【文献】
ARRAS Jurgen et al.,The promoting effect of a dicyanamide based ionic liquid in the selective hydrogenation of citral,Chemical Communications,2008年 9月14日,No.34,page.4058-4060
【文献】
TIN K-C et al.,Studies on catalytic hydrogenation of citral by water-soluble palladium complex,Journal of Molecular Catalysis A:Chemical,1999年,Vol.137,page.113-119
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
α,β−不飽和カルボニル化合物を、請求項1〜5のいずれか一項に記載の均一系不斉水素化触媒の存在下、水素または水素を供与する化合物と反応させて光学活性カルボニル化合物を製造する光学活性カルボニル化合物の製造方法。
α、β−不飽和カルボニル化合物を、周期表における第8〜10族の遷移金属より選ばれる少なくとも一種の遷移金属の錯体と光学活性環状含窒素化合物の存在下に水素または水素を供与する化合物と反応させて光学活性カルボニル化合物を製造する光学活性カルボニル化合物の製造方法。
α、β−不飽和カルボニル化合物を、周期表における第8〜10族の遷移金属より選ばれる少なくとも一種の遷移金属の錯体と光学活性環状含窒素化合物および酸の存在下に水素または水素を供与する化合物と反応させて光学活性カルボニル化合物を製造する光学活性カルボニル化合物の製造方法。
遷移金属錯体が、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム及び白金から選ばれる何れかの遷移金属錯体である請求項10〜13のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2の方法で使用する触媒は高価な光学活性の配位子を含む高価なロジウム金属等を用いた均一系水素化触媒として知られている。こられの均一系水素化触媒を用いて、シトラール(ゲラニアールとネラールとの混合物)の不斉水素化の場合、ネラールとゲラニアールからは、それぞれ別の光学異性体が得られるため、ネラールとゲラニアールとを別けて反応を行う必要がある。
さらに、非特許文献1及び特許文献3の有機触媒を用いる方法では、原料の不飽和アルデヒド又は不飽和ケトンに対して20mol%程度の触媒量が必要であることと、水素化の基質であるHantzschエステルは原料の不飽和アルデヒド又はケトンに対して等量以上必要であることから、光学活性アルデヒド又は光学活性ケトンの製造方法としては経済的に不利である。
【0007】
本発明の目的は、有機触媒と安価な遷移金属錯体を不斉水素化触媒として用い、α、β−不飽和カルボニル化合物の炭素−炭素二重結合を不斉水素化し対応する光学活性アルデヒド又は光学活性ケトンを得る方法に関する。特にシトラール、ゲラニアール、又はネラールを不斉水素化反応により水素化して、光学活性なシトロネラールを得る方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の遷移金属錯体、光学活性環状含窒素化合物または、特定の遷移金属錯体、光学活性環状含窒素化合物、及び酸を用いることにより、α、β−不飽和カルボニル化合物を不斉水素化し、対応する光学活性アルデヒド又は光学活性ケトンが得られることを見いだし、本発明を完成するに到った。
特に、本発明の触媒系を用いることにより、単一の触媒から、例えば、Z配置、E配置の関係にあるネラールとゲラニアール、またはネラールとゲラニアールの混合物であるシトラールのいずれからでも、同一の光学異性体が得られることを見出した。
本発明の触媒は、シトラールの不斉水素化において、ネラールとゲラニアールの混合比率に全く依存せずに、同一の光学異性体を製造できることにおいて、全く新しい概念を提供している。
【0009】
すなわち本発明は以下の各発明を包含する。
<1> 周期表における第8〜10族の遷移金属より選ばれる少なくとも一種の遷移金属の錯体と光学活性環状含窒素化合物とを含む均一系不斉水素化触媒。
<2> 周期表における第8〜10族の遷移金属より選ばれる少なくとも一種の遷移金属に光学活性環状含窒素化合物が配位してなる<1>に記載の均一系不斉水素化触媒。
<3> 周期表における第8〜10族の遷移金属より選ばれる少なくとも一種の遷移金属の錯体と光学活性環状含窒素化合物と酸とを含む均一系不斉水素化触媒。
<4> 光学活性環状含窒素化合物が、一般式(1)
【0010】
【化1】
【0011】
(式(1)中、環Aは3〜7員環で、置換基を有していてもよく、炭素、窒素、硫黄、酸素、及び燐からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む。
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいカルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有してもよいカルバモイル基、又は置換基を有していてもよいシロキシ基を表す。ただしR
1とR
2は同じ置換基になることはない。また、R
1又はR
2の一方が環Aと結合しさらに環を形成していてもよい。*は不斉炭素原子を表す。)
で表される化合物である<1>〜<3>のいずれか一に記載の均一系不斉水素化触媒。
<5> 遷移金属錯体が、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム及び白金から選ばれる何れかの遷移金属錯体である<1>〜<4>のいずれか一に記載の均一系不斉水素化触媒。
<6> α,β−不飽和カルボニル化合物を、<1>〜<5>のいずれか一に記載の均一系不斉水素化触媒の存在下、水素または水素を供与する化合物と反応させて光学活性カルボニル化合物を製造する光学活性カルボニル化合物の製造方法。
<7> α,β−不飽和カルボニル化合物が、一般式(2)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R
3、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。また、R
5とR
6とで環を形成してもよい。ただし、R
4が水素原子でないときはR
5及びR
6は互いに同じでもよく、R
4が水素原子のときはR
5及びR
6は水素原子以外であり互いに異なる。)
で表わされるα,β−不飽和カルボニル化合物であり、生成する光学活性カルボニル化合物が、一般式(3)
【0014】
【化3】
【0015】
(式(3)中、R
3、R
4、R
5及びR
6は、式(2)の定義と同じである。2つの*は、一方又は両方が不斉炭素原子を表す。)
で表される光学活性カルボニル化合物である<6>に記載の製造方法。
<8> α、β−不飽和カルボニル化合物が、ゲラニアール、ネラール又はシトラールである<7>に記載の製造方法。
<9> α、β−不飽和カルボニル化合物が、5〜16員環の環状ケトン類である<7>に記載の製造方法。
<10> α、β−不飽和カルボニル化合物を、周期表における第8〜10族の遷移金属より選ばれる少なくとも一種の遷移金属の錯体と光学活性環状含窒素化合物の存在下に水素または水素を供与する化合物と反応させて光学活性カルボニル化合物を製造する光学活性カルボニル化合物の製造方法。
<11> α、β−不飽和カルボニル化合物を、周期表における第8〜10族の遷移金属より選ばれる少なくとも一種の遷移金属の錯体と光学活性環状含窒素化合物および酸の存在下に水素または水素を供与する化合物と反応させて光学活性カルボニル化合物を製造する光学活性カルボニル化合物の製造方法。
<12> 光学活性環状含窒素化合物が、一般式(1)
【0016】
【化4】
【0017】
(式(1)中、環Aは3〜7員環で、置換基を有していてもよく、炭素、窒素、硫黄、酸素、及び燐からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む。
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいカルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有してもよいカルバモイル基、又は置換基を有していてもよいシロキシ基を表す。ただしR
1とR
2は同じ置換基になることはない。また、R
1又はR
2の一方が環Aと結合しさらに環を形成していてもよい。*は不斉炭素原子を表す。)
で表される化合物である<10>又は<11>に記載の方法。
<13> 光学活性環状含窒素化合物が、一般式(1)
【0018】
【化5】
【0019】
(式(1)中、環Aは3〜7員環で、置換基を有していてもよく、炭素、窒素、硫黄、酸素、及び燐からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む。
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいカルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有してもよいカルバモイル基、又は置換基を有していてもよいシロキシ基を表す。ただしR
1とR
2は同じ置換基になることはない。また、R
1又はR
2の一方が環Aと結合しさらに環を形成していてもよい。*は不斉炭素原子を表す。)
で表される化合物である<10>〜<12>のいずれか一に記載の製造方法。
<14> 遷移金属錯体が、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム及び白金から選ばれる何れかの遷移金属錯体である<10>〜<13>のいずれか一に記載の製造方法。
<15> α,β−不飽和カルボニル化合物が、一般式(2)
【0020】
【化6】
【0021】
(式中、R
3、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。また、R
5とR
6とで環を形成してもよい。ただし、R
4が水素原子でないときはR
5及びR
6は互いに同じでもよく、R
4が水素原子のときはR
5及びR
6は水素原子以外であり互いに異なる。)
で表わされるα,β−不飽和カルボニル化合物であり、生成する光学活性カルボニル化合物が、一般式(3)
【0022】
【化7】
【0023】
(式(3)中、R
3、R
4、R
5及びR
6は、式(2)の定義と同じである。2つの*は、一方又は両方が不斉炭素原子を表す。)
