板12Cが後述の係合手段を介して継ぎ合わされることにより、棺本体12が完成する。
【0030】
棺本体12を形成する強化段ボール材としては、好ましくは板厚10〜20mm程度の二層強化段ボール材(例えばトライウォール社製)が採用される。この強化段ボール材は、蓋板13にも採用されており、
図3(B)に示すように、2枚の厚板(ライナー)Rb,Rfとの間に、2層の波板r1およびr2が仕切り板r3を介して積層されてなる。2枚の厚板(ライナー)Rb,Rfのうち、棺外側に向く方が外板となり、棺内側に向く方が内板となる。
【0031】
なお、本実施形態の断面図において、点模様の箇所は、強化段ボール材で形成される部分であり、斜線の箇所は、木材または木質材料で形成される部分である。本実施形態では、二層強化段ボール材を採用しているが、三層強化段ボール材(例えばトライウォール社製)を採用することも可能である。
【0032】
側板12Bの所定の高さ位置には、ヒンジH1が設けられる。このヒンジH1は、側板12Bの強化段ボール材の外側部分を切断し、内側部分に残った厚板(ライナー)を折り曲げることにより形成される。
具体的には、強化段ボール材の原板を所定の縦横サイズにカットし、側板12Bの上部と下部との境界線に平面状(断面I字状)の切り込みを入れる。この切り込みは、強化段ボール材を構成する厚板Rb,Rfおよび波板r1,r2(
図3(B))のうち、棺内側になる厚板(内板Rf)を残して他の板を段ボール紙面に対しほぼ垂直に切断して形成する。この厚板(内板Rf)の残部を側板12Bの上部と下部との境界線(ヒンジ回動軸)に合わせて折り曲げることにより、この折り曲げ線部分がヒンジH1となる。
【0033】
図2〜
図4に示すように、側板12Bおよび妻板12Cの開口端部には折返し板16が形成される。折返し板16は、強化段ボール材を2列に並んだV溝で折り返して形成される。
強化段ボール材を折り曲げる場合は、段ボール層のうち厚板Rf,Rbのいずれかを残して他の層に回転刃等を用いてV溝を形成し、残した片方の厚板(ライナー)のみを折り曲げて、V溝の傾斜する溝面を互いに密着させる(
図3参照)。V溝の溝角がほぼ90゜になるようにV溝加工を施せば、隣り合う板同士がほぼ垂直に折れ曲がる。V溝を形成するための他の手段としては、プレス機等で段ボール板を断面V字状に圧縮してもよい。
なお、本実施形態において、2列のV溝の間には強化段ボール材の厚みにほぼ等しい隙間が空けられており、この隙間部分に強化段ボール材からなる中間板16aが挟まれる。これにより折返し板16を含む棺本体12の上端が強化段ボール材の3枚分の厚さになり、棺本体12の上に蓋板13の載置面を広く確保することができる。
【0034】
このように側板12Bおよび妻板12Cの開口端部に折返し板16を設けることで、棺本体12の強度が大幅に高められる。また、棺本体12に蓋板13を載せたときの安定感が増す。
【0035】
側板12Bと妻板12Cとのそれぞれ向き合う位置には、両板を継ぎ合わせるための係合手段(上部係合突起17および下部係合突起18:
図2参照、係合溝19:
図4参照)が設けられる。
上部係合突起17は、側板12Bの前後の端面に高さ方向に沿って設けられ、下部係合突起18は、側板12Bの前後の端面に上部係合突起17と同一線上に設けられる。そして、妻板12Cの内側面の左右端部に係合溝19が設けられている。
妻板12Cが側板12Bと前後外側に隣り合う位置に落とし込まれると、係合溝19が上部係合突起17から下部係合突起18にかけてスライド挿入され、起立姿勢の側板12Bに妻板12Cが継ぎ合わされる。
【0036】
上部係合突起17および下部係合突起18と、係合溝19との係合部分は、横断面ほぼ台形で長さ方向に連なる。つまり、係合溝19は、アリ溝形状で、その溝底部の幅が開口部の幅よりも広く(
図4(B)参照)、上部係合突起17および下部係合突起18は、その付け根部よりも突起先端部の幅が広い。上部係合突起17および下部係合突起18に係合溝19がスライド挿入されると、係合溝19内に各突起17,18がほぼぴったり収まる。これにより、上部係合突起17および下部係合突起18と係合溝19とは、互いに溝長さ方向(高さ方向)には移動可能であるが、溝深さ方向には移動できない関係になって側板12Bに妻板12Cが着脱可能に継ぎ合わされることになる。
