【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、短工程かつ高収率で目的のスピロケタール誘導体を効率的に製造する方法を見出し、本発明を完成させた。本発明は、有毒な有機スズ化合物の使用およびその除去のための精製操作を必要とせずに、また、例えば、ベンジルハライドのような不安定中間体を経由せずに目的のスピロケタール誘導体を製造する方法を提供するものである。また、カップリング反応の脱離基の導入と、保護基の導入を一工程で行うことができ、さらにカップリング反応の生成物は結晶性がよいため、さらなる変換を行うことなく効果的な精製が可能である点においても、本発明の製造方法は効率的であり、大量合成法、特に、医薬品原料の工業的製法として適している。
【0012】
すなわち、本発明の1つの側面によれば、式(I):
【0013】
【化3】
[式中、nは0〜3から選択される整数であり、mは0〜5から選択される整数であり;
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、1以上のRaにより置換されていてもよいC
1−10アルキル、1以上のRaにより置換されていてもよいC
3−10シクロアルキル、1以上のRaにより置換されていてもよいC
2−10アルケニル、1以上のRaにより置換されていてもよいC
3−10シクロアルケニル、1以上のRaにより置換されていてもよいC
2−10アルキニル、1以上のRaにより置換されていてもよいアリール、1以上のRaにより置換されていてもよい飽和、部分不飽和、または不飽和のへテロシクリル、シアノ、ハロゲン原子、ニトロ、メルカプト、−OR
3、−NR
4R
5、−S(O)
pR
6、−S(O)
qNR
7R
8、−C(=O)R
35、−CR
36=NOR
37、−C(=O)OR
9、−C(=O)NR
10R
11、および−SiR
12R
13R
14から選択され;nが2以上の場合、R
1はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよく;mが2以上の場合、R
2はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよく;または、隣接する炭素原子上に存在する2つのR
1は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、ベンゼン環に縮合する炭素環またはヘテロ環を形成してもよく;隣接する炭素原子上に存在する2つのR
2は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、ベンゼン環に縮合する炭素環またはヘテロ環を形成してもよく;
pは、0〜2から選択される整数であり;qは、1および2から選択される整数であり;
R
3は、水素原子、C
1−10アルキル、C
3−10シクロアルキル、C
2−10アルケニル、C
3−10シクロアルケニル、C
2−10アルキニル、アリール、ヘテロアリール、−SiR
12R
13R
14、または−C(=O)R
15であり;
R
4およびR
5は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ、C
1−10アルキル、C
3−10シクロアルキル、C
1−10アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、−SiR
12R
13R
14、および−C(=O)R
15から選択され;
R
6は、C
1−10アルキル、C
3−10シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、ただし、pが0の場合、R
6はさらに−SiR
12R
13R
14、または−C(=O)R
15であってもよく;
R
7、R
8、R
10およびR
11は、それぞれ独立に、水素原子、C
1−10アルキル、C
3−10シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、−SiR
12R
13R
14、および−C(=O)R
15から選択され;
R
9は、水素原子、C
1−10アルキル、C
3−10シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、または−SiR
12R
13R
14であり;
Raは、それぞれ独立に、C
3−10シクロアルキル、C
2−10アルケニル、C
3−10シクロアルケニル、C
2−10アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ、ハロゲン原子、−NR
21R
22、−OR
38、−SR
26、−S(O)
2R
27、−SiR
23R
24R
25、カルボキシ、−C(O)NR
28R
29、−C(=O)R
30、−CR
31=NOR
32、シアノ、および−S(O)
rNR
33R
34から選択され;
rは、1および2から選択される整数であり;
R
12、R
13、R
14、R
23、R
24、およびR
25は、それぞれ独立に、C
1−10アルキル、およびアリールから選択され;
R
15およびR
30は、それぞれ独立に、水素原子、C
1−10アルキル、C
3−10シクロアルキル、C
1−10アルコキシ、C
1−10アルキルアミノ、ジ(C
1−10アルキル)アミノ、C
1−10アルキルチオ、アリール、およびヘテロアリールから選択され;
R
21、R
22、R
28、R
29、R
33およびR
34は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ、C
1−10アルキル、C
3−10シクロアルキル、C
1−10アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、−SiR
23R
24R
25、および−C(=O)R
30から選択され;
R
26は、水素原子、C
1−10アルキル、C
1−10アルコキシ、C
3−10シクロアルキルオキシ、アリールオキシ、C
3−10シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、−C(=O)R
30、または−SiR
23R
24R
25であり;
R
27は、ヒドロキシ、C
1−10アルキル、C
3−10シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、−SiR
23R
24R
25、または−C(=O)R
30であり;
R
31は、水素原子、C
1−10アルキル、またはC
3−10シクロアルキルであり;
R
32は、水素原子、C
1−10アルキル、C
3−10シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、−SiR
23R
24R
25、または−C(=O)R
30であり;
R
35は、水素原子、C
1−10アルキル、C
3−10シクロアルキル、C
2−10アルケニル、C
3−10シクロアルケニル、C
2−10アルキニル、C
1−10アルキルチオ、アリール、またはヘテロアリールであり;
R
36は、水素原子、C
1−10アルキル、C
3−10シクロアルキル、C
2−10アルケニル、C
3−10シクロアルケニル、またはC
2−10アルキニルであり;
R
37は、水素原子、C
1−10アルキル、C
3−10シクロアルキル、C
2−10アルケニル、C
3−10シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、−SiR
12R
13R
14、または−C(=O)R
15であり;
R
38は、C
1−10アルキル、C
3−10シクロアルキル、C
2−10アルケニル、C
3−10シクロアルケニル、C
2−10アルキニル、C
1−10アルキルチオ、アリール、ヘテロアリール、−SiR
23R
24R
25、または−C(=O)R
30である]
の化合物を製造する方法であって;
工程a)式(II):
【0014】
【化4】
[式中、Rxは、それぞれ独立して、C
1−6アルキル、アリール、ヘテロアリール、C
1−6アルコキシ、アリールオキシ、およびヘテロアリールオキシから選択され;
R
41は、R
1として既に定義した基であり、ただし当該基は1以上の保護基を有していてもよく;nは既に定義したとおりである]
の化合物を、式(III):
【0015】
【化5】
[式中、Mは、B(R
100)
2、ZnR
100、およびMgR
100から選択され、
R
100は、独立に、−OR
101、Cl、Br、I、Fから選択され、ここで、R
101は水素原子およびC
1−12アルキルから選択され、または、B(R
100)
2は、5または6員環の環状ボロン酸エステルを形成していてもよく、
R
42は、R
2として既に定義した基であり、ただし当該基は1以上の保護基を有していてもよく、mは既に定義したとおりである]
の化合物と反応させて、式(IV):
【0016】
【化6】
[式中、R
41、R
42、Rx、n、およびmは既に定義したとおりである]
の化合物を得る工程;および
工程b)保護基を除去することにより、式(IV)の化合物を式(I)の化合物に変換する工程;
を含み、さらに、上記工程中、および/またはその前後の任意の段階において、保護基を導入する工程、および/または保護基を除去する工程を含んでいてもよい、前記製造方法が提供される。
【0017】
本明細書において使用される用語「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを意味する。
【0018】
用語「C
1−10アルキル」は、炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、3−メチルブチル、2−メチルブチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、4−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−メチルペンチル、1−メチルペンチル、3−エチルブチル、および2−エチルブチルなど、さらに一部に環状構造を有するシクロプロピルメチル、およびシクロヘキシルメチルなども含まれる。C
