(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術は、加熱コイル毎に負荷の有無を判別し、前記回路は前記負荷検出手段が上方に被加熱物が載置されたことを検出した加熱コイルのみに高周波電流を供給するので、小さい鍋を加熱する場合の加熱効率を改善し、大きな鍋を加熱する場合の温度むらを抑制している。
しかし、複数の加熱コイルが近接して配置され、同時に高周波電流が流されている状態では、隣接する加熱コイル同士の磁気結合の影響により、その加熱コイルの上方に被加熱負荷があるか否かの判別や、被加熱負荷の大きさの判別が困難になり、被調理物を使用者の希望する加熱分布で加熱できない場合がある問題点があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、一の加熱口に対して複数の加熱コイルを有する誘導加熱調理器において、所定の加熱モードが選択された場合の加熱分布を改善したものを得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る誘導加熱調理器は、被加熱物である調理容器を載置する天板と、
前記天板の下方に配設され、一の加熱口に対して近接して配置された複数の加熱コイルと、
前記加熱コイルを有する複数の負荷回路にそれぞれ高周波電力を供給する複数のインバーター回路と、
前記複数のインバーター回路から
前記複数の負荷回路にそれぞれ出力する電力または
前記複数のインバーター回路にそれぞれ入力する電力を検出する電力検出手段と、
前記複数のインバーター回路の出力電流をそれぞれ検出する出力電流検出手段と、
前記電力検出手段および
前記出力電流検出手段の検出結果を用いて負荷検知を行う負荷検出手段と、
前記電力検出手段、
前記出力電流検出手段および
前記負荷検出手段の検出結果に基づき、
前記複数のインバーター回路を駆動制御する制御手段と、
前記制御
手段に加熱の開始・停止および設定火力、加熱モードの指示を入力する操作手段と、を備え、
前記負荷検出手段は、
前記負荷回路毎に単独通電状態として負荷検知を行うものであり、
前記負荷検出手段は、火力設定変更の度に負荷検知を行い、
前記制御手段は、その負荷検知結果に基づいて
前記加熱コイル毎、または
前記インバーター回路毎の電力配分を設定する加熱モードを含むものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、操作手段で所定の加熱モードが選択された場合には、制御手段は、火力設定変更の度に負荷検出手段が加熱コイル毎またはインバーター回路毎に単独通電状態とした負荷検知を行うよう制御し、その負荷検知結果に基づいて加熱コイル毎、またはインバーター回路毎の電力配分を設定するので、近接して配置された複数の加熱コイルに同時に高周波電流が流れた状態で負荷検知がなされず、加熱コイル間の磁気結合の影響を抑えた被加熱負荷の検出を行うことができ、その結果に基づき各加熱コイルへの電力分配を行うので、加熱コイル間の磁気結合の影響を排除して、所望の加熱分布で被加熱物を加熱することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成を示す図である。
図1において、101は天板、102は本体筐体、103は高周波電流を供給する回路、104は操作部、105は表示手段、16は加熱コイルである。
天板101は、鍋などの被加熱物を載置するためのものであり、鍋の載置位置を表示する加熱口106が設けられている。本体筐体102の内部には、回路103、表示手段105、加熱コイル16が収納されており、その上面に天板101を被せ、本体筐体102の内部構造を収納する。
回路103は、後述の
図2で説明する構成を有しており、加熱コイル16に高周波電流を供給する。
