(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転駆動源の駆動を受けて回転可能かつねじの駆動部に嵌合可能なビットを有するドライバツールと、このドライバツールを前記ビットの軸方向に往復移動操作可能に支持した往復移動ユニットとを有する自動ねじ締め機において、
前記ドライバツールとともに移動するビットに所定の移動抵抗が作用した位置からねじ締め完了位置までのビットの総移動量を測定するとともに、このビットの総移動量からねじのねじ込み時の移動量に相当する移動量以外の移動量を除外する補正を行い、この補正したビットの総移動量を予め設定された設定総移動量と比較してねじ込み量の良否判定を行う制御ユニットを備えて成り、
前記制御ユニットは、所定の時間間隔でドライバツールの移動にともなうビットの移動量を検出し、このビットの移動量を予め設定された基準値と比較し、これが基準値を超えた場合に、その移動量を測定したビットの総移動量から差し引くことにより、ビットの総移動量を補正する処理を行う制御部を備えて成ることを特徴とする自動ねじ締め機。
制御部は、ビットからねじに与えられる押圧力または前記ビットの移動速度が予め設定された基準値に到達した位置をビットに所定の移動抵抗が作用した位置と判定する処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の自動ねじ締め機。
【背景技術】
【0002】
近年、品質管理上、ねじ締め後にねじの頭部がワークに着座しているか否かの状態、所謂ねじ浮き状態を高精度に検出することが求められている。このねじ浮きの検出は一般的に自動ねじ締め機の機能として備えられており、毎回のねじ締め完了時に行われている。これらのねじ浮き検出機能を持つ従来の自動ねじ締め機は、特許文献1および特許文献2に示すものがある。以下に従来の自動ねじ締め機について説明する。
【0003】
特許文献1に示す自動ねじ締め機は、所望のねじを保持可能に構成された先端ツールと、この先端ツールの昇降を可能にした昇降手段と、この昇降手段と前記先端ツールとの動作を制御する制御装置とから構成される。前記先端ツールは、ねじの駆動部と嵌合するビットと、ビットに回転を伝達するモータと、ビットの外周に配置した吸着パイプと、吸着パイプの上部に配置されたスプリングと、吸着パイプとビットの相対変位を検出可能な変位検出手段とから構成される。一方、前記制御装置は、前記モータと前記昇降手段の動作を制御する制御部と、前記変位検出手段の出力信号に基づき吸着パイプとビットの相対変位を数値化する演算部と、この演算部により数値化された吸着パイプとビットの相対変位である数値(以下、測定相対変位という)を記憶する記憶部と、この記憶部に記憶された前記測定相対変位があらかじめ設定された数値(以下、設定相対変位という)に到達しているか否かを判断する高さカウンタとから構成される。
次に吸着パイプとビットの作用について説明する。前記先端ツールの下降により前記吸着パイプがワーク表面に当接すると、前記ビットは前記スプリングの収縮により螺入されるねじに追従して吸着パイプの先端側へ移動する。この自動ねじ締め機におけるねじ浮き検出は、吸着パイプがワーク表面に当接してからのビットの移動量である前記測定相対変位を基に行われるため、ワークの表面高さが不均一であってもねじ浮き検出の精度に影響を与えることなく高精度なねじ浮き検出が行える。また、前記変位検出手段には、高い分解能を持つエンコーダを用いているため、微小な変位を正確に測定することが可能である。
【0004】
特許文献2に示す自動ねじ締め機は、ねじをめねじに締付けるビットと、このビットを回転可能にした回転駆動源と、前記ビットの昇降を可能にした昇降手段と、この昇降手段の作動状態に応じて前記回転駆動源の回転制御と昇降手段の推力制御とを同調可能な制御装置とから構成される。この自動ねじ締め機におけるねじ浮き検出は、ねじがめねじに螺入され始めてから締付け完了までに要したビットの移動量(以下、測定ビット移動量という)があらかじめ設定された範囲(以下、設定ビット移動範囲という)に収まっているかを比較して行われる。つまりこのねじ浮き検出は所定区間におけるねじの螺入量を基に行われている。なお、前記設定ビット移動範囲は、所定回数の正常なねじ締め結果から得られた前記測定ビット移動量の最大値と最小値であり、その設定は所定のねじ締め回数に到達した時点で自動登録される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図1および