1−10アルキルには、さらに、直鎖状または分岐鎖状のC
1−6アルキル、およびC
1−4アルキルが含まれる。
【0019】
用語「C
1−6アルキル」は、炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、3−メチルブチル、2−メチルブチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、4−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−メチルペンチル、1−メチルペンチル、3−エチルブチル、および2−エチルブチルなど、さらに一部に環状構造を有するシクロプロピルメチル、およびシクロペンチルメチルなどが含まれる。C
1−6アルキルには、さらに、直鎖状または分岐鎖状のC
1−5アルキル、C
1−4アルキル、およびC
1−3アルキルが含まれる。
【0020】
用語「C
3−10シクロアルキル」は、炭素数3〜10の環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、およびメチルシクロプロピルなどが含まれる。C
3−10シクロアルキルには、さらに、C
3−8シクロアルキル、およびC
3−7シクロアルキルが含まれる。
【0021】
用語「C
2−10アルケニル」は、炭素数2〜10の直鎖または分岐鎖状のアルケニル基を意味し、例えば、エテニル(ビニル)、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、プロペン−2−イル、3−ブテニル(ホモアリル)、および1,4−ペンタジエン−3−イルなどが含まれる。C
2−10アルケニルには、さらに、直鎖状または分岐鎖状のC
2−6アルケニル、およびC
2−4アルケニルが含まれる。
【0022】
用語「C
3−10シクロアルケニル」は、炭素数3〜10の環状アルケニル基を意味し、例えば、シクロペンテニル、およびシクロヘキセニルなどが含まれ、C
5−10シクロアルケニルなどが含まれる。
【0023】
用語「C
2−10アルキニル」は、炭素数2〜10の直鎖または分岐鎖状のアルキニル基を意味し、例えば、エチニル、1−プロピニル、および2−プロピニルなどが含まれる。「C
2−10アルキニル」には、さらに、直鎖状または分岐鎖状のC
2−6アルキニル、およびC
2−4アルキニルが含まれる。
【0024】
用語「C
1−10アルコキシ」は、アルキル部分として炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルオキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ、i−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、3−メチルブトキシ、2−メチルブトキシ、1−メチルブトキシ、1−エチルプロポキシ、n−ヘキシルオキシ、4−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、2−メチルペントキシ、1−メチルペントキシ、3−エチルブトキシ、および2−エチルブトキシなどが含まれる。C
1−10アルコキシには、さらに、直鎖状または分岐鎖状のC
1−6アルコキシ、およびC
1−4アルコキシが含まれる。
【0025】
用語「C
1−6アルコキシ」は、アルキル部分として炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルオキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ、i−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、3−メチルブトキシ、2−メチルブトキシ、1−メチルブトキシ、1−エチルプロポキシ、n−ヘキシルオキシ、4−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、2−メチルペントキシ、1−メチルペントキシ、3−エチルブトキシ、および2−エチルブトキシなどが含まれる。C
1−6アルコキシには、さらに、直鎖状または分岐鎖状のC
1−5アルコキシ、C
1−4アルコキシ、およびC
1−3アルコキシが含まれる。
【0026】
用語「C
1−10アルキルアミノ」は、アルキル部分として炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルアミノ基を意味し、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、i−プロピルアミノ、n−ブチルアミノ、s−ブチルアミノ、i−ブチルアミノ、およびt−ブチルアミノなどが含まれる。C
1−10アルキルアミノには、さらに、直鎖状または分岐鎖状のC
1−6アルキルアミノ、およびC
1−4アルキルアミノが含まれる。
【0027】
用語「ジ(C
1−10アルキル)アミノ」は、アルキル部分として炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有するジアルキルアミノ基を意味し、当該アルキル部分は同一であっても異なっていてもよく、例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ(n−プロピル)アミノ、ジ(i−プロピル)アミノ、ジ(n−ブチル)アミノ、ジ(s−ブチル)アミノ、ジ(i−ブチル)アミノ、ジ(t−ブチル)アミノ、エチル(メチル)アミノ、メチル(n−プロピル)アミノ、メチル(i−プロピル)アミノ、n−ブチル(メチル)アミノ、s−ブチル(メチル)アミノ、i−ブチル(メチル)アミノ、およびt−ブチル(メチル)アミノなどが含まれる。ジ(C
1−10アルキル)アミノには、さらに、直鎖状または分岐鎖状のジ(C
1−6アルキル)アミノ、およびジ(C
1−4アルキル)アミノが含まれる。
【0028】
用語「C
1−10アルキルチオ」は、アルキル部分として炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルチオ基を意味し、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、i−プロピルチオ、n−ブチルチオ、s−ブチルチオ、i−ブチルチオ、およびt−ブチルチオなどが含まれる。C
1−10アルキルチオには、さらに、直鎖状または分岐鎖状のC
1−6アルキルチオ、およびC
1−4アルキルチオが含まれる。
【0029】
本明細書において使用される用語「飽和、部分不飽和、または不飽和のへテロシクリル」は、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1以上のヘテロ原子を含む、飽和、部分不飽和、または不飽和の4〜10員ヘテロ環式基を意味する。ヘテロシクリルの例としては、ピリジル、ピリミジル、ピラジル、トリアジニル、キノリル、キノキサリル、キナゾリル、フリル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピロリジル、ピペリジル、ピペラジニル、ホモピペリジル、ホモピペラジニル、モルホリル、テトラヒドロフラニル、およびテトラヒドロピラニルなどが挙げられる。
【0030】
用語「アリール」は、特に限定されないが、炭素数6〜14、例えば炭素数6〜10の芳香族炭素環式基を意味し、例えば、フェニル、1−ナフチル、および2−ナフチルなどが含まれる。
【0031】
用語「アリールオキシ」は、特に限定されないが、上記アリール基をアリール部分として有するアリールオキシ基を意味し、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ、および2−ナフトキシなどが含まれる。
【0032】
用語「アラルキル」としては、特に限定されないが、例えば、アリールC
1−6アルキルが挙げられる。アリールC
1−6アルキルは、アリール部分として既に定義した炭素数6〜14、例えば炭素数6〜10の芳香族炭素環式基により置換されたC
1−6アルキル基を意味し、例えば、ベンジル、1−ナフチルメチル、および2−ナフチルメチルなどが含まれる。
【0033】
用語「ヘテロアリール」は、特には限定されないが、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1以上のヘテロ原子を含む、4〜10員の芳香族ヘテロ環式基を意味する。ヘテロアリールの例としては、ピリジル、ピリミジル、ピラジル、トリアジニル、キノリル、キノキサリル、キナゾリル、フリル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、およびトリアゾリルなどが挙げられる。
【0034】
用語「ヘテロアリールオキシ」は、特には限定されないが、ヘテロアリール部分として既に定義した窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1以上のヘテロ原子を含む、4〜10員の芳香族ヘテロ環式基を有するヘテロアリールオキシ基を意味し、例えば、ピリジルオキシ、ピリミジルオキシ、ピラジルオキシ、トリアジニルオキシ、キノリルオキシ、キノキサリルオキシ、キナゾリルオキシ、フリルオキシ、チエニルオキシ、ピロリルオキシ、ピラゾリルオキシ、イミダゾリルオキシ、およびトリアゾリルオキシなどが挙げられる。
【0035】
用語「ヘテロアリールC
1−6アルキル」は、特には限定されないが、ヘテロアリール部分として既に定義した、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1以上のヘテロ原子を含む、4〜10員の芳香族ヘテロ環式基により置換されたC