操作部104は、ユーザが加熱出力を調整するためのものであり、複数の加熱モードを選択できるものとする。例えば、ホットケーキ等を焼くための均一加熱モードや、加熱分布よりも加熱効率を優先する湯沸し等の加熱モードを選択可能とする。ここで、加熱効率が高いとは、加熱コイルの負荷抵抗値が大きく、少ないコイル電流により大きい加熱出力が得られることを意味する。
表示手段105は、液晶表示デバイス等で構成された画面表示装置で、誘導加熱調理器の動作状態を表示する。
加熱コイル16は、加熱口106ごとに複数個隣接して配置されている。本実施の形態では加熱口106ごとに5個の加熱コイル16が配置されている。
【0010】
図2は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の一加熱口分の回路構成を示す図である。 誘導加熱調理器は、交流電源1に接続されており、交流電源1から供給される電力は直流電源回路2で直流電力に変換される。
直流電源回路2は、交流電力を整流する整流ダイオードブリッジ3と、インバーター回路6a〜6eごとに設けられたリアクトル4a〜4eおよび平滑コンデンサ5a〜5eとにより構成され、後述するように、加熱コイル16a〜16eをそれぞれ有する負荷回路15a〜15eの数に応じて設けられた複数のインバーター回路6a〜6eに直流電力を供給している。
【0011】
各インバーター回路6a〜6eはそれぞれ同一の構成で、それぞれ直流電源回路2の直流母線間に2個直列に接続されたスイッチング素子(上スイッチ)7a〜7e、スイッチング素子(下スイッチ)8a〜8eと、そのスイッチング素子と逆並列に接続されたダイオード9a〜9e、10a〜10eとによって形成され、2個直列のスイッチング素子が駆動回路11a〜11eにより高周波で交互にオン・オフ駆動され、その出力端と直流母線の一端との間に高周波電圧を発生する。このインバーター回路6a〜6eのそれぞれ出力する高周波電圧は、13a〜13eの出力電圧検出手段により検出され、インバーター回路の出力電流は加熱コイルにも流れ、12a〜12eの出力電流検出手段により検出される。また、14a〜14eは、出力電圧検出手段13a〜13e、出力電流検出手段12a〜12eで検出された出力電圧値と出力電流値(加熱コイル電流値)を積算してインバーター回路の出力電力値を生成する出力電力検出手段である。
【0012】
各インバーター回路6a〜6eの出力端と直流電源の低電位側母線との間に負荷回路15a〜15eが接続されている。負荷回路15a〜15eは加熱コイル16a〜16eと共振コンデンサ17a〜17eの直列回路と、前記共振コンデンサ17a〜17eと並列に接続されたクランプダイオード18a〜18eとで構成されている。このクランプダイオード18a〜18eは、加熱コイル16a〜16eと共振コンデンサ17a〜17eの接続点電位を直流電源の低電位側母線電位にクランプする。このクランプダイオード18a〜18eの働きにより、下スイッチ8a〜8eが導通した状態では加熱コイル16a〜16eに流れる電流は転流しない。
【0013】
制御手段19は、各インバーター回路6a〜6eの駆動制御を行うものであり、各インバーター回路6a〜6eの出力電流、出力電力に基づき、駆動回路11a〜11eを制御する。また、制御手段19内に設けられた負荷抵抗検出手段20は、出力電力検出手段14a〜14eで検出された電力と、出力電流検出手段12a〜12eにより検出された電流から、各負荷回路15a〜15eの負荷抵抗値Rを検出するものであり、負荷検出手段を構成する。負荷抵抗値Rは下記式により求める。
R=(出力電力値)/(出力電流値)
2
この負荷抵抗値Rは、各加熱コイル15a〜15eに流れる高周波電流により発生した磁束がその加熱コイル上方に載置された鍋底に鎖交して発生する誘導渦電流による損失(発熱)により増減し、加熱コイルに対向する鍋底が広いほど負荷抵抗値Rは大きくなる。したがって、この負荷抵抗値Rの値により、その加熱コイル上方に載置されている鍋(負荷)の有無や大きさを判断できる。そこで、加熱コイル上方に適正な鍋が載置されている状態と載置されていない状態とを判別できるように閾値R1を設定する。閾値R1は加熱コイルの銅線の巻き数等により異なるが、例えば、数Ω程度(2Ω〜5Ω)に設定する。
