(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
体液を吸収する吸収体を内包する吸収性本体と、この吸収性本体の外面側に一体的に設けられる外装体とを備え、外装体における腹側部と背側部とが、その両側端の接合部において接合されることにより、ウエスト開口部及び左右一対の脚周り部が形成される吸収性物品であって、
体液との接触により収縮する吸水収縮性を有し、長手方向に沿って前記吸収性本体の前記腹側部から前記背側部にわたって配設される長手方向吸水収縮性材と、前記吸収性本体の前記腹側部及び前記背側部に幅方向に沿って配設される幅方向吸水収縮性材と、を備え、
前記吸収性本体が、前記吸収体と前記外装体との間に前記長手方向吸水収縮性材及び前記幅方向吸水収縮性材を介在させた状態で、前記外装体に全面的に固着されていることを特徴とする吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の紙おむつでは、紙おむつがズレ下がったときに吸収性本体が上方に持ち上がる程度の収縮力を付与するために、弾性部材をかなり伸張した状態で添設することとなる。この場合、装着前の紙おむつは弾性部材の収縮力により萎んだ状態となっているため、装着が困難となる。また、着用者が紙おむつを装着中に排尿すると、尿の重みにより吸収性本体が垂れ下がることとなるが、特許文献1のように弾性部材の伸張に伴う収縮力だけで対応するのは容易でない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、排尿により人体と吸収性本体との密着状態が悪くなり、フィット感が損なわれるのを効果的に防止できる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、体液を吸収する吸収体を内包する吸収性本体と、この吸収性本体の外面側に一体的に設けられる外装体とを備え、外装体における腹側部と背側部とが、その両側端の接合部において接合されることにより、ウエスト開口部及び左右一対の脚周り部が形成される吸収性物品であって、
体液との接触により収縮する吸水収縮性を有
し、長手方向に沿って前記吸収性本体の前記腹側部から前記背側部にわたって配設され
る長手方向吸水収縮性材と、前記吸収性本体の前記腹側部及び前記背側部に幅方向に沿って配設される幅方向吸水収縮性材と、を備え、
前記吸収性本体が、前記吸収体と前記外装体との間に前記
長手方向吸水収縮性材
及び前記幅方向吸水収縮性材を介在させた状態で、前記外装体に全面的に固着されていることを特徴とする。
【0008】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の吸収性物品において、前記吸収体が
、下層吸収体と、この下層吸収体の上側に配設される上層吸収体からなる二層構造を有し、
前記
長手方向吸水収縮性材が、前記腹側部又は前記背側部に一端を固定した状態で前記上層吸収体の長手方向に配設され、この
長手方向吸水収縮性材が収縮することにより前記上層吸収体が長手方向に移動することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、体液を吸収する吸収体を内包する吸収性本体と、この吸収性本体の外面側に一体的に設けられる外装体とを備え、外装体における腹側部と背側部とが、その両側端の接合部において接合されることにより、ウエスト開口部及び左右一対の脚周り部が形成される吸収性物品であって、
体液との接触により収縮する吸水収縮性を有し、長手方向に沿って前記吸収性本体の前記腹側部から前記背側部にわたって配設される長手方向吸水収縮性材を備え、
前記吸収性本体が、前記吸収体と前記外装体との間に前記長手方向吸水収縮性材を介在させた状態で、前記外装体に全面的に固着され、
前記吸収体が、下層吸収体と、この下層吸収体の上側に配設される上層吸収体からなる二層構造を有し、
前記長手方向吸水収縮性材が、前記腹側部又は前記背側部に一端を固定した状態で前記上層吸収体の長手方向に配設され、この長手方向吸水収縮性材が収縮することにより前記上層吸収体が長手方向に移動することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項
2又は3に記載の吸収性物品において、2つの前記上層吸収体が、前記腹側部と前記背側部の間に形成された股下部に対応する領域に長手方向に近接した状態で並設され、それぞれに配設された前記
