特許第5711586号(P5711586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5711586伸縮ブーム付き作業機におけるブーム撓み抑制装置のセット方法及びセット装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5711586
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】伸縮ブーム付き作業機におけるブーム撓み抑制装置のセット方法及びセット装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/82 20060101AFI20150416BHJP
   B66C 23/70 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   B66C23/82 Z
   B66C23/70 A
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-76983(P2011-76983)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-210990(P2012-210990A)
(43)【公開日】2012年11月1日
【審査請求日】2014年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(74)【代理人】
【識別番号】100075731
【弁理士】
【氏名又は名称】大浜 博
(72)【発明者】
【氏名】與田 基雄
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−120525(JP,A)
【文献】 実開平2−18483(JP,U)
【文献】 特開昭57−184092(JP,A)
【文献】 特開平10−17277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/64
B66C 23/70
B66C 23/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮ブームの基端ブームに設けたマストの先端部と上記伸縮ブームの先端ブームの先端部との間にプリテンションシリンダを組み込んだテンションロープを張設し、上記プリテンションシリンダにより上記テンションロープに適度の張力を付与することで上記伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るようにした伸縮ブーム付き作業機におけるブーム撓み抑制装置において、
上記伸縮ブームの長さを検出するブーム長さ検出器と、上記伸縮ブームの起伏角を検出するブーム起伏角検出器と、上記プリテンションシリンダに対して制御信号を発信するコントローラとをそれぞれ備え、
さらに上記コントローラとして、上記ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さと上記ブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角との各種組み合わせごとに上記伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得る上記プリテンションシリンダの各出力値をデータテーブルとして記憶させたデータ記憶手段を備えたものを使用しているとともに、
上記ブーム長さ検出器で検出されたブーム長さと上記ブーム起伏角検出器で検出されたブーム起伏角とに基いて上記データ記憶手段に記憶しているデータテーブルの中から上記伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの出力値を選択し、その選択した出力値に対応する作動力で上記プリテンションシリンダを作動させるようにしている、
ことを特徴とする伸縮ブーム付き作業機におけるブーム撓み抑制装置のセット方法。
【請求項2】
請求項1において、
伸縮ブーム付き作業機として上記伸縮ブームの先端ブームの先端部にジブを任意の長さだけ継ぎ足し得るものを採用し、
上記伸縮ブームの先端部に継ぎ足した上記ジブの長さを設定するジブ長さ設定手段と、上記ジブの起伏角を検出するジブ起伏角検出器とをそれぞれ備え、
上記コントローラに備えたデータ記憶手段に記憶される上記データテーブルには、上記ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さと上記ブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角と上記ジブ長さ設定手段で設定される各種ジブ長さと上記ジブ起伏角検出器で検出される各種ジブ起伏角との各種組み合わせごとに上記伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得る上記プリテンションシリンダの各出力値を設定しているとともに、
上記ブーム長さ検出器で検出されたブーム長さと上記ブーム起伏角検出器で検出されたブーム起伏角と上記ジブ長さ設定手段で設定されたジブ長さと上記ジブ起伏角検出器で検出されたジブ起伏角とに基いて上記データ記憶手段に記憶しているデータテーブルの中から上記伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの出力値を選択するようにしている、
ことを特徴とする伸縮ブーム付き作業機におけるブーム撓み抑制装置のセット方法。
【請求項3】
請求項1において、
伸縮ブーム付き作業機として上記伸縮ブームの先端ブームの先端部にジブを任意の長さだけ継ぎ足し得るものを採用し、
上記伸縮ブームの先端部に継ぎ足した上記ジブの長さを検出するジブ長さ検出器と、上記ジブの起伏角を検出するジブ起伏角検出器とをそれぞれ備え、
上記コントローラに備えたデータ記憶手段に記憶される上記データテーブルには、上記ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さと上記ブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角と上記ジブ長さ検出器で検出される各種ジブ長さと上記ジブ起伏角検出器で検出される各種ジブ起伏角との各種組み合わせごとに上記伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得る上記プリテンションシリンダの各出力値を設定しているとともに、
上記ブーム長さ検出器で検出されたブーム長さと上記ブーム起伏角検出器で検出されたブーム起伏角と上記ジブ長さ検出器で検出されたジブ長さと上記ジブ起伏角検出器で検出されたジブ起伏角とに基いて上記データ記憶手段に記憶しているデータテーブルの中から上記伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの出力値を選択するようにしている、
ことを特徴とする伸縮ブーム付き作業機におけるブーム撓み抑制装置のセット方法。
【請求項4】
伸縮ブームの基端ブームに設けたマストの先端部と上記伸縮ブームの先端ブームの先端部との間にプリテンションシリンダを組み込んだテンションロープを張設し、上記プリテンションシリンダにより上記テンションロープに適度の張力を付与することで上記伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るようにした伸縮ブーム付き作業機におけるブーム撓み抑制装置において、