で表される光学活性カルボニル化合物である<10>〜<14>のいずれか一に記載の製造方法。
<16> α、β−不飽和カルボニル化合物が、ゲラニアール、ネラール又はシトラールである<15>に記載の製造方法。
<17> α、β−不飽和カルボニル化合物が、5〜16員環の環状ケトン類である<15>に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上記のように、不斉水素化反応における触媒として、遷移金属錯体と共に、エナンチオ選択性に寄与する添加物として光学活性環状含窒素化合物、または、遷移金属錯体と共に、エナンチオ選択性に寄与する添加物として光学活性環状含窒素化合物、及び酸を用いるものである。
本発明の不斉水素化触媒は、従来の不斉水素化触媒のように予め触媒を調製して反応を行ってもよいが、予め触媒を調製するための反応工程をしなくてもよい。すなわち、本発明の不斉水素化反応においては、単に、原料化合物、光学活性環状含窒素化合物及び遷移金属錯体を混合し、更に必要に応じて酸を加えるだけで、不斉水素化することができるものでもある。このように操作も簡便であり、また、遷移金属錯体及び光学活性環状含窒素化合物は回収して再使用することも可能であり、工業的にも有利である。
【0025】
また、本発明の触媒を使用する際に、α、β−不飽和カルボニル化合物のα位とβ位の二重結合においてZ配置及びE配置の化合物のいずれを基質として使用した場合においても、生成する光学活性カルボニル化合物の立体配置は、基質の立体配座ではなく使用する光学活性環状含窒素化合物の立体配置に依存する。そのため、本発明では、Z配置化合物とE配置化合物との混合物を基質として使用した場合においても、同じ立体配置の光学活性カルボニル化合物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0028】
本発明においては、α、β−不飽和カルボニル化合物を基質として用い、これを本発明の触媒を使用して不斉水素化し、光学活性カルボニル化合物である光学活性アルデヒド又は光学活性ケトンを製造する。
【0029】
<基質>
基質として用いられるα、β−不飽和カルボニル化合物としては、特に限定されないが、例えば下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。なお、α、β−不飽和カルボニル化合物のα位とβ位の二重結合において、Z配置及びE配置があるものは、それらの何れも含むものである。
【0032】
式中、R
3、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。また、R
5とR
6とで環を形成してもよい。ただし、R
4が水素原子でないときはR
5及びR
6は互いに同じでもよく、R
4が水素原子のときはR
5及びR
6は水素原子以外であり互いに異なる。すなわち、R
4、R
5、及びR
6の全てが水素原子になることはない。
【0033】
前記式(2)で示される化合物を本発明の触媒を使用して不斉水素化することにより、下記式(3)で示される光学活性カルボニル化合物である光学活性アルデヒド又は光学活性ケトンが製造される。
【0035】
式中、R
3、R
4、R
5及びR
6は、式(2)の定義と同じである。2つの*は、一方又は両方が不斉炭素原子を表す。
【0036】
一般式(2)で示されるα、β−不飽和カルボニル化合物及び一般式(3)で表される光学活性カルボニル化合物において、R
3、R
4、R
5、及びR
6で表される基である、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、ニトリル基及びパーハロゲノアルキル基について説明する。これらの基はいずれも置換基を有していてもよい。
【0037】
アルキル基としては、鎖状又は分岐状の例えば炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基及びドコシル基等が挙げられる。
【0038】
また、これらアルキル基は置換基を有していてもよく、該アルキル基の置換基としては、例えばアルケニル基、アルキニル基、アリール基、脂肪族複素環基、芳香族複素環基、アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、置換アミノ基、ニトロ基、ニトリル基、パーハロゲノアルキル基及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0039】
アルキル基の置換基としてのアルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられ、具体的にはビニル基、プロペニル基、1−ブテニル基、ペンテニル基及びヘキセニル基等が挙げられる。
【0040】
アルキル基の置換基としてのアルキニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6のアルキニル基が挙げられ、具体的にはエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基及びヘキシニル基等が挙げられる。
【0041】
アルキル基の置換基としてのアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基及びフルオロフェニル基等が挙げられる。
【0042】
アルキル基の置換基としての脂肪族複素環基としては、例えば炭素数2〜14であって、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる基があげられる。好ましくは、5又は6員の単環の脂肪族複素環基、及び多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、2−オキソ−1−ピロリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基及びテトラヒドロチエニル基等が挙げられる。
【0043】
アルキル基の置換基としての芳香族複素環基としては、例えば炭素数2〜15であって、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる基があげられる。好ましくは、5又は6員の単環の芳香族複素環基、及び多環又は縮合環の芳香族複素環基が挙げられる。芳香族複素環基の具体例としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピラゾリニル基、イミダゾリル基、オキサゾリニル基、チアゾリニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基及びベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0044】
アルキル基の置換基としてのアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチロキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシロキシ基、2−メチルペンチロキシ基、3−メチルペンチロキシ基、4−メチルペンチロキシ基及び5−メチルペンチロキシ基等が挙げられる。
【0045】
アルキル基の置換基としてのアルキレンジオキシ基としては、例えば炭素数1〜3のアルキレンジオキシ基が挙げられ、具体的にはメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、プロピレンジオキシ基及びイソプロピリデンジオキシ基等が挙げられる。
【0046】
アルキル基の置換基としてのアリールオキシ基としては、例えば炭素数6〜14のアリールオキシ基が挙げられ、具体的にはフェノキシ基、ナフチロキシ基及びアンスリロキシ基等が挙げられる。
【0047】
アルキル基の置換基としてのアラルキルオキシ基としては、例えば炭素数7〜12のアラルキルオキシ基が挙げられ、具体的にはベンジルオキシ基、2−フェニルエトキシ基、1−フェニルプロポキシ基、2−フェニルプロポキシ基、3−フェニルプロポキシ基、1−フェニルブトキシ基、2−フェニルブトキシ基、3−フェニルブトキシ基、4−フェニルブトキシ基、1−フェニルペンチロキシ基、2−フェニルペンチロキシ基、3−フェニルペンチロキシ基、4−フェニルペンチロキシ基、5−フェニルペンチロキシ基、1−フェニルヘキシロキシ基、2−フェニルヘキシロキシ基、3−フェニルヘキシロキシ基、4−フェニルヘキシロキシ基、5−フェニルヘキシロキシ基及び6−フェニルヘキシロキシ基等が挙げられる。
【0048】
アルキル基の置換基としてのヘテロアリールオキシ基としては、例えば、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる、炭素数2〜14のヘテロアリールオキシ基が挙げられ、具体的には、2−ピリジルオキシ基、2−ピラジルオキシ基、2−ピリミジルオキシ基及び2−キノリルオキシ基等が挙げられる。
【0049】
アルキル基の置換基としての置換アミノ基としては、例えば、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基;N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N−ナフチルアミノ基、N−ナフチル−N−フェニルアミノ基等のモノ又はジアリールアミノ基;N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基等のモノ又はジアラルキルアミノ基等が挙げられる。
【0050】
アルキル基に置換するパーハロゲノアルキル基としては、例えば、トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、ヘプタフロロプロピル基、ノナフロロブチル基、トリクロロメチル基、ペンタクロロエチル基等が挙げられる。
【0051】
アルキル基に置換するハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0052】
シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
これらシクロアルキル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記のアルキル基の置換基の説明で述べたような置換基が挙げられる。
【0053】