1−6アルキル基を意味し、例えば、ピリジルメチル、ピリミジルメチル、ピラジルメチル、トリアジニルメチル、キノリルメチル、キノキサリルメチル、キナゾリルメチル、フリルメチル、チエニルメチル、ピロリルメチル、ピラゾリルメチル、イミダゾリルメチル、およびトリアゾリルメチルなどが挙げられる。
【0036】
用語「C
1−6アルコキシC
1−6アルキル」は、特には限定されないが、上記C
1−6アルコキシをアルコキシ部分として有する、炭素数1〜6のアルキル基を意味し、例えば、メトキシメチル、エトキシメチル、1−メトキシエチル、および1−メトキシ−1−メチルエチルなどが挙げられる。
【0037】
用語「アリールメトキシC
1−6アルキル」は、特には限定されないが、上記アリールをアリール部分として有するアリールメトキシC
1−6アルキルを意味し、例えば、ベンジルオキシメチルなどが挙げられる。
【0038】
用語「C
1−6アルキルカルボニル」は、特には限定されないが、上記C
1−6アルキルをアルキル部分として有するカルボニルを意味し、例えば、アセチル、プロピオニル、およびピバロイルなどが挙げられる。
【0039】
用語「C
1−6アルコキシカルボニル」は、特には限定されないが、上記C
1−6アルコキシをアルコキシ部分として有するカルボニルを意味し、例えば、メトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが挙げられる。
【0040】
用語「アリールセレニル」は、特には限定されないが、上記アリールをアリール部分として有するアリールセレニルを意味し、例えば、フェニルセレニル(PhSe−)などが挙げられる。
【0041】
用語「Ph」はフェニルを意味する。
【0042】
用語「C
1−10アルキレン基」は、炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、3−メチルブチレン、2−メチルブチレン、1−メチルブチレン、1−エチルプロピレン、ヘキシレン、4−メチルペンチレン、3−メチルペンチレン、2−メチルペンチレン、1−メチルペンチレン、3−エチルブチレン、および2−エチルブチレンなど、さらに一部に環状構造を有するシクロプロピルメチレン、およびシクロヘキシルメチレンなども含まれる。C
1−10アルキレンには、さらに、直鎖状または分岐鎖状のC
1−6アルキレン、およびC
1−4アルキレンが含まれる。
【0043】
本明細書において使用される用語「炭素環」は、特に限定されないが、炭素数6〜14、例えば炭素数6〜10の、飽和、部分不飽和、または不飽和の炭化水素環を意味し、例えば、シクロヘキサン、ベンゼン、およびナフタレンなどが含まれる。
【0044】
本明細書において使用される用語「ヘテロ環」は、特に限定されないが、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1以上のヘテロ原子を含む、飽和、部分不飽和、または不飽和の4〜10員のヘテロ環を意味する。ヘテロ環の例としては、ピリジン、ピペリジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フラン、テトラヒドロフラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、およびトリアゾールなどが挙げられる。
【0045】
本明細書において使用される用語「5または6員環の環状ボロン酸エステル」は、環に含まれる原子数が5または6の環状ボロン酸エステルであれば特に限定されず、例えば、環原子が炭素原子、酸素原子およびホウ素原子からなる環状ボロン酸エステルが挙げられる。B(R
100)
2の例としては、[1,3,2]ジオキサボロラニル、または[1,3,2]ジオキサボリナニルなどが挙げられる。
【0046】
本明細書において式−SiR
12R
13R
14、式−SiR
23R
24R
25、および式−Si(R
53)
3などにより特定される置換シリル基は、特には限定されず、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、およびtert−ブチルジフェニルシリルなどが含まれる。
【0047】
本発明において定義されるR
1およびR
2は、特に限定はされないが、例えば、それぞれ独立に、1以上のRaにより置換されていてもよいC
1−10アルキル、1以上のRaにより置換されていてもよいC
3−10シクロアルキル、1以上のRaにより置換されていてもよいC
2−10アルケニル、1以上のRaにより置換されていてもよいC
3−10シクロアルケニル、1以上のRaにより置換されていてもよいC
2−10アルキニル、1以上のRaにより置換されていてもよいアリール、1以上のRaにより置換されていてもよい飽和、部分不飽和、または不飽和のへテロシクリル、および−SiR
12R
13R
14から選択される。より好ましくは、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、C
1−6アルキル、C
3−6シクロアルキル、アリール、および−SiR
12R
13R
14から選択される。本発明において、nおよびmが0の場合、ベンゼン環上にR
1およびR
2はそれぞれ存在しない。本発明の1つの態様において、nが0であり、mが0または1であり、R
2がC
1−4アルキルである。
【0048】
R
1およびR
2として定義されるハロゲン原子は、好ましくは、フッ素原子または塩素原子である。
【0049】
本発明において、R
1およびR
2として定義される基が保護可能な基、例えば、ヒドロキシ、カルボキシ、カルボニル、アミノ、またはメルカプトなどを有する場合、当該基は、保護基により保護されていてもよい。各基に導入する保護基の選択、ならびに保護基の導入および除去の操作は、例えば、「Greene and Wuts,“Protective Groups in Organic Sythesis”(第4版,John Wiley & Sons 2006年)」の記載に基づいて行うことができる。R
1およびR
2として定義される基に1以上の保護基を導入して形成される基は、R
41およびR
42の定義に含まれる。
【0050】
R
1および/またはR
2にヒドロキシが含まれる場合の保護基の例としては、1以上のR
51により置換されていてもよいC
1−10アルキル、1以上のR
52により置換されていてもよい飽和、部分不飽和、または不飽和のヘテロシクリル、C
2−10アルケニル、−Si(R
53)
3、−C(=O)R
54、および−B(OR
55)
2などの基が挙げられ;
ここで、R
51は、それぞれ独立に、1以上のR
56により置換されていてもよいアリール、1以上のアリールにより置換されていてもよいC
1−10アルコキシ、C
1−10アルキルチオ、およびアリールセレニルから選択され;
R
52は、それぞれ独立に、C
1−10アルコキシから選択され;
R
53およびR
55は、それぞれ独立に、C
1−10アルキル、およびアリールから選択され;
R
54は、水素原子、C
1−10アルキル、1以上のC
1−10アルコキシにより置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、1以上のR
57により置換されていてもよいアミノ、1以上のアリールにより置換されていてもよいC
1−10アルコキシ、または1以上のニトロにより置換されていてもよいアリールオキシであり;
R
56は、それぞれ独立に、C
1−10アルキル、C
1−10アルコキシ、アリール、およびヘテロアリールから選択され;
R
57は、それぞれ独立に、C
1−10アルキル、およびアリールから選択される。
【0051】
ヒドロキシ基の保護基の好ましい例としては、メチル、ベンジル、4−メトキシベンジル、メトキシメチル、メチルチオメチル、2−メトキシエトキシメチル、ベンジルオキシメチル、テトラヒドロピラニル、6−メトキシテトラヒドロピラン−2−ニル、テトラヒドロチオピラニル、6−メトキシテトラヒドロチオピラン−2−ニル、テトラヒドロフラニル、5−メトキシテトラヒドロフラン−2−ニル、テトラヒドロチオフラニル、5−メトキシテトラヒドロチオフラン−2−ニル、1−エトキシエチル、1−メトキシ−1−メチルエチル、tert−ブチル、アリル、ビニル、トリフェニルメチル(トリチル)、トリメチルシリル、トリエチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、イソブチリル、ピバロイル、ベンゾイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、およびtert−ブトキシカルボニルなどが挙げられる。
【0052】
R
1および/またはR
2にアミノ基が含まれる場合の保護基の例としては、1以上のR
51により置換されていてもよいC
1−10アルキル、1以上のR
52により置換されていてもよい飽和、部分不飽和、または不飽和のヘテロシクリル、C
2−10アルケニル、−Si(R
53)
3、または−C(=O)R
54などが挙げられ、ここで、R
51〜R
54は既に定義したとおりである。アミノ基の保護基の好ましい例としては、ベンジルなどが挙げられ、また、1級アミノ基は、フタル酸イミド基、コハク酸イミド基、またはピロリジル基に変換して保護することもできる。
【0053】
R
1および/またはR
2にカルボキシ基が含まれる場合のカルボキシ基の保護基の例としては、1以上のR
51により置換されていてもよいC
1−10アルキル、C
2−10アルケニル、−Si(R
53)
3などのエステル形成基(ここで、R
51およびR
53は既に定義したとおりである)、または−NR
58R
59などのアミド形成基(ここで、R
58およびR
59はそれぞれ独立して、1以上のR
51により置換していてもよいC
1−10アルキル、C
2−10アルケニル、および−Si(R
