(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発光素子から灯具前方に直接照射された光によって前記配光パターンより車幅方向外側に拡がる他の配光パターンが形成されるよう構成されている請求項1または2に記載の車両用灯具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、車両用前照灯として用いられる車両用灯具は、ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとを形成することが可能である。また、近年、ロービーム用配光パターン形成時における運転者の視認性を高めるために、ロービーム用配光パターンに付加的に照射される付加配光パターンを形成する技術が開発されている。このような付加配光パターンは、ロービーム用配光パターン形成用の灯具ユニットおよびハイビーム用配光パターン形成用の灯具ユニットとは別に車両用灯具に搭載される灯具ユニットによって形成される。
【0005】
上述した付加配光パターンとしては、例えば、水平線より下方でロービーム用配光パターンよりも水平方向外側に拡がる広拡散配光パターンがある。通常、この広拡散配光パターンを形成するための灯具ユニットは、略長方形の発光面を有する発光素子が、発光面の長辺が水平方向に沿うようにしてパラボラ光学系リフレクタの水平方向中央に配置された構造を有する。パラボラ光学系リフレクタは、発光面に対応する略長方形の光源像の長辺が水平方向に沿うように発光素子からの光を反射し、横長の光源像を上下左右に配列して水平方向に拡がる広拡散配光パターンを形成する。すなわち、従来の広拡散配光パターン形成用の灯具ユニットでは、パラボラ光学系リフレクタが発光素子からの光を鉛直方向および水平方向に拡散させていた。したがって、パラボラ光学系リフレクタは、上下左右方向に拡がった形状を有していた。
【0006】
一方、上述のように付加配光パターン形成用の灯具ユニットは、ロービーム用配光パターン形成用およびハイビーム用配光パターン形成用の灯具ユニットとは別に設けられていた。そのため、広拡散配光パターンを形成可能な車両用灯具は、灯具ユニットの数が増加する分だけ通常の車両用灯具に比べて大型化する傾向にあった。
【0007】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、水平方向に拡がる配光パターンを形成するための車両用灯具の大型化を抑制することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は車両用灯具であり、当該車両用灯具は、水平方向に拡がる配光パターンを形成するための車両用灯具であって、略長方形の発光面を有し、当該発光面の長辺が略鉛直方向に延びるように配置された発光素子と、発光素子からの光を灯具前方へ反射するパラボラ光学系リフレクタと、を備え、パラボラ光学系リフレクタは、発光面の長辺が配光パターンの鉛直方向に沿うよう発光素子からの光を反射するとともに、灯具上方から見て一端領域で反射した光と他端領域で反射した光を互いに交差させて灯具前方へ照射することを特徴とする。
【0009】
この態様によれば、水平方向に拡がる配光パターンを形成するための車両用灯具の大型化を抑制することができる。
【0010】
上記態様において、発光素子は、パラボラ光学系リフレクタの一端領域の近傍に配置され、パラボラ光学系リフレクタは、一端領域において車幅方向外側に向けて光を反射し、他端領域において車幅方向中央側に向けて光を反射してもよい。これによれば、車幅方向中央部の鉛直方向幅に比べて車幅方向外側の鉛直方向幅が大きい配光パターンを形成することができる。
【0011】
上記態様において、車両用灯具は、発光素子から灯具前方に直接照射された光によって配光パターンより車幅方向外側に拡がる他の配光パターンが形成されるよう構成されてもよい。これによれば、前記配光パターンで照射される領域よりも車幅方向外側の領域における運転者の視認性を向上させることができる。
【0012】
本発明の他の態様は光学ユニットであり、当該光学ユニットは、水平方向に拡がる配光パターンを形成するための車両用灯具に用いられる光学ユニットであって、略長方形の発光面を有する発光素子を、当該発光面の長辺が略鉛直方向に延びるように固定するための素子搭載部と、素子搭載部に固定された発光素子からの光を灯具前方へ反射するパラボラ光学系リフレクタと、を備え、パラボラ光学系リフレクタは、発光面の長辺が配光パターンの鉛直方向に沿うよう発光素子からの光を反射するとともに、ユニット上方から見て一端領域で反射した光と他端領域で反射した光を互いに交差させてユニット前方へ照射するよう構成されていることを特徴とする。
