特許第5711766号(P5711766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5711766置換アミドエステル内部電子供与体を有するプロ触媒組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5711766
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】置換アミドエステル内部電子供与体を有するプロ触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20150416BHJP
   C08F 10/06 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   C08F4/654
   C08F10/06
【請求項の数】16
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-555136(P2012-555136)
(86)(22)【出願日】2011年2月24日
(65)【公表番号】特表2013-521340(P2013-521340A)
(43)【公表日】2013年6月10日
(86)【国際出願番号】US2011026024
(87)【国際公開番号】WO2011106494
(87)【国際公開日】20110901
【審査請求日】2013年11月8日
(31)【優先権主張番号】61/308,596
(32)【優先日】2010年2月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399016927
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレイス・アンド・カンパニー−コネチカット
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホワン,シャオドン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リンフェン
(72)【発明者】
【氏名】レオン,タク,ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】タオ,タオ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,クアンクイアン
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−514124(JP,A)
【文献】 特表2005−517746(JP,A)
【文献】 特表2007−535593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F4/60−4/70
C08F10/06
C08F110/06
C08F210/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム部分と、チタン部分と、構造(II)を有する置換アミドエステルを含む内部電子供与体との組み合わせを含む、オレフィンモノマーを重合するためのプロ触媒組成物であって、
【化11】
−Rは、同じであり、又は異なり、R−Rのそれぞれは、水素、及び1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から成る群より選択され、
式中、
(a)−Rの少なくとも1つは、少なくとも2個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、又は
(b)及びRのそれぞれは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり
(c)R12及びR22のそれぞれは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、
(d)111321、及び23は、同じであり、又は異なり、水素、及び1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から成る群より選択され
ロ触媒組成物。
【請求項2】
−Rの少なくとも2つが、少なくとも2個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である、請求項1に記載のプロ触媒組成物。
【請求項3】
及びRのそれぞれが、少なくとも2個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である、請求項1から2のいずれかに記載のプロ触媒組成物。
【請求項4】
111321、及び23の少なくとも1つが、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である、請求項1から3のいずれかに記載のプロ触媒組成物。
【請求項5】
及びRのそれぞれが、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基から成る群より選択される、請求項1から4のいずれかに記載のプロ触媒組成物。
【請求項6】
、R、R、及びRのそれぞれが水素であり、並びにR及びRのそれぞれがメチル基である、請求項1に記載のプロ触媒組成物。
【請求項7】
構造(II)の前記置換アミドエステルと電子供与体成分とを含む混合外部電子供与体を含む、請求項1に記載のプロ触媒組成物。
【請求項8】
マグネシウム部分と、チタン部分と、構造(II)を有する置換アミドエステルを含む内部電子供与体との組み合わせを含む、オレフィンモノマーを重合するためのプロ触媒組成物であって、
【化12】
(a)式中、R−R、R11−R13、及びR21−R23は、同じであり、又は異なり、R−R、R11−R13、及びR21−R23のそれぞれは、水素、及び1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から成る群より選択され、
(b)式中、R−Rの少なくとも1つは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、及びR11−R13、R21−R23の少なくとも1つは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であ
ロ触媒組成物。
【請求項9】
及びRのそれぞれがメチル基であり、並びにR12及びR22のそれぞれが、エチル、ブチル、及びフェニルから成る群より選択される、請求項に記載のプロ触媒組成物。
【請求項10】
造(II)の前記置換アミドエステルと電子供与体成分とを含む混合外部電子供与体を含む、請求項1からのいずれかに記載のプロ触媒組成物。
【請求項11】
請求項1または請求項に記載のプロ触媒組成物、及び
助触媒
を含む触媒組成物。
【請求項12】
ケイ素化合物、二座化合物、ジエーテル、ジオールエステル、カルボキシレート、アミン、ホスファイト、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される外部電子供与体を含む、請求項に記載の触媒組成物。
【請求項13】
2つ又はそれ以上のアルコキシシラン外部電子供与体を含む、請求項に記載の触媒組成物。
【請求項14】
カルボン酸エステル、ジエーテル、ジオールエステル、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される活性制限剤を含む、請求項に記載の触媒組成物。
【請求項15】
重合条件下で、オレフィンと、請求項1または請求項に記載のプロ触媒組成物を含む触媒組成物とを接触させること、及び
置換アミドエステルを含むオレフィン系ポリマーを形成すること
を含むオレフィン系ポリマーの製造方法。
【請求項16】
前記オレフィンがプロピレンであり、5.0から20.0の多分散度指数を有するプロピレン系ポリマーを形成することを含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、置換アミドエステルを含有するプロ触媒組成物、触媒組成物へのそれらの組み込み、及び該触媒組成物を使用してオレフィン系ポリマーを製造するプロセス、及びそこから生産される結果として得られるオレフィン系ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系ポリマーの世界的需要は、これらのポリマーの用途がより多岐に及びより高性能になるにつれて、増え続けている。広い分子量分布(MWD)を有するオレフィン系ポリマーは、例えば、熱成形;パイプ−、発泡−、ブロー−成形;及びフィルムへの用途が拡大している。広いMWDを有するオレフィン系ポリマー、特にプロピレン系ポリマーの生産のためのチーグラー・ナッタ触媒組成物は公知である。チーグラー・ナッタ触媒組成物は、金属又はメタロイド化合物、例えばマグネシウムクロライド又はシリカに担持された遷移金属ハライド(すなわち、チタン、クロム、バナジウム)から成るプロ触媒であって、有機アルミニウム化合物などの助触媒と複合体を形成しているプロ触媒を、概して含む。しかし、チーグラー・ナッタ触媒によって生成される広いMWDを有するオレフィン系ポリマーの生産は、厳密なプロセス制御を必要とする単一反応器プロセス、及び/又は多数の反応器を必要とする直列反応器プロセスに概して限定される。
【0003】
