特許第5711524号(P5711524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5711524
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】ロータの保守装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20150409BHJP
【FI】
   H02K15/02 A
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-282721(P2010-282721)
(22)【出願日】2010年12月20日
(65)【公開番号】特開2012-135075(P2012-135075A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2013年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】391037814
【氏名又は名称】株式会社東京エネシス
(74)【代理人】
【識別番号】100105681
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 長生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−248474(JP,A)
【文献】 特開平02−079752(JP,A)
【文献】 特開2003−208227(JP,A)
【文献】 実開平06−071249(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機または電動機に縦型に配置したロータを抜き出し、抜き出されたロータを横転させ、一対の支持架台上に回転自在に載置してロータの点検・修理等を行うロータ保守装置であって、前記一対の支持架台の一方の支持架台には、該支持架台上を前後方向に移動可能なロータ保持手段を有し、該ロータ保持手段が、抜き出されたロータのシャフトの一端部を保持するロータホルダーと該ロータホルダーを上下方向に回動可能に支持するボールジョイントを備え、前記ボールジョイントは、前記ロータホルダーの底部に支柱を介して設けられたボールと、前記支持架台上を前後方向に移動可能に配置され、前記ボールを回転自在に保持するハウジングとから構成され、前記一対の支持架台の各々には、載置したロータを回転可能とするように、ロータのシャフトを支持するシャフトローラ台を有することを特徴とするロータ保守装置。
【請求項2】
前記ハウジングが、他方の支持架台に対向する部位に前記支柱が通過できるスリットが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のロータ保守装置。
【請求項3】
前記ハウジングが、保持されたボールの抜けを防止するハウジングカバーを有し、該ハウジングカバーが、前記支柱を通過させるスリットを有し、該スリットが前記ハウジングに設けたスリットと連接していることを特徴とする請求項2に記載のロータ保守装置。
【請求項4】
前記ロータホルダーが、ロータシャフトの端部を収容する凹部を有する有底の筒状部材で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のロータ保守装置。
【請求項5】
前記ロータホルダーが、前記凹部に収容したロータシャフトの端部の抜けを防止するロータホルダーカバーを有することを特徴とする請求項4に記載のロータ保守装置。
【請求項6】
前記ロータホルダーカバーが、上端にフランジを有する筒状部体を複数に分割した割型からなり、該割型を前記ロータホルダーの上部側面に嵌合させて、前記凹部に収容したロータシャフトの端部の抜けを防止することを特徴とする請求項5に記載のロータ保守装置。
【請求項7】
前記シャフトローラ台は、回転面を対向させた一対のローラを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のロータ保守装置。
【請求項8】