53)
3から選択され、ここで、R
51およびR
53は既に定義したとおりである)などが挙げられる。保護基の導入によるカルボキシの好ましい変換例としては、エチルエステル、ベンジルエステル、およびt−ブチルエステルなどが挙げられる。
【0054】
上記工程bにおいて除去される「保護基」は、式(IV)の化合物に含まれる基−C(O)−Rxおよび、R
41およびR
42に含まれていてもよい保護基のすべてまたはいずれかを意味する。
【0055】
上記式(II)の化合物と式(III)の化合物を反応させて式(IV)の化合物を得る工程(工程a)は、適当な触媒の存在下で行うことができる。当該触媒の例としては、パラジウム触媒、例えば、PdCl
2(dppf)・CH
2Cl
2、Pd(OAc)
2、Pd(PPh
3)
4、NiCl
2(PPh
3)
2、またはNiCl
2(dppf)などを用いることができる。当該触媒は、例えば、基質の量に対して0.01〜50mol%、好ましくは0.1〜30mol%、より好ましくは1〜10mol%の量で使用される。上記触媒のうち、例えば、PdCl
2(dppf)・CH
2Cl
2は、N.E.CHEMCATから購入により入手可能である。
【0056】
また工程aの1つの態様においては、金属化合物およびリガンドを反応に添加することにより、反応系中で形成する錯体が触媒として作用し、目的の反応が進行する。当該錯体の形成において、反応系中に含まれる工程aの反応基質、塩基などの試薬、および溶媒などが、金属化合物に作用することにより錯体が形成する場合があり、このような錯体も本工程の触媒に含まれる。金属化合物の例としては、[Pd(η
3−C
3H
5)(cod)]BF
4、PdBr
2(cod)、PdCl
2(cod)、Pd(OAc)
2、Pd(dba)
2、[Pd(η
3−C
3H
5)Cl]
2、およびPd
2(dba)
3などが挙げられる。また、リガンドの例としては、トリアリールホスフィン(例えば、PPh
3など)、トリアルキルホスフィン(例えば、P(t−Bu)
3など)、アリールジアルキルホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(略記;dppf)、Ph
2P(CH
2)
nPPh
2(ここで、nは2〜10である)、(オキシジ−2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン){例えば、DPEphos}、ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン{例えば、Xantphos}、およびビス(ジアルキルホスフィノ)キサンテン{例えば、Cy−Xantphos}などが挙げられる。当該金属化合物は、例えば、基質の量に対して0.01〜50mol%、好ましくは0.1〜30mol%、より好ましくは1〜10mol%の量で使用される。当該リガンドは、例えば、基質の量に対して0.01〜200mol%、好ましくは0.01〜120mol%、より好ましくは1〜40mol%の量で使用される。上記金属化合物のうち、例えば、Pd(dba)
2はAldrichから、Pd(OAc)
2はAldrichまたはN.E.CHEMCATから、Pd
2dba
3はAldrichから,[Pd(η
3−C
3H
5)Cl]
2はAldrichから、NiCl
2(PPh
3)
2はAldrichから購入により入手可能である。また、上記金属化合物のうち、例えば、NiCl
2(dppf)、PdBr
2(cod)、[Pd(η
3−C
3H
5)(cod)]BF
4の調製方法は文献に記載されている。NiCl
2(dppf):T.Hayashiら、Chem.Lett.,1980年,第6巻,767−768頁;PdBr
2(cod):D.Drewら、Inorg.Synth.1972年,第13巻,47−55頁;[Pd(η
3−C
3H
5)(cod)]BF
4:D.A.Whiteら、Inorg.Synth.1972年,第13巻,55頁。
【0057】
上記工程は、好ましくは塩基の存在下で行われる。使用される塩基の例としては、炭酸塩(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、および炭酸セシウム)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、リン酸塩(例えば、リン酸カリウム)、フッ化塩(フッ化セシウム)、アルコキシド(例えば、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド、およびナトリウムt−ペントキシド)、アミド塩(例えば、リチウムヘキサメチルジシラジド、およびカリウムヘキサメチルジシラジド)などが挙げられる。当該塩基は、例えば、基質の量に対して0.1〜50当量、好ましくは0.5〜20当量、より好ましくは1〜5当量で使用される。
【0058】
工程aにおける反応は、溶媒中で行うことができる。溶媒の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、t−ブタノール、およびt−アミルアルコールなどのC
1−10アルコールなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、およびt−ブチルメチルエーテルなど)、アミド類(DMF、DMA、N−メチルピロリドンなど)、ハロゲン化合物(クロロホルム、およびジクロロメタンなど)、炭化水素類(ヘキサン、およびヘプタンなど)などが挙げられる。工程aの反応温度および反応時間は、反応の進行状況などに基づき適宜設定可能であり、特には限定されないが、当該反応は、例えば20〜300℃、好ましくは30〜120℃、より好ましくは70〜90℃の範囲で、また例えば0.1〜24時間、好ましくは0.3〜5時間、より好ましくは0.5〜2時間の範囲で行われる。触媒活性の維持による収率向上およびコスト低減の観点から、反応は好ましくは、窒素またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われ、反応系中の酸素を除去するために反応混合液中に不活性ガスをバブリングした後に反応を開始するのが望ましい。工程aにおける反応は、例えば、桑野ら、Organic Letters、2005年、第9巻、第5号、945〜947頁;および桑野ら、Chem.Commun.2005年、5899〜5901頁などを参照して行うことができる。
【0059】
工程b)の反応は、除去する保護基により当該技術分野において知られた方法を選択して行うことができ、例えば、「Green and Wuts,“Protective Groups in Organic Synthesis”(第4版,John Wiley&Sons、2006年)」に記載の試薬および反応条件を使用することができる。例えば、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三塩化ホウ素、および三臭化ホウ素などの酸またはルイス酸;水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、および炭酸カリウムなどの塩基;ブチルリチウム、およびグリニャール試薬などの有機金属試薬;水素化リチウムアルミニウム、水素化リチウムホウ素、および水素化ジイソブチルアルミニウムなどの金属ヒドリド試薬;三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体−エタンチオール、ハロゲン化アルミニウム−ヨウ化ナトリウム、ハロゲン化アルミニウム−チオール、およびハロゲン化アルミニウム−スルフィドなどのルイス酸と求核試薬の組み合わせた試薬;炭素担持パラジウム、白金、均一系パラジウム錯体、均一系ルテニウム錯体、および均一系ロジウム錯体などの触媒を使用する水素添加などを使用して行うことができる。
【0060】
当該反応により、式(IV)の化合物に含まれる基−C(O)−Rxが除去される。また、R
41およびR
42に含まれていてもよい保護基のすべてまたはいずれかが除去される。
【0061】
本発明の1つの態様において、上記式(II)においてRxは、C
1−6アルキル、アリール、ヘテロアリール、C
1−6アルコキシ、アリールオキシ、およびヘテロアリールオキシであり、例えば、t−ブチル、およびメトキシが挙げられる。また、上記式(II)において好ましいRxとしては、メトキシが挙げられる。
【0062】
本発明の1つの態様において、上記式(II)および式(IV)におけるRxは同一の基を表す。Rxの例としては、t−ブチル、およびメトキシが挙げられる。
【0063】
式(III)の化合物は、クロスカップリング反応を行うのに適した有機金属試薬であれば特に限定されない。また、式(III)の化合物はアート錯体、例えば、ArBF
3K、およびArB(OR
101)
2MeZnCl(式中、Arは式(III)のベンゼン環部分を示す)を形成していてもよい。
【0064】
本発明の1つの態様において、上記式(III)において、MはB(OH)
2である。
【0065】
本発明の別の側面によれば、上記の製造方法において、式(V):
【0066】
【化7】
[式中、R
41およびnは、既に定義したとおりである]
の化合物を前記式(II)の化合物に変換する工程をさらに含む製造方法が提供される。
【0067】
式(V)の化合物の式(II)の化合物への変換は、式L−C(O)Rx(式中、Lはハロゲン原子(塩素原子、および臭素原子など)などの脱離基であり、Rxは既に定義したとおりである)、または式[RxC(O)]