オレフィン系ポリマーについての新しい用途の永続的出現を考えると、改善された様々な特性を有するオレフィン系ポリマーの必要性が当分野に認められる。オレフィン系ポリマー、及びプロピレン系ポリマー、特に、より少ないプロセス制約及びより少ない装置で広い分子量分布(MWD)を有するものを生成させるチーグラー・ナッタ触媒組成物が望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、内部電子供与体として置換アミドエステルを含有するプロ触媒組成物、並びに触媒組成物及び重合プロセスへのそれらの応用に関する。置換アミドエステルを含有する触媒組成物は、オレフィン重合プロセスに応用されている。本置換アミドエステル含有触媒組成物は、高い触媒活性及び/又は高い選択性を有し、並びに高いアイソタクティシティー及び広い分子量分布を有するプロピレン系オレフィンを生成させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある実施形態において、プロ触媒組成物を提供する。このプロ触媒組成物は、マグネシウム部分とチタン部分と内部電子供与体との組み合わせを含む。該内部電子供与体は、置換アミドエステルを含む。該置換アミドエステルは、下の構造(II)を有する。
【化1】
【0006】
−Rは、同じである、又は異なる。R−Rのそれぞれは、水素、及び1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。R−Rの少なくとも1つは、少なくとも2個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。或いは、R及びRのそれぞれは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。R11−R13及びR21−R23は、同じである、又は異なる。R11−R13及びR21−R23のそれぞれは、水素、及び1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。
【0007】
ある実施形態において、もう1つのプロ触媒組成物を提供する。このプロ触媒組成物は、マグネシウム部分とチタン部分と内部電子供与体との組み合わせを含む。該内部電子供与体は、置換アミドエステルを含む。該置換アミドエステルは、下の構造(II)を有する。
【化2】
【0008】
−R、R11−R13、及びR21−R23は、同じである、又は異なる。R−R、R11−R13、及びR21−R23のそれぞれは、水素、及び1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。R−Rの少なくとも1つは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。R11−R13、R21−R23の少なくとも1つは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。
【0009】
ある実施形態において、触媒組成物を提供する。この触媒組成物は、プロ触媒組成物を含む。該プロ触媒組成物は、構造(II)の置換アミドエステルを含む。該プロ触媒組成物は、助触媒も含む。
【0010】
ある実施形態において、オレフィン系ポリマーの製造方法を提供する。この方法は、重合条件下でオレフィンと置換アミドエステルを含む触媒組成物とを接触させること、及びオレフィン系ポリマーを形成することを含む。
【0011】
本開示の利点は、改善されたプロ触媒組成物の提供である。
【0012】
本開示の利点は、オレフィン系ポリマーの重合用の改善された触媒組成物の提供である。
【0013】
本開示の利点は、フタレート不含触媒組成物の提供、及びそこから生産されるフタレート不含オレフィン系ポリマーの提供である。
【0014】
本開示の利点は、広い分子量分布及び/又は高いアイソタクティシティーを有するプロピレン系ポリマーを生成させる触媒組成物である。
【0015】
本開示の利点は、広い分子量分布を有するプロピレン系ポリマーを単一反応器で生成させる触媒組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、プロ触媒組成物を提供する。ある実施形態において、プロ触媒組成物を提供し、このプロ触媒組成物は、マグネシウム部分とチタン部分と内部電子供与体との組み合わせを含む。該内部電子供与体は、置換アミドエステルを含む。言い換えると、該プロ触媒組成物は、プロ触媒前駆体と、置換アミドエステルと、自由選択のハロゲン化剤と、自由選択のチタン化剤(titanating agent)との反応生成物である。
【0017】
該プロ触媒組成物は、内部電子供与体の存在下でプロ触媒前駆体をハロゲン化/チタン化することにより生成される。本明細書において用いる場合、「内部電子供与体」は、プロ触媒組成物の形成中に添加される又は別様に形成される化合物であって、結果として得られるプロ触媒組成物中に存在する1つ又はそれ以上の金属に少なくとも1つの電子対を供与する化合物である。該内部電子供与体は、置換アミドエステルを含む。いかなる特定の理論によっても拘束されることを望まないが、ハロゲン化又はチタン化中に内部電子供与体は、(1)活性部位の形成を調節する、(2)マグネシウム系担体上のチタンの位置を調節し、それによって触媒立体選択性を向上させる、(3)マグネシウム及びチタン部分のそれぞれのハライドへの転化を助長する、並びに(4)転化中にそのマグネシウムハライド担体の結晶子サイズを調節すると考えられる。従って、内部電子供与体を備えさせることにより、向上した立体選択性を有するプロ触媒組成物が得られる。
【0018】
該プロ触媒前駆体は、マグネシウム部分化合物(MagMo)、マグネシウム混合金属化合物(MagMix)、又はベンゾエート含有マグネシウムクロライド化合物(BenMag)であり得る。ある実施形態において、該プロ触媒前駆体は、マグネシウム部分(「MagMo」)前駆体である。該「MagMo前駆体」は、唯一の金属成分としてマグネシウムを含有する。該MagMo前駆体は、マグネシウム部分を含む。適するマグネシウム部分の非限定的な例としては、無水マグネシウムクロライド及び/若しくはそのアルコール付加物、マグネシウムアルコキシド若しくはアリールオキシド、混合マグネシウムアルコキシハライド、並びに/又は炭酸飽和マグネシウムジアルコキシド若しくはアリールオキシドが挙げられる。1つの実施形態において、該MagMo前駆体は、マグネシウムジ−(C1−4)アルコキシドである。さらなる実施形態において、該MagMo前駆体は、ジエトキシマグネシウムである。
【0019】
該MagMixは、マグネシウム及び少なくとも1個の他の金属原子を含む。該他の金属原子は、主族金属又は遷移金属、又はIIIB−VIIIB元素の遷移金属であり得る。ある実施形態において、該遷移金属は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Y、Zr、Nb、及びHfから選択される。さらなる実施形態において、該MagMix前駆体は、混合マグネシウム/チタン化合物(「MagTi」)である。該「MagTi前駆体」は、式MgTi(ORを有し、この式中のRは、1から14個の炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族炭化水素ラジカル、又はCOR’(この場合のR’は、1から14個の炭素原子を有する脂肪族若しくは芳香族炭化水素ラジカルである)であり;各OR基は、同じであり、又は異なり;Xは、独立して、塩素、臭素又はヨウ素、好ましくは塩素であり;dは、0.5から56、又は2から4であり;fは、2から116又は5から15であり;並びにgは、0.5から116、又は1から3である。
【0020】
ある実施形態において、該プロ触媒前駆体は、ベンゾエート含有マグネシウムクロライド材料である。本明細書において用いる場合、「ベンゾエート含有マグネシウムクロライド」(「BenMag」)は、ベンゾエート内部電子供与体を含有するマグネシウムクロライドプロ触媒(すなわち、ハロゲン化プロ触媒前駆体)である。該BenMag材料は、チタン部分、例えばチタンハライドも含むことがある。該ベンゾエート内部供与体は不安定であるのでプロ触媒合成中に他の電子供与体によって置換されることがある。適するベンゾエート基の非限定的な例としては、エチルベンゾエート、メチルベンゾエート、エチルp−メトキシベンゾエート、メチルp−エトキシベンゾエート、エチルp−エトキシベンゾエート、エチルp−クロロベンゾエートが挙げられる。1つの実施形態において、該ベンゾエート基は、エチルベンゾエートである。適するBenMagプロ触媒前駆体の非限定的な例としては、ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyから入手できる商品名SHAC(商標)103及びSHAC(商標)310の触媒が挙げられる。
【0021】
ある実施形態において、該BenMagプロ触媒前駆体は、構造(I)を有するベンゾエート化合物の存在下での任意のプロ触媒前駆体(すなわち、MagMo前駆体又はMagMix前駆体)のハロゲン化の生成物である
【化3】
【0022】
この式中、R−Rは、水素、C−C20ヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基は、F、Cl、Br、I、O、S、N、P、及びSiをはじめとするヘテロ原子を含有することがあり、並びにR’は、F、Cl、Br、I、O、S、N、P、及びSiをはじめとするヘテロ原子を場合により含有することがあるC−C20ヒドロカルビル基である。好ましくは、R−Rは、水素及びC−C20アルキル基から選択され、並びにR’は、C−C20アルキル基及びアルコキシアルキル基から選択される。
【0023】
該内部電子供与体の存在下でのプロ触媒前駆体のハロゲン化/チタン化(titanation)は、マグネシウム部分とチタン部分と内部電子供与体(置換アミドエステル)との組み合わせを含むプロ触媒組成物を生成させる。ある実施形態において、該マグネシウム及びチタン部分は、それぞれのハライド、例えばマグネシウムクロライド及びチタンクロライドである。特定の理論によって拘束されることなく、該マグネシウムハライドは、担体であって、その上にチタンハライドが析出され、及びその中に内部電子供与体が組み込まれるものである担体と考えられる。