上記伸縮ブームの長さを検出するブーム長さ検出器と、上記伸縮ブームの起伏角を検出するブーム起伏角検出器と、上記プリテンションシリンダに対して制御信号を発信するコントローラとをそれぞれ備えている一方、
上記コントローラには、上記ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さと上記ブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角との各種組み合わせごとに上記伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得る上記プリテンションシリンダの各出力値をデータテーブルとして記憶させたデータ記憶手段と、上記ブーム長さ検出器と上記ブーム起伏角検出器とでそれぞれ検出された現状のブーム長さとブーム起伏角とに基いて上記データ記憶手段に記憶されているデータテーブルの中から上記伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得る上記プリテンションシリンダの出力値を選択する選択手段と、該選択手段で選択された出力値に対応する作動力をプリテンションシリンダ制御手段に出力する出力手段とを備えている、
ことを特徴とする伸縮ブーム付き作業機におけるブーム撓み抑制装置のセット装置。
【請求項5】
請求項4において、
伸縮ブーム付き作業機として上記伸縮ブームの先端ブームの先端部にジブを任意の長さだけ継ぎ足し得るものを採用し、
上記伸縮ブームの先端部に継ぎ足した上記ジブの長さを設定するジブ長さ設定手段と、上記ジブの起伏角を検出するジブ起伏角検出器とをそれぞれ備え、
上記コントローラに備えたデータ記憶手段に記憶される上記データテーブルには、上記ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さと上記ブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角と上記ジブ長さ設定手段で設定される各種ジブ長さと上記ジブ起伏角検出器で検出される各種ジブ起伏角との各種組み合わせごとに上記伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得る上記プリテンションシリンダの各出力値を設定している、
ことを特徴とする伸縮ブーム付き作業機におけるブーム撓み抑制装置のセット装置。
【請求項6】
請求項4において、
伸縮ブーム付き作業機として上記伸縮ブームの先端ブームの先端部にジブを任意の長さだけ継ぎ足し得るものを採用し、
上記伸縮ブームの先端部に継ぎ足した上記ジブの長さを検出するジブ長さ検出器と、上記ジブの起伏角を検出するジブ起伏角検出器とをそれぞれ備え、
上記コントローラに備えたデータ記憶手段に記憶される上記データテーブルには、上記ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さと上記ブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角と上記ジブ長さ検出器で検出される各種ジブ長さと上記ジブ起伏角検出器で検出される各種ジブ起伏角との各種組み合わせごとに上記伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得る上記プリテンションシリンダの各出力値を設定している、
ことを特徴とする伸縮ブーム付き作業機におけるブーム撓み抑制装置のセット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、伸縮ブーム付き作業機におけるブーム撓み抑制装置に関し、さらに詳しくは伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持するのに適したブーム撓み抑制装置のセット方法及びセット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全伸長状態において長大長さとなる伸縮ブームを有した作業機(例えば大型のクレーン車)の中には、伸縮ブームの自重や吊下荷重による伸縮ブームの撓み変形を抑制するためのブーム撓み抑制装置を備えたものがある。この種のブーム撓み抑制装置付きのクレーン車としては、例えば特開2008−120525号公報(特許文献1)に開示されたものがある。尚、この特許文献1に示すブーム撓み抑制装置付きのクレーン車は、本件出願人が開発したものである。
【0003】
特許文献1のクレーン車に装備されているブーム撓み抑制装置は、図9図11に示すように、車両1上の旋回台2に取付けた伸縮ブーム3の先端部3C(先端ブーム3Bの先端部で、以下の説明ではブーム先端部3Cという)を基端ブーム3Aに設けたマスト11(左右一対ある)の先端部からプリテンション装置10で(左右2組ある)で支持したものである。
【0004】
プリテンション装置10は、テンションロープ14と、それぞれマスト11に取付けたテンションウインチ15及びプリテンションシリンダ16を有している。尚、テンションロープ14とテンションウインチ15とプリテンションシリンダ16は、それぞれ左右2組使用されている。
【0005】
各テンションロープ14は、マスト11に取付けたテンションウインチ15に巻回されているもので、図11に示すように、その繰出し部をマスト先端部に取付けた左右2つの固定シーブ18,18及び折返しシーブ19に巻掛けた後、ロープ端部14aをマスト11に取付けたプリテンションシリンダ16の伸縮部分(伸縮ロッドの先端部)に連結している。折返しシーブ19とブーム先端部3Cとは別のテンションロープ17で連結されている。尚、各マスト11の上部寄り位置と旋回台2との間にはテンションリンク13が介設されている。
【0006】
この公知例のクレーン車において、図9に示すようにブーム使用姿勢でブーム撓み抑制装置をセットするには、次のようにして行われる。
【0007】
まず、伸縮ブーム3を全縮小及び最大倒伏させた状態でマスト11の上部寄り位置と旋回台2とを屈曲式のテンションリンク13で連結しておき、その後、図10に示すようにマスト11(左右一対ある)をほぼ鉛直姿勢まで立起させる。この状態では、テンションテンションウインチ15から繰出させたテンションロープ14は、図11に示すように各シーブ18,18,19に巻掛けた後、ロープ端部14aをプリテンションシリンダ16の伸縮部分(伸縮ロッドの先端部)に連結している一方、折返しシーブ19とブーム先端部3Cとを別のテンションロープ17で連結している。
【0008】
そして、図10の状態から、伸縮ブーム3を所定角度まで起仰させ且つ該伸縮ブーム3を所定長さまで伸長させた後、テンションウインチ15をロックした状態でプリテンションシリンダ16を所定縮小力で作動させることにより、図9に示すようにブーム撓み抑制装置を機能させたブーム使用姿勢にセットすることができる。
【0009】
この種のブーム撓み抑制装置を使用する場合には、ブーム使用姿勢において伸縮ブーム3を適正撓み姿勢で支持することが望まれる。尚、伸縮ブーム3の適正撓み姿勢とは、例えば図9に示すように伸縮ブーム3を所定長さで所定起伏角にセットしたブーム使用姿勢において、吊荷状態であっても伸縮ブーム3が過度に撓まず且つ空荷状態で伸縮ブーム3が上反りしないような姿勢のことである。
【0010】