【0013】
この態様によっても、水平方向に拡がる配光パターンを形成するための車両用灯具の大型化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水平方向に拡がる配光パターンを形成するための車両用灯具の大型化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0017】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る車両用灯具の概略構成を示す水平断面図である。本実施形態に係る車両用灯具1は、車両前方の左右に配置される一対の前照灯ユニットを有する車両用前照灯装置である。一対の前照灯ユニットは左右対称の構造を有する点以外は実質的に同一の構成であるため、
図1には車両用灯具1として車両前方の左側に配置される前照灯ユニットの構造を示す。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る車両用灯具1は、車両前方側に開口部を有するランプボディ2と、ランプボディ2の開口部を覆うように取り付けられた透光カバー4とを備える。透光カバー4は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成されている。ランプボディ2と透光カバー4とにより形成される灯室3内には、灯具ユニット10、灯具ユニット30および灯具ユニット50が収容されている。灯具ユニット10、灯具ユニット30および灯具ユニット50は、それぞれ図示しない支持部材によってランプボディ2に取り付けられて灯室3内に支持されている。なお、灯具ユニット10,30,50のランプボディ2への取付構造は公知であるため詳細な説明は省略する。
【0019】
また、灯室3内には、灯具ユニット10,30,50の存在領域に開口部を有するエクステンション部材6が収容されている。エクステンション部材6は、ランプボディ2に固定されている。エクステンション部材6により、灯具前方から見てランプボディ2の開口部と灯具ユニット10,30,50の間の領域が覆われている。
【0020】
灯具ユニット10は、ロービーム用配光パターンを形成するための灯具ユニットである。灯具ユニット10は、いわゆるプロジェクタ型の灯具ユニットであり、光源バルブ12、リフレクタ14、シェード16、レンズホルダ18、および投影レンズ20を備える。
【0021】
光源バルブ12には、白熱灯や放電灯を採用することができる。なお、光源としては、LEDなどの発光素子を採用してもよい。リフレクタ14は、カップ型に形成され、中央に挿通孔が設けられている。光源バルブ12は、リフレクタ14の挿通孔に挿通されてリフレクタ14に固定されている。リフレクタ14は、その少なくとも一部に略楕円球面状の反射面を有し、この反射面の第1焦点近傍に光源バルブ12が配置されている。また、反射面の第2焦点近傍には、後述する投影レンズ20の後方焦点が配置されている。
【0022】
シェード16は、平板状の部材であり、その先端部がリフレクタ14の第2焦点あるいは投影レンズ20の後方焦点の近傍に位置するように設けられている。当該先端部は、ロービーム用配光パターンのカットオフラインに対応した形状を有する。シェード16によって光源バルブ12から直接進行した光およびリフレクタ14で反射された光の一部が遮蔽される。投影レンズ20は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、投影レンズ20の後方焦点を含む後方焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。投影レンズ20は、レンズホルダ18の前端部に固定されている。レンズホルダ18の後端部は、リフレクタ14の前端部に固定されている。
【0023】
光源バルブ12から照射された光は、直接あるいはリフレクタ14で反射されて、シェード16を経て投影レンズ20へと導かれる。投影レンズ20に向かう光の一部がシェード16によって遮蔽され、これによりロービーム用配光パターンが形成される。ロービーム用配光パターンの形状は公知であるため、ロービーム用配光パターンに関する詳細な説明は省略する。なお、灯具ユニット10は、いわゆるパラボラ型の灯具ユニットであってもよい。
【0024】