【0024】
得られるプロ触媒組成物は、全固形分重量に基づき約1.0重量パーセントから約6.0重量パーセント、又は約1.5重量パーセントから約5.5重量パーセント、又は約2.0重量パーセントから約5.0重量パーセントのチタン含有率を有する。固体プロ触媒組成物中のチタンのマグネシウムに対する重量比は、適切には約1:3と約1:160の間、又は約1:4と約1:50の間、又は約1:6と1:30の間である。該内部電子供与体は、約0.1重量%から約20.0重量%、又は約1.0重量%から約15重量%の量で存在する。該内部電子供与体は、約0.005:1から約1:1、又は約0.01:1から約0.4:1の内部電子供与体のマグネシウムに対するモル比でプロ触媒組成物中に存在し得る。重量パーセントは、プロ触媒組成物の全重量に基づく。
【0025】
該プロ触媒組成物中のエトキシド含有量は、前駆体金属エトキシドの金属ハライドへの転化が完全であることを示す。該置換アミドエステルは、ハロゲン化中にエトキシドのハライドへの転化を助ける。ある実施形態において、該プロ触媒組成物は、約0.01重量%から約1.0重量%、又は約0.05重量%から約0.5重量%エトキシドを含む。重量パーセントは、プロ触媒組成物の全重量に基づく。
【0026】
ある実施形態において、該内部電子供与体は、混合内部電子供与体である。本明細書において用いる場合、「混合内部電子供与体」は、(i)置換アミドエステル、(ii)結果として得られるプロ触媒組成物中に存在する1つ又はそれ以上の金属に電子対を供与する電子供与体成分、及び(iii)場合により他の成分である。ある実施形態において、該電子供与体成分は、ベンゾエート、例えばエチルベンゾエート及び/又はメトキシプロパン−2−イルベンゾエートである。該混合内部電子供与体を有するプロ触媒組成物は、前に開示したようなプロ触媒生成手順によって生成させることができる。ある実施形態において、該ベンゾエートは、プロ触媒生成中の該ベンゾエートの付加から導入される。もう1つの実施形態において、該ベンゾエートは、BenMagプロ触媒前駆体からのものである。さらにもう1つの実施形態において、該ベンゾエートは、置換アミドエステル電子供与体の一部分の分解からのものである。
【0027】
該内部電子供与体は、置換アミドエステル及び場合により電子供与体成分を含む。ある実施形態において、該置換アミドエステルは、下の構造(II)を有する:
【化4】
【0028】
この式中、R−Rは、同じである、又は異なる。R−Rのそれぞれは、水素、及び1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。R−Rの少なくとも1つは、少なくとも2個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。或いは、R及びRのそれぞれは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。R11−R13及びR21−R23のそれぞれは、同じであり、又は異なり、並びに水素、及び1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。
【0029】
本明細書において用いる場合、用語「ヒドロカルビル」又は「炭化水素」は、水素及び炭素原子のみを含有する置換基であり、分岐又は非分岐、飽和又は不飽和、環式、多環式、縮合、又は非環式種、及びそれらの組み合わせを含む。ヒドロカルビル基の非限定的な例としては、アルキル−、シクロアルキル−、アルケニル−、アルカジエニル−、シクロアルケニル−、シクロアルカジエニル−、アリール−、アラルキル、アルキルアリール、及びアルキニル−基が挙げられる。
【0030】
本明細書において用いる場合、用語「置換ヒドロカルビル」又は「置換炭化水素」は、1つ又はそれ以上の非ヒドロカルビル置換基で置換されているヒドロカルビル基である。非ヒドロカルビル置換基の非限定的な例は、ヘテロ原子である。本明細書において用いる場合、「ヘテロ原子」は、炭素又は水素以外の原子である。ヘテロ原子は、周期表のIV、V、VI及びVII族からの非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の非限定的な例としては、ハロゲン(F Cl、Br、I)、N、O、P、B、S、及びSiが挙げられる。置換ヒドロカルビル基は、ハロヒドロカルビル基及びケイ素含有ヒドロカルビル基も含む。本明細書において用いる場合、用語「ハロヒドロカルビル」基は、1個又はそれ以上のハロゲン原子で置換されているヒドロカルビル基である。本明細書において用いる場合、用語「ケイ素含有ヒドロカルビル基」は、1個又はそれ以上のケイ素原子で置換されているヒドロカルビル基である。該ケイ素原子は、炭素鎖内にあってもよく、又はなくてもよい。
【0031】
ある実施形態において、R−Rの少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つは、少なくとも2個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。
【0032】
ある実施形態において、R及びRのそれぞれは、少なくとも2個、又は少なくとも3個、又は少なくとも4個、又は少なくとも5個、又は少なくとも6個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。
【0033】
ある実施形態において、R及びRのそれぞれは、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0034】
ある実施形態において、R及びRの少なくとも一方はイソプロピル基である。さらなる実施形態において、R及びRのそれぞれがイソプロピル基である。
【0035】
ある実施形態において、R及びRの少なくとも一方はイソブチル基である。さらなる実施形態において、R及びRのそれぞれがイソブチル基である。
【0036】
ある実施形態において、R及びRの少なくとも一方はシクロペンチル基である。さらなる実施形態において、R及びRのそれぞれがシクロペンチル基である。
【0037】
ある実施形態において、R及びRのそれぞれがシクロヘキシル基である。さらなる実施形態において、R及びRのそれぞれがシクロヘキシル基である。
【0038】
ある実施形態において、R11−R13の少なくとも1つ及びR21−R23の少なくとも1つは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。
【0039】
ある実施形態において、R12及びR22のそれぞれが、少なくとも2個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。
【0040】
ある実施形態において、該置換アミドエステルは、下の構造(II)を有する:
【化5】
【0041】
式中、R−Rは、同じである、又は異なる。R、R、R、及びRのそれぞれは、水素、及び1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。R及びRのそれぞれは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。R11−R13及びR21−R23のそれぞれは、同じであり、又は異なり、並びに水素、及び1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。
【0042】
ある実施形態において、R、R、R、及びRのそれぞれが水素である。R及びRのそれぞれは、1〜6個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。さらなる実施形態において、R及びRのそれぞれがメチル基である。
【0043】
本開示は、もう1つのプロ触媒組成物を提供する。ある実施形態において、プロ触媒組成物を提供し、このプロ触媒組成物は、マグネシウム部分とチタン部分と内部電子供与体との組み合わせを含む。該内部電子供与体は、構造(II)の置換アミドエステルを含む:
【化6】
【0044】
この式中、R−R、R11−R13、及びR21−R23は、同じである、又は異なる。R−R、R11−R13、及びR21−R23のそれぞれは、水素、及び1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。R−Rの少なくとも1つは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。加えて、R11−R13の少なくとも1つ及び/又はR21−R23の少なくとも1つは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。
【0045】
ある実施形態において、R、R、R12、及びR22のそれぞれがメチル基である。
【0046】
ある実施形態において、R及びRのそれぞれがメチル基であり、並びにR12及びR22のそれぞれがエチル基である。
【0047】
ある実施形態において、R及びRのそれぞれがメチル基であり、並びにR12及びR22のそれぞれがブチル基である。
【0048】
ある実施形態において、R及びRのそれぞれがメチル基であり、並びにR12及びR22のそれぞれがフェニル基である。
【0049】
ある実施形態において、R及びRの少なくとも一方は、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基から選択される。R12及びR22の少なくとも一方は、1〜6個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。
【0050】
ある実施形態において、R及びRのそれぞれがイソプロピル基であり、並びにR12及びR22のそれぞれがメチル基である。
【0051】
