【課題を解決するための手段】
【0021】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、ブーム撓み抑制装置を備えた伸縮ブーム付き作業機を対象にしたものである。
【0022】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明は、伸縮ブーム付き作業機におけるブーム撓み抑制装置のセット方法を対象にしている。又、この請求項1のセット方法を行う伸縮ブーム付き作業機としては、例えば
図1に示すように伸縮ブームの先端ブームの先端部にジブを継ぎ足さないものが好適であるが、
図6に示すようにブーム先端部に一定長さのジブを継ぎ足したものにも適用可能である。尚、この請求項1のセット方法を、ブーム先端部に一定長さのジブを継ぎ足したもの(例えば
図6)に適用する場合には、伸縮ブームに対するジブ起伏角を一定(例えばジブ起伏角が5°)にした状態で使用することが好ましい。
【0023】
本願で使用される伸縮ブーム付き作業機としては、例えば大型の移動式クレーンを適用できる。尚、以下の説明では、本願で使用される伸縮ブーム付き作業機をクレーン車ということがある。
【0024】
又、本願では、伸縮ブーム付き作業機(クレーン車)に、伸縮ブームの自重や吊下荷重によって該伸縮ブームが過度に撓むのを抑制するためのブーム撓み抑制装置を備えたものを対象にしている。
【0025】
このブーム撓み抑制装置は、伸縮ブームの基端ブームに設けたマストの先端部と伸縮ブームの先端ブームの先端部(以下、これを単にブーム先端部ということがある)との間にプリテンションシリンダを組み込んだテンションロープを張設し、プリテンションシリンダによりテンションロープに適度の張力を付与することで伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るようにしたものである。尚、ブーム先端部にジブを継ぎ足して使用するものでは、該ブーム先端部にジブ基台を取付けることがあり、その場合はテンションロープの先端側をジブ基台に連結することがある。
【0026】
この請求項1に係るブーム撓み抑制装置のセット方法に必要な手段として、伸縮ブームの長さを検出するブーム長さ検出器と、伸縮ブームの起伏角を検出するブーム起伏角検出器と、上記プリテンションシリンダに対して制御信号を発信するコントローラとをそれぞれ備えている。
【0027】
ブーム長さ検出器とブーム起伏角検出器は、AML(クレーン車の転倒防止装置)の検出器として用いられているものを利用できる。コントローラは、作業機に対して各種の制御を行うものであるが、本願ではプリテンションシリンダに対する制御にも利用される。
【0028】
ところで、伸縮ブームの撓み変動の要素としてはブーム長さとブーム起伏角とがあり、ブーム長さが長い状態でブーム起伏角を小さくすると伸縮ブームの撓み量が大きくなる一方、ブーム長さが短い状態でブーム起伏角を大きくすると伸縮ブームの撓み量が小さくなる。このように、ブーム長さとブーム起伏角との組み合わせが変化すると伸縮ブームの撓み量が変化するが、本願では、各種ブーム長さと各種ブーム起伏角との各種組み合わせに応じて、プリテンションシリンダの出力を調整することで伸縮ブームを常に適正撓み姿勢で支持し得るようにしている。
【0029】
まず、本願請求項1のセット方法を実施する前提条件として、上記コントローラに、ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さとブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角との各種組み合わせごとに伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの各出力値をデータテーブルとして記憶させたデータ記憶手段を備えている。
【0030】
尚、ブーム先端部に一定長さのジブを継ぎ足して使用するものでは、データ記憶手段に記憶されるデータテーブルには、該ジブによる伸縮ブームの撓み要素を加味したもので設定されるが、該データ記憶手段には、ジブを使用しない場合とジブを使用する場合との2種類のデータテーブルを設けておくことができる。又、その場合(2種類のデータテーブルがある場合)は、ジブの有り無しによってどちらのデータテーブルから読み出すかを選択する選択スイッチを設けておくとよい。
【0031】
そして、本願請求項1のセット方法では、伸縮ブームを任意の姿勢でセットしたときのブーム長さ検出器で検出されたブーム長さとブーム起伏角検出器で検出されたブーム起伏角とに基いて、データ記憶手段に記憶しているデータテーブルの中から伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの出力値を選択し、その選択した出力値に対応する作動力でプリテンションシリンダを作動させるようにしたものである。
【0032】
本願請求項1のセット方法では、上記のように行われるので、ブーム撓み抑制装置をセットする際に、伸縮ブームのブーム長さとブーム起伏角との組み合わせを自由に設定しても、プリテンションシリンダから現状の伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得る出力が自動で発せられる。又、伸縮ブームの姿勢を特定姿勢から変更(ブーム長さの変更、又はブーム起伏角の変更)したときでも、そのブーム姿勢変更に伴ってプリテンションシリンダの出力が伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得る適正出力に自動調整される。
【0033】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の従属項であって、伸縮ブーム付き作業機としてブーム先端部にジブを任意の長さだけ継ぎ足し得るようにしたものを採用している。又、この請求項2の発明は、継ぎ足されるジブの全長を各単ジブ(それぞれ長さが判っている)の接続本数で特定し得るようなものに好適なセット方法である。