【0037】
係合手段(上部係合突起17、下部係合突起18および係合溝19)の上方には、これらの継ぎ目を隠すための空隙部17s(
図2参照)と被せ部19t(
図4参照)とが設けられる。空隙部17sは、側板12Bの上端より低い位置から上部係合突起17を設けることにより、その上方に生じる空間であり、被せ部19tは、妻板12Cの上端よりも低い位置から係合溝19を設けることにより、その上方に形成される妻板12Cの厚み部分である。
係合溝19が上部係合突起17から下部係合突起18にかけてスライド挿入されるとき、空隙部17sに被せ部19tが収まって係合溝19の内側に上部係合突起17および下部係合突起18が隠れる。
【0038】
[組立式棺桶の組立手順]
次に、棺桶10の組立手順について説明する。
棺桶10の使用前は、棺本体12の側板12Bが内向きに折り畳まれて(
図3参照)、妻板12Cが外れた状態にある。棺本体12を組み立てる場合、まず、
図3で左右の側板12B,12Bを外向きに立ち上げ、これらを起立姿勢に保って補助板(図示省略)等で仮止めする。
【0039】
次いで、
図2に示すように、側板12B,12Bの前後に妻板12Cを落とし込む。このとき、妻板12Cの係合溝19を、側板12Bの上部係合突起17から下部係合突起18にかけてスライド挿入すると、妻板12Cが側板12Bに継ぎ合わされてその起立姿勢が妻板12Cで支持される。
上記のように棺本体12を組み立てた後、
図1に示すように、棺本体12の上方に蓋板13を載せることで、棺桶10の組立が完了する。
棺本体12を折り畳む場合には、前述と逆の手順で、まず妻板12Cを上方に抜き出し、次いで、左右の側板12B,12Bを左右内向きに折り畳む。
【0040】
[蓋板における化粧布の張り付け]
次に、蓋板13に化粧布を張り付けるための構成とその手順について説明する。なお、本実施形態において、前後の蓋板13,13は同一であるため、片方の構造のみを図示する。
図5〜
図8に示すように、蓋板13は、その内側(裏側)に枠体21および入れ子22を備えている。枠体21は、蓋板13の外周部に沿って矩形をなすもので、
図5で上下に並んだ枠片と、左右に並んだ枠片とにより形成される。これらの枠片に囲まれる矩形の枠内に入れ子22が着脱可能に収納される。
【0041】
入れ子22は、枠体21の枠内寸法よりも若干小さい縦横寸法をもって平面矩形に形成される板材である。入れ子22の厚みは、枠体21の収納空間の深さよりも大きく、枠内に入れ子22を収めると、枠体21の板面から入れ子22の上部がはみ出る(
図5(B)参照)。
蓋板13に張り付けられる化粧布Daは、枠体21と入れ子22との間に挟まれて固定される。
【0042】
図6(B)に示すように、枠体21の左右に向き合う内向きの枠面には、その長さ方向に沿って一対の受け溝21x,21xが形成される(図(B)参照)。これらの受け溝21x,21xは、枠体21の深さ方向(底部)に向けて左右に枠内空間が拡大するように形成される。つまり、枠体21の収納空間は、その入口左右寸法よりも底面の左右寸法が長い。
【0043】
図7および
図8に示すように、入れ子22は、一対の矩形の割り板22a,22aにより形成される。割り板22a,22aは、強化段ボール材を矩形にカットして形成されるもので、互いに隣り合う位置でヒンジH2によって左右に連結されている。
ヒンジH2が閉じると、割り板22a,22aが同一平面上に連なって展開状態となる(
図9(A)参照)。ヒンジH2が開くと、割り板22a,22aがヒンジ軸を中心として山状に折れ曲がり屈曲状態となる(
図9(B)参照)。
【0044】
なお、ヒンジH2は、前述したヒンジH1と同様に、強化段ボール材の外側部分を切断し、内側部分に残った厚板(ライナー)を折り曲げることにより形成される。
