【実施例】
【0015】
(実施例1)
図1を参照し、半導体装置10について説明する。半導体装置10は、SOI基板16の半導体層14に複数の不純物領域を有するダイオードである。半導体装置10は横型のダイオードであり、絶縁層12を介して支持層2の表面に設けられている半導体層14と、半導体層14の表面に設けられている電極18,26を備えている。支持層2の厚みt2は、およそ1〜400μmである。支持層2の材料として、シリコン単結晶が用いられている。支持層2には、不純物としてホウ素(B)又はリン(P)が用いられている。支持層2の不純物濃度は厚み方向に一定であり、およそ1×10
12cm
−3以上である。支持層2は、接地電位に固定されている。半導体層14の厚みt14は、およそ0.1〜30μmである。半導体層14の材料として、シリコン単結晶が用いられている。半導体層14には、不純物としてリン(P)が用いられている。半導体層14の不純物濃度は厚み方向に一定であり、およそ1×10
12〜1×10
15cm
−3である。半導体層14の一部に、カソード領域24とアノード領域20とドリフト領域23が形成されている。カソード領域24とアノード領域20ドリフト領域23が、特許請求の範囲の半導体素子構造に相当する。
【0016】
カソード領域24の不純物としてリンが用いられており、そのピーク不純物濃度はおよそ1×10
20cm
−3である。アノード領域20の不純物としてボロン(B)が用いられており、そのピーク不純物濃度はおよそ1×10
17cm
−3以上である。耐圧750Vで半導体層14の不純物濃度がおよそ5×10
14cm
−3の場合、カソード領域24とアノード領域20の間の距離L14は、およそ60μmである。カソード領域24とアノード領域20の間の半導体層14が、ドリフト領域23に相当する。カソード電極26が、カソード領域24の表面に電気的に接続している。カソード電極26の材料としては、アルミニウム(Al)、Al−Si、Al−Si−Ca等を使用できる。カソード電極26がSiを含む場合、TiN等のバリヤメタルを含んで形成する。アノード電極18が、アノード領域20の表面に電気的に接続している。アノード電極18の材料は、カソード電極26と同じである。
【0017】
絶縁層12は、膜厚が薄い第1部分8と、膜厚が厚い第2部分6を有している。耐圧750Vを実現する場合、第1部分8の厚みt8は1μmであり、第2部分6の厚みt6は3μmである。厚みt8は、第1部分8における、支持層2と半導体層14の距離に相当する。厚みt6は、第2部分6における、支持層2と半導体層14の距離に相当する。第2部分6には空洞4が形成されている。第2部分6の厚みt6は、空洞4と絶縁膜を含めた厚みである。空洞4は、第1部分8の絶縁膜よりも上方に形成されている。
図2に示すように、第1部分8は第2部分6で囲まれている。その結果、第1部分8と第2部分6によって、窪み22が形成されている。窪み22内には、半導体層14の半導体侵入部14aが浸入している。空洞4は、半導体浸入部14aを囲っており、その一部が半導体浸入部14aのz方向の中点よりも上方に位置している。
【0018】
カソード領域24とアノード領域20を結ぶX方向において、複数の窪み22が一列に並んで形成されており、窪み列22aを形成している。X方向において、隣り合う窪み22間の距離L22は2μmである。複数の窪み列22aが、Y方向に間隔を置いて形成されている。Y方向において、隣り合う窪み列22a間の距離L22aは2μmである。各窪み22は、隣り合う窪み列22aを形成する窪み22から分離されている。また、各窪み22は、隣り合う窪み列22aを形成する窪み22からY方向にずれた位置に形成されている。これにより、各窪み22を分離させながら、窪み列22a間の距離を短くすることができる。その結果、単位面積あたりの窪み22の数を多くすることができる。
【0019】
上記したように、支持層2は、不純物を1×10
12cm