長手方向吸水収縮性材が収縮することにより両者間が離間されることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか一項に記載の吸収性物品において、前記
長手方向吸水収縮性材が、弾性伸縮性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、排尿により人体と吸収性本体との密着状態が悪くなり、フィット感が損なわれるのを効果的に防止できる吸収性物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、発明に係る吸収性物品の一例として、パンツ型の使い捨て紙おむつ(以下、紙おむつ)について説明する。なお、以下の説明では、本実施形態における紙おむつを展開した状態において、装着時に人体(着用者)の腹側に位置する側を前、背側に位置する側を後、着用者と接触する側を上、着用者と接触する側の反対側を下とし、前後方向と上下方向との双方向に直行する方向を左右方向とする。
【0014】
図1は第1実施形態に係る紙おむつの製品状態を示す外観図で、
図2は平面展開図である。
図3は吸収性本体を上側から見た平面図であり、
図4は
図2のA−A線における断面図である。
図1〜4に示すように、紙おむつ1は、体液を吸収する吸収体13(吸収体コア131)を内包する吸収性本体10と、この吸収性本体10の外面側に一体的に設けられる外装体20とを備えて構成されている。紙おむつ1においては、吸収性本体10の外面(バックシート12の下面)が、例えばホットメルト型の接着剤で外装体20の内面(着用時に着用者と接触する側の面)に接着されることにより、吸収性本体10と外装体20が一体化されている。そして、外装体20と吸収性本体10を長手方向(前後方向)略中央で折り曲げるように湾曲させ、外装体20の前側(腹側部20F:着用者の腹部を覆う部分)と後側(背側部20B:着用者の背部を覆う部分)の両側端部を重ね合わせて接合することにより、腹側部F、背側部B、股下部M、ウエスト開口部W、及び左右一対の脚周り部L、Lを有する紙おむつ1が形成される。
【0015】
外装体20は、
図2に示すように、展開状態において長手方向略中央が括れた外形を有している。外装体20は、当該外装体20を形造る外層シート21と、外層シート21の内側(肌当接面側)の腹側部F及び背側部Bに貼着される胴周りシート22を備えている。外層シート21は、
図4に示すように、上層不織布21aと下層不織布21bを貼着した構成を有している。
【0016】
外装体20の腹側部20Fと背側部20Bにおいて、ウエスト開口部Wを形成する端縁近傍領域には、幅方向に沿った複数本のウエスト弾性部材23、23・・が前後方向に所定の間隔で並設されている。また、外装体20の腹側部20Fと背側部20Bにおいて、ウエスト弾性部材23より股下部20M側には、幅方向に沿った複数本の腰周り弾性部材24、24・・が前後方向に所定の間隔で並設されている。なお、ウエスト弾性部材23と腰周り弾性部材24との境界は必ずしも明確でなくてよい。
紙おむつ1の装着時には、ウエスト弾性部材23の伸縮力により着用者のウエスト周りが締め付けられ、腰周り弾性部材24の伸縮力により着用者の腰周り部分が締め付けられる。これにより、紙おむつ1の腹側部F及び背側部Bの全面が着用者に密着する。
【0017】
また、図示を省略するが、外装体20の腹側部20Fから股下部20Mにわたる領域及び背側部20Bから股下部20Mにわたる領域には、略U字形状を有する複数本の脚周り弾性部材が、前後方向に所定の間隔で並設されている。具体的には、脚周り弾性部材(図示略)は、外装体20の腹側部20F又は背側部20Bの一側端から脚周り開口部Lを形成する端縁に沿って股下部20M側に延び、股下部20Mの幅方向略中央を迂回するようにして腹側部20F又は背側部20Bの他側端に到達するように配設されている。紙おむつ1の装着時には、脚周り弾性部材(図示略)の伸縮力により着用者の脚周り及び股下が締め付けられるので、紙おむつ1の股下部Mが着用者に密着する。
【0018】
上述したウエスト弾性部材23、腰周り弾性部材24及び脚周り弾性部材(図示略)は、外力の付加又は除去に応じて変形する弾性伸縮材で構成される。弾性伸縮材としては、例えば、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。
