(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ジカルボン酸とNb化合物を含む水性混合液を調製するための混合槽と、前記混合槽に配管を介して接続された前記水性混合液のろ過器と、を有する混合液製造装置であって、
前記混合槽は耐腐食性を有し、かつ前記水性混合液の攪拌手段、加熱手段及び冷却手段が設けられており、前記混合槽内で調製された水性混合液が配管を通じて前記ろ過器に供給され、前記ろ過器内で加圧下でろ過される、混合液製造装置。
前記ろ過器の外側にジャケットが設けられており、前記ジャケットに熱媒及び/又は冷媒が供給されて前記ろ過器の温度が調整される、請求項1に記載の混合液製造装置。
前記混合槽の外側にジャケットが設けられており、前記ジャケットは熱媒が供給された場合に前記加熱手段となり、冷媒が供給された場合に前記冷却手段となる、請求項1又は2に記載の混合液製造装置。
前記混合槽がガラス及び/又はフッ素系樹脂からなるか、ガラス及び/又はフッ素系樹脂によって内面をコーティングされている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の混合液製造装置。
前記ろ過器に、ろ液を貯蔵するためのコンテナが接続されており、前記コンテナに前記ろ液の濃度測定手段と、前記ろ液の濃度調整手段と、が設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の混合液製造装置。
前記ジカルボン酸、Nb化合物及び水を、耐腐食性を有する混合槽内で加熱及び攪拌して水性混合液を得る工程において、前記水性混合液中にニオブ及びジカルボン酸を溶解させる、請求項7又は8に記載の混合液の調製方法。
前記ろ過工程の後、得られたろ液の濃度を測定し、ジカルボン酸/Nbのモル比が所定の範囲から外れていた場合に、ジカルボン酸及び/又は水を前記ろ液に添加する工程を更に含む、請求項7〜10のいずれか1項に記載の混合液の調製方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。装置や部材の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0010】
本実施形態の混合液製造装置は、
ジカルボン酸とNb化合物を含む水性混合液を調製するための混合槽と、前記混合槽に配管を介して接続された前記水性混合液のろ過器と、を有する混合液製造装置であって、
前記混合槽は耐腐食性を有し、かつ前記水性混合液の攪拌手段、加熱手段及び冷却手段が設けられており、前記混合槽内で調製された水性混合液が配管を通じて前記ろ過器に供給され、前記ろ過器内で加圧下でろ過される、混合液製造装置である。
【0011】
図1は、本実施形態における混合液製造装置の概略図の一例を示す。
本実施態様の混合液製造装置は耐腐食性の混合槽を有する。
図1に示された混合槽1には、投入口2、攪拌翼3、混合槽蓋4、及びジャケット5が設けられている。混合槽はジカルボン酸とNb化合物を含む水性混合液に接触するが、耐腐食性を有することにより侵食され難く安定して使用できる。本実施形態において「耐腐食性」とは、シュウ酸濃度70mol/(kg−液)条件の酸性液体中、40℃で保持したときの腐食速度が0.2mm/年以下であることと定義される。
【0012】
耐腐食性を有する材料の例としては、フッ素系樹脂、ガラス、シリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上が挙げられ、耐腐食性材料からなる混合槽の例としては、フッ素系樹脂製容器や、ガラス製容器が挙げられる。ここで、混合槽は、水性混合液に接触する内面が耐腐食性を有していればよいので、混合槽は耐腐食性を有さない材料と耐腐食性を有する材料を複合化したものでもよく、その具体例としては、金属製の混合槽の内部に、フッ素系樹脂及び/又はガラスからなる容器をはめ込んだものが挙げられる。特に、混合槽の内面にガラスライニング処理(金属製品にガラスをコーティングする処理)等のコーティングを施したものは、複雑な形状を採れること、かつ大容量の容器でも容易に製造することが可能であることから好ましい。
【0013】
本実施態様の混合液製造装置は、混合槽と、混合槽に配管を介して接続された水性混合液のろ過器とを有し、混合槽には、水性混合液の攪拌手段、加熱手段及び冷却手段が設けられている。
図1に示された混合槽1は、配管6を介して、ろ過器蓋8を嵌められたろ過器7に接続されており、ろ過器7の内部には下端の出口を覆うようにろ紙9が設置される。ろ過器7はジャケット10を有しており、混合液がろ紙を通過する間、ろ過器7を加温、冷却又は保温できるようになっている。ジャケット10は加熱手段と冷却手段を兼ねた設備であり、熱媒が供給された場合に加熱手段となり冷媒が供給された場合に冷却手段となる。
図1に示す加熱手段及び/又は冷却手段は、混合槽の外側に設けられるジャケットであるが、加熱手段及び/又は冷却手段は混合槽の外側及び/又は内側に設けられるコイルでもよい。そのようなコイルは、水性混合液の攪拌を阻害したり、混合液が付着したりすることがないので、混合槽の外側に設けられることが好ましい。なお、混合槽の内側にコイルを設ける場合、コイルは耐腐食性材料からなるか、又はコイルの外面が耐腐食性材料でコーティングされていることが好ましい。熱媒としては、特に限定されず、スチーム、温水等を用いることができ、また冷媒についても特に限定されず、水、アルコール等を用いることができる。
【0014】
混合槽内には水性混合液の攪拌手段が設けられる。攪拌の方式や、攪拌手段の形状は特に限定されないが、後述する好ましい攪拌力を発揮するものが好ましい。攪拌手段の例としては、多段翼、アンカー翼、らせん軸翼、らせん帯翼の他、プロペラ、ディスクタービン、ファンタービン、湾曲羽根ファンタービン、矢羽根タービン、角度付羽根タービン等の低粘度液用攪拌翼が挙げられる。混合槽には超音波振動装置が設けられてもよい。攪拌と併せて超音波のよる振動を与えることは、Nb化合物の溶解に寄与することが期待される。ただし、混合槽がガラス製の場合やガラスライニング処理したものである場合は、振動が槽に影響して、亀裂が生じる場合があるので、超音波振動装置を使用する場合は混合槽を樹脂製にしておくのが好ましい。
【0015】
攪拌手段は水性混合液に直接接触するので、耐腐食性を有していることが好ましい。耐腐食性を有する攪拌手段の例としては、フッ素系樹脂からなる攪拌翼や、フッ素系樹脂等でコーティングされた攪拌翼、ガラスライニング処理した攪拌翼が挙げられるが、中でもガラスライニングされた攪拌翼を用いることが望ましい。
【0016】
異物の混入を防いだり、水性混合液の温度を保つことを目的として、混合槽には蓋をするのが好ましい。蓋は混合槽と同じ素材を用いてもよいが、蓋が水性混合液に浸らない場合には、金属の中でも比較的耐腐食性が高いSUS316、SUS316L、ハステロイC等を用いてもかまわないが、その場合、ガラスライニングしたものを用いることが好ましい。蓋は本体の混合槽と隙間無く接することが好ましい。混合槽の内部に固体を投入する際には、毎回蓋を開けた後に投入しても、配管からニューマー搬送により投入してもよいが、本体の蓋を開けたり閉めたりすると、蓋と混合槽の間に粉体などが堆積し、また、内部の水性混合液を加温した際に混合槽内の蒸気が外部に漏れ出すおそれがあるので、蓋には粉体を投入するための専用の投入口を設けることが好ましい。
【0017】
蓋には加熱手段及び/又は冷却手段としてのジャケットが設けられていてもよい。混合槽が蓋を有する場合、混合槽内は密閉系であり、後述のとおり水性混合液を加熱したり冷却したりする際に内圧が加圧及び減圧になることがあるため、混合槽がガラス製である場合、若しくはガラスライニング処理されている場合には、混合槽が破損する可能性がある。これを防止して、系内の圧を維持できるように、混合槽は、混合槽内に気体を導入して圧力を調整できる圧力調整手段を有していることが好ましい。圧力調整手段としては、例えば、本体に圧力調整弁を備え、系内に圧縮気体、例えば、空気、窒素、酸素を送付できるような配管を備えることによって本体内の圧力を一定に保つことができる。
【0018】
混合槽には、配管を介してろ過器が接続される。ろ過器による水性混合液のろ過は、生産性の観点から、加圧下とする。自然ろ過の場合には、ろ液の生産性が低下するほか、溶液の回収率が低下し、減圧濾過とした場合には、ろ液の一部が気化すると共にろ液の液温が低下し、ろ液中に固体が析出してくる可能性がある。また、ろ液の気化に伴い、ろ過時間が長くなるに従って溶液の濃度が変化する可能性がある。加圧下とは、常圧よりも高い圧力になるように圧力を印加した状態を示し、加える圧力の程度は特に限定されないが、好ましくは10K/G以下、より好ましくは5K/G以下、更に好ましくは1K/G以下である。圧力が10K/Gを超える場合でも、ろ過自体は問題なく行うことができるが、ろ物が圧密されてろ過に時間がかかるため、生産性が低下する可能性がある。
【0019】
ろ材は特に限定されず、ろ紙の他、メンブレンフィルターを用いてもよい。ろ過器の形状としては、これらのろ材を適用可能なものを適宜選択すればよい。ろ過器のサイズは、製造する混合液の量等に応じて適宜選択すればよいが、生産性と設備費の観点から、ろ過器の径(mm)/水性混合液量(kg)の比率は0.5〜3であることが好ましい。ろ過器の径(mm)と混合液量(kg)は、例えば、500〜4000mm、0.2〜8tである。
