【実施例】
【0045】
本発明は、以下の例によって更に明確にされるが、それらは本来例示のためだけを意図したものである。
【0046】
以下の共通の手順を、本発明のインクジェットインク組成物を調製するために用いた。
【0047】
<ジアゾニウム溶液の調製>
ジアゾニウム塩の溶液を、下記のスキーム1に示した手順を用いて、対応する芳香族アミンから調製した。
【0048】
【化9】
【0049】
例えば、500mLの円錐形フラスコに、108ミリモルの芳香族アミン(または芳香族アミンの混合物)、250mLの氷水、および237ミリモルの濃塩酸(37%溶液を27.1mL)を加えた。この混合物を、氷の中で、攪拌しながら冷却し、そして55mLの2M亜硝酸ナトリム水溶液を加えることによってジアゾ化した。1時間の攪拌の後に、ジアゾ化は完了し、そして過剰の遊離の亜硝酸を0.5gの固体のスルファミン酸で破壊した。結果として得られたジアゾニウム溶液を、氷の上で保持し、そして調製から1時間以内に使用した。このジアゾニウム溶液は、シナジストとアゾ顔料の両方の調製に用い、従ってこれらの材料のジアゾ成分は同じであることを確実にした(すなわち、S5=P5、そしてS6=P6)。
【0050】
<シナジストの調製>
イオン基もしくはイオン性基を有するアゾ結合成分は、下記のスキーム2に示したように、米国特許第2,328,353号明細書中に記載されている手順を用いて、好適な芳香族アミンとジケテンの、水中での、3〜5℃、pH8〜10での反応によって調製した。
【0051】
【化10】
【0052】
収率は、LC−MSによって測定し、そしてほぼ定量的であることが見出された。結果として得られるシナジストアゾ結合成分は、水溶液として用いられ、そして容積測定された。
【0053】
8ミリモルの結合剤に相当するシナジストアゾ結合成分溶液の量を、1gの無水酢酸ナトリムが容れられた250mLの円錐形フラスコ中に容れた。これに、8ミリモルのジアゾニウム塩に相当するジアゾニウム溶液の量を、滴下して加え、そして黄色のスラリーがほぼ直ちに形成された。結果として得られたシナジスト(もしくはシナジストの混合物)スラリーは、HPLCによって、本質的に純粋であることが見出され、そしてそのまま、下記のインクジェットインク組成物を形成するために用いた。あるいは、このシナジストは、ろ過によって単離し、氷水で洗浄し、そして真空オーブンで、70℃で乾燥することもできた。
【0054】
下記の表2中に示したシナジストは、この共通の方法を用いて調製した。
【0055】
【表2】
【0056】
<アゾ顔料の合成>
アセトアセトニトリル(103ミリモル、18.4g、99%純度)を、380mLのDI水と126mLの1M水酸化ナトリウム水溶液を容れた4つ首丸底フラスコに加えた。15分間の攪拌の後に、アセトアセトニトリルナトリウム塩の透明な溶液が形成された。次いで、49mLの2.6M酢酸水溶液を、蠕動ポンプを用いて計り入れて、アゾ結合成分を、微細な結晶の形態で再沈殿させた。最後に、18gの無水酢酸ナトリウムを、結果として得られた結合剤スラリーに加えた。
【0057】
この結合剤スラリーに、100ミリモルのジアゾニウム塩に相当する量のジアゾニウム溶液を、室温で、1.5時間に亘って、蠕動ポンプを用いて加えた。この添加が終了した後に、H酸試験(10mLのDI水中に溶解した、0.1gのH酸および0.1gの重炭酸ナトリウム)(これは、ジアゾニウム塩が存在すると紫色に変わる)を用いて、ジアゾニウム塩は検知されなかった。結果として得た黄色のアゾ顔料を、真空ろ過によって取り出し、そして圧縮した塊りを、次いで、ろ液の導電率が200〜250マイクロジーメンスになるまで、DI水で洗浄した。これを、更なる精製なしで、下記のインクジェットインク組成物を形成するのに用いた。
【0058】
下記の表3中に示したアゾ顔料は、この共通の方法を用いて調製した。適切な場合には、これらの顔料の一般名(例えば、C.I番号)も示した。
【0059】
【表3】
【0060】
<アゾ顔料分散液の調製>
