特許第5711533号(P5711533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5711533反射型マスク、反射型マスクブランク及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5711533
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】反射型マスク、反射型マスクブランク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20150416BHJP
   G03F 1/24 20120101ALI20150416BHJP
【FI】
   H01L21/30 531M
   G03F1/24
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2010-511048(P2010-511048)
(86)(22)【出願日】2009年4月27日
(86)【国際出願番号】JP2009058244
(87)【国際公開番号】WO2009136564
(87)【国際公開日】20091112
【審査請求日】2012年4月20日
(31)【優先権主張番号】特願2008-122950(P2008-122950)
(32)【優先日】2008年5月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100082924
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 修一
(72)【発明者】
【氏名】笑喜 勉
【審査官】 佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−501823(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/105460(WO,A2)
【文献】 特開2006−237192(JP,A)
【文献】 特開2003−338461(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/062099(WO,A1)
【文献】 特開2004−207593(JP,A)
【文献】 特開2006−024920(JP,A)
【文献】 米国特許第06984475(US,B1)
【文献】 特開平08−325560(JP,A)
【文献】 特開平04−039660(JP,A)
【文献】 特開2007−005523(JP,A)
【文献】 特開平08−213303(JP,A)
【文献】 特開平06−282063(JP,A)
【文献】 特開2002−313713(JP,A)
【文献】 特表2008−535270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた構造の多層反射膜と、前記多層反射膜上に積層されておりEUV露光光を吸収する吸収膜と、を備えた反射型マスクブランクの前記吸収膜に転写パターンを形成してなる反射型マスクであって、
前記吸収膜は、膜内を通過して前記多層反射膜で反射される露光光に、直接入射して前記多層反射膜で反射されるEUV露光光に対して所定の位相差を生じさせる位相シフト膜であり、
前記吸収膜は、半透過膜上に反射防止膜を積層した構造を有し、
前記半透過膜は、タンタルを主成分とする材料で構成され、
前記反射防止膜は、前記半透過膜をエッチングする際のエッチングガスに対してエッチング選択性を有し、
前記基板と前記多層反射膜との間には導電性膜が介在し、
前記基板は、ガラス材料からなり、
前記多層反射膜は、フッ素系ガスでドライエッチング可能な材料で形成され、
前記導電性膜は、前記多層反射膜のエッチングストッパであり、窒化クロムまたは窒化炭化クロムを含有する材料で構成され、
ブラインドエリアの少なくとも漏れ光エリアを含む領域における吸収膜と多層反射膜の全層はともに除去され、前記導電性膜が除去した部分の導電性を確保することを特徴とする反射型マスク。
【請求項2】
前記ブラインドエリアの少なくとも漏れ光エリアを含む領域は、転写エリアの外周境界から5mm外側までの外周範囲の領域であることを特徴とする請求項に記載の反射型マスク。
【請求項3】
前記ブラインドエリアは、前記転写エリアに接した前記漏れ光エリアと、前記漏れ光エリアの外周エリアであってアライメントマークがパターニングされた外側エリアとからなることを特徴とする請求項またはに記載の反射型マスク。
【請求項4】
前記多層反射膜は、MoとSiとを交互に積層させて構成される請求項からのいずれかに記載の反射型マスク。
【請求項5】
前記吸収膜の反射率と前記多層反射膜が形成されていないブラインドエリアの反射率との間のコントラストは、100〜1000である請求項からのいずれかに記載の反射型マスク。
【請求項6】
前記反射防止膜は、フッ素系ガスでドライエッチングされる材料で構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の反射型マスク
【請求項7】
前記半透過膜は、タンタル金属、タンタルホウ化物、タンタルシリサイド、又はこれらの窒化物を主成分とする材料で構成されていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の反射型マスク
【請求項8】
前記反射防止膜は、全体組成を100としたときの酸素の組成比が60以上70以下である酸化タンタルを主成分とする材料で構成されていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の反射型マスク
【請求項9】
前記多層反射膜と前記吸収膜との間に設けられたバッファ膜を有することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の反射型マスク
【請求項10】
前記バッファ膜は、クロム又はルテニウムを主成分とする材料から構成されていることを特徴とする請求項に記載の反射型マスク
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の反射型マスクの製造方法であって、
転写パターンが形成された第1レジスト膜をマスクとしてドライエッチングすることにより前記吸収膜に転写パターンを形成する工程と、
転写エリアの吸収膜及び多層反射膜を保護するパターンが形成された第2レジスト膜をマスクとしてブラインドエリアの少なくとも漏れ光エリアを含む領域における吸収膜をドライエッチングして除去する工程と、
前記第2レジスト膜をマスクとし、前記ブラインドエリアの少なくとも漏れ光エリアを含む領域における多層反射膜に対し、フッ素ガスによるドライエッチングを行って全層を除去する工程と、を具備することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型マスクブランクおよび反射型マスクに関する。さらに詳しくは、本発明は、極端紫外光などの短波長域の露光光を使用するリソグラフィ法において用いられる反射型マスク用として好適な反射型マスク、及び当該反射型マスクブランクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体産業において、半導体デバイスの高集積化に伴い、従来の紫外光を用いたフォトリソグラフィー法の転写限界を上回る微細パターンが必要とされている。このような微細パターンの転写を可能とするため、より波長の短い極端紫外光(Extreme Ultra Violet;以下、EUV光と呼ぶ。)を用いた露光技術であるEUVリソグラフィが有望視されている。なお、EUV光とは、軟X線領域又は真空紫外線領域の波長帯の光を指し、具体的には波長が0.2nm〜100nm程度の光のことである。このEUVリソグラフィにおいて用いられる露光用マスクとしては、特許文献1に記載されたような反射型マスクが提案されている。