【0020】
ろ過器を通過する水性混合液の濃度や温度によっては、ろ過器が高い耐腐食性を要する場合もあるが、ろ液の温度が10〜20℃程度の場合には、比較的耐腐食性のある金属からなるものでよい。比較的耐腐食性のある金属としては、上述したSUS316、SUS316L、ハステロイC等が挙げられる。また、ろ過器には温度調整手段が設けられていてもよい。ろ過器に設けられる温度調整手段により、ろ過処理される水性混合液の温度を加温、冷却又は保温できるようになる。温度調整手段の具体例としては、ろ過器の外側に設けられたジャケットや、容器内部に設けられた温調コイルなどが挙げられる。ろ過器の外側にジャケットが設けられている場合は、ジャケットに熱媒及び/又は冷媒が供給されてろ過器の温度が調整される。また、ろ過時の温度と同じ温度で制御された部屋に混合液製造装置を設置してもよい。
【0021】
ろ過器は配管を介して混合槽に接続されるが、配管も混合槽と同様に、耐腐食性材料からなるのが好ましい。好ましい配管材料や態様については、混合槽の場合と同じである。ただし、配管を通過する水性混合液の温度が比較的低い場合には、配管はSUS316、SUS316L、ハステロイC等の比較的耐腐食性のある金属からなるものであってもよい。
【0022】
水性混合液中に生じた及び/又は残存したNb化合物やジカルボン酸等の固体が配管を閉塞するおそれがあるため、混合槽とろ過器をつなぐ配管は複数設けられていることが好ましい。配管は、水性混合液及から析出した固体が閉塞を起こさない程度の十分な径を有することが好ましい。具体的には、径が1インチ以上であることが好ましい。配管は、混合槽の底又は下部に接続するのが好ましい。混合槽からろ過器に水性混合液を供給する際の手段としては、圧力、ポンプなどを用いて供給することが可能であるが、ポンプ部品の腐食の影響を考慮すると、圧力を用いて供給することが好ましい。
【0023】
配管は、通過する水性混合液の温度を保持する手段を有するのが好ましい。水性混合液が配管を通過するうちに混合液の温度が上昇及び/又は低下するのを防止することで、ジカルボン酸による配管の腐食や、水性混合液から固体が析出し、配管内に蓄積するのを防止することができる。配管内の混合液が混合槽中の混合液と同じ温度になるように、トレース配管や二重配管としてもよいし、配管に保温材を巻いてもよい。トレース配管とは、混合液を通る配管に沿って通す冷却又は加温された液体が通る配管を指し、通常は両者が接するように配置される。トレース配管の配置は特に制限されないが、一般的には、トレース配管を、混合液が通る配管に一定間隔に巻きつける。
【0024】
また、ろ過器には、ろ液を貯蔵するためのコンテナが接続されており、前記コンテナに前記ろ液の濃度測定手段と、前記ろ液の濃度調整手段と、が設けられていてもよい。
図1に示すろ過器7には、配管11を介してコンテナ12が接続されている。コンテナ12は液体などを収容する容器であればよく、形や、サイズに制限はない。
ろ過器を通過して得られるろ液は、ろ過器の下流に接続された器(X)(
図1に示すろ過器7のろ紙9の下部)を経て貯蔵コンテナ(Y)に収容されるが、保存期間の自由度の観点から、貯蔵コンテナ(Y)は耐腐食性を有するのが好ましい。貯蔵コンテナ(Y)は、生産効率の観点から複数あることが好ましい。混合液の濃度を調整する場合、貯蔵コンテナ(Y)が配管を介して腐食性材料製のポット(Z)に連結されているのが好ましい。
図1に示されたコンテナ12は、配管13を介してポット15に連結されており、配管13には送液用のポンプ14が設けられている。また、ポット15にはポット投入口16が設けられている。貯蔵コンテナ(Y)内のろ液のジカルボン酸濃度、ニオブ濃度を濃度測定手段により測定し、濃度が不足している場合、足りない成分を必要量だけポット(Z)に収容する。そこにろ液を導入し、ろ液とジカルボン酸が接触した状態で静置し、ジカルボン酸及び/又はニオブを溶解させた後、上澄み液を貯蔵コンテナ(Y)に戻すことで所望のジカルボン酸濃度及び/又はニオブ濃度を有する混合液を得ることができる。ここで、コンテナ(Y)に接続されたポット(Z)は、濃度調整手段として機能する。
【0025】
ジカルボン、ニオブの濃度の要求は厳密でなくともよく、ジカルボン酸/ニオブ比を重視する場合、ポット(Z)には、溶解性の観点から、ジカルボン酸を収容しておくことが好ましい。このため、所定のジカルボン酸/ニオブ比にするためには、混合槽内とろ過器内の冷却温度を所定のジカルボン酸/ニオブ比が得られる冷却温度よりも少し低めに設定し、ジカルボン酸量を下げた後、不足分をポットに入れてろ液と混合することでジカルボン酸/ニオブ比を一定にすることが可能となる。
【0026】
本実施形態における混合液の調製方法は、
ジカルボン酸、Nb化合物及び水を、耐腐食性を有する混合槽内で加熱及び攪拌して水性混合液を得る工程と、
前記水性混合液を冷却及び攪拌する工程と、
前記水性混合液をろ過器に供給して、加圧下でろ過する工程と、
を含む調製方法である。
【0027】
本実施形態の混合液の調製方法においては、まず、ジカルボン酸、Nb化合物及び水を、耐腐食性を有する混合槽内で加熱及び攪拌して水性混合液を得る。
Nb化合物としては、ニオブを含む化合物であれば特に限定されないが、いずれも難溶性であるのでジカルボン酸を共存させて溶解させる。Nb化合物の具体例としては、シュウ酸水素ニオブ、シュウ酸ニオブアンモニウム、NbCl
3、NbCl
5、Nb
2(C
2O
4)
5、Nb
2O
5、ニオブ酸、Nb(OC
2H
5)
5、ニオブのハロゲン化物、ニオブのハロゲン化アンモニウム塩が挙げられるが、中でも、水性混合液を他の金属と混合する場合に、他の金属への影響が小さい観点から、ニオブ酸及びシュウ酸水素ニオブが好適である。なお、ニオブ酸は水酸化ニオブ及び酸化ニオブを含む。Nb化合物は、長期保存や脱水の進行によって変質する場合があるため、水性混合液の調製には化合物製造直後の新鮮なものを用いるのが好ましいが、多少変質した化合物を用いてもよい。
【0028】
Nb化合物は、混合液調製前は固体でもよいし、懸濁液でもよい。ニオブ酸を使用する場合は、溶解し易さの観点から、粒径が小さいほうが好ましい。ニオブ酸は使用前にアンモニア水及び/又は水によって洗浄することができる。
【0029】
ジカルボン酸の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸が挙げられるが、触媒製造時の焼成段階における金属酸化物の過還元を抑制する観点から、シュウ酸無水物及びシュウ酸二水和物が好適である。ジカルボン酸は、一種のみを加えてもよいし、複数のジカルボン酸を組み合わせてもよい。
【0030】
水性混合液調製時におけるニオブの濃度は0.1〜1(mol−Nb/kg−液)であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.9(mol−Nb/kg−液)であり、さらに好ましくは、0.1〜0.8(mol−Nb/kg−液)である。ニオブ濃度が0.1(mol−Nb/kg−液)未満である場合には、この溶液を用いて触媒調製する時に必要量のニオブを投入する際に、大量のニオブ液が必要となるので、結果として触媒原料調合液中の固形分濃度が低下し、触媒の成形性が悪化する傾向にある。一方、ニオブ濃度が1(mol−Nb/kg−液)を超える場合には、難溶性のNb化合物が溶け残るため、ろ過が困難となると共に均一な混合液を調製することが困難となる傾向にある。
【0031】
水性混合液調製時におけるジカルボン酸の濃度は0.2〜5(mol−Nb/kg−液)であることが好ましく、より好ましくは0.2〜4.5(mol−Nb/kg−液)であり、さらに好ましくは0.2〜4(mol−Nb/kg−液)である。ジカルボン酸濃度が0.2(mol−Nb/kg−液)未満である場合には、難溶性のNb化合物が溶け残るため、ろ過が困難となると共に均一な混合液を調製することが困難となる傾向にある。一方、ジカルボン酸濃度が5(mol−Nb/kg−液)を超える場合には、後述する冷却工程におけるジカルボン酸の結晶が多くなり過ぎて、ろ過が困難となる傾向にあり、また、配管の閉塞が起こりやすくなる傾向にある。水性混合液調製時のジカルボン酸/ニオブの比率は、3〜6であることが好ましい。ジカルボン酸/ニオブのモル比が6を超える場合は、Nb化合物の溶解性が増し、冷却後のニオブ成分の析出が少なくニオブの回収率が高まる傾向にあるが、同時に、ジカルボン酸の析出量が増し、ジカルボン酸の回収率が低くなる傾向にある。逆に、ジカルボン酸/ニオブのモル比が3未満の場合は、溶解しないNb化合物が増え、ニオブの回収率が低くなる傾向にある。
【0032】
ジカルボン酸としてシュウ酸を用いて、シュウ酸/ニオブ比を1<シュウ酸/ニオブ<4とし、ニオブ濃度を0.3〜1.0mol/Lとし、ジャケットを具備するろ過器を有する装置を使用した、ジカルボン酸/Nb混合液の調製法の一例について以下に説明する。
