特許第5711808号(P5711808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5711808木材プレカット加工システム、木材プレカット加工制御用サーバ及び木材プレカット加工用制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5711808
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】木材プレカット加工システム、木材プレカット加工制御用サーバ及び木材プレカット加工用制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   G05B19/418 Z
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-241421(P2013-241421)
(22)【出願日】2013年11月22日
【審査請求日】2014年8月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390017385
【氏名又は名称】宮川工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104514
【弁理士】
【氏名又は名称】森 泰比古
(72)【発明者】
【氏名】中川 活秀
【審査官】 稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特公平02−027922(JP,B2)
【文献】 特開平04−331052(JP,A)
【文献】 特開2000−343461(JP,A)
【文献】 特開2008−194895(JP,A)
【文献】 特開2009−048438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有の機械識別情報が割り当てられた加工機、当該加工機に対して木材を搬入・搬出する搬送装置、及び前記加工機及び搬送装置を駆動制御する制御装置を備えた木材加工ラインと、
一棟の建物において使用される個々の部品へと木材を加工するためにCAD/CAM装置で生成した加工データを記憶する記憶装置、及び前記制御装置に対して制御指令を送信する制御指令送信手段を備えた加工制御用サーバと、
を備え、さらに、以下の構成をも備えたことを特徴とする木材プレカット加工システム。
(1)前記加工制御用サーバの前記記憶装置には、
(1A)前記個々の部品を特定する部品識別情報と、当該部品識別情報によって特定される部品を加工するための加工データとを対応付けて記憶しておく部品管理情報記憶手段と、
(1B)前記機械識別情報と、当該機械識別情報で特定される加工機で実行可能な加工の内容を特定する加工内容特定情報とを対応付けて記憶しておく機械管理情報記憶手段と、
が備えられていること。
(2)前記木材加工ラインには、前記部品識別情報を取得可能な態様で付与された木材が投入されたときに、当該木材に付与された部品識別情報を取得し、前記制御装置に入力する情報取得装置が備えられていること。
(3)前記制御装置には、前記情報取得装置から入力された部品識別情報を、当該制御装置が制御対象とする加工機の機械識別情報と共に、前記加工制御用サーバに対して送信する識別情報送信手段が備えられていること。
(4)前記加工制御用サーバには、
(4A)前記識別情報送信手段から送信されてきた部品識別情報及び機械識別情報に基づいて前記部品管理情報記憶手段及び機械管理情報記憶手段を検索し、当該部品識別情報に対応する加工データと当該機械識別情報に対応する加工内容特定情報との対応関係から、当該機械識別情報に対応する加工機において、当該部品識別情報が付与された木材に対する加工が存在するか否かを判定する加工有無判定手段と、
(4B)前記加工有無判定手段により加工が存在すると判定されたときは当該加工のための加工動作と加工パラメータとから前記制御指令を生成し、前記加工有無判定手段により加工が存在しないと判定されたときは木材を通過させるための搬送動作となる様に前記制御指令を生成する制御指令生成手段と、
が備えられていること。
【請求項2】
さらに、以下の構成をも備えたことを特徴とする請求項1に記載の木材プレカット加工システム。
(5)前記木材加工ラインには前記加工機及び制御装置が複数台設置されると共に前記情報取得装置が各加工機に対応する様に設置され、前記加工制御用サーバは、これら複数台の各加工機のそれぞれに対応する制御装置に対して制御指令を送信することができる様に構成され、前記機械管理情報記憶手段にはこれら複数台の加工機について機械識別情報と加工内容特定情報とを対応付けて記憶してあること。
【請求項3】
さらに、以下の構成をも備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の木材プレカット加工システム。
(6)前記木材加工ラインが複数設置され、前記加工制御用サーバは、これら複数の木材加工ラインのそれぞれに設置された各加工機の制御装置に対して制御指令を送信することができる様に構成され、前記機械管理情報記憶手段にはこれら複数の木材加工ラインに設置された各加工機について機械識別情報と加工内容特定情報とを対応付けて記憶してあること。
【請求項4】
さらに、以下の構成をも備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の木材プレカット加工システム。
(7)前記制御装置は、当該制御装置における処理の完了状況を前記加工制御用サーバに対して送信する完了状況送信手段をも備え、前記加工制御用サーバは、前記完了状況送信手段から送信されてきた処理の完了状況に基づいて、前記部品管理情報記憶手段の個々の部品の加工完了状況を部品識別情報と対応付けて書き込む完了状況書込手段をも備えていること。
【請求項5】
さらに、以下の構成をも備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の木材プレカット加工システム。
(8)前記加工制御用サーバの前記部品管理情報記憶手段には、少なくとも一つの木材加工ラインに対する前記個々の部品の加工スケジュールを予約する予約情報記憶部が備えられていること。
(9)前記加工制御用サーバの制御指令送信手段は、前記予約情報記憶部の記憶内容によって定まる部品の投入順序に従って、前記部品管理情報記憶手段の記憶内容から加工パラメータと加工の内容を特定すると共に前記機械管理情報記憶手段の記憶内容から前記加工の内容を実行すべき加工機での加工動作を特定し、当該加工動作と前記加工パラメータとから制御指令を生成し、前記特定した加工機の制御装置に対して、前記個々の部品の部品識別情報と当該個々の部品に対する加工データとが前記部品の投入順序に従って設定された一連の木材を加工するための制御指令を予約情報として送信する予約情報送信手段を備えていること。
(10A)前記制御装置は、当該制御装置に対して前記予約情報送信手段から送信された予約情報を加工予約情報として記憶する加工予約情報記憶手段と、前記情報取得装置から部品識別情報が入力されたとき、当該部品識別情報が、前記加工予約情報における部品の投入順序に対応しているか否かを判定し、「対応していない」と判定されたときは当該制御装置の制御対象となっている加工機の機械識別情報と今回入力された部品識別情報とからなる識別情報を前記加工制御用サーバに対して送信する処理を実行する様に構成されていること。
