特許第5711352号(P5711352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5711352
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】マクロライドの結晶形、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07H 17/08 20060101AFI20150409BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20150409BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20150409BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20150409BHJP
【FI】
   C07H17/08 BCSP
   A61K31/7048
   A61P31/04
   A61P33/00
【請求項の数】15
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-501396(P2013-501396)
(86)(22)【出願日】2011年3月22日
(65)【公表番号】特表2013-522367(P2013-522367A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】US2011029424
(87)【国際公開番号】WO2011119604
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2013年4月4日
(31)【優先権主張番号】61/316,063
(32)【優先日】2010年3月22日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511100970
【氏名又は名称】センプラ ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ,デービッド,イー.
【審査官】 井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/055557(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0100164(US,A1)
【文献】 有機化合物結晶作製ハンドブック−原理とノウハウ−,2008年,pp.57-84
【文献】 PHARM TECH JAPAN,2002年,Vol.18, No.10,pp.81-96
【文献】 Topics in Current Chemistry,1998年,No.198,pp.163-208
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物の結晶形Iを含む組成物であって、前記結晶形Iが2θ=6.2°,8.5°,8.8°,10.5°,11.0°,12.4°,13.2°,17.0°,18.6°及び21.9°±0.2°2θにピークを含むX線粉末回折パターンを有することにより規定されることを特徴とする組成物。
【化1】
【請求項2】
式Iの化合物の結晶形IIを含む組成物であって、前記結晶形IIが2θ=5.6°,7.9°,9.3°,11.7°,12.9°,15.1°,16.7°,18.6°,19.7°及び21.2°±0.2°2θにピークを含むX線粉末回折パターンを有することにより規定されることを特徴とする組成物。
【化2】
【請求項3】
請求項1に記載の組成物であって、前記結晶形Iが更に2θ=18.0°,19.7°,20.7°,21.2°,21.9°,23.4°又は24.9°±0.2°2θのうち1つ以上のピークを含むX線粉末回折パターンを有することにより規定されることを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項2の結晶形IIを含まない請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
X線粉末回折パターンを有し、X線粉末回折パターンにおいて2θ=5.6°、7.9°、9.8°又は11.7°±0.2°2θのピークが1つ以上存在しないことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
X線粉末回折パターンを有し、X線粉末回折パターンにおいて2θ=5.6°又は7.9°±0.2°2θのピークが1つ以上存在しないことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
請求項2に記載の組成物であって、前記結晶形IIが更に2θ=9.8°±0.2°2θのピークを含むX線粉末回折パターンを有することにより規定されることを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項1の結晶形Iを含まない、請求項2に記載の組成物
【請求項9】
X線粉末回折パターンを有し、X線粉末回折パターンにおいて2θ=8.5又は8.8°±0.2°2θのピークが1つ以上存在しないことを特徴とする、請求項2に記載の組成物
【請求項10】
2θ=6.2°、8.5°、8.8°、9.3°、10.5°、11.0°、12.0°、12.4°、13.2°、13.7°、14.5°、14.9°、17.0°、18.0°、18.6°、19.5°、19.7°、20.7°、21.2°、21.9°、23.4°、24.4°、24.9°、25.6°、26.4°、26.8°、29.0°、および30.0°±0.2°2θに位置するピークがあるX線粉末回折パターンを有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物