難溶性のニオブを0.3mol/L以上の濃度で調整するには、シュウ酸/ニオブ比を1より大きく設定すると共に、飽和濃度を勘案して調製時及び/又はろ過時の温度を設定するのが好ましい。混合液の濃度にもよるが、ニオブ濃度を0.3〜1.0mol/Lとする場合には、加温によって所望の濃度以上にシュウ酸及び/又は二オブを一部若しくは全て溶解させ、その後に適当な飽和濃度の温度まで低下させて一部のシュウ酸及び/又は二オブを析出することで濃度を調整するのが好ましい。
以下、10℃でニオブ濃度が0.3〜1.0mol/Lになるように混合液を調製する方法の一例を説明する。
まず、混合槽内に水を入れる。水の温度に特に制限はないが10℃〜70℃であることが好ましい。水の温度が10℃未満の場合には、原料のシュウ酸及びニオブ酸の溶解が進みにくく、70℃以上を超える場合には、投入口の周囲が水蒸気で濡れるため、正確なニオブ量を添加できなくなる可能性がある。ニオブ酸やシュウ酸を添加するときの用いるときの温度は特に限定されず、上記と同様の理由で70℃以下で添加することが好ましい。この時の投入順序は、どちらからでもかまわない。しかし、溶け残りを防ぐ観点から、水を投入した後に、ニオブ酸及びシュウ酸を添加することが好ましい。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.0、仕込みのニオブ濃度は0.520(mol−Nb/kg−液)である。懸濁する場合は、少量のアンモニア水を添加することもできる。
この液を80〜95℃まで昇温するが、所定の温度に達するまでの時間が長くなり、シュウ酸の分解が進むのを防ぐ観点から、昇温スピードは1℃/hrとするのが好ましく、温度が95℃を超えて、シュウ酸が分解するのを防ぐ観点から、30℃/hr以下とするのが好ましい。
80〜95℃で加熱及び攪拌することによって、シュウ酸及びNb化合物の溶解した水性混合液を得る。未溶解ニオブを低減し、かつシュウ酸の分解によって、シュウ酸との錯形成によって溶解していたニオブが再析出するのを防ぐ観点から、加熱保持時間は30分〜4時間が好ましい。その後、水性混合液を40℃以下まで冷却するが、その際の降温速度は0.002℃/min〜3℃/minが好ましい。降温速度が0.002℃/min未満の場合には、シュウ酸の分解によって、シュウ酸との錯形成によって溶解していたニオブが再析出する可能性がある。一方、降温速度が3℃/minを超える場合には、急冷却に伴い溶解しているニオブ錯体の析出が生じるおそれがあり、均質な液が得られないと共に、液中のニオブ濃度が低下するなどして、生産性の低下を招くおそれがある。10℃の水性混合液が所望の濃度になるように設定する場合、水性混合液の温度を30℃以下にすることで一部の成分を析出させて濃度を調整するのが好ましい。その場合、40℃以下まで冷却した後は、一度30℃で数時間保持することで余分なシュウ酸の析出を待ってもかまわないし、そのまま1〜15℃程度まで低下させて温度を保持してもかまわない。1℃未満になると混合液中の水分が凍結するおそれがあり、水性混合液濃度のばらつきの要因となるおそれがある。30℃を超える場合は、溶解するシュウ酸量が多すぎて、水性混合液中のシュウ酸濃度が高すぎ、所望の濃度に調整することが困難となる。シュウ酸の再結晶化を待ってからろ過を始めるために、液温を下げた状態で、30分以上保持するのが好ましい。一方で、3日間以上静置した場合には、混合槽内、及びろ過器への配管の入り口に結晶が固まることで、配管の閉塞などが起こる可能性もある。この水性混合液の調製工程において、液温を何度で保持するかによって、シュウ酸とニオブの比率を所定の範囲に調整することが可能となる。
【0033】
本実施形態における混合液の調製方法は、前記水性混合液をろ過器に供給して、加圧下でろ過する工程を含む。
ろ過を効率的に行い混合液の生産性を向上させる観点から、加圧下でろ過を行う。その場合の圧力は、生産性効率とろ紙の耐圧性の観点から、0.1K/G〜10K/Gとするのが好ましい。
【0034】
使用するろ紙は、5種A以上に目の細かいものであれば適宜使用可能であるが、例えば、安曇濾紙株式会社製A No3250を用いることができる。こうして得られた均一なジカルボン酸とニオブを含むろ液は、ろ液を受ける容器(X)の下部から抜き出される。抜き出された液体は、液体と同じ温度に調節された貯蔵コンテナ(Y)に保管され、触媒原料として使用される。また、混合液を抜き出しながら、その混合液の一部を分取可能な設備を設けることが好ましい。さらに、ジカルボン酸とニオブの比率が所望の範囲内ではなかった場合に備えて、容器(X)若しくは貯蔵コンテナ(Y)と配管で連結された、ジカルボン酸及び/又は水を投入できるポット(Z)を有していることが好ましい。ジカルボン酸/ニオブ比を調整するためには、ポット(Z)にジカルボン酸及び/又は水を適当量入れて混合液をポット(Z)とコンテナ(Y)を循環させながらジカルボン酸及び/又は水を混合液に溶解させ、ジカルボン酸とニオブの比率をコントロールする。ここで、ろ液(混合液)のジカルボン酸/Nbのモル比(=X)を1<X<4に調整することが好ましい。Xが1以下であると、原料のニオブ酸が析出する可能性があり、4以上であると、得られた混合液を用いて触媒を調製する際、特に焼成工程において触媒が過還元されることにより、触媒性能が悪化するおそれがある。
【0035】
ろ過工程においては、水性混合液を0.1〜5K/Gの圧力で加圧しながらろ過によってろ別し、均一な溶液を得るのが好ましい。さらに好ましくは、ろ過している間は、ろ液の温度を10〜15℃で保持するために、ろ過器の外側に設けられたジャケットに冷却水を通水する。この時に、ろ液として、均一、かつ透明な混合液を得る。ジカルボン酸がシュウ酸である場合、この混合液のシュウ酸/ニオブのモル比は、下記のとおりに分析を行うことができる。
【0036】
るつぼに、混合液を50〜100℃で一夜乾燥後、300〜800℃で1〜10時間熱処理することで、固体のNb
2O
5の量が得られる。この結果から、ニオブ濃度が算出される。
【0037】
一方、シュウ酸濃度は下記の方法に従って算出される。
300mLのガラスビーカーに混合液3gを精秤し、約80℃の熱水200mLを加え、続いて1:1硫酸10mLを加える。得られた混合液をホットスターラー上で液温70℃に保ちながら、攪拌下、1/4規定KMnO
4を用いて滴定する。KMnO
4によるかすかな淡桃色が約30秒以上続く点を終点とする。シュウ酸の濃度は、滴定量から次式に従って求めることができる。
2KMnO
4+3H
2SO
4+5H
2C
2O
4→K
2SO
4+2MnSO
4+10CO
2+8H
2O
得られたNb混合液は、例えば酸化物触媒の製造においてニオブ原料液として用いることができる。
【0038】
本実施形態における触媒の調製方法は、上述の方法により混合液を調製し、前記混合液を用いて、Mo、V、Sb及びNbを含有する触媒を調製する方法である。
上述の方法により調製されたNb混合液を、ニオブを含む酸化物触媒の調製に使用する例を以下に示す。
Nb原料以外の原料としては、特に限定されず、例えば、下記の化合物を用いることができる。Moの原料としては、例えば、酸化モリブデン、ジモリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸が挙げられ、中でも、ヘプタモリブデン酸アンモニウムを好適に用いることができる。Vの原料としては、例えば、五酸化バナジウム、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸バナジルが挙げられ、中でも、メタバナジン酸アンモニウムを好適に用いることができる。Sbの原料としては、アンチモン酸化物を好適に用いることができる。
【0039】
(原料調合工程)
以下に、Mo、V、Nb、Sbを含む原料調合液を調製する例により具体的に説明する。
まず、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、三酸化二アンチモン粉末を水に添加し、80℃以上に加熱して混合液(B)を調製する。このとき、例えば触媒がCeを含む場合は、硝酸セリウムを同時に添加することができる。
次に、目的とする組成に合わせて、先に調製したNb混合液(A)と混合液(B)を混合して、原料調合液を得る。例えば触媒がWやCeを含む場合は、Wを含む化合物を好適に混合して原料調合液を得る。Wを含む化合物としては、例えば、メタタングステン酸アンモニウムが好適に用いられる。Ceを含む化合物としては、例えば、硝酸セリウム・6水和物が好適に用いられる。WやCeを含む化合物は、混合液(B)の中に添加することもできるし、混合液(A)と混合液(B)を混合する際に同時に添加することもできる。酸化物触媒がシリカ担体に担持されている場合は、シリカゾルを含むように原料調合液は調製され、この場合、シリカゾルは適宜添加することができる。
【0040】
また、アンチモンを用いる場合は、混合液(B)又は調合途中の混合液(B)の成分を含む液に、過酸化水素を添加することが好ましい。このとき、H
2O
2/Sb(モル比)は、好ましくは0.01〜5であり、より好ましくは0.05〜4である。またこのとき、30℃〜70℃で、30分〜2時間撹拌を続けることが好ましい。このようにして得られる触媒原料調合液は均一な混合液の場合もあるが、通常はスラリーである。
【0041】
(乾燥工程)