灯具ユニット30は、ハイビーム用配光パターンを形成するための灯具ユニットである。灯具ユニット30は、いわゆるパラボラ型の灯具ユニットであり、光源バルブ32およびパラボラ光学系リフレクタ34を備える。光源バルブ32は、光源バルブ12と同様の構成である。パラボラ光学系リフレクタ34は、光源バルブ32の近傍に焦点を有する回転放物面の一部を基準面とする反射面を有する。光源バルブ32から照射された光は、直接あるいはパラボラ光学系リフレクタ34で反射されて灯具前方へ照射される。これにより、ハイビーム用配光パターンが形成される。ハイビーム用配光パターンの形状は公知であるため、ハイビーム用配光パターンに関する詳細な説明は省略する。なお、灯具ユニット30は、いわゆるプロジェクタ型の灯具ユニットであってもよい。
【0025】
灯具ユニット50は、水平方向に拡がる配光パターンとしての広拡散配光パターンを形成するための灯具ユニットである。灯具ユニット50は、いわゆるパラボラ型の灯具ユニットであり、光源モジュール52と、光学ユニット54とを有する。光学ユニット54は、素子搭載部54aとパラボラ光学系リフレクタ54bとを備える。光源モジュール52は、光学ユニット54の素子搭載部54aに固定されている。素子搭載部54aおよびパラボラ光学系リフレクタ54bは、ヒートシンク56に連結されている。ヒートシンク56は、複数の放熱フィン56aを有する。また、ヒートシンク56は、エイミングスクリューやレベリングシャフト(いずれも図示せず)を介してランプボディ2に取り付けられる。
【0026】
光源モジュール52の発光素子から照射された光は、パラボラ光学系リフレクタ54bにより灯具前方に向けて反射される。これにより、発光素子の発光面に対応する光源像が車両前方に投影されて、後述する広拡散配光パターンが形成される。
【0027】
続いて、広拡散配光パターンを形成するための灯具ユニット50について詳細に説明する。
図2(A)は、広拡散配光パターン形成用の灯具ユニットの概略構成を示す平面図である。
図2(B)は、広拡散配光パターン形成用の灯具ユニットの概略構成を示す正面図である。
図2(C)は、広拡散配光パターン形成用の灯具ユニットの発光素子近傍を
図2(A)の矢印A方向から見た図である。
図3は、実施形態1に係る車両用灯具における広拡散配光パターン形成用の灯具ユニット近傍の概略構成を示す水平断面図である。
【0028】
図2(A)〜
図2(C)および
図3に示すように、光源モジュール52は、例えば発光ダイオード(LED)であり、発光素子52aと、発光素子52aを支持する基盤52bとを有する。発光素子52aは、略長方形の発光面52afを有する。基盤52bは、たとえばセラミックなどで形成された熱伝導性絶縁基板である。基盤52bには、発光素子52aに電力を伝達するための電極52b1が形成されている。
【0029】
素子搭載部54aは、略板状のベース部54a1と、ベース部54a1に形成された開口部54a2と、一端がベース部54a1に固定され、他端が開口部54a2内に延びた給電端子54a3とを有する。光源モジュール52は、開口部54a2内にはめ込まれてベース部54a1に固定される。光源モジュール52がベース部54a1に固定された状態で、給電端子54a3が光源モジュール52の電極52b1に接続される。素子搭載部54aに固定された発光素子52aは、発光面52afの長辺52af1が略鉛直方向に延びるように配置されている。
【0030】
パラボラ光学系リフレクタ54bは、素子搭載部54aに固定された発光素子52aからの光を灯具前方へ反射するための反射部材であり、発光素子52aの近傍に焦点を有する回転放物面の一部を基準面とする反射面を有する。パラボラ光学系リフレクタ54bは、発光素子52aの有する発光面52afの長辺52af1が広拡散配光パターンの鉛直方向に沿うように、発光素子52aからの光を反射するよう設定されている。すなわち、パラボラ光学系リフレクタ54bは、発光面52afに対応する光源像を車両前方に投影する際、投影された略長方形の光源像の長辺が鉛直線Vに対して略平行となるように発光素子52aの光を反射する。
【0031】
素子搭載部54aは、パラボラ光学系リフレクタ54bの一端領域54b1の近傍に配置されている。よって、発光素子52aは、当該一端領域54b1の近傍に配置されている。また、発光素子52aは、発光面52afが車幅方向外側を向くようにして素子搭載部54aに固定されている。パラボラ光学系リフレクタ54bは、灯具上方から見て一端領域54b1で反射した光と他端領域54b2で反射した光を互いに交差させて灯具前方へ照射する。具体的には、
図3に示すように、平面視で一端領域54b1で反射した光線Aと他端領域で反射した光線Bとが交差して灯具前方へ進出している。
【0032】