【請求項11】
2θ=5.6°、7.9°、9.3°、9.8°、10.7°、11.2°、11.7°、12.0°、12.9°、13.3°、13.8°、14.2°、14.6°、15.1°、16.7°、17.2°、17.5°、18.4°、18.6°、18.8°、19.3°、19.7°、20.6°、21.0°、21.2°、21.4°、21.8°、22.1°、22.6°、23.3°、23.5°、24.2°、24.4°、24.8°、25.6°、25.8°、26.2°、26.6°、27.2°、27.6°、27.9°、28.5°および29.5°±0.2°2θに位置するピークがあるX線粉末回折パターンを有することを特徴とする、請求項2に記載の組成物
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物であって、前記組成物は少なくとも1種の製薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤、またはそれらの組合せをさらに含む組成物。
【請求項13】
細菌感染、原虫感染、または、宿主動物からの細菌感染もしくは原虫感染によって引き起こされる障害を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の治療上有効な量の前記組成物を含み、更に少なくとも1種の製薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤、またはそれらの組合せを含む医薬組成物。
【請求項14】
前記宿主動物が哺乳動物、魚、鳥、または爬虫類である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記宿主動物がヒトである、請求項13に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2010年3月22日に提出された米国特許仮出願第61/316,063号(参照により本明細書に組み込まれる)に基づく利益を主張するものである。
【0002】
本明細書に説明されている本発明は、マクロライド化合物に関する。さらに詳細には、マクロライド化合物の新規結晶形、これらの結晶形を調整するプロセス、および、これらの結晶形を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
医薬品としてのさらなる進展が見込まれるとみなされている化合物は有益なことに、所望の生物学的特性に加えて、医薬品の製造での使用に合わせてその化合物を適合させる物理的特性も有することは明らかである。例えば、結晶性固体を含む安定な固体を形成する化合物をさらに容易に製造および調合できる。さらには、安定であるとともに、それに加えて、他の物理的形状を実質的に含まないように調製できる化合物の個々の物理的形状も、さらに容易に製造および調合できることも明らかである。本明細書においては、物理的形状によって、溶解度特性が異なる、バイオアベイラビリティおよび/または生物学的曝露が異なる、安定性が異なるなど、物理的特性が大きく異なる場合があると理解されたい。
【0004】
米国特許出願公開第2006/0100164号では、特定のマクロライド抗生物質化合物が開示されている。上記の公開特許、および本明細書で引用するさらなる公開特許のそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。これらのマクロライドの1つは、Chemical Abstracts Registry Numberが760981−83−7のフルオロケトライドであり、CEM−101およびソリスロマイシンとしても知られている。CEM−101の非晶形の調製法は上記の公開特許に記載されている。CEM−101の代替的な調製法は、国際公開第2009/055557号に記載されている。CEM−101は下記の化学構造を有する。
【化1】
【発明の概要】
【0005】
本発明の実例的な実施形態をもたらすさまざまな結晶形でCEM−101を単離できることを本発明で発見した。CEM−101は、単離法に応じて、多種多様な物理的特性を有する材料としての結晶形で単離できる。その理由は、CEM−101が複数の結晶形で存在できること、すなわち、CEM−101が結晶多形を示すことにある。CEM−101は、少なくとも2つの結晶形で単離でき、本明細書では、この2つの結晶形を結晶形Iおよび結晶形IIと称し、この各結晶形は純粋であるか、実質的に純粋であるか、および/または、他の形状を実質的に含まない。結晶形Iと結晶形IIとのさまざまな混合物も単離することができる。加えて、1種以上の結晶性材料の混合物であるとともに、非晶性固体も含む固体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1には、結晶形IのX線粉末回折(XRPD)スペクトルの実例的な例、X軸に2θの角度、Y軸に相対強度が取られている。
図2図2には、結晶形IIのXRPDスペクトルの実例的な例が示されており、X軸に2θの角度、Y軸に相対強度が取られている。
【0007】
結晶形Iおよび結晶形IIのそれぞれのピークのさらに詳細なリストは、実施例の表1〜4に後掲されており、これらの表では、ピークは、百分率の相対強度(I/I×100)として示されている。X線粉末回折スペクトルでは、2θの角度(または対応する面間隔d)について測定した厳密値は、分析する特定のサンプルと、使用する特定の分析手順によって変化する場合があると理解されたい。値の範囲は少なくとも2θが±0.1°、場合によっては少なくとも2θが±0.2°であるのが典型的であり得る。別々に調製したサンプルを異なる計器で測定すると、2θで±0.1°および/または2θで±0.2°を超える誤差が生じる場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
