(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、2次共振モードを利用する従来のアンテナでは、1次共振モードのみを利用するアンテナよりもそのサイズが大きくなってしまうという問題がある。誘電体ブロックの表面に形成される放射パターンに折り返しパターンを採用したりしてその長さを稼ぐことでアンテナサイズを小さくすることも可能であるが、このようにするとアンテナの放射特性が劣化してしまうということから、他の方法による改善が望まれている。
【0005】
したがって、本発明の目的は、2つのアンテナ間の相互干渉を抑えつつ個々のアンテナに対する所望の特性を確保することが可能なアンテナ装置を提供することにある。
【0006】
また、本発明の他の目的は、そのようなアンテナ装置を用いた無線通信機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明によるアンテナ装置は、容量結合素子と、前記容量結合素子が実装されたプリント基板とを備え、前記容量結合素子は、誘電体からなる基体と、前記基体の内部に設けられた第1及び第2キャパシタとを含み、前記プリント基板は、当該プリント基板の一方の主面に設けられ、前記容量結合素子が実装されるグランドクリアランス領域と、グランドパターンが含まれる主回路領域と、前記グランドクリアランス領域内に設けられた第1乃至第3ストリップパターンと、前記主回路領域から前記グランドクリアランス領域内に引き込まれた第1及び第2給電ラインとを有し、 前記第1ストリップパターンの一端は前記容量結合素子内の前記第1キャパシタの一端に接続され、前記第1ストリップパターンの他端は前記容量結合素子との接続点から第1の方向に延びて前記第1給電ラインに接続され、前記第2ストリップパターンの一端は前記容量結合素子内の前記第2キャパシタの一端に接続され、前記第2ストリップパターンの他端は前記容量結合素子との接続点から前記第1の方向と逆方向である第2の方向に延びて前記第2給電ラインに接続され、前記第3ストリップパターンの一端は前記容量結合素子内の前記第1キャパシタの他端及び前記第2キャパシタの他端の両方に接続され、前記第3ストリップパターンの他端は前記容量結合素子との接続点から前記第1及び第2の方向と交差する第3の方向に延びて前記グランドパターンに接続され、前記容量結合素子は、前記グランドクリアランス領域の前記第1の方向と平行な方向の中央部よりも前記第1及び第2の方向にオフセットされて配置されており、前記第1ストリップパターンの長さは第2ストリップパターンよりも短いことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1ストリップパターン、容量結合素子及び第3ストリップパターンがグランドパターンと協働して高周波側のアンテナとして動作し、第2ストリップパターン、容量結合素子及び第3ストリップパターンがグランドパターンと協働して低周波側のアンテナとして動作するので、デュアルバンドアンテナを構成することができる。さらに、グランドクリアランス領域内に2つのアンテナを近接して設ける場合でも、共振周波数が近い2つのアンテナ間の相互干渉を抑えつつ個々のアンテナに対する所望の特性を確保することできる。したがって、小型でありながらアイソレーションが良く、放射効率が高いデュアルバンドアンテナを実現することができる。
【0009】
本発明において、前記グランドクリアランス領域は、前記プリント基板のエッジに接する略矩形状の領域であって、前記プリント基板の前記エッジと一致する第1エッジラインと、前記第1エッジラインと直交し互いに平行な第2及び第3エッジラインと、前記第1エッジラインと平行な第4エッジラインとを有し、前記第2及び第3エッジラインは、前記容量結合素子から見て前記第1及び第2の方向にそれぞれ位置し、前記第1給電ラインは、前記第2エッジライン側から前記グランドクリアランス領域内に引き込まれており、前記第2給電ラインは、前記第3エッジライン側から前記グランドクリアランス領域内に引き込まれていることが好ましい。この場合において、前記容量結合素子から前記第1エッジラインまでの距離は、前記容量結合素子から前記第4エッジラインまでの距離よりも短く、前記第1及び第2ストリップパターンから前記第1エッジラインまでの距離は、前記第1及び第2ストリップパターンから前記第4エッジラインまでの距離よりも短いことが好ましい。この構成によれば、プリント基板の主回路領域に設けられた回路や部品の影響をできるだけ抑えてアンテナの特性を向上させることができる。