【0014】
図3は本実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイルの配置例を示すものである。
図3において、(a)は加熱コイルの配置を示す側面図であり、(b)は加熱コイルの配置を示す平面図である。本実施の形態に係る誘導加熱調理器の一加熱口には図に示すように5個の加熱コイル16a〜16eが近接して配置され、天板101を介して加熱コイル16a〜16eの上方に被加熱物である調理容器の鍋22が載置されている。
【0015】
図4は本実施の形態に係る誘導加熱調理器の制御手段19による加熱制御処理を示すフローチャート、
図5は各加熱コイル上方の鍋(負荷)の有無や大きさを判別する負荷検出手段が実行する負荷検出処理を示すフローチャート、
図6は各加熱コイルから出力する加熱電力の割り当てを行う目標電力分配処理を示すフローチャートである。以下、これらのフローチャートを用いて、本実施の形態1に係る誘導加熱調理器の制御手段における動作について説明する。
【0016】
図4において、まず、制御手段19は、操作部104から火力設定等の加熱要求の指示入力の有無を判断し(ステップ1)、加熱要求があった場合には加熱コイル16a〜16eの上方に加熱する鍋が載置されているか判断するため、負荷検出処理を実行する(ステップ2)。
【0017】
図5に示すように、負荷検出処理では、まず、駆動回路11aを制御して加熱コイル16a用のインバーター回路6aを駆動し、加熱コイル16aを含む負荷回路15aに所定の高周波電圧を印加する(ステップ2−1−1)。このとき、他の加熱コイル16b〜16eをそれぞれ含む負荷回路15b〜15eには高周波電圧が印加されないように制御する。そして、出力電流検出手段12a、出力電力検出手段14aにより、加熱コイル16aの高周波電流と、インバーター回路6aから出力される高周波電力を検出し(ステップ2−1−2)、その電力値Wと出力電流値Iから負荷抵抗検出手段20が負荷抵抗値R(=W/I
2 )を算出する(ステップ2−1−3)。そして、その負荷抵抗値Rにより加熱コイル16aの上方に適正な鍋が載置されているか否かを判別する(ステップ2−1−4)。負荷抵抗値Rが閾値R1未満の場合には、適正負荷なしと判断して目標電力分配用の抵抗値データをRa=0とする(ステップ2−1−5)。また、負荷抵抗値RがR1以上の場合には負荷状態を負荷ありとするとともに目標電力分配用の負荷抵抗値データをRa=Rとする(ステップ2−1−6)。以上で、加熱コイル16aに係るインバーター回路負荷検出処理(ステップ2−1)を終了する。
【0018】
以下、同様にして、加熱コイル16b〜16eについて、その加熱コイルの上方に適正な鍋が載置されているか否かを判別するとともに、載置されている鍋(負荷)22の大きさに関連する目標電力分配用の負荷抵抗値データを取得するため、インバーター回路負荷検出処理を行う(ステップ2−2〜2−5)。このときも、各加熱コイル毎に、その加熱コイルを含む負荷回路のみに高周波電圧を印加し、他の加熱コイルを含む負荷回路には高周波電圧が印加されないように制御する。
【0019】
図4に戻り、負荷検出処理(ステップ2)終了後、上方に適正負荷が載置されていた加熱コイルの有無を判断し(ステップ3)、いずれの加熱コイルの上方にも適正負荷が無かった場合にはステップ1へ戻る。いずれかの加熱コイルの上方に適正負荷があった場合には、各加熱コイル16a〜16eの目標電力分配処理を行う(ステップ4)。
【0020】
図6に示すように、目標電力分配処理は、操作部104で設定された全体の加熱出力Wallを加熱コイル16a〜16eごとの目標電力に各加熱コイルの負荷抵抗値データに基づいて分配する。
【0021】