乾燥工程においては、上述の工程で得られた原料調合液を乾燥して、乾燥粉体を得る。乾燥は公知の方法で行うことができ、例えば、噴霧乾燥又は蒸発乾固によって行うことができるが、噴霧乾燥により微小球状の乾燥粉体を得ることが好ましい。噴霧乾燥法における噴霧化は、遠心方式、二流体ノズル方式、又は高圧ノズル方式によって行うことができる。乾燥熱源は、スチーム、電気ヒーターなどによって加熱された空気を用いることができる。噴霧乾燥装置の乾燥機入口温度は150〜300℃が好ましく、乾燥機出口温度は100〜160℃が好ましい。
【0042】
(焼成工程)
焼成工程においては、乾燥工程で得られた乾燥粉体を焼成し、複合酸化物触媒を得る。焼成装置としては、回転炉(ロータリーキルン)を使用することができる。焼成器の形状は特に限定されないが、管状であると、連続的な焼成を実施することができるため好ましい。焼成管の形状は特に限定されないが、円筒であるのが好ましい。加熱方式は外熱式が好ましく、電気炉を好適に使用できる。焼成管の大きさ、材質等は焼成条件や製造量に応じて適当なものを選択することができるが、その内径は、好ましくは70〜2000mm、より好ましくは100〜1200mmであり、その長さは、好ましくは200〜10000mm、より好ましくは800〜8000mmである。焼成器に衝撃を与える場合、焼成器の肉厚は衝撃により破損しない程度の十分な厚みを持つという観点から、好ましくは2mm以上、より好ましくは4mm以上であり、また衝撃が焼成器内部まで十分に伝わるという観点から、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下である。焼成器の材質としては、耐熱性があり衝撃により破損しない強度を持つものであること以外は特に限定されず、SUSを好適に使用できる。
【0043】
焼成管の中には、粉体が通過するための穴を中心部に有する堰板を、粉体の流れと垂直に設けて焼成管を2つ以上の区域に仕切ることもできる。堰板を設置する事により焼成管内滞留時間を確保しやすくなる。堰板の数は1つでも複数でもよい。堰板の材質は金属が好ましく、焼成管と同じ材質のものを好適に使用できる。堰板の高さは確保すべき滞留時間に合わせて調整することができる。例えば内径150mm、長さ1150mmのSUS製の焼成管を有する回転炉で250g/hrで粉体を供給する場合、堰板は好ましくは5〜50mm、より好ましくは10〜40mm、更に好ましくは13〜35mmである。堰板の厚みは特に限定されず、焼成管の大きさに合わせて調整することが好ましい。例えば内径150mm、長さ1150mmのSUS製の焼成管を有する回転炉の場合、焼成管の厚みは、好ましくは0.3mm以上30mm以下、より好ましくは0.5mm以上15mm以下である。
【0044】
乾燥粉体の割れ、ひび等を防ぐと共に、均一に焼成するために、焼成管を回転させるのが好ましい。焼成管の回転速度は、好ましくは0.1〜30rpm、より好ましくは0.5〜20rpm、更に好ましくは1〜10rpmである。
【0045】
乾燥粉体の焼成には、乾燥粉体の加熱温度を、400℃より低い温度から昇温を始めて、550〜800℃の範囲内にある温度まで連続的に又は断続的に昇温するのが好ましい。
【0046】
焼成雰囲気は、空気雰囲気下でも空気流通下でもよいが、焼成の少なくとも一部を、窒素等の実質的に酸素を含まない不活性ガスを流通させながら実施することが好ましい。不活性ガスの供給量は乾燥粉体1kg当たり、50Nリットル以上であり、好ましくは50〜5000Nリットル、更に好ましくは50〜3000Nリットルである(Nリットルは、標準温度・圧力条件、即ち0℃、1気圧で測定したリットルを意味する)。このとき、不活性ガスと乾燥粉体は向流でも並流でも問題ないが、乾燥粉体から発生するガス成分や、乾燥粉体とともに微量混入する空気を考慮すると、向流接触が好ましい。
【0047】
焼成工程は、1段でも実施可能であるが、焼成が前段焼成と本焼成からなり、前段焼成を250〜400℃の温度範囲で行い、本焼成を550〜800℃の温度範囲で行うことが好ましい。前段焼成と本焼成を連続して実施してもよいし、前段焼成を一旦完了してからあらためて本焼成を実施してもよい。また、前段焼成及び本焼成のそれぞれが数段に分かれていてもよい。
【0048】
前段焼成は、好ましくは不活性ガス流通下、加熱温度250℃〜400℃、好ましくは300℃〜400℃の範囲で行う。250℃〜400℃の温度範囲内の一定温度で保持することが好ましいが、250℃〜400℃範囲内で温度が変動する、若しくは緩やかに昇温、降温しても構わない。加熱温度の保持時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは3〜12時間である。
【0049】
前段焼成温度に達するまでの昇温パターンは直線的に上げてもよいし、上又は下に凸なる弧を描いて昇温してもよい。
【0050】
前段焼成温度に達するまでの昇温時の平均昇温速度には特に限定はないが、一般に0.1〜15℃/min程度であり、好ましくは0.5〜5℃/min、更に好ましくは1〜2℃/minである。
【0051】
本焼成は、好ましくは不活性ガス流通下、550〜800℃、好ましくは580〜750℃、より好ましくは600〜720℃、更に好ましくは620〜700℃で実施する。620〜700℃の温度範囲内の一定温度で保持することが好ましいが、620〜700℃の範囲内で温度が変動する、若しくは緩やかに昇温、降温しても構わない。本焼成の時間は0.5〜20時間、好ましくは1〜15時間である。焼成管を堰板で区切る場合、乾燥粉体及び/又は複合酸化物触媒は少なくとも2つ、好ましくは2〜20、より好ましくは4〜15の区域を連続して通過する。温度の制御は1つ以上の制御器を用いて行うことができるが、前記所望の焼成パターンを得るために、これら堰で区切られた区域ごとにヒーターと制御器を設置し、制御することが好ましい。例えば、堰板を焼成管の加熱炉内に入る部分の長さを8等分するように7枚設置し、8つの区域に仕切った焼成管を用いる場合、乾燥粉体及び/又は複合酸化物触媒の温度が前記所望の焼成温度パターンとなるよう8つの区域を各々の区域について設置したヒーターと制御器により設定温度を制御することが好ましい。なお、不活性ガス流通下の焼成雰囲気には、所望により、酸化性成分(例えば酸素)又は還元性成分(例えばアンモニア)を添加してもかまわない。
【0052】
本焼成温度に達するまでの昇温パターンは直線的に上げてもよいし、上又は下に凸なる弧を描いて昇温してもよい。
【0053】
本焼成温度に達するまでの昇温時の平均昇温速度には特に限定はないが、一般に0.1〜15℃/min、好ましくは0.5〜10℃/min、より好ましくは1〜8℃/minである。
【0054】
本焼成終了後の平均降温速度は好ましくは0.05〜100℃/min、より好ましくは0.1〜50℃/minである。また、本焼成温度より低い温度で一旦保持することも好ましい。保持する温度は、本焼成温度より10℃、好ましくは50℃、より好ましくは100℃低い温度である。保持する時間は、0.5時間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは10時間以上である。
【0055】
前段焼成を一旦完了してからあらためて本焼成を実施する場合は、本焼成で低温処理を行うことが好ましい。
【0056】
低温処理に要する時間、すなわち乾燥粉体及び/又は複合酸化物触媒の温度を低下させた後、昇温して焼成温度にするまでに要する時間は、焼成器の大きさ、肉厚、材質、触媒生産量、連続的に乾燥粉体及び/又は複合酸化物触媒を焼成する一連の期間、固着速度・固着量等により適宜調整することが可能である。例えば、内径500mm、長さ4500mm、肉厚20mmのSUS製焼成管を使用する場合においては、連続的に触媒を焼成する一連の期間中に好ましくは30日以内、より好ましくは15日以内、更に好ましくは3日以内、特に好ましくは2日以内である。
【0057】
例えば、内径500mm、長さ4500mm、肉厚20mmのSUS製の焼成管を有する回転炉により6rpmで回転しながら35kg/hrの速度で乾燥粉体を供給し、本焼成温度を645℃に設定する場合、温度を400℃まで低下させた後、昇温して645℃にする工程を1日程度で行うことができる。1年間連続的に焼成する場合、このような低温処理を1ヶ月に1回の頻度で実施することで、安定して酸化物層温度を維持しながら焼成することができる。
【0058】
[酸化物触媒]
上述の工程により得られる酸化物触媒としては、例えば、下記の一般式(1)で示される化合物を挙げることができる。
Mo
1V
aNb
bSb
cY
dO
n (1)
(式中、Yは、Mn、W、B、Ti、Al、Te、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属から選ばれる少なくとも1種以上の元素を示し、a、b、c、d及びnは、それぞれ、V、Nb、Sb、Yのモリブデン(Mo)1原子当たりの原子比を示し、0.1≦a≦1、0.01≦b≦1、0.01≦c≦1、0≦d≦1であり、nは酸素以外の構成元素の原子価によって決定される酸素原子の数を示す。)
【0059】