【0010】
本発明において、前記第1ストリップパターンの前記他端は、第1周波数調整素子を介して前記第1給電ラインに接続されており、前記第2ストリップパターンの前記他端は、第2周波数調整素子を介して前記第2給電ラインに接続されていることが好ましい。この構成によれば、高周波側のアンテナ及び低周波側のアンテナの各々の共振周波数をより正確に調整することができる。
【0011】
本発明において、前記容量結合素子は、第3キャパシタを含み、前記第3キャパシタの一端は前記第1キャパシタの前記一端に接続されており、前記第3キャパシタの他端は前記第2キャパシタの前記一端に接続されていることが好ましい。この構成によれば、高周波側のアンテナ及び低周波側のアンテナのインピーダンスマッチングをより正確に調整することができ、これにより両アンテナの相互干渉を抑えることができる。
【0012】
本発明によるアンテナ装置は、前記プリント基板の他方の主面に設けられた第4及び第5ストリップパターンをさらに備え、前記第4ストリップパターンは平面視にて前記第1ストリップパターンと重なり合いながら前記第1の方向に延在しており、前記第5ストリップパターンは平面視にて前記第2ストリップパターンと重なり合いながら前記第2の方向に延在しており、前記第1ストリップパターンは、前記プリント基板を貫通する第1スルーホール導体を介して前記第4ストリップパターンに接続されており、前記第2ストリップパターンは、前記プリント基板を貫通する第2スルーホール導体を介して前記第5ストリップパターンに接続されていることが好ましい。この構成によれば、第1及び第2ストリップパターンの見かけ上の体積をさらに大きくすることができ、アンテナの放射効率を高めることができる。
【0013】
さらに、本発明による無線通信機器は、上述した本発明によるアンテナ装置と、前記アンテナ装置に接続された無線回路部と、前記無線回路部を制御する通信制御部とを備え、前記無線回路部及び前記通信制御部は、前記プリント基板の前記主回路領域に設けられていることを特徴とする。本発明によれば、デュアルバンドアンテナを有する小型で高性能な無線通信機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、2つのアンテナ間の相互干渉を抑えつつ個々のアンテナに対する所望の特性を確保することが可能なアンテナ装置を提供することができる。また、本発明によれば、そのようなアンテナ装置を用いた小型で高性能な無線通信機器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるアンテナ装置1の構成を示す略斜視図である。また、
図2は、本実施形態によるアンテナ装置の構成を拡大して示す略斜視図である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、本実施形態によるアンテナ装置1は、容量結合素子10と、容量結合素子10が実装されたプリント基板20とを備えている。容量結合素子10はプリント基板20の一方の主面に設けられたグランドクリアランス領域20A内に実装されており、グランドクリアランス領域20A内に設けられた第1〜第3ストリップパターン21〜23に接続されている。
【0019】
グランドクリアランス領域20Aは、アンテナの構成要素以外の要素、特にグランドパターンが実質的に排除された領域であり、その外周はプリント基板20のエッジ又はプリント基板20上のグランドパターンに囲まれている。本実施形態によるグランドクリアランス領域20Aは、一辺がプリント基板20のエッジ20eに接し、他の三辺がプリント基板20上のグランドパターン24のエッジラインに囲まれた略矩形状の領域である。詳細には、グランドクリアランス領域20Aは、プリント基板20のエッジ20eと一致する第1エッジラインEL1と、第1エッジラインEL1と直交し互いに平行な第2及び第3エッジラインEL2,EL3と、第1エッジラインEL1と平行な第4エッジラインEL4とを有している。