−3以上含んでいるとともに接地されている。そのため、半導体層14内の正孔が絶縁層12側に移動しやすく、窪み22内に蓄積されやすい。窪み22内に正孔が蓄積されると、窪み22内の半導体層14に反転層が形成される。この反転層によって、半導体層14内の電界密度が小さくなり、半導体装置10の耐圧を向上させることができる。絶縁層12の半導体層14側に窪み22を形成することにより、半導体装置10を高耐圧にすることができる。
【0020】
典型的には、絶縁膜の熱膨張係数は、シリコンの熱膨張係数より大きい。半導体装置が動作中に発熱したり、周囲温度により半導体装置が加熱されると、シリコンと絶縁膜の熱膨張係数の差によって、絶縁層に囲まれた範囲のシリコンに大きな圧縮力が加わり、シリコンに亀裂等が生じることがある。半導体装置10では、絶縁層12は、熱膨張するときに、空洞4側に膨張する。空洞4が半導体浸入部14aを囲っているので、絶縁層12から半導体浸入部14aに大きな力が加わることが抑制され、半導体層14に亀裂が発生することが抑制される。その結果、半導体装置10の特性が低下することを抑制することができる。
【0021】
半導体装置10では、第2部分6の上面(半導体装置10の表面側の面)と側面(溝22の側壁)の間が曲面で結ばれている。換言すると、第2部分6の上面と側面の間に角部が存在しない。そのため、半導体層14に局所的な力が加わることが抑制され、半導体層14に亀裂が発生しにくい。また、上記したように、空洞4の一部が、半導体浸入部14aのz方向の中点よりも上方に位置している。そのため、半導体浸入部14aと半導体浸入部14a以外の半導体層14との境界部分、すなわち、半導体層14が第2部分6の上面と側面の間に接する部分において、絶縁膜12から半導体層14に大きな力が加わることを抑制することができる。なお、第2部分6の上面と側面の間に角部が存在する形態に比べ、第2部分6の上面と側面の間を曲面で結ぶことにより、耐圧が高くなることが実験で確認されている。
【0022】
半導体装置10の製造方法を説明する。まず、
図3に示すように、第1絶縁膜8と半導体層14が積層している積層基板50を用意する。積層基板50は、半導体層14の表面に公知の方法で第1絶縁膜8を形成してもよいし、市販の積層基板であってもよい。
【0023】
次に、
図4に示すように、第1絶縁膜8の表面から半導体層14の内部まで至るトレンチ30を形成する(トレンチ形成工程)。トレンチ形成工程では、トレンチ30が第1絶縁膜8を一巡するようにエッチングを行う。エッチングされなかった第1絶縁膜8が、絶縁層12の第1部分8となる(
図1を参照)。なお、トレンチ形成工程では、まずSi−RIE技術を利用して異方性エッチングを行い、所定の深さまでトレンチ30を形成する。この段階で、トレンチ30の形状がほぼ完成する。この段階では、トレンチ30の側面と底面の間に角部が存在する。その後、例えば、プラズマエッチング技術,ウェットエッチング技術を利用して等方性エッチングを行い、トレンチ30の側面と底面の間に凸状の曲面を形成する。なお、等方性エッチングは、トレンチ30の側面と底面の間の角部を滑らかにすることが目的である。そのため、等方性エッチングは、トレンチ30のサイズが大幅に変わる前に終了させる。
【0024】
次に、
図5に示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を利用して、トレンチ30内に空洞4を残しながら第2絶縁膜6を充填する(第2絶縁膜形成工程)。第2絶縁膜6は、絶縁層12の第2部分6となる(
図1を参照)。この工程により、第1部分8と第2部分で構成される窪み22が形成される。第2絶縁膜6の材料は第1絶縁膜8の材料と同じである。そのため、第1絶縁膜8と第2絶縁膜6を併せて、絶縁層12と評価することができる。第2絶縁膜形成填工程では、成膜条件を調整することにより、意図的にステップカバレッジ(段差被膜性)を悪化させる。これにより、トレンチ30内に第2絶縁膜6が存在しない部分(空洞4)を形成することができる。第2絶縁膜形成填工程では、トレンチ30の深さ方向において、第2絶縁膜6がトレンチ30の底部から第1絶縁膜8までの距離の半分を充填するよりも前に、空洞4を形成する。なお、トレンチ30内に空洞4を1つだけ形成してもよいし、複数の空洞4を形成してもよい。