(10B)前記加工制御用サーバは、前記予約情報送信手段によって前記予約情報を送信した後に、前記制御装置の識別情報送信手段から部品識別情報及び機械識別情報を受信したときは、前記制御指令生成手段を作動させると共に、該当する制御装置に対して前記予約情報送信手段によって送信してある制御指令に対して割り込ませる様に、前記制御指令送信手段から制御指令を送信する割込手段をも備えていること。
【請求項6】
一棟の建物において使用される個々の部品へと木材を加工するためにCAD/CAM装置で生成した加工データを記憶する記憶装置と、木材の加工及び搬送制御用として木材加工ラインに設置された制御装置に対して制御指令を送信する制御指令送信手段を備え、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする木材プレカット加工制御用サーバ。
(11)前記記憶装置には、
(11A)前記個々の部品を特定する部品識別情報と、当該部品識別情報によって特定される部品を加工するための加工データとを対応付けて記憶しておく部品管理情報記憶手段と、
(11B)前記制御装置によって制御される加工機を特定する機械識別情報と、当該機械識別情報で特定される加工機で実行可能な加工の内容を特定する加工内容特定情報とを対応付けて記憶しておく機械管理情報記憶手段と、
が備えられていること。
(12)前記制御装置から当該制御装置によって制御される加工機を特定する機械識別情報と、前記部品を特定する部品識別情報とを受信する識別情報受信手段、を備えていること。
(13)前記識別情報受信手段が部品識別情報及び機械識別情報を受信したとき、当該部品識別情報及び機械識別情報に基づいて前記部品管理情報記憶手段及び機械管理情報記憶手段を検索し、当該部品識別情報に対応する加工データと当該機械識別情報に対応する加工内容特定情報との対応関係から、当該機械識別情報に対応する加工機において、当該部品識別情報が付与された木材に対する加工が存在するか否かを判定する加工有無判定手段、を備えていること。
(14)前記加工有無判定手段により加工が存在すると判定されたときは当該加工のための加工動作と加工パラメータとから前記制御指令を生成し、前記加工有無判定手段により加工が存在しないと判定されたときは木材を通過させるための搬送動作となる様に前記制御指令を生成する制御指令生成手段を備えていること。
【請求項7】
さらに、以下の構成をも備えたことを特徴とする請求項6に記載の木材プレカット加工制御用サーバ。
(15)前記制御装置から、当該制御装置における処理の完了状況を受信する完了状況受信手段と、該完了状況受信手段が受信した処理の完了状況に基づいて、前記部品管理情報記憶手段の個々の部品の加工完了状況を部品識別情報と対応付けて書き込む完了状況書込手段と、を備えていること。
【請求項8】
さらに、以下の構成をも備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載の木材プレカット加工制御用サーバ。
(16)前記部品管理情報記憶手段には、少なくとも一つの木材加工ラインに対する前記個々の部品の加工スケジュールを予約する予約情報記憶部が備えられていること。
(17)前記制御指令送信手段は、前記予約情報記憶部の記憶内容によって定まる部品の投入順序に従って、前記部品管理情報記憶手段の記憶内容から加工パラメータと加工の内容を特定すると共に前記機械管理情報記憶手段の記憶内容から前記加工の内容を実行すべき加工機での加工動作を特定し、当該加工動作と前記加工パラメータとから制御指令を生成し、前記特定した加工機の制御装置に対して、前記投入順序に従って処理順序を設定した制御指令を予約情報として送信する予約情報送信手段を備えていること。
(18)前記予約情報送信手段によって前記予約情報を送信した後に、前記制御装置の識別情報送信手段から部品識別情報及び機械識別情報を受信したときは、前記制御指令生成手段を作動させると共に、該当する制御装置に対して前記予約情報送信手段によって送信してある制御指令に対して割り込ませる様に、前記制御指令送信手段から制御指令を送信する割込手段を備えていること。
【請求項9】
加工制御用サーバからの制御指令を受信して、木材加工ラインに設置された加工機及び当該加工機に対して木材を搬入・搬出する搬送装置を駆動制御する制御装置であって、さらに、以下の構成を備えていることを特徴とする木材プレカット加工用制御装置。
(21)前記加工制御用サーバから、個々の部品の部品識別情報と当該個々の部品に対する加工データとが部品の投入順序に従って設定された一連の木材を加工するための制御指令を受信したとき、当該制御指令を加工予約情報として記憶する加工予約情報記憶手段と、当該加工予約情報記憶手段から順次制御指令を読み出して制御対象の加工機及び搬送装置に対して出力する駆動データ出力手段と、を備えていること。
(22)制御対象の加工機において加工する木材の部品識別情報が判明したときに、当該部品識別情報が、前記加工予約情報における前記部品の投入順序に対応しているか否かを判定し、「対応していない」と判定されたときは当該部品識別情報と共に前記制御対象の加工機を特定する機械識別情報を前記加工制御用サーバに対して送信する識別情報送信手段を備えていること。
(23)前記識別情報送信手段から識別情報を送信したときは、前記駆動データ出力手段によるデータ出力を中断又は中止し、前記加工制御用サーバから新たな制御指令が送信されてくるのを待ち、新たな制御指令を受信したときは、前記加工予約情報記憶手段から順次読み出すべき制御指令に対して割り込む様に前記新たな制御指令を追加する制御指令追加手段を備えていること。
【請求項10】
さらに、以下の構成をも備えたことを特徴とする請求項9に記載の木材プレカット加工用制御装置。
(24)制御対象となっている加工機における処理の完了状況を前記加工制御用サーバに対して送信する完了状況送信手段をも備えていること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材プレカット加工設備において、設置された加工機を効率的に使用するための木材プレカット加工システム、木材プレカット加工制御用サーバ及び木材プレカット加工用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図14(A)に示す様に、切断機、縦加工機、横加工機、溝加工機、及び木口加工機を、木材を搬入コンベア、中間コンベア及び搬出コンベアと、各加工機へと木材を縦送りするラインコンベアとを備え、切断機の上流側で木材の形状を測定し、この測定結果を製品形状データと比較して木材が加工可能なものであるか否かを判断し、加工可能なものである場合には、予め記憶されている製品形状データの中から最も歩留まり良く加工できる木材の製品形状を選択し、この製品形状へと木材が加工されるように各加工機に駆動指令を出すための制御器を備えた自動加工装置が提案されている(特許文献1)。この特許文献1の装置では、図中に「白抜き矢印」で示す様に、搬入コンベアから搬出コンベアまでの各加工機の設置位置を通るルートを搬送される間に、木材に対して加工が実行される。
【0003】