【0003】
この反射型マスクは、基板上に露光光であるEUV光を反射する多層反射膜を有し、さらに、多層反射膜上にEUV光を吸収する吸収体膜がパターン状に設けられた構造を有している。このような反射型マスクを搭載した露光機(パターン転写装置)を用いてパターン転写を行なうと、反射型マスクに入射した露光光は、吸収体膜パターンのある部分では吸収され、吸収体膜パターンのない部分では多層反射膜により反射される。多層反射膜により反射された光が反射光学系を通して例えば半導体基板(レジスト付きシリコンウエハ)上に照射され、反射型マスクの吸収体膜パターンが転写される。
【0004】
また、光の短波長化とは別にIBMのLevensonらによって位相シフトマスクを利用した解像度向上技術が提唱されている(例えば、特許文献2)。位相シフトマスクでは、マスクパターンの透過部を、隣接する透過部とは異なる物質若しくは形状とすることにより、それらを透過した光に180度の位相差を与えている。従って両透過部の間の領域では、180度位相の異なる透過回折光同士が打ち消し合い、光強度が極めて小さくなって、マスクコントラストが向上し、結果的に転写時の焦点深度が拡大するとともに転写精度が向上する。尚、位相差は原理上180度が最良であるが、実質175〜185度程度であれば解像度向上効果は得られる。
【0005】
位相シフトマスクの一種であるハーフトーン型マスクは、マスクパターンを構成する材料として光吸収性の薄膜を用い、透過率を数%程度(通常5%〜20%程度)まで減衰させつつ、通常の基板透過光と180度の位相差を与えることで、パターンエッジ部の解像度を向上させる位相シフトマスクである。光源としては、現状、これまで使用されて来たKrFエキシマレーザ(波長248nm)からArFエキシマレーザ(波長193nm)に切り替わりつつある。
【0006】
しかしながら、ArFエキシマレーザをもってしても、ハーフトーン型マスクを用いるリソグラフィ技術を、将来的な50nm以下の線幅を有するデバイスを作製するためのリソグラフィ技術として適用することは、露光機やレジストの課題もあり、容易ではない。
【0007】
そこで、EUVリソグラフィの転写解像性をより向上させるために、従来のエキシマレーザ露光等で用いられているハーフトーンマスクの原理を、反射光学系を用いたEUVリソグラフィにおいても適用可能とするEUV露光用マスクが提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−213303号公報
【特許文献2】特公昭62−50811号公報
【特許文献3】特開2004−207593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以下、関連するEUV露光用マスクについて、図6を参照して説明する。図6の上図は、関連するEUV露光用マスクの断面図であり同図の下図はその一部を示す平面図である。図6の上図に示すように、関連するEUV露光用マスクは、基板110上に露光光の高反射領域となる多層膜(多層反射膜)111が形成され、その多層膜111上に低反射領域となる低反射層(吸収体膜)112のパターンが形成されている。当該低反射層112は2層膜で構成されており、露光波長において、多層膜111の反射率を基準とした場合の当該低反射層112の反射率は5%〜20%であり、低反射層112からの反射光と多層膜111からの反射光との位相差が175乃至185度であることを特徴とする。このEUV露光用マスクは、転写パターン113が形成された転写エリア114及びそれ以外のブラインドエリア115を有する。ブラインドエリア115は、後述するように漏れ光エリア1116と外側エリア117とを含む。外側エリア117には、アライメントマーク118が形成されている。転写エリア114及び漏れ光エリア116が、露光光が入射するエリア119となる。
【0010】
このような構成のEUV露光用マスクは、従来のエキシマレーザ露光等で用いられているハーフトーンマスクの原理を、EUV露光および反射光学系においても適用可能とし、EUV露光とハーフトーン効果により転写解像性の向上を実現することができる。
【0011】
なお、EUV露光用マスクにEUV露光光を照射すると多層反射膜111が帯電するというEUV露光用マスク特有の問題が以前よりあった。しかし、この問題は多層反射膜111あるいは吸収体膜112をアースと接続することで基本的には解決されている。
【0012】
一般的に、半導体デバイスを製造する際には、レジスト膜が形成された1枚の被写体に対して、同じフォトマスクを用いて、位置をずらしながら、複数回露光することにより、1枚の被写体に対して同一パターンを複数転写する。
【0013】
本来、露光装置内の光源から照射される露光光は、フォトマスク表面の転写すべきパターン113が形成されている部分(即ち、転写エリア114)にのみ入射することが理想的であり、露光装置内の光学系で調整される仕組みになっている。しかし、光の回折現象や位置精度等の関係から、一部の露光光が漏れて(これを漏れ光という)転写エリア114の外側のブラインドエリア115の一部にまで入射してしまう現象が避けられなかった(以下、この漏れ光で露光されてしまうブラインドエリア115の部分を漏れ光エリア116とする)。このため、図6の下図に示すように、被写体のレジスト膜には、転写エリア114の領域だけでなく、漏れ光エリア116を含む領域が転写されるようになっていた。
【0014】
露光装置でフォトマスクの転写パターン113を被写体(ウェハ等)上に形成されたレジスト膜へ複数転写する際は、被写体を最も有効に利用するために、図7に示すように被写体上に転写エリア114の転写パターン113がほとんど隙間なく転写されるようにするのが一般的である(図7の転写パターン113A,113B,113C,113D等参照)。
【0015】
このとき、例えば、転写パターン113Aを転写後、ほとんど隙間なく転写パターン113Bを転写する際、転写パターン113Bの漏れ光エリア116Bが転写パターン113Aの一部に重なってしまう。また、転写パターン113Aの漏れ光エリア116Aが転写パターン113Bの一部に重なってしまう。
【0016】
EUV露光光を吸収体膜112で吸収してしまうタイプの反射型マスクの場合、EUV露光光が漏れ光エリア116にまで漏れ出ても、吸収体膜112がEUV露光光を吸収し、吸収体膜112の被写体上のレジスト膜を感光する強度の反射光が漏れ光エリア116からは発生しないため、特に問題にはならなかった。
【0017】
しかし、ハーフトーン効果を利用したEUV露光用マスクの場合、吸収体膜は、EUV露光光を所定の透過率で透過してしまうので、漏れ光エリア116からも反射光が発生してしまう。このため、被写体上で転写パターン113と漏れ光エリア116とが重なると被写体上のレジスト膜を意図せず感光させてしまうという問題があった。
【0018】
以下、図7を参照して具体的に説明する。前記の通り、露光装置でフォトマスクの転写パターン113を被写体上のレジスト膜へ複数転写する際、例えば、1回目の露光で被写体上に転写された転写パターンを113Aとし、2回目の露光で転写された転写パターンを113B、3回目の露光で転写された転写パターンを113C、4回目の露光で転写された転写パターンを113Dというように、以降順次露光していく。この場合、転写パターンの吸収体膜112が残存する部分である低反射部分(被写体上のレジスト膜を感光させない部分)と、同じく吸収体膜112が残存する部分の漏れ光エリア116とが重なってしまうことで、2回分の露光が重なる部分120、3回分の露光が重なってしまう部分121、4回分の露光が重なってしまう部分122が被写体上のレジスト膜に生じてしまう。
【0019】