図2において第2及び第3エッジラインEL2,EL3は容量結合素子10の左側及び右側にそれぞれ位置している。
【0020】
プリント基板20の主面のうち破線で示すグランドクリアランス領域20Aの外側の領域は、無線通信機器を構成するために必要な回路又は部品が実装された主回路領域20Bであり、主回路領域20B内の任意の位置にはグランドパターン24が設けられている。グランドパターンのレイアウトは無線通信機器の回路設計によって様々であるが、通常はプリント基板20の広い範囲に形成される。詳細は後述するが、本実施形態によるアンテナ装置1は、容量結合素子10のみでアンテナ動作を行うというよりむしろ、プリント基板20上のグランドパターン24と協働してアンテナ動作を行うものである。
【0021】
グランドクリアランス領域20Aは、プリント基板20の一方の主面のみならず他方の主面にも設けられており、多層基板の場合には内層にも設けられている。すなわち、プリント基板の一方の主面に現れたグランドクリアランス領域20Aの直下には、アンテナの構成要素以外の要素(特にグランドパターン)が排除された空間が広がっている。このように、グランドクリアランス領域20Aを空間的に確保することで、アンテナ特性の安定化を図ることができ、アンテナの放射効率を高めることができる。
【0022】
容量結合素子10は少なくとも2つのキャパシタを内蔵する表面実装型チップ部品であり、上述したプリント基板20のエッジ20eと一致するグランドクリアランス領域20Aの第1エッジラインEL1にできるだけ近接した位置に設けられている。すなわち、容量結合素子10から第1エッジラインEL1までの距離D1は容量結合素子10から第4エッジラインEL4までの距離D2よりも短い。容量結合素子10をプリント基板20のエッジ20eに近接させた場合、容量結合素子10から見て約半分の空間は基板材料(導体パターン)が存在しない開放空間(自由空間)であることから、アンテナの放射効率を高めることができる。
【0023】
容量結合素子10は、略矩形状のグランドクリアランス領域20Aの長手方向の中間位置よりも第2エッジラインEL2側に寄った位置に設けられている。容量結合素子10から第2エッジラインEL2までの距離D3は容量結合素子10から第3エッジラインEL3までの距離D4よりも短い。これは後述するように、第1及び第2ストリップパターン21,22の長さを互いに異ならせるためであり、共振周波数が異なる2つのアンテナを有するデュアルバンドアンテナを実現するためである。
【0024】
グランドクリアランス領域20Aには第1〜第3ストリップパターン21〜23が設けられており、第1〜第3ストリップパターン21〜23の一端はいずれも容量結合素子10に接続されている。第1及び第2ストリップパターン21,22は直線パターンであることが好ましく、その幅は同一であることが好ましい。第3ストリップパターン23も直線パターンであることが好ましい。第3ストリップパターン23の幅は第1及び第2ストリップパターン21,22と同一であることが好ましいが、必要に応じて異ならせもかまわない。
【0025】
第1ストリップパターン21の一端は容量結合素子10に接続されており、他端は容量結合素子10との接続点からグランドクリアランス領域20Aの第2エッジラインEL2に向かってほぼ真っ直ぐに延びてその延長線上に位置する第1給電ライン29に接続されている。第1給電ライン29は、第2エッジラインEL2側からグランドクリアランス領域20A内に引き込まれており、第1ストリップパターン21の他端は、第1周波数調整素子31及び第1給電ライン29を介して第1給電点33に接続されている。さらに第1給電ライン29には第1インピーダンス調整素子35が並列接続されている。
【0026】
第2ストリップパターン22の一端は容量結合素子10に接続されており、他端は容量結合素子10との接続点からグランドクリアランス領域20Aの反対側の第3エッジラインEL3に向かってほぼ真っ直ぐに延びてその延長線上に位置する第2給電ライン30に接続されている。第2給電ライン30は、第3エッジラインEL3側からグランドクリアランス領域20A内に引き込まれおり、第2ストリップパターン22の他端は、第2周波数調整素子32及び第2給電ライン30を介して第2給電点34に接続されている。さらに第2給電ライン30には第2インピーダンス調整素子36が並列接続されている。