Mo1原子当たりの原子比a、b、c、dは、それぞれ、0.1≦a≦1、0.01≦b≦1、0.01≦c≦1、0≦d≦1であることが好ましく、0.1≦a≦0.5、0.01≦b≦0.5、0.1≦c≦0.5、0.0001≦d≦0.5であることがより好ましく、0.2≦a≦0.3、0.05≦b≦0.2、0.2≦c≦0.3、0.0002≦d≦0.4であることがさらに好ましい。
【0060】
触媒を流動床で用いる場合には、充分な強度が要求されるので、酸化物触媒は、シリカに担持されていることが好ましい。酸化物触媒は、酸化物触媒(主触媒となる触媒構成元素の酸化物)とシリカの全質量に対し、SiO
2換算で、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜60質量%、さらに好ましくは30〜55質量%のシリカに担持されている。担体であるシリカの量は強度と粉化防止、触媒を使用する際の安定運転の容易さ及びロスした触媒の補充を低減する観点から、酸化物触媒とシリカの全質量に対し10質量%以上であるのが好ましく、十分な触媒活性を達成する観点から、酸化物触媒とシリカの全質量に対し80質量%以下であるのが好ましい。特に触媒を流動床で用いる場合、シリカの量が80質量%以下であると、シリカ担持触媒(酸化物触媒+シリカ担体)の比重が適切で、良好な流動状態をつくり易い。
【0061】
[不飽和ニトリルの製造方法]
本実施形態の不飽和ニトリルの製造方法は、上述の方法により触媒を調製し、得られた触媒にプロパン又はイソブタン、アンモニア及び酸素を接触させて不飽和ニトリルを製造する方法である。
本実施形態の製造方法により得られた酸化物触媒を用いて、プロパン又はイソブタンをアンモニア及び分子状酸素と気相で反応(気相接触アンモ酸化反応)させて、対応する不飽和ニトリル(アクリロニトリル又はメタクリロニトリル)を製造することができる。
【0062】
プロパン又はイソブタン及びアンモニアの供給原料は必ずしも高純度である必要はなく、工業グレードのガスを使用できる。供給酸素源としては、空気、純酸素又は純酸素で富化した空気を用いることができる。さらに、希釈ガスとしてヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気、窒素等を供給してもよい。
【0063】
アンモ酸化反応の場合は、反応系に供給するアンモニアのプロパン又はイソブタンに対するモル比は0.3〜1.5、好ましくは0.8〜1.2である。酸化反応とアンモ酸化反応のいずれについても、反応系に供給する分子状酸素のプロパン又はイソブタンに対するモル比は0.1〜6、好ましくは0.1〜4である。
【0064】
また、酸化反応とアンモ酸化反応のいずれについても、反応圧力は0.5〜5atm、好ましくは1〜3atmであり、反応温度は350℃〜500℃、好ましくは380℃〜470℃であり、接触時間は0.1〜10(sec・g/cc)、好ましくは0.5〜5(sec・g/cc)である。
【0065】
本実施形態において、接触時間は次式で定義される。
接触時間(sec・g/cc)=(W/F)×273/(273+T)×P
ここで、
W=触媒の質量(g)、
F=標準状態(0℃、1atm)での原料混合ガス流量(Ncc/sec)、
T=反応温度(℃)、
P=反応圧力(atm)である。
プロパン転化率及びアクリロニトリル収率は、それぞれ次の定義に従う。
プロパン転化率(%)=(反応したプロパンのモル数)/(供給したプロパンのモル数)×100
アクリロニトリル収率(%)=(生成したアクリロニトリルのモル数)/(供給したプロパンのモル数)×100
【0066】
反応方式は、固定床、流動床、移動床等の従来の方式を採用できるが、反応熱の除熱が容易で触媒層の温度がほぼ均一に保持できること、触媒を反応器から運転中に抜き出すことが可能である、触媒を追加することができる等の理由から、流動床反応が好ましい。
【0067】
本実施形態において、ニオブの回収率(%)は次式で定義される。
回収率=(ろ液中の水+ろ液中のニオブ酸量)/(仕込みの水+入れたニオブ酸量)×100
【0068】
本実施形態において、生産性(kg/min)は次式で定義される。
生産性=ろ液量(kg)/ろ過にかかった時間(min)
【実施例】
【0069】
以下に本実施形態を、実施例と比較例によってさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
以下の実施例及び比較例においては、
図1に示す混合液製造装置を用いた。
混合槽の材質としてはSUS316を用い、かつ、槽内の表面をガラスライニングさせたものを用いた。また、配管、ろ過器、コンテナ、ポット等の材質はSUS316で作製した。混合槽の加熱手段は、ジャケットにスチームを流すことによって行い、冷却する際には、同じジャケットに温度を一定に保った冷水を通水することによって冷却を行った。混合槽内の攪拌手段としては、攪拌翼を用いた。
【0071】
また、各評価は以下のとおりに行った。
(1)溶液の回収率
溶液の回収率=(コンテナに回収された水とニオブ酸の合計重量)/(仕込みに使用した水とニオブ酸の合計重量)×100
(2)生産性
生産性=(コンテナに回収された溶液の重量)/(ろ過にかかった時間(min))×100
(3)耐腐食性(腐食度)
使用前の混合槽の厚み(mm)に対する使用後の混合槽の錆びを除去した後の混合槽の厚み(mm)を計測し、その結果をもとに、一年間連続使用した場合に、どの程度減肉するかを示した値であり、単位はmm/年である。
【0072】
[実施例1]
水500.0kgを混合槽内に加え、その後、水を50℃まで加熱した。次に、攪拌しながら、シュウ酸二水和物〔H
2C
2O
4・2H
2O〕270.0kgを投入し、続いてNb
2O
5として78.9質量%を含有するニオブ酸72.2kgを投入し、両者を水中で混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.0、仕込みのニオブ濃度は0.509(mol−Nb/kg−液)であった。
この液を95℃で2時間加熱撹拌することによって、均一な水性混合液を得た。この時の混合槽内の圧力は1.2K/Gであった。この水性混合液を攪拌しながら自然放冷することによって40℃まで低下させ、その後、水性混合液の温度を35℃で保持したまま12時間静置した。その後、−7.3℃/hで13℃まで水性混合液を冷却させ、そのまま3時間放置した。水性混合液を冷却することにより、シュウ酸、シュウ酸二水和物、シュウ酸ニオブ錯体等からなる固体が析出した。
この工程までの混合槽内の圧力は、冷却工程時などには圧縮空気を入れることで、常に1.2K/Gを保持した。その後、ろ過器に固体と水性混合液の混合体を配管を通じて移送し、ろ過することにより均一な混合液を得た。ろ過にかかった時間は、60分であった。攪拌は混合槽内の固体と水性混合液が攪拌翼の下端を下回る直前まで(溶液が攪拌できなくなるまで)同じ動力で動かし続けた。この時、ろ過は、0.7K/Gの圧力をかけながら行った。ろ過を開始して10分後、60分後の溶液(ろ液)をそれぞれサンプリングして液温を測定したところ、13℃、15℃であった。それぞれの時間における混合液のシュウ酸/Nbのモル比は下記の分析により2.79、2.94であり、それぞれの時間における混合液のシュウ酸/Nbのモル比の差は、0.157であった。この時のろ液の色は無色透明であった。
るつぼに、それぞれの混合液10gを精秤し、95℃で一夜乾燥後、600℃で1時間熱処理し、固体のNb
2O
5をそれぞれ0.992、0.970g得た。この結果から、ニオブ濃度は0.589、0.576(mol−Nb/kg−液)であった。
300mLのガラスビーカーにそれぞれの混合液3gを精秤し、約80℃の熱水200mLを加え、続いて1:1硫酸10mLを加えた。得られた混合液をホットスターラー上で液温70℃に保ちながら、攪拌下、1/4規定KMnO
4を用いて滴定した。KMnO
4によるかすかな淡桃色が約30秒以上続く点を終点とした。シュウ酸の濃度は、滴定量から次式に従って計算した結果、1.64、1.70(mol−シュウ酸/kg)であった。この時、溶液の回収率は97.7%であり、生産性は11.9kg/minであった。
2KMnO
4+3H
2SO
4+5H
2C
2O
4→K
2SO
4+2MnSO
4+10CO
2+8H
2O
【0073】
[実施例2]
水1330.0kgを混合槽内に加え、その後、水を50℃まで加熱した。次に、攪拌しながら、シュウ酸二水和物〔H
2C
2O
4・2H
2O〕738.0kgを投入し、続いてNb
2O
5として81.0質量%を含有するニオブ酸192.2kgを投入し、両者を水中で混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.0、仕込みのニオブ濃度は0.518(mol−Nb/kg−液)であった。