伸縮ブーム3を適正撓み姿勢で支持させるための要素としては、伸縮ブーム3の長さと起伏角とテンションロープ14の張力(プリテンションシリンダ16による引っ張り力)とがある。尚、ブーム使用姿勢において、ブーム長さが長くなるほどブーム撓み作用が大きくなる一方、ブーム起伏角が小さくなるほどブーム撓み作用が大きくなる性質があり、プリテンション装置10が無いものでは、各種ブーム長さと各種ブーム起伏角との各種組み合わせごとにブーム撓み量が異なるようになる。
【0011】
ところで、使用すべきブーム姿勢(ブーム長さやブーム起伏角)は、作業現場の状況や作業内容によって決定されるが、従来では、この種のブーム撓み抑制装置において伸縮ブーム3を適正撓み姿勢にセットするのに次のように行っていた。
【0012】
即ち、従来から行われているブーム撓み抑制装置のセット方法では、プリテンションシリンダ16の出力として一定に設定されたもの(例えば1トンの定量縮小力)を使用している関係で、伸縮ブーム3を適正撓み姿勢で支持させるのに、使用すべきブーム長さに応じてブーム起伏角を調整することで行っていた。つまり、図9に示す公知例のブーム撓み抑制装置付きのクレーン車(自社製のもの)では、プリテンションシリンダ16の出力を一定(例えば1トン)で行う関係で、伸縮ブーム3の適正撓み姿勢を確保するのに、各種ブーム長さにそれぞれ適合する各種ブーム起伏角を予め試験により特定している。
【0013】
因に、当社製の特定機種(品番:ATF−360G−1)におけるブーム長さに対するブーム起伏角の適正対応値は、概略次の通りである。尚、以下の対応関係において、符号Lはブーム長さであり、符号θはブーム起伏角であり、プリテンションシリンダ16の出力(縮小力)を1トンに設定したときの適正対応値である。
【0014】
即ち、当社製の上記特定機種におけるブーム長さに対するブーム起伏角の適正対応値は、L=35.3mのときθ=55°、L=40.4mのときθ=57°、L=45.4mのときθ=59.5°、L=50.5mのときθ=65°、L=55.6mのときθ=67°、L=60.0mのときθ=70°、にそれぞれ設定している。
【0015】
そして、従来では、各種のブーム長さに対してそれぞれその都度、適合するブーム起伏角に調整してクレーン作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008−120525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、上記公知例(特許文献1)のブーム撓み抑制装置付きクレーン車において、伸縮ブーム3を適正撓み姿勢で支持し得るようにブーム撓み抑制装置をセットするには、プリテンションシリンダ16の出力が一定である関係で、使用すべき伸縮ブーム3の長さが決まるとそのブーム長さに適合するブーム起伏角に設定する必要がある。
【0018】
従って、上記公知例のブーム撓み抑制装置では、使用現場においてブーム長さを設定する度に、ブーム起伏角をブーム長さに見合う適正起伏角に調整する必要があるので、そのブーム起伏角調整操作が面倒であった。
【0019】
又、作業現場の状況や作業内容によっては、ブーム長さとブーム起伏角との組み合わせを上記適正組み合わせから外れた条件(例えばブーム長さが長くブーム起伏角が小さい状態、あるいはブーム長さが短くブーム起伏角が大きい状態)のもとで使用したいことがあるが、ブーム長さとブーム起伏角との適正組み合わせから大きく外れた状態で使用すると、伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持できなくなるので、ブーム撓み抑制性能が低下したりブームが上反りするという問題が生じる。
【0020】
そこで、本願発明は、ブーム撓み抑制装置付き作業機(例えば大型クレーン車)において、ブーム撓み抑制装置をセットする際に、使用すべきブーム長さとブーム起伏角との組み合わせを自由に設定しても伸縮ブームの姿勢(長さ及び起伏角)に対して常に適正状態のプリテンションに自動で設定できるようにするとともに、伸縮ブームの姿勢を特定姿勢から変更(ブーム長さの変更、又はブーム起伏角の変更)したときでも、伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るように自動調整し得るようにすることを第1の目的としている一方、伸縮ブームの先端部にジブを任意の長さだけ継ぎ足して使用する場合でも、伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るように自動調整し得るようにすることを第2の目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、ブーム撓み抑制装置を備えた伸縮ブーム付き作業機を対象にしたものである。
【0022】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明は、伸縮ブーム付き作業機におけるブーム撓み抑制装置のセット方法を対象にしている。又、この請求項1のセット方法を行う伸縮ブーム付き作業機としては、例えば図1に示すように伸縮ブームの先端ブームの先端部にジブを継ぎ足さないものが好適であるが、図6に示すようにブーム先端部に一定長さのジブを継ぎ足したものにも適用可能である。尚、この請求項1のセット方法を、ブーム先端部に一定長さのジブを継ぎ足したもの(例えば図6)に適用する場合には、伸縮ブームに対するジブ起伏角を一定(例えばジブ起伏角が5°)にした状態で使用することが好ましい。
【0023】
本願で使用される伸縮ブーム付き作業機としては、例えば大型の移動式クレーンを適用できる。尚、以下の説明では、本願で使用される伸縮ブーム付き作業機をクレーン車ということがある。
【0024】
又、本願では、伸縮ブーム付き作業機(クレーン車)に、伸縮ブームの自重や吊下荷重によって該伸縮ブームが過度に撓むのを抑制するためのブーム撓み抑制装置を備えたものを対象にしている。
【0025】
このブーム撓み抑制装置は、伸縮ブームの基端ブームに設けたマストの先端部と伸縮ブームの先端ブームの先端部(以下、これを単にブーム先端部ということがある)との間にプリテンションシリンダを組み込んだテンションロープを張設し、プリテンションシリンダによりテンションロープに適度の張力を付与することで伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るようにしたものである。尚、ブーム先端部にジブを継ぎ足して使用するものでは、該ブーム先端部にジブ基台を取付けることがあり、その場合はテンションロープの先端側をジブ基台に連結することがある。
【0026】
この請求項1に係るブーム撓み抑制装置のセット方法に必要な手段として、伸縮ブームの長さを検出するブーム長さ検出器と、伸縮ブームの起伏角を検出するブーム起伏角検出器と、上記プリテンションシリンダに対して制御信号を発信するコントローラとをそれぞれ備えている。
【0027】
ブーム長さ検出器とブーム起伏角検出器は、AML(クレーン車の転倒防止装置)の検出器として用いられているものを利用できる。コントローラは、作業機に対して各種の制御を行うものであるが、本願ではプリテンションシリンダに対する制御にも利用される。
【0028】
ところで、伸縮ブームの撓み変動の要素としてはブーム長さとブーム起伏角とがあり、ブーム長さが長い状態でブーム起伏角を小さくすると伸縮ブームの撓み量が大きくなる一方、ブーム長さが短い状態でブーム起伏角を大きくすると伸縮ブームの撓み量が小さくなる。このように、ブーム長さとブーム起伏角との組み合わせが変化すると伸縮ブームの撓み量が変化するが、本願では、各種ブーム長さと各種ブーム起伏角との各種組み合わせに応じて、プリテンションシリンダの出力を調整することで伸縮ブームを常に適正撓み姿勢で支持し得るようにしている。