【0027】
本実施形態において、プリント基板20のエッジ20eから見た容量結合素子10の実装位置は、第1及び第2ストリップパターン21,22の位置よりも基板の内側にセットバックされている。換言すると、第1及び第2ストリップパターン21,22は容量結合素子10よりもプリント基板20のエッジ20eの近くに配置され、当該エッジ20eと平行に延設されている。容量結合素子10はプリント基板20のエッジ20eのできるだけ近くに実装されることが好ましいが、実装の精度を考慮するとエッジ20eの非常に近くに実装することが難しい。一方、導体パターンのレイアウトの自由度及び加工精度は表面実装部品よりも高いので、プリント基板20のエッジ20eに近づけることは可能である。そこで本実施形態では、第1及び第2ストリップパターン21,22及び容量結合素子10を一直線上に配置するのではなく、第1及び第2ストリップパターン21,22の位置を容量結合素子10よりもエッジ20e寄りに設定することで放射効率の向上を図っている。
【0028】
第3ストリップパターン23の一端は容量結合素子10に接続されており、第3ストリップパターン23の他端は容量結合素子10との接続点からグランドクリアランス領域20Aの第4エッジラインEL4に向かって真っ直ぐに延びてグランドパターン24に接続されている。第3ストリップパターン23は直線パターンである必要はなく、例えばL字パターンであってもよい。第3ストリップパターン23は第1及び第2ストリップパターン21,22と直交する方向に延設されていることが好ましいが、少なくとも交差する関係を有していればよい。
【0029】
プリント基板20の他方の主面のグランドクリアランス領域20A内には第4及び第5ストリップパターン25,26が設けられている。第4ストリップパターン25は第1ストリップパターン21の裏打ちパターンであり、第1ストリップパターン21と実質的に同一の形状を有し、平面視にて第1ストリップパターン21と重なり合っている。そして第4ストリップパターン25はプリント基板20を貫通する複数のスルーホール導体27を介して第1ストリップパターン21に接続されている。第5ストリップパターン26は第2ストリップパターン22の裏打ちパターンであり、第2ストリップパターン22と実質的に同一の形状を有し、平面視にて第2ストリップパターン22と重なり合っている。そして第5ストリップパターン26はプリント基板20を貫通する複数のスルーホール導体28を介して第2ストリップパターン22に接続されている。この構成によれば、グランドクリアランス領域20Aを有効に利用して第1及び第2ストリップパターン21,22の見かけ上の体積をさらに大きくすることができ、アンテナの放射効率を高めることができる。
【0030】
上記のように、グランドクリアランス領域20A内の容量結合素子10の配置は第2エッジラインEL2側にオフセットされているので、第1ストリップパターン21の長さは第2ストリップパターン22よりも短い。第1及び第2ストリップパターン21,22は第3ストリップパターン23及びグランドクリアランス領域20Aの周囲のグランドパターン24とともにデュアルバンドアンテナの放射電極として機能するので、第1ストリップパターン21によって構成されるアンテナの共振周波数は相対的に高くなり、第2ストリップパターン22によって構成されるアンテナの共振周波数は相対的に低くなる。
【0031】
第1給電ライン31から供給される電流は、第1ストリップパターン21、第3ストリップパターン23及びグランドパターン24の第4エッジラインEL4及び第2エッジラインEL2によって囲まれたループを流れ、これにより高周波側のアンテナによる電磁波が放射される。また、第2給電ライン32から供給される電流は、第2ストリップパターン22、第3ストリップパターン23及びグランドパターン24の第4エッジラインEL4及び第3エッジラインEL3によって囲まれたループを流れ、これにより低周波側のアンテナによる電磁波が放射される。どちらの場合も、ループサイズが大きいほど放射効率が高くなる。
【0032】
