(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも20重量%ポリアミドポリマー成分を含むレーザー焼結性粉末を含む粉末組成物であって、該ポリアミドポリマー成分が1種以上の分岐ポリアミドポリマー類を含み、その量が、レーザー焼結性粉末の少なくとも5重量%を構成し、該1種以上の分岐ポリアミドポリマー類が(i)3個のカルボキシリック基、アミノ基もしくはアミド基を有する化合物と(ii)環状アミド、アミノ酸、および/またはその組み合わせとの反応生成物からなる、上記粉末組成物。
前記分岐ポリアミドが、3個以上のカルボキシル基を有する1以上のポリカルボン酸類;または3個以上のアミン基を有する1以上のポリアミン類;または3個以上のアミド基を有する1以上のポリアミド類;またはその組み合わせを含む反応物の反応生成物を含む、請求項1に記載の粉末組成物。
前記分岐ポリアミドが、ベンゼン−ペンタカルボン酸;メリト酸;1,3,5,7ナフタリン−テトラカルボン酸;2,4,6ピリジン−トリカルボン酸;ピロメリト酸;トリメリト酸;トリメシン酸;3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸;3,5,3’,5’−ビピリジルテトラカルボン酸;3,5,3’,5’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸;1,3,6,8−アクリジンテトラカルボン酸;1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸;その無水物類もしくはエステル類;またはその混合物から選択されるポリカルボン酸の反応生成物を含む、請求項3に記載の粉末組成物。
粉末組成物をレーザー焼結して試験標本を形成したとき、当該粉末組成物から形成したSLS試験標本は少なくとも3%の破断点伸びを示す、請求項1に記載の粉末組成物。
ポリマーマトリックスを含む複数の焼結層を含む三次元物品であって、ここで、1種以上の分岐ポリアミドポリマー類が、ポリマーマトリックスの少なくとも5重量%を構成し、該1種以上の分岐ポリアミドポリマー類が(i)3個のカルボキシリック基、アミノ基もしくはアミド基を有する化合物と(ii)環状アミド、アミノ酸、および/またはその組み合わせとの反応生成物からなる、上記三次元物品。
【発明の概要】
【0007】
[007]一態様では、本発明は、焼結法、例えば、選択的レザー焼結(SLS)または選択的マスク焼結(SMS)のような焼結法を使用する三次元物品形成するのに有用な粉末組成物を提供する。粉末組成物は、好ましくは、1種以上の分岐ポリマー類を、好ましくは、少なくとも約5重量%の量で含有する。
【0008】
[008]別の態様では、本発明は、ポリアミドポリマー成分を、好ましくは、少なくとも20重量%のレーザー焼結性粉末を構成する量で含有するレーザー焼結性粉末を有する粉末組成物を提供する。該ポリアミドポリマー成分は、好ましくは、1種以上の分岐ポリアミドポリマーを含有し、好適な態様で、少なくとも約5重量%のレーザー焼結性粉末を構成する量で存在する。現在のところ好適な実施態様では、分岐ポリアミドポリマーは、3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸(またはその前駆体もしくは誘導体)を含む反応物の反応生成物である。
【0009】
[009]さらに別の態様では、本発明は、焼結性粉末、好ましくは、レーザー焼結性粉末の形成法を提供する。この方法は、好ましくは、(i)3個のカルボキシリック基、アミノ基もしくはアミド基を有する化合物と(ii)環状アミド、アミノ酸、および/またはその組み合わせとの反応生成物であるポリアミドポリマー成分を提供することを含む。ポリアミドポリマー成分は、好ましくは、1種以上の分岐ポリアミドポリマー類を含む。当該方法は、さらに、例えば、ポリアミドポリマー成分を含むSLS粉末のような焼結性粉末を形成することを含む。ポリアミドポリマー成分は、好ましくは、焼結性粉末の少なくとも約20重量%の構成し、好ましくは、一定量の1種以上の分岐ポリアミドポリマー類を含有し、当該ポリマー類は焼結性ポリマーの少なくとも約5重量%を構成する。
【0010】
[010]さらに別の態様では、本発明は、層毎の選択的焼結方法において三次元物品を形成する、本明細書中で記載する粉末組成物の焼結方法を提供する。一実施態様では、少なくとも約5重量%の量の1種以上の分岐ポリマー類を含有する粉末組成物を提供する。好適な実施態様では、粉末組成物は、少なくとも約20重量%のポリアミドポリマーを含む。粉末層の少なくとも一部を、次いで、選択的に溶融する。三次元物品は、一層以上の追加の層を次の層に適用することにより形成する。
【0011】
[011]さらに別の態様では、本発明は、本明細書中で記載する適当な焼結性粉末組成物から形成される複数の焼結層を含む三次元物品を提供する。焼結層は、好ましくは、1種以上の分岐ポリマー類を有するポリマーマトリックスを含有し、当該ポリマー類はポリマーマトリックス少なくとも約5重量%を構成する。
【0012】
[012]上記発明の概要は、本発明の各開示した実施態様およびすべての実施を記載することを意図していない。続く記述は、例証的実施態様を特に例示する。本願中の幾つかの箇所で、例の列挙により指針を与え、これらの例を種々組み合わせて使用できる。各例では、列挙したリストは代表群としてのみ役割であり、限定的リストとして解釈すべきでない。
【0013】
[013]本発明の一以上の実施態様の詳細は、下記の添付図面および特許請求の範囲に記載されている。本発明の他の特徴、目的および利点は以下の記述および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになろう。
【0014】
[014]別に特記しない限り、本明細書中で使用する下記の用語は下記に与える意味を示す。
[015]本願中で使用する一定の技術の論議および詳述を単純化する意味として、「基(group)」および「成分(moiety)」という用語は、置換を許されるもしくは置換できる化学種とそのように置換を許されないもしくは置換できない化学種とを区別するのに使用する。したがって、「基」という用語を、化学置換基を記載するために使用するとき、記載される化学物質は非置換基およびO、N、Si、もしくはS原子を持つ基を含み、例えば、鎖中(アルコキシ基中のような)ならびにカルボニル基もしくはその他の慣用置換基を含む。「成分」という用語を化学化合物または置換体を記載するために使用する場合、非置換化学物質のみが含まれることを意図する。例えば、「アルキル基」という語句は、メチル、エチル、プロピル、t−ブチル等のような純粋な開鎖飽和炭化水素アルキル置換体ばかりでなく、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルスルホニル、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル等のような当業界で公知の別の置換基を有するアルキル置換基も含むことを意図する。したがって、「アルキル基」には、エーテル基、ハロアルキル類、ニトロアルキル類、カルボキシアルキル類、ヒドロキシアルキル類、スルホアルキル類等が含まれる。他方、「アルキル成分」という語句は、メチル、エチル、プロピル、t−ブチル等のような純粋な開鎖飽和炭化水素アルキル置換体のみの含有に制限される。したがって、例えば、「アルキル基」という用語は、「アルキル成分」という用語を包含する。特定基の開示は、当該特定基の相当成分の明示の開示であることも意図する。
【0015】
[016]同一もしくは相違することのできる基は、「独立して」何物かであるとして言及する。