図2において1は自動ねじ締め機であり、平面内を移動可能な可動部2a,2bを備えたロボット2と、このロボット2の先端可動部2bに支持されたねじ締めユニット3と、このねじ締めユニット3の動作制御を行う制御ユニット4とを備えている。また、前記ねじ締めユニット3は、ロボット2の先端可動部2bに連結された往復移動ユニット5と、この往復移動ユニット5に連結されたドライバツール6とを備えて成る。
【0011】
前記ねじ締めユニット3における往復移動ユニット5は、ロボット2の先端可動部2bに固定されたフレーム51を有し、このフレーム51上部にはACサーボモータ52(以下、単にモータ52という)が配置されている。このモータ52の出力軸52aにはカップリング53を介してボールねじ軸54が一体に回転可能に連結されており、このボールねじ軸54には、これに沿って移動可能なナット部材55が配置されている。また、このナット部材55にはブラケット56が一体に固定されており、このブラケット56には、前記ドライバツール6が一体に取り付けられている。
【0012】
前記ドライバツール6は、前記ブラケット56上部に取り付けられた電気ドライバ61を有している。この電気ドライバ61は、回転駆動源の一例であるACサーボモータ62(以下、単にモータ62という)の駆動を減速機を介して出力軸61aに出力する構造であり、この出力軸61aの先端には、ねじ頭部の駆動部に嵌合可能な先端形状を持つビット63がシャフト64を介して一体に回転可能に連結されている。このビット63と出力軸61aとの間には何らの緩衝部材も設けられず、ビット63先端に作用する軸方向の抵抗が、前記往復移動ユニット5のナット部材55に直接伝達されるように構成されている。また、前記ブラケット56の下部には中空のフランジ65が固定されており、このフランジ65には、これに沿って軸方向に摺動可能な中空の吸着パイプホルダ66が固定されている。この吸着パイプホルダ66は、ばね67により常時下方に付勢されており、その先端同軸線上には中空の吸着パイプ68が一体に連結されている。前記ビット63は、この吸着パイプ68に常時内包されており、前記吸着パイプホルダ66がばね67の付勢に逆らって上方に摺動するにともない、吸着パイプ68先端から突出可能に構成される。また、吸着パイプホルダ66の上部には、図示しない真空ポンプが接続された空気孔69が内部に連通して形成されており、この空気孔69を通じて真空ポンプによりエアが吸引されることにより、吸着パイプ68内にねじを吸入できるように構成されている。
【0013】
一方、前記往復移動ユニット5におけるフレーム51の下部には、前記吸着パイプ68およびビット63を常時内包するチャックユニット70が取り付けられている。このチャックユニット70は、ねじを保持可能な保持溝71aが分割形成された開閉可能な一対のチャック爪71を有し、このチャック爪71の保持溝71aに連通してねじ供給パイプ72を配置して成る。このねじ供給パイプ72は、外部のねじ供給ユニット(図示せず)に接続されており、ねじ供給ユニットから圧縮エアで圧送されるねじを前記チャック爪71に案内できるように構成されている。また、このねじ供給パイプ72は、常時は保持溝71aに連通しているが、前記吸着パイプ68およびビット63が下降するにともなって吸着パイプ68に押されて回動し、これらの移動路から逃げることが可能なように構成されている。
【0014】
前記制御ユニット4は、制御部41と、往復移動ユニット5および電気ドライバ61の各モータ52,62を制御するモータ駆動部42,43と、ねじ各部の寸法データ(ねじのピッチ、首下長さ等)、ワーク8の寸法データ(厚さ、下穴径、下穴深さ等)、各モータの制御データ(ねじ締め工程における各区間での出力トルクや回転速度等)、ねじ締めパラメータおよび制御プログラム等を記憶するとともに、ねじ締め結果データおよびねじ締め作業時に生成される一時データ等の記憶領域を有する記憶部44と、各種情報の入力画面およびねじ締め作業における各種情報を表示可能な表示部45と、前記各種データやパラメータを入力するための入力部46とを備えている。
【0015】