ウエスト弾性部材23、腰周り弾性部材24又は脚周り弾性部材(図示略)を糸状の弾性伸縮材(いわゆる糸ゴム)で構成する場合は、太さ620dtex以下のものを利用することが好ましい。なお、ウエスト弾性部材23、腰周り弾性部材24又は脚周り弾性部材(図示略)として、糸状の弾性伸縮材の代わりに、ある程度の幅を有するテープ状の弾性伸縮部材を用いるようにしてもよい。
【0019】
吸収性本体10は、
図2、3に示すように、略矩形状の外形を有し、当該吸収性本体10よりも幅広に形成された外装体20の股下部20Mに、腹側部20Fから背側部20Bにわたって配設されている。吸収性本体10は、装着時に着用者との接触面側(上側)となるトップシート11、装着時に着用者との接触面と反対側(下側)となるバックシート12、トップシート11とバックシート12との間に介装される吸収体13、吸収体13の幅方向両側に長手方向(前後方向)に沿って設けられる一対のギャザーシート14、14等を備えて構成される。
【0020】
トップシート11は、尿などの体液を速やかに透過させる透液性を有するシートであり、吸収体13の上側を覆うように配設されている。透液性を有するシートとしては、例えば、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等の糸を平織り等したネット状のシート素材、多数の透孔を形成した多孔性シート材、ポリエチレンやポリプロピレンなどのフィルムシート材、透液性を有する織布、不織布等がある。特に、トップシート11には不織布が適しており、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラなどの再生繊維、又は綿等の天然繊維を繊維素材として、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって加工した不織布を用いることができる。
【0021】
バックシート12は、体液が紙おむつ1の外部へ染み出したり、漏れ出したりするのを防ぐ不透液性(遮水性)を有するシートであり、吸収体13の下側を覆うように配設されている。不透液性を有するシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等からなるシート材がある。
また、バックシート12は、ムレ防止の観点から透湿性を有することが好ましい。遮水性と透湿性とを具備するシート材としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶媒混練してシートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シート材が好適に用いられる。また、その他にも、ポリエチレン等からなる遮水性を有するフィルムシートに、透湿性を有する不織布を積層したラミネート不織布を用いることができる。
バックシート12としては、排便や尿などの褐色が視認しにくいように不透明なものを用いることが好ましい。例えば、オレフィン樹脂やプラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を添加してフィルム化することにより、バックシート12を不透明化することができる。
【0022】
ギャザーシート14、14は、体液が横漏れするのを防止するためのシート(例えば不織布)であり、トップシート11側において、吸収体13の幅方向両側に長手方向(前後方向)に沿って配設されている。ギャザーシート14には、トップシート11と同様の素材を用いることができるが、特に、ムレを防止するために秤量を抑えて通気性に優れた不織布を用いることが好ましい。さらに、ギャザーシート14には、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止し且つ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水材などをコーティングした撥水処理不織布を用いてもよい。
【0023】
ギャザーシート14は、
図4に示すように、幅方向に二つ折りされてその基端部にてバックシート12の側縁部を挟みこみ、折り合わされた面が、例えば、ホットメルトや、ヒートシール、超音波シール等により固着されている。また、折り返しによって二重にされたギャザーシート14の基端部の上面側には、トップシート11の側縁部が接着されている。