[017]特記しない限り、「ポリマー」という用語は、ホモポリマー類およびコポリマー類(すなわち、2種以上の異なるモノマーからなるポリマー)の双方を含む。
【0016】
[018]「含む(comprisesおよびincudes)」という用語ならびにその変形は、これらの用語が詳細な説明中および特許請求の範囲中記載されている場合、制限する意味を示さない。
【0017】
[018]「好適な」および「好ましくは」という用語は、一定の状況下、一定の利点を達成できる発明の実施態様に言及する。しかし、同じもしくは他の状況下、その他の実施態様も好適であり得る。さらに、一以上の好適な実施態様の記載は、その他の実施態様が有用でないということを示唆しているのではないし、本発明の範囲からその他の実施態様を排除することを意図していない。
【0018】
[020]本明細書中で使用する、“a”、“an”、“the”、「少なくとも一つ(at least one)」、「一以上(one or more)」は相互変換して使用する。したがって、例えば、添加剤(“an” additive)を含む被覆用組成物は、当該被覆用組成物が一以上の添加剤(“one or more” additive)を含むことを意味すると解釈できる。
【0019】
[021]さらに本明細書中では、端点(endopoints)による数値範囲は、その範囲内のすべての数値を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。範囲の開示は、より広範囲内に含まれるすべての部分的範囲の開示を含む(例えば、1〜5は、1〜4、1.5〜4.5、1〜2等を開示する)。
【0020】
[022]「焼結性粉末」という用語は、接着層からなる三次元物品を形成するために層毎の方法で選択的に焼結され得る粉末に言及する。
[023]「レーザー焼結性粉末」という用語は、三次元物品を形成するためにSLS製作機中で焼結され得る粉末に言及する。レーザー焼結性粉末は、好ましくは、(i)SLS製作機の形成表面に適用でき、(ii)SLS製作機のレーザービームにより溶融して第一層を形成でき(一以上の追加の物質の存在下もしくは不存在下のいずれか)、および(iii)第一層に接合した第二上層を形成できる。
【0021】
[024]特記しない限り、「試験標本」および「SLS試験標本」という用語は、適当なSLS法により製造される棒状物であって、国際標準化機構(ISO)3167で特定されるType1A多目的犬骨様の好適な寸法を有するもの(すなわち、80×10×4ミリメートル(長×幅×厚)である中心部分を有する多目的犬骨様)に言及する。試験標本の焼結層は、試験標本の平面に関して平面方向に向ける(すなわち、試験標本の幅および長により確定される平面に対して平行)。
【0022】
[025]「分岐性単位(branching unit)」という用語は、三以上の価数を有し三以上の分岐単位(branch unit)に共有結合した構造単位に言及する。
[026]「分岐単位」という用語は、分岐性単位に少なくとも一末端に結合される一価もしくは二価のオリゴマーもしくはポリマーセグメントに言及する。
【0023】
[027]「分岐ポリマー(branched polymer)」という用語は、一以上の分岐性単位および三以上の分岐単位を含むポリマーに言及する。
[028]「融点」または「溶融温度」という用語は、ISO 11357−3試験法に準じて示差走査熱量計を使用して決定した融点曲線のピーク値に言及する。
【0024】
[029]「再結晶温度」という用語は、ISO 11357−3試験法に準じて示差走査熱量計を使用して決定した再結晶曲線のピーク値に言及する。
[030]「ポリカルボン酸」という用語には、ポリカルボン酸類およびその誘導体類もしくは前駆体類、例えば、無水物類もしくはエステル類等がある。同様に、「カルボキシル基」という用語には、カルボキシル基およびその前駆体類もしくは誘導体類、例えば、無水基もしくはエステル基等がある。したがって、例えば、二個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸は、二個のカルボキシル基、二個のエステル基、一個のエステル基および一個のカルボキシル基、または一個の無水基のいずれかを有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[036]一態様では、本発明は、例えば、選択的レーザー焼結(SLS)や選択的マスク焼結(selective mask sintering:SMS)のような焼結法により三次元物品を形成するのに有用な粉末組成物を提供する。好適な実施態様では、粉末組成物は焼結性粉末、より好ましくは、レーザー焼結性粉末であり、当該レーザー焼結性粉末には、適当量の一種以上の分岐したポリマーがある。焼結性粉末は、好ましくは、少なくとも約5重量%の一種以上の分岐ポリマー類を含み、そしてより好適には、少なくとも約5重量%の一種以上の分岐ポリアミドポリマー類を含む。
【0027】
[037]本発明の好適な粉末はレーザー焼結性粉末である。レーザー焼結性である粉末組成物は、典型的には、例えば、適切な粒度、および/または粒度分布、熱移動特性、溶融粘度、嵩密度、流動特性(例、レーザー焼結用製作機の床)、溶融温度、および再結晶温度のような適切なバランスを示す特性を呈する。レーザー焼結性粉末組成物が典型的に呈するこれらおよび他の特性のさらなる論議を以下に与える。「レーザー焼結性」という用語は下記の論議中で使用するが、特性の大半は、例えば、SMS法のようなその他の焼結法に適した粉末でもあり得る。本発明の好適な粉末組成物は一種以上の次の特性(例、許容できる溶融温度、良好な流動性、許容できる美観および機械品質の焼結物品を形成でき、そして焼結法に不適切なプロセス特性を示さない)を示し、これらの特性すべて最適化する。
【0028】
[038]SLS法に有用な粉末組成物について、好ましくは、SLS製作機のプロセスパラメーターの範囲内で実施できる。現在市販されているSLS製作機では、これらのプロセスパラメーターには、例えば、製作機の最大溶融温度(現在市販されているSLS製作機は、典型的には、約230℃以下の溶融温度を示す物質を焼結できる)および目標焼結領域上に粉末の薄層を積層する製作機による移動機構(ローラーはしばしば部分形成床上に供給床から粉末層を移動させるのに使用される)等である。したがって、例えば、現在のSLS製作機で有用であるには、粉末組成物は、好ましくは、約230℃未満(より好ましくは、約220℃未満、さらにより好ましくは、約210℃未満)の溶融温度を示すポリマー等があり、好ましくは、粉末形態で充分に流動性(例、供給床から部分形成床へ)であり、薄い平らな粉末層を形成する。
【0029】
[039]レーザー焼結性粉末組成物には、好ましくは、1種以上の半結晶性もしくは実質的に結晶性ポリマー等がある。
[040]レーザー焼結性であると考えられる粉末について、典型的には、少なくとも可及的に少ない量の機械的および美的特性を有する焼結物品の形成もできる。例えば、焼結物品は、普通の状況下で損傷されることなく取り扱うことができなければならない。加えて、レーザー焼結性粉末組成物は、好ましくは、実質的に滑らかであり、最小オレンジピール以下を呈する充分な解像度を示す表面のSLS物品を形成できる。「オレンジピール」という用語は、一般に、SLS物品上に、不適切な粗面、または孔あき問題や歪み問題のような表面欠陥の存在を指す(前記問題は物品の外観や機能に悪影響をもたらす)。
【0030】