前記ねじ締めパラメータには、ねじ締め作業における締付トルクの良否判定やねじ込み量の良否判定を行うための各種設定値、すなわち、ねじの目標締付トルクとその上下限値、基準押圧力、測定開始点P1、測定終了点P2、基準移動量、設定総移動量L1とその上下限値、測定総移動量L2および補正値αが含まれる。この内、基準押圧力は、ビットからねじに伝わる押圧力が所定の押圧力以上になったか否かを判定するための基準値である。また、測定開始点P1はねじ込み量の良否判定を行うためのビット63の移動量の測定を開始するビット63の位置であり、ビット63からねじに伝わる押圧力が基準押圧力を超えた時のビット63の位置がねじ締め作業毎に設定される。また、測定終了点P2はビット63の移動量の測定を終了するビット63の位置であり、ねじの締付トルクが予め設定された目標締付トルクに達した時のビット位置がねじ締め作業毎に設定される。また、基準移動量は、測定開始点P1以降のビット63の制御サイクルタイム毎の移動量を判定するための基準値であり、モータ62の設定回転速度(回転数)×ねじのピッチ×平均制御サイクルタイムで求められる値が予め設定されている。なお、平均制御サイクルタイムは、後述する制御部41の処理S07〜S16(S07〜S12のNO分岐とS07〜S12のYES分岐の2系統)のループを実行するために必要な時間の平均値である。また、設定総移動量L1は、ねじ込み量の良否判定におけるビット63の移動量の基準値であり、ねじの首下長さから下穴深さとねじのピッチの1/2とを引いた値が設定されている。また、測定総移動量L2は、ねじ込み量の良否判定において前記設定総移動量L1との比較に供される値であり、測定終了点P2−測定開始点P1−補正値αにより求められる値である。また、補正値αは、前述の通り測定開始点P1から測定終了点P2までのビット63の移動量から差し引かれるビット63の移動量である。この補正値αの詳細は後述する。
【0016】
前記モータ駆動部42は、制御部41からの所定のトルク駆動指令あるいは所定の速度駆動指令を受け、往復移動ユニット5のモータ52を駆動制御する。具体的に、このモータ駆動部42は、制御部41からトルク駆動指令を受けた場合は、当該トルク駆動指令に基づく出力トルクでモータ52が駆動するために必要な電流値を決定し、これをモータ52に印加する処理を行う。また、速度駆動指令を受けた場合は、エンコーダ52bの信号に基づいてモータ52の出力軸52aの回転速度を演算し、これが速度駆動指令に基づく回転速度となるようモータ52に印加する電流値を増減する。
【0017】
前記モータ駆動部43は、制御部41からの設定速度駆動指令を受け、電気ドライバ61のモータ62を駆動制御する。このモータ駆動部43は、制御部41からの設定速度駆動指令を受けると、モータ62の出力軸が設定速度駆動指令に基づく設定速度で回転するよう、モータ62に印加する電流値を制御する。この駆動制御により、モータ62に印加される電流値は、ねじの締付トルクに比例して増減される。つまり、ねじ締め作業においてねじが着座するまでの締付トルクが低い領域では、モータ62が低い電流値でも設定速度に達し得る。このため、この間にモータ62に印加される電流値は締付トルク同様に低くなる。また、ねじがワーク8に着座して後の締付トルクが増大する領域では、モータ62が所定の回転速度で駆動することが困難となる。このため、所定の回転速度を得るべくモータ62に印加される電流値は締付トルク同様に増大する。
【0018】
制御部は、
図3ないし
図7に示すように、
S01:ロボット制御部(図示せず)から位置決め完了信号が入力されるのを待つ。
S02:モータ駆動部42に高速駆動指令信号を送る。
S03:モータ駆動部42の印加電流値を取得し、これが基準押圧力に相当する電流値に達するのを待つ。
S04:モータ駆動部42からモータ52のエンコーダ52bのパルス信号数を取得し、積算、記憶する。
S05:次式(1)により測定開始点P1を演算し、記憶する。
(エンコーダ52bのパルス信号数/モータ52の出力軸1回転当たりのエンコーダ52bのパルス信号数)×ボールねじ軸54のねじピッチ・・・(1)
S06:モータ駆動部43に設定速度駆動指令信号を送るとともに、モータ駆動部42に低トルク駆動指令信号を送る。
S07:モータ駆動部42からエンコーダ52bのパルス信号数を取得し、積算、記憶する。
S08:次式(2)によりビット63の移動量を演算する。
(エンコーダ52bのパルス信号数の増分/モータ52の出力軸1回転当たりのエンコーダ52bのパルス信号数)×ボールねじ軸54のねじピッチ・・・(2)
S09:ビット63の移動量が基準移動量を上回っているかどうかを確認する。上回っていなければS11にジャンプする。
S10:この時のビット63の移動量を補正値αに加算する。補正値αの初期値は0。
S11:モータ駆動部43からモータ62への印加電流値を取得する。
S12:フラグが立っているかどうかを確認し、立っている場合はS16にジャンプする。