【0034】
ところで、ブーム先端部にジブを継ぎ足すと、該ジブの長さ及び起伏角によって伸縮ブームの撓み量が変化するが、ブーム先端部にジブを継ぎ足して使用する場合には、伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持するためのプリテンションシリンダの適正出力を設定するのに、ジブの長さ及び起伏角を加味したもので行うことが好ましい。
【0035】
そして、この請求項2の発明では、上記請求項1のセット方法において、ブーム先端部に継ぎ足したジブの長さを設定するジブ長さ設定手段と該ジブの起伏角を検出するジブ起伏角検出器とをそれぞれ備えている。
【0036】
ジブ長さ設定手段は、実際にブーム先端部に継ぎ足されるジブ長さを入力手段で直接コントローラに入力するものである。
【0037】
ジブ起伏角検出器は、最終的にはジブの対地角を検出するものであって、該ジブの対地角を直接検出するものでもよいし、あるいはブームに対するジブのチルト角を検出するものでもよい。尚、ジブ起伏角検出器としてブームに対するジブチルト角を検出するものでは、該チルト角とブーム起伏角検出器で検出されたブーム起伏角とから、コントローラでジブの対地角を演算するようにすればよい。
【0038】
又、この請求項2では、コントローラに備えたデータ記憶手段に記憶されるデータテーブルには、ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さとブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角とジブ長さ設定手段で設定される各種ジブ長さとジブ起伏角検出器で検出される各種ジブ起伏角との各種組み合わせごとに伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの各出力値を設定しているとともに、ブーム長さ検出器で検出されたブーム長さとブーム起伏角検出器で検出されたブーム起伏角とジブ長さ設定手段で設定されたジブ長さとジブ起伏角検出器で検出されたジブ起伏角とに基いてデータ記憶手段に記憶しているデータテーブルの中から伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの出力値を選択するようにしている。
【0039】
このように、本願請求項2のセット方法では、ブーム先端部に継ぎ足されたジブの長さをジブ長さ設定手段で設定(入力)するとともにジブ起伏角をジブ起伏角検出器で検出することで、データ記憶手段に記憶しているデータテーブルの中から、ジブ長さ及びジブ起伏角による伸縮ブーム撓み量の変化に対応したプリテンションシリンダの適正出力値を選択することができる。
【0040】
従って、この請求項2のセット方法では、ブーム先端部にジブを継ぎ足して使用する場合であっても、ジブ長さ及びジブ起伏角を加味した伸縮ブームの適正撓み姿勢で支持することができる。
【0041】
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明も、上記請求項1の従属項であって、伸縮ブーム付き作業機としてブーム先端部にジブを任意の長さだけ継ぎ足し得るようにしたものを採用している。又、この請求項3の発明は、継ぎ足されるジブの長さを検出器で検出し得るようなものに好適なセット方法である。
【0042】
そして、この請求項3の発明では、上記請求項1のセット方法において、ブーム先端部に継ぎ足したジブの長さを検出するジブ長さ検出器と該ジブの起伏角を検出するジブ起伏角検出器とをそれぞれ備えている。尚、ジブ長さ検出器を用いてジブ長さを検出するようにしたジブとしては伸縮式ジブがあるが、この場合のジブ長さ検出器としては伸縮ブームに用いたブーム長さ検出器と同構成のものが採用できる。
【0043】
又、この請求項3では、コントローラに備えたデータ記憶手段に記憶されるデータテーブルには、ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さとブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角とジブ長さ検出器で検出される各種ジブ長さとジブ起伏角検出器で検出される各種ジブ起伏角との各種組み合わせごとに伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの各出力値を設定しているとともに、ブーム長さ検出器で検出されたブーム長さとブーム起伏角検出器で検出されたブーム起伏角とジブ長さ検出器で検出されたジブ長さとジブ起伏角検出器で検出されたジブ起伏角とに基いてデータ記憶手段に記憶しているデータテーブルの中から伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの出力値を選択するようにしている。
【0044】
このように、本願請求項3のセット方法では、ブーム先端部に継ぎ足されたジブの長さをジブ長さ検出器で検出するとともにジブ起伏角をジブ起伏角検出器で検出することで、データ記憶手段に記憶しているデータテーブルの中から、ジブ長さ及びジブ起伏角による伸縮ブーム撓み量の変化に対応したプリテンションシリンダの適正出力値を選択することができる。
【0045】
従って、この請求項3のセット方法では、上記請求項2と同様に、ブーム先端部にジブを継ぎ足して使用する場合であっても、ジブ長さ及びジブ起伏角を加味した伸縮ブームの適正撓み姿勢で支持することができる。
【0046】
[本願請求項4の発明]
本願請求項4の発明は、伸縮ブーム付き作業機におけるブーム撓み抑制装置のセット装置を対象にしている。尚、この請求項4のセット装置は、上記請求項1のセット方法を行うためのものである。
【0047】