[041]さらに、SLSのような焼結用途に使用するのに適している粉末について、粉末は、好ましくは、例えば、カールしたり、発煙したりするような不適切なプロセス特性を示さない。本明細書で使用される、「カール」という用語は、焼結処理の間の相変化からもたされるSLS物品の歪みを指し、部分製作中一カ所以上の焼結層(典型的には水平面からはずれる)のねじれをもたらし得る。「発煙」という用語は、部分形成の間、揮発物の放出を指し、例えば、焼結機またはその中の粉末床の表面上で濃縮し得る。
【0031】
[042]本発明の粉末組成物は、好ましくは、1種以上のレーザー焼結性粉末を含む。レーザー焼結性粉末は、適切ないずれかのポリマーもしくはポリマー類の組み合わせを適当量で含むことができる。粉末が2種以上の異なるポリマー材料を含む場合、当該異なるポリマー材料は,(i)別の粒子として、および/または(ii)異なるポリマー材料の混合物を含む粒子内のいずれかで、粉末組成物中に配合できる。同様に、レーザー焼結性粉末は、1種以上の追加の材料(例、充填剤やその他の添加剤)を、(i)ポリマー粒子とブレンドしたもしくはポリマー粒子上に吸収させた別の成分として、および/または(ii)ポリマー粒子内の緊密混合物として含むことができる。
【0032】
[043]レーザー焼結性粉末は、好ましくは、1種以上の分岐ポリマー類、より好ましくは1種以上の分岐ポリアミドポリマー類を含む。理論により束縛されることを意図しないが、適切量の1種以上の分岐ポリマー類の存在は、本発明の好適な粉末組成物の卓越したレーザー焼結性能に貢献すると思われる。
【0033】
[044]分岐ポリマーは、例えば、最終焼結製品の所望の特性(例、可撓性、強度、解像度、色等のレベル)を含む意図する用途、ポリマー組成物と混合されるもしくは接触するその他の材料、所望のポリマータイプ、コストの考慮、または焼結物品を形成するの使用するプロセスもしくは機械に依存して異なる構造的形状を有し得る。SLS製作機で適切に処理される場合、1種以上の分岐ポリマー類を含有する本発明の粉末は、分岐ポリマー類または分岐ポリマー類と1種以上の任意のその他のポリマー類とから形成されるポリマーマトリックスを有するSLS物品を、好ましくは、形成できる。
【0034】
[045]適切な分岐ポリマー類の例には、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリオレフィン類(例、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリエーテルケトン類、ポリウレタン類、ポリビニルアセテート類、ポリメタクリレート類、フェノール類、イオノマー類、ポリアセタール類、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー類、ポリイミド類、ポリカルボネート類、またはそれらの組み合わせから選択される分岐単位を有するもの等がある。分岐ポリアミドポリマー類が好適な分岐ポリマー類である。
【0035】
[046]分岐ポリアミドポリマー類には、好ましくは、複数のポリアミド分岐単位等がある。適切なポリアミド分岐単位の例には、ラクタム類もしくはアミノ酸類、好ましくは、C4−C20ラクタム類やC2−C20アミノ酸類を含む反応物から調製されるポリアミド類等がある。ナイロン11、ナイロン12、ならびにそのコポリマー類および誘導体が現在好適な分岐単位の例である。ナイロン11分岐単位の例には、C11ラクタム、C11アミノ酸、またはその組み合わせを含む反応物から形成されるナイロンオリゴマー、ホモポリマーもしくはコポリマー等がある。ナイロン12分岐単位の例には、C12ラクタム、C12アミノ酸、またはその組み合わせを含む反応物から形成されるナイロンオリゴマー、ホモポリマーもしくはコポリマー等がある。適切なポリアミド分岐単位は、上記のいずれか、二酸コモノマー類(好ましくは、C2−C36二酸)、ジアミン−コモノマー(好ましくは、C2−C36ジアミン類)、またはその組み合わせを含む反応物から形成されるポリアミド類等がある。これらのコモノマー類は脂肪族、脂環式、または芳香族のものであり得る。
【0036】
[047]分岐ポリマー類には、いずれの適切な分岐程度であっても良い。しかし、少なくとも、分岐ポリマー類は、好ましくは、少なくとも一つの分岐性単位(より好ましくは分岐ポリマー当たり単一分岐性単位)を含む。しかし、所望の場合、分岐ポリマー類は、例えば、2以上の分岐性単位、3以上の分岐性単位、4以上の分岐性単位、5以上の分岐性単位等のような2以上の分岐性単位を含む。幾つかの実施態様では、粉末組成物は、単一の分岐性単位および当該分岐性単位に共有結合した少なくとも3(例、3、4、5等)のオリゴマーアームもしくはポリマーアームを有する分岐ポリマーを含む。このような分岐ポリマーはしばしば「スター」ポリマーと称される。現在好適な実施態様では、分岐ポリマーは、単一分岐性単位および当該分岐性に共有結合(好ましくは、アミド結合を介して)した3以上のオリゴマーポリアミドアームもしくはポリマーポリアミドアームを含む。幾つかの実施態様では、粉末組成物は、異なる程度の分岐性および/または類似もしくは異なる分岐単位を有する2以上の分岐ポリマー類を含むことができる。
【0037】
[048]理論に束縛されることを意図しないが、単一分岐性単位の存在がSLS法における本発明の一定の好適粉末実施態様により示される卓越したリサイクル可能性に貢献すると思われる。
【0038】
[049]例えば、超分岐ポリマー類ないしデンドリマー類のような高度に分岐したポリマー類を、所望の場合、使用できる。このように高度に分岐したポリマー類は、一定の用途に望ましくあり得る一以上の特徴を有し得る。例えば、このように高度に分岐したポリマー物質は、(線状ポリマー類似体に対して)不適切な溶融粘度の上昇をもたらすことなく達成される高分子量を可能にし得る。加えて、このように高度に分岐したポリマー類は、線状ポリマー類似体に比較して、ポリマー分岐当たり多数の末端基をも示す。
【0039】
[050]本発明の分岐ポリマー類は、いずれかの適当な組み合わせでいずれかの適当な末端基を含むことができる。好適な末端基の例には、カルボキシル基類(無水基もしくはエステル基を含む)、アミン基類(好ましくは、第一級アミン類)、アミド基類、アルキルまたはアリール基類、およびそれらの組み合わせ等がある。好適な実施態様では、分岐ポリマーのすべての末端基が、互いに同じおよび/または実質的に同じ基(例、末端基が実質的にすべてアミン基または実質的にすべてカルボキシル基である)と実質的に非反応性である。現在好適な実施態様では、分岐ポリマーは、カルボキシ末端基を有ししかもわずかのもしくは本質的にアミン末端基を有しない分岐ポリアミドポリマーである。
【0040】
[051]本発明の分岐ポリマー類はいずれの適当な分子量を有してもよい。適当な分子量の非限定的例には、少なくとも約8,000の数平均分子量(Mn)、より好ましくは、少なくとも12,000、そしてさらにより好ましくは少なくとも16,000の数平均分子量(Mn)である。このような分岐ポリマー類は、好ましくは、約60,000未満、より好ましくは、約40,000未満、そしてさらにより好ましくは、約32,000未満のMnを有する。
【0041】
「052」本発明の分岐ポリマー類を製造するのに、いずれかの適当な材料およびいずれかの適当なプロセスを使用してもよい。分岐させるために、典型的には、三以上の反応性官能基を有する一以上の三またはそれ以上の官能性(例、4−官能性、5−官能性、6−官能性等)化合物を含む反応物から分岐ポリマー類を製造し得る。このような分岐性化合物類中の反応性官能基の数に制限はないが、3−官能性化合物および4−官能性化合物が好適である。好適な反応性官能基には、カルボキシル基(無水基もしくはエステル基を含む)、アミン基、またはアミド基等がある。分岐性化合物の官能基は、好ましくは、同じタイプの基(例、実質的にすべてカルボキシル、実質的にすべてアミン、もしくは実質的にすべてアミド)であるが、官能基類のいずれかの適当な組み合わせを使用することができる。ポリアミン類、ポリアミド類、およびポリカルボン酸類が好適な分岐性化合物であるが、現在のところ、ポリカルボン酸類が好適である。