2O(式中、Rxは既に定義したとおりである)で表される試薬を使用して、通常の操作により達成することができる。好ましい試薬の例としては、クロロギ酸エステル(例えば、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、およびクロロギ酸イソプロピルなど)、カルボニルクロリド(例えば、アセチルクロリドなど)、ジアルキルジカーボネート(例えば、ジメチルジカーボネートなど)、酸無水物(例えば、無水酢酸など)が挙げられる。当該反応は好ましくは塩基の存在下で行われる。当該塩基の例としては、有機塩基(例えば、トリエチルアミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、エチルジイソプロピルアミン、ルチジン、およびモルホリンなど)、無機塩基(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸水素ナトリウムなど)が挙げられる。
【0068】
当該工程の反応は、溶媒中で行うことができる。溶媒の例としては、ニトリル類(例えば、アセトニトリルなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、およびt−ブチルメチルエーテルなど)、アミド類(DMF、DMA、およびN−メチルピロリドンなど)、ハロゲン化合物(クロロホルム、およびジクロロメタンなど)、炭化水素類(ヘキサン、およびヘプタンなど)などが挙げられる。当該工程の反応温度および反応時間は、反応の進行状況などに基づき適宜設定可能であり、特には限定されないが、当該反応は、例えば−20〜50℃、好ましくは−10〜25℃の範囲で、また例えば1〜10時間、好ましくは2〜4時間の範囲で行われる。
【0069】
本発明のさらに別の側面によれば、上記の製造方法において、式(VI):
【0070】
【化8】
[式中、X
1は、臭素原子およびヨウ素原子から選択され;
P
1およびP
2は、それぞれ独立して、金属イオン、水素原子、またはヒドロキシ基の保護基から選択され;
R
41およびnは既に定義したとおりである]
の化合物を有機金属試薬で処理し、その後、式(VII):
【0071】
【化9】
[式中、P
3、P
4、P
5、およびP
6は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基の保護基から選択され;または、P
3およびP
4、P
4およびP
5、ならびにP
5およびP
6は一緒になって、それぞれ独立に、それぞれ2つのヒドロキシ基を保護して環を形成する2価の基であってもよい]
を反応させて、式(VIII):
【0072】
【化10】
[式中、R
41、n、P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、およびP
6は、既に定義したとおりであり;
Xは、金属イオン、または水素原子である]
の化合物を得る工程;および
式(VIII)の化合物を、上記式(V)の化合物に変換する工程;
をさらに含む製造方法が提供される。
【0073】
P
1、P
2、およびXにおいて定義される金属イオンとは、アルコキシドイオンのカウンターイオンとなる金属イオンを意味し、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、およびマグネシウムイオンなどのアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、および亜鉛イオンなどが挙げられ、他の金属と錯体を形成していてもよい。当該金属イオンには、例えば、本発明で使用する有機金属試薬をヒドロキシ基に作用させて生じる金属イオン(例えば、リチウムイオン、マグネシウムイオン、および亜鉛イオン)などが含まれる。
【0074】
P
1〜P
6の定義に含まれる「ヒドロキシ基の保護基」は、通常ヒドロキシ基の保護基として使用される基であれば特に限定されず、例えば、「Greene and Wuts,“Protective Groups in Organic Sythesis”(第4版,John Wiley&Sons 2006年)」に記載された保護基が含まれる。ヒドロキシ基の保護基としては、既に定義した保護基、例えば、1以上のR
51により置換されていてもよいC
1−10アルキル、1以上のR
52により置換されていてもよい飽和、部分不飽和、または不飽和のヘテロシクリル、C
2−10アルケニル、−Si(R
53)
3、−C(=O)R
54、および−B(OR
55)
2などの基が挙げられる。ヒドロキシ基の保護基の例としては、メチル、ベンジル、メトキシメチル、メチルチオメチル、2−メトキシエトキシメチル、ベンジルオキシメチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、1−エトキシエチル、1−メトキシ−1−メチルエチル、tert−ブチル、アリル、ビニル、トリフェニルメチル(トリチル)、トリメチルシリル、トリエチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、イソブチリル、ピバロイル、ベンゾイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、およびtert−ブトキシカルボニルなどが挙げられる。
【0075】
本明細書において使用される用語「2つのヒドロキシ基を保護して環を形成する2価の基」は、2つのヒドロキシ基の酸素原子を連結する2価の基、例えば、C
1−10アルキレン基(例えば、メチレン、メチルメチレン、およびジメチルメチレンなど)、およびカルボニル基などを意味する。
【0076】
本発明の1つの態様において、式(VI)、式(VII)、および式(VIII)において、P
1およびP
2は、それぞれ独立に、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、水素原子、1以上のR
51により置換されていてもよいC
1−10アルキル、1以上のR
52により置換されていてもよい飽和、部分不飽和、または不飽和のヘテロシクリル、C
2−10アルケニル、−Si(R
53)
3、−C(=O)R
54、および−B(OR
55)
2から選択され、
P
3、P
4、P
5、およびP
6は、それぞれ独立に、1以上のR
51により置換されていてもよいC
1−10アルキル、1以上のR
52により置換されていてもよい飽和、部分不飽和、または不飽和のヘテロシクリル、C
2−10アルケニル、−Si(R
53)
3、−C(=O)R
54、および−B(OR
55)
2から選択され;またはP
3およびP
4、P
4およびP
5、ならびにP
5およびP
6は一緒になって、それぞれ独立に、それぞれ2つのヒドロキシ基を保護して環を形成する2価のC
1−10アルキレン基、またはカルボニル基であってもよく;
ここで、R
51は、それぞれ独立に、1以上のR
56により置換されていてもよいアリール、1以上のアリールにより置換されていてもよいC
1−10アルコキシ、C
1−10アルキルチオ、およびアリールセレニルから選択され;
R
52は、それぞれ独立に、C
1−10アルコキシから選択され;
R
53およびR
55は、それぞれ独立に、C
1−10アルキル、およびアリールから選択され;
R
54は、水素原子、C
1−10アルキル、1以上のC
1−10アルコキシにより置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、1以上のR
57により置換されていてもよいアミノ、1以上のアリールにより置換されていてもよいC
1−10アルコキシ、または1以上のニトロにより置換されていてもよいアリールオキシであり;
R
56は、それぞれ独立に、C
1−10アルキル、C
1−10アルコキシ、アリール、およびヘテロアリールから選択され;
R
57は、それぞれ独立に、C
1−10アルキル、およびアリールから選択され;
Xは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、または水素原子である。
【0077】
本発明の1つの態様において、式(VI)、式(VII)、式(VIII)において、P
1およびP
2は、それぞれ独立に、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、水素原子、C
1−6アルコキシC
1−6アルキル、アリールメトキシC
1−6アルキル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、基−Si(R
53)
3、アラルキル、および基−B(OR
55)
2から選択され;
P
3、P
4、P
5、およびP
6は、それぞれ独立に、C
1−6アルコキシC
1−6アルキル、アリールメトキシC
1−6アルキル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、基−Si(R
53)
3、アラルキル、基−B(OR
55)
2、C
1−6アルキルカルボニル、C
1−6アルコキシカルボニル、およびtert−ブチルから選択され;または、P
3およびP
4、P
4およびP
5、ならびにP
5およびP
6は一緒になって、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、および−CHPh−から選択される2つのヒドロキシ基を保護して環を形成する2価の基を表してもよく;
R
53およびR
55は、それぞれ独立に、C
1−10アルキル、およびアリールから選択され;
Xは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、または水素原子である。
【0078】
本発明の1つの態様において、式(VI)、式(VII)、式(VIII)において、P
1およびP
2が、メトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、1−メトキシ−1−メチルエチル、テトラヒドロピラニルピラニル、テトラヒドロフラニル、またはトリフェニルメチルから選択され;
P
3、P
4、P
5、およびP