また、図14(B)に示す様に、定尺切断機、側面加工機、木口加工機を直列のコンベアラインと、このコンベアラインを分岐した並列のコンベアラインによって連結すると共に、コンベアラインによって移送される加工材の適所にバーコードを貼付し、このバーコードを読み取るバーコードリーダを各加工機の上流側に設け、バーコードリーダに読み取られたバーコード情報によって制御装置からプログラムデータを引き出し、引き出されたデータによって各加工機の制御駆動とコンベアラインによる選択移送を行うようにした木造建築材加工装置の提案もある(特許文献2)。この特許文献2の装置では、バーコード情報に従って読み出したプログラムデータに基づいて、側面加工が有るときはストッパを作動させて「白抜き矢印」で示すルートで側面加工機へと木材を搬送し、側面加工がないときはストッパを作動させずに「片ハッチ入り矢印」で示すルートで側面加工機をパスし、木口加工が存在する場合は木口加工機の設置箇所で「クロスハッチ入り矢印」で示す縦送りを行う反面、木口加工が存在しない場合は「白抜き矢印」の横送りでそのまま木材を搬出する制御が行われることとなる。
【0004】
さらに、図14(C)に示す様に、第1加工装置と第2加工装置の2台の加工機を並列に備えると共に、さらに必要に応じて表面仕上げを行う超仕上げ装置をも備え、読み取り装置によって木材に貼付されたシールを読み取り、その読み取り結果に応じて第1の分岐部で加工装置の振り分けを行い、第1,第2の加工装置の一方で加工を行った後、合流位置から印字装置へと搬送して番付印字を実行した後に第2分岐部へと搬送し、表面の鉋がけ等の後処理が必要な木材は超仕上げ装置へと分岐させる様に構成した木材加工システムの提案もある(特許文献3)。このシステムでは、並列に設置された第1,第2の加工装置のいずれで加工を行うか等の加工順位と識別情報とを対応付けてコンピュータに記憶させておくと共に、印字装置への到達順序を判断して、先に到達する方の木材に対する印字データを印字装置に送出している。このため、第1の分岐部においては、第1の加工装置で加工する「白抜き矢印」の方向へ、第2の加工装置で加工する木材は「片ハッチ矢印」の方向へ搬送され、第2の分岐部においては、超仕上げの必要な木材は「クロスハッチ矢印」の方向への搬送動作が追加されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平2−27922
【特許文献2】特開平4−331052
【特許文献3】特開2000−343461
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3の技術によれば、機械へのマニュアル入力をすることなく木材のプレカット加工を行うことができる効果が発揮される。
【0007】
しかし、特許文献1の技術では、スケジュール通りに木材が投入される場合にも測定を行う必要があり、プレカット工場の稼働率が低くなってしまうという問題がある。
【0008】
特許文献2の技術では、木材搬送路を最短にすることができる反面、搬送ラインを複雑な構成としなければならず、工場設備のレイアウトが制約されるという問題がある。
【0009】
特許文献3の技術では、印字装置への到達順序を演算しなければならないと共に、何らかのトラブルで先に到達するはずの木材が先に到達しなかったときは間違った情報を印字してしまうおそれがある。
【0010】
そこで、本願出願人は、木材加工ラインに設置された各加工機及び搬送装置を個々に制御するシーケンサに対して、木材投入スケジュールに従って、制御装置からスケジュール化した制御指令を予約入力しておき、この予約された制御指令を各シーケンサが順次読み出して加工を実行することで、工場の稼働率を向上するシステムを提案している(例えば、特開2009−48438)。この出願のシステムでは、さらに、複数台の同種加工機の稼働状況を考慮して、加工に用いる加工機の振り分けも行うことで、さらに、工場の稼働率向上を図っている。
【0011】
ところが、スケジュール化した加工以外に、例えば、一部の部品について、加工のやり直しを行おうとしたり、スケジュールの途中に割り込ませ様としたりする場合、その都度マニュアル入力等を行う必要がある。また、実際のプレカット工場においては、柱材加工ライン、横架材加工ライン、羽柄材加工ラインなどの専用ラインを別々に備えていたり、柱材の加工も横架材の加工もできる複合ラインを備えていたり、同種の加工ラインを複数備えていたり、といった具合に様々な設備状況となっている。そして、工場の稼働率は、加工機の刃物の交換などにも影響を受け、同系統(例えば横架材)の加工ラインが複数ある場合に、当初予定していた加工ラインで刃物交換が必要になったときに、当初予定していなかった同系統の別のラインに変更して加工したいという要望もある。
【0012】
そこで、本発明は、予定していた加工順番を変更する必要が生じたり、加工ラインの変更や、割り込みや追加の加工が発生するなどといった稼働状況の複雑な変化に対しても、機械へのマニュアル入力を要さずに対応することができ、プレカット工場の設備全体を効率よく使用し、効率的なプレカット工場の稼働状況を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためになされた本発明の木材プレカット加工システムは、固有の機械識別情報が割り当てられた加工機、当該加工機に対して木材を搬入・搬出する搬送装置、及び前記加工機及び搬送装置を駆動制御する制御装置を備えた木材加工ラインと、一棟の建物において使用される個々の部品へと木材を加工するためにCAD/CAM装置で生成した加工データを記憶する記憶装置、及び前記制御装置に対して制御指令を送信する制御指令送信手段を備えた加工制御用サーバと、を備え、さらに、以下の構成をも備えたことを特徴とする。
(1)前記加工制御用サーバの前記記憶装置には、
(1A)前記個々の部品を特定する部品識別情報と、当該部品識別情報によって特定される部品を加工するための加工データとを対応付けて記憶しておく部品管理情報記憶手段と、
(1B)前記機械識別情報と、当該機械識別情報で特定される加工機で実行可能な加工の内容を特定する加工内容特定情報とを対応付けて記憶しておく機械管理情報記憶手段と、
が備えられていること。
(2)前記木材加工ラインには、前記部品識別情報を取得可能な態様で付与された木材が投入されたときに、当該木材に付与された部品識別情報を取得し、前記制御装置に入力する情報取得装置が備えられていること。
(3)前記制御装置には、前記情報取得装置から入力された部品識別情報を、当該制御装置が制御対象とする加工機の機械識別情報と共に、前記加工制御用サーバに対して送信する識別情報送信手段が備えられていること。
(4)前記加工制御用サーバには、
(4A)前記識別情報送信手段から送信されてきた部品識別情報及び機械識別情報に基づいて前記部品管理情報記憶手段及び機械管理情報記憶手段を検索し、当該部品識別情報に対応する加工データと当該機械識別情報に対応する加工内容特定情報との対応関係から、当該機械識別情報に対応する加工機において、当該部品識別情報が付与された木材に対する加工が存在するか否かを判定する加工有無判定手段と、
(4B)前記加工有無判定手段により加工が存在すると判定されたときは当該加工のための加工動作と加工パラメータとから前記制御指令を生成し、前記加工有無判定手段により加工が存在しないと判定されたときは木材を通過させるための搬送動作となる様に前記制御指令を生成する制御指令生成手段と、
