特許第5711319号(P5711319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5711319
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】電子キーシステム
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20150409BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20150409BHJP
   H04B 1/38 20150101ALI20150409BHJP
   H04W 4/04 20090101ALI20150409BHJP
【FI】
   E05B49/00 K
   B60R25/24
   H04B1/38
   H04W4/04
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-166655(P2013-166655)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-34442(P2015-34442A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2013年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】龍山 卓司
(72)【発明者】
【氏名】國枝 佑旭
(72)【発明者】
【氏名】河村 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】川村 将之
【審査官】 小池 堂夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−047065(JP,A)
【文献】 特開2007−218202(JP,A)
【文献】 特開平09−065461(JP,A)
【文献】 特開2005−042377(JP,A)
【文献】 特開2002−335183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00
B60R 25/24
H04B 1/38
H04W 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作履歴の管理機能を備えた携帯機が電子キーとして規定され、電気的なキー認証を経て車両又は建物の動作が許容される電子キーシステムにおいて、
前記携帯機は、
当該携帯機の動作に関する制御を司る制御手段と、
前記制御手段のリセット回数をカウントしつつ動作履歴として保持する履歴管理手段とを備え
前記携帯機は、前記制御手段のリセット回数を前記車両又は前記建物に送信し、前記車両又は前記建物は、前記制御手段のリセット回数を報知する
ことを特徴とする電子キーシステム
【請求項2】
前記車両又は前記建物は、前記携帯機から受信した前記制御手段のリセット回数が基準値に達した場合に、当該車両又は当該建物にて警告する
請求項1に記載の電子キーシステム。
【請求項3】
前記携帯機は、前記制御手段のリセット回数が基準値に達した場合に、当該リセット回数を前記車両又は前記建物に送信する
請求項1又は2に記載の電子キーシステム。
【請求項4】
前記履歴管理手段は、前記制御手段がリセットされる度にイニシャル処理を行い、そのイニシャル処理の中でイニシャルカウンタ値をインクリメントしつつ前記制御手段のリセット回数をカウントする
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子キーシステム
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、
前記携帯機は、前記制御手段のリセット回数が基準値に達したことを知らせる報知手段を備えた
ことを特徴とする電子キーシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作履歴の管理機能を備えた携帯機が電子キーとして規定され、電気的なキー認証を経て車両又は建物の動作が許容される電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機は、CPU(Central Processing Unit )が様々なプログラムを実行することで各種動作を行う。一例として、携帯機は、車両に搭載された通信装置との間で通信動作を行う(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−29385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
市場での携帯機の使われ方や、市場から回収された不具合品の発生要因を知りたい要望がある。
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、携帯機の動作履歴をダイアグ機能として利用することが可能な電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する電子キーシステムは、動作履歴の管理機能を備えた携帯機が電子キーとして規定され、電気的なキー認証を経て車両又は建物の動作が許容される電子キーシステムにおいて、前記携帯機は、当該携帯機の動作に関する制御を司る制御手段と、前記制御手段のリセット回数をカウントしつつ動作履歴として保持する履歴管理手段とを備え、前記携帯機は、前記制御手段のリセット回数を前記車両又は前記建物に送信し、前記車両又は前記建物は、前記制御手段のリセット回数を報知することをその要旨としている。
【0006】
この構成によれば、携帯機の制御手段のリセット回数を動作履歴として残すことで、電池交換の頻度或いは異常リセットの頻度を把握することができる。これにより、携帯機の使われ方を推定できる他、不具合原因の絞り込みに役立てることができる。したがって、携帯機の動作履歴をダイアグ機能として利用することができる。