まず、加熱コイル16aについて(ステップ4−1)、適性負荷があったかを判定し(ステップ4−1−1)、適性負荷がなかった場合には目標電力を0とする(ステップ4−1−2)。適正負荷があった場合には、加熱コイル16aの目標電力Waを全体の設定加熱電力Wallと負荷検知手段で検出した各負荷抵抗値Ra〜Reから、
Wa=Wall×Ra/(Ra+Rb+Rc+Rd+Re)
と設定する(ステップ4−1−3)。
【0022】
同様に、加熱コイル16b〜16eについて、それぞれ目標電力の設定処理を行う(ステップ4−2〜4−5)。なお、各加熱コイルの目標電力は、
Wb=Wall×Rb/(Ra+Rb+Rc+Rd+Re)・・・(ステップ4−2−3) Wc=Wall×Rc/(Ra+Rb+Rc+Rd+Re)・・・(ステップ4−3−3) Wd=Wall×Rd/(Ra+Rb+Rc+Rd+Re)・・・(ステップ4−4−3) We=Wall×Re/(Ra+Rb+Rc+Rd+Re)・・・(ステップ4−5−3)のように、各加熱コイルの負荷抵抗値Rに比例した値に設定される。このように設定すると、各コイル加熱コイル16b〜16eが同じコイルであれば各コイルの加熱密度[(加熱コイルの出力)/(加熱コイルの鍋に対向する部分の面積)]を同一にすることができる。
【0023】
図4に戻り、各加熱コイルの目標電力の設定(ステップ4)が完了すると、上方に適正負荷が載置されていると判断された加熱コイルのインバーター回路について駆動回路を制御してインバーター出力を開始し(ステップ5)、出力電流検出手段12a〜12eおよび出力電力検出手段14a〜14eにより各インバーター回路6a〜6eの出力電流および電力を検出する(ステップ6)。そして、加熱コイル16a〜16e毎にインバーター回路6a〜6eの出力制御処理を行う。
【0024】
加熱コイル16aの出力制御処理(ステップ7)では、まず、インバーター回路6aを駆動中か判断し(ステップ7−1)、駆動中でなければ処理を終了し、駆動中であれば加熱コイル16aを流れるインバーター回路6aの出力電流が過大か否か判断し(ステップ7−2)、過大でなければ加熱コイル16aの目標電力Waと検出電力Wを比較する(ステップ7−3)。その結果、加熱コイル16aの検出電力の方が目標電力より小さい場合にはインバーター回路出力を増大させる制御を行い(ステップ7−4)、検出電力と目標電力が略同等であればインバーター回路出力をそのまま維持する。ステップ7−2で加熱コイル16aの電流が過大であると判断した場合や、ステップ7−3で検出電力Wの方が目標電力Waより大きいと判断した場合には、インバーター回路出力を減少させる制御を行う(ステップ7−5)。
他の加熱コイル16b〜16eについても、加熱コイル16aと同様にインバーター回路6b〜6eを制御する(ステップ8〜11)。
【0025】
次いで、操作部104からの加熱停止要求が無いか判断し(ステップ12)、停止要求があった場合には駆動回路11a〜11eを制御して全インバーター回路6a〜6eの駆動を停止し(ステップ13)、ステップ1へ戻る。
ステップ12で加熱停止要求がなかった場合には、設定火力変更要求の有無を判断し(ステップ14)、火力変更要求が無ければそのままステップ6へ戻る。一方、火力変更要求があった場合には操作部104で選択されている加熱モードを判定し(ステップ15)、選択されていた加熱モードが加熱分布制御を優先する加熱モード(例えば均一加熱モード(大径鍋の鍋底全体を均一に加熱するモード、鍋外周部の加熱を高めるため外加熱コイルの加熱密度を高める、鍋外周部重視の加熱モード)等)の場合には、駆動回路11a〜11eを制御して全インバーター回路6a〜6eの駆動を停止し(ステップ16)、ステップ2の負荷検出手段に戻って加熱コイル毎の負荷検出処理を行い、各加熱コイル上方の被加熱物(鍋)の大きさに関連する負荷抵抗値Ra〜Reを検出する。その際のインバーター回路の駆動信号例を
図7に示す。
【0026】
ステップ15で選択されていた加熱モードが加熱分布より加熱効率や操作性を優先する加熱モードであった場合には、ステップ4に戻って、加熱開始時に検出した各加熱コイルの負荷抵抗値に基づき火力の配分を行う。