【0029】
まず、本願請求項1のセット方法を実施する前提条件として、上記コントローラに、ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さとブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角との各種組み合わせごとに伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの各出力値をデータテーブルとして記憶させたデータ記憶手段を備えている。
【0030】
尚、ブーム先端部に一定長さのジブを継ぎ足して使用するものでは、データ記憶手段に記憶されるデータテーブルには、該ジブによる伸縮ブームの撓み要素を加味したもので設定されるが、該データ記憶手段には、ジブを使用しない場合とジブを使用する場合との2種類のデータテーブルを設けておくことができる。又、その場合(2種類のデータテーブルがある場合)は、ジブの有り無しによってどちらのデータテーブルから読み出すかを選択する選択スイッチを設けておくとよい。
【0031】
そして、本願請求項1のセット方法では、伸縮ブームを任意の姿勢でセットしたときのブーム長さ検出器で検出されたブーム長さとブーム起伏角検出器で検出されたブーム起伏角とに基いて、データ記憶手段に記憶しているデータテーブルの中から伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの出力値を選択し、その選択した出力値に対応する作動力でプリテンションシリンダを作動させるようにしたものである。
【0032】
本願請求項1のセット方法では、上記のように行われるので、ブーム撓み抑制装置をセットする際に、伸縮ブームのブーム長さとブーム起伏角との組み合わせを自由に設定しても、プリテンションシリンダから現状の伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得る出力が自動で発せられる。又、伸縮ブームの姿勢を特定姿勢から変更(ブーム長さの変更、又はブーム起伏角の変更)したときでも、そのブーム姿勢変更に伴ってプリテンションシリンダの出力が伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得る適正出力に自動調整される。
【0033】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の従属項であって、伸縮ブーム付き作業機としてブーム先端部にジブを任意の長さだけ継ぎ足し得るようにしたものを採用している。又、この請求項2の発明は、継ぎ足されるジブの全長を各単ジブ(それぞれ長さが判っている)の接続本数で特定し得るようなものに好適なセット方法である。
【0034】
ところで、ブーム先端部にジブを継ぎ足すと、該ジブの長さ及び起伏角によって伸縮ブームの撓み量が変化するが、ブーム先端部にジブを継ぎ足して使用する場合には、伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持するためのプリテンションシリンダの適正出力を設定するのに、ジブの長さ及び起伏角を加味したもので行うことが好ましい。
【0035】
そして、この請求項2の発明では、上記請求項1のセット方法において、ブーム先端部に継ぎ足したジブの長さを設定するジブ長さ設定手段と該ジブの起伏角を検出するジブ起伏角検出器とをそれぞれ備えている。
【0036】
ジブ長さ設定手段は、実際にブーム先端部に継ぎ足されるジブ長さを入力手段で直接コントローラに入力するものである。
【0037】
ジブ起伏角検出器は、最終的にはジブの対地角を検出するものであって、該ジブの対地角を直接検出するものでもよいし、あるいはブームに対するジブのチルト角を検出するものでもよい。尚、ジブ起伏角検出器としてブームに対するジブチルト角を検出するものでは、該チルト角とブーム起伏角検出器で検出されたブーム起伏角とから、コントローラでジブの対地角を演算するようにすればよい。
【0038】
又、この請求項2では、コントローラに備えたデータ記憶手段に記憶されるデータテーブルには、ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さとブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角とジブ長さ設定手段で設定される各種ジブ長さとジブ起伏角検出器で検出される各種ジブ起伏角との各種組み合わせごとに伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの各出力値を設定しているとともに、ブーム長さ検出器で検出されたブーム長さとブーム起伏角検出器で検出されたブーム起伏角とジブ長さ設定手段で設定されたジブ長さとジブ起伏角検出器で検出されたジブ起伏角とに基いてデータ記憶手段に記憶しているデータテーブルの中から伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの出力値を選択するようにしている。
【0039】
このように、本願請求項2のセット方法では、ブーム先端部に継ぎ足されたジブの長さをジブ長さ設定手段で設定(入力)するとともにジブ起伏角をジブ起伏角検出器で検出することで、データ記憶手段に記憶しているデータテーブルの中から、ジブ長さ及びジブ起伏角による伸縮ブーム撓み量の変化に対応したプリテンションシリンダの適正出力値を選択することができる。
【0040】
従って、この請求項2のセット方法では、ブーム先端部にジブを継ぎ足して使用する場合であっても、ジブ長さ及びジブ起伏角を加味した伸縮ブームの適正撓み姿勢で支持することができる。
【0041】
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明も、上記請求項1の従属項であって、伸縮ブーム付き作業機としてブーム先端部にジブを任意の長さだけ継ぎ足し得るようにしたものを採用している。又、この請求項3の発明は、継ぎ足されるジブの長さを検出器で検出し得るようなものに好適なセット方法である。
【0042】
そして、この請求項3の発明では、上記請求項1のセット方法において、ブーム先端部に継ぎ足したジブの長さを検出するジブ長さ検出器と該ジブの起伏角を検出するジブ起伏角検出器とをそれぞれ備えている。尚、ジブ長さ検出器を用いてジブ長さを検出するようにしたジブとしては伸縮式ジブがあるが、この場合のジブ長さ検出器としては伸縮ブームに用いたブーム長さ検出器と同構成のものが採用できる。
【0043】
又、この請求項3では、コントローラに備えたデータ記憶手段に記憶されるデータテーブルには、ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さとブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角とジブ長さ検出器で検出される各種ジブ長さとジブ起伏角検出器で検出される各種ジブ起伏角との各種組み合わせごとに伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの各出力値を設定しているとともに、ブーム長さ検出器で検出されたブーム長さとブーム起伏角検出器で検出されたブーム起伏角とジブ長さ検出器で検出されたジブ長さとジブ起伏角検出器で検出されたジブ起伏角とに基いてデータ記憶手段に記憶しているデータテーブルの中から伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの出力値を選択するようにしている。