上記電子キーシステムについて、前記車両又は前記建物は、前記携帯機から受信した前記制御手段のリセット回数が基準値に達した場合に、当該車両又は当該建物にて警告することとしてもよい。
この構成によれば、携帯機の制御手段のリセット回数が基準値に達した場合には、車両又は建物にて警告がされる。例えば、携帯機の電池交換を促す警告或いは携帯機をディーラに持っていくことを促す警告がされる。これにより、電池交換や修理等の処置を促すことができる。
上記電子キーシステムについて、前記携帯機は、前記制御手段のリセット回数が基準値に達した場合に、当該リセット回数を前記車両又は前記建物に送信することとしてもよい。
この構成によれば、携帯機の制御手段のリセット回数が基準値に達した場合に、当該リセット回数が車両又は建物に送信され、これを受けて車両又は建物で報知動作が行われる。
【0007】
上記電子キーシステムについて、前記履歴管理手段は、前記制御手段がリセットされる度にイニシャル処理を行い、そのイニシャル処理の中でイニシャルカウンタ値をインクリメントしつつ前記制御手段のリセット回数をカウントすることとしてもよい。
【0008】
この構成によれば、イニシャルカウンタ値を用いて携帯機の制御手段のリセット回数を適切に管理することができる
【0010】
電子キーシステムについて、前記携帯機は、前記制御手段のリセット回数が基準値に達したことを知らせる報知手段を備えたこととしてもよい。
【0011】
この構成によれば、携帯機の制御手段のリセット回数が基準値に達すると、その旨の報知が携帯機の報知手段にて行われる。これにより、電池交換や修理等の処置を促すことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、携帯機の動作履歴をダイアグ機能として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電子キーシステムの構成を示すブロック図。
図2】CPUリセット時の携帯機の動作を示す図。
図3】スマート通信時の例による車両と携帯機のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、電子キーシステムの一実施の形態について説明する。
図1に示すように、携帯機2は、電子キーシステム1の構成要素であって、車両に搭載されたセキュリティ装置3との間で無線通信が可能である。無線通信ではLF信号とUHF信号が用いられる。LF信号はLF帯の電波として規定され、UHF信号はUHF帯の電波として規定される。携帯機2は電子キーとして規定され、電気的なキー認証を経て車両動作が許容される。携帯機2は車両キーとして所持される。
【0015】
携帯機2は、LF受信部21、制御部22、UHF送信部23を備えている。LF受信部21は、セキュリティ装置3から送信されたLF信号を受信可能である。LF信号としてウェイク信号やチャレンジ信号が送信される。制御部22は、CPU22a、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random-Access Memory)の他、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read-Only Memory )22bを備えている。EEPROM22bには、携帯機2に固有のIDが記憶されている。CPU22aは、LF受信部21でLF信号が受信されると、その信号がウェイク信号であるか否かの判定を行う。CPU22aは、肯定判断すると、ウェイク信号に応答するために、UHF送信部23からアック信号を送信する。また、CPU22aは、LF受信部21でチャレンジ信号が受信されると、上記IDを含むレスポンス信号をUHF送信部23から送信する。
【0016】
セキュリティ装置3は、LF発信機31、UHF受信機32、照合ECU(Electronic Control Unit )33を備えている。LF発信機31は、照合ECU33による制御を受けて、車両周辺にLF信号を発信する。UHF受信機32は、携帯機2から送信されたUHF信号を受信可能である。UHF信号としてアック信号やレスポンス信号が受信される。照合ECU33は不揮発性のメモリ33aを備えている。メモリ33aには、自車に適合する携帯機2のIDが基準IDとして登録されている。照合ECU33は、携帯機2の接近を監視するために、LF発信機31からウェイク信号を発信する。照合ECU33は、UHF受信機32でアック信号が受信されると、LF発信機31からチャレンジ信号を送信する。照合ECU33は、UHF受信機32でレスポンス信号が受信されると、その信号に含まれたIDについて、上記基準IDとの照合を行う。照合ECU33は、IDが照合一致したことを条件に、車両動作を許容する。
【0017】
ところで、携帯機2は、電源として電池を備え、この電池から電力を賄いつつ、セキュリティ装置3との通信動作を含む各種動作を行う。例えば、一次電池であるボタン電池が採用され、電池電圧が低下すると交換される。これにより、再び各種動作が可能となる。一方、二次電池が採用される場合には、電池電圧が低下すると充電により電池電圧が確保され、やがて経年変化等により消耗すると交換される。
【0018】
図2に示すように、携帯機2は、電源投入時或いは電池電圧が閾値を下回った時、CPU22aがリセットされる。そして、CPU22aがリセットされる度にイニシャル処理が行われる。イニシャル処理には、ポート処理の他、EEPROM22bに対するデータの読み出しと書き込みの処理が含まれる。イニシャル処理の中でイニシャルカウンタ値がインクリメントされ、そのイニシャルカウンタ値がEEPROM22bに書き込まれる。これにより、CPU22aのリセット回数がカウントされつつ動作履歴として保持される。このように携帯機2は動作履歴の管理機能を備える。CPU22aは「制御手段」及び「履歴管理手段」に相当する。EEPROM22bは「記憶手段」に相当する。尚、上記閾値はイニシャル処理を適切に行える動作可能電圧よりも高い電圧として規定される。これにより、電池電圧(監視電圧)が当該閾値を下回った場合でも、CPU22aによりイニシャル処理が適切に行われる。