前記ロータ保持手段が、前記一方の支持架台に設けたスライド軸により前後方向に移動させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のロータ保守装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所等に用いられる発電機または電動機から、縦型に配置されたロータを抜き出し、抜き出したロータを横転させ、一対の支持架台上に載置して点検・補修等を行うロータ保守装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所等で用いられている発電機や電動機は、所定の期間毎の点検が義務付けられ、その点検時、あるいは、発電機や電動機に異常が生じた場合、発電機や電動機からロータを抜き出し、一対の支持架台にロータシャフトの端部をそれぞれ載置して回動可能に保持し、あるいは、クレーンにより水平に吊り下げ、ロータの異常の箇所の有無を点検し、異常があれば補修等を行っている。
【0003】
発電機や電動機はロータを縦型に配置したものや横型に配置したものがあり、点検等を行う際に、ロータを横型に配置した発電機や電動機では、ロータを水平に抜き出せばよいことから、この抜き出しを機械的に行うことが提案され、このようなものとして、特許文献1(特開2004−72891号公報)では、発電機の側部上方に仮設作業床を設け、門型クレーンで発電機を仮設作業台と同じ位置となるようにリフトアップし、仮設作業床に設けたロータ引抜具の牽引装置をロータの端部に取り付け、牽引装置に連結したワイヤロープを駆動して、ロータを発電機から抜き出し、抜き出したロータをクレーンにより吊り上げ、点検、補修等に作業を行うようにしている。
【0004】
しかしながら、ロータを縦型に配置した電動機や発電機では、クレーンで引き抜いたロータは、横転させた後、ロータシャフトの両端部を一対の支持架台上に夫々載置しなければならず、特に、発電所で用いている発電機では、ロータも数十トンという高重量であるため、これを機械的手段で横転させようとすると、横転装置の大型化が避けられず、しかも、点検、補修の頻度も低く、このような横転装置を用いると高コストになるため、クレーンの操作により横転させているのが現状である。
【0005】
このクレーン操作による横転は、クレーンにより発電機から抜き出されたロータを、そのままクレーンに吊り下げた状態で一対の支持架台の一方の支持架台にロータシャフトの一方の端部を載せた後、その端部を支点として、クレーン操作により、他方の支持架台に向けて横転させ、ロータシャフトの端部をそれぞれ一対の支持架台上に載置しているが、発電所等で用いる発電機や電動機のロータは高重量であり、しかも、横転時に一方の支持架台上に載置されているロータシャフトの端部は自由端となっているため、位置決めが難しく、横転中のロータの重心移動に伴って、ロータの端部も支持台上を前後左右に移動し易く、また、回動もし易いため、支持架台から外れる危険もあることから、クレーンでロータを横転させて支持架台上に正確に載置するためには、熟練したクレーン操作を必要となるとともに、作業に長時間を要するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑みてなされたものであり、熟練したクレーン操作を必要とせずに、ロータを縦型に配置した発電機や電動機から抜き出されたロータを、安全且つ確実に横転させてロータ支持架台に短時間で載置できるロータ保守装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、発電機や電動機から縦型に配置したロータをクレーン操作により抜き出し、横転させて一対の支持架台にロータのシャフトの夫々の端部を載置させる際に、一方の支持架台に、クレーンに吊り下げられたロータの下端部を支持するロータ保持手段を設け、この保持手段にボールジョイント設けると、ロータの端部が保持手段に固定された状態でロータを他方の支持架台に向けて安全に横転させることができるとともに、ボールジョイントが軸受としても機能するため、ロータ保持手段の取り外しをしなくとも、支持架台に載置されたロータが回動可能になり点検、補修ができること、さらに、保持手段を前後方向に移動させると、他方の支持架台に向けて正確にロータを横転できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、上記課題は以下の本発明の(1)〜(8)によって解決される。
(1)発電機または電動機に縦型に配置したロータを抜き出し、抜き出されたロータを横転させ、一対の支持架台上に回転自在に載置してロータの点検・修理等を行うロータ保守装置であって、前記一対の支持架台の一方の支持架台には、該支持架台上を前後方向に移動可能なロータ保持手段を有し、該ロータ保持手段が、抜き出されたロータのシャフトの一端部を保持するロータホルダーと該ロータホルダーを上下方向に回動可能に支持するボールジョイントを備え、前記ボールジョイントは、前記ロータホルダーの底部に支柱を介して設けられたボールと、前記支持架台上を前後方向に移動可能に配置され、前記ボールを回転自在に保持するハウジングとから構成され、前記一対の支持架台の各々には、載置したロータを回転可能とするように、ロータのシャフトを支持するシャフトローラ台を有することを特徴とするロータ保守装置。