上記のように調製した種々のアゾ顔料を、上記のように調製した種々のシナジストと組み合わせて、そして固形分を15〜17%にするように、水を加えた。このようにして、シナジストは、アゾ顔料の質量を基準として8質量%の量で用いた。複数のアゾ顔料および/または複数のシナジストを用いる場合には、シナジストの総量は、アゾ顔料の総質量を基準として8質量%であり、そしてシナジストの比率は、アゾ顔料の比率と同じであった。
【0061】
一旦組み合わせると、結果として得られる混合物は、次いで2時間に亘り、65〜70℃で、Silverson LR-4オーバーヘッド混合機および外部加熱(熱盤)を用いて、均質化した。この後直ぐに、結果として得た分散液を、Misonix超音波処理器を用いて、3時間に亘って超音波処理した。残った塩を除去するために、この分散液を、次いで、中空繊維膜を用いて、浸透液の導電率が200〜500マイクロジーメンスに低下するまで、ダイアフィルトレーションに掛けた。最後に、アゾ顔料の水性懸濁液を、4500RPMで遠心分離して、粗い粒子を除去した。
【0062】
加熱エージング試験のための組成物を、下記の表4または表5中に示した配合(顔料の質量%は、乾燥品基準でのアゾ顔料/シナジストの量である)の1つを用いて、これらのアゾ顔料の水性分散液で調製した。
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
結果として得られる組成物の平均体積顔料粒子径(mV)は、Microtrac Inc.によって製造されたNanotrac 250動的光散乱粒子分析器を用いて測定した。安定している場合には、その組成物を、対流式オーブンの中で、70℃に3週間に亘って加熱することにより、更なる加熱エージングに掛け、その時間の後に、再度平均体積粒子径を測定して、初期の粒子径と比較した。
【0066】
これらの組成物は、以下のように等級を定めた:A−メジアン粒子径成長が5〜10%;沈降なし;B−メジアン粒子径成長が11〜20%;沈降はほとんどないか、もしくはなし;C−メジアン粒子径成長が20%超、沈降;D−破局的な障害、完全な沈降;およびE−分散液が形成されない;材料は試験できない。等級AまたはBは、加熱エージング試験に合格であると考えられるが、一方で、等級Cまたは更に低い等級は、この試験に不合格であると考えられる。
【0067】
例1〜4
本発明のアゾ顔料分散液は、上記の共通手順を用いて調製した。それぞれの例についてのアゾ顔料とシナジストの具体的な組み合わせは、下記の表6中に示した。
【0068】
【表6】
【0069】
理解できるように、それぞれの組成物は、P1もしくはP5位にアルコキシ基を有しないアゾ顔料およびS3位にイオン基もしくはイオン性基を有するシナジストを含んでおり、これらの例のそれぞれでは、イオン基もしくはイオン性基はスルホン酸ナトリウム基である。更に、これらの例のそれぞれでは、アゾ顔料とシナジストの両方のジアゾ成分は同じであった(すなわち、S5=P5、そしてS6=P6)。更に、例3と4では、2種のアゾ顔料が、好適なシナジストと共に用いられており、2種のアゾ顔料は、それぞれが要求される構造的特徴を有しており、好適なシナジストもまた要求される構造的特徴に合致している。例3では、ピグメントイエロー1およびピグメントイエロー6を、50/50の質量比で用い、そして例4では、ピグメントイエロー1とピグメントイエロー1:1を、80/20の質量比で用いた。また、相当する比率のシナジストも用い、そしてシナジストの総量は、アゾ顔料の総質量を基準として8質量%であった。
【0070】
加熱エージング試験用の組成物は、配合Aおよび配合Bの両方を用いて調製し、そしてそれぞれについての加熱エージングの等級を、下記の表7中に示した。
【0071】
【表7】
【0072】
これらの結果が示すように、アゾ顔料とシナジストの適切な選択を含むこれらのアゾ顔料分散液のそれぞれは、両方の配合において優れた熱安定性を有しており、そしてその結果として、インクジェットインクプリンターにおいて確実に噴射するインクジェットインク組成物を形成することが期待される。