本実施形態においては、高周波側アンテナを構成する第1ストリップパターン21と、低周波側アンテナを構成する第2ストリップパターン22とが第3ストリップパターン23を共有しており、そのために容量結合素子10を用いている。第3ストリップパターン23を高周波側アンテナと低周波側アンテナに対して別々に用意し、それぞれを独立したL字パターンのアンテナとして構成し、容量結合素子10を省略した場合、グランドクリアランス領域20A内に電流が多く分布してしまい、基板の内側へ電流が流れてしまうのでアンテナの効率が低下する傾向がある。しかし、容量結合素子をT字パターンの接点に配置する事でグランドクリアランス領域内での電流の集中を抑制することができ、アンテナの放射効率を高めることができる。
【0033】
以下、プリント基板20上の導体パターンを使用して電磁場を形成する理由について詳細に説明する。
【0034】
例えば、ブルートゥース用アンテナの場合、共振周波数f=2.442GHz(真空中の波長λ=122.77mm)、必要とされる比帯域幅BWは3.4%である。ここで、2.00×1.25×1.00mmの基体を用いて、基体の長手方向をアンテナ長Laとし、La=2mmのブルートゥース用アンテナを構成する場合、アンテナ長の波長比(a)は、a=2πLa/λ=0.1023となる。また、放射効率(η)を0.5(η=0.5、放射効率50%)とするとき、Qファクタ(Q)は、Q=η(1+3a
2)/a
3(1+a
2)=476.8365となる。さらに、VSWR(S)を2(S=2)とするとき、帯域幅(BW)は、BW=(s−1)×100/(√s×Q)[%]として求められ、BW=0.1%となる。つまり、アンテナ長La=2とした場合には、上記帯域幅3.4%を満足することができない。
【0035】
このように、アンテナ長Laがλ/2πよりも小さい超小型チップアンテナにおいては、上記の式より得られるアンテナ特性以上のものを容量結合素子単体で得ることは理論上不可能である。そのため、超小型チップアンテナの場合にはプリント基板20上の導体パターンに流れる電流を利用して、アンテナを効率良く動作させることが極めて重要となる。
【0036】
図3は、容量結合素子10の構成の一例を示す略斜視図であって、プリント基板20上に実装された状態を示すものである。また、
図4は、
図3に示す容量結合素子10の三面図である。
【0037】
図3及び
図4に示すように、容量結合素子10は、略直方体の誘電体からなる基体11と、基体11の内部に形成された複数の電極層(電極パターン)によって構成されている。基体11は複数の誘電体シートの積層体からなることが好ましい。なお、容量結合素子10の上下方向はプリント基板20への実装状態に基づいて定義され、基体11の底面は実装時にプリント基板20に接する面である。
【0038】
基体11の材料は特に限定されないが、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramic:低温焼成セラミック)を用いることが特に好ましい。LTCCは1000℃以下での低温焼成が可能であるため、電気抵抗が低く高周波特性に優れたAg、Cu等の低融点金属材料を内部電極として使用でき、これにより抵抗損失の少ない電極パターンを実現できる。また、電極パターンを多層構造の内層に形成できるので、LC回路の小型化、高機能化が可能である。加えて、異なる比誘電率の誘電体シートを積層し、同時焼成できるといった特徴もある。基体11の誘電率は、内蔵されるキャパシタが所定のキャパシタンスとなるようにする必要がある。基体11の誘電率が高いほど大きなキャパシタンスを持たせることができる。
【0039】
基体11の底面には第1〜第3端子電極12a〜12cが設けられている。第1及び第3端子電極12a,12cは、基体11の底面の長手方向の両端に設けられており、底面の短辺に接して形成されている。第2端子電極12bは、第1端子電極12aと第3端子電極12cとの間に設けられている。本実施形態において、第2の端子電極12bは複数の電極に分割されている。第1〜第3端子電極12a〜12cの平面レイアウトは底面の長手方向および幅方向の両方に対して線対称な関係を有している。
【0040】
基体11の内部に形成された電極層は、基体11の内層の最下層(第1層)に位置する第1〜第3平板電極13a〜13cと、内層の中間層(第2層)に位置する第4、第5平板電極14a、14bと、内層の最上層(第3層)に位置する第6平板電極15とを含む。これらの電極層は、基体11の高さ方向の略中間位置に形成され、その上層と下層に設けられる誘電体層にはある程度の厚みを与えることが好ましい。この構成によれば、容量結合素子内のキャパシタのキャパシタンスがプリント基板上の導体パターンの影響を受け難くなるので、キャパシタンスの値を安定化させることができる。
