(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5711722
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】ダイナモエレクトリック機械
(51)【国際特許分類】
H02K 3/51 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
H02K3/51 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-503876(P2012-503876)
(86)(22)【出願日】2010年1月12日
(65)【公表番号】特表2012-523808(P2012-523808A)
(43)【公表日】2012年10月4日
(86)【国際出願番号】EP2010000098
(87)【国際公開番号】WO2010115481
(87)【国際公開日】20101014
【審査請求日】2013年1月8日
(31)【優先権主張番号】102009016516.9
(32)【優先日】2009年4月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】595013047
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Voith Patent GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100088096
【弁理士】
【氏名又は名称】福森 久夫
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング, ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】エイレブレヒト, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】フェーザー, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヒルディンガー, トーマス
【審査官】
宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−193043(JP,A)
【文献】
特開平08−098444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/30−3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構成部品ないし特徴を有する:
1.1 ロータバレン(10);
1.2 前記ロータバレン(10)の軸方向隣りかつそれに対して同軸に配置されている、リング形状の巻き線ヘッド(60);
1.3 前記巻き線ヘッド(60)の径方向内部かつそれに対して同軸に配置されている、支持リング(30);
1.4 巻き線ヘッド(60)と支持リング(30)が、前記ロータバレン(10)と相対回動不能であり;
1.5 巻き線ヘッド(60)と支持リング(30)が、引張りバー(90)によって径方向に互いに締め付けられており、前記引張りバーが前記巻き線ヘッドおよび前記支持リング(30)内の径方向孔(30.2)を通って案内されている:
ダイナモエレクトリック機械において、以下の特徴:
1.6 前記引張りバー(90)が、その径方向内側の端部をもって前記支持リング(30)に作用し、その径方向外側の端部をもって、前記巻き線ヘッド(60)に添接する軸受ボディ(80)に作用し;
1.7 前記支持リング(30)内の前記径方向孔(30.2)の内径が、前記引張りバー(90)の直径に対して過大寸法を有しており;
1.8 前記引張りバー(90)の径方向内側の端部が前記支持リング(30)に支承され、前記引張りバー(90)の径方向外側の端部が前記巻き線ヘッド(60)に支承されることにより、径方向に対する前記引張りバー(90)の制限された傾き運動が許される、ことを特徴とするダイナモエレクトリック機械。
【請求項2】
前記引張りバー(90)の端部の少なくとも1つが、球状の支承面を有する軸受ボディ(80)によって支承されていることを特徴とする請求項1に記載のダイナモエレクトリック機械。
【請求項3】
以下の構成部品を有する:
3.1 ロータバレン(10);
3.2 前記ロータバレン(10)の軸方向隣りかつそれに対して同軸に配置されている、リング形状の巻き線ヘッド(60);
3.3 前記巻き線ヘッド(60)の径方向内部かつそれに対して同軸に配置されている、支持リング(30);
3.4 巻き線ヘッド(60)と支持リング(30)が、メインロータと相対回動不能であって;
3.5 引張りバー及び引張りばね(100)が設けられており、前記引張りバーが引張りばねの力に抗して長さ可変であって、かつ前記引張りバーが、それぞれその径方向外側の端部をもって前記巻き線ヘッド(60)に作用し、かつその径方向内側の端部をもって前記支持リング(30)に作用する、ダイナモエレクトリック機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイナモエレクトリック機械、たとえば電気的ジェネレータ、に関する。本発明は、特に、ロータの巻き線ヘッドを遠心力に対して固定する、コンストラクションの構造的形態に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のダイナモエレクトリック機械は、以下の構成部品を有している:メインロータ、メインロータの軸方向隣りにおいてメインロータに対して同軸に配置されている、リング状の巻き線ヘッド、巻き線ヘッドの径方向内部において巻き線ヘッドに対して同軸に配置されている、支持リング。