【0044】
このように、本願請求項3のセット方法では、ブーム先端部に継ぎ足されたジブの長さをジブ長さ検出器で検出するとともにジブ起伏角をジブ起伏角検出器で検出することで、データ記憶手段に記憶しているデータテーブルの中から、ジブ長さ及びジブ起伏角による伸縮ブーム撓み量の変化に対応したプリテンションシリンダの適正出力値を選択することができる。
【0045】
従って、この請求項3のセット方法では、上記請求項2と同様に、ブーム先端部にジブを継ぎ足して使用する場合であっても、ジブ長さ及びジブ起伏角を加味した伸縮ブームの適正撓み姿勢で支持することができる。
【0046】
[本願請求項4の発明]
本願請求項4の発明は、伸縮ブーム付き作業機におけるブーム撓み抑制装置のセット装置を対象にしている。尚、この請求項4のセット装置は、上記請求項1のセット方法を行うためのものである。
【0047】
この請求項4でも、上記請求項1と同様に、伸縮ブーム付き作業機として例えば大型の移動式クレーン(クレーン車)を適用できる。又、この請求項4で使用される伸縮ブーム付き作業機(クレーン車)にも、伸縮ブームの自重や吊下荷重によって該伸縮ブームが過度に撓むのを抑制するためのブーム撓み抑制装置を備えている。
【0048】
この請求項4で使用されるブーム撓み抑制装置も、上記請求項1のものと同様に、伸縮ブームの基端ブームに設けたマストの先端部と伸縮ブームの先端部(又はブーム先端部にに設けたジブ基台)との間にプリテンションシリンダを組み込んだテンションロープを張設し、プリテンションシリンダによりテンションロープに適度の張力を付与することで伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るようにしたものである。
【0049】
そして、本願請求項4のセット装置には、伸縮ブームの長さを検出するブーム長さ検出器と、伸縮ブームの起伏角を検出するブーム起伏角検出器と、上記プリテンションシリンダに対して制御信号を発信するコントローラとをそれぞれ備えている。
【0050】
ブーム長さ検出器とブーム起伏角検出器は、AML(クレーン車の転倒防止装置)の検出器として用いられているものを利用できる。コントローラは、各種の制御を行うものであるが、本願ではプリテンションシリンダに対する制御にも利用される。
【0051】
又、この請求項4で使用されているコントローラには、ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さとブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角との各種組み合わせごとに伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの各出力値をデータテーブルとして記憶させたデータ記憶手段と、ブーム長さ検出器とブーム起伏角検出器とでそれぞれ検出された現状のブーム長さとブーム起伏角とに基いてデータ記憶手段に記憶されているデータテーブルの中から伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの出力値を選択する選択手段と、該選択手段で選択された出力値に対応する作動力をプリテンションシリンダ制御手段に出力する出力手段とを備えている。
【0052】
従って、この請求項4のセット装置でも、上記請求項1のセット方法で説明したような機能を達成できる。
【0053】
[本願請求項5の発明]
本願請求項5の発明は、上記請求項4の従属項であって、伸縮ブーム付き作業機としてブーム先端部にジブを任意の長さだけ継ぎ足し得るようにしたものを採用し、さらに継ぎ足されるジブの全長を各単ジブの接続本数で特定し得るようなものに適用されるセット装置である。尚、この請求項5の発明のセット装置は、上記請求項2のセット方法を行うためのものである。
【0054】
そして、この請求項5の発明は、上記請求項4のセット装置において、ブーム先端部に継ぎ足したジブの長さを設定するジブ長さ設定手段と該ジブの起伏角を検出するジブ起伏角検出器とをそれぞれ備えている。
【0055】
ジブ長さ設定手段は、ブーム先端部に継ぎ足されるジブ長さを入力手段で直接コントローラに入力するものである。
【0056】
ジブ起伏角検出器は、実質的にはジブの対地角を検出するものであって、該ジブの対地角を直接検出するものでもよいし、あるいはブームに対するジブチルト角を検出して該ジブチルト角とブーム起伏角とからコントローラでジブ対地角を演算するようにしたものでもよい。
【0057】
又、この請求項5では、コントローラに備えたデータ記憶手段に記憶されるデータテーブルには、ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さとブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角とジブ長さ設定手段で設定される各種ジブ長さとジブ起伏角検出器で検出される各種ジブ起伏角との各種組み合わせごとに伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの各出力値を設定している。
【0058】
従って、この請求項5のセット装置でも、上記請求項2のセット方法で説明したような機能を達成できる。
【0059】
[本願請求項6の発明]
本願請求項6の発明も、上記請求項4の従属項であって、伸縮ブーム付き作業機としてブーム先端部にジブを任意の長さだけ継ぎ足し得るようにしたものを採用し、さらに継ぎ足されるジブの長さを検出器で検出し得るようなものに適用されるセット装置である。尚、この請求項6のセット装置は、上記請求項3のセット方法を行うためのものである。
【0060】
そして、この請求項6の発明では、上記請求項4のセット装置において、ブーム先端部に継ぎ足したジブの長さを検出するジブ長さ検出器と該ジブの起伏角を検出するジブ起伏角検出器とをそれぞれ備えている。尚、ジブ長さ検出器を用いてジブ長さを検出するようにしたジブとしては伸縮式ジブがあるが、この場合のジブ長さ検出器としては伸縮ブームに用いたブーム長さ検出器と同構成のものが採用できる。
【0061】
又、この請求項6では、コントローラに備えたデータ記憶手段に記憶されるデータテーブルには、ブーム長さ検出器で検出される各種ブーム長さとブーム起伏角検出器で検出される各種ブーム起伏角とジブ長さ検出器で検出される各種ジブ長さとジブ起伏角検出器で検出される各種ジブ起伏角との各種組み合わせごとに伸縮ブームをそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの各出力値を設定している。
【0062】
従って、この請求項6のセット装置でも、上記請求項3のセット方法で説明したような機能を達成できる。
【発明の効果】
【0063】
本願請求項1(セット方法)及び4(セット装置)の各発明は、現状のブーム長さとブーム起伏角とに基いて、データ記憶手段に記憶されているデータテーブルの中から伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダの出力値を選択して、その選択した出力値でプリテンションシリンダを作動させ得るようにしたものである。
【0064】