新規な物理的形状であるCEM−101結晶形Iは、X線粉末回折パターンによって説明できる結晶形である。2θ=約8.8°、10.5°、13.2°、および18.6°近辺のピークが、この結晶形を表している。結晶形IのX線粉末回折スペクトルの例は図1に示されている。これらのピークのさらに詳細な分析は、後掲の表1〜2に示されている。CEM−101の結晶形Iは、熱重量分析(TGA)によって、最小限の重量損失を示している。通常ロット中の、カール・フィッシャー滴定による水分定量値は、0.6〜1.1%である。動的水分吸着量によって、この材料は部分的に吸湿性であることが示されているが、結晶形Iは、脱着時に単離される。CEM−101の結晶形Iは、DSC分析によれば約200℃で溶融する。
【0009】
1つの実施形態として、2θ=約8.8°、10.5°、13.2°、および18.6°近辺にピークがあるX線粉末回折パターンを有するCEM−101結晶形Iを説明する。別の実施形態として、2θ=約8.8°、10.5°、13.2°、および18.6°近辺にピークがあるX線粉末回折パターンを有するCEM−101結晶形Iを含むCEM−101固体形状を説明する。別の実施形態として、CEM−101を含む組成物であって、そのCEM−101の大半が、2θ=約8.8°、10.5°、13.2°、および18.6°近辺にピークがあるX線粉末回折パターンを有するCEM−101結晶形Iである組成物を説明する。別の実施形態として、図1のX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを有する上記の各実施形態におけるCEM−101を説明する。
【0010】
新規な物理的形状である結晶形Iは物理的に安定であり、後述のように、他の物理的形状を実質的に含まないように調製できる。1つの実施形態では、結晶形IIを実質的に含まないCEM−101結晶形Iを説明する。形状の相対量は、さまざまな分析技法によって、例えば、XRPDスペクトルにおける代表的なピークの有無、および/または相対的ピーク高さ、および/または適切な識別可能なピークのピーク面積(これらに限らない)によって割り出してよい。他の物理的形状を実質的に含まないCEM−101結晶形Iは、2θ=約8.8°、10.5°、13.2°、および18.6°近辺にピークがあるX線粉末回折パターンによって特徴付けることができる。この結晶形では、2θ=約6.2°、19.7°、および/または21.9°のピークも観察される。別の実施形態では、2θ=約8.8°、10.5°、13.2°、および18.6°近辺にピークがあるとともに、2θ=約6.2°、19.7°、および/または21.9°に1つ以上のさらなるピークがあるX線粉末回折パターンによって特徴付けられる上記の各実施形態におけるCEM−101結晶形Iを説明する。別の実施形態では、X線粉末回折パターンによって割り出した場合に、結晶形IIを実質的に含まない上記の各実施形態におけるCEM−101結晶形Iであって、2θ=5.6°、9.8°、および/または11.7°のピークが1つ以上存在しないか、またはほぼ存在しないCEM−101結晶形Iを説明する。
【0011】
別の実施形態では、CEM−101を含む医薬組成物であって、上記の各実施形態で説明されているようなCEM−101結晶形Iを含むか、またはそのCEM−101結晶形Iから本質的になる医薬組成物を説明する。別の実施形態では、CEM−101を含む医薬組成物であって、CEM−101を含み、そのCEM−101が少なくとも約60%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%結晶形Iである医薬組成物を説明する。別の実施形態では、CEM−101を含む医薬組成物であって、CEM−101を含み、そのCEM−101が結晶形IIを実質的に含まない医薬組成物を説明する。別の実施形態では、CEM−101結晶形Iを含む医薬組成物であって、結晶形IIの相対量が約40%、20%、10%、5%、2%、または1%未満である医薬組成物を説明する。別の実施形態では、CEM−101を含む医薬組成物であって、特定のピークの相対的ピーク高さによって結晶形Iと結晶形IIの相対量が割り出される医薬組成物を説明する。2θ=6.2°と2θ=5.6°のピークの実例的な相対的ピーク高さ比は、約5:1以上、約10:1以上、または約20:1以上である。別の実施形態として、他の物理的形状を実質的に含まないCEM−101結晶形Iを説明する。別の実施形態として、図1のX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを有するCEM−101を含む医薬組成物を説明する。
【0012】
新規な物理的形状であるCEM−101結晶形IIは、X線粉末回折パターンによって説明できる結晶形である。2θ=約5.6°、7.9°、9.3°、11.7°、12.9°、および16.7°近辺のピークが、この結晶形を表している。結晶形IIのX線粉末回折スペクトルの例は図2に示されている。これらのピークのさらに詳細な分析は、後掲の表3〜4に示されている。単結晶X線回折の測定および動的水分吸着量分析に基づくと、結晶形IIは、DSC分析によれば、単一の吸熱イベントとして約225℃で溶融する非吸湿性の無水結晶形であると思われる。本発明においては、本明細書に記載されている結晶形IIのような非吸湿性固体が、医薬組成物の調製の際に有益な場合があることは明らかである。その利点としては、製造時の扱いやすさおよび安定特性の向上、ロット間の品質管理の向上が挙げられる。
【0013】