通常、EUV露光用の反射型マスクの場合、EUV光が多層反射膜に直接入射して反射される場合でも、反射率は70%程度であり、被写体上のレジスト膜がこの70%の反射光量で感光されるようにEUV光源の光量等が調整されている。例えば、吸収体膜112を経由して多層反射膜111に反射される場合の反射率が20%程度の反射型マスクを用いた場合、2回分の露光が重なる部分120では、被写体上のレジスト膜が概ね40%の反射率に相当する光量のEUV光で露光されることになり、本来、感光させるべきではない部分のレジスト膜が感光してしまう可能性がある。同様に、3回分の露光が重なる部分121では、被写体上のレジスト膜が概ね60%の反射率に相当する光量のEUV光で露光され、4回分の露光が重なる部分121では、被写体上のレジスト膜が概ね80%の反射率に相当する光量のEUV光で露光されてしまい、本来、感光させるべきではない部分のレジスト膜が感光してしまう可能性が高い。
【0020】
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、ハーフトーンマスクの原理を利用したEUV露光用マスクにおいて、転写エリアの低反射部分とブラインドエリアの漏れ光エリアが重なるように被写体のレジスト膜に対して転写パターンを隙間なく転写しても、重なり部分のレジストが感光しないようなEUV露光用マスク及びそれを製造するためのマスクブランクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の反射型マスクは、基板上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた構造の多層反射膜と、前記多層反射膜上に積層されておりEUV露光光を吸収する吸収膜と、を備えた反射型マスクブランクの前記吸収膜に転写パターンを形成してなる反射型マスクであって、前記吸収膜は、膜内を通過して前記多層反射膜で反射される露光光に、直接入射して前記多層反射膜で反射されるEUV露光光に対して所定の位相差を生じさせる位相シフト膜であり、ブラインドエリア内の少なくとも漏れ光エリアの多層反射膜は、上層から複数層又は全層が除去されてなることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、吸収膜での反射率と、ブラインドエリアでの反射率との間にコントラストがとれるので、ブラインドエリアにおける反射光によるレジスト膜の感光を抑制できる。
【0023】
本発明の反射型マスクにおいては、ブラインドエリアの多層反射膜を上層から複数層又は全層除去する領域は、少なくとも漏れ光エリアを含む領域であることが好ましい。
【0024】
本発明の反射型マスクブランクは、基板と、前記基板上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた構造の多層反射膜と、前記多層反射膜上に積層されておりEUV露光光を吸収する吸収膜と、を備えた反射型マスクブランクであって、前記吸収膜は、膜内を通過して前記多層反射膜で反射される露光光に、直接入射して前記多層反射膜で反射されるEUV露光光に対して所定の位相差を生じさせる位相シフト膜であり、前記基板と前記多層反射膜との間に導電性膜が介在されていることを特徴とする。
【0025】
本発明の反射型マスクブランクにおいては、前記導電性膜は、クロム、窒化クロム、酸化クロム、炭化クロム、窒化酸化クロム、窒化炭化クロム、酸化炭化クロムまたは酸化窒化炭化クロムのいずれかを主成分とする材料で構成されていることが好ましい。
【0026】
本発明の反射型マスクブランクにおいては、前記吸収膜は、半透過膜上に反射防止膜を積層した構造を有することが好ましい。
【0027】
本発明の反射型マスクブランクにおいては、前記反射防止膜は、前記半透過膜をエッチングする際のエッチングガスに対してエッチング選択性を有する材料で構成されていることが好ましい。
【0028】
本発明の反射型マスクブランクにおいては、前記半透過膜は、タンタルを主成分とする材料で構成されていることが好ましい。
【0029】
本発明の反射型マスクブランクにおいては、前記反射防止膜は、酸化タンタルを主成分とする材料から構成されていることが好ましい。
【0030】
本発明の反射型マスクブランクにおいては、前記多層反射膜と前記吸収膜との間に設けられたバッファ膜を有することが好ましい。
【0031】
本発明の反射型マスクブランクにおいては、前記バッファ膜は、クロム又はルテニウムを主成分とする材料から構成されていることが好ましい。
【0032】
本発明の反射型マスクの製造方法は、上記反射型マスクブランクに転写パターンを形成してなる反射型マスクの製造方法であって、転写パターンが形成された第1レジスト膜をマスクとしたドライエッチングにより前記吸収膜に転写パターンを形成する工程と、転写エリアの吸収膜及び多層反射膜を保護するパターンが形成された第2レジスト膜をマスクとしてブラインドエリアの吸収膜をドライエッチングする工程と、前記第2レジスト膜をマスクとしてブラインドエリアの多層反射膜をドライエッチングする工程と、を具備することを特徴とする。
【0033】
本発明の反射型マスクの製造方法においては、ブラインドエリアの多層反射膜をドライエッチングする領域は、少なくとも漏れ光エリアを含む領域であることが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る反射型マスクは、基板上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた構造の多層反射膜と、前記多層反射膜上に積層されておりEUV露光光を吸収する吸収膜と、を備えており、前記吸収膜は、膜内を通過して前記多層反射膜で反射される露光光に、直接入射して前記多層反射膜で反射されるEUV露光光に対して所定の位相差を生じさせる位相シフト膜であり、ブラインドエリアの多層反射膜は、上層から複数層又は全層が除去されてなる。
【0035】
このような構成により、ブラインドエリアの多層反射膜が全層除去されている、あるいは実質的に多層反射膜としての機能を有さない程度に複数層が除去されていることから、ブラインドエリアにEUV露光光が漏れ出ても、EUV露光光はほとんど反射されない。これにより、この反射型マスクを用いて被写体のレジスト膜に転写パターンを複数、EUV露光光が漏れるブラインドエリアが隣接する転写パターンに重なる程のほとんど隙間なく転写しても、そのブラインドエリアと隣接する転写パターンの吸収膜残存部分との重なり部分で本来感光させるべきではない部分の被写体のレジスト膜を感光させてしまうことを抑制できる効果がある。
【0036】
また、導電性膜を備える本発明の反射型マスクブランクの発明においては、以下に示す効果がある。関連する反射型マスクブランクを用いて、ブラインドエリアの多層反射膜の全層あるいは複数層を除去した反射型マスクを作製した場合、除去した部分の導電性が低下することによって、最も帯電しやすい転写エリアの多層反射膜とのアース接続の確保が困難となる場合がある。本発明の反射型マスクブランクは、基板と多層反射膜との間に導電性膜を備えることから、導電性膜とアース接続することで転写エリアの多層反射膜と容易にアース接続を行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】反射型マスクにおける転写領域を説明するための図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る反射型マスクブランクを示す図である。
図3A図2に示す反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを製造する方法を説明するための図である。
図3B図3Aに続く製造工程を説明するための図である。
図3C図3Bに続く製造工程を説明するための図である。
図3D図3Cに続く製造工程を説明するための図である。
図4】本発明の実施の形態2に係る反射型マスクブランクを示す図である。
図5A図4に示す反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを製造する方法を説明するための図である。
