【実施例1】
【0023】
図1は、一実施例の吸収式冷凍機の概略構成を示したものである。
【0024】
本図において、吸収式冷凍機は、蒸発器1、吸収器20、再生器30及び凝縮器4を基本構成要素とする。再生器30においては、吸収液が加熱源36によって加熱されて濃縮され、濃溶液となるとともに、冷媒の蒸気が発生するようになっている。濃溶液は、吸収器20に送られ、蒸発器1から流入する冷媒の蒸気を吸収して希釈され、希溶液となる。
【0025】
一方、再生器30で発生した冷媒の蒸気は、凝縮器4に送られ、冷却されて凝縮し、液体の冷媒となる。液体の冷媒は、蒸発器1に送られ、冷水16(熱媒体)から熱を奪って蒸発し、吸収器20に送られる。図中の破線は、冷媒の蒸気の流れを表している。
【0026】
本図に示す再生器30は、第一の熱交換部31と第二の熱交換部32とを含む構成である。第一の熱交換部31にて加熱源36によって加熱され濃縮された吸収液(濃溶液)は、再生器30の底部から第二の熱交換部32に送られ、吸収器20から再生器30に導入された希溶液を加熱する。よって、希溶液は、第二の熱交換部32で加熱された後、第一の熱交換部31で更に加熱されるようになっている。
【0027】
また、本図に示す吸収器20は、第一の吸収部21と第二の吸収部22とを含む構成である。第一の吸収部21及び第二の吸収部22には、それぞれ、蒸発器1から冷媒の蒸気が導入されるようになっている。
【0028】
さらに、本実施例においては、再生器30と吸収器20との間に溶液熱交換器5が設けてある。第二の熱交換部32を出た濃溶液は、溶液熱交換器5で吸収器20から送られてきた希溶液との熱交換によって冷却された後、第二の吸収部22に導入され、蒸発器1からの冷媒の蒸気を吸収する。第二の吸収部22に導入された濃溶液は、第一の吸収部21から送られてきた希溶液によって冷却される。
【0029】
第二の吸収部22で冷媒の蒸気を吸収した吸収液は、第一の吸収部21に流入し、更に冷媒の蒸気を吸収する。
【0030】
本図においては、吸収器20及び凝縮器4は、空冷式となっている。すなわち、これらは空冷熱交換部を有する。これらの空冷熱交換部には、それぞれ、空冷ファン27、47が設けてある。第二の吸収部22は、上記のように空冷された希溶液によって濃溶液を冷却する点から、「自己吸収器」とも呼ぶべきものである。
【0031】
以下、吸収式冷凍機の動作について更に詳しく説明する。
【0032】
再生器30においては、希溶液は、最初に第二の熱交換部32に供給され、再生器30の出口の濃溶液によって加熱されて濃縮される。そして、濃縮された希溶液は、第一の熱交換部31に導かれ、加熱源36によって更に加熱されて濃縮され、濃溶液となる。第一の熱交換部31の濃溶液は、第二の熱交換部32の加熱側流路に導かれ、上述のように希溶液を加熱して濃縮した後、溶液熱交換器5の高温側流路に送られる。そして、溶液熱交換器5において吸収器20から再生器30に送られる希溶液と熱交換して温度を下げた後、第二の吸収部22に供給される。
【0033】
第二の吸収部22においては、供給された濃溶液が吸収器20の出口の希溶液によって冷却されて、蒸発器1から冷媒の蒸気を吸収する。そして、第一の吸収部21に導かれ、冷却空気26によって冷却され、更に冷媒の蒸気を吸収して希溶液となる。第一の吸収部21の希溶液は、第二の吸収部22の冷却側流路に導かれて溶液熱交換器5からの濃溶液を冷却した後、溶液熱交換器5の低温側流路に送られる。そして、溶液熱交換器5において再生器30から吸収器20に送られる濃溶液と熱交換して温度が上昇した後、再生器30の上部に設けられた第二の熱交換部32に供給される。
【0034】
一方、第一の熱交換部31及び第二の熱交換部32で希溶液が加熱濃縮される際に発生した冷媒蒸気は、再生器30と連通した凝縮器4に導かれる。そして、冷却空気46によって冷却されて凝縮して冷媒液となり、蒸発器1に導かれる。
【0035】
蒸発器1においては、凝縮器4から導かれた冷媒液が冷水16から熱を奪って蒸発して冷媒蒸気となる。この際、冷水16は、冷媒の気化熱によって冷却されて温度が低下する。この冷水16を吸収式冷凍機の出力として取出し、冷房などの用途に供する。一方、冷媒蒸気は、蒸発器1と連通した第一の吸収部21及び第二の吸収部22の溶液(吸収液)に吸収される。