【0041】
第1平板電極13aは第1端子電極12aの上方に位置し、第1ビアホール導体16aを介して第1端子電極12aに接続されている。第2平板電極13bは第2端子電極12bの上方に位置し、複数の第2ビアホール導体16bを介して第2端子電極12bに接続されている。第3平板電極13cは第3端子電極12cの上方に位置し、第3ビアホール導体16cを介して第3端子電極12cに接続されている。
【0042】
第4平板電極14aは、基体11の長手方向の一端側から中央部に向かって延びる帯状のパターンであり、その一端部は第4ビアホール導体17aを介して第1平板電極13aに接続されており、他端部は第2平板電極13bと平面視にて重なりを有している。これにより、第4平板電極14aと第2平板電極13bからなる一対の平行平板電極は第1キャパシタC1を構成している。
【0043】
第5平板電極14bは、基体11の長手方向の他端側から中央部に向かって延びる帯状のパターンであり、その一端部は第5ビアホール導体17bを介して第3平板電極13cに接続されており、他端部は第2平板電極13bと平面視にて重なりを有している。これにより、第5平板電極14bと第2平板電極13bからなる一対の平行平板電極は第2キャパシタC2を構成している。
【0044】
第6平板電極15の平面形状はH形であり、第4平板電極14aと平行な線パターンからなる第1電極部15aと、第4平板電極14aと平行な線パターンからなる第2電極部15bと、第1及び第2電極部15a,15bの各々の長手方向の中央部どうしを連結する第3電極部15cとを有している。そして第4平板電極14aの他端部は第6平板電極15の第1電極部と平面視にて重なりを有しており、第5平板電極14bの他端部も第6平板電極15の第2電極部と平面視にて重なりを有している。これにより、第4平板電極15と第6平板電極15との間にキャパシタC31が形成され、第5平板電極14bと第6平板電極15との間にキャパシタC32が形成され、2つのキャパシタC31,C32の直列接続からなる第3キャパシタC3が構成されている。すなわち、第4平板電極14aと第5平板電極14bは第3キャパシタC3を構成している。
【0045】
本実施形態において、第6平板電極15の第3電極部15cは第1及び第2電極部15a,15bと直交する細い線パターンであり、最下層の第2平板電極13bと重なる面積は非常に小さい。したがって、第6平板電極15と第2平板電極13bとの間に発生する浮遊容量を小さくすることができ、アンテナ特性を向上させることができる。
【0046】
図5は、アンテナ装置1の等価回路図である。
【0047】
図5に示すように、アンテナ装置1は、3つのキャパシタC1,C2,C3がΔ結線された回路の各端子に第1、第2、第3ストリップパターン21,22,23の一端がそれぞれ接続された構成を有している。第1ストリップパターン21の一端は、2つのキャパシタC1,C3の連結点である容量結合素子10の第1端子電極12aに接続されており、第2ストリップパターン22の一端は、2つのキャパシタC2,C3の連結点である容量結合素子10の第3端子電極12cに接続されている。さらに、第3ストリップパターン23の一端は、キャパシタC2,C3の連結点である容量結合素子10の第2端子電極12bに接続されている。
【0048】
第1ストリップパターン21の他端は第1周波数調整素子31であるキャパシタC4を介して第1給電点33(第1給電ライン29)に接続されており、第2ストリップパターン22の他端は第2周波数調整素子32であるキャパシタC5を介して第2給電点34(第2給電ライン30)に接続されている。さらに、第3ストリップパターン23の他端は接地されている。
【0049】