が備えられていること。
【0014】
ここで、木材に付与する「部品識別情報」は、一棟の建物において使用される際の部品を識別する情報であれば足りる。この情報には、○○邸等の物件名、柱、梁等の部品名などを含ませることもできる。これらを区別し得るコード情報だけで構成してもよい。なお、部品識別情報には、その加工形状などの情報まで含ませておく必要はないが、もちろん、加工形状などの情報を含ませてもよい。
【0015】
「部品識別情報」は、望ましくは、RFID等の非接触読み取り式のICタグによって付与するとよい。非接触式ICタグであれば、粉塵等の存在する木材プレカット工場においても的確に部品識別情報を読み取ることができる。また、木材への貼付位置の精度も要求されることがない。なお、本発明は、印字によって施されるバーコード、二次元バーコード等を用いて画像読み取りによって情報を読み取らせる様にする手段を用いてもよい。
【0016】
本発明の木材プレカット加工システムは、加工制御用サーバ側に、(1A)部品管理情報記憶手段と、(1B)機械管理情報記憶手段とを備えている。
【0017】
「(1A)部品管理情報記憶手段」には、「部品識別情報」と対応付けて「加工データ」が記憶される。「加工データ」としては、例えば、ほぞ、ほぞ穴、錐穴、持たせ、掛け等の「加工の種類」、「加工の寸法」、「加工の位置」などをあげることができる。「加工の種類」は加工に用いる「刃物の種類」で特定されていてもよい。また、複数の加工を施す場合に、その「加工順」を含ませておくこともできる。どの部品にはどの様な加工を施すかを部品識別情報から特定できる様になっていれば足りる。
【0018】
「(1B)機械管理情報記憶手段」には、「機械識別情報」と対応付けて各加工機が実行可能な加工の内容を特定する「加工内容特定情報」が記憶される。「加工内容特定情報」としては、加工機が備えている「刃物の種類」、「加工可能な面」、「加工可能な寸法」などをあげることができる。「刃物の種類」は上述の「加工の種類」とされていてもよい。その加工機でどの様な加工が実行できるのかが特定できる様になっていれば足りる。
【0019】
本発明の木材プレカット加工システムによれば、木材加工ラインへの木材の投入が開始されると、情報取得装置で木材に付与された部品識別情報が取得され、制御装置へと入力される。すると、制御装置は、識別情報送信手段を作動させて、この部品識別情報を当該制御装置が制御対象とする加工機の機械識別情報と共に加工制御用サーバへと送信する。
【0020】
加工制御用サーバでは、制御装置から送信されてきた部品識別情報及び機械識別情報に基づいて部品管理情報記憶手段及び機械管理情報記憶手段を検索し、加工有無判定手段によって、当該部品識別情報に対応する加工データと当該機械識別情報に対応する加工内容特定情報との対応関係から、当該機械識別情報に対応する加工機において、当該部品識別情報が付与された木材に対する加工が存在するか否かを判定する。そして、制御指令生成手段を作動させ、(イ)加工有無判定手段により加工が存在すると判定されたときは当該加工のための加工動作と加工パラメータとから制御指令を生成し、(ロ)加工有無判定手段により加工が存在しないと判定されたときは木材を通過させるための搬送動作となる様に制御指令を生成する。そして、この制御指令生成手段が生成した制御指令を、制御指令送信手段を介して制御装置へと送信する。
【0021】
制御装置は、加工制御用サーバからの制御指令を受けて、送られてきた制御指令が上述の(イ)の場合は制御対象の加工機及び搬送装置を駆動制御して木材に対する加工を行い、送られてきた制御指令が上述の(ロ)の場合は搬送装置だけを駆動制御して木材を通過させる。
【0022】
この結果、本発明の木材プレカット加工システムによれば、何らかの事情で木材の投入順序が変わったとしても、木材に付与されている部品識別情報に基づいて適切な加工を実行することができる。
【0023】
ここで、本発明の木材プレカット加工システムは、さらに、以下の構成をも備える場合により効果的となる。
(5)前記木材加工ラインには前記加工機及び制御装置が複数台設置されると共に前記情報取得装置が各加工機に対応する様に設置され、前記加工制御用サーバは、これら複数台の各加工機のそれぞれに対応する制御装置に対して制御指令を送信することができる様に構成され、前記機械管理情報記憶手段にはこれら複数台の加工機について機械識別情報と加工内容特定情報とを対応付けて記憶してあること。
【0024】
例えば、上下面加工機、側面加工機、木口加工機等を備えた木材加工ラインにおいて、投入された木材が、上下面加工も側面加工もなく、木口加工のみの必要な部品であれば、加工制御用サーバからは、上下面加工機及び側面加工機の制御装置に対しては上述の(ロ)の制御指令が送信され、木口加工機には上述の(イ)の制御指令が送信され、上下面加工機及び側面加工機は通過して木口加工機で加工が行われる。逆に、全ての加工機において加工を行うべき部品であるなら、全ての加工機の制御装置に対して、各加工機において実行すべき加工動作及び加工パラメータによって生成された制御指令が個々の制御装置に送信され、各加工機毎でなすべき加工が順次実行される。そして、これらの加工が、割り込みや追加の部品であっても正しく実行される。
【0025】
また、木材の搬送ルートは一定にしておくことができるから、工場設備のレイアウトを制約されることがない。さらに、搬送ルートの途中で木材が投入された場合も、当該投入位置の下流にある情報取得装置で部品識別情報を取得することにより、投入位置の下流の加工機で行うべき加工の有無を的確に判定して正しい加工を実行することができる。
【0026】
これは、部品識別情報と機械識別情報が入力されたときに加工制御用サーバで加工動作と加工パラメータとに対応する制御指令を生成する構成となっているからこそ実現できるものである。この様な制御指令を生成することができるのは、加工制御用サーバの記憶装置に、「(1A)個々の部品を特定する部品識別情報と、当該部品識別情報によって特定される部品を加工するための加工データとを対応付けて記憶しておく部品管理情報記憶手段」と、「(1B)機械識別情報と、当該機械識別情報で特定される加工機で実行可能な加工の内容を特定する加工内容特定情報とを対応付けて記憶しておく機械管理情報記憶手段」と、を備えさせたからである。部品識別情報毎の制御指令を先に生成して記憶しておき、部品識別情報が入力されたときにこれを読み出して出力するといった特許文献2,3のシステムでは、この様な作用・効果を発揮することができないのである。
【0027】
なお、工場レイアウトに余裕があり、分岐ラインを備えた木材加工ラインとなっていることを妨げるものではない。この場合、制御装置は、分岐部分のルート切替器を特定する識別情報も加工制御用サーバに送信し、加工制御用サーバの記憶装置には、ルート切替器の識別情報とルート毎の加工機の設置状況を対応付けた情報も記憶させておき、ルート切替器の識別情報から、当該ルート切替器の下流側における加工機の設置状況と、部品識別情報に対応する加工内容とを考慮して、ルート切替器に対する制御指令も合わせて生成する様に構成しておけばよい。
【0028】
これら本発明の木材プレカット加工システムは、さらに、以下の構成をも備えることができる。