【0036】
以上の動作により、吸収式冷凍機に加熱源36及び冷却空気26、46を連続的に供給し、溶液を連続的に循環させることにより、蒸発器1内の蒸気圧を低圧に保持して蒸発器1における冷水16の冷却を連続的に行うことができる。
【0037】
次に、本実施例における第一の熱交換部31と第二の熱交換部32との関係及び第一の吸収部21と第二の吸収部22との関係について、
図2を用いて説明する。
【0038】
図2は、本実施例の吸収式冷凍機のサイクルをデューリング線図上に模式的に表したものである。横軸に温度T、縦軸に蒸気圧Pをとっている。
【0039】
図中の各部に付した番号はそれぞれ、
図1の各番号に対応する吸収液の状態である。また、図中の白抜き矢印は、サイクル内の熱移動および外部との熱の授受を表しており、物質の移動を伴わないものである。
【0040】
本図において、状態30iは、溶液熱交換器5で温度が上昇し、再生器30に供給される希溶液(吸収液)である。この希溶液は、第二の熱交換部32で加熱され、濃縮されて状態31iとなる。さらに、状態31iの吸収液は、第一の熱交換部31で加熱され、濃縮されて状態30oとなる。
図2の横軸で表されるように、温度は、状態30iに比べて高いので、状態30iの希溶液を加熱することができる。したがって、状態30oの濃溶液は、第二の熱交換部32において状態30iの希溶液を加熱し、濃縮することができる。これにより、加熱源36による加熱量を低減することができる。
【0041】
一方、状態22iは、溶液熱交換器5で温度が低下して第二の吸収部22に供給される濃溶液(吸収液)を表している。この濃溶液は、第二の吸収部22で冷却され、冷媒蒸気を吸収して状態21iとなる。さらに、状態21iの吸収液は、第一の吸収部21で冷却され、冷媒蒸気を吸収して状態21oとなる。状態21oの温度は、状態22iよりも低いので、状態22iの濃溶液を冷却することができる。したがって、第二の吸収部22における熱交換が成立する。この冷却熱量(熱交換量)に対応して、冷却空気26による冷却熱量を低減することができる。言い換えると、第一の吸収部21を小型化することができ、空冷ファン27の入力を低減することができる。
【0042】
ここで、特許文献1に記載された吸収冷凍機との相違点を説明する。
【0043】
図5は、特許文献1に記載された吸収冷凍機の一例であり、
図6は、この吸収冷凍機のサイクルを示したものである。
【0044】
図5に示す吸収冷凍機は、再生器120、吸収器136、蒸発器132、凝縮器126等を備えている。再生器120は、熱供給手段122を有する。再生器120と吸収器136との間には、潜熱・顕熱熱交換器152、潜熱・潜熱熱交換器154及び顕熱・潜熱熱交換器156があり、再生器120から吸収器136に向かう吸収液と、吸収器136から再生器120に向かう吸収液との熱交換を行うようになっている。また、再生器120と顕熱・潜熱熱交換器156との間には、排熱投入熱交換器70が設置してある。
【0045】
図6は、デューリング線図であり、横軸に温度、縦軸に蒸気圧をとっている。
【0046】
本図に示す符号101〜109、111及び112は、
図5における各位置を示す符号に対応している。また、A/L、A/G及びL/Gはそれぞれ、潜熱・顕熱熱交換器152(自己吸収部)、潜熱・潜熱熱交換器154(自己再生吸収部)及び顕熱・潜熱熱交換器156(自己再生部)における熱移動を表している。
【0047】
特許文献1においては、再生した後の溶液とアンモニアを吸収した後の溶液とのアンモニアの濃度幅を拡大することにより、
図6に示す符号106の温度を符号105の温度よりも高くし、符号106における吸収熱で符号105の溶液を加熱して濃縮する自己再生吸収部(GAX)を設けている。しかしながら、この熱交換が成立するためには、高温の加熱源が必要である。
【0048】
これに対して、本実施例においては、低温排熱の有効利用を目的としているので、濃度幅を拡大して
図2に示す状態22iにおける吸収熱で希溶液を状態30iにおける温度以上に加熱することはできない。このため、第二の熱交換部32において希溶液を濃溶液(30o〜32o)で加熱し、さらに、溶液熱交換器5において濃溶液(32o〜22i)で希溶液(22o〜30i)を加熱する構成としている。