本実施形態に係る灯具ユニット50において、発光素子52aが配置されるパラボラ光学系リフレクタ54bの一端領域54b1は、パラボラ光学系リフレクタ54bの車幅方向内側の端部領域である。また、他端領域54b2は、パラボラ光学系リフレクタ54bの車幅方向外側の端部領域である。したがって、一端領域54b1において反射された光は、他端領域54b2において反射された光の進行方向よりも車幅方向外側に向けて進行する。本実施形態では、一端領域54b1において反射された光は、自車前方の車幅方向外側に向けて進行し、広拡散配光パターンPの車幅方向外側の領域を形成する。また、他端領域54b2において反射された光は、自車前方の車幅方向中央側に向けて進行し、広拡散配光パターンPの車幅方向中央側の領域を形成する。
【0033】
また、パラボラ光学系リフレクタ54bは、一端領域54b1に近いほど車幅方向外側に向けて光を反射する。すなわち、パラボラ光学系リフレクタ54bによる発光素子52aの光の反射方向は、反射位置が一端領域54b1から他端領域54b2に向かうにつれて、車幅方向外側から内側に連続的に変化する。
【0034】
このように、本実施形態に係る灯具ユニット50では、灯具上方から見て、言い換えれば、発光面52afの長辺52af1に平行な方向から見て(長辺52af1に垂直な面内で)、パラボラ光学系リフレクタ54bの一端領域54b1で反射した光と他端領域54b2で反射した光を互いに交差させて灯具前方へ照射している。そのため、パラボラ光学系リフレクタ54bから灯具前方に進行する発光素子52aの光の通過領域は、一端領域54b1で反射した光と他端領域54b2で反射した光が交差する交差部に近づくにつれてその幅が小さくなり、交差部から灯具前方に向かうにつれてその幅が大きくなる。
【0035】
ここで、従来の広拡散配光パターン形成用の灯具ユニットは、発光素子がパラボラ光学系リフレクタの水平方向中心に配置されていた。そして、パラボラ光学系リフレクタは、その反射面のうち、灯具上方から見て車幅方向内側の領域が車幅方向内側に向けて発光素子の光を反射し、車幅方向外側の領域が車幅方向外側に向けて発光素子の光を反射するように構成されていた。したがって、灯具正面から見て、広拡散配光パターン形成用の灯具ユニットに対応するエクステンション部材6の開口部の大きさを、パラボラ光学系リフレクタの大きさ以上とする必要があった。
【0036】
これに対し、本実施形態では、一端領域54b1で反射した光と他端領域54b2で反射した光が交差する交差部の近傍に、灯具ユニット50に対応するエクステンション部材6の開口部6aを配置することで、開口部6aの大きさ(開口部6aの幅L)を従来の構造に比べて小さくすることができる。そのため、従来の構造に比べて、広拡散配光パターン形成用の灯具ユニット50を追加したことによる車両用灯具1の大型化を抑制することができる。
【0037】
灯具ユニット50により形成される広拡散配光パターンについて説明する。
図4(A)は、左側の前照灯ユニットにより灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に形成される広拡散配光パターンの等照度曲線図である。
図4(B)は、左側の前照灯ユニットにより灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に形成される、ロービーム用配光パターンおよび広拡散配光パターンが合成された配光パターンの等照度曲線図である。
図5(A)は、左右の前照灯ユニットにより路面上に形成される広拡散配光パターンが合成された配光パターンの等照度曲線図である。
図5(B)は、路面上に形成されるロービーム用配光パターンの等照度曲線図である。
図5(C)は、路面上に形成される、ロービーム用配光パターンおよび広拡散配光パターンが合成された配光パターンの等照度曲線図である。なお、
図4(A)および
図4(B)では、灯具前方の所定位置、例えば灯具前方10mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成された配光パターンを示している。
【0038】
図4(A)に示すように、左側の前照灯ユニットに設けられた灯具ユニット50により形成される広拡散配光パターンP1は、水平線Hより下方で水平方向に拡がった横長の形状を有する。広拡散配光パターンP1は、水平方向の一端側が鉛直線Vの近傍、すなわち車幅方向中央部に位置する。また、
図4(A)および