(2)前記ハウジングが、他方の支持架台に対向する部位に前記支柱が通過できるスリットが設けられていることを特徴とする前記第(1)項に記載のロータ保守装置。
(3)前記ハウジングが、保持されたボールの抜けを防止するハウジングカバーを有し、該ハウジングカバーが、前記支柱を通過させるスリットを有し、該スリットが前記ハウジングに設けたスリットと連通していることを特徴とする前記第(2)項に記載のロータ保守装置。
(4)前記ロータホルダーが、ロータシャフトの端部を収容する凹部を有する有底の筒状部材で形成されていることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載のロータ保守装置。
(5)前記ロータホルダーが、前記凹部に収容したロータシャフトの端部の抜けを防止するロータホルダーカバーを有することを特徴とする前記第(4)項に記載のロータ保守装置。
(6)前記ロータホルダーカバーが、上端内面にフランジを有する筒状部体を複数に分割した割型からなり、該割型を前記ロータホルダーの上部側面に嵌合させて、前記凹部に収容したロータシャフトの抜けを防止することを特徴とする前記第(5)項に記載のロータ保守装置。
(7)前記シャフトローラ台は、回転面を対向させた一対のローラを有することを特徴とする前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載のロータ保守装置。
(8)前記ロータ保持手段が、前記一方の支持架台に設けたスライド軸により前後方向に移動することを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項のいずれかに記載のロータ保守装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、一方の支持架台に、ロータシャフトの一端部を保持するロータホルダーと、ロータホルダーを上下方向に回動可能に支持するボールジョイントを備えたロータ保持手段を設けているので、ロータの横転に際し、ロータシャフトの端部が保持手段に固定された状態でロータを他方の支持架台に向けて横転させることができるため、横転操作が安全確実に行うことができる。また、ロータ保持手段は前後方向に移動可能であるため、ロータの横転時にロータ保持手段を移動させることにより、クレーンにより吊り下げられ、シャフト端部をロータ保持手段で固定されているロータは、この移動にともなって、他方の支持架台に向けて傾くため、横転方向を正確にでき、以後のクレーン操作による横転作業を容易に行うことができる。さらに、ボールジョイントはロータホルダーの軸受としても機能するので、一対の支持架台に載置されたロータは、ロータホルダーを取り外さなくとも回転できるので、ロータの点検、補修を容易に行うことができる。
【0010】
また、ボールジョイントを、ロータホルダーの底部に支柱を介して設けられたボールと、ボールを回転自在に保持するハウジングとから構成し、ハウジングに、他方の支持架台と対向する部位に前記支柱が通過できるスリットを設けると、ロータ横転時に、このスリットがボールに設けた支柱のガイドとなるため、横転方向をより正確にできる。
【0011】
さらに、ハウジングに配置するハウジングカバーを、ボールに設けた支柱を通過させるスリットを設け、ハウジングに設けたスリットと連通させると、ボールに設けた支柱の障害にならず、ハウジングへの取り付を容易に行うことができる。
【0012】
また、ロータホルダーを、ロータシャフトの端部を収容する凹部を有する有底の筒状部材で形成し、ロータホルダーカバーを、上端内面にフランジを有する筒状部体を複数に分割した割型で構成すると、この割型をロータホルダーカバーの上部側面に嵌合させることにより、ロータシャフトの抜け止めとなるため、ロータホルダーへの取り付けを容易に行うことができる。
【0013】
また、シャフトローラ台に設けるローラを、回転面を対向させた一対のローラとすると、一対に支持架台に載置されたロータは、この一対のローラ間で支持されるので、ロータの回動が容易になるとともに、左右方向の移動が阻止されるので、安全且つ迅速に点検等の作業を行うことができる。
【0014】