6が、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリイソプロピルシリル、メトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、1−メトキシ−1−メチルエチル、テトラヒドロピラニル、およびテトラヒドロフラニルから選択される。
【0079】
式(VI)の化合物の処理に使用する有機金属試薬は、ベンゼン環上でのハロゲン金属交換反応を行うのに適した有機金属試薬であれば特に限定されず、例えば、C
1−10アルキルリチウム(例えば、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、およびt−ブチルリチウムなど)、C
1−10アルキルマグネシウムハライド(例えば、n−ブチルマグネシウムクロリド、およびイソプロピルマグネシウムクロリドなど)、およびジC
1−10アルキルマグネシウム(例えば、ジ−n−ブチルマグネシウムなど)などが含まれる。上記有機金属試薬は、無機塩または有機塩(例えば、リチウムクロリド、リチウムブロミド、リチウムヨージド、リチウムフロリド、リチウムトリフレート、マグネシウムクロリド、マグネシウムブロミド、およびマグネシウムトリフレートなど)の存在下に使用してもよく、無機塩または有機塩との混合物として使用してもよい。当該有機金属試薬として、例えば、特許文献WO01/057046の11頁から17頁に記載された、マグネシウム化合物と有機リチウム化合物との混合物または反応生成物が挙げられる。当該有機金属試薬の例として、以下の試薬の混合物または反応生成物が挙げられる:ブチルマグネシウムクロリドとブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムブロミドとブチルリチウム、ジブチルマグネシウムとブチルリチウム、ブチルマグネシウムブロミドとブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムブロミドとリチウムクロリド、ジブチルマグネシウムとエトキシリチウム、ジブチルマグネシウムとブトキシリチウム、ジブチルマグネシウムとリチウムヘキサメチルジシラジド、イソプロピルマグネシウムブロミドとブチルリチウムとリチウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドとブチルリチウムとエトキシリチウム、ブチルマグネシウムクロリドとブチルリチウムとリチウムヘキサメチルジシラジド、イソプロピルマグネシウムブロミドとブチルリチウムとエトキシリチウム。
【0080】
また、当該有機金属試薬のその他の例として、塩化亜鉛とブチルリチウム、およびジエチル亜鉛とn−ブチルリチウムの混合物または反応生成物、ならびに日本特許公開公報2004−292328に記載の有機亜鉛錯体などが挙げられる。
【0081】
例えば、上記式(VI)の化合物の有機金属試薬による処理では、n−ブチルリチウムが使用される。また、当該処理においては1種類以上の添加剤をさらに加えてもよい。例えば、式(VI)の化合物の有機金属試薬による処理において、有機リチウム試薬(例えば、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、およびt−ブチルリチウムなどのC
1−10アルキルリチウム)の他にハロゲン化マグネシウム(例えば、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、およびフッ化マグネシウムなど;好ましくはMgBr
2・OEt
2など)をさらに加えてもよい。また、有機リチウム試薬を添加した後にハロゲン化マグネシウムを加え、その後、式(VII)の化合物と反応させてもよい。なお、ハロゲン化マグネシウムのうち、MgBr
2・OEt
2は、例えばBoulder Scientific Co Inc.より購入した試薬を使用することができる。
【0082】
本発明の1つの態様において、有機金属試薬は、C
1−10アルキルリチウム、C
1−10アルキルマグネシウムハライド、ジC
1−10アルキルマグネシウムから選択されるか;または、以下の組合せ:
ブチルマグネシウムクロリドとブチルリチウム;
イソプロピルマグネシウムブロミドとブチルリチウム;
ジブチルマグネシウムとブチルリチウム;
ブチルマグネシウムブロミドとブチルリチウム;
イソプロピルマグネシウムブロミドとリチウムクロリド;
ジブチルマグネシウムとエトキシリチウム;
ジブチルマグネシウムとブトキシリチウム;
ジブチルマグネシウムとリチウムヘキサメチルジシラジド;
イソプロピルマグネシウムブロミドとブチルリチウムとリチウムクロリド;
ブチルマグネシウムクロリドとブチルリチウムとエトキシリチウム;
ブチルマグネシウムクロリドとブチルリチウムとリチウムヘキサメチルジシラジド;
イソプロピルマグネシウムブロミドとブチルリチウムとエトキシリチウム;
塩化亜鉛とブチルリチウム;および
ジエチル亜鉛とn−ブチルリチウム;
から選ばれる試薬の混合物または反応生成物である。
【0083】
本発明の更に1つの態様において、式(VI)の化合物を有機リチウム試薬とハロゲン化マグネシウムにより処理し、式(VII)の化合物を反応させる。更に1つの態様として、ハロゲン化マグネシウムは、式(VI)の化合物の有機金属試薬による処理において、有機リチウム試薬を反応系に添加した後に加えられる。
【0084】
本発明の更に1つの態様において、有機リチウム試薬がC
1−10アルキルリチウムから選択され、ハロゲン化マグネシウムが塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、およびフッ化マグネシウムから選択される。
【0085】
上記式(VI)の化合物において、X
1は、例えば、臭素原子である。また、上記式(VI)および式(VIII)の化合物において、P
1およびP
2の例としては、例えば、リチウムイオン、水素原子、および例えば、C
1−6アルコキシC
1−6アルキル(例えば、メトキシメチル、エトキシメチル、1−メトキシエチル、1−メトキシ−1−メチルエチルなど)、アリールメトキシC
1−6アルキル(例えば、ベンジルオキシメチルなど)、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、基−Si(R
53)
3(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリルなど)、アラルキル(例えば、ベンジル、4−メトキシベンジル、トリチルなど)、基−B(OR
55)
2などの保護基が挙げられる。P
1およびP
2は、好ましくは、C
1−6アルコキシC
1−6アルキル(例えば、メトキシメチル、エトキシメチル、1−メトキシエチル、および1−メトキシ−1−メチルエチルなど)などの保護基である。
【0086】
上記式(VI)の化合物の有機金属試薬による処理は、ハロゲン金属交換反応に適した溶媒を使用して行うことができる。当該溶媒の例としては、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、およびジメトキシエタンなど)、炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、およびトルエンなど)、N,N−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−テトラメチルプロパンジアミン、および2以上の前記溶媒を含む混合溶媒が挙げられる。P
1およびP
2の両方が金属イオンまたは保護基である場合、有機金属試薬は、0.5〜1.5当量、例えば、0.8〜1.1当量を使用してよく、P
1およびP
2のうちの一方が水素原子であり、他方が金属イオンまたは保護基の場合、有機金属試薬は、1.5〜3.0当量、例えば、1.8〜2.2当量を使用してもよく、P
1およびP
2の両方が水素原子である場合、有機金属試薬は、2.5〜4.0当量、例えば、2.8〜3.2当量を使用してもよい。また、反応の位置選択性向上の観点から、有機金属試薬は分割して添加してもよい。
【0087】
有機金属試薬は、例えば、−80〜30℃、好ましくは−60〜25℃、特に−15〜0℃の温度で系中に少しずつ(例えば、滴下して)加えることができる。試薬の添加後、一定時間(例えば、0.1〜5時間)、適当な温度下、例えば、−80〜20℃、好ましくは、−15〜10℃で撹拌して反応を完了させてもよい。
【0088】
また、C
1−10アルキルリチウム(例えば、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、またはt−ブチルリチウムなど)を用いて行われたハロゲン金属交換反応の後に、別種の有機金属試薬(例えば、n−ブチルマグネシウムクロリドとn−ブチルリチウム、またはジブチルマグネシウムなど)を加え、適当な温度にて、例えば、−80〜30℃、好ましくは−60〜25℃、特に−15〜0℃で、一定時間、例えば、0.1〜5時間、好ましくは0.5〜2時間、反応溶液を撹拌した後、錯体を形成させてもよい。
【0089】
上記式(VII)および式(VIII)の化合物において、P
3、P
4、P
5、およびP
6の例としては、C
1−6アルコキシC
1−6アルキル(例えば、メトキシメチル、エトキシメチル、1−メトキシエチル、および1−メトキシ−1−メチルエチルなど)、アリールメトキシC
1−6アルキル(例えば、ベンジルオキシメチルなど)、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、−Si(R
53)
3(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、およびtert−ブチルジフェニルシリルなど)、アラルキル(例えば、ベンジル、4−メトキシベンジル、およびトリフェニルメチルなど)、基−B(OR
55)
2、C
1−6アルキルカルボニル(例えば、アセチル、プロピオニル、およびピバロイルなど)、C
1−6アルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、およびベンジルオキシカルボニルなど)、およびtert−ブチルなどの保護基が挙げられる。また、P