図4(B)の比較から分かるように、広拡散配光パターンP1は、水平方向の他端側がロービーム用配光パターンLoよりも外側に大きく拡がっている。また、広拡散配光パターンP1の鉛直方向の幅は、水平方向の一端側よりも他端側が広くなっている。広拡散配光パターンP1は、水平方向の一端側から他端側にかけて徐々に鉛直方向下方に拡がる形状を有する。なお、右側の前照灯ユニットにより形成される広拡散配光パターンP2は、左側の前照灯ユニットにより形成される広拡散配光パターンP1と左右対称の形状を有する。以下では適宜、広拡散配光パターンP1および広拡散配光パターンP2を併せて広拡散配光パターンPと称する。
【0039】
また、
図5(A)および
図5(B)の比較から分かるように、広拡散配光パターンP1および広拡散配光パターンP2は、自車前方の自車近傍領域でロービーム用配光パターンLoよりも車幅方向外側に拡がっている。したがって、
図5(C)に示すように、ロービーム用配光パターンLoに対して付加的に広拡散配光パターンP1,P2を形成した場合、ロービーム用配光パターンLoのみを形成した場合と比べて、自車近傍の水平方向外側の領域における運転者の視認性を高めることができる。
【0040】
ここで、従来の広拡散配光パターン形成用の灯具ユニットでは、パラボラ光学系リフレクタの水平方向中心部に、発光面の長辺が水平線Hに平行となるように発光素子が配置され、当該長辺が広拡散配光パターンの水平方向に沿うように、発光素子の光が反射されていた。また、発光素子の光は鉛直方向および水平方向に拡散され、発光面に対応する横長の光源像が上下左右に配列されて広拡散配光パターンが形成されていた。これに対し、本実施形態に係る灯具ユニット50では、発光面52afの長辺52af1が鉛直線Vに平行となるように発光素子52aが配置され、長辺52af1が広拡散配光パターンPの鉛直方向に沿うように発光素子52aの光が反射されている。すなわち、灯具ユニット50は、水平方向の長さに比べて鉛直方向の長さが短い広拡散配光パターンPにおける鉛直方向と、発光面52afの長辺52af1とを対応付けしている。したがって、発光素子52aの光の鉛直方向への拡散量を従来構造に比べて小さくすることができる。そのため、パラボラ光学系リフレクタ54bの上下方向の幅を小さくすることができる。
【0041】
また、パラボラ光学系リフレクタで投影される光源像は、発光素子からパラボラ光学系リフレクタまでの距離が長くなるほど小さくなる。したがって、パラボラ光学系リフレクタの水平方向中央部に発光素子が配置された従来の構造では、パラボラ光学系リフレクタの水平方向両端部で投影された光源像が水平方向中央部で投影された光源像よりも小さくなる。そのため、従来の構造で形成された広拡散配光パターンは、水平方向両端部の鉛直方向幅が水平方向中央部の鉛直方向幅よりも小さい形状であり、自車近傍の水平方向外側の領域を十分に光照射することができなかった。広拡散配光パターン全体の鉛直方向幅を大きくすることで自車近傍の水平方向外側の領域を光照射することができるが、その場合は水平方向中央部の鉛直方向幅がさらに大きくなる。水平方向中央部における鉛直方向下方の領域は、自車両の車体に隠れて運転者の死角となる領域であるため、無駄な光照射領域が増えてしまう。
【0042】
これに対し、本実施形態の灯具ユニット50では、パラボラ光学系リフレクタ54bは、発光素子52aからの距離が近い一端領域54b1で車幅方向外側に光を反射し、発光素子52aからの距離が遠い他端領域54b2で車幅方向中央側に光を反射している。したがって、本実施形態の灯具ユニット50で形成される広拡散配光パターンPは、水平方向外側の鉛直方向幅が水平方向中央部の鉛直方向幅よりも大きい形状となり、自車近傍の水平方向外側の領域を十分に光照射することができる。したがって、本実施形態によれば、水平方向中央部の鉛直方向幅を大きくすることなく、水平方向外側の鉛直方向幅が大きい広拡散配光パターンPを形成することができる。また、パラボラ光学系リフレクタ54bによる発光素子52aの光の反射方向は、反射位置が一端領域54b1から他端領域54b2に向かうにつれて車幅方向外側から内側に連続的に変化する。そのため、広拡散配光パターンPは、鉛直方向幅が水平方向中央部から水平方向外側にかけて連続的に大きくなる。
【0043】
図6(A)は、広拡散配光パターンおよび追加配光パターンを形成可能な灯具ユニットの概略構成を説明するための水平断面図である。
図6(B)は、左側の前照灯ユニットにより灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に形成される広拡散配光パターンおよび追加配光パターンの模式図である。なお、
図6(B)では、灯具前方の所定位置、例えば灯具前方10mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成された配光パターンを示している。
【0044】