アルケニル基としては、鎖状又分岐状あるいは環状の、例えば炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。具体的なアルケニル基としては、例えばビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−シクロペンテニル基、3−シクロペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、4−メチル−3−ペンテニル基、4,8−ジメチル−3,7−ノナジエニル基、1−シクロヘキセニル基及び3−シクロヘキセニル基等が挙げられる。
これらアルケニル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記のアルキル基の置換基の説明で述べたような基が挙げられる。
【0054】
アリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等が挙げられる。 これらアリール基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはアルキル基の置換基の説明で述べたような基が挙げられる。
【0055】
アラルキル基としては、例えば炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、具体的にはベンジル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、3−ナフチルプロピル基等が挙げられる。
これらアラルキル基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはアルキル基の説明で述べたような基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜15のアルコキシカルボニル基が好ましく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
これらアルコキシカルボニル基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはアルキル基の説明で述べたような基が挙げられる。
アシルオキシ基としては、炭素数2〜15のアラルキル基が好ましく,例えば、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トルオイルオキシ基、キシロイルオキシ基、ナフトイルオキシ基、フェナンスロイルオキシ基、アントラノイルオキシ基等が挙げられる。
これらアシルオキシ基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはアルキル基の説明で述べたような基が挙げられる。
【0056】
一般式(2)で表されるα、β−不飽和カルボニル化合物及び一般式(3)で表される光学活性カルボニル化合物において、R
3とR
4、R
3とR
5、R
3とR
6、R
4とR
6、又はR
5とR
6とで形成する環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、インダン環、テトラリン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、インデン環、ジヒドロナフタレン環、オクタヒドロナフタレン環、デカヒドロナフタレン環等が挙げられる。これらの環は、前述したようなアルキル基、以下で説明するアシル基等で置換されていてもよい。
【0057】
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基、トルオイル基、キシロイル基、ナフトイル基、フェナンスロイル基、アントラノイル基等が挙げられる。
【0058】
本発明において基質として用いられるα、β−不飽和アルデヒドの具体例としては、例えば以下のような化合物が挙げられる。なお、α、β−不飽和アルデヒドのα位とβ位の二重結合において、Z配置及びE配置があるものは、それらの何れも含むものである。以下化合物中の波線は、Z配置及びE配置、又はそれらの混合物を表す。
【0059】
以下、化合物中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Bnはベンジル基を表す。
【0062】
前記したようなα、β−不飽和アルデヒドの中でも、ゲラニアール(下記A)、ネラール(下記B)及びシトラールが特に好ましいものとして挙げられる。
【0064】
本発明において基質として用いられるα、β−不飽和ケトンは、5〜16員環のケトン類が好ましい。
α、β−不飽和ケトンの具体例としては、例えば以下のような化合物が挙げられる。なお、α、β−不飽和ケトンのα位とβ位の二重結合において、Z配置及びE配置があるものは、それらの何れも含むものである。以下、化合物中の波線は、Z配置及びE配置、又はそれらの混合物を表す。
以下化合物中、Phはフェニル基、Etはエチル基、Buはブチル基、Prはプロピル基、Bnはベンジル基を表す。
【0067】
<触媒>
次に、本発明の触媒について説明する。
本発明の触媒は、周期表における第8〜10族の遷移金属より選ばれる少なくとも一種の遷移金属の錯体と光学活性環状含窒素化合物、必要に応じて酸を追加成分として含み、これらを反応させることにより得られる均一系不斉水素化触媒である。
【0068】
本発明で用いられる遷移金属錯体は、周期表における第8〜10族の遷移金属より選ばれる少なくとも一種の遷移金属の錯体であって、本発明の不斉水素化反応が進行するものであれば特に制限されるものではない。
周期表における第8〜10族の金属としては、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)が挙げられ、特に好ましい金属はパラジウムである。また、錯体における価数は0価から3価が好ましい。
【0069】
使用される金属錯体の配位子としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、オレフィン、アルキン、π―アリル、アリール基、カルベン、ナイトレン、ハロゲン原子、カルボキシ基、一酸化炭素、イソニトリル、窒素配位子、燐配位子等の単座から三座の配位子、ニトリル、テトラヒドロフラン等の溶媒配位子が挙げられ、数種の配位子が配位していても良く、それらの配位子はラセミ体であっても光学活性体あっても良い。
【0070】
本発明において用いられる遷移金属錯体としては、例えば下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
[M
mL
nW
pU
q]
rZ
s (4)
(式中、Mは周期表における第8〜10族の遷移金属を示し;Lは配位子を示し;Wは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボキシル基、ジエン又はアニオンを示し;Uは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボキシル基、ジエン、アニオン又はL以外の配位子を示し;Zはアニオン又はアミンを示し:m及びrは1〜5の整数を示し;n、p、q及びsは0〜5の整数を示し、p+q+sは1以上である。)
【0071】
一般式(4)において、Mで表される周期表における第8〜10族の遷移金属としては、例えば、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)等が挙げられる。
【0072】
Lで表される配位子としては、例えば、窒素配位子、燐配位子等の単座から三座の配位子が挙げられる。
【0073】
WおよびUで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0074】
WおよびUで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0075】
WおよびUで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、メシチル基等の芳香族単環、多環式基等が挙げられる。
【0076】
WおよびUで表されるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペノキシ基、ベンジルオキシ基等があげられる。
【0077】
WおよびUで表されるカルボキシ基としては、例えば、フェルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0078】
WおよびUで表されるジエンとしては、ブタジエン、1,5−シクロオクタジエン、ノルボルナジエン等が挙げられる。
【0079】
WおよびUで表されるアニオンとしては、NO
3、SO
4、CO
3、BH
4、BH
4、I
3、ClO
4、OTf(Tfは、トリフラート基(SO
3CF
3)を示す)、PF
6、SbF
6、BPh
4(Phは、フェニル基を示す)等が挙げられる。
【0080】
Uで表されるL以外の配位子としては、中性配位子である芳香族化合物またはオレフィン、炭素数1〜5のアルキルニトリル、ベンゾニトリル、フタロニトリル、ビリジン又は置換ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、ジベンジリデンアセトン(dba)等が挙げられる。
【0081】
Zで表されるアニオンとしては、NO
3、SO
4、CO
3、BH
4、BH
4、I
3、ClO
4、OTf、PF
6、SbF
6、BPh
4等が挙げられる。
【0082】
Zで表されるアミンとしては、トリアルキルアミン化合物、ジアミン化合物、ピリジン類、ジアルキルアンモニウムイオン類等を挙げることができる。
【0083】
遷移金属錯体の具体例として、例えば、ニッケル錯体としては、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンニッケル、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルブロミド、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジカルボニル、メタリルニッケルクロリドダイマー、酢酸ニッケル、ニッケルアセトアセトナート、ニッケルトリフロロメタンスルホネートを挙げることができる。
【0084】
ルテニウム錯体としては、ビス(2−メチルアリル)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、カルボニル(ジヒドリド)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロ(シクロペンタジエニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、シクロペンタジエニル(パラサイメン)ルテニウムヘキサフロロホスフェート、ジクロロ(パラサイメン)ルテニウムダイマー、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム ポリマーを挙げることができる。