(6)前記木材加工ラインが複数設置され、前記加工制御用サーバは、これら複数の木材加工ラインのそれぞれに設置された各加工機の制御装置に対して制御指令を送信することができる様に構成され、前記機械管理情報記憶手段にはこれら複数の木材加工ラインに設置された各加工機について機械識別情報と加工内容特定情報とを対応付けて記憶してあること。
【0029】
かかる構成をも備えることにより、複数の加工ラインを有する工場においては、木材加工ラインを固定してしまうことなく、その日の加工予定に応じて、木材を投入する木材加工ラインを適宜選択したとしても、加工制御用サーバは、部品識別情報と機械識別情報を送信してきた制御装置に対して、上述の様に生成した制御指令を送信するから、どのラインであるかに拘わらず、適切な加工を実行させることができる。
【0030】
この結果、本発明の木材プレカット加工システムによれば、何らかの事情で木材の投入順序が変わったとしても、木材に付与されている部品識別情報に基づいて適切な加工を実行することができるだけでなく、横架材加工ラインに対して穴開けをすべき羽柄部品が投入されたとしても、投入された位置の加工機が当該穴開けを実行可能な加工機であれば、加工を行うことも可能となり、かつ、同系統の木材加工ラインを複数備えている工場では、その日の作業状況に応じて、木材加工ラインを同系統の別の木材加工ラインに変更しても適切な加工を遂行することができる。
【0031】
よって、本発明の木材プレカット加工システムによれば、予め予定していた加工順番を変更する必要が生じたり、稼働状況を考慮した加工ラインの変更や、割り込みや追加の加工が発生するなど、工場の稼働状況が複雑に変化しても、プレカット工場に設置された加工機を効率よく使用し、的確に対応することができ、効率的なプレカット工場の稼働状況を実現することができる。
【0032】
また、これら本発明の木材プレカット加工システムは、さらに、以下の構成をも備えるとよい。
(7)前記制御装置は、当該制御装置における処理の完了状況を前記加工制御用サーバに対して送信する完了状況送信手段をも備え、前記加工制御用サーバは、前記完了状況送信手段から送信されてきた処理の完了状況に基づいて、前記部品管理情報記憶手段の個々の部品の加工完了状況を部品識別情報と対応付けて書き込む完了状況書込手段をも備えていること。
【0033】
かかる構成をも備えることにより、制御装置側では、当該制御装置における処理の完了状況を、完了状況送信手段を介して加工制御用サーバに対して送信することができる。そして、加工制御用サーバ側では、完了状況送信手段から完了状況が送信されてきたら、完了状況書込手段を作動させて、部品管理情報記憶手段の個々の部品の加工完了状況を部品識別情報と対応付けて書き込む。これにより、順番の変更や割り込みによって既に加工した部品を再度加工してしまうことがなくなると共に、加工順番を変更した様な場合におけるスケジュール管理も可能となり、柔軟な加工順番の変更を許容したために新たな問題が生じるといったことまで防止することができる。
【0034】
さらに、これら本発明の木材プレカット加工システムは、さらに、以下の構成をも備えるとよい。
(8)前記加工制御用サーバの前記部品管理情報記憶手段には、少なくとも一つの木材加工ラインに対する前記個々の部品の加工スケジュールを予約する予約情報記憶部が備えられていること。
(9)前記加工制御用サーバの制御指令送信手段は、前記予約情報記憶部の記憶内容によって定まる部品の投入順序に従って、前記部品管理情報記憶手段の記憶内容から加工パラメータと加工の内容を特定すると共に前記機械管理情報記憶手段の記憶内容から前記加工の内容を実行すべき加工機での加工動作を特定し、当該加工動作と前記加工パラメータとから制御指令を生成し、前記特定した加工機の制御装置に対して、前記個々の部品の部品識別情報と当該個々の部品に対する加工データとが前記部品の投入順序に従って設定された一連の木材を加工するための制御指令を予約情報として送信する予約情報送信手段を備えていること。
(10A)前記制御装置は、当該制御装置に対して前記予約情報送信手段から送信された予約情報を加工予約情報として記憶する加工予約情報記憶手段と、前記情報取得装置から部品識別情報が入力されたとき、当該部品識別情報が、前記加工予約情報における部品の投入順序に対応しているか否かを判定し、「対応していない」と判定されたときは当該制御装置の制御対象となっている加工機の機械識別情報と今回入力された部品識別情報とからなる識別情報を前記加工制御用サーバに対して送信する処理を実行する様に構成されていること。
(10B)前記加工制御用サーバは、前記予約情報送信手段によって前記予約情報を送信した後に、前記制御装置の識別情報送信手段から部品識別情報及び機械識別情報を受信したときは、前記制御指令生成手段を作動させると共に、該当する制御装置に対して前記予約情報送信手段によって送信してある制御指令に対して割り込ませる様に、前記制御指令送信手段から制御指令を送信する割込手段をも備えていること。
【0035】
(8),(9)の構成をも備えることにより、加工スケジュールを予約しておき、これに従って木材を投入する方法によってプレカット加工を行うという従来の作業方法にも対応することができる。そして、(10A),(10B)の構成をも備えることにより、こうした事前の予定に対して割り込みによる加工が発生したとしても、これに対応して、割り込みによる加工を実行することができる。また、A様邸、B様邸という順番を予定して予めスケジュールを予約しておいたときにも、部品識別情報を付与した木材を投入することにより、B様邸、A様邸という順番に変更することにもスムーズに対応することができる。さらに、同種の木材加工ラインを複数ライン(例えば、A側ラインとB側ラインの2ライン)を備えている工場において、当初はA側ラインで加工する予定で予約しておいた場合に、例えばA側ラインでの刃物交換が必要になった様なときにB側ラインが空いていれば、部品識別情報を付与した木材をB側ラインに投入することによって、予約とは異なる順番となってもB側ラインでスムーズに問題なく加工を実行することができる。同様に、羽柄材に穴開けをしたいときに、羽柄加工ライン以外の加工ラインで穴開けが可能な場合に、当該羽柄用の木材に部品識別情報を付与して穴開け可能な加工ラインに投入することで、羽柄材の穴開けを割り込ませるといったことも可能になる。
【0036】
また、上記システムを実現して本発明の目的を達成するためになされた木材プレカット加工制御用サーバは、一棟の建物において使用される個々の部品へと木材を加工するためにCAD/CAM装置で生成した加工データを記憶する記憶装置と、木材の加工及び搬送制御用として木材加工ラインに設置された制御装置に対して制御指令を送信する制御指令送信手段を備え、さらに、以下の構成を備えていることを特徴とする。
(11)前記記憶装置には、(11A)前記個々の部品を特定する部品識別情報と、当該部品識別情報によって特定される部品を加工するための加工データとを対応付けて記憶しておく部品管理情報記憶手段と、(11B)前記制御装置によって制御される加工機を特定する機械識別情報と、当該機械識別情報で特定される加工機で実行可能な加工の内容を特定する加工内容特定情報とを対応付けて記憶しておく機械管理情報記憶手段と、が備えられていること。
(12)前記制御装置から当該制御装置によって制御される加工機を特定する機械識別情報と、前記部品を特定する部品識別情報とを受信する識別情報受信手段、を備えていること。