3およびP
4、P
4およびP
5、ならびにP
5およびP
6は一緒になって、2つのヒドロキシ基を保護して環を形成する2価の基(例えば、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、および−CHPh−など)であってもよい。好ましくは、P
3、P
4、P
5、およびP
6は、それぞれ独立に、基−Si(R
53)
3(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、およびtert−ブチルジフェニルシリルなど)、ピバロイル、および1−メトキシ−1−メチルエチルから選択される。
【0090】
式(VI)の化合物を有機金属試薬による処理、およびその後の式(VII)の化合物との反応は、例えば、適当な溶媒中の式(VI)を有機金属試薬で処理した化合物の溶液を、適当な温度下、例えば、−100〜30℃、好ましくは−90〜−10℃、特に−80〜0℃で、式(VII)の化合物(例えば、1.0〜1.1当量)を含む反応液中に少しずつ(例えば、滴下して)加えることにより行うことができる。適当な溶媒の例としては、例えば、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、およびジメトキシエタンなど)、炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、およびトルエンなど)など、および2以上の前記溶媒を含む混合溶媒などが挙げられる。式(VI)の化合物の添加後、一定時間(例えば、0.5〜5時間)、適当な温度下、例えば、−80〜0℃で撹拌して反応を完了させてもよい。
【0091】
本反応は慣用の手法により後処理を行うことができ、得られる生成物は慣用の手法により精製することにより式(VIII)の化合物を得ることができるが、製造工程の簡略化、使用する溶媒量の抑制、製造コストの抑制などの観点から、本反応の後処理を行うことなく次の工程を行うことが好ましい。
【0092】
式(VIII)の化合物においてP
1がヒドロキシ基の保護基である場合は、脱保護を行うことにより、P
1が水素原子である化合物に変換される。本発明の1つの態様において、当該脱保護により、P
2〜P
6として導入されている保護基も除去される。脱保護は、当該技術分野において知られた方法を選択することにより行うことができ、例えば、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホネート、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三塩化ホウ素、および三臭化ホウ素などの酸またはルイス酸;水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、および炭酸カリウムなどの塩基;ブチルリチウム、およびグリニャール試薬などの有機金属試薬;水素化リチウムアルミニウム、水素化リチウムホウ素、および水素化ジイソブチルアルミニウムなどの金属ヒドリド試薬;三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体−エタンチオール、ハロゲン化アルミニウム−ヨウ化ナトリウム、ハロゲン化アルミニウム−チオール、およびハロゲン化アルミニウム−スルフィドなどのルイス酸と求核試剤を組み合わせた試薬;炭素担持パラジウム、白金、均一系パラジウム錯体、均一系ルテニウム錯体、および均一系ロジウム錯体などの触媒を使用する水素添加などを使用して行うことができる。
【0093】
P
1が水素原子である式(VIII)の化合物を酸性条件下で処理することによりスピロ環構造が形成する。このスピロ環構造形成反応は、適当な溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトン、酢酸エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピルなど)、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水、または2以上の前記溶媒を含む混合溶媒中で、適当な温度下、例えば、−20〜100℃、好ましくは0〜80℃、特に10〜30℃で行うことができる。反応時間は適宜設定することができるが、例えば、0.5〜10時間、好ましくは1〜6時間程度である。使用できる酸は特に限定されず、ルイス酸を使用してもよい。その具体例としては、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホネート、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三塩化ホウ素、および三臭化ホウ素などが挙げられる。
【0094】
上記式(VII)の化合物は、公知の方法により調製可能であり、例えば、D−(+)−グルコノ−1,5−ラクトンに慣用の手法により保護基を導入することにより調製することができる。D−(+)−グルコノ−1,5−ラクトンは、例えば東京化成工業株式会社、または扶桑化学工業株式会社から購入することにより入手可能である。
【0095】
本発明の製造方法では、式(VIII)の化合物を酸性条件下での処理することより、P
1〜P
6として導入された保護基の除去とスピロ環の形成を同時に行って、式(V)の化合物を得ることができる。ここで、好ましいP
1およびP
2としては、メトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、1−メトキシ−1−メチルエチル、トリイソプロピルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、ピバロイル、アラルキル(例えば、4−メトキシベンジル、トリフェニルメチルなど)、テトラヒドロピラニルピラニル、およびテトラヒドロフラニルなど、さらに好ましくはメトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、1−メトキシ−1−メチルエチル、テトラヒドロピラニルピラニル、テトラヒドロフラニル、およびトリフェニルメチル、特に好ましくは1−メトキシ−1−メチルエチルが挙げられる。また、P
3〜P
6としては、基−Si(R
53)
3(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリイソプロピルシリル、およびt―ブチルジフェニルシリルなど)、ピバロイル、1−メトキシ−1−メチルエチル、メトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、テトラヒドロピラニルピラニル、およびテトラヒドロフラニルなど、さらに好ましくはトリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリイソプロピルシリル、メトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、1−メトキシ−1−メチルエチル、テトラヒドロピラニルピラニル、およびテトラヒドロフラニル、特に好ましくはトリメチルシリルが挙げられる。使用できる酸としては、塩酸、硫酸、酢酸、蟻酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホナート、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三塩化ホウ素、および三臭化ホウ素が挙げられる。P
1およびP
2が、メトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、1−メトキシ−1−メチルエチル、テトラヒドロピラニルピラニル、テトラヒドロフラニル、およびトリフェニルメチルかさ選択され、P
3〜P
6が、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリイソプロピルシリル、メトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、1−メトキシ−1−メチルエチル、テトラヒドロピラニルピラニル、およびテトラヒドロフラニルから選択される式(VIII)の化合物を、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、およびカンファースルホン酸から選択される酸の存在下で処理することにより、不純物の生成を抑制するとともにP
1〜P
6として導入された保護基の除去とスピロ環の形成を同時に行うことができるため、ワンポット反応を容易に行うことができる。
【0096】
したがって、本発明の1つの態様において、式(VIII)の化合物は、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、およびカンファースルホン酸から選択される酸の存在下で処理することにより、式(V)の化合物に変換される。また、本発明のさらに1つの態様において、式(VIII)の化合物を式(V)の化合物に変換する工程はワンポットで行われる。
【0097】
本発明の1つの態様において、nが0である;またはmが1であり、R
2およびR
42がC
1−6アルキルである;または、nが0であり、mが0または1であり、R
2およびR
42がC
1−6アルキルである式(I)の化合物が製造される。
【0098】
本発明の1つの態様において、前記式(I)の化合物は、式(Ia):
【0099】
【化11】
[式中、R
1、n、R
2、およびmは、既に定義したとおりである]
で表される化合物である。
【0100】
本発明の1つの側面において、式(Ib):
【0101】
【化12】
[式中、R
2はC
1−6アルキルである]
の化合物を製造する方法であって;
式(VIb)
【0102】
【化13】
[式中、X