従って、本願請求項1及び4の各発明では、ブーム撓み抑制装置をセットする際に、使用すべきブーム長さとブーム起伏角との組み合わせを自由に設定しても、現状の伸縮ブームの姿勢に対してプリテンションシリンダの出力を常に適正出力(伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得る出力)に自動で設定できるという効果がある。尚、このように、現状の伸縮ブームの姿勢に対してプリテンションシリンダの出力を常に適正出力に自動で設定できるようにすると、出力が一定(不変)のプリテンションシリンダを用いた従来例のように、ブーム長さごとにブーム起伏角を調整する作業が不要となるとともに、オペレータの勘違いで不適正なブーム起伏角に設定するという誤操作を未然に解消できる。
【0065】
又、本願請求項1及び4の各発明では、伸縮ブームの姿勢を特定姿勢から変更(ブーム長さの変更、又はブーム起伏角の変更)したときでも、そのブーム姿勢変更に伴ってプリテンションシリンダの出力が伸縮ブームを適正撓み姿勢で支持し得る適正出力に自動調整されるので、ブーム姿勢変更に伴う特別な調整操作は不要となるという効果もある。
【0066】
又、本願請求項2と3(各セット方法)及び5と6(各セット装置)の各発明では、ブーム先端部に任意の長さのジブを継ぎ足した状態で使用する場合であっても、ジブ長さ及びジブ起伏角を加味した伸縮ブームの適正撓み姿勢で支持することができるので、上記請求項1及び4の効果に加えて、ジブ使用状態においても伸縮ブームを常に適正撓み姿勢で支持できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】本願発明の第1実施例のセット装置を採用し得るブーム撓み抑制装置付きクレーン車(ジブ無しのもの)の側面図である。
図2図1のクレーン車におけるマスト付近の拡大図である。
図3図1のブーム撓み抑制装置におけるテンションロープの張設状態を示す説明図である。
図4】本願発明の第1実施例のセット装置のブロック図である。
図5】本願発明の第1実施例のセット装置の制御回路図である。
図6】本願発明の第2実施例のセット装置を採用し得るブーム撓み抑制装置付きクレーン車(ジブ有りのもの)の側面図である。
図7】本願発明の第2実施例のセット装置のブロック図である。
図8】本願発明の第3実施例のセット装置のブロック図である。
図9】公知(特許文献1)のブーム撓み抑制装置付きクレーン車の側面図である。
図10図9のブーム撓み抑制装置のセット方法の説明図である。
図11図9のブーム撓み抑制装置におけるテンションロープの張設状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
[実施例]
以下、図1図8を参照して本願のいくつかの実施例を説明すると、図1図5には本願第1実施例の「ブーム撓み抑制装置のセット装置」に関するものを示し、図6図7には本願第2実施例の「ブーム撓み抑制装置のセット装置」に関するものを示し、図8には本願第3実施例の「ブーム撓み抑制装置のセット装置」に関するものを示している。
【0069】
本願の各実施例では、「ブーム撓み抑制装置のセット装置」を装備するための伸縮ブーム付き作業機として、図1又は図6に示すように大型のクレーン車Zを適用している。尚、本願の各実施例(図1図6)で適用する伸縮ブーム付き作業機及びブーム撓み抑制装置については、上記した公知例(図9図11)のものとほぼ同構造であって、該公知例の説明と重複する部分が多々あるが、再度説明する。
【0070】
図1(及び図6)に示すクレーン車Zは、車両1上に搭載した旋回台2に伸縮ブーム3の基端部(基端ブーム3Aの基端部)を枢支し、該伸縮ブーム3を起伏シリンダ6で起伏させ得るようにしている。
【0071】
伸縮ブーム3は、複数本の単ブーム(図1及び図6の例では5本の単ブーム)を順次伸縮可能に連結したもので、ブーム内の伸縮シリンダ(図示せず)により所望のブーム長さ状態で使用できるようになっている。
【0072】
又、さらに高揚程を必要とする場合には、図6に示すように伸縮ブーム3の先端ブーム3Bの先端部(以下、これをブーム先端部という)3Cにジブ基台4を取付けて該ジブ基台4に所望長さのジブ5(鎖線図示)を連結することができる。尚、ジブ基台4及びジブ5は、本願請求項1(図1図5の第1実施例)では要件とするものではないので省略することができる。
【0073】
そして、図1に示すように伸縮ブーム3のみ(ジブ無し)でクレーン作業を行うときには、ブーム先端部3Cから吊荷フック7を吊り降ろし、図6に示すようにジブ5を連結して使用する場合は、該ジブ5の先端部から吊荷フック(鎖線図示)を吊り降ろす。
【0074】
図1及び図6に示す各クレーン車Zには、伸縮ブーム3がその自重や吊下荷重で撓むのを抑制するためのブーム撓み抑制装置を装備している。
【0075】
このブーム撓み抑制装置は、図1図2の第1実施例を例にして説明すると、基端ブーム3Aの先端寄り付近にマスト11(左右一対ある)を設け、該マスト11の先端部からブーム先端部3Cをプリテンション装置10で支持するようにしたものである。
【0076】
マスト11は、基端ブーム3Aの先端部寄り位置において左右一対有している。そして、この各マスト11は、それぞれマスト起伏シリンダ12により基端ブーム3Aに沿う格納姿勢(図2に鎖線図示する符号11′の姿勢)と基端ブーム3Aに対して角度略90°方向に向く立設姿勢(図1及び図2の姿勢)との間で起伏せしめ得るようになっている。
【0077】
又、該マスト11は、その立設姿勢において、マスト上部寄り位置と旋回台2との間に介設されるテンションリンク13により前方に傾動しないように支持される。
【0078】
上記プリテンション装置10は、テンションロープ14と、それぞれマスト11に取付けたテンションウインチ15及びプリテンションシリンダ16を有している。尚、テンションロープ14とテンションウインチ15とプリテンションシリンダ16は、それぞれ左右2組使用されている。
【0079】
テンションロープ14は、テンションウインチ15に巻回されているもので、図3に示すように、その繰出し部をマスト先端部に取付けた左右2つの固定シーブ18,18及び折返しシーブ19に巻掛けた後、ロープ端部をマスト11に取付けたプリテンションシリンダ16の伸縮部分(ロッド先端部16a)に連結している。折返しシーブ19とブーム先端部3C(図1)とは別のテンションロープ17で連結されている。
【0080】
テンションウインチ15は、ロック装置20(図3参照)でロック及びロック解除されるようになっている。このロック装置20は、ウインチドラム15aに設けた爪プレート21の掛止爪21aに対してロック爪22をロックシリンダ23で係脱自在に掛止させ得るようにしたものである。尚、このロック装置20のロック・アンロック状態は、ロックシリンダ23の作動状態検出器24によって確認できるようになっている。
【0081】
プリテンションシリンダ16は、図5に示すように、油圧ポンプ40からの作動油を油路41中に設けたソレノイドバルブ42を介して供給することで作動せしめられる。ソレノイドバルブ42(図5)は、後述するプリテンションスイッチ33をON操作すると、縮小側弁室42aが油路41に連通してプリテンションシリンダ16を縮小側に作動させるようになっている。尚、ソレノイドバルブ42(図5)は、プリテンションスイッチ33をOFF操作すると中立位置に戻る一方、図示しないプリテンションリセットスイッチをON操作すると、該ソレノイドバルブ42がプリテンションシリンダ16を伸長させる側に切り替わるようになっている。
【0082】
プリテンションシリンダ16の出力は、後述するようにプリテンションシリンダ制御手段43(図4参照)で調整し得るようになっている。このプリテンションシリンダ制御手段43は、本願各実施例では図5の油圧回路中に設けた可変リリーフ弁43が相当するものである。この可変リリーフ弁43(図5)に対する操作信号は、コントローラ8の出力手段83(図4参照)から発信されるが、その内容については後で詳述する。