【0042】
[053]好適な実施態様では、分岐ポリアミドは、AB化合物およびBn化合物(式中、nは3以上、より好ましくは、3〜10,さらにより好ましくは3または4であり、最適は3である;AおよびBは独立してカルボキシル基類(無水基またはエステル基を含む)、アミン基類、またはアミド基類から選択され、AおよびBは、互いに反応できる相補的官能基である)の反応生成物である。現在好適な実施態様では、Aはアミン基であり、Bはカルボキシル基である。本発明の目的のため、無水基は2個のカルボキシル基を含むと考えられるべきである。
【0043】
[054]ABおよびBn化合物の化学量論は、所望粘度および/または分子量の分岐ポリマーを得るために変動させることができる。一定の実施態様では、化学量論は、約0.0001:1〜約0.03:1(モル等量Bn:モル等量AB)、より好ましくは、約0.001:1〜約0.02:1(モル等量Bn:モル等量AB)、さらにより好ましくは、0.002:1〜約0.013:1(モル等量Bn:モル等量AB)の範囲に及ぶ。
【0044】
[055]適切なBn化合物の例には、3以上の反応性官能基類、例えば、カルボキシル基(前述したように、エステル基もしくは無水基を含む)、アミン基類、またはアミド基類を有する分岐性化合物等がある。3以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸類が現在好適である。適当なポリカルボン酸類の例には、ベンゼン−ペンタカルボン酸;メリト酸;1,3,5,7ナフタリン−テトラカルボン酸;2,4,6ピリジン−トリカルボン酸;ピロメリト酸;トリメリト酸;トリメシン酸;3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸;3,5,3’,5’−ビピリジルテトラカルボン酸;3,5,3’,5’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸;1,3,6,8−アクリジンテトラカルボン酸;1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸;その無水物類もしくはエステル類;またはその混合物等がある。芳香族ポリカルボン酸類が現在好適である。いずれの理論に束縛されることを意図しないが、芳香族ポリカルボン酸類は増強した反応性を発揮すると思われる。トリメシン酸は好適なポリカルボン酸である。
【0045】
[056]適切なポリアミン類の例には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリス−(2−アミノエチル)アミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、ビス(6−アミノヘキシル)アミン、1,2,3−トリアミノプロパン、1,2,3,4−テトラアミノブタン、メラミン、トリメチロールプロパンもしくはグリセリンに基づくポリ(プロピレンオキシド)アミン類(例;Jeffamine Tシリーズ)、タロートリアミン類、ならびにその混合物および誘導体等がある。
【0046】
[057]適切なAB化合物類の例には、環状アミド類、アミノ酸類、およびそれらの組み合わせ等がある。環状アミド類は線状AB化合物類ではないが、本明細書中では、これらの化合物をAB化合物類と称する。これらの化合物は、典型的には、適切な条件下で開環してAB化合物を得ることができるからである。このような開環反応は、しばしば、ラクタム類からナイロン類の製造に使用される。
【0047】
「058」適切な環状アミド類の例には、ラクタム類等があり、好ましくは、C8−C20ラクタム類である。C8−C20ラクタム類の具体例には、カプリルラクタム(C8ラクタム)およびラウロラクタム(C12ラクタムであり、慣用的に「ラウリルラクタム」と称される)等がある。現在、好適なものはないが、1種以上の非C8−C20ラクタム類(すなわち、C7以下のラクタム類およびC21以上のラクタム類)、例えば、4−アミノブタン酸もしくはγ−ブチロラクタム;5−アミノペンタン酸もしくはδ−アミノラクタム;またはε−カプロラクタム等も使用できる。
【0048】
[059]適切なアミノ酸類はAB化合物として使用でき、例えば、上記ラクタム類のいずれかの開環体および/または天然アミノ酸類(例、グリシン)を含む。好適なアミノ酸類は6を超える炭素原子を含有し、アミノウンデカン酸が特に好適である。
【0049】
[060]現在、好適なAB類化合物類にはアミノウンデカン酸、ラウロラクタム、およびその混合物等がある。
「061」一定の好適実施態様では、分岐ポリアミドポリマーは、(i)ナイロン11分岐単位(コポリマーもしくは誘導単位、例えば、ナイロン6,11を含む)、(ii)ナイロン12分岐単位(コポリマーもしくは誘導単位、例えば、ナイロン11,12を含む)、または(iii)その組み合わせ等であることができる。幾つかの実施態様では、ナイロン11およびナイロン12分岐単位双方を含む分岐ポリアミドポリマーを、例えば、ラウロラクタムおよびアミノウンデカン酸の混合物と1種以上の分岐性化合物とを組み合わせて使用して製造できる。このような実施態様では、約9部のラウロラクタムを約1部のアミノウンデカン酸当たりに含ませる。
【0050】
[062]分岐ポリアミドを形成するのに使用される反応混合物は、例えば、モノアミン類もしくはジアミン類、モノカルボン酸類もしくはジカルボン酸類、またはその組み合わせのような1種以上の追加反応物も含ませることができる。
【0051】
[063]好適な実施態様では、分岐ポリアミドポリマーは、(i)3もしくはそれ以上のカルボキシル基を有する3もしくはそれ以上の官能性カルボン酸である第1化合物と、(ii)ラクタム、アミノ酸もしくはその組み合わせ(好ましくは、C8−C20ラクタム)である第2化合物との反応生成物である。このような実施態様では、反応混合物は、1種以上の3もしくはそれ以上の官能性カルボン酸および1種以上の1もしくは2−官能性カルボン酸の組み合わせを含むことができる。このような混合物は、好ましくは、少なくとも約40重量%の1種以上の3もしくはそれ以上の官能性カルボン酸、より好ましくは、少なくとも約65重量%の1種以上の3もしくはそれ以上の官能性カルボン酸、さらにより好ましくは少なくとも約95重量%の1種以上の3もしくはそれ以上の官能性カルボン酸を、1種以上の3もしくはそれ以上の官能性カルボン酸および1もしくは2−官能性カルボン酸をあわせた総重量を基準に含む。
【0052】
[064]現在、好適な実施態様では、分岐ポリアミドポリマーは、トリメシン酸、そしてより好ましくは、トリメシン酸とラウロラクタムもしくはアミノウンデカン酸双方を含む反応物の反応生成物である。特に好適な実施態様では、分岐ポリアミドポリマーは、約0.5重量%〜約1.2重量%のトリメシン酸、より好ましくは、約0.65重量%〜約1.1重量%のトリメシン酸、そしてさらにより好ましくは、約0.85重量%〜約1重量%のトリメシン酸(反応混合物の総重量基準)を含有する反応物の反応生成物である。
【0053】
[065]ラクタムが含まれるとき、反応混合物は、好ましくは、分岐ポリアミドポリマーの加水分解重合を効率的に促進させるために適量の水を含ませる。好適な実施態様では、反応混合物は、少なくとも約2重量%の水、そしてより好ましくは、約2重量%〜約6重量%の水を含む。
【0054】
[066]現在、好適ではないが、その他の重合アプローチは、反応物としてA
2化合物およびB