ギャザーシート14の折り返し部位には、長手方向(前後方向)に沿って複数本の立体ギャザー用弾性部材15が配設されている。この立体ギャザー用弾性部材15には、外装体20のウエスト弾性部材23等に用いられる弾性伸縮材と同様の素材を用いることができる。立体ギャザー用弾性部材15を糸状の弾性伸縮材(いわゆる糸ゴム)で構成する場合は、太さ300〜1200dtex以下のものを、150〜350%伸張させた状態で配設するのが好ましい。なお、立体ギャザー用弾性部材15として、糸状の弾性伸縮材の代わりに、ある程度の幅を有するテープ状の弾性伸縮材を用いるようにしてもよい。
ギャザーシート14の折り返し部位は、ギャザーシート14が起立できるように自由端となっており、吸収性本体10の内側に向けて折り畳まれている。ギャザーシート14が折り畳み部を基端に起立することにより、着用者の体型に合わせて伸縮自在に変形可能な一対の立体ギャザーが形成される。
【0024】
図3、4に示すように、吸収体13は、例えば、平面視略砂時計形状を有するように成形されており、その幅寸法は着用者の身体に当たる際にゴワ付き感を与えないサイズとなっている。吸収体13は、綿やパルプなどの吸収性素材に高吸収性ポリマーを混入してなる吸収体コア131が、透液性のクレープ紙132により覆われて構成されている。なお、吸収体13においては、クレープ紙132に代えて、透液性の不織布や多孔性シート材で吸収体コア131を覆うようにしてもよい。
吸収体コア131を構成する高吸収性ポリマーとしては、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸及びその塩類、アクリル酸塩重合体架橋物、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、ポリオキシエチレン架橋物、カルボキシメチルセルロース架橋物、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド等の水膨欄性ポリマーを部分架橋したもの、或いはイソブチレンとマレイン酸との共重合体等が好適に用いられる。
【0025】
本実施形態では、体液との接触により収縮する吸水収縮性材からなる長手方向収縮部材16が、吸収体13(クレープ紙132)とバックシート12の間に長手方向に沿って3本配設されている。長手方向収縮部材16は、例えばホットメルト型の接着剤によりクレープ紙132に対して全長にわたって接着されている。
なお、長手方向収縮部材16を、クレープ紙132とバックシート12の間ではなく、バックシート12の下面(バックシート12と外装体20の間)に配設するようにしてもよい。
【0026】
長手方向収縮部材16には、ポリビニルアルコール系長繊維を複数本引き揃えてなる収縮糸や、セルロース系短繊維を紡績し、これをカルボキシメチル化した後に強撚してなる収縮糸を好適に使用できる。具体的には、特公平6−102068号公報、特許第2656245号公報に開示されているものや、市販のものとしては、株式会社ニチビの商品名「ソルブロン」を用いることができ、太さは500〜1600dtexのものが好適である。吸水収縮性材としては、横断面円形や四角形の糸状のものや、又はシート状、フィルム状若しくは網状のものなど、あらゆる形状のものを用いることができる。吸水収縮性材は1本あたり10〜20N以上の体液吸収時収縮力を有しているのが好ましい。
【0027】
このように、第1実施形態の紙おむつ1では、体液との接触により収縮する吸水収縮性材(長手方向収縮部材)16が、長手方向に沿って吸収性本体10の腹側部10Fから背側部10Bにわたって配設されている。また、吸収性本体10が、吸収体13と外装体20との間に吸水収縮性材(長手方向収縮部材)16を介在させた状態で、外装体20に全面的に固着されている。
【0028】
紙おむつ1において、トップシート11、クレープ紙132を透過した尿等の体液は、吸収体コア131に浸透して吸収、保持される。また、吸収体コア131から染み出した体液は、クレープ紙132を透過して長手方向収縮部材16に到達する。
このとき、長手方向収縮部材16は、吸水収縮性を有しているので、長手方向に収縮する。そして、長手方向収縮部材16が収縮すると、外装体20に全面的に接着された吸収性本体10が長手方向に圧縮されるので、紙おむつ1の股下部Mが上方に持ち上がる。すなわち、排尿後の吸収体13の重みにより紙おむつ1がズレ落ちることはなく、また吸収体13が凹凸形状に変形するので、着用者との密着状態(フィット性)も維持される。