【0027】
以上のように本実施の形態では、一の加熱口に対して複数の加熱コイルが隣接して配置され、上方に被加熱物(鍋)が載置されている加熱コイルのみに高周波電流を流す誘導加熱調理器において、設定火力変更毎に複数加熱コイルへの同時通電を停止し、加熱コイル毎の負荷検出手段を行う、均一加熱モード等の所定の加熱モードを含むので、この加熱モードでは、随時、加熱コイル間の磁気結合の影響を排除した加熱コイル毎の被加熱物の有無・大きさを検出し、所望の加熱分布となるよう電力分配して制御するとともに、その他の加熱モードでは、火力変更時等に負荷検出手段のため加熱出力や加熱効率を低下させることないので、加熱モードに応じた調理の仕上がりを確実に実現しつつ、操作性・加熱効率の低下を極力抑えた誘導加熱調理器を得ることができる。
【0028】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の制御手段における負荷検出手段が実行する負荷検出処理を示すフローチャートであり、
図9は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の駆動信号例である。実施の形態1に係る誘導加熱調理器の制御手段の負荷検出手段が実行する負荷検出処理は、隣接して配置された加熱コイル間の磁気結合の影響を回避するために、加熱コイルを有する負荷回路一つ一つに順次高周波電流を流して当該加熱コイル上方に載置された被加熱物(鍋)を検出することとしたが、本実施の形態2は、負荷検出処理時に、隣接しない加熱コイルを有する負荷回路の組については同時に高周波電流を通電することにより、負荷検知時間の短縮を図ったものである。なお、本実施の形態2に係る誘導加熱調理器は実施の形態1と同様に、回路構成は
図2、加熱コイルの配置は
図3、制御手段19の加熱制御処理は
図4のフローチャートであるものとする。
【0029】
本実施の形態2における負荷検出処理は、
図8において、加熱コイル16aの負荷検出処理(ステップ2−1)を行うべく、駆動回路11aを制御してインバーター回路6aを駆動し、所定の高周波出力を行い(ステップ2−1−1)、出力電流検出手段12aおよび電力検出手段14aにより加熱コイル16aに流れる高周波電流および高周波電力を検出する(ステップ2−1−2)。そして、加熱コイル16aについて検出した出力電流と電力から負荷抵抗値R(a)を算出し(ステップ2−1−3)、加熱コイル16aの上方の被加熱負荷(鍋)の有無を判定すべく、負荷抵抗値の閾値R1と比較する(ステップ2−1−4)。その結果、負荷抵抗値R(a)が閾値R1より小さかった場合には加熱コイル16aの上方には被加熱負荷無し、と判断し、加熱電力分配用の抵抗値:Ra=0とする(ステップ2−1−5)。一方、負荷抵抗値R(a)が閾値R1以上であった場合には、加熱コイル16aの上方には被加熱物あり、と判断し、加熱電力分配用の抵抗値:Ra=R(a)とする(ステップ2−1−6)。
【0030】
次に、隣接していない加熱コイル16bと加熱コイル16cの負荷検出処理(ステップ2−6)を行うべく、駆動回路11b、11cを制御してインバーター回路6b、6cを駆動し、所定の高周波出力を行い(ステップ2−6−1)、出力電流検出手段12b、12cおよび電力検出手段14b、14cにより加熱コイル16b、16cに流れる高周波電流および高周波電力を検出する(ステップ2−6−2)。そして、加熱コイル16b、16cについて検出した出力電流と電力から負荷抵抗値R(b)、R(c)を算出し(ステップ2−6−3)、加熱コイル16bの上方の被加熱負荷(鍋)の有無を判定すべく、負荷抵抗値の閾値R1と比較する(ステップ2−6−4)。その結果、負荷抵抗値R(b)が閾値R1より小さかった場合には加熱コイル16bの上方には被加熱負荷無し、と判断し、加熱電力分配用の抵抗値:Rb=0とする(ステップ2−6−5)。一方、負荷抵抗値R(b)が閾値R1以上であった場合には、加熱コイル16bの上方には被加熱物あり、と判断し、加熱電力分配用の抵抗値:Rb=R(b)とする(ステップ2−6−6)。