n化合物(ここで、A、Bおよびnは上述したとおりである。)を含ませて使用できる。このような重合アプローチでは、適切な工程は、好ましくは、早すぎるゲル化を回避すべきである。
【0055】
[067]所望の場合、分岐ポリマー類およびいずれかの任意のその他のポリマーを1種以上の適切な末端キャップ性化合物で末端キャップできる。末端キャップ性化合物は、例えば、分岐ポリマーを形成するのに使用される反応混合物に添加され得るか、または予備形成した分岐ポリマーと後に反応され得る。分岐ポリマーの末端基と反応するいずれの適切な化合物を使用できる。例えば、カルボキシル末端基に対して、アミン化合物(例、モノアミン化合物類)、例えば、アミノヘキサン、アミノドデカン、トリデシルアミン、オクタデカノアミン、2−エチル−1−ヘキサンアミン、2−メトキシエチルアミン、3−(2−エチルヘキソキシ)−1−プロパナミン、シクロヘキサナミン、ベンゼンメタナミン、2−ベンゼンエタナミン、t−ブチルアミン、アニリン、またはそれらの混合物等のアミン化合物を使用できる。
【0056】
[068]1種上以上の任意の安定剤を本発明の分岐ポリアミドを形成するのに使用できる。任意の適量の1種以上の安定剤を使用できる。一定の実施態様では、分岐ポリアミドポリマーを形成するのに使用する反応混合物は、好ましくは、約0〜約0.5重量%の1種以上の安定剤を含む。いくらかの適切な安定剤の例には、例えば、フェノール性抗酸化剤、芳香族ヒンダードアミン安定剤もしくは脂肪族ヒンダードアミン安定剤のような抗酸化剤;例えば、ホスホナイト系もしくはオルガノ−ホスフェート系プロセス安定剤のようなプロセス安定剤;またはその混合物等を含み得る。
【0057】
[069]一定の実施態様では、分岐ポリアミドポリマーを形成するための反応混合物は、好ましくは、ホスホナイト系プロセス安定剤およびフェノール性抗酸化剤の混合物等があり、これらは、好ましくは、約1:4〜約2:1(フェノール性抗酸化剤対ホスホナイト系プロセス安定剤)の化学量論比、より好ましくは約1:2〜約3:4(フェノール性抗酸化剤対ホスホナイト系プロセス安定剤)で存在する。
【0058】
[070]分岐したポリマーを形成するための反応物は、すべてを一度ブレンドするかまたは反応器にいずれかの適当な順番で加えることができる。
[071]好適な実施態様では、本発明の粉末組成物は適切量のポリアミドポリマー成分を含む。ポリアミドポリマー成分は、粉末組成物を基準に、好ましくは、少なくとも約20重量%、より好ましくは少なくとも約50重量%、そしてさらに好ましくは少なくとも約60重量%を含む。ポリアミドポリマー成分は、好ましくは、適切量の1種以上の分岐ポリアミドポリマー類を含む。好適な実施態様では、好ましくは、少なくとも約25重量%、より好ましくは少なくとも約40重量%、そしてさらに好ましくは少なくとも約50重量%の1種以上の分岐ポリアミドポリマー類を含む。好ましくは、全粉末組成物は、少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも約10重量%、さらにより好ましくは少なくとも約20重量%、さらにより好ましくは少なくとも約30重量%、そして最適には少なくとも約40重量%の1種以上の分岐ポリアミドポリマー類を含む。理論により束縛されることを意図しないが、適切量の1種以上の分岐ポリアミドポリマー類の存在は、例えば、流動性を改良し、焼結部分の機械的強度を改良することにより、本発明の好適な粉末組成物の卓越したレーザー焼結性特性に寄与すると思われる。
【0059】
[072]一定の実施態様で、当該量のポリアミド成分および/または分岐ポリアミドポリマーは上記重量範囲の範囲外であることが意図される。これは、例えば、特に高密度の充填剤が粉末組成物に含まれる。
【0060】
[073]幾つかの実施態様では、非ポリアミド分岐ポリマー類(例、分岐ポリエステルポリマー類等)は、分岐ポリアミドポリマー類について上述した量と同様の量で使用できる。
【0061】
[074]ポリアミドポリマー成分に1種以上の線状(すなわち、非−分岐)ポリアミドポリマー類を含ませることができる。このような実施態様では、該線状ポリアミドポリマー類を予備形成したポリマーとして加えることができ、または分岐ポリアミドポリマーの重合中にその場で形成できる。
【0062】
[075]ポリアミドポリマー成分は、好ましくは、(i)アミン末端基に対して過剰のカルボキシル末端基または(ii)カルボキシル基に対して過剰のアミン基のいずれかで含み、そしてより好ましくは、アミン末端基に対して過剰のカルボキシル末端基を含む。一定の好適な実施態様では、ポリアミドポリマー成分は、好ましくは、アミン末端基当たり少なくとも約3カルボキシル末端基、さらにより好ましくは、アミン末端基当たり約3〜約20カルボキシル末端基、そして最適には、アミン末端基当たり約6〜約20カルボキシル末端基を含む。他の実施態様では、ポリアミドポリマー成分は、カルボキシル末端基あたり少なくとも約3アミン末端基、より好ましくは、カルボキシル末端基あたり少なくとも約3〜約20アミン末端基、そして最適には、カルボキシル末端基あたり少なくとも約6〜約20アミン末端基を含む。所望の場合(例、リサイクル可能性が関心事でない場合)、ポリアミド粉末成分は、上記特定実施態様以外の末端基割合を含むことができる。
【0063】
[076]本発明のポリアミドポリマー成分は、「試験方法」で下記に記載する方法を使用して試験したとき、5kg荷重を使用して190℃で、好ましくは、少なくとも約10(g/10分)、より好ましくは少なくとも約20(g/10分)、そしてさらにより好ましくは少なくとも約35(g/10分)のメルトフローインデックスを示す。ポリアミドポリマー成分は、「試験方法」で下記に記載する方法を使用して試験したとき、5kg荷重を使用して190℃で、好ましくは、約100g/10分未満、より好ましくは、約70g/10分未満、そしてさらにより好ましくは、55g/10分未満のメルトフローインデックスを示す。実質的に100J/g以下(例、約60J/g〜70J/g)の溶融エンタルピーを示す本発明の一定の粉砕粉末は、卓越したレーザー焼結性を示す驚くべきでしかも予期できない結果だった。
【0064】
[077]同様に、約40℃未満(例、約25℃〜約35℃)の焼結性ウィンドウ(すなわち、融点と再結晶点との間の差)を示した本発明の一定の粉砕粉末は、卓越したレーザー焼結性を示す、驚くべきでしかも予期できない結果だった。
【0065】
[078]本発明の粉末組成物は、適切な粒度分布を示すことができる。好ましくは、粒度分布は、適切な機械特性および美的特性を有するSLS物品の製造に適する。好適な実施態様では、粉末組成物の容積平均粒径は、約150μm未満、より好ましくは、約100μm未満、さらにより好ましくは、約70μm未満である。好ましくは、粉末組成物の容積平均粒径は、約5μmを超え、より好ましくは、約10μmを超え、さらにより好ましくは、約30μmを超える。
【0066】
[079]効率的な焼結性を促進するために、本発明の粉末組成物は、好ましくは、少なくとも約0.3g/立方センチメートル(g/cc)、より好ましくは少なくとも約0.35g/cc、さらにより好ましくは少なくとも約0.4g/ccの嵩密度を示す。
【0067】
[080]本発明の好適なポリアミド粉末は優れたリサイクル特性を示す。本発明の好適なリサイクルしたレーザー焼結性ポリアミド粉末は、新たな粉末から形成されるSLS物品に対して(a)オレンジピール性または(b)機械性能における顕著な低下(例、破断点伸び、破断点引張強さ等の10%以上の低下)のいずれかを示さないSLS物品(例、SLS試験標本)を形成できる。本発明の好適なリサイクル粉末は、下記の「試験方法」のリサイクル方法に従って試験したとき、SLS製作機(例、VANGUARD HS HiQ選択的レーザー-焼結システム)中で、リサイクル粉末を少なくとも1回、より好ましくは少なくとも5回、さらにより好ましくは少なくとも7回、そして最も好ましくは少なくとも10回試験に付した後、上記(a)および(b)のいずれも示さない、米国材料試験協会(ASTM)D638 I.TypeIドッグボーンを形成できる。