ロータ保持手段前後方向の移動を、一方の支持架台に設けたスライド軸の進退で行えば、ロータ保持手段の移動が容易であり、その移動位置も正確に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ロータ保守装置の一部を断面で表した正面図であり、ロータを載置した状態を示したものである。
図2】ロータ保守装置の上面図であり、ロータを載置した状態を示したものである。
図3】ロータ保守装置の要部を示し、その一部を断面で表した正面図であり、ロータを載置した状態を示したものである。
図4図3において、その一部を断面で表した側面図である。
図5】ロータホルダーを示し、(a)は、ロータホルダーカバーの正面断面図、(b)は、ロータホルダーの正面断面図である。
図6】ボールジョイントのボールの正面図である。
図7】ボールジョイントのハウジングを示し、(a)は、ハウジングカバーの上面図、(b)は、ハウジングカバーの正面断面図、(c)は、ハウジング本体の正面断面図、(d)は、ハウジング本体の側面断面図である。
図8】シャフトローラ台を示し、(a)は、正面図、(b)は、上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のロータ保守装置は、横転させたロータを載置する一対の支持架台を備え、一方の支持架台に、支持架台上を前後方向に移動可能なロータ保持手段を設け、ロータ保持手段を、抜き出されたロータのシャフトの一端部を保持するロータホルダーとロータホルダーの下部に設けられ、ロータホルダーを上下方向に回動可能に支持するボールジョイントとで構成し、さらに、一対の支持架台の各々には、ロータのシャフトを支持するシャフトローラ台を備えることにより、発電機または電動機から縦型に配置したロータをクレーンにより抜き出し、横転させて一対の支持架台に載置する際に、安全、確実にロータを横転させてロータ支持架台上に載置できるとともに、載置したロータを回転自在に保持できるものである。
【0017】
以下、図面の実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。
図1、2に示すように、本発明のロータ保守装置(100)は、横転させたロータ(R)のシャフト(R1)の両端を夫々支持する一対の支持架台(110)、(120)を有し、これらはH型鋼を用いて直方体状に形成されている。
【0018】
また、一方の支持架台(110)(以下、負荷側支持架台という。)には、ロータホルダー(140)とボールジョイント(150)とからなるロータ保持手段(130)が設けられ、負荷側支持架台(110)と他方の支持架台(120)(以下、反負荷側支持架台という。)には、載置されたロータ(R)を回転可能とするように、ロータシャフト(R1)の両端部を支持するシャフトローラ台(190)が設けられている。
【0019】
図3、4に示すように、負荷側支持架台(110)には、ロータ保持手段(130)を前後方向に移動可能に支持する一対のリニアレール(111)、(112)が両側に設けられ、中央には、ロータ保持手段(130)を前後方向に移動させるスライド軸(113)が設けられている。また、スライド軸(113)には、螺条が形成され、一端部にハンドル(114)が設けられ、ハンドル(114)の回転によりスライド軸(113)を進退させるようにしている。
【0020】
ロータ保持手段(130)は、ロータホルダー(140)とボールジョイント(150)を有し、ロータ(R)は、ロータシャフト(R1)の端部にリング(r)を装着して大径部(R1a)とし、このリング(r)とロータホルダー(140)とでカップリングを形成することで、ロータホルダー(140)にロータ(R)を保持させるようにしている。
【0021】
また、ボールジョイント(150)は、ロータホルダー(140)の底部に設けられたボール(160)と、このボール(160)を支持するケーシング(170)とから構成され、ケーシング(170)は、ボール(160)を支持するケーシング本体(171)と板状のベース(172)とを有し、ケーシング本体(171)の底部をベース(172)にねじ等により螺着して一体化している。
【0022】
ベース(172)の底部には、負荷側支持架台(110)に設けた一対のリニアレール(111)、(112)に嵌合する一対のガイド部材(173)が設けられ、ロータ保持手段(130)を、左右方向への動きを規制しながら、前後方向へ摺動させるようにしている。また、負荷側支持架台(110)に設けたスライド軸(113)の他端は、ベース(172)に取り付けられており、ハンドル(114)の回転操作によりスライド軸(113)を進退させて、ロータ保持手段(130)が負荷側支持架台(110)上を前後方向に移動するようにしている。