1つの実施形態として、2θ=約5.6°、7.9°、9.3°、11.7°、12.9°、および16.7°の近辺にピークがあるX線粉末回折パターンを有するCEM−101結晶形IIを説明する。別の実施形態として、2θ=約5.6°、7.9°、9.3°、11.7°、12.9°、および16.7°の近辺にピークがあるX線粉末回折パターンを有するCEM−101結晶形IIを含むCEM−101固体形状を説明する。別の実施形態として、CEM−101を含む組成物であって、そのCEM−101の大半が、2θ=約5.6°、7.9°、9.3°、11.7°、12.9°、および16.7°の近辺にピークがあるX線粉末回折パターンを有するCEM−101結晶形IIである組成物を説明する。別の実施形態として、図2のX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを有する上記の各実施形態におけるCEM−101を説明する。
【0014】
新規な物理的形状である結晶形IIは物理的に安定であり、後述のように、他の物理的形状を実質的に含まないように調製できる。1つの実施形態では、結晶形Iを実質的に含まないCEM−101結晶形IIを説明する。形状の相対量は、さまざまな分析技法によって、例えば、XRPDスペクトルにおける代表的なピークの有無、および/または相対的ピーク高さ、および/または適切な識別可能なピークのピーク面積(これらに限らない)によって割り出してよい。他の物理的形状を実質的に含まないCEM−101結晶形IIは、2θ=約5.6°、7.9°、9.3°、11.7°、12.9°、および16.7°近辺にピークがあるX線粉末回折パターンによって特徴付けることができる。別の実施形態では、X線粉末回折パターンによって割り出した場合に、結晶形Iを実質的に含まない上記の各実施形態におけるCEM−101結晶形IIであって、2θ=6.2°および/または8.8°のピークが1つ以上存在しないか、またはほぼ存在しないCEM−101結晶形IIを説明する。
【0015】
別の実施形態では、CEM−101を含む医薬組成物であって、上記の各実施形態で説明されているようなCEM−101結晶形IIを含むか、またはそのCEM−101結晶形IIから本質的になる医薬組成物を説明する。別の実施形態では、CEM−101を含む医薬組成物であって、CEM−101を含み、そのCEM−101が少なくとも約60%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%結晶形IIである医薬組成物を説明する。別の実施形態では、CEM−101結晶形IIを含む医薬組成物であって、結晶形Iの相対量が約40%、20%、10%、5%、2%、または1%未満である医薬組成物を説明する。別の実施形態では、CEM−101を含む医薬組成物であって、CEM−101を含み、そのCEM−101が結晶形Iを実質的に含まない医薬組成物を説明する。別の実施形態では、CEM−101を含む医薬組成物であって、結晶形IIと結晶形Iの相対量が、特定のピークの相対的ピーク高さによって割り出される医薬組成物を説明する。2θ=5.6°および2θ=6.2°のピークの実例的な相対的ピーク高さ比は、約5:1以上、約10:1以上、または約20:1以上である。別の実施形態として、他の物理的形状を実質的に含まないCEM−101結晶形IIを説明する。他の物理的形状を実質的に含まないCEM−101結晶形IIは、2θ=約5.6°、7.9°、9.3°、11.7°、12.9°、おとび16.7°の近辺にピークがあるX線粉末回折パターンによって特徴付けることができる。別の実施形態として、図2のX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを有するCEM−101を含む医薬組成物を説明する。
【0016】
さらなる実施形態として、結晶形Iと結晶形IIの比率がいずれかであるCEM−101を含む医薬組成物を説明する。さらなる実施形態として、結晶形Iの比率がいずれかであるCEM−101と、非晶性CEM−101とを含む医薬組成物を説明する。さらなる実施形態として、結晶形IIの比率がいずれかであるCEM−101と、非晶性CEM−101とを含む医薬組成物を説明する。さらなる実施形態として、結晶形Iと結晶形IIの比率がいずれかであるCEM−101と、非晶性CEM−101とを含む医薬組成物を説明する。
【0017】
CEM−101結晶形Iは、他の物理的形状を実質的に含まない結晶形Iを含め、実施例で後述されているような再結晶化によって、例えば、表Aの実験18、21〜23、および26に記載されているような再結晶化手順によって調製してよい。この表では、溶媒のCEM−101に対する比は、体積:重量比(mL/mg、またはL/g)で示されており、「T」は体積の「倍数」を示している。一般に、結晶形Iは、例えばアセトン、メタノール、またはエタノールのような水混和性の極性有機溶媒にCEM−101を溶解させた溶液を水に加えて、CEM−101結晶形Iをもたらすことによって得てよい。
【0018】
1つの実施形態によれば、CEM−101の結晶形Iの調製プロセスを本明細書で説明する。このプロセスは、水混和性の極性有機溶媒にCEM−101を溶解させた溶液を50℃未満の温度などの水に加える工程を含む。加えて、このプロセスは、CEM−101の溶液を加熱する追加の工程、CEM−101の溶液をろ過する追加の工程、CEM−101の溶液の体積を蒸発によって減少させる追加の工程、CEM−101の溶液を加える間、水を攪拌する追加の工程のうちの1つ以上を含んでもよい。別の実施形態では、調製したCEM−101結晶形Iは、他の物理的形状を実質的に含まない。別の実施形態では、調製したCEM−101結晶形Iは、結晶形IIを実質的に含まない。
【0019】
別の実施形態によれば、CEM−101の結晶形Iの調製プロセスであって、CEM−101源をアセトン、メタノール、もしくはエタノール、またはこれらの組み合わせに、任意で周囲温度を超える温度で溶解させる工程、この溶液を任意でろ過する工程、得られた溶液の体積を蒸発によって減少させる工程、この溶液を50℃未満の温度の水に、任意で攪拌しながら加える工程、および得られた結晶性個体を回収する工程のうちの1つ以上を含むプロセスを本明細書で説明する。さらなる実施形態は、上記の溶媒がアセトンである実施形態である。さらなる実施形態は、上記の溶媒がエタノールである実施形態である。