【0068】
[081]本発明の粉末組成物は、いずれかの適切な方法および材料を使用して形成できる。例えば、SLSやSMSのような選択的焼結法を使用するのに適したポリマー粉末を、本明細書中に記載した1種以上のポリマー材料を含有する溶液もしくは分散液から該ポリマー材料を沈殿させることにより製造できる。焼結性粉末組成物は、例えば、極低温粉砕のような粉砕処理により本明細書中で記載した材料から得ることもできる。
【0069】
[082]本発明の好適なポリマー粉末は、好ましくは、低温(例、約0℃未満、そしてより好ましくは、約−25℃未満)で粉砕することにより得られる。適切な粉砕装置には、例えば、ピンド−ディスクミル(pinned-disc mill)、流動床カウンタージェットミル(fluidized-bed opposed-jet mill)、およびバッフルプレート衝撃粉砕機(baffle-plate impact mill)等がある。
【0070】
[083]慣用レーザー−焼結性ポリアミドポリマー類は、典型的には、例えば、US2004/0102359号公報に記載されているような沈殿法を使用して製造される。極低温粉砕により形成した本発明の好適ポリアミド粉末はSLS用途に卓越した性能を示し、しかも卓越した美的および機械的品質のSLS物品を形成できるという驚くべきかつ予期できない結果であった。いずれの理論により束縛されることを意図しないが、本発明の粉砕粉末の卓越したレーザー焼結性性能は、適切量の分岐ポリアミドポリマーの含有に起因すると思われる。
【0071】
[084]本発明の粉末組成物は、1種以上のその他の任意の成分も含有できる。好ましくは、任意の成分は粉末組成物もしくはそれから形成した焼結物品を改善するか、少なくとも悪影響を与えないかのいずれかである。このような任意の成分は、例えば、美観を増し;粉末組成物もしくはそれから形成した物品を製造、処理および/または取り扱いを容易にし;および/または粉末組成物もしくはそれから形成する物品の特定の特性をさらに改良するために含有させることができる。各任意成分は、好ましくは、その意図する目的を果たすのに足る量であるが、粉末組成物もしくはそれから得られる物品に悪影響を与えないような量で含有させる。
【0072】
[085]各個々の任意成分は、総て存在する場合、典型的には、約0.1重量%〜約80重量%の量で粉末組成物中に存在する。粉末組成物中の任意成分の総量は、好ましくは、約0.1重量%〜約80重量%、より好ましくは、約0.1重量%〜約50重量%の範囲である。焼結処理の間、任意成分を溶融させる必要はない。好ましくは、各任意成分は、強力でしかも耐久性のある焼結物品を与えるために組成物の1種以上のポリマーと適切に適合性がある。
【0073】
[086]好適な実施態様では、本発明の粉末組成物は任意の流動化剤を含有する。流動化剤は、好ましくは、粉末組成物がSLS製作機の構築面上を自由に流れ且つ平らになり得るのに足る量で存在する。存在するとき、粉末組成物は、好ましくは、粉末組成物の総重量を基準に、約0.01重量%〜約5重量%、より好ましくは、約0.05重量%〜約2重量%、そしてさらにより好ましくは、約0.1重量%〜約1重量%の1種以上の流動化剤を含有する。任意の流動化剤は、好ましくは、約10μm未満の容積平均粒径を有する粒状無機材料である。適切な流動化剤の例には、水和シリカ、非晶質アルミナ、ガラス様シリカ、ガラス様ホスフェート、ガラス様ボレート、ガラス様オキシド、チタニア、タルク、雲母、フュームドシリカ、カオリン、アタパルジャイト、ケイ酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸マグネシウム、およびこれらの混合物等がある。フュームドシリカが好適な流動化剤である。
【0074】
[087]幾つかの実施態様では、粉末組成物は、例えば、アルミニウム粉末、銅粉末、スズ粉末、銅合金粉末、およびこれらの混合物等の金属充填材を含むことができる。
[088]幾つかの実施態様では、粉末組成物は1種以上の強化剤を含有させることができる。強化剤の例には、ボロン粒子、セラミック粒子、ガラス粒子(例、ガラス繊維)および鉱質粒子(例、ケイ灰石粒子)のような無機粒子;カーボン粒子(例、カーボンファイバー粒子もしくはカーボンナノチューブ)およびポリマー粒子(例、ポリエステル粒子、ポリアミド粒子−KEVLARファイバーおよびポリビニルアルコール粒子のようなアラミド粒子を含む)のような有機粒子;有機および無機構成分の双方を含有する粒子:ならびにその混合物等がある。適切な強化用粒子の別の検討は、例えば、PCT/US2007/082953号公報を参照されたい。
【0075】
[089]本発明の粉末組成物に熱硬化性樹脂を含ませることができる。熱硬化性樹脂は焼結処理において可撓性の少ない物品を与える。適切な熱硬化性樹脂の例には、エポキシ類、アクリレート類、ビニルエーテル類、不飽和ポリエステル類、ビスマレイミド類、およびこれらのコポリマーもしくは混合物等があり得る。幾つかの実施態様では、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または1種以上の熱可塑性樹脂および1種以上の熱硬化性樹脂の混合物を本発明の粉末組成物中に含ませることができる。
【0076】
[090]追加の任意の成分には、例えば、トナー、増量剤、充填剤、着色剤(例、顔料および染料)、滑剤、抗腐食剤、抗微生物剤、チキソトロピー剤、分散剤、抗酸化剤、接着促進剤、光安定剤、有機溶剤、界面活性剤、難燃剤、導電性物質、架橋剤、蛍光白色剤、核剤、およびその混合物等がある。
【0077】
[091]好ましくは、本発明の粉末組成物の各成分は適当に乾燥している(例、可及的に少ない量の水分、好ましくは、2重量%以下の水分を含有する)。組成物成分を粉砕する(milled, ground)ことができ、あるいは、必要な場合、所望の粒度もしくは粒度範囲与えるために処理をことができる。
【0078】
[092]上述した任意の成分は、いずれかの適当な処理、例えば、乾燥ブレンドおよび/または溶融ブレンドを含む処理により本発明の組成物に配合することができる。
[093]幾つかの実施態様では、当該成分は、総ての成分を一緒に一度にブレンドするかまたは任意のいずれかの順番でブレンドできる。任意の成分は、好ましくは、ブレンド中に含ませるポリマー粉末のおおよその粒度範囲より小さい粒度を有する。当該成分は、好ましくは、適切な粉末組成物が形成されるまでブレンドする。機械的混合、空気混合(例、流動床によりもしくは種々の成分を含有するサイロ中に空気を吹き込むことによる)またはいずれかのその他の混合技術を使用して前記成分をブレンドできる。ブレンド後、得られた粉末組成物を篩がけし、所望の粒度および粒度分布を有する粉末を与えることができる。
【0079】
[094]一定の実施態様では、溶融ブレンド工程を含む処理により1種以上の添加剤もしくは充填剤に本発明のポリマー物質を配合することに利点があり得る。このような処理を使用して、ポリマー粒子内に包埋された1種以上の添加剤もしくは充填剤を有する粉末粒子を(例えば、溶融ブレンドより形成された押し出しペッレトもしくは粒子を極低温粉砕により)形成できる。理論により束縛されることを意図しないが、本発明のこのような粉末組成物は、慣用の粉末ブレンド(追加の材料を乾燥ブレンドによりポリマー粉末と配合する)に関して、一以上の改良特性を示し得る。慣用粉末の場合、例えば、一定の充填剤粒子は、慣用乾燥粉末ブレンドから沈降する傾向があり、形成した焼結物品中で充填剤粒子非均質分布をもたらす可能性がある。充填剤がポリマー粒子中に包埋されている場合は、充填剤は物品形成前に沈降できず、それにより、充填剤が全体にわたってより一層均質に分布した焼結物品をもたらす。このような均質性は、高度の均質性が望ましい、例えば、難燃剤、強化用粒子、着色剤、導電性物質または電磁性物質を含む一定の物質に特に望ましい。