S13:印加電流値が着座トルクに相当する電流値に到達しているか否かを確認し、到達していなければ、S07にジャンプする。
S14:フラグを立てる。
S15:モータ駆動部42に高トルク駆動指令信号を送り、S07にジャンプする。
S16:印加電流値が目標締付トルクに相当する電流値に到達しているか否かを確認し、到達していなければ、S07にジャンプする。
S17:各モータ駆動部42,43に駆動停止指令信号を送る。
S18:モータ駆動部42からエンコーダ52bのパルス信号数を取得し、記憶する。
S19:前記式(1)により測定終了点P2を演算し設定する。
S20:測定総移動量L2(=測定終了点P2−測定開始点P1−補正値α)を求める。
S21:測定総移動量L2が設定総移動量L1の許容範囲内にあるかどうかを確認し、許容範囲内にない場合はS23にジャンプする。
S22:ねじ締め正常表示指令信号を表示部に送る。
S23:ねじ締めエラー表示指令信号を表示部に送る。
S24:モータ駆動部42に逆駆動指令信号を送る。
S25:エンコーダ52bのパルス信号数を監視してビット63の位置を求め、これが待機位置に復帰するのを待つ。
S26:モータ駆動部42に駆動停止指令信号を送る。
S27:フラグを倒し、パルス信号数、測定開始点P1、測定終了点P2、測定総移動量L2および補正値α等をクリアする。
S28:エンド。
となるねじ締め制御を行う。
【0019】
次に
図8ないし
図12を参照して本発明に係る自動ねじ締め機1の動作について説明する。ねじ締め作業に当たっては、まず、ロボット制御部の動作制御によりロボット2が作動し、ねじ締めユニット3を予め設定されたねじ締め位置に移動する。これによりワーク8のめねじ81の中心線上にビット63が位置決めされる。また、同時にねじ供給ユニットからチャックユニット70のチャック爪71にねじが供給されて保持されるとともに、真空ポンプが作動して吸着パイプ68先端からエア吸引が開始される。
【0020】
位置決め完了信号がロボット制御部から制御部41に入力されると、往復移動ユニット5のモータ52が高速駆動し、これによりボールねじ軸54が回転してナット部材55ないしドライバツール6を下降させる。これにより、吸着パイプ68及びビット63が軸方向に下降移動し、チャック爪71に保持されたねじを吸着パイプ68内に吸引保持した後、チャック爪71を押し開いてチャックユニット70前方に突出する。そして、吸着パイプ68がワーク8に当接すると、吸着パイプ68内をビット63が前進し、
図8に示すようにねじを押してワーク8に当接させる。ねじの先端がワーク8に突き当たることによる移動抵抗でモータ52の回転負荷が増加するため、その印加電流値が高まり、これによって
図9のグラフに示すように、ビット63からねじに与えられる押圧力が増大する。この押圧力が基準押圧力に達すると、制御部41は当該ビット63の位置を測定開始点P1として設定する。
【0021】
測定開始点P1が設定されると、続いて、電気ドライバ61のモータ62が設定速度で駆動するとともに、モータ52の駆動が低トルク駆動指令信号に基づく低トルク駆動に切り替えられる。このモータ62の駆動によりビット63は回転し、ねじをワーク8のめねじ81にねじ込む。この時、モータ52は低トルク駆動により一定の低い出力トルクで駆動するため、ビット63からねじに与えられる押圧力は、ねじの着座までのねじ込みに適した一定の弱い力に保たれる。なお、このモータ52の低トルク駆動時のビット63の最大移動速度(ビット63の下方にねじやワーク8等の移動を遮るものが何も存在しない状態でモータ52が低トルク駆動した時のビット63の移動速度)は、ねじをねじ込んでいる時のビット63の移動速度(モータ62の設定回転速度(回転数)×ねじのピッチ)よりも十分に速くなるように設定されている。これにより、ねじ込み時にビットからねじに所定の押圧力を与えることが可能になるとともに、後述の補正値αとみなすビットの移動量を検知することが可能となる。
【0022】
ねじがワーク8に着座して締付トルクが増大すると、それにともなってモータ62への印加電流値も増加する。この電流値が所定の着座判定トルク(着座判定トルク<目標締付トルク)に到達したことが制御部41によって検知されると、モータ52が高トルク駆動指令信号に基づく高トルク駆動に切り替えられ、ビット63からねじに与えられる押圧力が高められる。これにより、着座後、目標締付トルクまで締付トルクが急激に増加する過程においても、ねじの駆動部からビット63が外れてしまう所謂カムアウトを防止し、ねじを目標締付トルクまで確実に締め付けることが可能となる。その後、モータ62の印加電流値が目標締付トルクに相当する値に到達すると、各モータ52,62の駆動が停止するとともに、その時のビット63の位置が測定終了点P2として設定される(