【0085】
ロジウム錯体としては、アセチルアセトナート(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムテトラフロロボレート、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムトリフロロメタンスルホネート、ビス(ノルボルナジエン)ロジウムテトラフロロボレート、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマー、ジカルボニルアセチルアセトナートロジウム、酢酸ロジウムダイマー、ヘキサロジウム ヘキサデカカルボニル、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムを挙げることができる。
【0086】
イリジウム錯体としては、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウムダイマー、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムダイマー、1,5−シクロオクタジエン(アセチルアセトナート)イリジウム、ジカルボニルアセチルアセトナートイリジウム、ジクロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)イリジウムダイマー、ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)イリジウム、イリジウムアセチルアセトナート、三塩化イリジウムを挙げることができる。
【0087】
パラジウム錯体としては、アリルパラジウムクロリドダイマー、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、塩化パラジウム、ビス(2−メチルアリル)パラジウムクロリドダイマー、ジアセタートビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、トランス−ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム、シス−ジクロロ(N、N、N’、N’−テトラメチルエチレンジアミン)パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを挙げることができる。
【0088】
白金錯体としては、ビス(エチレンジアミン)プラチナ、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)プラチナ、ジブロモ(1,5−シクロオクタジエン)プラチナ、ジクロロビス(ベンゾニトリル)プラチナ、シス−ジクロロビス(ピリジン)プラチナ、シス−(ジクロロビス)トリフェニルホスフィンプラチナ、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)プラチナ、ジクロロ(ジシクロペンタジエニル)プラチナ、プラチナアセチルアセトナート、塩化白金、テトラキス(トリフェニルホスフィン)プラチナを挙げることができる。
【0089】
本発明の触媒は、補助配位子を含んでもよい。これにより、錯体触媒の反応性を向上させ、不斉水素化の選択性を向上させることが可能となる。
具体的には、一酸化炭素、シクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(COD)、p−シメン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ピコリン酸、トリフェニルホスフィン、トリt−ブチルホスフィン、トリフェニルホスファイト、トリフェニルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフィン、ジ−t−ブチル(2,2−ジフェニル−1−メチル−1−シクロプロピル)フォスフィン(BRIDP)、トリ−n−オクチルフォスフィン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、2,2’−ビス(5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(H8−BINAP)、5,5’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’−ビ−1,3−ベンゾオキサゾール(SEGPHOS)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(BIPHEP)、1,2−ビス((2R,5R)−2,5−ジメチル−ホスフォラノ)ベンゼン(DUPHOS)、ビス(ジフェニルフォスフィノ)ブタン(Chiraphos)、1,2−ビス(ジフェニルフォスフィノ)エタン(Dppe)、1,2−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン(Dppf)、1,2−ビス(ジフェニルフォスフィノ)プロパン(Dppp)、2,2’−ビピリジン、2,2’:6’,2’’−ターピリジン、N−メチルプロリンエチルエステル、N−メチル−2−ジフェニルメチルピロリジン等が好ましく使用できる。補助配位子は光学活性体でも良い。
補助配位子は、金属原子に対して0.5〜8等量含むことが好ましい。かかる含有量であれば、対応する金属原子に応じて金属錯体触媒の性能を向上することが可能となる。
【0090】
続いて、本発明における触媒成分として用いられる光学活性環状含窒素化合物について説明する。本発明の触媒において、光学活性環状含窒素化合物は、触媒金属である周期表における第8〜10族の遷移金属に配位している。
本発明において、目的生成物である光学活性カルボニル化合物の立体配置は、基質の立体配座ではなく、共触媒成分として使用する光学活性環状含窒素化合物の立体配置に依存する。そのため、本発明では、基質となるα、β−不飽和カルボニル化合物がZ配置化合物とE配置化合物のいずれを使用した場合においても、また混合物を基質として使用した場合においても、同じ立体配置の光学活性カルボニル化合物を製造することができる。
【0091】
光学活性環状含窒素化合物としては、例えば、一般式(1)で表される光学活性環状含窒素化合物があげられる。
【0093】
式(1)中、環Aは3〜7員環で、置換基を有していてもよく、炭素、窒素、硫黄、酸素、及び燐からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む。
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいカルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有してもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいシロキシ基を表す。ただしR
1とR
2は同じ置換基になることはない。また、R
1又はR
2の一方が環Aと結合しさらに環を形成していてもよい。*は不斉炭素原子を表す。
【0094】
環Aは、基本骨格としては、例えば、アジリジン骨格、アゼチジン骨格、ピロリジン骨格、インドリン骨格、ピロリン骨格、ピラゾリジン骨格、イミダゾリジン骨格、イミダゾリジノン骨格、ピラゾリン骨格、チアゾリジン骨格、ピペリジン骨格、ピペラジン骨格、モルホリン骨格、チオモルホリン骨格等が挙げられる。これらの基本骨格に置換基が存在していてもよい。
【0095】
環Aの基本骨格に存在する置換基としては、オキソ基、ハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アリール基、アラルキル基が挙げられる。アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、及びアラルキル基としては、R
1及びR
2の説明で列挙する基が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。アミノ基としては、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、オクチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、フェニルアミノ基、スチレニルアミノ基、ナフチルアミノ基、ベンジルアミノ基、アントラセニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジt−ブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジスチレニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジアントラセニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、エチルブチルアミノ基、フェニルシクロヘキシルアミノ基、t−ブチルナフチルアミノ基、ベンジルアントラセニルアミノ基等が挙げられる。
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基、トルオイル基、キシロイル基、ナフトイル基、フェナンスロイル基、アントラノイル基等が挙げられる。
【0096】
環Aとしては、これらの中でも、置換基を有してもよいピロリジン骨格及び置換基を有してもよいイミダゾリジノン骨格類が好ましい。
【0097】
次に、R
1及びR
2で表される基である、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、カルバモイル基、シロキシ基について説明する。これらの基はいずれも置換基を有していてもよい。
【0098】
アルキル基としては、鎖状又は分岐状の例えば炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基及びドコシル基等が挙げられる。
【0099】
また、これらアルキル基は置換基を有していてもよく、該アルキル基の置換基としては、例えばアルケニル基、アルキニル基、アリール基、脂肪族複素環基、芳香族複素環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、トリアルキルシロキシ基、アルキレンジオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、置換アミノ基、パーハロゲノアルキル基及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0100】