したがって、紙おむつ1によれば、排尿により人体と吸収性本体との密着状態が悪くなり、フィット感が損なわれるのを効果的に防止することができる。また、吸収体13が長手方向中央に寄ってくるので、排尿口に位置する吸収体13が新たに更新されることとなり、吸収体13の吸収性能も保持される。
【0029】
[変形例1]
図5は、変形例1に係る吸収性本体10を上側から見た平面展開図である。
変形例1の吸収性本体10では、吸収性本体10の腹側部10F及び背側部10Bのそれぞれに、幅方向に沿って複数本の幅方向収縮部材17F、17Bが配設されている。この幅方向収縮部材17F、17Bは、長手方向収縮部材16と同様に、体液との接触により収縮する吸水収縮性材で構成されている。幅方向収縮部材17F、17Bは、例えばホットメルト型の接着剤によりクレープ紙132に対して全長にわたって接着されている。すなわち、変形例1の吸収性本体10では、腹側部10F及び背側部10Bにおいて、吸水収縮性材が格子状に配設されている。
【0030】
変形例1に係る紙おむつ1によれば、吸収性本体10の腹側部10F又は背側部10Bに浸透した体液は、長手方向及び幅方向に効率よく拡散されるので、吸収体13全体が有効利用される。また、幅方向収縮部材17F、17Bが収縮することにより、着用者の胴周りがが締め付けられるので、紙おむつ1のズレ落ちを効果的に防止することができる。
【0031】
[変形例2]
図6は、変形例2に係る吸収性本体10を上側から見た平面展開図である。
変形例2の吸収性本体10では、変形例1の吸収性本体10に加えて、吸収性本体10の股下部10Mに、幅方向に沿って複数本の幅方向収縮部材17Mが配設されている。この幅方向収縮部材17Mも、長手方向収縮部材16と同様に、体液との接触により収縮する吸水収縮性材で構成され、例えばホットメルト型の接着剤によりクレープ紙132に対して全長にわたって接着されている。すなわち、変形例2の吸収性本体10では、腹側部10F、背側部10B、及び股下部10Mにおいて、吸水収縮性材が格子状に配設されている。
【0032】
変形例2に係る紙おむつ1によれば、吸収性本体10の股下部10Mに浸透した体液が、長手方向及び幅方向に効率よく拡散されるので、吸収体13全体がいっそう有効利用される。また、幅方向収縮部材17Mが収縮することにより、吸収性本体10の側部に配設された長手方向収縮部材16にも体液が接触しやすくなるため、排尿後の重みによる紙おむつ1のズレ落ちを瞬時に解消することができる。この場合、紙おむつ1の股下部Mが過度に圧縮されて着用者に違和感を与えることがないように、幅方向収縮部材17Mによる収縮力を適宜調整するのが望ましい。
【0033】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態に係る吸収性本体30を上側から見た平面展開図である。
図8は
図7のB−B線における断面図で、
図9は
図7のC−C線における断面図である。なお、第1実施形態の吸収性本体10と同一又は対応する構成要素については、先頭数字を3に置き換えた符号を付している。
図7〜9に示すように、第2実施形態では、吸収体33の吸収体コア331が、下層吸収体331Aと、この下層吸収体331Aの上側に配設される上層吸収体331Bからなる二層構造を有している。
【0034】
下層吸収体331Aは、吸収性本体30の長手方向略全域に配設されている。第2実施形態の吸収性本体30においても、第1実施形態の吸収性本体10と同様に、吸水収縮性を有する長手方向収縮部材36が、吸収体33(クレープ紙332)とバックシート32の間に長手方向に沿って3本配設されている。
【0035】
上層吸収体331Bは、2つの吸収体で構成されており、吸収性本体30の長手方向略中央、すなわち股下部30Mに対応する領域に長手方向に近接した状態で並設されている。以下において、吸収性本体30の腹側部30F側に配設された上層吸収体331Bを第1上層吸収体、背側部30B側に配設された上層吸収体331Bを第2上層吸収体と称する。
【0036】
第1上層吸収体331Bには、吸水収縮性を有する2本の長手方向収縮部材38が、腹側部30Fに一端を固定した状態で長手方向に沿って配設されている。具体的には、長手方向収縮部材38は、第1上層吸収体331Bに対して巻回された状態で接着され、屈曲部が第1上層吸収体331Bの側壁に当接し、他端部が吸収性本体30の腹側部30Fに固着されている。第2上層吸収体331Bにも同様に、吸水収縮性を有する2本の長手方向収縮部材38が、背側部30Bに一端を固定した状態で長手方向に沿って配設されている。つまり、第1上層吸収体331B、第2上層吸収体331Bは、長手方向収縮部材38,39の収縮に伴い、長手方向に移動可能となっている。