【0083】
プリテンションシリンダ16の現状の出力は、作動油圧力を検出する圧力センサ61(図3及び図5参照)で検出できる。尚、図3において符号62は、テンションロープ14の張力検出器である。
【0084】
この実施例のブーム撓み抑制装置は、例えば図1又は図6に示すブーム使用姿勢で機能するものであるが、この種のブーム撓み抑制装置を使用する場合には、ブーム使用姿勢において伸縮ブーム3を適正撓み姿勢で支持することが望まれる。尚、伸縮ブーム3の適正撓み姿勢とは、例えば図1(又は図6)に示すように伸縮ブーム3を所定起仰角で所定長さまで伸長させたブーム使用姿勢において、吊荷状態であっても伸縮ブーム3が過度に撓まず且つ空荷状態で伸縮ブーム3が上反りしないような姿勢のことである。
【0085】
伸縮ブーム3を適正撓み姿勢で支持させるための要素としては、伸縮ブーム3の長さと起伏角とテンションロープ14の張力(プリテンションシリンダ16による引っ張り力)とがある。尚、ブーム使用姿勢において、ブーム長さが長くなるほどブーム撓み作用が大きくなる一方、ブーム起伏角が小さくなるほどブーム撓み作用が大きくなる性質があり、プリテンション装置10が無いものでは、各種ブーム長さと各種ブーム起伏角との各種組み合わせごとにブーム撓み量が異なるようになる。
【0086】
そこで、本願第1実施例(図1図5)のセット装置は、ジブを使用しないものに適用するものであり、本願第2実施例(図6図7)のセット装置は、ジブ5を任意の長さだけ継ぎ足して使用するもので且つジブ長さをジブ長さ設定手段51で設定するものに適用するものであり、本願第3実施例(図8)のセット装置は、ジブ5を任意の長さだけ継ぎ足して使用するもので且つジブ長さをジブ長さ検出器52で検出するものに適用するものである。
【0087】
図1図5の第1実施例」
この第1実施例のセット装置は、各種ブーム長さと各種ブーム起伏角とを自由に組み合わせた場合でも、プリテンションシリンダ16の出力を調整することで、伸縮ブーム3を常に適正撓み姿勢で支持し得るようにしたものである。
【0088】
そして、第1実施例のセット装置には、図1及び図4に示すように、伸縮ブーム3の長さを検出するブーム長さ検出器31と、伸縮ブーム3の起伏角を検出するブーム起伏角検出器32と、プリテンションシリンダ16に対して制御信号を発信するコントローラ8とをそれぞれ備えている。
【0089】
ブーム長さ検出器31とブーム起伏角検出器32は、AML(クレーン車の転倒防止装置)の検出器として用いられているものを利用できる。コントローラ8(図4)は、作業機に対して各種の制御を行うものであるが、本願実施例ではプリテンションシリンダ16に対する制御にも利用される。
【0090】
又、この第1実施例で使用されているコントローラ4には、図4に示すように、ブーム長さ検出器31で検出される各種ブーム長さとブーム起伏角検出器32で検出される各種ブーム起伏角との各種組み合わせごとに伸縮ブーム3をそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダ16の各出力値をデータテーブルとして記憶させたデータ記憶手段82と、ブーム長さ検出器31とブーム起伏角検出器32とでそれぞれ検出された現状のブーム長さとブーム起伏角とに基いてデータ記憶手段82に記憶されているデータテーブルの中から伸縮ブーム3を適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダ16の出力値を選択する選択手段81と、該選択手段81で選択された出力値に対応する作動力をプリテンションシリンダ制御手段43に出力する出力手段83とを備えている。尚、図4中のプリテンションシリンダ制御手段43は、この実施例では図5における可変リリーフ弁43が相当する。
【0091】
データ記憶手段82に記憶させたデータテーブルは、上記のようにそれぞれ任意に設定される各種ブーム長さと各種ブーム起伏角とのそれぞれの組み合わせごとに発生する伸縮ブーム3の各種撓み力に対応して、各姿勢の伸縮ブーム3をそれぞれ適正撓み姿勢で支持するためのプリテンションシリンダ16の出力を設定したものである。
【0092】
又、上記選択手段81には、図4に示すように、ブーム長さ検出器31からのブーム長さに関する検出データとブーム起伏角検出器32からのブーム起伏角に関する検出データとが常時入力されているが、この選択手段81はプリテンションスイッチ33をON操作することで機能するようにしている。
【0093】
そして、この第1実施例のセット装置(図4)では、任意のブーム使用姿勢(例えば図1)において、プリテンションスイッチ33をON操作すると、選択手段81が機能して、データ記憶手段82に記憶しているデータテーブルの中から、ブーム長さ検出器31て検出されたブーム長さデータとブーム起伏角検出器32で検出されたブーム起伏角データとに基いて、伸縮ブーム3を適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダ16の出力を呼び出し、その呼び出したプリテンションシリンダ16の出力を選択手段81から出力手段83に伝達し、該出力手段83によりプリテンションシリンダ制御手段(図5の可変リリーフ弁)43を所定出力に設定するようになっている。尚、この場合、伸縮ブーム3を適正撓み姿勢で支持するためのプリテンションシリンダ16の出力は、可変リリーフ弁43の開弁度を適正に調整することで行われる。即ち、可変リリーフ弁43の開弁度を適正に調整することにより、プリテンションシリンダ16への油圧力を適正に調整できる(伸縮ブーム3を適正撓み姿勢で支持するための油圧力に設定できる)。
【0094】
そして、このようにプリテンションシリンダ制御手段(図5の可変リリーフ弁)43を所定出力に設定した状態で、プリテンションスイッチ33をON操作すると、該可変リリーフ弁43で設定された作動油圧力でプリテンションシリンダ16を縮小作動させるようになる。このときのプリテンションシリンダ16の出力は、現状のブーム使用姿勢(ブーム長さとブーム起伏角)おいて伸縮ブーム3を適正撓み姿勢に支持し得るものである。
【0095】
従って、この第1実施例のセット装置(及びセット方法)では、ブーム撓み抑制装置をセットする際に、使用すべきブーム長さとブーム起伏角との組み合わせを自由に設定しても、現状の伸縮ブーム3の姿勢に対してプリテンションシリンダ16の出力を常に適正出力(伸縮ブーム3を適正撓み姿勢で支持し得る出力)に自動で設定できる。このように、現状の伸縮ブーム3の姿勢(ブーム長さとブーム起伏角)に対してプリテンションシリンダ16の出力を常に適正出力に自動で設定できるようにすると、出力が一定(不変)のプリテンションシリンダを用いた従来例のように、ブーム長さごとにブーム起伏角を調整する作業が不要となるとともに、オペレータの勘違いで不適正なブーム起伏角に設定するという誤操作を未然に解消できる。
【0096】
又、この第1実施例のセット装置(及びセット方法)では、伸縮ブーム3の姿勢を特定姿勢から変更(ブーム長さの変更、又はブーム起伏角の変更)したときでも、そのブーム姿勢変更に伴って選択手段81がデータ記憶手段82のデータテーブルからプリテンションシリンダ16の適正出力を自動で選択し直すので、ブーム姿勢変更に伴う特別な調整操作は不要となる、という機能も有している。
【0097】
図6図7の第2実施例」