本実施形態においては、第1ストリップパターン21、容量結合素子10及び第3ストリップパターン23がグランドクリアランス領域20Aの周囲のグランドパターン24と協働して高周波側のアンテナとして動作する。また、第2ストリップパターン22、容量結合素子10及び第3ストリップパターン23がグランドクリアランス領域20Aの周囲のグランドパターン24と協働して低周波側のアンテナとして動作する。したがって、デュアルバンドアンテナを実現することができる。さらに、共振周波数が近い2つのアンテナがグランドクリアランス領域20A内において隣接して配置されているにも拘わらず、2つのアンテナ間の相互干渉を抑えることができ、個々のアンテナに対する所望の特性を確保することできる。したがって、小型でありながらアイソレーションが良く、放射効率が高いデュアルバンドアンテナを実現することができる。
【0050】
図6は、容量結合素子10の構成の他の例を示す略斜視図であって、プリント基板20上に実装された状態を示すものである。また、
図7は、
図6に示す容量結合素子10の三面図である。
【0051】
図6及び
図7に示すように、この容量結合素子10の特徴は、キャパシタC1のキャパシタンスがキャパシタC2に比べて非常に小さく、さらにキャパシタC3が省略されている点にある。そのため、第4平板電極14aは、基体11の長手方向の一端側から中央部に向かって延びる帯状のパターンではなく、第2平板電極13bと平面視にて重なりを有していない。そのため、第4平板電極14aと第2平板電極13bからなる一対の平行平板電極は構成されず、第1キャパシタC1のキャパシタンスは非常に小さい。
【0052】
一方、第5平板電極14bは、基体11の長手方向の他端側から中央部に向かって延びる帯状のパターンであり、その幅は非常に広い。第5平板電極14bの一端部は第5ビアホール導体17bを介して第4平板電極14aに接続されており、他端部は第2平板電極13bと平面視にて重なりを有している。第5平板電極14bの幅は
図3、
図4に示したものよりも広いので、両者が重なり合う面積も広く、第2キャパシタC2のキャパシタンスも大きくなる。
【0053】
さらに、本実施形態において第4及び第5平板電極14a,14bと重なり合うフローティング電極(第6平板電極15)は存在せず、第7平板電極18aは第4ビアホール導体17aを介して第4平板電極14aに接続されているだけであり、また第8平板電極18bは第5ビアホール導体17bを介して第5平板電極14bに接続されているだけである。したがって、第3キャパシタC3は存在しない。
【0054】
このような容量結合素子10は、例えばWi−Fi(登録商標)の低周波側(2.45GHz)のアンテナと高周波側(5.2GHz)のアンテナのように、2つのアンテナの共振周波数が十分に(例えば2倍以上)離れているマルチバンドアンテナを構成する場合に好ましく用いることができる。このような条件では、マッチング調整においてキャパシタC1のキャパシタンスが小さいほうが良く、キャパシタC3も必要としないからである。このように、本発明によるアンテナ装置1は、容量結合素子10のキャパシタC1、C2、C3のキャパシタンスを適宜設定することにより、2つのアンテナの共振周波数に合わせたマッチングを容易に行うことができる。
【0055】
図8は、アンテナ装置1のSパラメータ特性を示すグラフであって、横軸は周波数、縦軸はSパラメータの値(dB)をそれぞれ示している。
【0056】
図8において実線で示すように、アンテナ装置1のS11特性(反射損失)は、周波数が約1.57GHzのときに利得が最小(約―16dB)となる1つのピークを有し、また点線で示すように、S22特性(反射損失)は、周波数が約2.45GHzのときに利得が最小(約−11dB)となる1つのピークを有する。そして破線で示すように、アンテナ装置1のS21特性(挿入損失)は、周波数が約1.57GHzのときと約2.45GHzのときに利得が最大(約−18dB)となる2つのピークを有する。このようにアンテナ装置1のS21特性は−15dB以下となり、良好なアイソレーションが得られることが分かる。
【0057】
図9は、本実施形態によるアンテナ装置1の放射効率をシングルバンドアンテナ構造と比較して示すグラフであって、横軸は周波数(GHz)、縦軸は利得(dB)をそれぞれ示している。ここで、シングルバンドアンテナ構造は、第1給電ライン29に接続された第1ストリップパターン21、容量結合素子10、第3ストリップパターン23からなる高周波側のアンテナを第1の比較例とし、第2給電ライン30に接続された第2ストリップパターン22、容量結合素子10、第3ストリップパターン23からなる低周波側のアンテナを第2の比較例としている。