【0020】
上記プロセスのいずれにおいても、さらなる実施形態は、上記の溶液を約10℃〜約30℃の温度の水に加える実施形態である。別の実施形態は、上記の溶液を水に滴下する実施形態である。別の実施形態では、調製したCEM−101結晶形Iは、他の物理的形状を実質的に含まない。別の実施形態では、調製したCEM−101結晶形Iは、結晶形IIを実質的に含まない。
【0021】
CEM−101結晶形Iを調製する上記プロセスいずれにおいても、溶媒のアセトン、メタノール、もしくはエタノール、またはこれらの組み合わせのいずれかを用いてよい。別の実施形態では、上記の有機溶液を約20〜30℃の水にゆっくり加える。別の実施形態では、上記の有機溶液の水に対する体積:体積比は約6〜約15である。別の実施形態では、上記の有機溶液の水に対する体積:体積比は約10〜約13である。
【0022】
上記のプロセスは、CEM−101結晶形Iのシードを用いて行っても、用いずに行ってもよい。
【0023】
CEM101結晶形IIは、他の物理的形状を実質的に含まない結晶形IIを含め、実施例で後述されているように、例えば、表Aの実験1、5、6、8、9、11、12、14、16、19、および24に説明されているような再結晶化によって、または、表Bに例示されているようなスラリー手順によって調製してよい。一般に、水混和性の極性有機溶媒にCEM−101を溶解させた溶液に水を加えることによって、結晶形IIを得ることができる。加えて、表Aに示されているように、多くの有機溶媒から、貧溶媒を用いるか、貧溶媒を用いずに、かつ、シーディングを用いるか、またはシーディングを用いずに再結晶化することによって、CEM−101結晶形IIを得ることもできる。あるいは、結晶形Iと結晶形IIとの混合物を、例えば2−プロパノール(イソプロピルアルコール、IPA)中で60℃にてスラリー化するか、この混合物を2−ブタノン(メチルエチルケトン、MEK)中で、さまざまな条件下にてスラリー化することによって、この混合物をCEM−101結晶形IIに変換してよい。
【0024】
1つの実施形態によれば、CEM−101結晶形IIを調製するプロセスを本明細書で説明する。このプロセスは、水混和性の極性有機溶媒にCEM−101を溶解させた溶液に水を加える工程を含む。加えて、このプロセスは、CEM−101の溶液をろ過する追加の工程、CEM−101の溶液の体積を蒸発によって減少させる追加の工程、水を加える間、CEM−101を攪拌する追加の工程、および得られた結晶性個体を回収する追加の工程のうちの1つ以上を含んでよい。別の実施形態では、上記の水混和性の極性有機溶媒はプロトン性である。別の実施形態では、上記の水混和性の極性有機溶媒は非プロトン性である。さらなる実施形態は、上記の水混和性の極性有機溶媒がアセトン、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、メタノール、もしくはエタノール、またはこれらの組み合わせである実施形態である。さらなる実施形態は、CEM−101の溶液が周囲温度を超える、例えば、約65〜約80℃、または約65℃である実施形態である。さらなる実施形態は、周囲温度前後の水を溶液に加える実施形態である。別の実施形態は、水を上記の溶液に滴下する実施形態である。CEM−101結晶形IIを調製する上記のプロセスのいずれのうちの1つ実施形態では、有機溶媒の水に対する体積:体積比は約1〜約10である。別の実施形態では、調製したCEM−101結晶形IIは、他の物理的形状を実質的に含まない。
【0025】
上記のプロセスは、CEM−101結晶形IIのシードを用いて行っても、用いずに行ってもよい。
【0026】
上記の手順では、CEM−101源が固体であるときには、結晶形Iもしくは結晶形IIとして、さらなる結晶形状として、ガラスとして、またはこれらの形状のうちのいずれかの組み合わせとしての非晶性形状のCEM−101であってよい。CEM−101の溶液がCEM−101源をもたらすこともできることを理解されたい。別の実施形態として、CEM−101を精製するプロセスであって、他の物理的形状を実質的に含まない結晶形Iまたは結晶形IIに、1つ以上のCEM−101形状、またはCEM101−形状の混合物を変換する工程を含むプロセスを説明する。このような精製の後、さらなる活用に備えて、CEM−101を異なる物理的形状に変換するのが望ましい場合がある。
【0027】
別の実施形態では、水混和性の極性有機溶媒にCME−101を溶解させた溶液を50℃未満の温度などの水に加える工程を含むプロセスによって調製される、CEM−101の固体形状を本明細書で説明する。加えて、このプロセスは、任意で加熱しながら、任意で上記の溶液をろ過する追加の工程、任意で攪拌しながら、得られた溶液の体積を蒸発によって任意で減少させる追加の工程、および得られた結晶性個体を回収する追加の工程のうちの1つ以上を含んでよい。別の実施形態では、上記の水は、約10℃〜約30℃の温度である。別の実施形態では、上記の溶媒はアセトン、メタノール、もしくはエタノール、またはこれらの組み合わせである。別の実施形態では、上記の有機溶液を約20〜30℃の水にゆっくり加える。別の実施形態では、上記の有機溶液の水に対する体積:体積比は、約6〜約15である。別の実施形態では、上記の有機溶液の水に対する体積:体積比は、約10〜約13である。上記の実施形態の変形形態では、上記プロセスは、CEM−101結晶形Iのシードを用いることを含んでよい。
【0028】