ある実施形態において、R及びRのそれぞれがイソプロピル基であり、並びにR12及びR22のそれぞれがエチル基である。
【0052】
ある実施形態において、R及びRのそれぞれがイソブチル基であり、並びにR12及びR22のそれぞれがメチル基である。
【0053】
ある実施形態において、R及びRのそれぞれがイソブチル基であり、並びにR12及びR22のそれぞれがエチル基である。
【0054】
ある実施形態において、R及びRのそれぞれがシクロペンチル基であり、並びにR12及びR22のそれぞれがメチル基である。
【0055】
ある実施形態において、R及びRのそれぞれがシクロペンチル基であり、並びにR12及びR22のそれぞれがエチル基である。
【0056】
ある実施形態において、R及びRのそれぞれがシクロヘキシル基であり、並びにR12及びR22のそれぞれがメチル基である。
【0057】
ある実施形態において、R及びRのそれぞれがシクロヘキシル基であり、並びにR12及びR22のそれぞれがエチル基である。
【0058】
ある実施形態において、R及びRのそれぞれがメチル基であり、並びにR12及びR22のそれぞれがメチル基である。
【0059】
ある実施形態において、R及びRのそれぞれがメチル基であり、並びにR12及びR22のそれぞれがエチル基である。
【0060】
ある実施形態において、該内部電子供与体及び/又は混合内部電子供与体は、フタレート不含である。
【0061】
ある実施形態において、該プロ触媒組成物は、フタレート不含である。
【0062】
本プロ触媒組成物は、本明細書に開示する2つ又はそれ以上の実施形態を含むことがある。
【0063】
ある実施形態において、触媒組成物を提供する。本明細書において用いる場合、「触媒組成物」は、重合条件下でオレフィンと接触させたときオレフィン系ポリマーを形成する組成物である。該触媒組成物は、プロ触媒組成物及び助触媒を含む。該プロ触媒組成物は、本明細書に開示するとおりの構造(II)の置換アミドエステルである内部電子供与体を有する上述のプロ触媒組成物のいずれかであり得る。該触媒組成物は、外部電子供与体及び/又は活性制限剤を場合により含むことがある。
【0064】
ある実施形態において、該触媒組成物の内部電子供与体は、上に開示したような混合内部電子供与体である。
【0065】
該触媒組成物は、助触媒を含む。本明細書において用いる場合、「助触媒」は、プロ触媒を活性重合触媒に転化させることができる物質である。助触媒としては、アルミニウム、チタン、亜鉛、すず、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム及びこれらの組み合わせの水素化物、アルキル又はアリールを挙げることができる。ある実施形態において、該助触媒は、式RAlX3−nによって表されるヒドロカルビルアルミニウム化合物であり、この式中、n=1 2又は3、Rはアルキルであり、並びにXはハライド又はアルコキシドである。適する助触媒の非限定的な例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、及びトリ−n−ヘキシルアルミニウムが挙げられる。
【0066】
ある実施形態において、該助触媒はトリエチルアルミニウムである。アルミニウムのチタンに対するモル比は、約5:1から約500:1、又は約10:1から約200:1、又は約15:1から約150:1、又は約20:1から約100:1、又は約30:1から約60:1である。もう1つの実施形態において、アルミニウムのチタンに対するモル比は、約35:1である。
【0067】
ある実施形態において、本触媒組成物は、外部電子供与体を含む。本明細書において用いる場合、「外部電子供与体」(又は「EED」)は、プロ触媒形成に関係なく添加される化合物であり、及び金属原子に電子対を供与できる少なくとも1つの官能基を含む。「混合外部電子供与体」(又は「MEED」)は、2つ又はそれ以上の外部電子供与体の混合物である。特定の理論によって拘束されることなく、該触媒組成物に1つ又はそれ以上の外部電子供与体を備えさせることは、該形式ポリマーの次の特性をもたらすと考えられる:立体規則性(すなわち、キシレン可溶性材料)のレベル、分子量(すなわち、メルトフロー)、分子量分布(MWD)、融点、及び/又はオリゴマーレベル。
【0068】
ある実施形態では、該外部電子供与体を、次のものの1つ又はそれ以上から選択することができる:ケイ素化合物、二座化合物、アミン、エーテル、カルボキシレート、ケトン、アミド、カルバメート、ホスフィン、ホスフェート、ホスファイト、スルホネート、スルホン、スルホキシド、及び前述のものの任意の組み合わせ。
【0069】
ある実施形態において、EEDは、一般式(III)を有するケイ素化合物である:
SiR(OR’)4−m
この式中、Rは、各出現独立して、水素であり、又は1個若しくはそれ以上の14、15、16若しくは17族ヘテロ原子を含有する1つ若しくはそれ以上の置換基で場合により置換されているヒドロカルビル若しくはアミノ基である。Rは、水素及びハロゲンを数に入れずに20個以下の原子を含有する。R’は、C1−20アルキル基であり、及びmは、0、1、又は2である。ある実施形態において、Rは、C6−12アリール、アルキルアリール若しくはアラルキル、C3−12シクロアルキル、C1−20線状アルキル若しくはアルケニル、C3−12分岐アルキル、又はC2−12環式アミノ基であり、R’は、C1−4アルキルであり、及びmは、1又は2である。
【0070】
EEDについての適するケイ素化合物の非限定的な例としては、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、及びテトラアルコキシシラン、例えばジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)、ジイソプロピルジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(トリメチルシリルメチル)ジメトキシシラン、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0071】
ある実施形態において、該EEDは、二座化合物である。「二座化合物」は、C−C10炭化水素鎖によって隔てられた少なくとも2つの酸素含有官能基を含有する分子又は化合物であり、該酸素含有官能基は同じであり、又は異なり、少なくとも1つの酸素含有官能基はエーテル基又はカルボキシレート基であり、二座組成物はフタレートを含まない。該二座組成物についての適する酸素含有官能基の非限定的な例としては、カルボキシレート、カーボネート、ケトン、エーテル、カルバメート、アミド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、ホスファイト、ホスフィネート、ホスフェート、ホスホネート、及びホスフィンオキシドが挙げられる。C−C10鎖内の1個又はそれ以上の炭素原子は、14、15及び16族からのヘテロ原子で置換されていることがある。C−C10鎖内の1個又はそれ以上の水素原子は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アルキルアリール、アラルキル、ハロゲンで、又は14、15若しくは16族からのヘテロ原子を含有する官能基で置換されていることがある。適する二座化合物の非限定的な例としては、ジエーテル、スクシネート、ジアルコキシベンゼン、アルコキシエステル、及び/又はジオールエステルが挙げられる。
【0072】
ある実施形態において、該二座化合物は、ジエーテル、例えば、3,3−ビス(メトキシメチル)−2,5−ジメチルヘキサン、4,4−ビス(メトキシメチル)−2,6−ジメチルヘプタン、及び9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンである。
【0073】
ある実施形態において、該二座化合物は、ジオールエステル、例えば、2,4−ペンタンジオールジ(ベンゾエート)、2,4−ペンタンジオールジ(2−メチルベンゾエート)、2,4−ペンタンジオールジ(4−n−ブチルベンゾエート)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート及び/又は2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエートである。
【0074】
ある実施形態において、該カルボキシレートは、ベンゾエート、例えば、エチルベンゾエート及びエチル4−エトキシベンゾエートである。
【0075】
ある実施形態において、該外部電子供与体は、ホスファイト、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、及び/又はトリ−n−プロピルホスファイトである。
【0076】
ある実施形態において、該外部電子供与体は、アルコキシエステル、例えば、メチル1−メトキシビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−5−エン−2−カルボキシレート、メチル3−メトキシプロピオネート、メチル3−メトキシ−2−メチルプロパノエート、及び/又はエチル3−メトキシ−2−メチルプロパノエートである。
【0077】
ある実施形態において、該外部電子供与体は、スクシネート、例えば、ジエチル2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジ−n−ブチル2,3−ジイソプロピルスクシネート、及び/又はジエチル2,3−ジイソブチルスクシネートである。
【0078】
ある実施形態において、該外部電子供与体は、ジアルコキシベンゼン、例えば、1,2−ジエトキシベンゼン、1,2−ジ−n−ブトキシベンゼン、及び/又は1−エトキシ−2−n−ペントキシベンゼンである。
【0079】