【0019】
次に、電子キーシステム1の作用について説明する。
図3に示すように、スマート通信時の例では、まず車両からウェイク信号が発信される。このウェイク信号が携帯機2で受信されると、携帯機2からアック信号が送信される。このアック信号が車両で受信されると、車両からチャレンジ信号が送信される。このチャレンジ信号が携帯機2で受信されると、イニシャルカウンタビットの付加されたレスポンス信号が携帯機2から送信される。イニシャルカウンタビットには、CPU22aのリセット回数を示唆する情報が含まれる。EEPROM22bからイニシャルカウンタ値が読み出され、上記情報を含むレスポンス信号が生成される。
【0020】
レスポンス信号が車両で解析され、CPU22aのリセット回数が基準値に達した場合には、車両のメータに警告が表示される。例えば、電池交換を促す表示或いはキーをディーラに持っていくことを促す表示がされる。
【0021】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)CPU22aのリセット回数を動作履歴として残すことで、電池交換の頻度或いは異常リセットの頻度を把握することができる。これにより、携帯機2の使われ方を推定できる他、不具合原因の絞り込みに役立てることができる。したがって、動作履歴をダイアグ機能として利用することができる。
【0022】
(2)イニシャルカウンタ値を用いてCPU22aのリセット回数を適切に管理することができる。
(3)EEPROM22bへの書き込みに伴い、CPU22aのリセット回数を安定して保持できる。
【0023】
(4)EEPROM22bに書き込んだデータを読み出して活用することができる。
(5)CPU22aのリセット回数が基準値に達すると、その旨の報知が行われる。これにより、電池交換や修理等の処置を促すことができる。
【0024】
(6)不具合発生時に市場での電池交換頻度や異常リセットの頻度を把握することにより不具合原因の絞り込みをすることができる。
(7)ユーザがいち早く携帯機2の異常に気付くことができる。
【0025】
(8)電池交換の回数を把握していることを前提に、異常リセットを含むそれ以外のリセット回数が特定できるので、不具合原因の絞り込みに寄与できる。
(9)電池交換の頻度が高い場合に、その原因を取り除くことで携帯機2の使用環境を整えることができる。例えば、ウェイク信号に似たノイズが携帯機2で受信されると、アック信号の送信に至らなくともウェイク判定により電池電力が消費され、電池交換の頻度に影響を与える。つまり、電池交換の頻度が高い場合には、ノイズの影響が考えられる。したがって、ノイズの発生源を特定しつつ、携帯機2の保管場所を変更することによって、電池交換の頻度を下げることができる。
【0026】
(10)ノイズの影響を受けて電池電圧が閾値を下回ると、CPU22aがリセットされる。電池交換をしていないにもかかわらず、CPU22aのリセット回数が基準値に達した場合には、静電気等のノイズによる異常リセットが疑われる。したがって、ノイズの発生源を特定しつつ、携帯機2の保管場所を変更することによって、携帯機2の使用環境を整えることができる。
【0027】
尚、上記実施の形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・CPU22aのリセット回数が基準値に達したことを知らせるにあたり、上記実施の形態によるメータでの表示動作にブザー或いは音声メッセージでの報知動作を伴ってもよいし、音での報知動作が単独で行われてもよい。
【0028】
・CPU22aのリセット回数が基準値に達したか否かにかかわらず、CPU22aのリセット回数が車両のメータ等で報知されてもよい。
・CPU22aのリセット回数を携帯機2で監視しつつ、それが基準値に達したこと或いはCPU22aのリセット回数を携帯機2で報知してもよい。この場合、携帯機2は表示或いは音或いは振動(バイブレーション機能)による報知動作を行う報知手段を備える。この構成によれば、車両との通信によらず、携帯機2が単独で動作履歴を管理することができる。LCD(Liquid Crystal Display)等の画面による表示の他、インジケータによる表示であってもよい。インジケータによる表示について、CPU22aのリセット回数に応じた色でインジケータを点灯或いは点滅させてもよい。単色のインジケータを用いて、CPU22aのリセット回数に応じた点滅速度でインジケータを点滅させてもよい。7セグメントLED(Light Emitting Diode)を用いてCPU22aのリセット回数を表現してもよい。
【0029】
・CPU22aのリセット回数が基準値に達した場合に限り、そのことを示唆する情報を含むレスポンス信号を携帯機2から送信し、これを受けて車両のメータ等で報知動作が行われてもよい。
【0030】
・CPU22aのリセット回数が報知動作が必要な回数に達したか否かを判定する上での閾値となる基準値は任意に設定可能である。基準値をより小さくすれば報知動作がより早い段階で行われるため、携帯機2が動作不能となる前に適切な処置が施され易い。一方、基準値をより大きくすれば携帯機2が動作不能となる直前まで使用され易い。
【0031】
・イニシャルカウンタ値をゼロに戻す構成を備えてもよい。
・電子キーシステムは車両への適用に限定されない。建物に適用され、ドアの施解錠或いは照明の点灯・消灯を許容するシステムであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…電子キーシステム、2…携帯機、3…セキュリティ装置、21…LF受信部、22…制御部、22a…CPU(制御手段、履歴管理手段)、22b…EEPROM(記憶手段)、23…UHF送信部、31…LF発信機、32…UHF受信機、33…照合ECU、33a…メモリ。
図1
図2
図3