この第2実施例(図7)のセット装置は、図6に示すように、ブーム先端部3Cにジブ5を任意の長さだけ継ぎ足して使用する場合に適用されるものである。又、この第2実施例では、ジブ5としてラチスタイプの各単ジブを必要本数継ぎ足して構成されるラフィングジブが使用されている。そして、この種のラフィングジブ5では、予め各単ブームの長さがそれぞれ判っており、何本の単ブームを継ぎ足したかにってジブ5の全長を計算できる。尚、図6の例では、ラフィングジブ5はブーム先端部3Cに対してジブ基台4を介して連結されている。
【0098】
又、図6のジブ付きクレーン車Zでは、ジブ5の先端部と旋回台2に設けたテンションウインチ57との間にジブ基台4に設けた2本のマスト53,54を介してテンションロープ55,56を張設し、基端側のテンションロープ56をテンションウインチ57で巻取ったり又は繰出したりすることで、ジブ5の起伏角を調整し得るようになっている。
【0099】
ところで、図6に示すようにブーム先端部3Cにジブ5を継ぎ足すと、該ジブ5の荷重により伸縮ブーム3に対して撓み量を増加させる要因になり、しかも継ぎ足すジブ長さ及びジブ起伏角によって伸縮ブーム3に対する撓み作用が異なる。
【0100】
そして、この第2実施例(図6図7)のセット装置では、第1実施例(図4)のセット装置の構成に加えて、ブーム先端部3Cに継ぎ足したジブ5の長さをコントローラ8に設定(入力)するためのジブ長さ設定手段51と、ジブ5の起伏角を検出するジブ起伏角検出器50とをそれぞれ備えている。
【0101】
ジブ長さ設定手段51(図7)は、ブーム先端部3Cに継ぎ足されるジブ5の長さを入力手段で直接コントローラ8(選択手段81)に入力するものである。
【0102】
ジブ起伏角検出器50は、この第2実施例では、ジブ5の対地角を直接ジブ起伏角検出器50で検出するようにしたものを採用している。尚、他の実施例では、ジブ起伏角検出器として、伸縮ブーム3対するジブ5のチルト角を検出するものでもよく、その場合は、該ジブチルト角検出器で検出したジブチルト角とブーム起伏角検出器32で検出したブーム起伏角とから、コントローラ8でジブ5の対地角を演算すればよい。
【0103】
又、この第2実施例のセット装置では、図7に示すように、コントローラ8に備えたデータ記憶手段82に記憶されるデータテーブルには、ブーム長さ検出器31で検出される各種ブーム長さとブーム起伏角検出器32で検出される各種ブーム起伏角とジブ長さ設定手段51で設定される各種ジブ長さとジブ起伏角検出器50で検出される各種ジブ起伏角との各種組み合わせごとに伸縮ブーム3をそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダ16の各出力値を設定している。尚、図7に示すように、ブーム長さ検出器31とブーム起伏角検出器32とジブ起伏角検出器50でそれぞれ検出される各検出値は、AML(クレーン車の転倒防止装置)のデータとして常時コントローラ8に入力されている。
【0104】
そして、この第2実施例のセット装置は、次のように機能する。即ち、例えば図6に示すジブ付きのブーム使用姿勢において、ブーム先端部3Cに継ぎ足したジブ5の長さをジブ長さ設定手段51(図7)で設定した後、プリテンションスイッチ33(図7)をON操作すると、選択手段81が機能して、データ記憶手段82に記憶しているデータテーブルの中から、ブーム長さ検出器31で検出されたブーム長さデータとブーム起伏角検出器32で検出されたブーム起伏角データとジブ長さ設定手段51で設定したジブ長さとジブ起伏角検出器50で検出されたジブ起伏角とに基いて、伸縮ブーム3を適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダ16の出力を呼び出し、その呼び出したプリテンションシリンダ16の出力を選択手段81から出力手段83に伝達し、該出力手段83によりプリテンションシリンダ制御手段(図5の可変リリーフ弁)43を所定出力に設定するようになっている。
【0105】
従って、この第2実施例のセット装置では、プリテンションシリンダ16を、ブーム先端部3Cに継ぎ足したジブ5の長さ及び起伏角を加味した適正な出力で作動させることができるので、ジブ5を継ぎ足した伸縮ブーム3であっても、該伸縮ブーム3を常に適正撓み姿勢で支持することができる。
【0106】
図8の第3実施例」
図8に示す第3実施例のセット装置も、図6に示すようにブーム先端部3Cにジブ5を任意の長さだけ継ぎ足したものに適用されるものであるが、この第3実施例の場合は、ジブ5として伸縮ジブを採用したものが好適である。尚、この第3実施例のセット装置を適用する場合は、ジブ付きクレーン車として図6のラフィングジブ5に代えて伸縮ジブを採用したものを適用する。
【0107】
このように、伸縮ジブの場合は、ジブ5の全長を認知するのにジブ長さ検出器52(伸縮ブーム長さを検出するブーム長さ検出器31と同様のもの)が使用可能であり、この第3実施例のセット装置では、図8に示すようにジブ長さ検出器52を使用している。尚、この第3実施例(図8)でも、上記第2実施例と同様にジブ起伏角検出器50を使用している。
【0108】
又、この第3実施例のセット装置では、コントローラ8に備えたデータ記憶手段82に記憶されるデータテーブルには、ブーム長さ検出器31で検出される各種ブーム長さとブーム起伏角検出器32で検出される各種ブーム起伏角とジブ長さ検出器52で検出される各種ジブ長さとジブ起伏角検出器50で検出される各種ジブ起伏角との各種組み合わせごとに伸縮ブーム3をそれぞれ適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダ16の各出力値を設定している。
【0109】
そして、この第3実施例のセット装置は、次のように機能する。即ち、ジブ付きのブーム使用姿勢(例えば図6のものにジブとして伸縮ジブを使用したもの)において、プリテンションスイッチ33(図8)をON操作すると、選択手段81が機能して、データ記憶手段82に記憶しているデータテーブルの中から、ブーム長さ検出器31で検出されたブーム長さデータとブーム起伏角検出器32で検出されたブーム起伏角データとジブ長さ検出器52で検出したジブ長さとジブ起伏角検出器50で検出されたジブ起伏角とに基いて、伸縮ブーム3を適正撓み姿勢で支持し得るプリテンションシリンダ16の出力を呼び出し、その呼び出したプリテンションシリンダ16の出力を選択手段81から出力手段83に伝達し、該出力手段83によりプリテンションシリンダ制御手段(図5の可変リリーフ弁)43を所定出力に設定するようになっている。
【0110】
従って、この第3実施例のセット装置でも上記第2実施例(図6図7)と同様に、プリテンションシリンダ16を、ブーム先端部3Cに継ぎ足したジブ5の長さ及び起伏角を加味した適正な出力で作動させることができるので、ジブ5を継ぎ足した伸縮ブーム3であっても、該伸縮ブーム3を常に適正撓み姿勢で支持することができる。
【符号の説明】
【0111】
1は車両、2は旋回台、3は伸縮ブーム、3Aは基端ブーム、3Bは先端ブーム、4はジブ基台、5はジブ、8はコントローラ、10はプリテンション装置、11はマスト、14はテンションロープ、15はテンションウインチ、16はプリテンションシリンダ、31はブーム長さ検出器、32はブーム起伏角検出器、33はプリテンションスイッチ、43はプリテンションシリンダ制御手段(可変リリーフ弁)、50はジブ起伏角検出器、51はジブ長さ設定手段、52はジブ長さ検出器である。
図1
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