【0080】
[095]強化用粒子に関して、ポリマー粒子中に包埋されている強化用粒子を含むポリマー粒子は、慣用乾燥ブレンドに関してZ−方向に配向される強化用粒子の割合を増すことができ、それにより、得られる焼結物品の一定の機械特性向上させることができる。「Z−方向」という用語は、得られる粉末層または焼結層に対して垂直方向に言及する。
【0081】
[096]一実施態様では、本明細書中で記載する1種以上のポリマー物質を1種以上の充填剤または添加剤(これらは液体および/または固体であることができる)と合わせ、溶融ブレンドして、全体にわたって均質に分散した1種以上の充填剤もしくは添加剤を有する溶融ポリマー混合物を得る。この溶融ポリマーを凝固させ(例えば、小ペレットにペレットかさせることにより)、次いで、粉砕して、本発明のレーザー焼結性粉末組成物を形成する。所望の場合、得られた粉末は、場合により、1種以上の追加の粒子および/または粉末材料と乾燥ブレンドできる。
【0082】
[097]別の実施態様では、本発明の未充填もしくは実質的に充填していない溶融ポリマー組成物を凝固させる(例えば、ペレット、粒子、フラグメント、シート等)。次いで、凝固したポリマー物質を粉砕して、レーザー焼結性粉末組成物を形成する。所望の場合、得られた粉末は、場合により、1種以上の追加の粒子および/または粉末材料と乾燥ブレンドできる。
【0083】
[098]本発明の別の態様は、層から層毎に焼結処理を使用して本発明の粉末組成物から製造した物品であり当該焼結処理では、粉末層の部分を選択的に溶融させる。新たな粉末層を先行して形成した層に施用し、選択的に溶融させる。所望の三次元物品が製造されるまで前記処理を継続する。粉末組成物の溶融は、典型的には、電磁照射の適用により行われるが、溶融の選択性は、例えば、抑制剤、吸収剤、サセプタ、または電磁照射(例、マスクしたもしくは直接レーザービームによる)の選択的施用により達成される。いずれの適切な電磁照射源でも使用でき、例えば、赤外照射源、マイクロウエーブ発生器、レーザー、放射加熱器、ランプ等、またはこれらの組み合わせ等がある。
【0084】
[099]幾つかの実施態様では、選択的マスク焼結(selective mask sintering:SMS)技術を使用して、本発明の三次元物品を製造できる。SMSプロセスについての別の論述について、例えば、SMS製作機を記載する米国特許第6,531,086号明細書を参照されたい。当該製作機において、遮蔽マスクを使用して選択的に赤外放射を遮断し、粉末層の一部の選択的照射をもたらす。本発明の粉末組成物から物品を製造するためにSMSプロセスを使用する場合、粉末組成物の赤外吸収特性を増強させる粉末組成物中の1種以上物質を含有させることが望ましいことがある。例えば、粉末組成物は、1種以上の熱吸収剤および/または暗色物質(例、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、もしくはカーボンファイバー)を含有できる。
【0085】
[0100]粉末組成物は、三次元物品を形成するプリントプロセスにも有用であり得る。このような技術の別の論述について、例えば、米国特許第7,261,542号明細書を参照されたい。
【0086】
[0101]SLSは、本発明の粉末組成物から三次元物品を製造するのに、現在、好適な方法である。本発明のSLS物品は、好ましくは、ポリマーマトリックスを含有する複数の積層しかつ接着した焼結層を含む。SLS物品の焼結層は、SLSプロセスに適した厚さを有しうる。複数の焼結層は、各々、平均して、好ましくは、少なくとも約50μm厚さ、より好ましくは、少なくとも約80μm厚さ、そして、さらにより好ましくは、少なくとも約100μm厚さである。好適な実施態様では、複数の焼結層は、各々、平均して、好ましくは、約200μm未満厚さ、より好ましくは、約150μm未満厚さ、そして、さらにより好ましくは、約120μm未満厚さである。
【0087】
[0102]本発明の粉末組成物を使用して、種々の応用、例えば、迅速プロトタイプお帯迅速製造を含む用途に使用するために種々の物品を形成できる。迅速製造応用の幾つかの例には、小製造実験製品(例、射出成形による製造は経済的にまたは技術的にふさわしくない)、例えば、小数しか製造しない高仕様車用部品、モータースポーツ界や航空宇宙産業用の置換部品、およびメガネフレームのような高仕様ファッションアイテム;ならびに、補聴器部品のような比較的大量製造される類似であるが個々異なる部品等がある。本発明の物品から利点を有し得る工業部門の例には、航空宇宙産業、医薬技術、機械工学、自動車製造、スポーツ産業、家財具産業、電気産業、包装産業、および生活製品等がある。
【0088】
[0103]本発明の好適なレーザー焼結性粉末組成物は、優れた機械特性を示すSLS物品を形成できる。
[0104]本発明の粉末組成物から形成されるSLS試験標本(例えば、非充填粉末組成物を含む)は、下記の「試験方法」の項目の破断点伸び試験方法を使用して試験するとき、好ましくは、少なくとも約3%、より好ましくは、少なくとも約5%、そしてさらにより好ましくは、少なくとも約10%の破断点伸びを示す。
【0089】
[0105]本発明の粉末組成物から形成したSLS試験標本(例えば、非充填粉末組成物を含む)は、下記の「試験方法」の項目の破断点引張強度試験方法を使用して試験するとき、好ましくは、少なくとも約30MPa、より好ましくは、少なくとも約40MPa、そしてさらにより好ましくは、少なくとも約50MPaの破断点強度を示す。
【0090】
[0106] 本発明の粉末組成物から形成したSLS試験標本(例えば、非充填粉末組成物を含む)は、下記の「試験方法」の項目の引張弾性率試験方法を使用して、好ましくは、少なくとも約1,000MPa、より好ましくは、少なくとも約1,500MPa、そしてさらにより好ましくは約1,800MPaの引張弾性率を示す。
【0091】
[0107]特記しない限り、下記の試験方法を下記の実施例に利用した。破断点伸び、破断点引張強度、および引張弾性率試験を、国際標準化機構(ISO)3167Type1A 150mm長さ多目的犬骨様試験標本を使用して行った。当該試験標本は、80mm長さ、4mm厚さ、10mm幅の中心部分を有し、試験標本の平らな面に関して、平面方向に配向された焼結層を有する。試験標本をもたらすのに使用される粉末層の平均厚さは製造者により推奨される厚さである。製造者の推奨がない場合、粉末層の平均厚さは、最適な機械的特性を得るように最適化できる。
【0092】
A.
破断点伸び
[0108]破断点伸び試験を、秒当たり50mmの一定引張速度(mm/秒)を使用し、ISO 527に準じて行った。
【0093】
B.
破断点引張強度
[0109]破断点引張強度試験を50mm/秒の一定引張速度を使用し、ISO 527に準じて行った。
【0094】
C.
引張弾性率
[0110]引張弾性率試験50mm/秒の一定引張速度を使用し、ISO 527に準じて行った。
【0095】
D.
メルトフローインデックス
[0111]メルトフローインデックスは、DIN 1133およびASTM D1238標準に合致するDynisco D4004装置を使用して決定した。測定は、温度190℃、予備加熱240秒および5kg荷重で行った。
【0096】
E.