(13)前記識別情報受信手段が部品識別情報及び機械識別情報を受信したとき、当該部品識別情報及び機械識別情報に基づいて前記部品管理情報記憶手段及び機械管理情報記憶手段を検索し、当該部品識別情報に対応する加工データと当該機械識別情報に対応する加工内容特定情報との対応関係から、当該機械識別情報に対応する加工機において、当該部品識別情報が付与された木材に対する加工が存在するか否かを判定する加工有無判定手段、を備えていること。
(14)前記加工有無判定手段により加工が存在すると判定されたときは当該加工のための加工動作と加工パラメータとから前記制御指令を生成し、前記加工有無判定手段により加工が存在しないと判定されたときは木材を通過させるための搬送動作となる様に前記制御指令を生成する制御指令生成手段を備えていること。
【0037】
かかる構成に加えて、本発明の木材プレカット加工制御用サーバは、さらに、以下の構成をも備えるとよい。
(15)前記制御装置から、当該制御装置における処理の完了状況を受信する完了状況受信手段と、該完了状況受信手段が受信した処理の完了状況に基づいて、前記部品管理情報記憶手段の個々の部品の加工完了状況を部品識別情報と対応付けて書き込む完了状況書込手段と、を備えていること。
【0038】
これら本発明の木材プレカット加工制御用サーバは、さらに、以下の構成をも備えるとよい。
(16)前記部品管理情報記憶手段には、少なくとも一つの木材加工ラインに対する前記個々の部品の加工スケジュールを予約する予約情報記憶部が備えられていること。
(17)前記制御指令送信手段は、前記予約情報記憶部の記憶内容によって定まる部品の投入順序に従って、前記部品管理情報記憶手段の記憶内容から加工パラメータと加工の内容を特定すると共に前記機械管理情報記憶手段の記憶内容から前記加工の内容を実行すべき加工機での加工動作を特定し、当該加工動作と前記加工パラメータとから制御指令を生成し、前記特定した加工機の制御装置に対して、前記投入順序に従って処理順序を設定した制御指令を予約情報として送信する予約情報送信手段を備えていること。
(18)前記予約情報送信手段によって前記予約情報を送信した後に、前記制御装置の識別情報送信手段から部品識別情報及び機械識別情報を受信したときは、前記制御指令生成手段を作動させると共に、該当する制御装置に対して前記予約情報送信手段によって送信してある制御指令に対して割り込ませる様に、前記制御指令送信手段から制御指令を送信する割込手段を備えていること。
【0039】
また、上記システムを実現して本発明の目的を達成するためになされた木材プレカット加工用制御装置は、加工制御用サーバからの制御指令を受信して、木材加工ラインに設置された加工機及び当該加工機に対して木材を搬入・搬出する搬送装置を駆動制御する制御装置であって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする。
(21)前記加工制御用サーバから、個々の部品の部品識別情報と当該個々の部品に対する加工データとが部品の投入順序に従って設定された一連の木材を加工するための制御指令を受信したとき、当該制御指令を加工予約情報として記憶する加工予約情報記憶手段と、当該加工予約情報記憶手段から順次制御指令を読み出して制御対象の加工機及び搬送装置に対して出力する駆動データ出力手段と、を備えていること。
(22)制御対象の加工機において加工する木材の部品識別情報が判明したときに、当該部品識別情報が、前記加工予約情報における前記部品の投入順序に対応しているか否かを判定し、「対応していない」と判定されたときは当該部品識別情報と共に前記制御対象の加工機を特定する機械識別情報を前記加工制御用サーバに対して送信する識別情報送信手段を備えていること。
(23)前記識別情報送信手段から識別情報を送信したときは、前記駆動データ出力手段によるデータ出力を中断又は中止し、前記加工制御用サーバから新たな制御指令が送信されてくるのを待ち、新たな制御指令を受信したときは、前記加工予約情報記憶手段から順次読み出すべき制御指令に対して割り込む様に前記新たな制御指令を追加する制御指令追加手段を備えていること。
【0040】
かかる構成を備えた本発明の木材プレカット加工用制御装置は、さらに、以下の構成をも備えるとよい。
(24)制御対象となっている加工機における処理の完了状況を前記加工制御用サーバに対して送信する完了状況送信手段をも備えていること。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、プレカット工場に設置された加工機を効率よく使用し、予定変更等があっても的確に対応することができ、効率的なプレカット工場の稼働状況を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】実施例1を示し、(A)はシステム構成図、(B)は投入する木材を例示する説明図である。
図2】実施例1における加工制御用サーバの記憶装置への記憶内容を示し、(A)は部品管理テーブルの説明図、(B)は機械管理テーブルの説明図である。
図3】実施例1におけるシーケンサ側での制御処理の内容を示すフローチャートである。
図4】実施例1における加工制御用サーバ側での制御指令生成・送信処理の内容を示すフローチャートである。
図5】実施例1における加工制御用サーバ側での加工状況更新処理の内容を示すフローチャートである。
図6】実施例2のシステム構成図である。
図7】実施例2におけるシーケンサ側での制御処理の内容を示すフローチャートである。
図8】実施例2における加工制御用サーバ側での制御指令生成・送信処理の内容を示すフローチャートである。
図9】実施例2における加工制御用サーバ側でのICタグ再発行処理の内容を示すフローチャートである。
図10】実施例3のシステム構成図である。
図11】実施例3における加工制御用サーバの記憶装置への記憶内容を示し、(A)は部品管理テーブルの説明図、(B)は機械管理テーブルの説明図である。
図12】実施例4のシステム構成図である。
図13】(A)は実施例5のシステム構成図、(B)は実施例6のシステム構成図である。
図14】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、本発明の木材プレカット加工制御用サーバ及び木材プレカット加工用制御装置を備えさせることによって本発明を適用した木材プレカット加工システムについての実施例を説明する。
【実施例1】
【0044】
実施例1の木材プレカット加工システム1は、図1(A)に示す様に、機械識別番号K010101が割り当てられた切断機10と、機械識別番号K010201が割り当てられた中間加工機20と、機械識別番号K010301が割り当てられた木口加工機30と、これらの加工機に対して木材を搬入・搬出するためのラインコンベア41,42,43,44と、投入コンベア51及び排出コンベア52とを備えた木材加工ライン100と、この木材加工ライン100の各加工機毎に設置されたプレカット加工用シーケンサ11,21,31に対して制御指令を送信する加工制御用サーバ200とから構成されている。
【0045】
木材加工ライン100には、各加工機10,20,30の上流位置に部品ID読取装置12,22,32も設置されている。これら部品ID読取装置12,22,32は、ラインコンベア上を搬送されてきた木材Wに対して、図1(B)に例示する様に、所定位置に付されているICタグTから部品識別番号(部品ID)を読み取って、シーケンサ11,21,31に対して入力する。