図9参照)。
【0023】
上述のねじ締め作業において、前記測定開始点P1は、本来、ねじのねじ込み開始位置に達したビット63の位置が設定されなければならないが、ビット63とねじの位置関係、ねじ、ビットまたはワーク8の加工精度等の影響で必ずしも本来の正しい位置に設定されるとは限らない。例えば、
(a)ビット63とねじ駆動部の位相がずれて嵌合していない状態でねじ先端がめねじ81開口端に当接した場合(
図10参照)や、
(b)ワーク8のめねじ81又は下穴82の加工誤差等により、ねじの先端がめねじ81開口端ではなく下穴82の縁に当接した場合(
図11参照)
にも、その位置で測定開始点P1が設定されてしまうことがある。測定開始点P1が正しく設定された場合には、その後のビット63の移動量はねじのねじ込み時の移動量に相当する基準移動量を超えない。しかし、前記(a)、(b)等のように本来の測定開始点P1でないビット位置で測定開始点P1が設定された場合には、一時的に基準移動量よりも大きなビット63の移動量が検出される。すなわち、(a)の場合には、ビット63がねじの駆動部に嵌合する時、また(b)の場合には、ねじ先端が下穴82の縁から外れてめねじ81開口端に移行する時に、それぞれビット63の移動量が基準移動量よりも大きくなる。これを検出するため、制御部41は、測定開始点P1を設定して後、測定終了点P2を設定するまでの間、制御サイクルタイム(本実施形態においては、平均2msec)毎にビット63の移動量を求め、これが基準移動量を上回っていないかどうかを監視する。そして、ビット63の移動量が基準移動量を上回った場合は、その移動量を補正値αに積算していく。なお、
図12は、前記(a)の場合のビット63の移動量、移動速度、押圧力の推移を示したものであるが、ビット63とねじSの駆動部との位相が合って嵌合する瞬間、ビット63の移動量には基準移動量を超える移動量の区間E1が現れることから、制御部41は、この区間E1において検出した移動量を補正値αに積算する。
【0024】
各モータ52,62の駆動停止後、制御部41は最終的にねじ込み量の良否判定を行い、ねじ浮きまたはねじ沈みが発生していないかどうかを判定する。このねじ込み量の良否判定において、制御部41は、測定開始点P1から測定終了点P2までのビット移動量から補正値αを差し引いた測定総移動量L2を算出し、この測定総移動量L2が設定総移動量L1の上限値と下限値の範囲内に収まっているかどうかを判定する。この結果、上下限値の範囲内に収まっている場合には、表示部45にねじ締め正常表示がなされ、収まっていない場合には表示部45にねじ締めエラー表示がなされる。このねじ込み量の良否判定時、上述のように測定開始点P1の設定位置に問題があったとしても、これが補正値αによって補正されるため、測定総移動量L2を適正なして正確なねじ込み量の良否判定を行うことができる。
【0025】
なお、本発明の実施形態においては、測定開始点P1を設定する基準としてビット63からねじに付与される押圧力を用いたが、
図9に示すように、ねじSの先端がワークに当接した時等、ビット63の移動抵抗が加わった時にはビット63の移動速度も0(ゼロ)またはゼロ付近まで低下する。このため、ビット63の移動速度を基準として、測定開始点P1に設定するようにしてもよい。また、ビット63の移動量を基準移動量と比較して当該移動量を補正値αに積算するかどうかを判定したが、ビット63の異常な移動は、
図12に示すようにビットの移動速度や押圧力の変化にも現れる。よって、ビット63の単位時間当たりの移動量、すなわち移動速度(次式(3)参照)を基準速度(ねじ込みに係る速度;次式(4)参照)と比較し、これが基準速度を超えた場合、あるいはビット63からねじSに与えられる押圧力を基準値と比較し、これが基準値を下回った場合に、その時のビット63の移動速度に平均制御サイクルタイムを乗じてビット63の移動量を求め、これを補正値αに積算していくようにしてもよい。
ビット63の移動速度={(エンコーダ52bのパルス信号数の増分/モータ52の出力軸1回転当たりのエンコーダ52bのパルス信号数)×ボールねじ軸54のねじピッチ}/平均制御サイクルタイム・・・(3)
基準速度=モータ62の設定回転速度(回転数)×ねじのピッチ・・・(4)