【0073】
例5〜10
本発明のアゾ顔料分散液を、上記の共通手順を用いて調製した。それぞれの例におけるシナジストとアゾ顔料の具体的な組み合わせが、下記の表8中に示されている。理解できるように、それぞれの組成物は、P1およびP5位にアルコキシ基を有さないアゾ顔料であるピグメントイエロー1と、S3位(例5〜9)またはS4位(例10)のいずれかにイオン基もしくはイオン性基を有するシナジストとを含んでいる。これらの例のそれぞれでは、種々の異なる基が用いられており、そして、更に、アゾ顔料とシナジストの両方のジアゾ成分は同じである(すなわち、S5=P5、そしてS6=P6)。シナジストの総量は、アゾ顔料の総質量を基準として、8質量%であった。
【0074】
【表8】
【0075】
加熱エージング試験用の組成物を、配合Aおよび配合Bの両方を用いて調製し、そしてそれぞれの加熱エージング等級を下記の表9中に示した。
【0076】
【表9】
【0077】
これらの結果が示すように、アゾ顔料とシナジストの適切な選択を含むこれらのアゾ顔料分散液のそれぞれは、両方の配合において優れた熱安定性を有しており、そして結果として、インクジェットインクプリンターにおいて確実に噴射するインクジェットインク組成物を形成することが期待される。
【0078】
例11〜13
本発明のアゾ顔料分散液を、上記の共通手順を用いて調製した。それぞれの例におけるシナジストとアゾ顔料の具体的な組み合わせが、下記の表10中に示されている。
【0079】
【表10】
【0080】
理解できるように、それぞれの組成物は、P1もしくはP5位にアルコキシ基を有しないアゾ顔料であるピグメントイエロー1およびピグメントイエロー1:1と、S3位にイオン基もしくはイオン性基を有するシナジストとの組み合わせを含んでいる。これらの例のそれぞれでは、種々の異なる基が用いられており、そしてアゾ顔料とシナジストの両方のジアゾ成分は同じである(すなわち、S5=P5、そしてS6=P6)。また、アゾ顔料の比率は変更されている。例4では、ピグメントイエロー1とピグメントイエロー1:1を、80/20の質量比で用いた。例11では、これらの顔料は、95/5の質量比で用いた。例12では、ピグメントイエロー1対ピグメントイエロー1:1の質量比は99/1であった。例13では、ピグメントイエロー1とピグメントイエロー1:1は、97.5/2.5の比率で用いた。これらの例のそれぞれでは、相当する比率のシナジストも用いられ、そしてシナジストの総量は、アゾ顔料の総質量を基準として8質量%である。
【0081】
加熱エージング試験用の組成物を、配合Aおよび配合Bの両方を用いて調製し、そしてそれぞれの加熱エージング等級を下記の表11中に示した。
【0082】
【表11】
【0083】
これらの結果が示すように、アゾ顔料とシナジストの適切な選択を含むこれらのアゾ顔料分散液のそれぞれは、両方の配合において優れた熱安定性を有しており、そして結果として、インクジェットインクプリンターにおいて確実に噴射するインクジェットインク組成物を形成することが期待される。
【0084】
例14
アゾ顔料分散液は、上記の共通手順を用いて調製した。シナジストとアゾ顔料の具体的な組み合わせが、下記の表12中に示されている。
【0085】
【表12】
【0086】
理解できるように、この組成物は、P1もしくはP5位にアルコキシ基を有さないアゾ顔料であるピグメントイエロー1、およびそれぞれがS3位に異なるイオン基もしくはイオン性基を有するシナジストの組み合わせを含んでいる。アゾ顔料と両方のシナジストのジアゾ成分は同じである(すなわち、S5=P5、そしてS6=P6)。また、シナジストの比率は、1:1の質量比で用いられ、そしてシナジストの総量は、アゾ顔料の質量を基準として8質量%であった。
【0087】
加熱エージング試験用の組成物を、配合Aおよび配合Bの両方を用いて調製し、そしてそれぞれの加熱エージング等級を下記の表13中に示した。