【0003】
ロータ巻き線のコイルヘッドを固定するために、特に、コイルヘッドの内部をリング形状の巻き線支持体によって支持し、コイルヘッドをこの巻き線支持体上にバンデージを用いて固定することが、一般的である。特に機械がかなり大きい場合に、バンデージの代わりに幾つかに分かれたリングを使用することもでき、そのリングは、絶縁中間層によって巻き線ボディに添接し、かつボルトを用いて巻き線支持体に固定される。遠心力が特に大きい場合に、コイルボディ上にキャップを差し嵌めることもできる。この種のキャップは、特にターボジェネレータのロータの巻き線ヘッドを固定するために、一般的である(非特許文献1;特許文献1;特許文献2)。さらに、同期機械の周回転する励磁コイルから出る遠心力が、励磁コイルの外側の端面に添接する保持ブリッジによって吸収され、その保持ブリッジ自体は、機械の回転ボディに固定された、引張り負荷を受けるボルトによって保持される(特許文献3)。
【0004】
ロータの巻き線ヘッドを固定する課題は、特に、最近揚水駆動のための回転数制御可能な水力−モータ−ジェネレータのために使用されるような、ロータ供給されるスリップリングロータ機械において、設定される。この種のジェネレータ−モータについて、特に、ロータが3から7mの直径を有する場合があることが、特徴的である。このようなロータの巻き線ヘッドを固定するために、支持台を介してロータボディに保持リングを配置し、その中にU字状の引張りボルトの端部が固定されることが、知られている。その場合に、それぞれ引張りボルトのU字状の領域が、巻き線ヘッドを把持する(報告11−104 “Development
and achieved commercial operation … for a pumped storage power plant”,
der CIGRE-Tagung 1992.30, August から 5. September)。この種の巻き線ヘッド固定は、構造的および組立技術的に極めて複雑である。
これは、JP04−193043にも、そのように記載されている。
【0005】
特許文献4は、上述した構造のダイナモエレクトリック機械を記述している。その場合に、遠心力に対する固定装置は、引張りバーを有しており、その径方向内側の端部が支持リングに作用し、その径方向外側の端部は、径方向外側において巻き線ヘッドに添接する軸受ボディに作用する。
【0006】
巻き線ヘッドには、電流が流れる。従ってそれは、より高い温度に加熱され、伸張する。それに対して支持リングは、電流が流れず、従って冷たいままである。そこからもたらされる機械的な応力を回避するために、支持リングと巻き線ヘッドの間のエアギャップに、大体において機械の前側から、冷風が供給される。冷風は、巻き線ヘッド間のラジアル間隙内に流入して、それを径方向に貫流し、巻き線ヘッドの外部で再び流出する。実際においては、この種の冷却では十分でないことが、明らかにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国公開公報DE2629574B2
【特許文献2】独国特許公報DE−PS701612
【特許文献3】独国特許公報DE−PS950659
【特許文献4】独国特許公報DE19519127C1
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】書籍「エレクトロテクニックのガイド(Leitfadender Elektrotechnik)」−3巻−「電気機械の構造および強度の計算(Konstructions-und Festigkeitsberechnungen erektrischer Maschinen」著者:Dr.C. von Dobbeler, 1962, B.G. Teubner Verlagsgesellschaft Stuttgart,p.25から29および58から62
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、請求項1の前文に記載されたダイナモエレクトリック機械を、一方で遠心力による径方向の拡幅に対する巻き線ヘッドの信頼できる固定が保証され、他方で、巻き線ヘッド、引張りバーおよび支持リングの間の許されない応力を回避する、十分な冷却が保証されるように、形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の特徴によって解決される。
【発明の効果】
【0011】
それによれば、引張りバーを挿通するための支持リング内の孔の内径が、過大寸法を有している。従って、引張りバーと、支持リング内の付属の孔の内側面との間に、(リング形状の)エアギャップが生じる。さらに、各引張りバーの端部の軸承は、引張りバーが径方向から制限された傾き運動を実施することができるように、形成されている。
【0012】