図5B図5Aに続く製造工程を説明するための図である。
図5C図5Bに続く製造工程を説明するための図である。
図5D図5Cに続く製造工程を説明するための図である。
図6】上図は関連する反射型マスクの断面構造を示す断面図であり、下図はその平面構造を示す平面図である。
図7】関連する反射型マスクを用いて露光を行った場合の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明者は、ハーフトーンマスクの原理を利用したEUV露光用反射型マスクにおいても、通常の光透過型ハーフトーンマスクと同様、被写体のレジスト膜に対して転写パターンを隙間なく転写する場合、その重なり部分でレジスト膜が感光してしまう問題が生じることに着目し、ブラインドエリアにおける多層反射膜を上層から複数層又は全層除去することにより、ブラインドエリアの反射率を大幅に低下させることで、ブラインドエリアに漏れたEUV露光光が反射して被写体のレジスト膜を露光する光量を大幅に低下させ、レジスト膜の感光を抑制できることを見出し本発明をするに至った。
【0039】
すなわち、本発明の骨子は、多層反射膜上に積層され、EUV露光光を吸収する吸収膜を、膜内を通過して前記多層反射膜で反射される露光光に、直接入射して前記多層反射膜で反射されるEUV露光光に対して所定の位相差を生じさせる位相シフト膜で構成し、ブラインドエリアの多層反射膜を上層から複数層又は全層除去することにより、ブラインドエリアの反射率を大幅に低下させることで、ブラインドエリアに漏れたEUV露光光が反射して被写体のレジスト膜を露光する光量を大幅に低下させ、転写エリアの低反射部分とブラインドエリアとが重なった部分の被写体のレジスト膜の感光を抑制することである。
【0040】
なお、本発明におけるブラインドエリアの多層反射膜を上層から複数層または全層除去する範囲であるが、EUV露光光が漏れ出る範囲が最低限除去されていればよい。EUV露光光が漏れ出る範囲は、使用する露光装置によって異なるので、その露光装置の仕様に応じて多層反射膜を除去する範囲を選定する必要がある。アライメントマークに使用する部分以外のブラインドエリア全体の多層反射膜を除去すれば、露光装置の仕様に関係なく本発明の作用効果は発揮できる。
【0041】
しかし、アライメントマーク等の各種マークを付けるエリアを多く残しておきたい場合や吸収膜及び多層反射膜を除去するエッチング時間やコスト面のことを考慮すると、ブラインドエリア全体の多層反射膜を除去することが必ずしも最適とはいえない。ブラインドエリアの吸収膜および多層反射膜を極力残しておきたい場合、例えば転写エリアの外周境界から5mm程度外側までの外周範囲におけるブラインドエリアの多層反射膜を除去すれば、本発明の作用効果を発揮する。露光装置の位置精度が高い場合においては、転写エリアの外周境界から3mm程度外側までの外周範囲におけるブラインドエリアの多層反射膜を除去すれば、本発明の作用効果を発揮する。これらの外周範囲は、漏れ光エリアを含む領域になる。
【0042】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0043】
図1は、反射型マスクにおける転写領域を説明するための図である。図1に示す反射型マスクは、転写パターンを転写する転写エリア1と、転写エリア1の周りを囲むように設けられた、転写パターンが形成されていない領域であるブラインドエリア4とを含む。また、ブラインドエリア4は、転写エリア1に接したエリアであってEUV露光光が漏れ出る漏れ光エリア2と、漏れ光エリア2の外周のエリアであって、パターン転写時のアライメントに利用するアライメントマーク17などがパターニングされる外側エリア3が設けられている。
【0044】
(実施の形態1)
本実施の形態においては、ブラインドエリア4の漏れ光エリア2の多層反射膜(図3Dの13)が上層から全層除去されてなる構成について説明する。本実施の形態に係る反射型マスクは、図3Dに示す構成を有する。図3Dに示す反射型マスクは、基板11と、基板11上に形成された導電性膜12と、導電性膜12の転写エリア1に形成された多層反射膜13と、多層反射膜13上にパターニングされて形成され、多層反射膜13を保護するバッファ膜14と、バッファ膜14上に形成された吸収膜15とから主に構成されている。すなわち、図3Dに示す反射型マスクは、転写エリア1に多層反射膜13が形成され、その多層反射膜13上にバッファ膜14及び吸収膜15の積層膜がパターニングして形成され、ブラインドエリア4の少なくとも漏れ光エリア2には多層反射膜13が形成されていない構成を有する。
【0045】
基板11は、良好な平滑性と平坦度が必要とされ、その材料としては、ガラス基板を用いることができる。ガラス基板は良好な平滑性と平坦度が得られ、特にマスク用基板として好適である。ガラス基板材料としては、低熱膨張係数を有するアモルファスガラス(例えばSiO−TiO系ガラス等)、石英ガラス又はβ石英固溶体を析出した結晶化ガラスなどが挙げられる。
【0046】
多層反射膜13を除去する層の数によっては、特にこの実施の形態1のように全層除去する場合には、前記の通り、転写エリア1内の多層反射膜13がEUV光が照射されることによる帯電を放電するためにアースを取ることが必要であるが、多層反射膜13を除去したことによって導電性が不足してしまう。この導電性を確保するためにこの実施の形態1では導電性膜12を基板上面に成膜している。導電性膜12とアース接続することで転写エリア1の多層反射膜13と容易にアース接続を行うことができる。
【0047】
また、この導電性膜12は、多層反射膜13のエッチングストッパの役割も果たす。このため、十分な導電性を有すると共に、多層反射膜13のエッチングガスに対して耐性を持つことが望ましい。例えば、多層反射膜13のエッチングガスがフッ素ガスである場合には、導電性膜12は、クロム、窒化クロム、酸化クロム、炭化クロム、窒化酸化クロム、窒化炭化クロム、酸化炭化クロム、または窒化酸化炭化クロムのいずれかを主成分とする材料で構成されていることが好ましい。
【0048】
導電性膜12上に形成する多層反射膜13は、高屈折率な材料(高屈折率層)と低屈折率な材料(低屈折率層)とを交互に積層させた構造をしており、特定の波長の光を反射することができる。例えば13〜14nmのEUV光に対する反射率が高いMoとSiを交互に40周期程度積層したMo/Si多層反射膜が挙げられる。EUV光の領域で使用されるその他の多層反射膜の例としては、Ru/Si周期多層反射膜、Mo/Be周期多層反射膜、Mo化合物/Si化合物周期多層反射膜、Si/Nb周期多層反射膜、Si/Mo/Ru周期多層反射膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層反射膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層反射膜などが挙げられる。多層反射膜13は、例えばDCマグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法など周知の成膜方法により形成することができる。
【0049】
バッファ膜14は、後述する吸収膜15を転写パターンにエッチング処理する際に多層反射膜13がエッチング処理などによるダメージを受けないようにこれを保護することを目的として設けられる。したがって、バッファ膜14の材質としては、例えば、後述する吸収膜15として、タンタルホウ素窒化物(TaBN)を用いた場合には、TaBNのエッチングガスである塩素ガスでエッチングされにくいクロム又はルテニウムを主成分とする材料を用いることが好ましい。バッファ膜14に適するクロムを主成分とする材料としては、Cr,CrN,CrO,CrC,CrON,CrCN,CrOCNなどが挙げられる。バッファ膜14に適するルテニウムを主成分とする材料としては、Ru,RuNb,RuZr,RuMo,RuY,RuB,RuTi,RuLaなどが挙げられる。このバッファ膜14の膜厚は、100nm以下、好ましくは80nm以下である。このバッファ膜14の成膜は、同様にDCマグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法など周知の成膜方法を用いて行うことができる。なお、バッファ膜14は必要に応じて設ければよく、吸収膜15へのパターン形成方法、条件によっては、多層反射膜13上に直接吸収膜15を設けても良い。