【0023】
図5に示すように、ロータホルダー(140)は、有底の円筒状部材からなり、その凹部(141)にロータシャフト(R1)の端部の大径部(R1a)を収容するようにしている。また、ロータホルダー(140)の底部には、円筒状のボール保持部(142)が形成され、その内面には螺条が形成されている。
【0024】
また、ロータホルダー(140)の上部には、ロータシャフト(R1)の大径部(R1a)を凹部(141)に収容した際に、大径部(R1a)の抜けを防止するロータホルダーカバー(143)を設けている。ロータホルダーカバー(143)は、一対の半円筒状部材(144)、(145)からなる割型であり、これらの上端内面にはフランジ(146)、(147)が設けられ、一対の半円筒状部材(144)、(145)をロータホルダー(140)に装着した際に、フランジ(146)、(147)により、ロータシャフト(R1)よりも大径で、シャフト端部の大径部(R1a)よりも小径の開口(148)が形成され、半円筒状部材(144)、(145)をロータホルダー(140)の上部に対向するように装着し、ねじによりロータホルダー(140)の側面に固定することにより、ロータホルダー(140)の凹部(141)に収容したロータ(R)の大径部(R1a)を係止して、ロータ(R)の抜けを防止するようにしている。
【0025】
図6に示すように、ボールジョイント(150)を構成するボール(160)は、円柱状の支柱(161)を有し、円柱状の支柱(161)の上部(161a)の外面には螺条が形成され、ロータホルダー(140)に設けた円筒状のボール保持部(142)に、支柱(161)の上部(161a)を螺着することにより、ロータホルダー(140)とボール(160)とを着脱可能に一体化しするようにしている。
【0026】
図7に示すように、ケーシング本体(171)は、円柱状部材からなり、その内部には、ロータホルダー(140)に設けたボール(160)を収容する凹部(174)が形成されている。この凹部(174)は、横断面が円形の空間部(175)とその下部に連接した円錐台状の空間部(176)とで構成され、凹部(174)に収容されたボール(160)との接触面積を小さくして、ボール(160)の回動をスムースにするとともに、凹部(174)の底部には、リン青銅からなる底板(177)が嵌め込まれ、ボール(160)との当たり面の摺動性を向上させ、ボール(160)のかじりを防止している。
【0027】
また、ケーシング本体(171)の側面には、反負荷側支持架台(120)に対向する部位に、ケーシング本体(171)の凹部(174)と連通するスリット(178)が形成され、ロータ(R)を横転させる際、ボール(160)に設けた支柱(161)が上下方向に回動できるようにするとともに、ロータ(R)を横転させた際のガイドとなって、反負荷側支持架台(120)に向けて正確に横転させることができるようにしている。
【0028】
さらに、ケーシング本体(171)の上部には、ボール(160)をケーシング本体(171)の凹部(174)に収容した際、ボール(160)の抜けを防止するケーシングカバー(180)が設けられている。
【0029】
ケーシングカバー(180)は、ケーシング本体(171)と同径の円板状部材で形成され、その下部には、ケーシング本体(171)の凹部(174)に嵌合するリブ(181)が設けられている。リブ(181)の内面は下方に拡開した傾斜面(181a)とし、ケーシング本体(171)の凹部(174)とともに、収容されたボール(160)を支持するようにしている。また、ケーシングカバー(180)には、スリット(182)が設けられ、このスリット(182)を介してケーシング本体(171)の側面から挿入してケーシング本体(171)上にケーシングカバー(180)を取り付けるようにしている。また、このスリット(182)は、ハウジング本体(171)に設けたスリット(178)と連通させ、ボール(160)に設けた支柱(161)が上下方向に回動できるようにしている。
【0030】