この液を95℃で2時間加熱撹拌することによって、均一な水性混合液を得た。この時の混合槽内の圧力は1.2K/Gであった。この水性混合液を攪拌しながら自然放冷することによって40℃まで低下させ、その後、水性混合液の温度を35℃で保持したまま12時間静置した。その後、−7.3℃/hで13℃まで水性混合液を冷却させ、そのまま3時間放置した。この工程までの混合液槽内の圧力は、冷却工程時などには圧縮空気を入れることで、常に1.2K/Gに保持した。その後、ろ過器に固体と水性混合液の混合体を配管を通じて移送し、ろ過することにより均一な混合液を得た。ろ過にかかった時間は、130分であった。攪拌は混合槽の固体と水性混合液が攪拌翼の下端を下回る直前まで同じ動力で動かし続けた。この時、ろ過は、0.5K/Gの圧力をかけながら行った。ろ過を開始して10分後、60分後、120分後の溶液をそれぞれサンプリングして液温を測定したところ、13℃、18℃、20℃であった。それぞれの時間における混合液のシュウ酸/Nbのモル比は下記の分析により2.75、2.89、3.14であり、120分後にサンプリングしたろ液と10分後にサンプリングしたろ液とのシュウ酸/Nbのモル比の差は、0.394であった。この時のろ液の色は無色透明であった。
るつぼに、それぞれのニオブ原料液10gを精秤し、95℃で一夜乾燥後、600℃で1時間熱処理し、固体のNb
2O
5をそれぞれ0.963、0.941、0.919g得た。この結果から、ニオブ濃度は0.587、0.573、0.560(mol−Nb/kg−液)であった。
300mLのガラスビーカーにそれぞれの混合液3gを精秤し、約80℃の熱水200mLを加え、続いて1:1硫酸10mLを加えた。得られた混合液をホットスターラー上で液温70℃に保ちながら、攪拌下、1/4規定KMnO
4を用いて滴定した。KMnO
4によるかすかな淡桃色が約30秒以上続く点を終点とした。シュウ酸の濃度は、1.61、1.65、1.76(mol−シュウ酸/kg)であった。この時、溶液の回収率は96.8%であり、生産性は14.6kg/minであった。
【0074】
[実施例3]
水500.0kgを混合槽内に加え、その後、水を50℃まで加熱した。次に、攪拌しながら、シュウ酸二水和物〔H
2C
2O
4・2H
2O〕298.2kgを投入し、続いてNb
2O
5として79.2質量%を含有するニオブ酸72.2kgを投入し、両者を水中で混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.5、仕込みのニオブ濃度は0.494(mol−Nb/kg−液)であった。
この液を95℃で2時間加熱撹拌することによって、均一な水性混合液を得た。この時の混合槽内の圧力は1.2K/Gであった。この水性混合液を攪拌しながら自然放冷することによって40℃まで低下させ、その後、水性混合液の温度を35℃で保持したまま12時間静置した。その後、−7.3℃/hで12℃まで水性混合液を冷却させ、そのまま3時間放置した。この工程までの混合液槽内の圧力は、冷却工程時などには圧縮空気を入れることで、常に1.2K/Gに保持した。その後、ろ過器に固体と水性混合液の混合体を移送し、ろ過することにより均一な混合液を得た。ろ過にかかった時間は、65分であった。攪拌は混合槽の固体と水性混合液が攪拌翼の下端を下回る直前まで同じ動力で動かし続けた。この時、ろ過は、0.6K/Gの圧力をかけながら行った。この時、ろ過器の外側に設けたジャケットに冷水を通し、ろ過器の温度を12℃に保持した。ろ過を開始して10分後、30分後、60分後の溶液をそれぞれサンプリングして液温を測定したところ、溶液の温度は全て12℃であり、それぞれの時間における混合液のシュウ酸/Nbのモル比は下記の分析により2.72、2.70、2.73であり、それぞれの時間におけるシュウ酸/Nbのモル比の差は、0.011であった。この時のろ液の色は無色透明であった。
るつぼに、それぞれのニオブ原料液10gを精秤し、95℃で一夜乾燥後、600℃で1時間熱処理し、固体のNb
2O
5をそれぞれ1.006、1.012、1.014g得た。この結果から、ニオブ濃度は0.599、0.603、0.604(mol−Nb/kg−液)であった。
300mLのガラスビーカーにそれぞれの混合液3gを精秤し、約80℃の熱水200mLを加え、続いて1:1硫酸10mLを加えた。得られた混合液をホットスターラー上で液温70℃に保ちながら、攪拌下、1/4規定KMnO
4を用いて滴定した。KMnO
4によるかすかな淡桃色が約30秒以上続く点を終点とした。シュウ酸の濃度は、1.63、1.63、1.65(mol−シュウ酸/kg)であった。この時、溶液の回収率は97.2%であり、生産性は10.9kg/minであった。
【0075】
[実施例4]
実施例3の500分の1スケールの装置を用いて同様の方法により実施した。
水1.00kgを混合槽内に加え、その後、水を50℃まで加熱した。次に、攪拌しながら、シュウ酸二水和物〔H
2C
2O
4・2H
2O〕0.28kgを投入し、続いてNb
2O
5として78.9質量%を含有するニオブ酸0.14kgを投入し、両者を水中で混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.0、仕込みのニオブ濃度は0.509(mol−Nb/kg−液)であった。
この液を95℃で2時間加熱撹拌することによって、均一な水性混合液を得た。この時の混合槽内の圧力は1.2K/Gであった。この水性混合液を攪拌しながら自然放冷することによって40℃まで低下させ、その後、水性混合液の温度を35℃で保持したまま12時間静置した。その後、−7.3℃/hで12℃まで水性混合液を冷却させ、そのまま3時間放置した。この工程までの混合液槽内の圧力は、冷却工程時などには圧縮空気を入れることで、常に1.2K/Gを保持した。その後、ろ過器に固体と水性混合液の混合体を移送し、加圧濾過(圧力=0.7K/G)によって濾別し、均一な混合液を得た。ろ過にかかった時間は、1分であった。攪拌は混合槽の固体と水性混合液が攪拌翼の下端を下回る直前まで同じ動力で動かし続けた。この時、ろ過器の外側に設けたジャケットに冷水を通し、ろ過器の温度を12℃に保持した。ろ液をサンプリングして液温を測定したところ、ろ液の温度は12℃であった。また、ろ液中のニオブ濃度は0.578(mol−Nb/kg−液)であり、シュウ酸の濃度は、1.59(mol−シュウ酸/kg)であったことから、シュウ酸/Nbのモル比は2.75であった。この時のろ液の色は無色透明であった。さらに、この時、溶液の回収率は97.5%であり、生産性は1.4kg/minであった。
【0076】
[実施例5]
水500.0kgを混合槽内に加え、その後、水を50℃まで加熱した。次に、攪拌しながら、シュウ酸二水和物〔H
2C
2O
4・2H
2O〕107.7kgを投入し、続いてNb
2O
5として78.9質量%を含有するニオブ酸48.0kgを投入し、両者を水中で混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は3、仕込みのニオブ濃度は0.435(mol−Nb/kg−液)であった。
この液を95℃で2時間加熱撹拌することによって、均一な水性混合液を得た。この時の混合槽内の圧力は2.8K/Gであった。この水性混合液を攪拌しながら自然放冷することによって40℃まで低下させ、その後、水性混合液の温度を35℃で保持したまま12時間静置した。その後、−7.3℃/hで8℃まで水性混合液を冷却させ、そのまま3時間放置した。この工程までの混合液槽内の圧力は、冷却工程時などには圧縮空気を入れることで、常に2.8K/Gに保持した。その後、ろ過器に固体と水性混合液の混合体を移送し、ろ過することにより均一な混合液を得た。ろ過にかかった時間は、15分であった。攪拌は混合槽の固体と水性混合液が攪拌翼の下端を下回る直前まで同じ動力で動かし続けた。この時、ろ過は、2.5K/Gの圧力をかけながら行った。この時、ろ過器の外側に設けたジャケットに冷水を通し、ろ過器の温度を8℃に保持した。ろ過を開始して15分後の溶液をそサンプリングして液温を測定したところ、溶液の温度は8℃であり、この時間における混合液のシュウ酸/Nbのモル比は下記の分析により2.01であった。この時のろ液の色は無色透明であった。
るつぼに、それぞれのニオブ原料液10gを精秤し、95℃で一夜乾燥後、600℃で1時間熱処理し、固体のNb
2O
5を0.762g得た。この結果から、ニオブ濃度は0.452(mol−Nb/kg−液)であった。
300mLのガラスビーカーにそれぞれの混合液3gを精秤し、約80℃の熱水200mLを加え、続いて1:1硫酸10mLを加えた。得られた混合液をホットスターラー上で液温70℃に保ちながら、攪拌下、1/4規定KMnO
4を用いて滴定した。KMnO
4によるかすかな淡桃色が約30秒以上続く点を終点とした。シュウ酸の濃度は、0.91(mol−シュウ酸/kg)であった。この時、溶液の回収率は97.6%であり、生産性は40.3kg/minであった。
【0077】
[実施例6]
水500.0kgを混合槽内に加え、その後、水を50℃まで加熱した。次に、攪拌しながら、シュウ酸二水和物〔H
2C
2O
4・2H
2O〕224.4kgを投入し、続いてNb
2O
5として78.9質量%を含有するニオブ酸100.0kgを投入し、両者を水中で混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は3、仕込みのニオブ濃度は0.720(mol−Nb/kg−液)であった。