アルキル基の置換基としてのアルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられ、具体的にはビニル基、プロペニル基、1−ブテニル基、ペンテニル基及びヘキセニル基等が挙げられる。
【0101】
アルキル基の置換基としてのアルキニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6のアルキニル基が挙げられ、具体的にはエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基及びヘキシニル基等が挙げられる。
【0102】
アルキル基の置換基としてのアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基及びフルオロフェニル基等が挙げられる。
【0103】
アルキル基の置換基としての脂肪族複素環基としては、例えば炭素数2〜14であって、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる基があげられる。好ましくは、5又は6員の単環の脂肪族複素環基、及び多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、2−オキソ−1−ピロリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基及びテトラヒドロチエニル基等が挙げられる。
【0104】
アルキル基の置換基としての芳香族複素環基としては、例えば炭素数2〜15であって、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる基があげられる。好ましくは、5又は6員の単環の芳香族複素環基、及び多環又は縮合環の芳香族複素環基が挙げられる。芳香族複素環基の具体例としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピラゾリニル基、イミダゾリル基、オキサゾリニル基、チアゾリニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基及びベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0105】
アルキル基の置換基としてのアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチロキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシロキシ基、2−メチルペンチロキシ基、3−メチルペンチロキシ基、4−メチルペンチロキシ基、5−メチルペンチロキシ基、シクロペンチロキシ基及びシクロヘキシロキシ基等が挙げられる。
【0106】
アルキル基の置換基としてのトリアルキルシロキシ基としては、例えばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、ジメチルtert−ブチルシロキシ基等が挙げられる。
【0107】
アルキル基の置換基としてのアルキレンジオキシ基としては、例えば炭素数1〜3のアルキレンジオキシ基が挙げられ、具体的にはメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、プロピレンジオキシ基及びイソプロピリデンジオキシ基等が挙げられる。
【0108】
アルキル基の置換基としてのアリールオキシ基としては、例えば炭素数6〜15のアリールオキシ基が挙げられ、具体的にはフェノキシ基、ナフチロキシ基、アンスリロキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、4−フェニルフェノキシ基、3,5−ジフェニルフェノキシ基、4−メシチルフェノキシ基及び3,5−ビス(トリフロロメチル)フェノキシ基等が挙げられる。
【0109】
アルキル基の置換基としてのアラルキルオキシ基としては、例えば炭素数7〜12のアラルキルオキシ基が挙げられ、具体的にはベンジロキシ基、2−フェニルエトキシ基、1−フェニルプロポキシ基、2−フェニルプロポキシ基、3−フェニルプロポキシ基、1−フェニルブトキシ基、2−フェニルブトキシ基、3−フェニルブトキシ基、4−フェニルブトキシ基、1−フェニルペンチロキシ基、2−フェニルペンチロキシ基、3−フェニルペンチロキシ基、4−フェニルペンチロキシ基、5−フェニルペンチロキシ基、1−フェニルヘキシロキシ基、2−フェニルヘキシロキシ基、3−フェニルヘキシロキシ基、4−フェニルヘキシロキシ基、5−フェニルヘキシロキシ基及び6−フェニルヘキシロキシ基等が挙げられる。
【0110】
アルキル基の置換基としてのヘテロアリールオキシ基としては、例えば、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる、炭素数2〜14のヘテロアリールオキシ基が挙げられ、具体的には、2−ピリジルオキシ基、2−ピラジルオキシ基、2−ピリミジルオキシ基及び2−キノリルオキシ基等が挙げられる。
【0111】
アルキル基の置換基としての置換アミノ基としては、例えば、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基及びモルホリル基等のモノ又はジアルキルアミノ基;N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N−ナフチルアミノ基、N−ナフチル−N−フェニルアミノ基等のモノ又はジアリールアミノ基;N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基等のモノ又はジアラルキルアミノ基等が挙げられる。
【0112】
アルキル基に置換するパーハロゲノアルキル基としては、例えば、トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、ヘプタフロロプロピル基、ノナフロロブチル基、トリクロロメチル基、ペンタクロロエチル基等が挙げられる。
【0113】
アルキル基に置換するハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0114】
シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
これらシクロアルキル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記のアルキル基の置換基の説明で述べたような置換基が挙げられる。
【0115】
アルケニル基としては、鎖状又分岐状あるいは環状の、例えば炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。具体的なアルケニル基としては、例えばビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−シクロペンテニル基、3−シクロペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、4−メチル−3−ペンテニル基、4,8−ジメチル−3,7−ノナジエニル基、1−シクロヘキセニル基及び3−シクロヘキセニル基等が挙げられる。
これらアルケニル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記のアルキル基の置換基の説明で述べたような基が挙げられる。
【0116】
アリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等が挙げられる。 これらアリール基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはアルキル基の置換基の説明で述べたような基が挙げられる。
【0117】
アラルキル基としては、例えば炭素数7〜45のアラルキル基が好ましく、具体的にはベンジル基、トリルメチル基、キシリルメチル基、メシチルメチル基、4−フェニルフェニルメチル基、3−フェニルフェニルメチル基、2−フェニルフェニルメチル基、4−メシチルフェニルメチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、9−アントラニルメチル基、9−フェナントリルメチル基、3,5−ジフェニルフェニルメチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、3−ナフチルプロピル基、ジフェニルメチル基、ジトリルメチル基、ジキシリルメチル基、ジメシチルメチル基、ジ(4−フェニルフェニル)メチル基、ジ(3−フェニルフェニル)メチル基、ジ(2−フェニルフェニル)メチル基、ジ(4−メシチルフェニル)メチル基、ジ1−ナフチルメチル基、ジ2−ナフチルメチル基、ジ9−アントラニルメチル基、ジ9−フェナントリルメチル基、ビス(3,5−ジフェニルフェニル)メチル基、トリフェニルメチル基、トリトリルメチル基、トリキシリルメチル基、トリメシチルメチル基、トリ(4−フェニルフェニル)メチル基、トリ(3−フェニルフェニル)メチル基、トリ(2−フェニルフェニル)メチル基、トリ(4−メシチルフェニル)メチル基、トリ1−ナフチルメチル基、トリ2−ナフチルメチル基、トリ9−アントラニルメチル基、トリ9−フェナントリルメチル基、トリス(3,5−ジフェニルフェニル)メチル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ヒドロキシジフェニルメチル基、ヒドロキシジトリルメチル基、ヒドロキシジ(4−t−ブチルフェニル)メチル基、ヒドロキシジキシリルメチル基、ヒドロキシジ(2−フェニルフェニル)メチル基、ヒドロキシジ(3−フェニルフェニル)メチル基、ヒドロキシジ(4−フェニルフェニル)メチル基、ヒドロキシビス(3,5−ジフェニルフェニル)メチル基、ヒドロキシジ(4−メシチルフェニル)メチル基、ヒドロキシビス(3,5−ジトリフロロメチルフェニル)メチル基、トリメチルシロキシフェニルメチル基、トリメチルシロキシジフェニルメチル基、トリメチルシロキシジトリルメチル基、トリメチルシロキシジ(4−t−ブチルフェニル)メチル基、トリメチルシロキシジキシリルメチル基、トリメチルシロキシジ(2−フェニルフェニル)メチル基、トリメチルシロキシジ(3−フェニルフェニル)メチル基、トリメチルシロキシジ(4−フェニルフェニル)メチル基、トリメチルシロキシビス(3,5−ジフェニルフェニル)メチル基、トリメチルシロキシジ(4−メシチルフェニル)メチル基及びトリメチルシロキシビス(3,5−ジトリフロロメチルフェニル)メチル基等が挙げられる。