図8に示すように、負荷側支持架台(110)と反負荷側支持架台(120)に設けたシャフトローラ台(190)は、回転面を対向させた一対のローラ(191)、(192)を有し、一対のローラ(191)、(192)は、ローラハウジング(193)に配置され、ローラハウジング(193)は、板状のベース(194)上に対向配置された一対の板状体(195)、(196)と、これらの両端に設けた側板(197)、(198)により形成され、ローラ(191)、(192)のシャフト(191a)、(192a)を一対の板状体(195)、(196)で支承させている。そして、ロータ(R)を一対の支持架台(110)、(120)に載置した際、ロータシャフト(R1)が一対のローラ(191)、(192)の間で支持して、ロータ(R)を回転可能にすると共に、左右方向の移動を阻止するようにしている。
形成しているが、ロータシャフト(R1)の端部を収容できる凹部(141)を有すれば
【0031】
このように、本発明のロータ保守装置(100)は、ロータ保持手段(130)がボールジョイント(150)を有するので、ロータ(R)を縦型に配置した発電機または電動機からクレーンにより抜き出したロータ(R)のロータシャフト(R1)の端部をロータホルダー(140)で固定しながら、横転させることができるので、安全且つ正確に一対の支持架台(110)、(120)に載置でき、さらに、支持台(110)に載置されたロータ(R)は、シャフトローラ台(190)の一対のローラ(191)、(192)により左右方向の移動を阻止しながら回転できるので、ロータ(R)の点検や補修等の保守作業を容易に行うことができる。
【0032】
なお、この実施例は本発明の一例であって、種々の変更が可能である。例えば、上記実施例では、支持架台(110)、(120)をH型鋼で直方体状に形成しているが、ロータ(R)を載置できる剛性を有するものであれば、その形状はテーブル状、箱状等いずれのものでもよく、構成する部材もH型鋼に限らず、他の形鋼あるいはアルミニウム等の他の素材を用いても構わない。
【0033】
また、実施例では、ロータホルダー(140)を、ロータシャフト(R1)の端部を内部に収容できるように有底の円筒状部材で形成しているが、ロータシャフト(R1)の端部を収容できる凹部(141)を有すれば、その形状は、多角形の筒状体等いずれのものでもよい。
【0034】
さらに、ロータホルダーカバー(143)を、二つの半円筒状部材(144)、(145)からなる割型としているが、三つ以上の割型としてもよく、また、ロータホルダー(140)の凹部(141)上に突出するように、複数の断面L字状の部材をカバーとしてもよい。
【0035】
ボール(160)を支持するケーシング本体(171)も、ボール(160)を収容できる凹部(174)を形成できれば、その形状はいずれのものでもよく、その凹部(174)の内面を球面状としてもよい。また、ケーシング(170)をケーシング本体(171)とベース(172)で構成し、これらを螺着で一体化しているが、溶接等で固着してもよく、ケーシング本体(171)のみで構成してもよい。
【0036】
また、載置されたロータシャフト(R1)を回転可能に支持する一対のローラ(191)、(192)は、自由回転でも、一方あるいは両方を駆動ローラとして、載置されたロータを強制的に回転させてもよく、3つ以上のローラでロータシャフト(R1)を支持してもよい。
【0037】
さらに、ロータ保持手段(130)を前後方向に移動させる手段としては、スライド軸(113)の進退で行っているが、スライド軸(113)の螺条に係合する螺条を有する部材をベース(171)の底部等に設け、スライド軸(113)の回転で、ローラ保持手段(130)を移動させてもよく、ワイヤ等の牽引手段で移動させてもよい。
【0038】
次に、本発明のロータ保守装置(100)を用いて一対の支持架台(110)、(120)にロータ(R)を載置する操作について説明する。
まず、縦型に配置した発電機のロータ(R)の一端面に設けた把持部(図示せず)にクレーン(図示せず)のフックを係合させた後、発電機や電動機からロータRを縦方向に抜き出し、抜き出したロータをクレーンに吊り下げた状態で、一対の支持架台(110)、(120)の近傍に移動させる。
【0039】
次いで、ロータホルダー(140)を、下端部にリング(r)を装着したロータシャフト(R1)のロータ大径部(R1a)に取り付ける。この取り付けは、予め、ボール(160)を設けたロータホルダー(140)を保持台(図示せず)に載置し、ロータホルダー(140)の凹部(141)に、クレーンを操作してロータシャフト(R1)の大径部(R1a)を挿入し、ロータホルダーカバー(143)を構成する二つ割りした半円筒状部材(144)、(145)をロータホルダー(140)の両側からその上部に装着し、ねじ等でロータホルダー(140)に固定することにより、ロータシャフト(R1)の取り付が完了する。