具体的には、強化段ボール材の原板を所定の縦横サイズにカットし、割り板22a,22aの境界線に平面状(断面I字状)の切り込みを入れる。この切り込みは、強化段ボール材を構成する厚板Rb,Rfおよび波板r1,r2(
図3(B)参照)のうち、
図9で下側になる厚板(内板Rf)を残して他の板を段ボール紙面に対しほぼ垂直に切断して形成する。この厚板(内板Rf)の残部を割り板22a,22aの境界線(ヒンジ回動軸)に合わせて折り曲げることにより、この折り曲げ線部分がヒンジH2となる。
【0045】
割り板22a,22aのヒンジH1と反対側の端部には、突出部22y,22yが形成される。突出部22y,22yは、強化段ボール材の左右両端部を斜めにカットして形成されるもので、その先端は、受け溝21x,21xにほぼぴったり嵌まる形状になっている。
本実施形態では、突出部22y,22yの先端が、ヒンジH2の
図9で下向きになるように形成される。
図9(A)に示す割り板22a,22aの展開状態では、突出部22y,22yの先端が最も左右外側にあり、
図9(B)に示す割り板22a,22aの屈曲状態では、突出部22y,22yの先端が最も下側にある。
【0046】
枠体21に入れ子22を収納する場合、
図10(A)および
図11(A)に示すように、蓋板13に巻いた化粧布Daの端部を枠体21内に入れ、その上に入れ子22をセットする。割り板22a,22aの展開状態のままでは、左右寸法の関係(枠体<入れ子)で、枠体21の入口に入らないため、割り板22a,22aを屈曲状態にして、その突出部22y,22yを受け溝21x,21xに向けて配置する。
このような状態で、割り板22a,22aを屈曲状態から展開状態に切り替えると、突出部22y,22yが受け溝21x,21xに嵌まり込み、これに伴って化粧布Daが蓋板13の板面に沿って引っ張られる(
図10(B)および
図11(B)参照)。これにより、突出部22y,22yと受け溝21x,21xとの間に化粧布Daが挟まって固定される。
【0047】
図6および
図11に示すように、枠体21の枠内には、入れ子22を収める空間からさらに底部に入った位置に蓋裏空間S1が設けられる。また、
図8および
図11に示すように、入れ子22の裏側(
図11で下側)には蓋裏空間S2が設けられている。これらの蓋裏空間S1,S2には、枠体21と入れ子22との間に化粧布Daを挟んで固定するとき、枠内に余った布端が収まる。
このように蓋裏空間S1,S2を確保しておくことで、化粧布Daが蓋板13の板面よりも必要以上に長い場合でも、化粧布Daを裁断することなくそのまま使用することが可能となる。
【0048】
図10に示すように、枠体21の底面と、入れ子22の内側面とには、それぞれ面ファスナ25aおよび25bが取り付けられる。枠体21の面ファスナ25aは、台板24によって枠体21の蓋裏空間S1に突き出すようにその高さが調整される。入れ子22の面ファスナ25aは、割り板22a,22aの境界を跨いだ位置でヒンジH2に合わせて折れ曲がるように取り付けられている。
枠体21に入れ子22を収納すると、面ファスナ25a,25bが互いに位置決めされて密着する。これにより、枠体21から入れ子22が脱落するのが防止される。
【0049】
蓋板13に化粧布Daを張り付ける場合、例えば、床や台などの平らな面に化粧布Daを敷き、その上に蓋板13を表裏逆さに向けて置く。蓋板13の外側面に化粧布Daを合わせて左右に引っ張り、布端部を折り返して枠体21の内側に入れる。
続いて、
図10に示すように、枠体21に入れ子22を配置し、その割り板22a,22aを屈曲状態から展開状態に切り替えるようにして枠内に入れ子22を収納する。このとき、前述したように、枠体21の受け溝21xと、割り板22aの突出部22yとの間に布端部が引っ張られることで、蓋板13の外側面に沿って化粧布Daに適度な張りが生まれて皺や弛みが解消される。
その後、入れ子22の中央付近を押さえることにより、面ファスナ25aおよび25bを貼り付かせて、枠体21からの入れ子22の脱落を防止する。
【0050】
蓋板13から化粧布Daを取り外す場合は、枠体21に収納された入れ子22を引っ張って面ファスナ25aおよび25bのかみ合いを解き、入れ子