別の実施形態では、水混和性の極性有機溶媒にCEM−101を溶解させた溶液に水を加える工程を含むプロセスによって調製される、CEM−101の固体形状を本明細書で説明する。加えて、上記のプロセスは、上記の溶液を任意でろ過する追加の工程、任意で攪拌しながら、得られた溶液の体積を蒸発によって任意で減少させる追加の工程、および得られた結晶性固体を回収する追加の工程のうちの1つ以上を含んでもよい。別の実施形態では、水混和性の極性有機溶媒はプロトン性である。別の実施形態では、水混和性の極性有機溶媒は非プロトン性である。さらなる実施形態は、水混和性の極性有機溶媒がアセトン、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、メタノール、もしくはエタノール、またはこれらの組み合わせである実施形態である。さらなる実施形態は、水混和性の極性有機溶媒の溶液が周囲温度を超える温度、例えば約65〜約80℃、または約65℃である実施形態である。さらなる実施形態は、周囲温度前後の水を上記の溶液に加える実施形態である。別の実施形態は、水を上記の溶液に滴下する実施形態である。別の実施形態では、上記の有機溶媒の水に対する体積:体積比は約1〜約10である。上記の実施形態の変形形態では、上記のプロセスは、CEM−101の結晶形IIのシードを用いることを含んでよい。
【0029】
別の実施形態として、本明細書のいずれかの説明部分に記載されているような結晶形状のCEM−101を含むとともに、少なくとも1種の製薬学的に許容可能な担体または賦形剤をさらに含む医薬組成物を説明する。
【0030】
実例的には、組成物は、1種以上の担体、希釈剤、および/または賦形剤を含んでよい。本明細書に記載されている化合物、またはそれらを含む組成物は、治療上有効な量で、本明細書に記載の方法に適したいずれかの従来の剤形で調合してよく、1種以上の担体、希釈剤、および/または賦形剤を含んでよい。このような調合組成物は、本明細書に記載されている方法のための多種多様な従来の経路によって、多種多様な剤形で、既知の手順を用いて投与してよい。カプセル剤および錠剤が、抗生物質の経口投与で広く用いられている実施形態である。一般にはRemington:The Science and Practice of Pharmacy(21st.ed.,2005)を、加えて実施例の実例的な調合組成物を参照されたい。
【0031】
別の実施形態として、細菌感染、原虫感染、または、細菌感染もしくは原虫感染に関連する障害を治療する方法であって、その治療を必要とする被検者に、本明細書に記載されているような結晶形状のCEM−101、または、少なくとも1種の製薬学的に許容可能な担体もしくは賦形剤を更に含むその医薬組成物を治療上有効な量投与する工程を含む方法を説明する。実例的な投与スケジュールとしては、約1,200mg、約1,000mg、約800mg、約400mg、約200mg、または約100mgを含む単一または分割形体による組成物の連日投与が挙げられる。
【0032】
別の実施形態として、細菌感染、原虫感染、または、細菌感染もしくは原虫感染に関連する障害の治療のために、本明細書に記載されているような結晶形状のCEM−101を使用することを説明する。
【0033】
別の実施形態として、細菌感染、原虫感染、または、細菌感染もしくは原虫感染に関連する障害の治療用の医薬の製造のために、本明細書に記載されているような結晶形状のCEM−101を使用することを説明する。
【0034】
さらなる実施形態として、上記の方法または使用は、被検者が哺乳動物、魚、鳥、または爬虫類である方法または使用である。別の実施形態として、被検者が哺乳動物である方法または使用を説明する。別の実施形態として、被検者がヒトである方法または使用を説明する。
【0035】
「治療上有効な量」という用語は、本明細書で使用する場合、組織系、動物、またはヒトにおいて、研究者、獣医、医師、またはその他の臨床医が求めている生物学的反応または医薬反応を引き出す、活性化合物または製剤の量を指し、この反応としては、治療する疾患又は障害の症状の緩和が挙げられる。1つの態様では、治療上有効な量は、いずれかの内科治療に適用できる合理的なベネフィット/リスク比で疾患または疾患の症状を治療または緩和できる量である。しかしながら、適切な医学的判断の範囲内で内科医の診察を受けることによって、本明細書に記載されている化合物および組成物の1日当たりの総使用量を決定してよいことを理解されたい。いずれかの特定の患者に対する具体的な治療上有効な投与レベルは、治療する障害と、その障害の重症度、用いる具体的な化合物の活性、用いる具体的な組成物、患者の年齢、体重、総体的な健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、用いる具体的な化合物の排出速度、治療期間、用いる具体的な化合物と併用または同時投与する薬物、および、研究者、獣医、医師、または通常の技術を有するその他の臨床医に周知の類似の要因を含むさまざまな要因によって決まることになる。
【0036】
後掲の表Bの実施例に概要が示されているスラリー相互変換実験で示されているように、結晶形IおよびIIのスラリーは、周囲温度、準周囲温度、および高温の2−プロパノール(IPA)および4−ブタノン(MEK)中で調製する。2−プロパノールでは、結晶形Iの結晶形IIへの変換は、周囲温度および準周囲温度で溶解性によって引き起こされると思われ、3日にわたるXRPD分析によれば、結晶形IとIIの比率の明らかな変化はあまり観察されなかった。相互変換期間を室温で8日まで延長したところ、微量の結晶形Iしか残らなかった。2−プロパノールでは、高温で結晶形IIのみが得られる。2−ブタノンベースの実験では、明確な溶解性限度はなかったとともに、準周囲温度、周囲温度、および高温において唯一観察された形状として、結晶形IIが得られた。これらの実験、およびDSCの結果に基づくと(ただし理論に縛られることなく)、結晶形IIは、上記の温度範囲にわたり、結晶形Iよりも高い安定性を有し得ると思われる。加えて(ただし理論には縛られることなく)、DSCの結果により、結晶形IおよびIIは単変的関係を有することが示唆されている。