リサイクル性試験
[0112]SLSプロセスにおける粉末のリサイクル性を、VANGUARD HS HiQ SLSシステムを使用して下記のようにして決定した。SLS製作機の供給床中に20kgの粉末を加えた。粉末から、下記の焼結部品を製造した:(i)51.76mm高さ、各辺51.31mmと測定される正方形底面および5.0mm壁圧を示す
図1に示したとおりの4個のタワー;(ii)5個の試験標本の平らな2層(互いに3.28mm厚さの粉末により距離をあけて配置)状態で配置した
図2に示したとおりの10個のD638 I、Type I犬骨様試験標本;および(iii)
図3Aおよび3Bに表示した寸法(mm)の当該
図3に示したとおりの「ピラミッド」形体物。部品床中の上記焼結部品の配置を
図4に例示した。Z方向に対して垂直の焼結層および粉末層から形成された焼結層の総てがタワーの高さに相当する。
【0097】
[0113]約0.1mmの層厚さ、約40ワットのレーザー出力設定、および0.2mmのレーザー走査スペースを使用して焼結物品を製造した。粉末供給床の温度は約135〜140℃であり、部品床の温度は約170〜175℃だった。与えられたSLSサイクル中の部品をもたらすために、該粉末をSLS製作機中で上記高温に少なくとも約8時間さらした。各実験後、一旦粉末を冷却し、(i)焼結部品を残りの粉末から取り出し、(ii)残りの粉末総てをSLS製作機から取り出し、混合し、篩がけして、均質な粉末ブレンドを得た。下記の実施例について、各部品形成実験は、SLS部品を形成するに際し、約0.3kgの粉末を消費した(その他の粉末について1実験当たり消費した粉末の質量は、試験する粉末の特定の密度に依存して変動し得る)。残りの粉末の200gを試料とし、メルトフローインデックス、融点、再結晶点、および溶融エンタルピー試験を決定した。残った残りの粉末(すなわち、リサイクル粉末)をSLS製作機中に戻し、各後続実験を、上記手順を使用して繰り返した。リサイクル粉末には決して新たな粉末を補充しなかった。
図2のASTM D638 I Type I犬骨様試験標本を使用して機械的試験を行った。
【0098】
[0114]下記の実施例のポリマー粉末以外のポリマー粉末について、例えば、特定のポリマー粉末の融点および再結晶点等に依存して、SLS製作機のパラメーターを適切に調整する必要がある。一般に、部品床温度は、典型的には、ポリマー粉末の融点より少なくとも約2〜3℃低く、供給床の温度は、典型的には、ポリマー粉末の融点より少なくとも約30℃低い。
【実施例】
【0099】
[0115]本発明を下記の実施例により例証する。特定の実施例、材料、量、および手順は特許請求の範囲に記載した本発明の範囲および精神にしたがって広く解釈すべきであることを了解すべきである。特記しない限り、総ての部および百分率は重量基準であり、総ての分子量は重量平均分子量である。
【0100】
実施例1:ポリアミド成分の製造
[0116]0.8重量%トリメシン酸、4.0重量%水、0.1重量%IRGANOX 1098安定剤製品(N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、CAS23128−74−7)および0.15重量%SANDOSTAB P−EPQ安定剤製品(アリールホスホナイト、CAS119345−01−6)を含有する反応混合物を調製し、反応混合物の残余はラウロラクタムだった。重合容器中で、反応混合物を、開環のため少なくとも4時間適切な圧力相(20バールおよび温度300℃)に付した。次いで、反応混合物を適切な膨張相(1.5時間280℃)に付し、次いで、適切な濃縮相(所望の粘度に達するように4時間260℃)に付した。次いで、得られたポリマー物質をペレット化した。得られたペレットを、水分が0.5重量%未満に達するまで乾燥させた。
【0101】
[0117]実施例1のポリアミド物質は下記表1に含まれている特性を示した。
【0102】
【表1】
【0103】
実施例2:レーザー焼結性粉末組成物の製造
[0118]SLS用途に適した粉末を製造するために、実施例1のペレットを約−78℃の温度で極低温粉砕し、レーザー焼結性粉末を製造した。レーザー焼結性粉末は0〜約100μmの粒度分布を示し、約55μmの容積平均粒径を有した。粉末の流動性を改善するために、粉末を0.1重量%のヒュームド非晶質シリカとブレンドし、均質ブレンドを形成した。
【0104】
実施例3:SLS物品の製造
[0119]SLS物品を製造するために実施例2の粉末の適合性を評価するために、当該粉末をVANGUARD HS HiQ SLSシステム(Rock Hill、SC、USAの3D Systems製)の構築表面に適用し、SLS物品の構築のために使用した。約0.1mmの層厚さ、約10〜70ワットのレーザー出力設定、0.1mm〜0.3mmのレーザー走査スペース、および約170〜175℃の部品床温度を使用してSLS物品を製造した。SLSシステムの構築室中で発煙を観察せず、このことは該粉末は不適切量の残留低分子量化合物類を含有しなかったことを示す(これは表1に示される低レベルの揮発分と一致した)。得られたSLS物品は良好な着色および解像を示し、不適切な感知し得るカール(curl)示さなかった。これにより、実施例2の粉末がSLS物品の形成に使用するのに適しているが示される。
【0105】
[0120]本発明のSLS物品の機械的特性を評価するために、実施例2の粉末から、上述のパラメータにしたがってVANGUARD HS HiQ SLSシステムを使用して試験標本を製造した。試験標本は、約35〜55MPaの破断点引張強度、約8〜15%の破断点伸び、および約1300〜1850MPaの引張弾性率を示した。これらの機械特性の総てが許容できると考えられる。
【0106】
実施例4:リサイクル粉末から形成した試験標本の機械特性
[0121]実施例2のレーザー焼結性粉末組成物のリサイクル性を下記に示す。最初の実験前に、メルトフローインデックス、融点、再結晶点、および溶融エンタルピーを、実施例2の新たな粉末組成物について決定した。このデータは下記表2で「実験0」として示した。実施例2の粉末組成物を、上記リサイクル試験法を使用するSLS製作機中で10回の実験に付した。
【0107】
[0122]表2のデータに示したように、実施例2の粉末組成物は良好なリサイクル性を示した。リサイクルした粉末の融点および再結晶点は、10回実験にわたって依然として本質的に一定だった。加えて、SLS製作機中で新たな粉末を補充しなくても10回実験を受けさせた後でも、リサイクル粉末から形成したSLS物品は、不適切な量のオレンジピール性を示さなかった。
【0108】
[0123]表2のデータは、一定の慣用レーザー焼結性ポリアミド粉末に関して、著しく増加且つ向上したレベルのリサイクル性を示唆する。例えば、このような慣用粉末は、同様のリサイクル方法論を使用して試験したとき、4〜5回実験後にオレンジピール性を示し、6回実験後メルトフローインデックスが新たな粉末に比して80%まで減少する(これに対し、実施例2のリサイクル粉末のメルトフローインデックスは6回実験後わずか約30%までしか減少しなかった)。物質のメルトフローインデックスはその粘度に関して反比例するので、メルトフローインデックスデータは、実施例2のリサイクル粉末が、慣用のレーザー焼結性ポリアミド粉末に関し粘度上昇が実質的に減少したことを示す。
【0109】
【表2】
【0110】
表2に示されているように、実施例2の粉砕粉末は、(i)融点および再結晶点間で比較的に低い差ならびに(ii)比較的に低い溶融エンタルピーの双方を示す。レーザー焼結性物品は、実質的に大きな焼結性窓(すなわち、融点および再結晶点間の差)および実質的に大きい溶融エンタルピーの双方がSLS応用に適して行う粉末に必要であるという教示を含む(例えば、米国特許第6,245,281号明細書参照)。それにもかかわらず、実施例2の粉砕粉末は卓越したSLS性能を示す。
【0111】
[0125] 本明細書中で引用した、全ての特許、特許出願、及び公開公報の完全な開示並びに電子的に入手できるものを参照として本明細書に含める。前述の詳細な説明及び実施例は理解を明確にするためにのみ与えた。不必要な限定が前述の特許等の開示から理解されるべきでない。本発明は示し且つ記載した正確な詳細に制限されず、当業者に自明な変更は請求の範囲に記載した発明の範囲内に含まれる。