22(割り板22a,22a)を展開状態から屈曲状態に戻す。これにより、枠体21と入れ子22との間に挟まれていた化粧布Daが開放され、蓋板13から分離することが可能になる。
【0051】
このように本実施形態の蓋板13によれば、蓋板13と化粧布Daとの固定手段として、枠体21と入れ子22とが採用されるため、針(ステープル)、釘などの留め具や接着剤を使用しなくても、蓋板13に化粧布Daを張り付けることができる。
枠体21から入れ子22が着脱可能であるため、蓋板13に化粧布Daを張り付けた後であっても、化粧布Daを取り外して張り替えることができる。
枠体21と入れ子22とによる化粧布Daの張り付け作業は、比較的簡単で、何度も繰り返し行えるから、棺桶10の製造工場で行う必要はない。葬儀場や販売店で好みの化粧布Daを選択してから蓋板13に張り付けることもできる。故人の思い出や縁のある布地を化粧布Daとして蓋板13に張り付けることも可能になる。
さらに、本実施形態では、受け溝21xと突出部22yとの間に化粧布Daを挟むことにより、化粧布Daを受け溝21x側に引っ張りながら固定することができる。この結果、化粧布Daの張り付け作業を行う際に、布面に皺や弛みが生じにくくなり、棺桶10の仕上がりが良好になる。
さらには、受け溝21xと突出部22yとの間に化粧布Daが咬まれるように留められることから、蓋板13からの化粧布Dbの脱落を効果的に防止することができる。
【0052】
[棺本体における化粧布の張り付け]
棺本体12では、底板12A、側板12Bおよび妻板12Cのうち、側板12Bへの化粧布Dbの張り付けに本発明が適用される。
図12に示すように、棺本体12の底板12Aには、枠体31と入れ子32とが設けられており、枠体31に入れ子32が着脱可能に収納されている。枠体31に入れ子32が収納されるとき、側板12Bの化粧布Dbが両者に挟まれて固定される。
【0053】
枠体31は、底板12Aの長さ方向に沿って一定幅で延び、底板12Aの前後(
図12で上下)は枠内空間が貫通している。枠体31の左右に向き合う面には、蓋板13の枠体21と同様な受け溝が形成される(
図13参照)。
【0054】
入れ子32は、一対の割り板32a,32aからなり、これらの板がヒンジH3(
図13参照)により展開状態から屈曲状態に切り替わるようになっている。割り板32a,32aの左右端部には、蓋板13の入れ子22と同様に、受け溝に嵌まり合う突出部が形成されている(
図13参照)。
【0055】
側板12Bに化粧布Dbを張り付ける場合、
図13(A)に示すように、棺本体12の内側に側板12Bを折り畳んだ状態で、底板12Aを上に向けて平らな床や台の上に置く。底板12Aの上に化粧布Dbを被せ、その布端を枠体31の内側に入れる。
次いで、入れ子32を屈曲状態に保ちながら、枠体31の上方に持っていき、展開状態に切り替えて枠体31内に挿入する。これにより、化粧布Dbの端部が枠体31と入れ子32との間に挟まれて底板12Aに固定される。
なお、
図13では、化粧布Dbが側板12Bの下に回り込んでいるが、この段階では、側板12Bの左右外側に拡げた状態にしてもよい。
【0056】
上記のように化粧布Dbの端部を底板12Aに固定した後、棺本体12を上下反転させ、正常な向きに戻して側板12B,12Bを立ち上げる。そして、化粧布Dbを底板12Aの下方から引っ張り上げて、側板12B,12Bの上端で棺内側に折り返し、折返し板16(
図2参照)の下まで持ってくる。そして、この化粧布Dbの布端部をタッカー等の針(ステープル)で側板12B,12Bの内側面に固定する。このとき、化粧布Dbと一緒に内布Fを固定することで、作業工程を簡略化してもよい。
上記の化粧布Dbの固定箇所は、側板12Bの長さ方向に概ね等しい間隔で8〜10箇所程度に設定すれば足りる。
【0057】
このような棺本体12の構成によれば、底板12Aと化粧布Dbとの固定手段として、枠体31と入れ子32とを採用するため、針(ステープル)等の留め具の使用量を極力減らして側板12Bに化粧布Dbを張り付けることができる。