【0049】
上述のように、本実施例は、吸収液の濃度幅が小さいサイクルに対応するものであり、第二の熱交換部32を設けて加熱量を低減するとともに、第二の吸収部22を設けて第一の吸収部21における冷却熱量を低減する。さらに、溶液熱交換器5を設けて内部熱回収を行うことにより再生器30における加熱量を低減し、吸収器20における冷却熱量を低減している。これにより、低温排熱を有効に利用して省エネルギーを図ることが可能となり、空冷化が容易な構成とすることができる。すなわち、加熱源と冷却源との温度差が小さい場合であっても、空冷式の吸収式冷凍機の効率的な運転を実現することができる。
【0050】
さらに、本実施例においては、吸収液の濃度差が小さいサイクルに対応した構成を有するため、濃度幅の大きいサイクルに適用できない系、すなわち、冷媒が水であって吸収剤がイオン結合を有する水溶性の塩である系にも適用可能となる。
【0051】
したがって、精留器の必要性や毒性の問題を持つアンモニア−水系の使用を回避することができる。さらには、第一の吸収部21における冷却熱量を低減することができるため、吸収式冷凍機を空冷式とした場合に機器の容積の大部分を占める空冷熱交換器を小型化することができ、空冷式の吸収式冷凍機全体の小型化が可能となる。
【実施例2】
【0052】
図3は、2つの吸収器に対応して蒸発器を2つに分割することにより性能を更に向上した吸収式冷凍機を示したものである。
【0053】
以下の説明においては、実施例1と同様の構成については説明を省略する。
【0054】
本図に示す吸収式冷凍機においては、蒸発器10が第一の蒸発部11と第二の蒸発部12とに分割されている。そして、第一の蒸発部11は第一の吸収部21と連通し、第二の蒸発部12は第二の吸収部22と連通している。冷水16は、最初に第一の蒸発部で冷却された後、第二の蒸発部12で更に冷却されて吸収式冷凍機の出力として取出される。
【0055】
図4は、本実施例の吸収式冷凍機のサイクルをデューリング線図上に模式的に表したものである。
【0056】
本図に示すように、第一の蒸発部11は、冷水16が先に通水されるため、第二の蒸発部12よりも横軸で表される蒸発温度が高い。このため、縦軸で表される蒸気圧も高くなる。その結果、第一の蒸発部11と連通した第一の吸収部21の圧力も、第二の蒸発部12と連通した第二の吸収部22の圧力よりも高くなる。
【0057】
ここで、本実施例における冷水16の取出し温度を実施例1と同等とすると、本実施例における第二の蒸発部12は、実施例1における蒸発器1と同等の蒸発温度となる。すなわち、同等の蒸気圧となる。したがって、第一の蒸発部11及びこれと連通している第一の吸収部21における蒸気圧は、実施例1の蒸発器1及び第一の吸収部21よりも高くなる。その結果、本実施例の第一の吸収部21の出口21oにおける希溶液は、符号21o’で示す実施例1第一の吸収部21の出口における希溶液よりも吸収温度及び蒸気圧を高くすることができる。
【0058】
以上説明したように、本実施例においては、蒸発器10を第一の蒸発部11と第二の蒸発部12とに分割し、それぞれ、第一の吸収部21、第二の吸収部22と連通したことにより、第一の吸収部21の出口における希溶液の温度が上昇するので、冷却空気26、46の温度が実施例1よりも高い場合においても吸収式冷凍機の運転を行うことが可能になる。また、冷却空気26、46の温度が同一の場合には、熱交換温度差の拡大を利用して伝熱面積を縮小することが可能となる。空冷式の吸収式冷凍機においては、空冷熱交換器の大きさが機器サイズに与える影響が大きいため、本実施例による伝熱面積の縮小は、機器全体の小型化に大変有効である。
【0059】
また、本発明によれば、安全性に優れた臭化リチウム等の吸収剤を用いた空冷式の吸収式冷凍機においても、効率的なサイクルを実現することができ、空冷熱交換部を小型化することができる。
【0060】
なお、以上の実施例においては、凝縮器を空冷とし、冷熱を得るための吸収式冷凍機について説明しているが、本発明は、吸収器で熱源を加熱し、熱源の温度レベルを高める吸収式ヒートポンプにも適用可能である。この場合、蒸発器は、大気温度程度とし、空冷としてもよいし、河川水、工業用水、地下水等による水冷としてもよい。