【0088】
【表13】
【0089】
これらの結果が示すように、アゾ顔料とシナジストの適切な選択を含むこのアゾ顔料分散液は、両方の配合において優れた熱安定性を有しており、そして結果として、インクジェットインクプリンターにおいて確実に噴射するインクジェットインク組成物を形成することが期待される。
【0090】
例15
アゾ顔料分散液を、下記のように調製した。P1もしくはP5位にアルコキシ基を有さないアゾ顔料であるピグメントイエロー1(188.35g、カナダ国、トロント、Dominion Colour Corporationから、26.52%固形分の圧縮した塊りの形態で、商業的に入手可能であり、50gの顔料に相当する)を、ステンレス鋼ビーカーに加え、次いで、S3位にイオン基もしくはイオン性基を有し、そしてピグメントイエロー1と同じジアゾ成分を有するシナジスト(Syn7、上記のように調製し、これをろ過し、氷水で洗浄し、そして真空で、70℃で乾燥した)を2.00g加えた。この混合物を、310gのDI水で17%固形分に希釈し、そしてSilverson混合器中で、4500PRM、70℃の温度で、2時間に亘り均質化し、661nmの平均体積粒子径を有する顔料分散液を生成した。次いで、この分散液を冷却した容器に移して、そして浸漬プローブで、150Wで3時間に亘って超音波処理し、199nmの平均体積粒子径を有する分散液を与えた。次いで、これを4500RPMで40分間遠心分離して、178nmの平均体積粒子径を有する最終的な顔料分散液を与え、これを続いて膜ダイアフィルトレーション(AG Techの中空繊維500K膜)を用いて30%固形分に濃縮した。ピグメントイエローを基準とした収率は、65.2%であった。この例で用いたシナジストとアゾ顔料の具体的な組み合わせは、下記の表14中に示した。
【0091】
【表14】
【0092】
加熱エージング試験用の組成物を、配合Aおよび配合Bの両方を用いて調製し、そしてそれぞれの加熱エージング等級を下記の表15中に示した。
【0093】
【表15】
【0094】
これらの結果が示すように、アゾ顔料とシナジストの適切な選択を含むこのアゾ顔料分散液は、両方の配合において優れた熱安定性を有しており、そして結果として、インクジェットインクプリンターにおいて確実に噴射するインクジェットインク組成物を形成することが期待される。
【0095】
比較例1〜14
以下の比較例は、本発明のインクジェットインク組成物に関して上記したような特定の構造的な特徴を有していない、アゾ顔料とシナジストを組み合わせで含むインクジェットインク組成物を説明している。
【0096】
比較例1
比較のアゾ顔料分散液を、上記の共通手順を用いて調製した。シナジストとアゾ顔料の具体的な組み合わせを下記の表16中に示した。
【0097】
【表16】
【0098】
理解できるように、この比較組成物は、P5位にメトキシ基を有するアゾ顔料を含んでおり、これがS3位にイオン基もしくはイオン性基を有し、そしてアゾ顔料と同じジアゾ成分を有するシナジスト(すなわち、S5=P5、そしてS6=P6)と組み合わされている。シナジストの総量は、アゾ顔料の質量を基準として8質量%であった。
【0099】
加熱エージング試験用の比較組成物を、配合Aおよび配合Bの両方を用いて調製し、そしてそれぞれの加熱エージング等級を下記の表17中に示した。
【0100】
【表17】
【0101】
これらの結果が示すように、アゾ顔料のP5位にアルコキシ基を有すること以外は、上記の構造的特徴の全てに合致するアゾ顔料とシナジストの組み合わせは、いずれの配合においても安定な分散液を形成しなかった。結果として、このアゾ顔料分散液は、インクジェットインクプリンターにおいて確実に噴射するインクジェットインク組成物を形成することが期待されない。
【0102】
比較例2
比較のアゾ顔料分散液を、下記の混合結合法を用いて調製した。
【0103】