【0037】
後掲の実施例の表C−1に示されているように、結晶形Iは、9.2〜1.2のpH範囲にわたり、結晶形IIよりも水溶解性が高かった。
【0038】
当該化合物が十分に可溶化されているビヒクルで、CEM−101の上記結晶形を投与すると、結晶形Iと結晶形IIの間では、Cmax、Tmax、およびAUCを含む薬物動態パラメーター測定値の差異は観察されない。当該化合物が固体として存在するビヒクルで、CEM101の上記結晶形を投与すると、結晶形Iと結晶形IIの間では、Cmax、Tmax、およびAUCを含む薬物動態パラメーター測定値の統計的差異は見られない。
【0039】
別の実施形態では、CEM−101の非晶性形状よりも高い溶解性を示すCEM−101結晶形、およびこれらの混合物を本明細書で説明する。
【実施例】
【0040】
X線粉末回折(XRPD)のピーク位置
曲線位置敏感型検出器を備え、2θの範囲が120°であるInel XRG−3000という回折計を用いて、XRPDパターンを取った。CuKα線(40kV、30mA)の入射ビームを用いて、リアルタイムで、2θ=0.03°の分解能にてデータを集めた。分析前に、基準物質のシリコン(NIST SRM640c)を分析して、Si 111のピーク位置を確認した。薄肉のガラスキャピラリーにサンプルを入れることによって、分析用にサンプルを準備した。各キャピラリーをゴニオメーターヘッドの上に取り付け、データの取得中、回転させた。モノクロメータースリットは、5mm×160μmに設定した。
【0041】
上記の代わりに、PANalytical X’Pert Proという回折計を用いてXEPRパターンを取った。Optixの長高精度焦点線源を用いてCuKα線の入射ビームを生成した。楕円傾斜多層ミラーを用いて、線源のCuKαX線を試料に通したとともに、検出器に当てた。X’Pert Pro Data Collector(v.2.2b)というソフトウェアを用いてデータの収集および分析を行った。分析の前に、シリコン試料(NIST SRM640c)を分析して、Si 111のピーク位置を確認した。試料を厚さ3μmの薄膜の間に挟み、透過配置で分析し、回転させて配向統計を最適化した。ビームストップとヘリウム雰囲気を用いて、空気散乱によって生じるバックグラウンドを最小限にした。入射および回折ビーム用にソーラースリットを用いて、軸発散を最小限にした。試料から240mmに位置する走査位置敏感型検出器(X’Celerator)を用いて回折パターンを取った。
【0042】
本明細書に示されているデータは、X線回折パターンと、ピークリストが示されている表を含む。収集されるデータの範囲は、計器に左右される場合があることを理解されたい。典型的な環境下では、2θ=最大約30°の範囲内のピークを選択する。ピークは、回折パターン上にラベリングするとともに、表に列挙することができるが、異なる丸めアルゴリズムを用いて、データを収集するのに用いる計器、および/または固有のピーク分解能に応じて、各ピークを2θ=0.1または0.02°の位に丸めてよいことを理解されたい。差異がある場合には、表に列挙されているピーク位置を用いる必要がある。図および表の両方におけるx軸(2θの角度)沿いのピークの場所は、適切なソフトウェア(典型的には、用いる計器に常駐している)を用いて自動的に割り出してよく、上記の基準に基づき、小数点以下、1桁または2桁の有意な数字に丸めてよい。USP discussion of variability in x−ray powder diffraction(United States Pharmacopia,USP32,NF27,Vol.1,pg.392,2009)に概説されている勧告に基づき、ピーク位置のばらつきは本発明では、2θ=±0.1°以内にしてある。本明細書に報告されているいずれかの特定の測定値に関する正確度と精度は、割り出されていない。別個に調製したサンプルに関するさまざまな計器による測定値によって、ばらつきが2θ=±0.1°を超えることがある。面間隔dの列挙については、面間隔dを算出するのに用いる波長は、Cu−Kαの波長とCu−Kα波長の加重平均である1.541874Åであった(Phys.Rev.A56(6)4554−4568(1997))。面間隔dの推定値に関するばらつきは、それぞれの面間隔dで、USPの勧告に基づいて算出し、それぞれのデータ表に示した。
【0043】
複数の回折パターンが得られるときには、粒子統計(PS)および/または好ましい配向(PO)の評価が可能である。単一の回折計で分析した複数のサンプルから得られるXRPDパターン間の再現性によって、その粒子統計が適正であることが示される。複数の回折計から得られるXRPDパターン間の相対強度の一貫性によって、良好な配向統計が示される。あるいは、単結晶構造が入手可能な場合、その単結晶構造に基づき、観察されるXRPDパターンを、算出したXRPDパターンと比較してよい。エリア検出器を用いた2次元散乱パターンを用いて、PS/POを評価することもできる。PSおよびPO双方の影響が無視できるものであることが分かった場合には、そのXRPDパターンは、そのサンプルの粉末平均強度を表すものであり、突出したピークは、「代表的なピーク」として見なしてよい。一般に、代表的なピークを割り出すために収集されるデータが多いほど、それらのピークの分類が、統計的により有意であることは明らかである。
【0044】
CEM−101結晶形I
この材料について、1つのPANalyticalパターンと1つのInelパターンを分析したので、複数のパターンとの比較を通じて、少なくとも部分的に最適化された配向と粒子統計の影響を評価することができた。ピーク位置と強度はパターン間で一貫しており、粒子および配向統計が適正であることが示されている。観察されたピークは図1および表1に示されており、代表的なピークは表2に列挙されている。