ダイナモエレクトリック機械が駆動されない場合に、引張りバーは実質的に径方向に延びている。機械が駆動を開始すると、巻き線ヘッドが電流の流れによって発熱して、軸横行に伸張する。それに対して支持リングは、冷たいままであって、従って伸張しない。引張りバーは、巻き線ヘッドの伸張に追従することができる。というのは、引張りバーは、支持リング内の孔の内径が増大されていることに基づいて、径方向に対して傾斜し、かつ軸受ボディの然るべき形状によって、径方向外側の端部と径方向内側の端部において、径方向に対して傾斜することができるからである。
【0013】
本発明を、図面を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ダイナモエレクトリック機械の原理的な構造を、軸垂直の断面で示している。
【
図2】ダイナモエレクトリック機械の端部領域を通る軸断面を拡大して示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には、ダイナモエレクトリック機械のロータ1が示されている。ロータは、数メートル、たとえば5または6mを有することができる、外径を有している。ハブ2は、ロータ薄板パケット3を有している。それが、押圧プレート4によって軸方向に締め付けられている。ロータ薄板の溝内へ、巻き線5が挿入されている。その巻き線ヘッド6が、ロータ薄板パケット3から軸方向へ張り出している。
【0016】
巻き線ヘッド6を支持するために、ハブが、ハブ突出部2.1だけ軸方向に延長されている。ハブ突出部2.1は、薄板7.1と押圧プレート7.2を有する他の薄板パケット7を支持している。巻き線ヘッドは、さらに、リング形状の支持ボディ8によって包囲されている。これは、複数の曲げ強い、プレート形状のリング部分からなる。支持ボディ8とハブ突出部2.1の薄板パケット7を締め付けてまとめるために、引張りボルト9が用いられる。
【0017】
図示の実施形態は、DE19519127C1(特許文献4)に記載されている。
【0018】
図2に示す本発明に係る実施形態は、ロータバレン10を有している。リング形状の巻き線ヘッド60が、ロータバレン10の軸方向隣に配置されている。巻き線ヘッドは、ロータバレン10に対して同軸に延びている。機械は、回転軸110を有している。
【0019】
さらに、支持リング30が見られる。支持リング30は、ラミネートされており、巻き線ヘッド60を支持するために用いられる。支持リング30には、通気通路30.1が設けられており、それを通して冷風が径方向内側から外側へ流れる。支持リング30は、さらに、径方向孔30.2を有している。その径方向孔に、引張りバー90が挿通されている。径方向孔30.1は、引張りバー90に対して過大寸法を有しており、すなわち引張りバー90の直径は、径方向孔30.2の内径よりも小さい。
【0020】
引張りバーが、支持リング30と巻き線ヘッド60を締め付けてまとめる。引張りバー90の径方向外側と径方向内側の端部が、対応する軸受ボディに添接している。軸受ボディ80と81およびクランプナット70を参照。その場合に、軸受ボディは、該当する軸受面が球状に形成されていることにより、軸平面内での引張りバー90の傾斜を許す。
【0021】
本発明に係る実施形態は、以下の利点を有している:
【0022】
電流が流れる巻き線ヘッド60の領域内で、発熱とそれに伴って軸方向の伸張が生じるが、支持リング30の領域内では生じない。その場合に、巻き線ヘッド60は、引張りバー90の上方の領域を軸方向に、特にロータバレン10から離れる方向に、連動させる傾向を有する。それに対して引張りバー90の下方の領域は、ロータバレン10に対してその場に留まる。巻き線ヘッド60のこの伸張を考慮するために、上述した形態に基づいて、引張りバー90は揺動可能であり、すなわち軸受ボディ80の上方の領域内では、ロータバレン10から遠ざかる軸方向運動を実施することができ、軸受ボディ81の領域内では、固定位置に留まる。これは、2つの軸受ボディ80、81によって、かつ引張りバー90に対する径方向孔30.2の過大寸法によって可能にされる。
【0023】
他の構造的可能性が考えられる。すなわち巻き線ヘッド60ないしその個別部分が、径方向の引張りバーによってそれ自体単独で係止されることができ、すなわち引張りバー90が巻き線ヘッド60に挿通され、同時に支持リング30に挿通されることはない。巻き線ヘッド60は、1本または複数本の引張りバーによって支持リング30に接続することができる。この種の引張りバーは、たとえばその径方向外側の端部をもって巻き線ヘッド60の径方向内側の領域に作用し、その径方向内側の領域をもって支持リングの径方向外側の領域に作用することができる。この種の引張りバーは、たとえばテレスコープバーの形状で、長さ変化することができなければならない。引張りばねも、この機能を満たすことができる。この種の引張りばね100が、図式的に示されている。この種の引張りばねまたは上述した種類のバーが設けられる場合には、引張りバー90は省かれることになり、かつ巻き線ヘッド60は、径方向に締めつけてまとめられなければならない。
【符号の説明】
【0024】
1 ロータ
2 ハブ
2.1 ハブ突出部
3 ロータ薄板パケット
4 押圧プレート
5 巻き線
6 巻き線ヘッド
7 ハブ突出部の薄板パケット
7.1 薄板
7.2 押圧プレート
8 支持ボディ
9 引張りバー
10 ロータバレン
20 ハブ
20.1 ハブ突出部
30 支持リング
30.1 通気通路
30.2 ラジアル孔
40 リングディスク
60 巻き線ヘッド
70 クランプナット
80 軸受ボディ
81 軸受ボディ
90 引張りバー
100 引張りばね
110 回転軸