この請求項4でも、上記請求項1と同様に、伸縮ブーム付き作業機として例えば大型の移動式クレーン(クレーン車)を適用できる。又、この請求項4で使用される伸縮ブーム付き作業機(クレーン車)にも、伸縮ブームの自重や吊下荷重によって該伸縮ブームが過度に撓むのを抑制するためのブーム撓み抑制装置を備えている。
【0048】
この請求項4で使用されるブーム撓み抑制装置も、上記請求項1のものと同様に、伸縮ブームの基端ブームに設けたマストの先端部と伸縮ブームの先端部(又はブーム先端部にに設けたジブ基台)との間にプリテンションシリンダを組み込んだテンションロープを張設し、プリテンションシリンダによりテンションロープに適度の張力を付与することで伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るようにしたものである。
【0049】
そして、本願請求項4のセット装置には、伸縮ブームの長さを検出するブーム長さ検出器と、伸縮ブームの起伏角を検出するブーム起伏角検出器と、上記プリテンションシリンダに対して制御信号を発信するコントローラとをそれぞれ備えている。
【0050】
ブーム長さ検出器とブーム起伏角検出器は、AML(クレーン車の転倒防止装置)の検出器として用いられているものを利用できる。コントローラは、各種の制御を行うものであるが、本願ではプリテンションシリンダに対する制御にも利用される。
【0051】
又、この請求項4で使用されているコントローラには、ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さとブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角との各種組み合わせごとに伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの各出力値をデータテーブルとして記憶させたデータ記憶手段と、ブーム長さ検出器とブーム起伏角検出器とでそれぞれ検出された現状のブーム長さとブーム起伏角とに基いてデータ記憶手段に記憶されているデータテーブルの中から伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの出力値を選択する選択手段と、該選択手段で選択された出力値に対応する作動力をプリテンションシリンダ制御手段に出力する出力手段とを備えている。
【0052】
従って、この請求項4のセット装置でも、上記請求項1のセット方法で説明したような機能を達成できる。
【0053】
[本願請求項5の発明]
本願請求項5の発明は、上記請求項4の従属項であって、伸縮ブーム付き作業機としてブーム先端部にジブを任意の長さだけ継ぎ足し得るようにしたものを採用し、さらに継ぎ足されるジブの全長を各単ジブの接続本数で特定し得るようなものに適用されるセット装置である。尚、この請求項5の発明のセット装置は、上記請求項2のセット方法を行うためのものである。
【0054】
そして、この請求項5の発明は、上記請求項4のセット装置において、ブーム先端部に継ぎ足したジブの長さを設定するジブ長さ設定手段と該ジブの起伏角を検出するジブ起伏角検出器とをそれぞれ備えている。
【0055】
ジブ長さ設定手段は、ブーム先端部に継ぎ足されるジブ長さを入力手段で直接コントローラに入力するものである。
【0056】
ジブ起伏角検出器は、実質的にはジブの対地角を検出するものであって、該ジブの対地角を直接検出するものでもよいし、あるいはブームに対するジブチルト角を検出して該ジブチルト角とブーム起伏角とからコントローラでジブ対地角を演算するようにしたものでもよい。
【0057】
又、この請求項5では、コントローラに備えたデータ記憶手段に記憶されるデータテーブルには、ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さとブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角とジブ長さ設定手段で設定される各種ジブ長さとジブ起伏角検出器で検出される各種ジブ起伏角との各種組み合わせごとに伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの各出力値を設定している。
【0058】
従って、この請求項5のセット装置でも、上記請求項2のセット方法で説明したような機能を達成できる。
【0059】
[本願請求項6の発明]
本願請求項6の発明も、上記請求項4の従属項であって、伸縮ブーム付き作業機としてブーム先端部にジブを任意の長さだけ継ぎ足し得るようにしたものを採用し、さらに継ぎ足されるジブの長さを検出器で検出し得るようなものに適用されるセット装置である。尚、この請求項6のセット装置は、上記請求項3のセット方法を行うためのものである。
【0060】
そして、この請求項6の発明では、上記請求項4のセット装置において、ブーム先端部に継ぎ足したジブの長さを検出するジブ長さ検出器と該ジブの起伏角を検出するジブ起伏角検出器とをそれぞれ備えている。尚、ジブ長さ検出器を用いてジブ長さを検出するようにしたジブとしては伸縮式ジブがあるが、この場合のジブ長さ検出器としては伸縮ブームに用いたブーム長さ検出器と同構成のものが採用できる。
【0061】
又、この請求項6では、コントローラに備えたデータ記憶手段に記憶されるデータテーブルには、ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さとブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角とジブ長さ検出器で検出される各種ジブ長さとジブ起伏角検出器で検出される各種ジブ起伏角との各種組み合わせごとに伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの各出力値を設定している。
【0062】
従って、この請求項6のセット装置でも、上記請求項3のセット方法で説明したような機能を達成できる。