【0050】
吸収膜15は、EUV光を吸収する機能を有する膜であり、膜内を通過して多層反射膜13で反射される露光光に、直接入射して多層反射膜13で反射されるEUV露光光に対して所定の位相差を生じさせる位相シフト膜である。吸収膜15は、半透過膜上に反射防止膜を積層した構造を有することが好ましい。吸収膜15はタンタル(Ta)を主成分とする材料から構成されていることが好ましい。また、反射防止膜は、半透過膜をエッチングする際のエッチングガスに対してエッチング選択性を有する材料で構成されていることが好ましい。半透過膜は、タンタル金属(Ta)、タンタルホウ化物(TaB)、タンタルシリサイド(TaSi)、あるいはこれらの窒化物を主成分とする材料から構成されていることが好ましい。これらの中でも、タンタル窒化物(TaN)、タンタルホウ素窒化物(TaBN)を主成分とする材料から構成されていることが特に好ましい。反射防止膜は、タンタルホウ素酸化物(TaBO)等のタンタル酸化物を主成分とする材料から構成されていることが好ましい。
【0051】
通常、EUV用の反射型マスクブランクから反射型マスクを作製した後、マスクに転写パターンが求められている精度で転写されていることを確認するパターン検査を行う必要がある。このパターン検査を行うパターン検査機では、検査光の光源には、EUV光ではなく、それよりも長波長の光源(例えば、190〜260nm程度の深紫外光、あるいはそれよりも長波長の可視光など)が使用されているのが一般的である。EUV光源機が高価であることや、EUV光の場合、大気中での減衰が激しいため、検査機内部を真空にする必要があり、パターン検査機が大掛かりとなることなどがその理由である。パターン検査機では、反射型マスクに長波長の光を照射し、多層反射膜13とマスクパターン部分(吸収膜15が積層する部分)との反射コントラストでパターンの精度を検査するようになっている。このとき、吸収膜15が、タンタルホウ素窒化物(TaBN)等の半透過膜のみで構成されていると、検査光に対する反射率が高く、多層反射膜13との反射コントラストが取り難いという問題がある。このため、吸収膜15は、EUV光の吸収率の高いタンタル金属やタンタル窒化物を主成分とする半透過膜の上に検査光に対する反射率が低いタンタル酸化物を主成分とする反射防止膜を積層した構造となっている。
【0052】
吸収膜15は、転写エリア1において、ハーフトーン型マスクとして機能する。そのためには、EUV露光光の波長が多層反射膜13に直接入射して反射した場合(図3Dにおける矢印A)の反射率を基準とした場合の、当該吸収膜15及びバッファ膜14を透過して多層反射膜13に入射して反射し、再度バッファ膜14及び当該吸収膜15を透過した反射光(図3Dにおける矢印B)の反射率が、5%〜20%であることが好ましい。さらには、上記吸収膜15を介した場合の反射光(図3Dにおける矢印Bの反射光)と、上記多層反射膜13に直接入射した場合の反射光(図3Dにおける矢印Aの反射光)との位相差が175度〜185度であることが好ましい。よって吸収膜15の材料及び膜厚は、反射率及び位相差が上記のようになるよう設計する。
【0053】
少なくとも漏れ光エリア2においては、多層反射膜13が形成されていないので、吸収膜15よりも遮光されている。このため、吸収膜15の反射率と、多層反射膜13が形成されていないブラインドエリア4の反射率との間のコントラストが十分にとれるので、ブラインドエリアにおける被写体上のレジスト膜の感光を低減することができる。ここで、吸収膜15の反射率と、多層反射膜13が形成されていないブラインドエリア4の反射率との間のコントラストは、100〜1000程度あれば良いと考えられる。
【0054】
本発明において、タンタル金属、タンタル窒化物系等のような塩素系ガスでドライエッチングが可能な場合のエッチングガスとしては、例えば、Cl、SiCl、HCl、CCl、CHClが適用可能である。また、本発明において、タンタル酸化物系、モリブデンとシリコンの多層反射膜13のようなフッ素系ガスでドライエッチングを行う必要がある場合のエッチングガスとしては、例えば、SF、CF、C、CHF、CHClが適用可能である。また、これらのフッ素系ガスに、He、H、Ar、C、O等の混合ガス、あるいは、Cl、CHCl等の塩素系ガス、または、これらと、He、H、Ar、C、O等の混合ガスを用いることもできる。
【0055】
ここで、本実施の形態に係る反射型マスクの製造方法について図面を参照して説明する。図2は、本発明の実施の形態1に係る反射型マスクブランクを示す図であり、図3A〜3Dは、図2に示す反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを製造する方法を説明するための図である。
【0056】
まず、図2に示すように、基板11、導電性膜12、多層反射膜13、バッファ膜14及び吸収膜(半透過膜及び反射防止膜)15を順次形成してなるマスクブランクを準備する。このマスクブランクは、基板11と多層反射膜13との間に導電性膜12が介在されてなるものである。具体的には、基板11上にスパッタリングなどにより導電性膜12を形成する。次いで、導電性膜12上に、イオンビームスパッタリングなどにより、EUV光の波長である露光波長13〜14nmの領域の反射膜として適したMoとSiとを交互に積層して多層反射膜13を形成する。例えば、Siターゲットを用いて、Si膜を成膜し、その後、Moターゲットを用いて、Mo膜を成膜し、これを1周期として40周期積層した後、最後にSi膜を成膜する。次いで、多層反射膜13上に、DCマグネトロンスパッタリングなどによりバッファ膜14を形成する。その後、バッファ膜14上に、DCマグネトロンスパッタリングなどにより半透過膜及び反射防止膜をその順で積層して吸収膜15を形成する。このマスクブランクに転写パターンを形成して反射型マスクが作製される。
【0057】
まず、図2に示すマスクブランクの上にレジスト膜を形成し、レジスト膜の転写エリアにパターニングを行い、ブラインドエリア4の外側エリア3にアライメントマーク17等の各種マークのパターニングを行って、レジスト膜に転写パターン等を形成する。次いで、図3Aに示すように、この転写パターン等が形成されたレジスト膜(第1レジスト膜)をマスクとして吸収膜15(半透過膜及び反射防止膜)及びバッファ膜14をドライエッチングした後に、レジスト膜を除去する。次いで、図3Aに示す構成上にレジスト膜16を形成し、転写エリア1全体及び外側エリア3全体にレジスト膜16(第2レジスト膜)が残存するようにレジスト膜16をパターニングし、図3Bに示すように、レジスト膜16をマスクにして、吸収膜15(半透過膜及び反射防止膜)及びバッファ膜14をドライエッチングする。次いで、図3Cに示すように、前記レジスト膜16をマスクにして、多層反射膜13をドライエッチングする。このとき、導電性膜12がエッチングストッパの役割を果たす。その後、レジスト膜16を除去する。このようにして、図3Dに示すような本実施の形態に係る反射型マスクが得られる。
【0058】
この反射型マスクによれば、ブラインドエリア4の漏れ光エリア2の多層反射膜13が除去されていることから、漏れ光エリア2にEUV露光光が漏れ出ても、EUV露光光がほとんど反射されない。これにより、この反射型マスクを用いて被写体のレジスト膜に転写パターンを複数、漏れ光エリア2が隣接する転写パターン1に重なる程のほとんど隙間なく転写しても、その漏れ光エリア2と隣接する転写パターン1の吸収膜15の残存部分との重なり部分で本来感光させるべきではない部分の被写体のレジスト膜を感光させてしまうことを抑制できる。