ある実施形態において、該外部電子供与体は、アミン、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである。
【0080】
該EEDが、上述のいずれかのEED化合物の2つ又はそれ以上を含み得るMEEDであってもよいことは、さらに理解される。
【0081】
ある実施形態において、該触媒組成物は、活性制限剤(ALA)を含む。本明細書において用いる場合、「活性制限剤」(「ALA」)は、高温(すなわち、約85℃より高い温度)で触媒活性を低減させる材料である。ALAは、重合反応器アップセットを抑制又は別様に防止し、重合プロセスの連続性を確実にする。概して、チーグラー・ナッタ触媒の活性は、反応器温度が上昇するにつれて増加する。チーグラー・ナッタ触媒は、生成されるポリマーの軟化点温度付近で高い活性を概して維持する。発熱性重合反応によって生ずる熱は、ポリマー粒子が凝集体を形成する原因となり得、最終的にはポリマー生成プロセスの連続性を乱すこととなり得る。ALAは、高温での触媒活性を低減し、それによって、反応器アップセットを防止し、粒子凝集を低減(又は防止)し、及び重合プロセスの連続性を確実にする。
【0082】
ALAは、EED及び/又はMEEDの成分であってもよく、又はなくてもよい。該活性制限剤は、カルボン酸エステル、ジエーテル、ポリ(アルケングリコール)、スクシネート、ジオールエステル、及びこれらの組み合わせであり得る。該カルボン酸エステルは、脂肪族又は芳香族、モノ−又はポリ−カルボン酸エステルであり得る。適するカルボン酸エステルの非限定的な例としては、ベンゾエート、脂肪族C2−40モノ−/ジ−カルボン酸のC1−40アルキルエステル、C2−100(ポリ)グリコールのC2−40モノ−/ポリ−カルボキシレート誘導体、C2−100(ポリ)グリコールエーテル、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。カルボン酸エステルのさらなる非限定的な例としては、ラウレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、オレエート、及びセバケート、並びにこれらの混合物が挙げられる。さらなる実施形態において、該ALAは、エチル4−エトキシベンゾエート又はイソプロピルミリステート又はジ−n−ブチルセバケートである。
【0083】
該触媒組成物は、上述の活性制限剤のいずれかとの組み合わせで、上述の外部電子供与体のいずれかを含むことがある。該外部電子供与体及び/又は活性制限剤を反応器に別々に添加することができる。或いは、該外部電子供与体及び該活性制限剤を予め混合し、その後、触媒組成物に及び/又は混合物として反応器内に添加することができる。混合物の場合、1つより多くの外部電子供与体又は1つより多くの活性制限剤を使用することができる。適するEED/ALA混合物の非限定的な例としては、ジシクロペンチルジメトキシシランとイソプロピルミリステート;ジシクロペンチルジメチルシランとポリ(エチレングリコール)ラウレート;ジイソプロピルジメトキシシランとイソプロピルミリステート;メチルシクロヘキシルジメトキシシランとイソプロピルミリステート;メチルシクロヘキシルジメトキシシランとエチル4−エトキシベンゾエート;n−プロピルトリメトキシシランとイソプロピルミリステート;ジメチルジメトキシシランとメチルシクロヘキシルジメトキシシランとイソプロピルミリステート;ジシクロペンチルジメトキシシランとテトラエトキシシランとイソプロピルミリステート;ジシクロペンチルジメトキシシランとテトラエトキシシランとエチル4−エトキシベンゾエート;ジシクロペンチルジメトキシシランとn−プロピルトリエトキシシランとイソプロピルミリステート;ジイソプロピルジメトキシシランとn−プロピルトリエトキシシランとイソプロピルミリステート;ジシクロペンチルジメトキシシランとイソプロピルミリステートとポリ(エチレングリコール)ジオレエート;ジシクロペンチルジメトキシシランとジイソプロピルジメトキシシランとn−プロピルトリエトキシシランとイソプロピルミリステート;及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0084】
本触媒組成物は、本明細書に開示する2つ又はそれ以上の実施形態を含むことがある。
【0085】
ある実施形態において、オレフィン系ポリマーの製造方法を提供する。該方法は、重合条件下でオレフィンと触媒組成物を接触させることを含む。該触媒組成物は、置換アミドエステルを含む。該置換アミドエステルは、本明細書に開示するとおりの構造(II)の任意の置換アミドエステルであり得る。該方法は、オレフィン系ポリマーを形成することをさらに含む。
【0086】
該触媒組成物は、プロ触媒組成物及び助触媒を含む。該プロ触媒組成物は、本明細書に開示する任意のプロ触媒組成物であり、及び構造(II)の置換アミドエステルを内部電子供与体として含む。該助触媒は、本明細書に開示するような任意の助触媒であり得る。該触媒組成物は、前に開示したような外部電子供与体及び/又は活性制限剤を場合により含むことがある。
【0087】
該オレフィン系ポリマーは、プロ触媒組成物中に存在する構造(II)の内部電子供与体に対応する置換アミドエステルを含有する。ある実施形態において、該オレフィン系ポリマーは、プロピレン系オレフィン、エチレン系オレフィン、及びこれらの組み合わせであり得る。ある実施形態において、該オレフィン系ポリマーは、プロピレン系ポリマーである。
【0088】
1つ又はそれ以上のオレフィンモノマーを、触媒と反応させるために及びポリマーを形成するために重合反応器に導入してもよく、又はポリマー粒子の流動床に導入してもよい。適するオレフィンモノマーの非限定的な例としては、エチレン、プロピレン、C4−20αオレフィン、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン及びこれらに類するものが挙げられる。
【0089】
本明細書において用いる場合、「重合条件」は、所望のポリマーを形成するための触媒組成物とオレフィンとの重合の促進に適する、重合反応器内の温度及び圧力パラメータである。該重合プロセスは、1つの、又は1つより多くの、重合反応器で動作する、気相、スラリー又はバルク重合プロセスであり得る。従って、該重合反応器は、気相重合反応器、液相重合反応器、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0090】
該重合反応器への水素の供給が重合条件の要素であることは理解される。重合中、水素は連鎖移動剤であり、及び結果として得られるポリマーの分子量(及び従ってメルト・フロー・レート)に影響を及ぼす。該重合プロセスは、前重合工程及び/又は前活性化工程を含むことがある。
【0091】
ある実施形態において、該プロセスは、外部電子供与体(及び場合により活性制限剤)とプロ触媒組成物を混合することを含む。外部電子供与体及び/又は活性制限剤を助触媒と複合体化してプロ触媒組成物と混合し(プレミックス)、その後、その触媒組成物とオレフィンを接触させることができる。もう1つの実施形態では、外部電子供与体及び/又は活性制限剤を独立して重合反応器に添加することができる。
【0092】
ある実施形態において、該オレフィンはプロピレン並びに場合によりエチレン及び/又は1−ブテンである。該プロセスは、次の特性の1つ又はそれ以上を有するプロピレン系ポリマー(プロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマー)を形成することを含む:
・約0.01g/10分から約800g/10分、若しくは約0.1g/10分から約200g/10分、若しくは約0.5g/10分から約150g/10分、若しくは約1g/10分から約70g/10分のメルト・フロー・レート(MFR);
・約0.5%から約10%、若しくは約1%から約8%、若しくは約1%から約4%のキシレン可溶分含有率;
・約5.0から約20.0、若しくは約6.0から約15、若しくは約6.5から約10、若しくは約7.0から約9.0の多分散度指数(PDI);
・コモノマーが存在するとき、それは、(ポリマーの全重量に基づき)約0.001重量%から約20重量%、若しくは約0.01重量%から約15重量%、若しくは約0.1重量%から約10重量%の量で存在する;及び/又は
・約1ppbから約50ppm、若しくは約10ppbから約25ppm、若しくは約100ppbから約10ppm存在する内部電子供与体(置換アミドエステル)若しくは混合内部電子供与体(置換アミドエステル及びベンゾエート)。
【0093】
本開示は、オレフィン系ポリマーを製造するためのもう1つの方法を提供する。ある実施形態では、プロピレンと構造(II)の置換アミドエステルを含む触媒組成物とを接触させて、プロピレン系ポリマーを形成することを含む、オレフィン系ポリマーを製造するための方法を提供する。該プロピレンと触媒組成物との接触は、重合条件下で第一の重合反応器において行われる。該方法は、プロピレン系ポリマーの存在下でエチレンと場合により少なくとも1つの他のオレフィンとを接触させることをさらに含む。該エチレンと、オレフィンとプロピレン系ポリマーの接触は、重合条件下で第二の重合反応器において行われ、プロピレン・インパクト・コポリマーを形成する。
【0094】
ある実施形態において、該第一の反応器及び第二の反応器は直列で動作し、それによって第一の反応器の流出物(すなわち、プロピレン系ポリマー)は第二の反応器に供給される。重合を継続するために追加のオレフィンモノマーが第二の重合反応器に添加される。追加の触媒組成物(及び/又は個々の触媒成分−すなわち、プロ触媒、助触媒、EED、ALA−の任意の組み合わせ)を第二の重合反応器に添加してもよい。第二の反応器に添加される追加の触媒組成物/成分は、第一の反応器に導入される触媒組成物/成分と同じであってもよく、又は異なってもよい。
【0095】