これらアラルキル基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはアルキル基の説明で述べたような基が挙げられる。
【0118】
アルコキシ基としては、たとえば炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチロキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシロキシ基、2−メチルペンチロキシ基、3−メチルペンチロキシ基、4−メチルペンチロキシ基、5−メチルペンチロキシ基、シクロペンチロキシ基、シクロヘキシロキシ基、ジシクロペンチルメトキシ基、ジシクロヘキシルメトキシ基、トリシクロペンチルメトキシ基、トリシクロヘキシルメトキシ基、フェニルメトキシ基、ジフェニルメトキシ基及びトリフェニルメトキシ基等が挙げられる。
これらアルコキシ基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはアルキル基の説明で述べたような基が挙げられる。
【0119】
カルボキシル基としては、例えば炭素数1〜30のカルボキシル基が好ましく、具体的にはアセトキシ基、n−プロパノイロキシ基、イソプロパノイロキシ基、n−ブタノイロキシ基、2−ブタノイロキシ基、イソブタノイロキシ基、tert−ブタノイロキシ基、n−ペンタノイロキシ基、2−メチルブタノイロキシ基、3−メチルブタノイロキシ基、2,2−ジメチルプロパノイロキシ基、n−ヘキサノイロキシ基、2−メチルペンタノイロキシ基、3−メチルペンタノイロキシ基、4−メチルペンタノイロキシ基、5−メチルペンタノイロキシ基、シクロペンタノイロキシ基、シクロヘキサノイロキシ基、ジシクロペンチルアセトキシ基、ジシクロヘキシルアセトキシ基、トリシクロペンチルアセトキシ基、トリシクロヘキシルアセトキシ基、フェニルアセトキシ基、ジフェニルアセトキシ基、トリフェニルアセトキシ基、ベンゾイロキシ基、ナフトイロキシ基等が挙げられる。
これらカルボキシ基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはアルキル基の説明で述べたような基が挙げられる。
【0120】
アルコキシカルボニル基としては、たとえば炭素数1〜30のアルコキシカルボニル基が好ましく、具体的にはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペンチロキシカルボニル基、2−メチルブトキシカルボニル基、3−メチルブトキシカルボニル基、2,2−ジメチルプロポキシカルボニル基、n−ヘキシロキシカルボニル基、2−メチルペンチロキシカルボニル基、3−メチルペンチロキシカルボニル基、4−メチルペンチロキシカルボニル基、5−メチルペンチロキシカルボニル基、シクロペンチロキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基、ジシクロペンチルメトキシカルボニル基、ジシクロヘキシルメトキシカルボニル基、トリシクロペンチルメトキシカルボニル基、トリシクロヘキシルメトキシカルボニル基、フェニルメトキシカルボニル基、ジフェニルメトキシカルボニル基及びトリフェニルメトキシカルボニル基等が挙げられる。
これらアルコキシカルボニル基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはアルキル基の説明で述べたような基が挙げられる。
【0121】
アミド基としては、例えば炭素数1〜30のアミド基が好ましく具体的にはアセトアミド基、n−プロピオンアミド基、イソプロピオンアミド基、n−ブタナミド基、2−ブタナミド基、イソブタナミド基、tert−ブタナミド基、n−ペンタナミド基、2−メチルブタナミド基、3−メチルブタナミド基、2,2−ジメチルプロピオンアミド基、n−ヘキサナミド基、2−メチルペンタナミド基、3−メチルペンタナミド基、4−メチルペンタナミド基、5−メチルペンタナミド基、シクロペンタナミド基、シクロヘキサナミド基、ジシクロペンチルアセトアミド基、ジシクロヘキシルアセトアミド基、トリシクロペンチルアセトアミド基、トリシクロヘキシルアセトアミド基、フェニルアセトアミド基、ジフェニルアセトアミド基、トリフェニルアセトアミド基、ベンズアミド基、ナフタレンアミド基等が挙げられる。
これらアミド基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはアルキル基の説明で述べたような基が挙げられる。
【0122】
カルバモイル基としては、例えば炭素数1〜30のカルバモイル基が好ましく具体的には、カルバモイル基、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、n−プロピルカルバモイル基、イソプロピルカルバモイル基、n−ブチルカルバモイル基、2−ブチルカルバモイル基、イソブチルカルバモイル基、tert−ブチルカルバモイル基、n−ペンチルカルバモイル基、シクロペンチルカルバモイル基、シクロヘキシルカルバモイル基、シクロヘプチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、ジn−プロピルカルバモイル基、ジイソプロピルカルバモイル基、ジn−ブチルカルバモイル基、ジ2−ブチルカルバモイル基、ジイソブチルカルバモイル基、ジtert−ブチルカルバモイル基、ジn−ペンチルカルバモイル基、ジシクロペンチルカルバモイル基、ジシクロヘキシルカルバモイル基、ジシクロヘプチルカルバモイル基、N,N−1,4−テトラメチレンカルバモイル基、N,N−1,5−ペンタメチレンカルバモイル基、モルホリンカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、トリルカルバモイル基、キシリルカルバモイル基、メシチルカルバモイル基、3,5−ジtert−ブチルフェニルカルバモイル基、p−フェニルカルバモイル基、m−フェニルカルバモイル基、o−フェニルカルバモイル基、4−フェニルフェニルカルバモイル基、3−フェニルフェニルカルバモイル基、2−フェニルフェニルカルバモイル基、4−メシチルフェニルカルバモイル基、3,5−ジフェニルフェニルカルバモイル基、ナフチルカルバモイル基、フェナントリルカルバモイル基、アントラニルカルバモイル基、ジフェニルカルバモイル基、ジトリルカルバモイル基、ジキシリルカルバモイル基、ジメシチルカルバモイル基、ビス(3,5−ジtert−ブチルフェニル)カルバモイル基、ジp−フェニルカルバモイル基、ジm−フェニルカルバモイル基、ジo−フェニルカルバモイル基、ジ(4−フェニルフェニル)カルバモイル基、ジ(3−フェニルフェニル)カルバモイル基、ジ(2−フェニルフェニル)カルバモイル基、ジ(4−メシチルフェニル)カルバモイル基、ビス(3,5−ジフェニルフェニル)カルバモイル基、ジナフチルカルバモイル基、ジフェナントリルカルバモイル基及びジアントラニルカルバモイル基等が挙げられる。
これらカルバモイル基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはアルキル基の説明で述べたような基が挙げられる。
【0123】
シロキシ基としては、例えばトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、ジメチルtert−ブチルシロキシ基等があげられる。
これらシロキシ基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはアルキル基の説明で述べたような基が挙げられる。
【0124】
具体的な光学活性環状含窒素化合物としては、例えば以下のような化合物が挙げられる。
以下化合物中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Buはブチル基、Bnはベンジル基、Etはエチル基、TMSはトリメチルシリル基、Prはプロピル基、iPrはイソプロピル基、polymerはポリマー鎖を表す。
【0152】
更に、本発明においてはもう一つの触媒成分として酸を用いることが好ましい。酸を用いることで、光学活性環状含窒素化合物を塩として系内に存在させるができ、これにより、触媒反応を促進させることが出来る。また、酸が錯体触媒のカウンターとして存在することで錯体触媒の安定化を図ることが出来る。
酸としては有機酸及び無機酸を用いることができるが、特に有機酸が好ましい。
【0153】
具体的な有機酸の例としては、酢酸、クロロ酢酸、ジフロロ酢酸、トリフロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリブロモ酢酸、安息香酸、2,4−ジニトロ安息香酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸等が挙げられる。
具体的な無機酸の例としては、弗酸、塩酸、臭酸、ヨウ酸、硫酸、過塩素酸、燐酸、硝酸等が挙げられる。
【0154】
前記した遷移金属錯体と、光学活性環状含窒素化合物と、必要に応じて酸もしくは補助配位子を反応させ、予め触媒を調製する場合は、溶媒中に遷移金属錯体と窒素化合物、必要に応じて酸もしくは補助配位子をあらかじめ添加し、in situにて調整しても良く、あらかじめ溶媒中で調整した溶液から溶媒を留去して、後ほど目的の水素化基質に添加しても良い。このようにして、本願発明の均一系不斉水素化触媒を得ることができる。
【0155】
<製造方法>
本発明では、前記した触媒の存在下に、または、前記した遷移金属錯体及び光学活性環状含窒素化合物の存在下に、α、β−不飽和カルボニル化合物を不斉水素化反応させることにより、光学活性アルデヒド又は光学活性ケトンのような光学活性カルボニル化合物が得られる。なお、遷移金属錯体及び光学活性環状含窒素化合物をはじめとする各化合物は市販品から入手できる。
【0156】
本発明の触媒として用いられる遷移金属錯体の使用量は、種々の反応条件により異なるが、基質であるα、β−不飽和カルボニル化合物に対して、例えば0.0001〜1倍モルであり、好ましくは0.001〜0.05倍モル用いることができる。
【0157】
本発明の触媒の成分として用いられる光学活性環状含窒素化合物の使用量は、種々の反応条件により異なるが、基質であるα、β−不飽和カルボニル化合物に対して、例えば0.001〜20倍モルであり、好ましくは0.001〜0.05倍モル用いることができる。
【0158】
本発明の触媒の成分として用いられる酸の使用量は、種々の反応条件により異なるが、光学活性環状含窒素化合物に対して、例えば、0.01〜10倍モルであり、好ましくは0.2〜4倍モル用いることができる。
【0159】