この液を95℃で2時間加熱撹拌することによって、均一な水性混合液を得た。この時の混合槽内の圧力は2.8K/Gであった。この水性混合液を攪拌しながら自然放冷することによって40℃まで低下させ、その後、水性混合液の温度を35℃で保持したまま12時間静置した。その後、−7.3℃/hで8℃まで水性混合液を冷却させ、そのまま3時間放置した。この工程までの混合液槽内の圧力は、冷却工程時などには圧縮空気を入れることで、常に2.8K/Gに保持した。その後、ろ過器に固体と水性混合液の混合体を移送し、ろ過することにより均一な混合液を得た。ろ過にかかった時間は、30分であった。攪拌は混合槽の固体と水性混合液が攪拌翼の下端を下回る直前まで同じ動力で動かし続けた。この時、ろ過は、2.5K/Gの圧力をかけながら行った。また、ろ過器の外側に設けたジャケットに冷水を通し、ろ過器の温度を8℃に保持した。ろ過を開始して10分後、30分後、60分後の溶液をそれぞれサンプリングして液温を測定したところ、溶液の温度は全て8℃であり、それぞれの時間における混合液のシュウ酸/Nbのモル比は下記の分析により2.07、2.09、2.11であり、それぞれの時間におけるシュウ酸/Nbのモル比の差は、0.037であった。この時のろ液の色は無色透明であった。
るつぼに、それぞれのニオブ原料液10gを精秤し、95℃で一夜乾燥後、600℃で1時間熱処理し、固体のNb
2O
5をそれぞれ1.342、1.332、1.310g得た。この結果から、ニオブ濃度は0.797、0.790、0.778(mol−Nb/kg−液)であった。
300mLのガラスビーカーにそれぞれの混合液3gを精秤し、約80℃の熱水200mLを加え、続いて1:1硫酸10mLを加えた。得られた混合液をホットスターラー上で液温70℃に保ちながら、攪拌下、1/4規定KMnO
4を用いて滴定した。KMnO
4によるかすかな淡桃色が約30秒以上続く点を終点とした。シュウ酸の濃度は、1.65、1.65、1.64(mol−シュウ酸/kg)であった。この時、溶液の回収率は95.8%であり、生産性は12.2kg/minであった。
【0078】
[比較例1]
ガラスライニング処理していない混合槽を用いたこと以外は実施例4と同様の方法により混合液を調製したところ、得られたろ液は黒色であった。また、混合槽表面の腐食度を測定したところ、0.4mm/年であった。
【0079】
[比較例2]
水500.0kgを混合槽内に加え、その後、水を50℃まで加熱した。次に、攪拌しながら、シュウ酸二水和物〔H
2C
2O
4・2H
2O〕270.0kgを投入し、続いてNb
2O
5として78.9質量%を含有するニオブ酸72.2kgを投入し、両者を水中で混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.0、仕込みのニオブ濃度は0.509(mol−Nb/kg−液)であった。
この液を95℃で2時間加熱撹拌することによって、均一な水性混合液を得た。この時の混合槽内の圧力は1.2K/Gであった。この水性混合液を攪拌しながら自然放冷することによって40℃まで低下させ、その後、水性混合液の温度を35℃で保持したまま12時間静置した。その後、−7.3℃/hで12℃まで水性混合液を冷却させ、そのまま3時間放置した。この工程までの混合液槽内の圧力は、冷却工程時などには圧縮空気を入れることで、常に1.2K/Gに保持した。その後、ろ過器に固体と水性混合液の混合体を移送し、吸引濾過(圧力=−0.2K/G)によって濾別し、均一な混合液を得た。ろ過にかかった時間は、260分であった。攪拌は混合槽の固体と水性混合液が攪拌翼の下端を下回る直前まで同じ動力で動かし続けた。この時、ろ過器の温度調節は行わなかった。ろ過を開始して10分後、120分後、240分後の溶液をそれぞれサンプリングして液温を測定したところ、溶液の温度はそれぞれ、12℃、14℃、15℃であり、それぞれの時間におけるニオブ濃度は0.512、0.575、0.605(mol−Nb/kg−液)であった。また、シュウ酸の濃度は、1.41、1.65、1.86(mol−シュウ酸/kg)であり、混合液のシュウ酸/Nbのモル比は2.75、2.87、3.08であった。サンプリング時間における最大のシュウ酸/Nbのモル比濃度差は、0.330であった。この時のろ液の色は無色透明であった。また、溶液の回収率は82.7%であり、生産性は2.45kg/minであった。
【0080】
[比較例3]
水500.0kgを混合槽内に加え、その後、水を50℃まで加熱した。次に、攪拌しながら、シュウ酸二水和物〔H
2C
2O
4・2H
2O〕270.0kgを投入し、続いてNb
2O
5として78.9質量%を含有するニオブ酸72.2kgを投入し、両者を水中で混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.0、仕込みのニオブ濃度は0.509(mol−Nb/kg−液)であった。
この液を95℃で2時間加熱撹拌することによって、均一な水性混合液を得た。この時の混合槽内の圧力は1.2K/Gであった。この水性混合液を攪拌しながら自然放冷することによって40℃まで低下させ、その後、水性混合液の温度を35℃で保持したまま12時間静置した。その後、−7.3℃/hで10℃まで水性混合液を冷却させ、そのまま3時間放置した。この工程までの混合槽内の圧力は、冷却工程時などには圧縮空気を入れることで、常に1.2K/Gに保持した。その後、ろ過器に固体と水性混合液の混合体を移送し、吸引濾過(圧力=−0.7K/G)によって濾別し、均一な混合液を得た。ろ過にかかった時間は、70分であった。攪拌は混合槽の固体と水性混合液が攪拌翼の下端を下回る直前まで同じ動力で動かし続けた。この時、ろ過器の温度調節は行わなかった。ろ過を開始して10分後、60分後の、ろ液をそれぞれサンプリングして液温を測定したところ、溶液の温度はそれぞれ、10℃、11℃であり、それぞれの時間におけるニオブ濃度は0.511、0.547(mol−Nb/kg−液)であった。また、シュウ酸の濃度は、1.26、1.48(mol−シュウ酸/kg)であり、ニオブ原料液のシュウ酸/Nbのモル比は2.46、2.70であった。以上のことから、サンプリング時間における最大のシュウ酸/Nbのモル比濃度差は、0.244であった。この時のろ液の色は無色透明であった。また、溶液の回収率は78.8%であり、生産性は7.99kg/minであった。
【0081】
[比較例4]
水500.0kgを混合槽内に加え、その後、水を50℃まで加熱した。次に、攪拌しながら、シュウ酸二水和物〔H
2C
2O
4・2H
2O〕270.0kgを投入し、続いてNb
2O
5として78.9質量%を含有するニオブ酸72.2kgを投入し、両者を水中で混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.0、仕込みのニオブ濃度は0.509(mol−Nb/kg−液)であった。
この液を95℃で2時間加熱撹拌することによって、均一な水性混合液を得た。この時の混合槽内の圧力は1.2K/Gであった。この水性混合液を自然放冷することによって40℃まで低下させ、その後、水性混合液の温度を35℃で保持したまま12時間静置した。その後、−7.3℃/hで15℃まで水性混合液を冷却させ、そのまま3時間放置した。この工程までの混合槽内の圧力は、冷却工程時などには圧縮空気を入れることで、常に1.2K/Gに保持した。その後、ろ過器に固体と水性混合液の混合体を移送し、自然濾過によって濾別し、均一な混合液を得た。ろ過にかかった時間は、750分であった。攪拌は混合槽の固体と水性混合液が攪拌翼の下端を下回る直前まで同じ動力で動かし続けた。この時、ろ過器の温度調節は行わなかった。ろ過を開始して30分後、360分後、720分後の溶液をそれぞれサンプリングして液温を測定したところ、溶液の温度はそれぞれ、15℃、19℃、24℃であり、それぞれの時間におけるニオブ濃度は0.598、0.581、0.573(mol−Nb/kg−液)であった。また、シュウ酸の濃度は、1.72、1.86、1.98(mol−シュウ酸/kg)であり、ニオブ原料液のシュウ酸/Nbのモル比は2.88、3.20、3.45であった。以上のことから、サンプリング時間における最大のシュウ酸/Nbのモル比濃度差は、0.571であった。この時のろ液の色は無色透明であった。また、溶液の回収率は84.2%であり、生産性は0.86kg/minであった。
【0082】
[比較例5]
水500.0kgを混合槽内に加え、その後、水を50℃まで加熱した。次に、攪拌しながら、シュウ酸二水和物〔H
2C
2O
4・2H
2O〕270.0kgを投入し、続いてNb
2O
5として78.9質量%を含有するニオブ酸72.2kgを投入し、両者を水中で混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.0、仕込みのニオブ濃度は0.509(mol−Nb/kg−液)であった。