【0058】
図9に示すように、本実施形態によるアンテナ装置1は、約1.57GHzにおいて−3.5dBの利得が得られ(実線の太線)、また約2.45GHzにおいても−3.5dBの利得が得られる(破線の太線)。
【0059】
これに対し、比較例1による高周波シングルバンドアンテナは、約2.45GHzにおいても−3.5dBの利得が得られ(点線の細線)、比較例2による低周波シングルバンドアンテナは、約1.57GHzにおいて−3.5dBの利得が得られる(破線の細線)。すなわち、デュアルバンドアンテナである本実施形態によるアンテナ装置1の放射効率は、シングルバンドアンテナ構造と同等であり、良好な放射効率を有することが分かる。
【0060】
図10は、容量結合素子10の実装位置をグランドクリアランス領域20Aの長手方向に変化させたときのアンテナ装置1の特性を示すグラフであり、特に(a)はSパラメータのS11特性、(b)はVSWR特性をそれぞれ示すグラフである。ここで、容量結合素子の位置は、グランドクリアランス領域20Aの長手方向の中央部を基準位置とし、この基準位置に対するオフセット量として示した。すなわち、
図10(a)及び(b)における"0mm","2mm","4mm"とは、
図10(c)、(d)、(e)に示すように、容量結合素子のオフセット量が0mm、2mm、4mmである場合をそれぞれ示している。そして容量結合素子10の実装位置の変化に合わせて第1及び第2ストリップパターンの長さ21,22も変化し、
図10(c)において第1及び第2ストリップパターンの長さ21,22の長さは等しく、
図10(d)において第1ストリップパターン21は第2ストリップパターン22よりも4mm短く、
図10(e)において第1ストリップパターン21は第2ストリップパターン22よりも8mm短い。
【0061】
図10(a)及び(b)に示すように、オフセット量が0mmのレイアウトを有するアンテナ装置(
図10(c))のS11特性及びVSWR特性は、1.67GHzと1.69GHzにそれぞれピークを持ち、2つのアンテナの共振周波数はほとんど同じになる。この結果は第1及び第2ストリップパターン21,22の長さが同じであることによる。
【0062】
またオフセット量が2mmのレイアウトを有するアンテナ装置(
図10(d))のS11特性及びVSWR特性は、1.49GHzと1.96GHzにそれぞれピークを持ち、2つのアンテナの共振周波数の差は大きくなる。この共振周波数の差異は、第1及び第2ストリップパターン21,22の長さの違いが反映された結果である。
【0063】
さらにオフセット量が4mmのレイアウトを有するアンテナ装置(
図10(e))のS11特性及びVSWR特性は、1.42GHzと2.5GHzにそれぞれピークを持ち、2つのアンテナの共振周波数の差はさらに大きくなる。なお2.47GHzのピークは低域側の共振周波数1.42GHzの高調波が現れたものである。この共振周波数の差異も、第1及び第2ストリップパターン21,22の長さの違いが反映された結果である。
【0064】
このように、本実施形態によるアンテナ装置1は、容量結合素子10の実装位置とそれに伴う第1および第2ストリップパターン21,22の長さを調整することにより、2つのアンテナの共振周波数を容易に調整することができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によるアンテナ装置1は、共振点が近い2つの容量結合素子を近づけて設けた場合であっても相互干渉を抑制し、個々の容量結合素子の放射特性の劣化を防止することができる。したがって、小型でありながらアイソレーションが良く、放射効率が高いデュアルバンドアンテナを実現することができる。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0067】
例えば、上記実施形態においては、
図3及び
図4に示した容量結合素子10の構造並びに
図6及び
図7に示した容量結合素子10の構造を例に挙げたが、容量結合素子10の構造は特に限定されず、種々の構造を採用することが可能である。また、第4及び第5ストリップパターン25,26は必須でなく、省略することも可能である。