本発明の触媒を用いてα、β−不飽和カルボニル化合物を不斉水素化し光学活性カルボニル化合物を製造する際には、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができるが、溶媒存在下で行うことが好ましい。
【0160】
使用される具体的な溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系有機溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系有機溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系有機溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなどのエーテル系有機溶媒;水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ターシャリーブタノール等のアルコール系有機溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモトルエン等のハロゲン化炭化水素系有機溶媒;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等が好ましく、必要に応じこれらの溶媒の混合溶媒を用いることもできる。これら溶媒の中でも、ヘプタン、トルエン、テトラヒドロフランが特に好ましい。
溶媒の使用量は、反応条件等により適宜選択することができるが、基質であるα、β−不飽和カルボニル化合物に対して例えば0〜20倍容量、好ましくは0〜5倍容量である。
【0161】
本発明の方法は、水素ガスを水素源として行うが、その水素圧は、0.01MPa〜10MPaであり、好ましくは0.1MPa〜1MPaである。反応温度は、−78〜100℃であり、好ましくは10〜40℃である。反応時間は、反応条件により異なるが、通常1〜30時間である。
【0162】
上記のようにして得られた光学活性カルボニル化合物は、例えば抽出、再結晶、各種クロマトグラフィー等の通常用いられる操作により、単離精製を行うことができる。また、得られる光学活性カルボニル化合物の立体配置は、光学活性環状含窒素化合物の立体配置を適宜選択することによって、d体又はl体(R体又はS体)を製造することができる。
【実施例】
【0163】
以下、本発明を比較例および実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0164】
なお、実施例中での生成物の測定は、次の機器装置類を用いて行われた。
核磁気共鳴スペクトル:
1H−NMR:Oxford 300MHz FT−NMR(300MHz)(バリアン社製)
ガスクロマトグラフィー:
GC−2010ガスクロマトグラフ(株式会社島津製作所製)
カラム:
転化率測定 DB−WAX(0.25mm×30m)(Agilent社製)
光学純度測定 β−DEX−225(0.25mm×30m)、β−DEX−325(0.25mm×30m)(スペリコ社製)
検出器:FID
また、金属錯体はAldrich社又はStrem社から、光学活性環状含窒素化合物はAldrich社から購入したものを使用した。
【0165】
(実施例1−1〜1−15)
触媒金属としてパラジウム錯体を、共触媒(光学活性環状含窒素化合物)として(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridineを用いた例を以下に記す。
【0166】
(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridine
【0167】
【化43】
【0168】
(実施例1−1)
10ml反応フラスコに、シトラール1g(6.57mmol、試薬中のネラール・ゲラニアール比は1:1)、酢酸パラジウム2.9mg(0.2mol%)、(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridine 31mg(2mol%)、トリフルオロ酢酸15mg(2mol%)、トルエン2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、シトラールからシトロネラールへの転化率は50.6%で、得られたシトロネラールはd体であり、その光学純度は40.3%e.e.であった。
【0169】
(実施例1−2)
10ml反応フラスコに、シトラール1g(6.57mmol、試薬中のネラール・ゲラニアール比は1:1)、酢酸パラジウム5.8mg(0.4mol%)、(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridine 31mg(2mol%)、トルエン2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、シトラールからシトロネラールへの転化率は99.8%で、得られたシトロネラールはd体であり、その光学純度は18.2%e.e.であった。
【0170】
(実施例1−3)
10ml反応フラスコに、ネラール1g(6.57mmol)、酢酸パラジウム5.8mg(0.4mol%)、(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridine 31mg(2mol%)、トリフルオロ酢酸15mg(2mol%)、トルエン2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、ネラールからシトロネラールへの転化率は94.5%で、得られたシトロネラールはd体であり、その光学純度は25.6%e.e.であった。
【0171】
(実施例1−4)
10ml反応フラスコに、ゲラニアール1g(6.57mmol)、酢酸パラジウム5.8mg(0.4mol%)、(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridine 31mg(2mol%)、トリフルオロ酢酸15mg(2mol%)、トルエン2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、ゲラニアールからシトロネラールへの転化率は93.2%で、得られたシトロネラールはd体であり、その光学純度は40.5%e.e.であった。
【0172】
(実施例1−5〜1−15)
パラジウム錯体、溶媒、補助配位子を変更した以外は、全て実施例1と同様に反応を行なった。結果を以下の表1に示す。得られたシトロネラールは全てd体である。
【0173】
【表1】
【0174】
(実施例2−1〜2−3)
触媒の製造例及び製造した触媒を用いた不斉水素化反応の例を以下に示す。
【0175】
(実施例2−1)
10ml反応フラスコに、酢酸パラジウム2.9mg(0.2mol%)、(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridine 31mg(2mol%)、トルエン2mlを仕込んだ。脱気後、室温にて一晩攪拌した後、次いで濃縮することにより錯体を得た。
この錯体は、H
1−NMR上に(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridineと異なるシグナルが観測されたことにより(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridineがパラジウムに配位した構造であることが確認された。
錯体のH
1−NMRチャートを
図1及び
図2に示す。また、比較として(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridineのH
1−NMRチャートを
図5及び
図6に示す。
【0176】
(実施例2−2)
10ml反応フラスコに、酢酸パラジウム2.9mg(0.2mol%)、(S)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridine 31mg(2mol%)、トリフルオロ酢酸15mg(2mol%)、トルエン2mlを仕込んだ。脱気後、室温にて一晩攪拌した後、次いで濃縮することにより錯体を得た。
この錯体は、H
1−NMR上に(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridineと異なるシグナルが観測されたことにより(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridineがパラジウムに配位した構造であることが確認された。
錯体のH
1−NMRチャートを
図3及び
図4に示す。また、比較として(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridineのH
1−NMRチャートを
図5及び
図6に、(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridineのトリフルオロ酢酸塩のH
1−NMRチャートを
図7及び
図8に示す。
【0177】
(実施例2−3)
10ml反応フラスコに、シトラール1g(6.57mmol、試薬中のネラール・ゲラニアール比は1:1)、実施例2−1で得た触媒、トリフルオロ酢酸15mg(2mol%)、トルエン2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、シトラールからシトロネラールへの転化率は50.6%で、得られたシトロネラールはd体であり、その光学純度は40.3%e.e.であった。
【0178】
(実施例3−1〜3−4)
共触媒(光学活性環状含窒素化合物)として(S)−(+)−2−(tert−Butyl)−3−methyl−4−imidazolidinone trifluoroaceticacid saltを用いた例を以下に記す。
【0179】
(S)−(+)−2−(tert−Butyl)−3−methyl−4−imidazolidinone trifluoroaceticacid salt
【0180】
【化44】
【0181】
(実施例3−1)
10ml反応フラスコに、シトラール1g(6.57mmol、試薬中のネラール・ゲラニアール比は1:1)、酢酸パラジウム5.8mg(0.4mol%)、(S)−(+)−2−(tert−Butyl)−3−methyl−4−imidazolidinone trifluoroaceticacid salt 36mg(2mol%)、トルエン2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、シトラールからシトロネラールへの転化率は51.0%で、得られたシトロネラールはl体であり、その光学純度は27.1%e.e.であった。