【0046】
本実施例においては、一棟の建物において使用される個々の部品(B0010101001:A様邸の柱の1番、B0020101001:B様邸の柱の1番など)を識別可能な部品識別番号を記録したICタグTが予め所定位置に貼付された状態の木材Wを、木材加工ライン100に投入することとしている。
【0047】
加工制御用サーバ200の記憶装置には、図2(A)に示す様に、これら部品識別番号に対応付けて、部品種類,加工内容(寸法や形状など),物件名その他の情報からなる部品情報と、当該部品の木材加工ライン100における予約情報と、当該部品の加工状況とを記憶する部品管理テーブル300が記憶されている。ここで、予約情報としては、木材加工ライン100における木材Wの通過ルート、当該通過ルートに設置されている機械毎での加工の内容及び加工の順番が記憶される。なお、通過ルート中に設置されている機械であっても、何も加工を行わず木材Wを通過させるだけとなっている場合もある。
【0048】
加工制御用サーバ200の記憶装置には、図2(B)に示す様に、機械識別番号に対応付けて、機械名と、当該機械によって実行可能な加工と、加工命令作成手順とを記憶する機械管理テーブル400も記憶されている。図示の様に、各加工機10,20,30は、機種によって備えている加工軸、刃物等の種類に応じて、可能な加工と、各加工を実行する場合の加工命令作成手順が対応している。このため、加工制御用サーバ200の記憶装置には、木材を所定の加工形状に仕上げるための機械動作命令群(例えば、刃物の移動ルートの指示など)が、加工形状単位(例えば、腰掛け蟻など)に一般化されて加工命令作成手順として登録されている。実際に加工するときは、これに加工パラメータをあてはめて、加工のための制御指令(後述)を生成する。
【0049】
各シーケンサ(11,21又は31。以下、同じ。)は、図3に示す様に、上流から流れてくる木材Wが、部品ID読取装置(12,22又は32。以下、同じ。)に近づいてきて、当該部品ID読取装置が木材Wに貼付されたICタグTと通信可能になったと判定したとき(S10:YES)、部品ID読取装置に対して部品識別番号(部品ID)の読み取りを命令する(S20)。部品ID読取装置は、木材Wに付されているICタグTから部品識別番号を読み取って、シーケンサへと入力する。
【0050】
シーケンサは、部品ID読取装置から部品識別番号が入力されると(S30:YES)、当該部品識別番号と、制御対象となっている加工機の機械識別番号とからなる識別情報を加工制御用サーバ200に対して送信する(S40)。
【0051】
その後、シーケンサは、加工制御用サーバ200から制御指令が送信されて来るのを待ち(S50)、送信されてきたら(S50:YES)、当該制御指令に基づいて制御対象の加工機及びラインコンベア等を駆動制御する(S60)。そして、シーケンサは、当該制御命令に対応する駆動制御が完了したら(S70:YES)、加工制御用サーバ200に対して完了状況を送信する(S80)。
【0052】
加工制御用サーバ200は、図4に示す様に、シーケンサから識別情報を受信すると(S110:YES)、部品識別番号に基づいて部品管理テーブル300を検索し、当該部品識別番号に対応する部品を特定する(S120)。そして、加工制御用サーバ200は、当該部品の加工状況欄の登録状況に基づいて、未完了の加工が存在するか否かを判定する(S130)。
【0053】
加工制御用サーバ200は、未完了の加工が存在すると判定したとき(S130:YES)、部品管理テーブル300から、当該部品における未完了の加工を全て抽出する(S140)。次に、加工制御用サーバ200は、今回受信した識別情報の機械識別番号に基づいて機械管理テーブル400を検索し、機械を特定する(S150)。そして、加工制御用サーバ200は、当該機械において実行可能な加工の内容と、S140で抽出した未完了の加工との対応関係から、当該機械で実行可能な加工が存在するか否かを判定する(S160)。
【0054】
加工制御用サーバ200は、実行可能な加工が存在すると判定したとき(S160:YES)、実行可能と判定した加工内容に対応する未完了の加工を全て抽出する(S170)。続いて、加工制御用サーバ200は、実行可能と判定した加工内容に対応する加工動作のための加工命令作成手順を読み出すと共に、S170で抽出した未完了の加工に関するパラメータを用いて制御指令を生成し(S180)、この制御指令を、識別情報を送信してきたシーケンサに対して送信する(S190)。
【0055】
一方、S130又はS160の判定が「NO」の場合は、通過動作のための制御指令を生成し(S185)、当該通過動作のための制御指令を、識別情報を送信してきたシーケンサに対して送信する(S190)。
【0056】
識別情報を送信したシーケンサは、このS190の処理によって加工制御用サーバ200から送信されてきた制御指令を受信すると(S50:YES)、S60及びS70の処理を実行し、完了状況を加工制御用サーバ200に対して送信する(S80)。このとき、シーケンサは、完了状況として、完了した加工の内容を特定できる様に、部品識別番号及び機械識別番号と、加工を個別に識別可能な加工識別番号のうち、今回の加工が完了した加工識別番号とを送信する。
【0057】
加工制御用サーバ200は、図5に示す様に、シーケンサから完了状況を受信すると(S210:YES)、部品識別番号に基づいて部品管理テーブル300を検索し、当該部品識別番号に対応する部品と加工を特定する(S220)。そして、加工制御用サーバ200は、当該部品の当該加工に対応する加工状況欄に完了を記入すると共に(S230)、加工状況の更新が完了したことをS210で完了状況を送信してきたシーケンサへと返信する(S230)。
【0058】
以上説明した様に、実施例1の木材プレカット加工システム1によれば、木材加工ライン100への木材Wの投入が開始されると、部品ID読取装置で木材Wに付されたICタグTから部品識別番号が読み取られ、シーケンサへと入力される。すると、シーケンサは、S40以降の処理を実行して、部品識別番号を当該シーケンサが制御対象とする加工機の機械識別番号と共に加工制御用サーバ200へと送信する(S20〜S40)。
【0059】
加工制御用サーバ200では、シーケンサから送信されてきた識別情報(部品識別番号及び機械識別番号)に基づいて部品管理テーブル300及び機械管理テーブル400を検索し、加工の有無を判定する(S120〜S160)。そして、実行可能な加工があると判定されたときは、当該加工のための加工動作と加工パラメータとから制御指令を生成し(S160:YES→S170,S180)、一方、実行可能な加工が存在しないと判定されたときは木材Wを通過させるための搬送動作となる様に制御指令を生成する(S160:NO→S185)。そして、S180又はS185で生成した制御指令をシーケンサへと送信する(S190)。
【0060】
シーケンサは、加工制御用サーバ200からの制御指令を受けると(S50:YES)、送られてきた制御指令がS180で生成したものである場合は制御対象の加工機、ラインコンベア等を駆動制御して木材Wに対する加工を行い、送られてきた制御指令がS185で生成されたものである場合は、ラインコンベアだけを駆動制御して木材Wを通過させる(S60)。