この液を95℃で2時間加熱撹拌することによって、均一な水性混合液を得た。この時の混合槽内の圧力は1.2K/Gであった。この水性混合液を自然放冷することによって40℃まで低下させ、その後水性混合液の温度を35℃で保持したまま12時間静置した。その後、−7.3℃/hで10℃まで水性混合液を冷却させ、そのまま3時間放置した。この工程までの混合液槽内の圧力は、冷却工程時などには圧縮空気を入れることで、常に1.2K/Gに保持した。その後、ろ過器に固体と水性混合液の混合体を移送し、自然濾過によって濾別し、均一な混合液を得た。ろ過にかかった時間は、780分であった。攪拌は混合槽の固体と水性混合液が攪拌翼の下端を下回る直前まで同じ動力で動かし続けた。この時、ろ過器の温度をジャケットに冷水を通じることにより15℃に調節して、ろ過を行った。ろ過を開始して10分後、720分後の、ろ液をそれぞれサンプリングして液温を測定したところ、溶液の温度はそれぞれ、15℃、15℃であり、それぞれの時間におけるニオブ濃度は0.640、0.638(mol−Nb/kg−液)であった。また、シュウ酸の濃度は、1.80、1.82(mol−シュウ酸/kg)であり、ニオブ原料液のシュウ酸/Nbのモル比は2.81、2.85であった。以上のことから、サンプリング時間における最大のシュウ酸/Nbのモル比濃度差は、0.039であった。この時のろ液の色は無色透明であった。また、溶液の回収率は85.3%であり、生産性は0.81kg/minであった。
【0083】
[比較例6]
実施例4と同じ装置を用いて混合液を調製した。
水1.00kgを混合槽内に加え、その後水を50℃まで加熱した。次に、攪拌しながら、シュウ酸二水和物〔H
2C
2O
4・2H
2O〕0.28kgを投入し、続いてNb
2O
5として82.0質量%を含有するニオブ酸0.14kgを投入し、両者を水中で混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.0、仕込みのニオブ濃度は0.522(mol−Nb/kg−液)であった。
この液を95℃で2時間加熱撹拌することによって、均一な水性混合液を得た。この時の混合槽内の圧力は1.2K/Gであった。この水性混合液を自然放冷することによって40℃まで低下させ、その後、水性混合液の温度を35℃で保持したまま12時間静置した。その後、−7.3℃/hで16℃まで水性混合液を冷却させ、そのまま3時間放置した。この工程までの混合液槽内の圧力は、冷却工程時などには圧縮空気を入れることで、常に1.2K/Gに保持した。その後、ろ過器に固体と水性混合液の混合体を移送し、吸引濾過(圧力=−0.7K/G)によって濾別し、均一な混合液を得た。ろ過にかかった時間は、25分であった。攪拌は混合槽の固体と水性混合液が攪拌翼の下端を下回る直前まで同じ動力で動かし続けた。この時、ろ過器の温度調節は行わずに、ろ過を行った。ろ過を開始して10分後、20分後の、ろ液をそれぞれサンプリングして液温を測定したところ、溶液の温度はそれぞれ、16℃、18℃であり、それぞれの時間におけるニオブ濃度は0.593、0.602(mol−Nb/kg−液)であった。また、シュウ酸の濃度は、1.63、1.73(mol−シュウ酸/kg)であり、ニオブ原料液のシュウ酸/Nbのモル比は2.75、2.88であった。以上のことから、サンプリング時間における最大のシュウ酸/Nbのモル比濃度差は、0.132であった。この時のろ液の色は無色透明であった。この時、溶液の回収率は93.8%であり、生産性は0.06kg/minであった。
【0084】
[比較例7]
水500.0kgを混合槽内に加え、その後、水を50℃まで加熱した。次に、攪拌しながら、シュウ酸二水和物〔H
2C
2O
4・2H
2O〕270.0kgを投入し、続いてNb
2O
5として78.9質量%を含有するニオブ酸72.2kgを投入し、両者を水中で混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.0、仕込みのニオブ濃度は0.509(mol−Nb/kg−液)であった。
この液を95℃で2時間加熱撹拌することによって、均一な水性混合液を得た。この時の混合槽内の圧力は1.2K/Gであった。この水性混合液を自然放冷することによって40℃まで低下させ、その後、水性混合液の温度を35℃で保持したまま12時間静置した。その後、−7.3℃/hで15℃まで水性混合液を冷却させ、そのまま3時間放置した。この工程までの混合液槽内の圧力は、冷却工程時などには圧縮空気を入れることで、常に1.2K/Gに保持した。その後、ろ過器に固体と水性混合液の混合体を移送し、吸引濾過(圧力=−0.7K/G)によって濾別し、均一な混合液を得た。ろ過にかかった時間は、65分であった。攪拌は混合槽の固体と水性混合液が攪拌翼の下端を下回る直前まで同じ動力で動かし続けた。この時、ろ過器の温度をジャケットに冷水を通じることにより15℃に調節して、ろ過を行った。ろ過を開始して10分後、60分後の、ろ液をそれぞれサンプリングして液温を測定したところ、溶液の温度は共に15℃であり、それぞれの時間におけるニオブ濃度は0.589、0.685(mol−Nb/kg−液)であった。また、シュウ酸の濃度は、1.74、2.05(mol−シュウ酸/kg)であり、ニオブ原料液のシュウ酸/Nbのモル比は2.96、3.00であった。以上のことから、サンプリング時間における最大のシュウ酸/Nbのモル比濃度差は、0.038であった。この時のろ液の色は無色透明であった。また、溶液の回収率は78.6%であり、生産性は9.3kg/minであった。
以下の表1に各実施例及び比較例における結果を示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表中の「Δシュウ酸/Nb比」とは、ろ過時間中に最初にサンプリングした時に測定したシュウ酸/Nb比と最後にサンプリングし時に測定したシュウ酸/Nb比の濃度差のことを示す。ただし、ろ過時間が20分以内のものは測定しない。
【0087】
[実施例6]
実施例1で調製した混合液を用いて複合酸化物触媒を調製した例を以下に示す。
(乾燥粉体の調製)
水100kgにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH
4)6Mo
7O
24・4H
2O〕を30.24kg、メタバナジン酸アンモニウム〔NH
4VO
3〕を4.19kg、三酸化二アンチモン〔Sb
2O
3〕を5.52kg、さらに硝酸セリウム〔Ce(NO
3)
3・6H
2O〕371gを26kgの水に溶解させてから加え、攪拌しながら95℃で1時間加熱して水性混合液A‐1を得た。
実施例1で調製した混合液29.9kgに、H
2O
2として30質量%を含有する過酸化水素水3.42kgを添加した。液温をおよそ20℃に維持し、攪拌混合して、水性液B‐1を得た。
得られた水性混合液A‐1を70℃に冷却した後に、SiO
2として32.0質量%を含有するシリカゾル56.55kgを添加した。次いで、H
2O
2として30質量%を含有する過酸化水素水6.44kgを添加し、50℃で1時間撹拌混合した後、メタタングステン酸アンモニウム水溶液を2.38kg溶解させ、水性液B‐1を添加した。さらに、ヒュームドシリカ14.81kgを214.7kgの水に分散させた液を添加した原料調合液を50℃で2.5時間攪拌熟成し、スラリー状の水性混合液(C
1)を得た。
得られた水性混合液(C
1)を、遠心式噴霧乾燥器に供給して乾燥し、微小球状の乾燥粉体を得た。乾燥器の入口温度は210℃、出口温度は120℃であった。本工程を38回繰り返し、乾燥粉体(D
1)を合計約2600kg調製した。
【0088】
(分級操作)
得られた乾燥粉体(D
1)を目開き25μmの篩を用いて分級し、分級品(E
1)を得た。得られた分級品(E
1)の25μm以下の粒子含有率は0.8重量%であり、平均粒子径は55μmであった。
【0089】
(分級品(E
1)の焼成)
得られた分級品(E
1)を、内径500mm、長さ3500mm、肉厚20mmのSUS製円筒状焼成管で高さ150mmの7枚の堰板を加熱炉部分の長さを8等分するように設置したものに、20kg/hrの速度で流通し、600Nリットル/minの窒素ガス流通下、焼成管を4回転/分で回転させながら、370℃まで約4時間かけて昇温し、370℃で3時間保持する温度プロファイルとなるように加熱炉温度を調整し、前段焼成することにより前段焼成体を得た。別の内径500mm、長さ3500mm、肉厚20mmのSUS製焼成管で高さ150mmの7枚の堰板を加熱炉部分の長さを8等分するように設置したものに、焼成管を4回転/分で回転させながら、前段焼成体を15kg/hrの速度で流通した。その際、焼成管の粉導入側部分(加熱炉に覆われていない部分)を、打撃部先端がSUS製の質量14kgのハンマーを設置したハンマリング装置で、回転軸に垂直な方向で焼成管上部250mmの高さから5秒に1回打撃を加えながら、500Nリットル/minの窒素ガス流通下680℃まで2℃/minで昇温し、680℃で2時間焼成し、1℃/minで降温する温度プロファイルとなるように加熱炉温度を調整し、本焼成することにより酸化物触媒を得た。
【0090】
[実施例7]
実施例6で調製した酸化物触媒を用いてアクリロニトリルを製造した例を以下に示す。
(プロパンのアンモ酸化反応)
内径1Bのガラス製流動床型反応器に、上記で得られた複合酸化物触媒40gを充填し、反応温度440℃、反応圧力常圧下にプロパン:アンモニア:酸素:ヘリウム=1:1:3:18のモル比の混合ガスを接触時間2.9(sec・g/cc)で供給し、アンモ酸化反応を10日間行ったところ、アクリロニトリルの平均収率は55%であった。
【0091】
本出願は、2011年1月31日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2011−017937)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。