【0031】
次いで、加熱コイル16cの上方の被加熱負荷(鍋)の有無を判定すべく、負荷抵抗値の閾値R1と比較する(ステップ2−6−7)。その結果、負荷抵抗値R(c)が閾値R1より小さかった場合には加熱コイル16cの上方には被加熱負荷無し、と判断し、加熱電力分配用の抵抗値:Rc=0とする(ステップ2−6−8)。一方、負荷抵抗値R(c)が閾値R1以上であった場合には、加熱コイル16cの上方には被加熱物あり、と判断し、加熱電力分配用の抵抗値:Rc=R(c)とする(ステップ2−6−9)。
【0032】
次いで、上記隣接していない加熱コイル16b、16cの負荷検出処理(ステップ2−6)と同様に、隣接していない加熱コイル16dと加熱コイル16eの負荷検出処理(ステップ2−7)を行うべく、駆動回路11d、11eを制御してインバーター回路6d、6eを駆動し、所定の高周波出力を行い(ステップ2−7−1、図示せず、ステップ2−6−1に対応。)、出力電流検出手段12d、12eおよび電力検出手段14d、14eにより加熱コイル16dと加熱コイル16eに流れる高周波電流および高周波電力を検出する(ステップ2−7−2、図示せず、ステップ2−6−2に対応。)。そして、加熱コイル16d、16eについて検出した出力電流と電力から負荷抵抗値R(d)、R(e)を算出し(ステップ2−7−3、図示せず、ステップ2−6−3に対応。)、加熱コイル16dの上方の被加熱負荷(鍋)の有無を判定すべく、負荷抵抗値の閾値R1と比較する(ステップ2−7−4、図示せず、ステップ2−6−4に対応。)。その結果、負荷抵抗値R(d)が閾値R1より小さかった場合には加熱コイル16dの上方には被加熱負荷無し、と判断し、加熱電力分配用の抵抗値:Rd=0とする(ステップ2−7−5、図示せず、ステップ2−6−5に対応。)。一方、負荷抵抗値R(d)が閾値R1以上であった場合には、加熱コイル16dの上方には被加熱物あり、と判断し、加熱電力分配用の抵抗値:Rd=R(d)とする(ステップ2−7−6、図示せず、ステップ2−6−7に対応。)。
【0033】
次いで、加熱コイル16eの上方の被加熱負荷(鍋)の有無を判定すべく、負荷抵抗値の閾値R1と比較する(ステップ2−7−7、図示せず、ステップ2−6−7に対応。)。その結果、負荷抵抗値R(e)が閾値R1より小さかった場合には加熱コイル16eの上方には被加熱負荷無し、と判断し、加熱電力分配用の抵抗値:Re=0とする(ステップ2−7−8、図示せず、ステップ2−6−8に対応。)。一方、負荷抵抗値R(e)が閾値R1以上であった場合には、加熱コイル16eの上方には被加熱物あり、と判断し、加熱電力分配用の抵抗値:Re=R(e)とする(ステップ2−7−9、図示せず。)。
【0034】
上記負荷検出処理(ステップ2−1、2−6、2−7)におけるインバーター回路6a〜6eの駆動信号例を
図9に示す。インバーター回路6b、6cを同時に駆動し、また、次にインバーター回路6d、6eを同時に駆動して負荷検出処理を行うので、各インバーター回路を順次単独で通電して負荷検出処理を行う実施の形態1の場合と比較し、負荷検出処理時間を短縮することができる。
【0035】
以上のように本実施の形態2では、一の加熱口に対して複数の加熱コイルが隣接して配置され、上方に被加熱物(鍋)が載置されている加熱コイルのみに高周波電流を流す誘導加熱調理器において、設定火力変更毎に複数加熱コイルへの同時通電を停止し、磁気結合の大きい、隣接する加熱コイルを有する負荷回路毎に単独に通電して負荷検知を行い、磁気結合の小さい、隣接しない加熱コイル有する負荷回路毎に負荷検知を行う、均一加熱モード等の加熱モードを含むので、この加熱モードでは、加熱コイル間の磁気結合の影響を排除した加熱コイル毎の被加熱物の有無・大きさの検出を行いつつ、負荷検出処理期間を短縮した誘導加熱調理器を得ることができる。
【0036】
実施の形態3.