例7のアゾ顔料とシナジストを調製するのに用いたジアゾニウム溶液を、上記の手順を用いて調製した。次いで、アセトアセトニトリドを上記のように再沈殿させ、そしてこれをSyn6を調製するのに用いたアゾ結合成分で結合し、アゾ結合剤の混合物を形成した。これに、形成されたジアゾニウム溶液の全てを加えた。この反応混合物を80℃で2時間加熱し、そして結果として得られた黄色顔料の圧縮した塊りを、ろ過によって取り出し、水中に再分散し、超音波処理し、ダイアフィルトレーションを行い、そして遠心分離した。このようにして、結果として得られたピグメントイエロー1とSyn6を含むアゾ顔料分散液が、混合結合法によって均質混合物として調製された。シナジストの総量は、アゾ顔料の質量を基準として、8質量%であった。
【0104】
加熱エージング試験用の比較組成物を、配合Aおよび配合Bの両方を用いて調製し、そしてそれぞれの加熱エージング等級を下記の表18中に示した。
【0105】
【表18】
【0106】
これらの比較のアゾ顔料分散液は、シナジストが別個に加えられた成分ではない(むしろシナジストはアゾ顔料の合成の間に調整された)こと以外は、例7におけると同じアゾ顔料とシナジストを含んでいた。しかしながら、表18中の結果が示すように、これらの組成物は、両方の配合で、相当に貧弱な熱安定性を有している。従って、この比較のアゾ顔料分散液は、インクジェットインクプリンターにおいて確実に噴射するインクジェットインク組成物を形成することが期待されない。
【0107】
比較例3
比較のアゾ顔料分散液を、上記の共通手順を用いて調製した。シナジストとアゾ顔料の具体的な組み合わせを下記の表19中に示した。
【0108】
【表19】
【0109】
理解できるように、この比較組成物は、P1もしくはP5位にメトキシ基を有さないアゾ顔料であるピグメントイエロー1、およびS2〜S4位のいずれにもイオン基もしくはイオン性基を有さないシナジストを含んでいる。むしろ、イオン基(カルボン酸ナトリウム基)はS6位にある。また、結果として、シナジストのこのジアゾ成分は、アゾ顔料のジアゾ成分とは異なっている(すなわち、S5=P5であるが、しかしながらS6 P6)。シナジストの総量は、アゾ顔料の質量を基準として、8質量%であった。
【0110】
加熱エージング試験用の比較組成物を、配合Aおよび配合Bの両方を用いて調製し、そしてそれぞれの加熱エージング等級を下記の表20中に示した。
【0111】
【表20】
【0112】
これらの結果が示すように、イオン基もしくはイオン性基をシナジストの異なる位置に有する以外は、上記の構造的特徴の全てに合致するアゾ顔料とシナジストの組み合わせを含むこの比較のアゾ顔料分散液は、相当に貧弱な熱安定性を有している。結果として、この比較のアゾ顔料分散液は、インクジェットインクプリンターにおいて確実に噴射するインクジェットインク組成物を形成することが期待されない。
【0113】
比較例4
比較のアゾ顔料分散液を、下記の手順を用いて調製した。
【0114】
ジアゾニウム溶液を、2−ニトロ−4−メチルアニリンを用いて、上記の手順を用いて調製した。シナジストアゾ結合成分は、アレンドロン酸ナトリウムとジケテンを組み合わせることによって、上記の共通手順を用いて、下記のスキーム3中に示されるように調製した。
【0115】
【化11】
【0116】
このシナジストアゾ結合成分は、上記の共通手順に従って、ジアゾニウム溶液を用いてシナジストを調製するのに用いた。更に、ピグメントイエロー1もまた、上記の共通手順を用いて、このジアゾニウム溶液を用いて調製した。最後に、シナジストの量が、アゾ顔料の質量を基準として6質量%であること以外は、これも上記の共通手順を用いて、比較のアゾ顔料分散液を調製した。
【0117】
加熱エージング試験用の比較組成物を、配合Aおよび配合Bの両方を用いて調製し、そしてそれぞれの加熱エージング等級を下記の表21中に示した。
【0118】
【表21】
【0119】