【0059】
また、基板11と多層反射膜13との間に導電性膜12を設けた構成となっていることにより、漏れ光エリア2の多層反射膜13を全層除去しても、転写パターン1内の多層反射膜13と、外側エリア3の多層反射膜13、バッファ膜14、吸収膜15と電気的に導通された状態が確保され、帯電しやすい転写パターン1内の多層反射膜13とアース接続をとることができる。
【0060】
なお、この実施の形態1の反射型マスクでは、外側エリア3の多層反射膜13を除去しない構成としたが、アライメントマーク17等の各種マークを形成する部分以外の多層反射膜13を除去する構成としてもよい。
【0061】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、ブラインドエリアの多層反射膜が上層から複数層除去されてなる構成について説明する。本実施の形態に係る反射型マスクは、図5Dに示す構成を有する。図5Dに示す反射型マスクは、基板11と、基板11の転写エリア1に形成された多層反射膜13と、多層反射膜13上にパターニングされて形成され、多層反射膜13を保護するバッファ膜14と、バッファ膜14上に形成された吸収膜15とから主に構成されている。すなわち、図5Dに示す反射型マスクは、転写エリア1に多層反射膜13が形成され、その多層反射膜13上にバッファ膜14及び吸収膜15の積層膜がパターニングして形成され、ブラインドエリア4の漏れ光エリア2には薄い多層反射膜13a(数周期分残存した状態)が形成されている構成を有する。本実施の形態に係る構成においては、多層反射膜13を数周期残存させるようにエッチングを行うため、転写パターン1内の多層反射膜13と外側エリア3の多層反射膜13等の各膜との間で導電性は確保される。また、多層反射膜13のエッチングは途中で終了するように制御されるため、エッチングストッパの役割も有する導電性膜12は不要となる。なお、多層反射膜13aの導電性がアース確保に不十分であることが予想される場合においては、導電性膜12を設けるとよい。各膜の材料については、実施の形態1と同じであるので詳細な説明は省略する。
【0062】
ここで、本実施の形態に係る反射型マスクの製造方法について図面を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態2に係る反射型マスクブランクを示す図であり、図5(a)〜(d)は、図4に示す反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを製造する方法を説明するための図である。
【0063】
まず、図4に示すように、基板11、多層反射膜13、バッファ膜14及び吸収膜(半透過膜及び反射防止膜)15を順次形成してなるマスクブランクを準備する。具体的には、基板11上に、イオンビームスパッタリングなどにより、EUV光の波長である露光波長13〜14nmの領域の反射膜として適したMoとSiとを交互に積層して多層反射膜13を形成する。例えば、Siターゲットを用いて、Si膜を成膜し、その後、Moターゲットを用いて、Mo膜を成膜し、これを1周期として40周期積層した後、最後にSi膜を成膜する。次いで、多層反射膜13上に、DCマグネトロンスパッタリングなどによりバッファ膜14を形成する。その後、バッファ膜14上に、DCマグネトロンスパッタリングなどにより半透過膜及び反射防止膜をその順で積層して吸収膜15を形成する。このマスクブランクに転写パターンを形成して反射型マスクが作製される。
【0064】
まず、図4に示すマスクブランクの上にレジスト膜を形成し、レジスト膜の転写エリアにパターニングを行い、ブラインドエリア4の外側エリア3にアライメントマーク17等の各種マークのパターニングを行って、レジスト膜に転写パターン等を形成する。次いで、図5Aに示すように、この転写パターン等が形成されたレジスト膜(第1レジスト膜)をマスクとして吸収膜15(半透過膜及び反射防止膜)及びバッファ膜14をドライエッチングした後に、レジスト膜を除去する。次いで、図5Aに示す構成上にレジスト膜(第2レジスト膜)16を形成し、転写エリア全体および外側エリア3のアライメントマーク17等の各種マーク形成領域にレジスト膜16が残存するようにレジスト膜16をパターニングし、図5Bに示すように、レジスト膜16をマスクにして、吸収膜15(半透過膜及び反射防止膜)及びバッファ膜14をドライエッチングする。次いで、図5Cに示すように、前記レジスト膜16をマスクにして、多層反射膜13を複数層ドライエッチングする。このとき、多層反射膜13aを数周期あるいは数層残存させるように、膜材料やエッチングガスなどを考慮してエッチング条件を適宜設定する。その後、レジスト膜16を除去する。このようにして、図5Dに示すような本実施の形態に係る反射型マスクが得られる。
【0065】
この反射型マスクによれば、ブラインドエリア4の漏れ光エリア2の多層反射膜13aが数周期あるいは数層残存する程度まで除去されていることから、漏れ光エリア2にEUV露光光が漏れ出ても、EUV露光光がほとんど反射されない。これにより、この反射型マスクを用いて被写体のレジスト膜に転写パターンを複数、漏れ光エリア2が隣接する転写パターン1に重なる程のほとんど隙間なく転写しても、その漏れ光エリア2と隣接する転写パターン1の吸収膜15の残存部分との重なり部分で本来感光させるべきではない部分の被写体のレジスト膜を感光させてしまうことを抑制できる。
【0066】
また、漏れ光エリア2の多層反射膜を数周期あるいは数層残存させたことにより、転写パターン1内の多層反射膜13と、外側エリア4の多層反射膜13、バッファ膜14、吸収膜15と電気的に導通された状態が確保され、帯電しやすい転写パターン1内の多層反射膜13とアース接続をとることができる。
【0067】
なお、この実施の形態2の反射型マスクでは、アライメントマーク17等の各種マークを形成する部分以外の多層反射膜13を除去する構成としたが、実施の形態1のように、外側エリア4の多層反射膜13を除去しない構成としてもよい。
【0068】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
【0069】
(実施例1)
まず、基板として、外形152mm角、厚さが6.3mmの低膨張のSiO−TiO系のガラス基板を用意した。次いで、上記基板上に、DCマグネトロンスパッタリングにより窒化クロム(CrN:N=10原子%)を被着して、厚さ5nmの導電性膜を形成した。次いで、導電性膜上に、イオンビームスパッタリングにより、EUV光の波長である露光波長13〜14nmの領域の反射膜として適したMoとSiとを被着して、合計厚さ284nmの多層反射膜(Mo:2.8nm、Si:4.2nm、これらを1周期として40周期積層後、最後にSi膜を4nm成膜)を形成した。
【0070】
次いで、多層反射膜上に、DCマグネトロンスパッタリングにより窒化クロム(CrN:N=10原子%)を被着して、厚さ10nmのバッファ膜を形成した。次いで、バッファ膜上に、DCマグネトロンスパッタリングによりTaNを被着して、厚さ28nmの半透過膜を形成した。このとき、タンタルターゲットを用い、Arに窒素を40%添加したガスを用いて成膜を行った。成膜されたTaN膜の組成比は、Ta:N=70:30であった。
【0071】
次いで、半透過膜上に、DCマグネトロンスパッタリングによりTaOを被着して、厚さ14nmの反射防止膜を形成した。このとき、タンタルターゲットを用い、Arに酸素を25%添加したガスを用いて成膜を行った。成膜されたTaO膜の組成比は、Ta:O=30:70であった。このようにして、実施例1の反射型マスクブランクが得られた(図2)。
【0072】
次いで、吸収膜15である半透過膜(TaN膜)及び反射防止膜(TaO膜)を転写エリア1については転写パターンに加工し、ブラインドエリア4の外側エリア3については、アライメントマーク等の各種マークに加工した。転写パターンは、デザインルールがハーフピッチ(hp)45nmのDRAM用のパターンとした(図3A)。