図6(A)に示すように、本実施形態に係る車両用灯具1に搭載された灯具ユニット50は、発光素子52aからの光(
図6(A)における光線C)が灯具前方に直接照射されるよう構成されている。すなわち、発光素子52aからの光のうち、一部の光がパラボラ光学系リフレクタ54bで反射されずに車両用灯具1の外に照射されるように、発光素子52aとパラボラ光学系リフレクタ54bとの位置関係が定められている。そして、発光素子52aから直接照射された光線Cによって追加配光パターンP3(他の配光パターン)が形成される。
【0045】
図6(B)に示すように、追加配光パターンP3は、広拡散配光パターンP1より車幅方向外側に拡がる配光パターンである。なお、右側の前照灯ユニットにより形成される追加配光パターンP3は、左側の前照灯ユニットにより形成される追加配光パターンP3と左右対称の形状を有し、左右対称の位置に形成される。このように、追加配光パターンP3を形成することで、広拡散配光パターンPで照射される領域よりも車幅方向外側の領域における運転者の視認性を向上させることができる。
【0046】
なお、前記「略長方形」は、長方形だけでなく、長方形に近い形状であって本発明の目的が達せられる形状を含むことを意味する。また、前記「略鉛直方向」は、鉛直線Vに対して平行である場合だけでなく、本発明の目的が達せられる角度だけ鉛直線Vに対して傾いている場合、例えば鉛直線Vに対して±15°の範囲で傾いている場合を含むことを意味する。また、前記「発光面52afの長辺52af1が広拡散配光パターンPの鉛直方向に沿う」は、長辺52af1が鉛直線Vに対して平行な場合だけでなく、本発明の目的が達せられる角度だけ鉛直線Vに対して傾いている場合、例えば鉛直線Vに対して±15°の範囲で傾いている場合を含むことを意味する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具1に設けられた、水平方向に拡がる広拡散配光パターンPを形成するための灯具ユニット50において、略長方形の発光面52afを有する発光素子52aは、発光面52afの長辺52af1が略鉛直方向に延びるように配置されている。そして、パラボラ光学系リフレクタ54bは、発光面52afの長辺52af1が広拡散配光パターンPの鉛直方向に沿うよう発光素子52aからの光を反射するとともに、灯具上方から見て一端領域54b1で反射した光と他端領域54b2で反射した光を互いに交差させて灯具前方へ照射している。
【0048】
このように、水平方向に長く鉛直方向に短い広拡散配光パターンPにおける鉛直方向と、発光面52afの長辺52af1とを対応付けることで、発光面の長辺を広拡散配光パターンの水平方向と対応付けていた従来の構造に比べて、発光素子52aの光を鉛直方向に拡散させる量を小さくすることができる。これにより、パラボラ光学系リフレクタ54bの鉛直方向の幅を小さくすることができる。その結果、灯具ユニット50の小型化が可能となり、広拡散配光パターン形成用の灯具ユニット50を追加したことによる車両用灯具1の大型化を抑制することができる。
【0049】
また、灯具上方から見て一端領域54b1で反射した光と他端領域54b2で反射した光を互いに交差させて灯具前方へ照射することで、エクステンション部材6の灯具ユニット50に対応する開口部6aの大きさを従来の構造に比べて小型化することが可能である。これにより、広拡散配光パターン形成用の灯具ユニット50を追加したことによる車両用灯具1の大型化を抑制することができる。また、開口部6aを大きく取ることができない領域に広拡散配光パターン形成用の灯具ユニット50を配置することが可能となるため、車両用灯具1の設計自由度を高めることができる。
【0050】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることが可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。上述の実施形態に変形が加えられた新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0051】
上述の実施形態1では、車両用灯具1にロービーム用配光パターン形成用の灯具ユニット10およびハイビーム用配光パターン形成用の灯具ユニット30が設けられている。しかしながら、車両用灯具1の構成は特に限定されず、灯具ユニット10,30の両方あるいは片方が設けられていなくてもよく、また灯具ユニット10,30に代えて、ロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターンの両方を形成可能な灯具ユニットが設けられていてもよい。