ある実施形態において、第一の反応器に導入されるプロピレン系ポリマーは、プロピレンホモポリマーである。該プロピレンホモポリマーは、該プロピレンホモポリマーの存在下でエチレンとプロピレンを互いに接触させる場合、第二の反応器に供給される。これにより、プロピレン系コポリマー(すなわち、プロピレン/エチレンコポリマー)又はエチレン系コポリマー(すなわち、エチレン/プロピレンコポリマー)から選択される、プロピレンホモポリマー連続(又はマトリックス)相と不連続相(又はゴム相)とを有するプロピレン・インパクト・コポリマーが形成される。該不連続相は、該連続相中に分散されている。
【0096】
該プロピレン・インパクト・コポリマーは、約1重量%から約50重量%、又は約10重量%から約40重量%、又は約20重量%から約30重量%のFc値を有し得る。本明細書において用いる場合、「フラクション・コポリマー(fraction copolymer)」(「Fc」)は、ヘテロ相コポリマー中に存在する不連続相の重量パーセントである。Fc値は、プロピレン・インパクト・コポリマーの全重量に基づく。
【0097】
該プロピレン・インパクト・コポリマーは、約1重量%から約100重量%、又は約20重量%から約90重量%、又は約30重量%から約80重量%、又は約40重量%から約60重量%のEc値を有し得る。本明細書において用いる場合、「エチレン含有率」(「Ec」)は、プロピレン・インパクト・コポリマーの不連続相中に存在するエチレンの重量パーセントである。Ec値は、不連続(又はゴム)相の全重量に基づく。
【0098】
オレフィン系ポリマーの本製造方法は、本明細書に開示する2つ又はそれ以上の実施形態を含むことがある。
【0099】
定義
【0100】
本明細書における元素周期表へのすべての言及は、2003年、CRC Press,Inc.が発行し、版権を有する、元素周期表を指すものとする。また、族へのいずれの言及も、族の番号付けにIUPACシステムを用いてこの元素周期表に表されている族へのものとする。文脈から暗に意味された、又は当分野において慣例による、相反する言明がない限り、すべての部及びパーセントは重量に基づく。米国特許実務のため、本明細書において言及する任意の特許、特許出願、又は出版物の内容は、全体として、とりわけ合成技術、定義(本明細書に提供するいずれの定義とも矛盾のない程度に)及び当分野における一般知識の開示に関して、参照により本明細書に組み込まれる(又はその対応USバージョンがそのように参照により組み込まれる)。
【0101】
本明細書に列挙する任意の数値範囲は、低位値から上位値までのすべての値を1単位刻みで含むが、但し、任意の低位値と任意の高位値の間に少なくとも2単位の隔たりがあることを条件とする。一例として、成分の量、又は組成的若しくは物理的特性の値、例えばブレンド成分の量、軟化温度、メルトインデックスなどが1と100の間であると述べられている場合、それは、すべての個々の値、例えば1、2、3など、及びすべての部分範囲、例えば1から20、55から70、197から100などを本明細書に明確に列挙することが意図されている。1未満である値について、1単位は、適宜、0.0001、0.001又は0.1であると考えられる。これらは、具体的に意図することの単なる例であり、列挙されている最低値と最高値の間の数値のすべての可能な組み合わせが本出願において明確に述べられていると考えるべきである。言い換えると、本明細書に列挙するいずれの数値範囲も、述べられている範囲内の任意の値又は部分範囲を含む。ここで論ずるように、列挙した数値範囲は、メルトインデックス、メルト・フロー・レート、及び他の特性を参照する。
【0102】
用語「アルキル」は、本明細書において用いる場合、分岐又は非分岐、飽和又は不飽和非環式炭化水素ラジカルである。適するアルキルラジカルの非限定的な例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル(又は2−メチルプロピル)などが挙げられる。該アルキルは、1から20個の炭素原子を有する。
【0103】
用語「アリール」又は「アリール基」は、本明細書において用いる場合、芳香族炭化水素化合物から誘導される置換基である。アリール基は、合計6から12個の環原子を有し、並びに別個である又は縮合している1つ又はそれ以上の環を有し、並びにアルキル及び/又はハロ基で置換されていることがある。該芳香族環としては、数ある中でも、フェニル、ナフチル、アントラセニル、及びビフェニルを挙げることができる。
【0104】
用語「ブレンド」又は「ポリマーブレンド」は、本明細書において用いる場合、2つ又はそれ以上のポリマーのブレンドである。そのようなブレンドは、混和性である(分子レベルで相分離していない)ことがあり、又は混和性でないことがある。そのようなブレンドは、相分離していることがあり、又はしていないことがある。そのようなブレンドは、透過型電子顕微鏡検査、光散乱、X線散乱、及び当分野において公知の他の方法から判定して、1つ又はそれ以上のドメイン構造を含有することがあり、又はしないことがある。
【0105】
用語「組成物」は、本明細書において用いる場合、その組成物を含む材料の混合物、並びにその組成物の材料から形成される反応生成物及び分解生成物を含む。
【0106】
用語「含む(comprising)」及びその派生語は、任意の追加の成分、工程又は手順を、それらが本明細書に開示されていようと、いなかろうと、除外することを意図しない。一切の疑いを避けるために、用語「含む(comprising)」を用いることによりここで特許請求するすべての組成物は、相反する言明がない限り、高分子のものであろうと、そうでないものであろうと任意の追加の添加剤、アジュバント又は化合物を含み得る。対照的に、用語「から本質的に成る」は、動作可能性にとって本質的でないものを除き、任意の後に続く詳説から一切の他の成分、工程又は手順を除外する。用途「から成る」は、具体的に叙述又はリストされていない一切の成分、工程又は手順を除外する。用語「又は」は、別の言明がない限り、リストされている構成員を個々に並びに任意の組み合わせで指す。
【0107】
用語「エチレン系ポリマー」は、本明細書において用いる場合、(重合性モノマーの全重量に基づき)大部分の重量パーセントの重合したエチレンモノマーを含むポリマーであって、少なくとも1つの重合したコモノマーを場合により含むことがあるポリマーである。
【0108】
用語「オレフィン系ポリマー」は、ポリマーであって、該ポリマーの全重量に基づき大部分の重量パーセントのオレフィン、例えばエチレン又はプロピレンを重合した形態で含有するポリマーである。オレフィン系ポリマーの非限定的な例としては、エチレン系ポリマー及びプロピレン系ポリマーが挙げられる。
【0109】
用語「ポリマー」は、同じ又は異なるタイプのモノマーを重合することによって調製される高分子化合物である。「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、共重合体などを包含する。用語「共重合体」は、少なくとも2つのタイプのモノマー又はコモノマーの重合によって調製されるポリマーである。共重合体は、コポリマー(2つの異なるタイプのモノマー又はコモノマーから調製されるポリマーを通常は指す)、ターポリマー(3つの異なるタイプのモノマー又はコモノマーから調製されるポリマーを通常は指す)、テトラポリマー(4つの異なるタイプのモノマー又はコモノマーから調製されるポリマーを通常は指す)、及びこれらに類するものを含むが、これらに限定されない。
【0110】
用語「プロピレン系ポリマー」は、本明細書において用いる場合、(重合性モノマーの全量に基づき)大部分の重量パーセントの重合したプロピレンモノマーを含むポリマーであって、少なくとも1つの重合したコモノマーを場合により含むことがあるポリマーである。
【0111】
用語「置換アルキル」は、本明細書において用いる場合、前に定義し説明したとおりのアルキルであって、該アルキルの任意の炭素に結合している1個又はそれ以上の水素原子が別の基、例えばハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィド、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロ、シリル、及びこれらの組み合わせによって置換されているアルキルである。適する置換アルキルとしては、例えば、ベンジル、トリフルオロメチル及びこれらに類するものが挙げられる。
【0112】
試験法
【0113】
メルト・フロー・レート(MFR)は、プロピレン系ポリマーについての230℃で重さ2.16kgでのASTM D 1238−01試験法に従って測定する。
【0114】
キシレン可溶分(XS)は、樹脂を熱キシレンに溶解し、その溶液を放置して25℃に冷却した後に溶液のままである樹脂の重量パーセントである(ASTM D5492−06による重量XS法)。XSは、次の2つの手順のうちの一方に従って測定される:(1)Viscotek法:0.4gのポリマーを20mLのキシレンに130℃で30分間、攪拌しながら溶解する。その後、その溶液を25℃に冷却し、30分後、不溶性ポリマー画分を濾別する。得られた濾液を、Viscotek ViscoGEL H−100−3078カラムを使用してTHF移動相を1.0mL/分で流してフロー・インジェクション・ポリマー分析により分析する。該カラムは、45℃で動作する光散乱、粘度計及び屈折計検出器を具備するViscotek Model 302 Triple Detector Arrayに連結されている。Viscotek PolyCAL(商標)ポリスチレン標準物質で計器校正を維持した。(2)NMR法:全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,539,309号に記載されているようなH NMR法を用いてXSを測定する。該方法の両方を重量ASTM法に対して校正する。