【0073】
まず、上記反射型マスクブランクの吸収膜上にEBレジストを塗布し、EB描画と現像により所定のレジストパターン(第1レジスト膜)を形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとして、吸収膜である反射防止膜と半透過膜を順次エッチングした。このとき、TaO膜はフッ素系ガス(CF)を用いてドライエッチングし、TaN膜は塩素系ガス(Cl)を用いてドライエッチングした。次いで、転写エリア1における反射防止膜をマスクとして、バッファ膜をエッチングした。このとき、CrNは塩素と酸素の混合ガス(混合比は体積比で4:1)を用いてドライエッチングした。そして、エッチング後にレジスト膜を除去した。
【0074】
次いで、この構造体上にEBレジストを塗布し、EB描画と現像により転写エリア全体および外側エリア3全体に残存するようなレジストパターン(第2レジスト膜)を形成した(図3B)。次いで、このレジストパターンをマスクにして、多層反射膜をエッチングした。このとき、Si膜とMo膜の積層膜はフッ素系ガス(CF)を用いてドライエッチングした(図3C)。その後、レジスト膜を除去して実施例1の反射型マスクを製造した(図3D)。
【0075】
上記のように製造した反射型マスクを用いて、レジスト膜が形成された1枚の被写体に対して、隣り合う転写パターンが隙間ない配置、すなわちブラインドエリア4の漏れ光エリア2が隣接する転写パターン1に重なるように露光したところ、重なり部分における転写パターンとは関係ないレジスト膜の感光を抑制することができた。これは、漏れ光エリア2には多層反射膜13が存在していないため、漏れ光エリア2に漏れてくるEUV光がほとんど反射されず、隣接する転写パターンのレジスト膜の感光に影響を与えないためと考えられる。
【0076】
なお、この被写体への連続露光時において、反射型マスクの多層反射膜13がチャージアップを起こす不具合は発生せず、転写エリアの多層反射膜13の帯電をアース接続で十分に逃がすことが出来ており、導電膜12によって導電性が十分確保されていることも確認できた。
【0077】
(実施例2)
まず、基板として、外形152mm角、厚さが6.3mmの低膨張のSiO−TiO系のガラス基板を用意した。次いで、上記基板上に、DCマグネトロンスパッタリングにより窒化クロム(CrN:N=10原子%)を被着して、厚さ5nmの導電性膜を形成した。次いで、導電性膜上に、イオンビームスパッタリングにより、EUV光の波長である露光波長13〜14nmの領域の反射膜として適したMoとSiとを被着して、合計厚さ284nmの多層反射膜(Mo:2.8nm、Si:4.2nm、これらを1周期として40周期積層後、最後にSi膜を4nm成膜)を形成した。
【0078】
次いで、多層反射膜上に、DCマグネトロンスパッタリングにより窒化クロム(CrN:N=10原子%)を被着して、厚さ10nmのバッファ膜を形成した。次いで、バッファ膜上に、DCマグネトロンスパッタリングによりTaBNを被着して、厚さ30nmの半透過膜を形成した。このとき、タンタルとホウ素を含む焼結体ターゲットを用い、Arに窒素を40%添加したガスを用いて成膜を行った。成膜されたTaBN膜の組成比は、Ta:B:N=60:10:30であった。
【0079】
次いで、半透過膜上に、DCマグネトロンスパッタリングによりTaBOを被着して、厚さ14nmの反射防止膜を形成した。このとき、タンタルとホウ素を含む焼結体ターゲットを用い、Arに酸素を25%添加したガスを用いて成膜を行った。成膜されたTaBO膜の組成比は、Ta:B:O=30:10:60であった。このようにして、実施例2の反射型マスクブランクが得られた(図2)。
【0080】
次いで、吸収膜である半透過膜(TaBN膜)及び反射防止膜(TaBO膜)を転写エリア1については転写パターンに加工し、ブラインドエリア4の外側エリア3については、アライメントマーク等の各種マークに加工した。転写パターンは、デザインルールがハーフピッチ(hp)45nmのDRAM用のパターンとした(図3A)。
【0081】
まず、上記反射型マスクブランクの吸収膜上にEBレジストを塗布し、EB描画と現像により所定のレジストパターン(第1レジスト膜)を形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとして、吸収膜である反射防止膜と半透過膜を順次エッチングした。このとき、TaBO膜はフッ素系ガス(CF)を用いてドライエッチングし、TaBN膜は塩素系ガス(Cl)を用いてドライエッチングした。次いで、転写エリアにおける反射防止膜をマスクとして、バッファ膜をエッチングした。このとき、CrNは塩素と酸素の混合ガス(混合比は体積比で4:1)を用いてドライエッチングした。そして、エッチング後にレジスト膜を除去した。
【0082】
次いで、この構造体上にEBレジストを塗布し、EB描画と現像により転写エリア全体及び外側エリア3全体に残存するようなレジストパターン(第2レジスト膜)を形成した(図3B)。次いで、このレジストパターンをマスクにして、多層反射膜をエッチングした。このとき、Si膜とMo膜の積層膜はフッ素系ガス(CF)を用いてドライエッチングした(図3C)。その後、レジスト膜を除去して実施例2の反射型マスクを製造した(図3D)。
【0083】
上記のように製造した反射型マスクを用いて、レジスト膜が形成された1枚の被写体に対して、隣り合う転写パターンが隙間ない配置、すなわちブラインドエリア4の漏れ光エリア2が隣接する転写パターン1に重なるように露光したところ、重なり部分における転写パターンとは関係ないレジスト膜の感光を抑制することができた。これは、漏れ光エリア2には多層反射膜13が存在していないため、漏れ光エリア2に漏れてくるEUV光がほとんど反射されず、隣接する転写パターンのレジスト膜の感光に影響を与えないためと考えられる。
【0084】
なお、この被写体への連続露光時において、反射型マスクの多層反射膜13がチャージアップを起こす不具合は発生せず、転写エリアの多層反射膜13の帯電をアース接続で十分に逃がすことが出来ており、導電膜12によって導電性が十分確保されていることも確認できた。
【0085】
(実施例3)
まず、基板として、外形152mm角、厚さが6.3mmの低膨張のSiO−TiO系のガラス基板を用意した。次いで、上記基板上に、イオンビームスパッタリングにより、EUV光の波長である露光波長13〜14nmの領域の反射膜として適したMoとSiとを被着して、合計厚さ284nmの多層反射膜(Mo:2.8nm、Si:4.2nm、これらを1周期として40周期積層後、最後にSi膜を4nm成膜)を形成した。
【0086】
次いで、多層反射膜上に、DCマグネトロンスパッタリングにより窒化クロム(CrN:N=10原子%)を被着して、厚さ10nmのバッファ膜を形成した。次いで、バッファ膜上に、DCマグネトロンスパッタリングによりTaNを被着して、厚さ28nmの半透過膜を形成した。このとき、タンタルターゲットを用い、Arに窒素を40%添加したガスを用いて成膜を行った。成膜されたTaN膜の組成比は、Ta:N=70:30であった。
【0087】
次いで、半透過膜上に、DCマグネトロンスパッタリングによりTaOを被着して、厚さ14nmの反射防止膜を形成した。このとき、タンタルターゲットを用い、Arに酸素を25%添加したガスを用いて成膜を行った。成膜されたTaO膜の組成比は、Ta:O=30:70であった。このようにして、実施例3の反射型マスクブランクが得られた(図4)。
【0088】
次いで、吸収膜である半透過膜(TaN膜)及び反射防止膜(TaO膜)を転写エリア1については転写パターンに加工し、ブラインドエリア4の外側エリア3については、アライメントマーク等の各種マークに加工した。転写パターンは、デザインルールがハーフピッチ(hp)45nmのDRAM用のパターンとした(図5A)。