【表1】

【表2】
【0045】
CEM−101結晶形II
この材料について、1つのInelパターンを分析し、単結晶データからシミュレートしたパターン(図示なし)との比較を通じて、好ましい配向および粒子統計の影響を評価できた。ピーク位置と強度はパターン間で一貫しており、粒子および配向統計が適正であることが示された。観察されたピークは図2および表3に示されており、代表的なピークは表4に列挙されている。
【表3】
【表4】
【0046】
再結晶化実験
結晶形Iおよび結晶形IIをもたらす再結晶化条件と、非晶性材料、または結晶形Iと結晶形IIとの混合物をもたらす条件と、これらの条件による生成量(回収量)が下記の表A「再結晶化実験結果」に示されている。各単離生成物のX線粉末回折パターンの分析によって、結晶多形を割り出した。表では、「T」は、溶媒の固体質量に対する比率をmL/mg(またはL/g)で表したものであり、DCMはジクロロメタンを意味し、DMFはジメチルホルムアミドを意味し、IPEはイソプロピルエーテルを意味する。
【表5】
【0047】
高温顕微鏡検査およびDSC
CEM−101の結晶形Iは、高温顕微鏡検査によれば、約180℃で溶融を開始し、約200℃で最終溶融し、示差走査熱量測定(DSC)によれば、170℃、および197〜198℃に吸熱イベントを示す。CEM−101の結晶形IIは、高温顕微鏡検査によれば、約215℃で溶融を開始し、約225℃で、単一の吸熱イベントとしてDSCピークを示す。各種量の結晶形Iと結晶形IIとの混合物は、それらの結晶形の比率に応じて、DSCによれば、194〜199℃、および219〜225℃に吸熱イベントを示した。高温顕微鏡検査および/またはDSCを用いて、本明細書に記載されている化合物および組成物中の特定の結晶形の有無を調べられることを理解されたい。
【0048】
相互変換実験
結晶形Iおよび結晶形IIをスラリー化することによる相互変換実験が下記の表Bに示されており、この実験では、開始固体は結晶形Iと結晶形IIとの混合物であり、IPAはイソプロピルアルコール(イソプロパノール)であり、MEKはメチルエチルケトン(2−ブタノン)である。
【表6】
【0049】
水溶解度
CEM−101の濃度をLC/MS−MSピーク面積に対してプロットすることによって得た直線検量線を用いて、CEM−101の結晶形の水溶解度を下記のようにして得た。沈殿するまで試験化合物(乾燥粉末)を0.9%塩類溶液(初期pH6.03)に加え、その混合物を振とうしながら6時間インキュベートする。このインキュベート期間後、サンプルを2回遠心分離し、その化合物の直線検量線を用いて溶解度を推定する。結晶形Iの溶解度は1411μg/mLを示した。
【0050】
CEM−101の濃度をLC/MS−MSピーク面積に対してプロットすることによって得た直線検量線を用いて、CEM−101の結晶形の水溶解度を下記のようにして得た。沈殿するまで、試験化合物(乾燥粉末)を下記のpHの水に加え、その混合物を振とうしながら6時間インキュベートした。このインキュベート期間後、サンプルを2回遠心分離し、その化合物の直線検量線を用いて溶解度を推定した。(媒質:pH9.2、7.4、4、および1.2の水(0.1NのNaOHおよび0.1NのHClを用いて調整)、インキュベーション:振とうしながら26℃で6時間、試験濃度:飽和するまで乾燥粉末を加える、検出:LC/MS−MS。)結果は表C−1に示されている。
【表7】
【0051】
固有溶解比較
上記の2つの結晶形の代表的なバッチの平均固有溶解速度が、結晶形Iの3つのバッチ(1つのバッチについてSDおよび%CVが示されている)と、結晶形IIに関して、表cC−2に示されている。
【表8】
【0052】
CEM−101のバルブ/cマウスにおける薬物動態評価
強制経口投与によって体重(b.w.)1kg当たり20または100mgを単回投与したバルブ/cマウス内で、CEM−101結晶形Iおよび結晶形IIとして特徴付けられるCEM−101のロットの薬物動態を評価した。投与剤は、0.5%(w/v)カルボキシメチルセルロース水溶液のビヒクル中に2.0mg/mLまたは10mg/mLとして、投与体積10mL/kg b.w.で調製した。投与後6時間にわたり、さまざまな時点に血液サンプルを採取した。結果を以下に示す。
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【0053】
薬物動態(PK)比較
5、10、および20mg/kgを単回投与した5匹の雌バルブ/cマウスのグループにおける結晶形Iおよび結晶形IIのさらなる経口投与時薬物動態実験の結果を表Jに示す。
【表15】
【0054】
CEM−101結晶形Iを用いた医薬組成物の例
下記の調合を用いて、1カプセル当たり200mgのCEM−101を含む0号サイズの硬ゼラチンカプセル剤をもたらす。
【表16】
【0055】
下記の調合を用いて、1錠当たり200mg含み、薬物充填率が54%で、標的重量が370mg/1錠である錠剤をもたらす。この製剤は湿式造粒法によって製造し、これらの錠剤は、6kPで圧縮されたものである。
【表17】
【0056】
例 下記の表に示されているように、さまざまな条件下でCEM−101の結晶形Iおよび結晶形IIの安定性を評価した。いずれのケースにおいても、実験全体を通じて、試験材料の色の変化は観察されなかった。いずれのケースにおいても、まず試験材料を一次包装材(HMHDPE/LDPE/LDPEブレンドバッグ内のLLDPEバッグに入れてからヒートシールした)。この一次包装材を二次包装材(HDPEドラム)に入れた。他のすべての不純物はいずれの時点においても1%未満であった。
【表18】

【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
図1
図2