【0040】
なお、ボール(160)は、ロータシャフト(R1)の大径部(R1a)にロータホルダー(140)を取り付けた後、ロータホルダー(140)に取り付けてもよいが、クレーンにより吊り下げられたロータ(R)の端部は自由端なので、動き易く、取り付け作業が難しくなるので、予め球状体(160)をロータホルダー(140)に取り付けた後、ロータ(R)を取り付けることが好ましい。
【0041】
このようにして、ロータシャフト(R1)の大径部(R1a)にロータホルダー(140)を取り付けた後、クレーンにより負荷側支持架台(110)上に移動させる。負荷側支持架台(110)には、ボール(160)を収容する凹部(174)を備えたケーシング(170)が配置されているので、その凹部(174)に、ロータホルダー(140)に設けたボール(160)を挿入し、ケーシングカバー(180)をケーシング本体(171)の上面に取り付ける。その際、ケーシングカバー(180)には、ボール(160)に設けた支柱(161)が通過できるスリット(182)が設けてあるので、ケーシング本体(171)の上部側方から、スリット(82)を介してハウジング本体(171)の上面に載置し、ねじ止め等でケーシング本体(171)に固定する。
【0042】
次いで、ロータシャフト(R1)の下端部をロータ保持手段(130)で固定したロータ(R)は、ロータシャフト(R1)の上端部がクレーンにより保持されているので、クレーンのワイヤを繰り出すと、ボールジョイント(150)の回動により、ロータ(R)は、ロータシャフト(R1)の端部がロータホルダーに固定した状態で反負荷側支持架台(120)に向けて横転させることができる。この横転に際し、ロータシャフト(R1)の大径端部(R1a)を保持したロータ保持手段(130)は、ロータ(R)を一対支持架台(110)、(120)に載置した際の所定の位置よりも前方に位置させているので、負荷側支持架台(110)に設けたスライド軸(113)の回転操作により、ロータ保持手段(130)を後方に移動させると、ロータ保持手段(130)の移動に伴って、ロータ保持手段(130)に固定したロータシャフト(R1)の端部も後方に移動し、ロータ(R)が反負荷側支持架台(120)の方向に傾くため、さらにクレーンのワイヤを繰り出すと、ハウジング(170)に設けたスリット(174)をガイドとして、反負荷側支持架台(120)に向けて正確に横転させることができる。
【0043】
このように、横転させたロータ(R)は、ロータシャフト(R1)の両端部が一対の支持架台(110)、(120)に設けたシャフトローラ台(190)の一対のローラ(191)、(192)の間に載置され、この一対のローラ(191)、(192)により回転可能となっているので、ロータ(R)を回転させて点検を行い、異常等あれば、ロータ(R)の回転を停止して補修等を行う。この際、ロータ(R)のシャフト(R1)は、一対のローラ(191)、(192)間に載置されているので、左右方向の移動もなく、安全に点検等の作業を行うことができる。

【符号の説明】
【0044】
100・・・ロータ保守装置
110・・・負荷側支持架台
111、112・・・リニアレール
113・・・スライド軸
114・・・ハンドル
120・・・反負荷側支持架台
130・・・ロータ保持手段
140・・・ロータホルダー
141・・・凹部
142・・・ボール保持部
143・・・ロータホルダーカバー
144、145・・・半円筒状部材
146、147・・・フランジ
148・・・開口
150・・・ボールジョイント
160・・・ボール
161・・・支柱
161a・・・支柱上部
170・・・ハウジング
171・・・ハウジング本体
172・・・ベース
173・・・ガイド部材
174・・・凹部
175、176・・・空間部
177・・・底板
178・・・スリット
180・・・ケーシングカバー
181・・・リブ
181a・・・傾斜面
182・・・スリット
190・・・シャフトローラ台
191、192・・・ローラ
191a、192a・・・シャフト
193・・・ハウジング
194・・・ベース
195、196・・・板状体
197、198・・・側板
R ・・・ロータ
R1 ・・・ロータシャフト
R1a・・・大径部
r ・・・リング
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】特開2004−72891号公報
図1
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図8