1は、臭素原子およびヨウ素原子から選択され、
P
1およびP
2は、それぞれ独立に、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、水素原子、1以上のR
51により置換されていてもよいC
1−10アルキル、1以上のR
52により置換されていてもよい飽和、部分不飽和、または不飽和のヘテロシクリル、C
2−10アルケニル、−Si(R
53)
3、−C(=O)R
54、および−B(OR
55)
2から選択され、
ここで、R
51は、それぞれ独立に、1以上のR
56により置換されていてもよいアリール、1以上のアリールにより置換されていてもよいC
1−10アルコキシ、C
1−10アルキルチオ、およびアリールセレニルから選択され;
R
52は、それぞれ独立に、C
1−10アルコキシから選択され;
R
53およびR
55は、それぞれ独立に、C
1−10アルキルおよびアリールから選択され;
R
54は、水素原子、C
1−10アルキル、1以上のC
1−10アルコキシにより置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、1以上のR
57により置換されていてもよいアミノ、1以上のアリールにより置換されていてもよいC
1−10アルコキシ、または1以上のニトロにより置換されていてもよいアリールオキシであり;
R
56は、それぞれ独立に、C
1−10アルキル、C
1−10アルコキシ、アリール、およびヘテロアリールから選択され;
R
57は、それぞれ独立に、C
1−10アルキルおよびアリールから選択される]
の化合物を有機金属試薬で処理し、その後、式(VII):
【0103】
【化14】
[式中、P
3、P
4、P
5、およびP
6は、それぞれ独立に、1以上のR
51により置換されていてもよいC
1−10アルキル、1以上のR
52により置換されていてもよい飽和、部分不飽和、または不飽和のヘテロシクリル、C
2−10アルケニル、−Si(R
53)
3、−C(=O)R
54、および−B(OR
55)
2から選択され;またはP
3およびP
4、P
4およびP
5、ならびにP
5およびP
6は一緒になって、それぞれ独立に、それぞれ2つのヒドロキシ基を保護して環を形成する2価のC
1−10アルキレン基、またはカルボニル基であってもよく;
ここで、R
51、R
52、R
53、R
54、R
55は既に述べたとおりである]
を反応させて、式(VIIIb):
【0104】
【化15】
[式中、P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、およびP
6は、既に定義したとおりであり;
Xはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、または水素原子である]
の化合物を得る工程;および
式(VIIIb)の化合物を、式(Vb):
【0105】
【化16】
の化合物に変換する工程;および
式(Vb)の化合物を、式(IIb):
【0106】
【化17】
[式中、Rxは、t−ブチル、およびメトキシから選択される]
の化合物に変換する工程;
式(IIb)の化合物を式(IIIb):
【0107】
【化18】
[式中、R
2は既に定義したとおりである]
の化合物と反応させて、式(IVb):
【0108】
【化19】
[式中、R
2は既に定義したとおりである]
の化合物を得る工程;および
保護基を除去することにより、式(IVb)の化合物を式(Ib)の化合物に変換する工程;
を含む前記製造方法が提供される。式(I)の化合物の製造方法に関して本明細書で述べた態様は全て式(Ib)の化合物の製造方法に適用されうる。
【0109】
本発明の1つの態様においては、水、アルコール類、エーテル類、エステル類、アミド類、ハロゲン化合物、炭化水素類、アセトン、アセトニトリル、およびジメチルスルホキシドから選択される溶媒、またはその混合液を用いて、式(II)、(IV)および(V)の化合物のいずれかを再結晶により精製する工程をさらに含んでもよい。本発明の製造方法により得られる式(I)の化合物もまた再結晶によりさらに精製することができる。再結晶に使用できる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ヘプタン、トルエン、および水、ならびに2以上の前記溶媒を含む混合溶媒などが挙げられる。
【0110】
本発明の製造方法は、操作が煩雑で多量の溶媒および吸着剤が必要となるカラムクロマトグラフィーなどの精製方法を行うことなく実施することができ、また必要に応じて、合成中間体を再結晶により精製することができるため、製造方法の効率化、製造コストの抑制の観点から有用である。また、医薬品として使用される化合物から不純物を効率的に除去する方法は非常に重要であり、本発明の製造方法は安全な医薬品を安定して提供するためにも有用である。
【0111】
本発明のさらに別の側面によれば、式(II):
【0112】
【化20】
[式中、R
41、n、およびRxは、既に定義したとおりである]
の化合物が提供される。本発明のさらに別の側面によれば、式(IV):
【0113】
【化21】
[式中、R
41、R
42、n、およびmは、請求項1に定義したとおりであり;
Rxは、C
1−6アルコキシである]
の化合物が提供される。上記式(II)および(IV)の化合物は、式(I)の化合物を効率的に製造する上での重要な合成中間体である。
【0114】
本発明のさらに別の側面によれば、上記の式(I)の化合物の製造方法において、式(I)の化合物が、式(IX):
【0115】
【化22】
で表される化合物である前記方法が提供される。式(I)の化合物の製造方法に関して本明細書で述べた態様は全て式(IX)の化合物の製造方法に適用されうる。
【0116】
本発明の1つの態様において、式(IX)の化合物は結晶、例えば、1水和物として得られる。本明細書において1水和物とは、医薬品が通常保存・使用される環境下(温度、相対湿度など)で、安定して1当量の水分を保持する結晶であれば特に限定されない。式(IX)の化合物の結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、3.5°、6.9°、および13.8°付近、具体的には、3.5°、6.9°、13.8°、16.0°、17.2°、および18.4°付近、より具体的には3.5°、6.9°、10.4°、13.8°、16.0°、17.2°、18.4°、20.8°、21.4°、および24.4°付近の回折角(2θ)にピークを有することを特徴とする。ここで、粉末X線回折パターンは通常の方法により測定することができる。なお、結晶の粉末X線回折ピークの回折角の値は、測定条件および試料の状態によって、誤差(例えば±0.2程度)が見込まれる。
【0117】
上記式(IX)の化合物の1水和物結晶は、例えば、水、メタノールと水の混合溶媒、アセトンと水の混合溶媒、および1,2−ジメトキシエタンと水の混合溶媒などの溶媒から結晶化することにより得ることができる。当該結晶化は、例えば、アセトンと水の混合溶媒を使用して行うことができ、好ましくはアセトンと水の容積比は、アセトン:水=1:3.5から1:7、より好ましくはアセトンと水の容積比がアセトン:水=1:4から1:75である。式(IX)の化合物の1水和物結晶は、一定範囲の相対湿度下で含水量がほぼ一定となる性質を有し、製剤工程での当該化合物の取り扱いが容易であり、また良好な保存安定性を有する医薬製剤を製造するために有用である。また、当該結晶は、式(IX)の化合物を効率的かつ高度に精製するために使用することができ、当該化合物を含む医薬品の効率的な製造の観点からも有用である。
【0118】
本発明の別の態様において、式(IX)の化合物は、例えば、酢酸ナトリウム共結晶または酢酸カリウム共結晶として提供される。本発明の酢酸ナトリウム共結晶は粉末X線回折パターンにおいて、4.9°、14.7°、16.0°、17.1°、および19.6°付近、より具体的には4.9°、8.7°、9.3°、11.9°、12.9°、14.7°、16.0°、17.1°、17.7°、19.6°、21.6°、および22.0°付近の回折角(2θ)にピークを有することを特徴とする。本発明の酢酸カリウム共結晶は粉末X線回折パターンにおいて、5.0°、15.1°、19.0°、20.1°および25.2°付近、より具体的には5.0°、10.0°、10.4°、12.4°、14.5°、15.1°、19.0°、20.1°、21.4°、および25.2°付近の回折角(2θ)にピークを有することを特徴とする。ここで、粉末X線回折パターンは通常の方法により測定することができる。また、結晶の粉末X線回折ピークの回折角の値は、測定条件および試料の状態によって、誤差(例えば±0.2程度)が見込まれる。
【0119】
式(IX)の化合物の酢酸ナトリウム共結晶は、例えば、メタノール、イソプロパノール、1−ヘキサノール、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ヘキシル、2−ブタノン、2−ヘプタノン、n−プロピルベンゼン、ヘキシルベンゼン、および1−クロロヘキサンから選択される溶媒から、または2以上の当該溶媒の混合溶媒から、好ましくはメタノールとイソプロパノールの混合溶媒から結晶化することにより得ることができる。式(IX)の化合物の酢酸カリウム共結晶は、例えば、メタノール、イソプロパノール、1−ヘキサノール、アセトニトリル、酢酸エチル、N,N−ジブチルホルムアミド、アセトン、およびジイソプロピルエーテルから選択される溶媒から、または2以上の当該溶媒の混合溶媒から、好ましくはメタノールとイソプロパノールの混合溶媒から得ることができる。
【0120】
式(IX)の化合物の酢酸ナトリウム共結晶、および酢酸カリウム共結晶は、良好な保存安定性を有する医薬製剤を製造するために有用である。また、式(IX)の化合物を効率的かつ高度に精製するために使用することができ、当該化合物を含む医薬品の効率的な製造の観点からも有用である。