【0115】
多分散度指数(PDI)は、TA Instrumentsによって製造された応力制御動的分光計であるAR−G2レオメータにより、Zeichner GR、Patel PD (1981) 「A comprehensive Study of Polypropylene Melt Rheology」, Proc. of the 2nd World Congress of Chemical Eng., Montreal, Canadaによる方法を用いて測定する。ETCオーブンを用いて、180℃±0.1℃に温度を制御する。窒素を使用してオーブン内部をパージして、サンプルが酸素及び湿分によって分解しないようにする。一対の直径25mmのコーン・プレートサンプルホルダーを使用する。サンプルを50mm×100mm×2mmプラックに圧縮成形する。その後、サンプルを19mm角に切断し、下部プレートの中央に負荷する。上部コーンの幾何形状は、(1)コーン角度:5:42:20(度:分:秒);(2)直径:25mm;(3)切り欠きギャップ(Truncation gap):149マイクロメートルである。底部プレートの幾何形状は、25mm円柱である。
【0116】
試験手順:
(1)コーン・プレートサンプルホルダーをETCオーブンの中で180℃で2時間加熱する。その後、窒素ガスのブランケットのもとでギャップをゼロにする。
(2)コーンを2.5mmまで上昇させ、サンプルを底部プレートの上面に負荷する。
(3)2分間の開始タイミング。
(4)垂直力を観察することによりサンプルの上面にわずかに載るように上部コーンを直ちに低下させる。
(5)2分後、上部コーンを低下させることにより、サンプルを165マイクロメートルギャップまで押しつぶす。
(6)垂直力を観察する。垂直力が<0.05ニュートンに低下したら、過剰なサンプルをコーン・プレートサンプルホルダーの端部からスパチュラによって除去する。
(7)149マイクロメートルである切り欠きギャップまで上部コーンを再び低下させる。
(8)振動周波数掃引試験をこれらの条件下で行う:
(i)180℃で5分間、試験遅延。
(ii)周波数:628.3ラジアン/秒から0.1ラジアン/秒。
(iii)データ収集速度:5点/ディケード。
(iv)ひずみ:10%。
(9)試験が完了したら、TA Instrumentsによって装備されたRheology Advantage Data Analysisプログラムによってクロスオーバーモジュラス(Gc)を検出する。
(10)PDI=100,000÷Gc(Pa単位で)
【0117】
最終融点(TMF)は、サンプル中の殆どの完全結晶を融解する温度であり、並びにアイソタクティシティー及び固有ポリマー結晶化度についての尺度である。TA Q100示差走査熱量計を使用して試験を行う。サンプルを80℃/分の速度で0℃から240℃に加熱し、同じ速度で0℃に冷却し、その後、同じ速度で150℃に再び加熱し、150℃で5分間保持し、1.25℃/分で150℃から180℃に加熱する。加熱曲線の終点で基線の開始を計算することによってこの最終サイクルからTMFを決定する。
【0118】
試験手順:
(1)高純度インジウムを標準物質として用いて計器を校正する。
(2)計器ヘッド/セルを50mL/分の一定流速の窒素で絶えずパージする。
(3)サンプル調製:
30−G302H−18−CX Wabash Compression Molder(30トン)を使用して1.5gの粉末サンプルを圧縮成形する:(a)接触した状態で2分間、230℃で混合物を加熱する;(b)同じ温度で20トンの圧力で1分間、サンプルを圧縮する;(c)サンプルを45°Fに冷却し、20トンの圧力で2分間保持する;(d)そのプラックをほぼ同じサイズの4つに切断し、それらを互いに積み重ね、そして段階(a)〜(c)を繰り返してサンプルを均質化する。
(4)該サンプルプラックからの1片のサンプルを計量し(好ましくは5から8mgの間)、標準的なアルミニウムのサンプルパンの中にそれを密封する。そのサンプルが入っている密封されたパンを計器ヘッド/セルのサンプル側に置き、参照側には空の密封パンを置く。オートサンプラーを使用する場合には、幾つかの異なるサンプル試験片を量り取り、機械を順序について設定する。
(5)測定:
(i)データ保存:オフ
(ii)80.00℃/分の勾配で240.00℃へ
(iii)1.00分間、等温
(iv)80.00℃/分の勾配で0.00℃へ
(v)1.00分間、等温
(vi)80.00℃/分の勾配で150.00℃へ
(vii)5.00分間、等温
(viii)データ保存:オン
(ix)1.25℃/分の勾配で180.00℃へ
(x)方法終了
(6)計算:二線の切り取りによってTMFを決定する。高温の基線から1本の線を引く。高温側の曲線の終点近くの曲線の偏差のために別の線を引く。
【0119】
例として、限定としてではなく、本開示の実施例を、ここで提供する。
【0120】
実施例
【0121】
1.置換アミドエステルの合成
エチル2−シアノ−2−イソブチル−4−メチルペンタノエート、及びエチル2−シアノ−2−イソプロピル−3−メチルブチレート:
【化7】
【0122】
500mL丸底フラスコに磁器攪拌機を取り付け、エチル2 シアノアセテート(11.3g、0.1mol)及び無水DMF(120mL)を投入する。その攪拌溶液に、無水DMF(40mL)中の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)(30.4g、0.2mol、1.0当量)の溶液を一滴ずつ添加する。添加完了後、その混合物をもう1時間攪拌する。フラスコを氷水浴で冷却し、DMF(40mL)中のヨージド(0.2mol、1.0当量)の溶液を一滴ずつ添加する。その混合物を室温に上昇させ、(GCによってモニターして)すべての出発原料が生成物に転化されるまで、さらに14時間攪拌する。混合物を氷水に注入し、ジエチルエーテルで抽出する。併せたエーテル抽出物を水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。濾過後、濾液を濃縮し、残留物を真空下で蒸留して、生成物を無色の液体として得る。
【0123】
エチル2−シアノ−2−イソプロピル−3−メチルブチレート:収率67%;H NMR:δ4.24(q,2H,J=7.0Hz),2.28(heptat,2H,J=7.0Hz)1.30(t,3H,J=7.0Hz),1.07(d,6H,J=7.0Hz),1.01(d,6H,J=6.5Hz).
【0124】
エチル2−シアノ−2−イソブチル−4−メチルペンタノエート:収率88%;H NMR:δ4.26(q,2H,J=7.0Hz),1.82−1.90(m,4H),1.63−1.70(m,2H),1.34(t,3H,J=7.0Hz),1.04(d,6H,J=6.0Hz),0.89(d,6H,J=6.0Hz).
2,2−二置換3−アミノプロパノール:
【化8】
【0125】
窒素でパージした1000mL三つ口丸底フラスコに磁器攪拌機、冷却器、及び滴下漏斗を取り付ける。粉末水素化アルミニウムリチウム(0.14〜0.18mol)を添加し、続いて無水THF(140〜180mL)を添加する。その代わりに市販のTHF中1.0M水素化アルミニウムリチウムを用いてもよい。攪拌しながら、エーテル(〜200mL)中のエチル2−シアノカルボキシレート化合物(0.06〜0.08mol)の溶液を一滴ずつ添加して、その混合物を穏やかな還流状態に保つ。添加完了後、混合物を加熱して3時間、穏やかに還流させる。冷却した後、フラスコを氷水浴に入れる。水を注意深く添加し、固体が白色になるまでその混合物を攪拌する。濾過後、固体を追加のエーテルで洗浄し、濾液を濃縮し、残留物を真空下で乾燥させて、生成物を白色固体又は粘着性油として得、それをさらに精製せずにアシル化反応に直接使用することができる。
【0126】
2−アミノメチル−2−イソプロピル−3−メチルブタン−1−オール:収率71%;H NMR:δ3.72(s,2H),2.93(s,2H),2.65(br.s,3H),1.97(heptat,2H,J=8.8Hz),0.95(d,6H,J=8.5Hz),0.94(d,6H,J=9.0Hz).
【0127】
2−アミノメチル−2−イソブチル−4−メチルペンタン−1−オール:収率75%;H NMR:δ3.54(s,2H),2.77(s,2H),2.65(br.s,3H),1.58−1.70(m,2H),1.21(d,2H,J=7.0Hz),1.20(d,2H,J=7.5Hz),0.88(d,6H,J=8.0Hz),0.87(d,6H,J=8.5Hz).
4−アミノペンタン−2−オール:
【化9】
【0128】
1000mL丸底フラスコに3,5−ジメチルイソオキサゾール(9.7g、0.1mol)及び水(200mL)を投入する。この溶液に、1.0M水酸化カリウム水溶液(200mL)を添加する。ニッケル−アルミニウム合金(1:1、32g、0.2mol)を1時間かけて少しずつ添加する。さらに約2時間後、その反応混合物をセライトで濾過し、固体を追加の水で洗浄する。濾液を塩化メチレンで1回、抽出する。その水溶液を濃HClで酸性化し、濃縮乾固させる。水酸化カリウム(10M、5.0mL)を残留物に添加し、その混合物を塩化メチレンで抽出し、抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させる。濾過後、濾液を濃縮し、残留物を真空下で乾燥させて、9.0g(87%)の生成物を粘着性油として得、それを後続のアシル化反応に直接使用する。H NMR(2つの異性体、約1:1.3):δ4.10−4.18(m,1Ha),3.95−4.00(m,1Hb),3.37−3.41(m,1Ha),3.00−3.05(m,1Hb),2.63(br.s,3Ha+3Hb),1.42−1.55(m,2Ha+1Hb),1.12−1.24(m,6Ha+7Hb).