【0037】
このように、第2実施形態では、吸収体33(吸収体コア331)が、吸収性本体30の長手方向略全域に配設される下層吸収体331Aと、この下層吸収体331Aの上側に配設される上層吸収体331Bからなる二層構造を有している。そして、吸水収縮性材(長手方向収縮部材)38、39が、腹側部30F又は背側部30Bに一端を固定した状態で上層吸収体331Bの長手方向に配設され、この吸水収縮性材(長手方向収縮部材)38、39が収縮することにより上層吸収体331Bが長手方向に移動するようになっている。
具体的には、2つの上層吸収体(第1上層吸収体、第2上層吸収体)331B、331Bが、腹側部30Fと背側部30Bの間に形成された股下部30Mに対応する領域に長手方向に近接した状態で並設され、それぞれに配設された吸水収縮性材(長手方向収縮部材)38、39が収縮することにより両者間が離間されるようになっている。
【0038】
図10(a)に示すように、第2実施形態の紙おむつ1において、トップシート11、クレープ紙132を透過した尿等の体液は、上層吸収体331B、331Bに浸透して吸収、保持される。このとき、第1上層吸収体331Bに体液が浸透すると、長手方向収縮部材38が長手方向に収縮することにより、第1上層吸収体331Bが徐々に腹側部30F側に移動する。同様に、第2上層吸収体331Bに体液が浸透すると、長手方向収縮部材39が長手方向に収縮することにより、第2上層吸収体331Bが徐々に背側部30B側に移動する。つまり、排尿時には、第1上層吸収体331Bと第2上層吸収体331Bとの間が徐々に離間される。
【0039】
その後の排尿時には、
図10(b)に示すように、体液が直接下層吸収体331Bに浸透して吸収、保持されることとなる。そして、下層吸収体331Aから染み出した体液は、クレープ紙332を透過して長手方向収縮部材36に到達する。このとき、長手方向収縮部材36は、吸水収縮性を有しているので、長手方向に収縮する。そして、長手方向収縮部材36が収縮すると、外装体20に全面的に接着された吸収性本体30が長手方向に圧縮されるので、紙おむつ1の股下部Mが上方に持ち上げられる。すなわち、排尿後の吸収体33の重みにより紙おむつ1がズレ落ちることはなく、また吸収体33が凹凸形状に変形するので、着用者との密着状態(フィット性)も維持される。
【0040】
したがって、紙おむつ1によれば、排尿により人体と吸収性本体との密着状態が悪くなり、フィット感が損なわれるのを効果的に防止することができる。また、吸収体13が長手方向中央に寄ってくるので、排尿口に位置する吸収体13が新たに更新されることとなり、吸収体13の吸収性能も保持される。
さらに、吸収体33(吸収体コア331)を下層吸収体331Aと上層吸収体331Bの二層構造とし、体液の浸透に伴い上層吸収体331Bが移動して下層吸収体331Aが排尿口側に露呈されるようになっているので、吸収体33の吸収性能を向上することができる。
【0041】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、第1実施形態において、吸収性本体10の全面に吸水収縮性材を格子状に配設するようにしてもよい。これにより、吸収体13に浸透した体液が効率よく拡散されるので、吸収体13全体を有効利用することができる。
また、第2実施形態において、第1実施形態の変形例1、2を適用して吸水収縮性材を部分的に格子状に配設するようにしてもよいし、吸水収縮性材を吸収性本体30の全面に格子状に配設するようにしてもよい。
また、第1、第2実施形態において、吸水収縮性材を格子状に配設する場合、斜め方向に配設するようにしてもよい。
【0042】
また、長手方向収縮部材16、36等を構成する吸水収縮性材として、弾性伸縮性を有する素材を適用することで、着用者とのフィット性を向上することができる。
さらに、第1、第2実施形態で示した吸水収縮性材の配置態様(本数、間隔)は一例であり、全体として紙おむつ1のズレ落ちを防止しうる収縮力が発揮されるように、適宜に設計される。
【0043】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。