【0089】
まず、上記反射型マスクブランクの吸収膜上にEBレジストを塗布し、EB描画と現像により所定のレジストパターン(第1レジスト膜)を形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとして、吸収膜である反射防止膜と半透過膜を順次エッチングした。このとき、TaO膜はフッ素系ガス(CF)を用いてドライエッチングし、TaN膜は塩素系ガス(Cl)を用いてドライエッチングした。次いで、転写エリアにおける反射防止膜をマスクとして、バッファ膜をエッチングした。このとき、CrNは塩素と酸素の混合ガス(混合比は体積比で4:1)を用いてドライエッチングした。そして、エッチング後にレジスト膜を除去した。
【0090】
次いで、この構造体上にEBレジストを塗布し、EB描画と現像により転写エリア全体および外側エリア3のアライメントマーク17等の各種マークが残存するようなレジストパターン(第2レジスト膜)を形成した(図5B)。次いで、このレジストパターンをマスクにして、多層反射膜を5周期程度(厳密に5周期でなくとも、おおよそで十分に効果がある。)残すようにエッチングした。このとき、Si膜とMo膜の積層膜はフッ素系ガス((CF))を用い、エッチング時間を制御することによりドライエッチングした(図5C)。その後、レジスト膜を除去して実施例3の反射型マスクを製造した(図5D)。
【0091】
上記のように製造した反射型マスクを用いて、レジスト膜が形成された1枚の被写体に対して、隣り合う転写パターンが隙間ない配置、すなわちブラインドエリア4の漏れ光エリア2が隣接する転写パターン1に重なるように露光したところ、重なり部分における転写パターンとは関係ないレジスト膜の感光を抑制することができた。これは、漏れ光エリア2には多層反射膜13が数周期しか存在しておらず、反射膜として実質的に機能しないため、漏れ光エリア2に漏れてくるEUV光がほとんど反射されず、隣接する転写パターンのレジスト膜の感光に影響を与えないためと考えられる。
【0092】
なお、この被写体への連続露光時において、反射型マスクの多層反射膜13がチャージアップを起こす不具合は発生せず、転写エリアの多層反射膜13の帯電をアース接続で十分に逃がすことが出来ており、漏れ光エリア2の多層反射膜13を数周期残したことによって導電性が十分確保されていることも確認できた。
【0093】
(実施例4)
まず、基板として、外形152mm角、厚さが6.3mmの低膨張のSiO−TiO系のガラス基板を用意した。次いで、上記基板上に、イオンビームスパッタリングにより、EUV光の波長である露光波長13〜14nmの領域の反射膜として適したMoとSiとを被着して、合計厚さ284nmの多層反射膜(Mo:2.8nm、Si:4.2nm、これらを1周期として40周期積層後、最後にSi膜を4nm成膜)を形成した。
【0094】
次いで、多層反射膜上に、DCマグネトロンスパッタリングにより窒化クロム(CrN:N=10原子%)を被着して、厚さ10nmのバッファ膜を形成した。次いで、バッファ膜上に、DCマグネトロンスパッタリングによりTaBNを被着して、厚さ30nmの半透過膜を形成した。このとき、タンタルとホウ素を含む焼結体ターゲットを用い、Arに窒素を40%添加したガスを用いて成膜を行った。成膜されたTaBN膜の組成比は、Ta:B:N=60:10:30であった。
【0095】
次いで、半透過膜上に、DCマグネトロンスパッタリングによりTaBOを被着して、厚さ14nmの反射防止膜を形成した。このとき、タンタルとホウ素を含む焼結体ターゲットを用い、Arに酸素を25%添加したガスを用いて成膜を行った。成膜されたTaBO膜の組成比は、Ta:B:O=30:10:60であった。このようにして、実施例4の反射型マスクブランクが得られた(図4)。
【0096】
次いで、吸収膜である半透過膜(TaBN膜)及び反射防止膜(TaBO膜)を転写エリア1については転写パターンに加工し、ブラインドエリア4の外側エリア3については、アライメントマーク等の各種マークに加工した。転写パターンは、デザインルールがハーフピッチ(hp)45nmのDRAM用のパターンとした(図5A)。
【0097】
まず、上記反射型マスクブランクの吸収膜上にEBレジストを塗布し、EB描画と現像により所定のレジストパターン(第1レジスト膜)を形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとして、吸収膜である反射防止膜と半透過膜を順次エッチングした。このとき、TaBO膜はフッ素系ガス(CF)を用いてドライエッチングし、TaBN膜は塩素系ガス(Cl)を用いてドライエッチングした。次いで、転写エリアにおける反射防止膜をマスクとして、バッファ膜をエッチングした。このとき、CrNは塩素と酸素の混合ガス(混合比は体積比で4:1)を用いてドライエッチングした。そして、エッチング後にレジスト膜を除去した。
【0098】
次いで、この構造体上にEBレジストを塗布し、EB描画と現像により転写エリア全体及び外側エリア3のアライメントマーク17等の各種マークが残存するようなレジストパターン(第2レジスト膜)を形成した(図5B)。次いで、このレジストパターンをマスクにして、多層反射膜を5周期程度(厳密に5周期でなくとも、おおよそで十分に効果がある。)残すようにエッチングした。このとき、Si膜とMo膜の積層膜はフッ素系ガス((CF))を用い、エッチング時間を制御することによりドライエッチングした(図5C)。その後、レジスト膜を除去して実施例4の反射型マスクを製造した(図5D)。
【0099】
上記のように製造した反射型マスクを用いて、レジスト膜が形成された1枚の被写体に対して、隣り合う転写パターンが隙間ない配置、すなわちブラインドエリア4の漏れ光エリア2が隣接する転写パターン1に重なるように露光したところ、重なり部分における転写パターンとは関係ないレジスト膜の感光を抑制することができた。これは、漏れ光エリア2には多層反射膜13が数周期しか存在しておらず、反射膜として実質的に機能しないため、漏れ光エリア2に漏れてくるEUV光がほとんど反射されず、隣接する転写パターンのレジスト膜の感光に影響を与えないためと考えられる。
【0100】
なお、この被写体への連続露光時において、反射型マスクの多層反射膜13がチャージアップを起こす不具合は発生せず、転写エリアの多層反射膜13の帯電をアース接続で十分に逃がすことが出来ており、漏れ光エリア2の多層反射膜13を数周期残したことによって導電性が十分確保されていることも確認できた。
【0101】
本発明は上記実施の形態1,2に限定されず、適宜変更して実施することができる。例えば、上記実施の形態1,2においては、バッファ膜の材料として、CrN膜を用いた場合について説明しているが、本発明においては、CrNの代わりにRuを主成分とする材料を用いても良い。その場合、Ruを主成分とする材料はEUV光に対して透明性が高いので、除去しなくても反射型マスクとして使用することができる。また、バッファ膜は必要に応じて設ければ良く、吸収膜へのパターン形成方法、条件によっては、多層反射膜上に直接吸収膜を設けても良い。さらに、上記実施の形態1,2においては、吸収膜として半透過膜及び反射防止膜の積層膜を用いた場合について説明しているが、吸収膜の材料や構成について他のものを用いても良い。また、上記実施の形態における材料、サイズ、処理手順などは一例であり、本発明の効果を発揮する範囲内において種々変更して実施することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 転写エリア
2 漏れ光エリア
3 外側エリア
4 ブラインドエリア
11 基板
12 導電性膜
13 多層反射膜
14 バッファ膜
15 吸収膜
16 レジスト膜(第2レジスト膜)
17 アライメントマーク
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7