アシル化アミノアルコール:
【化10】
【0129】
250mL丸底フラスコにアミノアルコール(0.02mol)、ピリジン(0.04mol、1.0当量)及び塩化メチレン(50mL)を投入する。そのフラスコを氷水浴に浸漬し、塩化ベンゾイル(0.04mol、1.0当量)を一滴ずつ添加する。添加完了後、フラスコを室温に温め、混合物を一晩攪拌する。その結果として、GCによってモニターして反応が完了したら、その混合物を塩化メチレンで希釈し、水、飽和塩化アンモニウム、水、飽和重炭酸ナトリウム、そしてブラインで洗浄する。その溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮する。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製して、生成物を無色油又は白色固体として得る。
【0130】
3−(4−フェニルベンズアミド)−2,2−ジメチルプロピル4−フェニルベンゾエート
【0131】
250mL丸底フラスコに、3.75gの2−(アミノメチル)−2−イソブチル−4−メチルペンタン−1−オール、3.24mLのピリジン、及び40mLの塩化メチレンを投入する。そのフラスコを氷水浴で冷却し、8.67gのビフェニル−4−カルボニルクロライドを一度に添加する。その反応物を室温に温め、一晩攪拌する。反応物を100mLの塩化メチレンで希釈し、その後、水、1N HCl(20mL)、水、飽和NaHCO、そしてブラインで1回(20mL)で洗浄し、有機層をMgSOで乾燥させ、固体を濾別し、濃縮し、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物を白色粉末として得る。
【0132】
CDClを溶剤として使用してBruker 500MHz又は400MHz NMR分光計でH NMRデータを得る(ppmで)。
【0133】
上述の合成によって生成させた置換アミドエステルを下の表1に提供する。
【表1】
【表2】
2.プロ触媒調製
【0134】
プロ触媒前駆体(表2に示す重量による)及び2.52mmolの内部電子供与体(すなわち、置換アミドエステル)を、機械攪拌及び底部濾過を備えたフラスコに投入する。60mLのTiClとクロロベンゼンの混合溶剤(容量で1/1)をそのフラスコに導入する。その混合物を115℃に加熱し、250rpmで攪拌しながら60分間、同じ温度のままにし、その後、その液体を濾別する。60mLの混合溶剤を再び添加し、同じ望ましい温度で30分間、攪拌しながら反応を継続させ、その後、濾過する。このプロセスを1回繰り返す。70mLのイソオクタンを使用して、得られた固体を周囲温度で洗浄する。溶剤を濾過によって除去した後、固体をN流によって又は真空下で乾燥させる。
【表3】
【0135】
MagTi−1は、50マイクロメートルの平均粒径を有する、MgTi(OEt)Clの組成を有する混合Mag/Ti前駆体(米国特許第6,825,146号の実施例1に従って調製したMagTi前駆体)である。SHAC(商標)310は、全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,825,146号の実施例2に従って作製した内部電子供与体としてエチルベンゾエートを有するベンゾエート含有触媒(27マイクロメートルの平均粒径を有するBenMagプロ触媒前駆体)である。結果として得られるプロ触媒組成物のそれぞれについてのチタン含有率を表3にリストする。内部供与体についてのピークをGC分析から保持時間に従って指定する。さらなる特性付けは行わない。
【表4】
【0136】
3.重合
【0137】
1−ガロン・オートクレーブにおいて液体プロピレン中で重合を行う。コンディショニング後、反応器に1375gのプロピレン及び目標量の水素を投入し、62℃にする。0.25mmolのDCPDMSを7.2mLのイソオクタン中0.27M トリエチルアルミニウム溶液に添加し、その後、鉱物油中5.0重量%プロ触媒スラリー(実際の固体重量を下のデータ表に示す)を添加する。その混合物を周囲温度で20分間、予混した後、反応器に注入して重合を開始させる。高圧触媒注入ポンプを使用して、イソオクタンと共にその予混触媒成分で反応器をフラッシュする。発熱後、温度を67℃に制御する。全重合時間は、1時間である。
【0138】
4.ポリマー試験
【0139】
ポリマーサンプルを沈降嵩密度、メルト・フロー・レート(MFR)、キシレン可溶分(XS)、多分散度指数(PDI)、及び最終融点(TMF)について試験する。指定しない限り、Viscotek法を用いてXSを測定する。
【0140】
アミドエステルの置換は、下の表4に示すように、SHAC(商標)310前駆体とMagTi−1前駆体の両方についての触媒生産性及び/又はポリマー特性を改善する。
【表5】
【0141】
単純なアミドエステル化合物、例えばアミド官能基とエステル官能基の間のCスペーサーの中心炭素原子(2位)に2つのメチル基を有する化合物1は、不良な触媒活性及び不良な触媒選択性(ポリマーアイソタクティシティー)並びに低い最終融点(TMF)を示す。1、3位が両方ともメチル基で置換されているとき(化合物2)、触媒活性の著しい増加及びアイソタクティシティーの顕著な改善があり(表4)、PDI値は、DiBP系触媒によって達成され得るものより、さらに有意に高い。出願人はまた、驚くべきことに、該中心炭素原子の置換基の嵩高さを増すことによっても触媒活性及び/又はアイソタクティシティーの改善を達成できることを発見した。実施例は、イソプロピル(化合物3)、及び2位のメチル基を置換してイソブチル(化合物4)を含む(表4)。
【0142】
驚くべきことに、3−ベンズアミド−2,2−ジメチルプロピルベンゾエート(1)における2つのベンゾイル基をp−エチルベンゾイル(12)、p−n−ブチルベンゾイル(13)、又はp−フェニルベンゾイル(14)基で置換したときにも触媒活性の有意な増加が観察される。触媒活性の増加は、SHAC(商標)310をプロ触媒前駆体として使用したとき、さらにいっそう絶大である(表4)。
【0143】
本発明者らは、ベンゾイルフェニル環に対する置換が触媒活性及び触媒選択性(ポリマーアイソタクティシティー)をさらに向上させることを、驚くべきことに及び予想外に発見した。加えて、Cスペーサーにアルキル基を導入すると、触媒活性が増加され、XSが低下される。
【0144】
本開示は、本明細書に含まれている実施形態及び実例に限定されず、それらの実施形態の部分を含むそれらの実施形態の変形形態、及び後続の特許請求の範囲内に入るような異なる実施形態の要素の組み合わせを含むことを、明確に意図している。
本願発明は、以下のものを含む。
(1)マグネシウム部分と、チタン部分と、構造(II)を有する置換アミドエステルを含む内部電子供与体との組み合わせ:
【化11】
R1−R6は、同じであり、又は異なり、R1−R6のそれぞれは、水素、及び1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から成る群より選択され、
式中、R1−R6の少なくとも1つは、少なくとも2個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、又は
R3及びR5のそれぞれは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、並びに
R11−R13及びR21−R23は、同じであり、又は異なり、R11−R13及びR21−R23のそれぞれは、水素、及び1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から成る群より選択される
を含むプロ触媒組成物。
(2)R1−R6の少なくとも2つが、少なくとも2個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である、上記(1)に記載のプロ触媒組成物。
(3)R1及びR2のそれぞれが、少なくとも2個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である、上記(1)から(2)のいずれかに記載のプロ触媒組成物。
(4)R11−R13の少なくとも1つ及びR21−R23の少なくとも1つが、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である、上記(1)から(3)のいずれかに記載のプロ触媒組成物。
(5)R1及びR2のそれぞれが、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基から成る群より選択される、上記(1)から(4)のいずれかに記載のプロ触媒組成物。
(6)R1、R2、R4、及びR6のそれぞれが水素であり、並びにR3及びR5のそれぞれがメチル基である、上記(1)に記載のプロ触媒組成物。
(7)マグネシウム部分と、チタン部分と、構造(II)を有する置換アミドエステルを含む内部電子供与体との組み合わせ:
【化12】
式中、R1−R6、R11−R13、及びR21−R23は、同じであり、又は異なり、R1−R6、R11−R13、及びR21−R23のそれぞれは、水素、及び1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から成る群より選択され、
式中、R1−R6の少なくとも1つは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、及びR11−R13、R21−R23の少なくとも1つは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である
を含むプロ触媒組成物。
(8)R1及びR2のそれぞれがメチル基であり、並びにR12及びR22のそれぞれが、エチル、ブチル、及びフェニルから成る群より選択される、上記(7)に記載のプロ触媒組成物。
(9)構造式(II)の前記置換アミドエステルと電子供与体成分とを含む混合外部電子供与体を含む、上記(1)から(8)のいずれかに記載のプロ触媒組成物。
(10)構造(II)の置換アミドエステルを含むプロ触媒組成物
【化13】
式中、R1−R6、R11−R13、及びR21−R23は、同じであり、又は異なり、R1−R6、R11−R13、及びR21−R23のそれぞれは、水素、及び1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基から成る群より選択される、及び
助触媒
を含む触媒組成物。
(11)ケイ素化合物、二座化合物、ジエーテル、ジオールエステル、カルボキシレート、アミン、ホスファイト、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される外部電子供与体を含む、上記(10)に記載の触媒組成物。
(12)2つ又はそれ以上のアルコキシシラン外部電子供与体を含む、上記(10)から(11)のいずれかに記載の触媒組成物。
(13)カルボン酸エステル、ジエーテル、ジオールエステル、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される活性制限剤を含む、上記(10)から(12)のいずれかに記載の触媒組成物。
(14)重合条件下で、オレフィンと、置換アミドエステルを含む触媒組成物とを接触させること、及び
置換アミドエステルを含むオレフィン系ポリマーを形成すること
を含むオレフィン系ポリマーの製造方法。
(15)前記オレフィンがプロピレンであり、約5.0から約20.0の多分散度指数を有するプロピレン系ポリマーを形成することを含む、上記(14)に記載の方法。