図10は、実施の形態3に係る誘導加熱調理器の制御手段における加熱制御処理を示すフローチャートである。
図4と同一の処理については同一のステップ番号を付し、説明を省略する。なお、本実施の形態3に係る誘導加熱調理器は、実施の形態1と同様に、回路構成は
図2であり、加熱コイルの配置は
図3であるものとする。
【0037】
図10のステップ14おいて設定火力変更要求の有無を判断し、火力変更要求が無かった場合に操作部104で選択されている加熱モードを判定し(ステップ17)、加熱分布制御を優先する加熱モード(例えば均一加熱モード等)が選択されていた場合には、前回の負荷検出処理実施後、所定時間経過したか判断し(ステップ18)、所定時間経過していた場合にはステップ16へ移行して全インバーター回路6a〜6eの駆動を停止した後、ステップ2の負荷検出手段に戻って加熱コイル毎の負荷検出処理を行う。ステップ17で選択されていた加熱モードが加熱分布より加熱効率や操作性を優先する加熱モードであった場合や、ステップ18で所定時間経過前であった場合には、ステップ6に戻って各加熱コイルへの出力制御を行う。
【0038】
以上のように本実施の形態3では、一の加熱口に対して複数の加熱コイルが隣接して配置され、上方に被加熱物(鍋)が載置されている加熱コイルのみに高周波電流を流す誘導加熱調理器において、設定火力変更毎に複数加熱コイルへの同時通電を停止し、加熱コイル毎の負荷検出手段を行う、均一加熱モード等の所定の加熱モードを含み、この加熱モードでは、さらに所定時間間隔ごとに複数加熱コイルへの同時通電を停止し、加熱コイル毎の負荷検出手段を行うことにより、所定の加熱モードで加熱中、設定火力の変更指示がなくとも、使用者が鍋振りや鍋の位置をずらしたような場合にも、一加熱コイル間の磁気結合の影響を排除した加熱コイル毎の被加熱物の有無・大きさを検出し、所望の加熱分布となるよう電力分配して制御し、その他の加熱モードでは、火力変更時等に負荷検出手段のため加熱出力や加熱効率を低下させることないので、加熱モードに応じた調理の仕上がりを被加熱物の載置状態の変化によらず確実に実現しつつ、操作性・加熱効率の低下を極力抑えた誘導加熱調理器を得ることができる。
【0039】
なお、上記実施の形態に係る誘導加熱調理器の直流電源回路2は、整流ダイオードブリッジが1つであり、各インバーター回路の出力電力を検出する出力電力検出手段を備えたものであったが、例えば
図11に示すように、インバーター回路毎に整流ダイオードブリッジを個別に有する直流電源回路2a〜2eを備え、その入力電流検出手段23a〜23eと入力電圧検出手段24a〜24eによりインバーター回路の入力電力値を検出する回路構成の誘導加熱調理器であってもよい。
【0040】
なお、上記実施の形態に係る誘導加熱調理器の回路構成(
図2)は、インバーター回路6の出力電力検出手段14を有するものであったが、
図11に示すように、インバーター回路6毎に直流電源回路2を独立に備え、その直流電源回路への入力電流および入力電圧を検出する入力電流検出手段23と入力電圧検出手段24を有する回路構成であってもよい。入力電流検出手段23および入力電圧検出手段24で検出される入力電流値および入力電圧値を積算することにより、インバーター回路6に入力される入力電力に相当する値が算出できるので、入力電流検出手段23と入力電圧検出手段24が入力電力検出手段を構成する。
【0041】
また、上記実施の形態に係る誘導加熱調理器の
図2および
図11に示した回路構成は、一つの加熱コイルを有する負荷回路に、一つのインバーター回路が対応しているものであったが、
図12に示すように、一の負荷回路に加熱コイルを複数有する回路構成例であってもよい。これらの加熱コイルは、隣接しない加熱コイルの組とすることが望ましい。このような回路構成であっても、各インバーター回路の負荷回路の抵抗値を、所定の加熱モードの場合に各インバーター回路を個別に駆動して被加熱物の有無を判別することとすれば、インバーター回路毎に正確に被加熱物の有無や大きさを判別できる。
【0042】
また、上記実施の形態では、一加熱口に対する加熱コイルの数は5個のものを示したが、この加熱コイルの数は5個に限らず、例えば
図13に示すように7個や9個等であってもよい。
【0043】
なお、上記した3つの実施の形態は、単独で実施するたけでなく、それぞれ組み合わせて実施してもよい。例えば、実施の形態3を実施の形態2と組み合わせて実施してもよく、同様の効果を奏する。