【0182】
(実施例3−2)
10ml反応フラスコに、シトラール1g(6.57mmol、試薬中のネラール・ゲラニアール比は1:1)、酢酸パラジウム5.8mg(0.4mol%)、(S)−(+)−2−(tert−Butyl)−3−methyl−4−imidazolidinone trifluoroaceticacid salt 36mg(2mol%)、THF2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、シトラールからシトロネラールへの転化率は58.5%で、得られたシトロネラールはl体であり、その光学純度は34.8%e.e.であった。
【0183】
(実施例3−3)
10ml反応フラスコに、シトラール1g(6.57mmol、試薬中のネラール・ゲラニアール比は1:1)、R−BINAP16.4mg(0.4mol%)、酢酸パラジウム5.8mg(0.4mol%)、(S)−(+)−2−(tert−Butyl)−3−methyl−4−imidazolidinone trifluoroaceticacid salt 36mg(2mol%)、THF2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、シトラールからシトロネラールへの転化率は10.0%で、得られたシトロネラールはl体であり、その光学純度は29.5%e.e.であった。
【0184】
(実施例3−4)
10ml反応フラスコに、シトラール1g(6.57mmol、試薬中のネラール・ゲラニアール比は1:1)、酢酸パラジウム5.8mg(0.4mol%)、(L)−2−(Diphenylamido)pyrrolidine 25mg(2mol%)、トリフルオロ酢酸15mg(2mol%)、トルエン2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、シトラールからシトロネラールへの転化率は41.9%で、得られたシトロネラールはl体であり、その光学純度は3.0%e.e.であった。
【0185】
(実施例4−1〜4−4)
遷移金属錯体として下記Willkinson錯体、ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウムジクロリドダイマー又は三塩化イリジウムn水和物を、共触媒(光学活性環状含窒素化合物)として(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridineを用いた例を以下に記す。
【0186】
Willkinson錯体
【0187】
【化45】
【0188】
ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウムジクロリドダイマー
【0189】
【化46】
【0190】
(実施例4−1)
10ml反応フラスコに、シトラール1g(6.57mmol、試薬中のネラール・ゲラニアール比は1:1)、Willkinson錯体62.8mg(1mol%)、(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridine 31mg(2mol%)、トリフルオロ酢酸15mg(2mol%)、エタノール2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、シトラールからシトロネラールへの転化率は28.7%で、得られたシトロネラールはd体であり、その光学純度は5.0%e.e.であった。
【0191】
(実施例4−2)
10ml反応フラスコに、シトラール1g(6.57mmol、試薬中のネラール・ゲラニアール比は1:1)、Willkinson錯体62.8mg(1mol%)、(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridine 31mg(2mol%)、エタノール2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、シトラールからシトロネラールへの転化率は65.7%で、得られたシトロネラールはd体であり、その光学純度は1.5%e.e.であった。
【0192】
(実施例4−3)
10ml反応フラスコに、シトラール1g(6.57mmol、試薬中のネラール・ゲラニアール比は1:1)、三塩化イリジウムn水和物19.5mg(2mol%)、(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridine 31mg(2mol%)、トリフルオロ酢酸15mg(2mol%)、THF2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、シトラールからシトロネラールへの転化率は9.02%で、得られたシトロネラールはd体であり、その光学純度は20.8%e.e.であった。
【0193】
(実施例4−4)
10ml反応フラスコに、シトラール1g(6.57mmol、試薬中のネラール・ゲラニアール比は1:1)、ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウムジクロリドダイマー19.6mg(1mol%)、(R)−(+)−2−(Diphenylmethyl)pyrroridine 31mg(2mol%)、トリフルオロ酢酸15mg(2mol%)、THF2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、シトラールからシトロネラールへの転化率は11.2%で、得られたシトロネラールはd体であり、その光学純度は3.9%e.e.であった。
【0194】
(実施例5−1〜5−3)
遷移金属錯体としてヘキサロジウムヘキサデカカルボニル錯体を、配位子として(+)−2,3−O−Isopropylidene−2,3−dihydroxy−1,4−bis(diphenylphosphino)butane(以下(+)−DIOP)を、共触媒(光学活性環状含窒素化合物)として(S)−(+)−2−(tert−Butyl)−3−methyl−4−imidazolidinone trifluoroaceticacid saltを用いた例を以下に記す。
【0195】
(+)−DIOP
【0196】
【化47】
【0197】
(実施例5−1)
10ml反応フラスコに、ゲラニアール550mg(3.6mmol)、ヘキサロジウムヘキサデカカルボニル錯体5.4mg(0.83mol%)、(S)−(+)−2−(tert−Butyl)−3−methyl−4−imidazolidinone trifluoroaceticacid salt 19.5mg(2mol%)、(+)−DIOP 37.6mg(2.1mol%)、トルエン2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、ゲラニアールからシトロネラールへの転化率は29.8%で、得られたシトロネラールはd体であり、その光学純度は4.5%e.e.であった。
【0198】
(実施例5−2)
10ml反応フラスコに、ネラール550mg(3.6mmol)、ヘキサロジウムヘキサデカカルボニル錯体5.4mg(0.83mol%)、(S)−(+)−2−(tert−Butyl)−3−methyl−4−imidazolidinone trifluoroaceticacid salt 19.5mg(2mol%)、(+)−DIOP 37.6mg(2.1mol%)、トルエン2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、ネラールからシトロネラールへの転化率は32.6%で、得られたシトロネラールはd体であり、その光学純度は4.3%e.e.であった。
【0199】
(実施例5−3)
10ml反応フラスコに、シトラール550mg(3.6mmol、試薬中のネラール・ゲラニアール比は1:1)、ヘキサロジウムヘキサデカカルボニル錯体5.4mg(0.83mol%)、(S)−(+)−2−(tert−Butyl)−3−methyl−4−imidazolidinone trifluoroaceticacid salt 19.5mg(2mol%)、(+)−DIOP 37.6mg(2.1mol%)、トルエン2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、シトラールからシトロネラールへの転化率は34.9%で、得られたシトロネラールはd体であり、その光学純度は4.8%e.e.であった。
【0200】
(比較例1−1〜1−2)
遷移金属錯体としてヘキサロジウムヘキサデカカルボニル錯体を、配位子として(+)−2,3−O−Isopropylidene−2,3−dihydroxy−1,4−bis(diphenylphosphino)butane(以下(+)−DIOP)とし、共触媒(光学活性環状含窒素化合物)を使用せずに反応を行った例を以下に記す。
【0201】
(比較例1−1)
10ml反応フラスコに、ゲラニアール550mg(3.6mmol)、ヘキサロジウムヘキサデカカルボニル錯体5.4mg(0.83mol%)、(+)−DIOP 37.6mg(2.1mol%)、トルエン2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、ゲラニアールからシトロネラールへの転化率は95.5%で、得られたシトロネラールはl体であり、その光学純度は48.6%e.e.であった。
【0202】
(比較例1−2)
10ml反応フラスコに、ネラール550mg(3.6mmol)、ヘキサロジウムヘキサデカカルボニル錯体5.4mg(0.83mol%)、(+)−DIOP 37.6mg(2.1mol%)、トルエン2mlを入れて攪拌し、水素雰囲気とした。室温にて21時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィ−で分析したところ、ネラールからシトロネラールへの転化率は97.1%で、得られたシトロネラールはd体であり、その光学純度は47.1%e.e.であった。
【0203】
比較例1−1〜1−2より明らかなように、共触媒(光学活性環状含窒素化合物)を使用せずに反応を行なうと、原料基質のZ配置、E配置により、得られる生成物の立体配置が依存されることが明らかである。
【0204】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2010年3月4日出願の日本特許出願(特願2010−047741)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。