これらの結果が示すように、この比較のアゾ顔料分散液は、上記の構造的特徴の全てに合致するアゾ顔料の組み合わせを、イオン基もしくはイオン性基は有しているが、しかしながらアゾ顔料と同じアゾ結合成分は有してはいないシナジストと組み合わせて含んでいるが、両方の配合において、相当に貧弱な熱安定性を有していた。結果として、これらの比較のアゾ顔料分散液は、インクジェットインクプリンターにおいて確実に噴射するインクジェットインク組成物を形成することが期待されない。
【0120】
比較例5〜13
比較のアゾ顔料分散液を、上記の共通手順を用いて調製した。シナジストとアゾ顔料の具体的な組み合わせを、下記の表22中に示した。理解できるように、これらの比較組成物のそれぞれは、P1および/またはP5位にメトキシ基を有するアゾ顔料(比較例5〜7のピグメントイエロー203は、P1位にメトキシ基を有しており、一方で、比較例8〜13のピグメントイエロー74は、P1とP5の両方の位置にメトキシ基を有している)を、イオン基もしくはイオン性基を有する種々の異なるシナジストと共に含んでいる。比較例5〜11では、シナジストはまた、アゾ顔料と同じジアゾ成分を有している(すなわち、S5=P5、そしてS6=P6)。シナジストの総量は、アゾ顔料の質量を基準として、8質量%であった。2種のシナジストの1:1混合物を用いた比較例11では、シナジストの総量は、アゾ顔料の質量を基準として、8質量%であった。
【0121】
【表22】
【0122】
加熱エージング試験用の比較組成物を、配合Aおよび配合Bの両方を用いて調製し、そしてそれぞれの加熱エージング等級を下記の表23中に示した。
【0123】
【表23】
【0124】
これらの比較のアゾ顔料分散液は、P1および/またはP5位にアルコキシ基を有するアゾ顔料を含んでいる。これらの結果が示すように、それぞれは、どちらの種類のシナジストが用いられたかに関わらず、シナジストのジアゾ成分がアゾ顔料のジアゾ成分のジアゾ成分と同じであったとしても、両方の配合において相当に貧弱な熱安定性を有している。幾つかは、いずれの配合でも安定な分散液を形成しなかった(比較例7、12および13)。更に、シナジストSyn1およびSyn7の含有(比較例5および6)は、これはP1もしくはP5位のいずれにもアルコキシ基を有さないアゾ顔料と組み合わせて用いた場合には同じ2種の配合において、優れた熱安定性を有するアゾ顔料分散液を生成することが上記で示されているけれども、良好な熱安定性を有する分散液をもたらさなかった。貧弱な分散安定性が見出されたので、これらの比較のアゾ顔料分散液は、インクジェットインクプリンターにおいて確実に噴射するインクジェットインク組成物を形成することが期待されない。
【0125】
例16
本発明のインクジェットインク組成物を、下記の表24中に示した配合の1つを用いて調製した。(顔料の質量%は、乾燥品基準でのアゾ顔料/シナジストの組み合わせの量である)
【0126】
【表24】
【0127】
それぞれの例で用いた具体的なアゾ顔料分散液を、下記の表25中に示した。
【0128】
【表25】
【0129】
それぞれのインクジェットインク組成物で、EPSON C88+プリンタとXerox 4200普通紙を用いて、印刷した。試験画像を印刷し、そしてMacbeth ColorEye 0/45分光比色計を用いて色の読み取りを行なった。また、結果を表25中に示した。これらの結果が示すように、本発明のインクジェットインク組成物は、優れた総合的な色特性を有する印刷画像を生成した。
【0130】
本発明の好ましい実施形態のこれまでの説明は、例証および説明の目的のため提供されてきた。網羅的であるか、または本発明を開示された正確な様式に限定することは、意図されていない。修正および変更は、上記教示に照らして可能であるか、または本発明の実行から得ることが可能である。実施形態は、当業者が種々の実施形態において、および考えられる特定用途に適する種々の修正を伴って本発明を利用することを可能とする本発明の原理およびその実際の適用を説明するために、選択され記載された。本発明の範囲は、本明細書に添付されるクレーム、およびそれらの同等物によって規定されるように意図されている。