【0025】
次に、
図6に示すように、絶縁層12(第1絶縁膜8と第2絶縁膜6)上に支持層2を接合する(接合工程)。接合工程では、ウェハ結合法を利用して、支持層2と絶縁層12を接合する。その後、半導体層14の一部の範囲にリンをイオン注入し、リンをイオン注入した範囲とは別の範囲にボロンをイオン注入する。カソード領域24とアノード領域20が形成される。なお、リンをイオン注入した後に、別の範囲にボロンをイオン注入してもよい。その後、カソード領域24の表面にカソード電極26を形成し、アノード領域20の表面にアノード電極18を形成することにより、半導体装置10が完成する。
【0026】
(実施例2)
図7,8を参照し、半導体装置110について説明する。以下の説明では、半導体装置10と相違する部分だけを説明する。半導体装置110では、空洞4内にシリカビーズ32が充填されている。シリカビーズ32は絶縁体であり、空洞4の下面4aと上面4bに接している。シリカビーズ32が下面4aと上面4bに接しているので、第2部分6が自重で潰れることがない。第2部分6の形状が維持され、窪み22を確実に形成することができる。空洞4内にシリカビーズ32を充填することにより、空洞4内の隙間を確保しながら第2部分6の剛性を高くすることができる。なお、シリカビーズに代えて、熱酸化膜等の絶縁材料を充填してもよい。また、空洞4内に絶縁性の液体材料を充填してもよい。液体材料が空洞4の下面4aと上面4bに接している場合、空洞4内に隙間が存在しなくなるが、この場合でも第2部分6の柔軟性を維持しつつ、第2部分6の形状を維持することができる。よって、空洞4内に絶縁性の液体材料が充填されていても、半導体装置10を高耐圧にしつつ、半導体層14に亀裂が発生することを抑制することができる。
【0027】
(実施例3)
図9を参照し、半導体装置210について説明する。以下の説明では、半導体装置10と相違する部分だけ説明する。半導体装置210では、第2部分6の空洞204が支持層2に接している。すなわち、支持層2の一部が絶縁層12に接していない。空洞204が第1部分8を一巡しているので、第1部分8が熱膨張したときの力を緩和することができる。
【0028】
空洞204が支持層2に接していると、製造方法の選択幅が広がる。以下に、半導体装置210の製造方法について説明する。トレンチ形成工程までの製造方法は半導体装置10と同じなので説明を省略する(
図3及び
図4を参照)。
図10に示すように、半導体装置210では、第2絶縁膜6がトレンチ30内を完全に充填する前に第2絶縁膜形成工程を停止する。その後の工程は半導体装置10と同じである。半導体装置210では、意図的にステップカバレッジを悪化させる必要がないので、空洞204のサイズを調整しやすい。なお、空洞204が積層基板50の表面に露出しているので、空洞204内にシリカビーズ等と充填しやすい。また、トレンチ30内に第2絶縁膜を充填するのではなく、トレンチ30の側面と底面を熱酸化させることにより第2絶縁膜を形成することもできる。
【0029】
なお、本発明の技術はダイオード以外の横型の半導体装置に利用してもよい。本発明の技術を利用すれば、例えば、横型MOS,横型IGBT等の耐圧を向上させながら、その特性が低下することを抑制することができる。
【0030】
絶縁層に形成する窪みの形状が矩形であってもよい。窪みの形状を矩形にすれば、平面視したときの窪みの面積を広く確保することができる。窪み内に正孔が蓄積されやすくなり、半導体装置の耐圧をより高くすることができる。
【0031】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。