葬儀場や販売店で好みの化粧布Dbを選択して側板12Bに張り付けたり、故人の思い出や縁のある布地を化粧布Dbとして側板12Bに張り付けることも可能になる。
なお、底板12Aの枠体31および入れ子32の構成において、前述の蓋板13と同様に、各板の接触部に面ファスナ35aおよび35bを設けておけば、枠体31から入れ子32の脱落防止を図ることができる。
【0058】
棺本体12における妻板12Cの化粧布Dcについては、従来と同様に、予め化粧布Dcを妻板12Cの表面に張り付けておくか、妻板12Cの表面に化粧布Dcを被せて、これを左右に立ち上げた側板12B,12Bに継ぎ合わせるときに、側板12B,12Bと妻板12Cとの間に化粧布Dcを挟んで固定してもよい。後者の方法を採用する場合、蓋板13の化粧布Daと同様にその張り替えや、張り直し等の作業を何度でも繰り返し行うことが可能となる。
【0059】
[変形例]
以上、本発明の実施形態による棺桶を説明したが、本発明の実施形態は、これらの構成に限定されることなく、種々の変形や変更を伴ってもよい。
前記実施形態では、割り板タイプの入れ子を採用しているが、割り板でない平板状の入れ子を採用してもよい。
図14に示す変形例1では、蓋板13の入れ子22が割り板になっておらず、一枚の平板を矩形にカットして形成される。入れ子22を屈曲状態にするためのヒンジも存在しない。枠体21と入れ子22の嵌め合わせ面は、蓋板13に対しほぼ垂直に形成されており、前記実施形態の受け溝21xおよび突出部22yは採用されない。
【0060】
このような構成によれば、枠体21の内側に化粧布Daを入れて、入れ子22をそのまま枠体21に押し込めば、枠体21と入れ子22との間に化粧布Daが挟まれて固定される(
図15参照)。これにより、針(ステープル)や釘などを使用しなくとも化粧布Daを蓋板13に張り付けることができる。
枠体21と入れ子22との間に面ファスナ25aおよび25bを取り付けておけば入れ子22の脱落を効果的に防ぐこともできる。
【0061】
前記実施形態において、棺本体12の側板12Bに枠体および入れ子の構造を採用してもよい。
図16に示す変形例2では、側板12Bの内側に枠体51と入れ子52とが設けられる。枠体51および入れ子52は、蓋板13の枠体21および入れ子22と実質的に同一の構成である。面ファスナ等の構成についても、前記実施形態と同様である。
【0062】
このような構成によれば、側板12Bに化粧布Dbを張り付ける場合、化粧布Dbの下端部を底板12A側の枠体51と入れ子32との間に挟んで固定する一方、化粧布Dbの上端部を側板12Bの枠体51および入れ子52との間に挟んで固定することができる。側板12Bの内側に留める内布Fについても、側板12Bの枠体51と入れ子52とに挟んで固定することができる。この結果、針(ステープル)や釘等の留め具を使用しなくとも、側板12Bに化粧布Dbを張り付けることが可能になる。
【0063】
受け溝21xおよび突出部22yの形状については、前記実施形態に限定されず、両者が嵌まり合う関係にあればよい。
図17に示す変形例3は、割り板22aの突出部22yにフック61を採用したものである。突出部22yの先端に上向きのフック61が形成される。受け溝21xには、フック61を受け入れる空間が
図17で上方に拡大形成される。
受け溝21xに突出部22yを押し込むと、枠体21が弾性的に変形し、受け溝21xの拡大された空間にフック61が嵌まる。受け溝21xに突出部22yが収まると、フック61が突出部22yの抜け止めの役割を果たす。
【0064】
このような構成によれば、枠体21から入れ子22がさらに脱落しにくくなるため、布張りの信頼性が高まる。化粧布Daのズレや緩みも抑制されるため、棺桶10の外観の仕上がりを向上させることができる。
【0065】
前記実施形態では、組立式棺桶に本発明を採用したが、組立式ではない通常の棺桶に本発明を適用することももちろん可能である。前記実施形態の蓋板は、平板タイプであるが、横断面の形状がアーチ形、台形等である立体的な蓋板に本発明を適用することも可能である。