【0061】
こうして制御指令に対応する駆動制御を実行し終えたら、シーケンサは完了状況を加工制御用サーバ200に対して送信し(S70,S80)、これを受信した加工制御用サーバ200は、部品管理テーブル300の加工状況記入欄の更新を実行する(S210〜S230)。本実施例では、さらに、加工制御用サーバ200は、更新完了をシーケンサへと返信することとしている(S240)。この返信を受けたシーケンサは、一時記憶していた完了状況並びに制御指令を消去する。
【0062】
この実施例では、各加工機10,20,30の上流位置に部品ID読取装置12,22,32を設置しているので、加工ライン内の上流の加工機を飛ばし、途中の加工機に対して木材Wが投入された場合にも、上述した制御処理を実行することができる。
【0063】
この結果、本実施例の木材プレカット加工システム1によれば、何らかの事情で加工ラインにおける木材Wの投入順序が変わったとしても、木材Wに付されているICタグTに基づいて適切な加工を実行することができる。また、加工ラインの途中の加工機から飛び入りさせることもできると共に、既に加工が完了したことを加工状況記入欄の更新によって記録できる。この結果、割り込みや追加の部品であっても正しく加工することができ、かつ、加工残りがあるか否かも的確に把握することができる。さらに、加工残りがあると勘違いして木材Wを投入した場合にも、加工状況記入欄が更新されていることにより、既に加工済みの加工を当該木材Wに対して再度加工することを防止できるので、部品を損傷させるといったこともない。
【実施例2】
【0064】
実施例2の木材プレカット加工システム2は、図6に示す様に、システムに備わっている機器並びに全体の構成は実施例1と同様である。また、部品管理テーブル300及び機械管理テーブル400も実施例1と同様の構成のものが加工制御用サーバ200に記憶してある点も同様である。さらに、木材Wに対してICタグTを付して投入する点も同じである。
【0065】
実施例2の木材プレカット加工システム2における加工制御用サーバ200は、部品管理テーブル300の予約情報に基づいて、予め、各シーケンサに対して予約指令を送信し、各シーケンサはこの予約指令をスケジュールデータとして記憶した状態での加工を基本とする点が実施例1と異なっている。なお、この予約指令は、部品識別番号も含まれたものとなっている。
【0066】
このため、各シーケンサは、図7に示す様に、加工制御用サーバ200からの予約指令を受信すると(S310:YES)、この予約指令を加工スケジュールとして記憶する(S320)。そして、上流から流れてくる木材Wが、部品ID読取装置に近づいてきて、当該部品ID読取装置が木材Wに貼付されたICタグTと通信可能になったと判定したとき(S330:YES)、部品ID読取装置に対して部品識別番号(部品ID)の読み取りを命令する(S340)。
【0067】
シーケンサは、部品ID読取装置から部品識別番号が入力されると(S350:YES)、当該部品識別番号が、S320で記憶した加工スケジュールに対応するものであるか否かを判定する(S360)。対応するものであるときは(S360:YES)、S320で記憶した加工スケジュールとしての制御指令を読み出し(S370)、当該制御指令に基づいて制御対象の加工機及びラインコンベア等を駆動制御する(S380)。この制御指令には、木材を通過させるだけの動作も含まれている。そして、シーケンサは、当該制御命令に対応する駆動制御が完了したら(S390:YES)、加工制御用サーバ200に対して完了状況を送信する(S400)。
【0068】
一方、今回入力された部品識別番号が加工スケジュールに対応していないときは(S360:NO)、シーケンサは、当該シーケンサの制御対象となっている加工機の機械識別番号と部品識別番号からなる識別情報を加工制御用サーバ200に対して送信する(S410)。これは、飛び入りで割り込んだ木材Wに対してどの様な加工を実行したらよいかの命令を要求する処理である。
【0069】
その後、シーケンサは、加工制御用サーバ200から、今回の飛び入りで割り込んだ木材Wに対する加工のための制御指令が送信されて来るのを待ち(S420)、送信されてきたら(S420:YES)、当該制御指令に基づいて制御対象の加工機及びラインコンベア等を駆動制御する(S430)。そして、シーケンサは、当該制御命令に対応する駆動制御が完了したら(S440:YES)、加工制御用サーバ200に対して完了状況を送信する(S450)。
【0070】
加工制御用サーバ200は、図8に示す様に、部品管理テーブル300から当日の予約情報を抽出し(S510)、各加工機毎の予約指令を生成し(S520)、該当するシーケンサに対して送信すると共に(S530)、木材Wに対して付するためのICタグTを出力する(S540)。ここでの処理は、例えば、ブランクのICタグTに対して部品識別番号をデータとして書き込む処理としてもよいし、ICタグTとして機能し得る磁気パターンを台紙に印刷する処理としておいてもよい。このICタグTは、投入コンベア51上に投入順に載せられた木材に対して、手作業又は貼付装置によって順番に貼り付けられる。
【0071】
その後、シーケンサから識別情報を受信すると(S550:YES)、実施例1の図4におけるS120以降の処理と同様に、今回のシーケンサからの命令要求に対応する制御指令を生成して送信する(S560)。なお、S510〜S540の処理は、通常、本日の作業開始時に1回実行し、本日の作業が完了するまでは(S570:YES)、S550以降の処理を繰り返し実行する。
【0072】
命令を要求したシーケンサは、このS560の処理によって加工制御用サーバ200から送信されてきた飛び入り加工に対する制御指令を受信すると(S410:YES)、S430以降の処理を実行し、完了状況を加工制御用サーバ200に対して送信する(S450)。このときも、シーケンサは、完了状況として、完了した加工の内容を特定できる様に、部品識別番号及び機械識別番号と、加工を個別に識別可能な加工識別番号のうち、今回の加工が完了した加工識別番号とを送信する。
【0073】
加工制御用サーバ200は、完了状況を受信した場合には、実施例1の図5と同様の処理を実行して部品管理テーブル300の加工状況欄に完了を記入すると共に、加工状況の更新が完了したことを該当するシーケンサへと返信する。
【0074】
加工制御用サーバ200は、図9に示す様に、例えば、割れなどが生じた部品(木材W)があった様な場合に、作業者が再加工を指令すると(S710)、部品識別番号の入力を要求する(S720)。この部品識別番号の入力は、作業者の手入力による操作の他に、加工制御用サーバ200に接続された部品ID読取装置にて、し損じの生じた部品に貼付されているICタグTを読み込むことによって行う方法とすることができる。
【0075】
加工制御用サーバ200は、部品識別番号が入力されたら(S730:YES)、当該部品識別番号に基づいて部品管理テーブル300を検索し、対応する部品を特定すると共に(S740)、当該部品の加工状況記入欄をリセットし(S750)、ICタグTを出力する(S760)。これにより、し損じの生じた部品のためのICタグTが再発行されると共に、加工状況が未加工に書き換えられる。作業者は、このICタグTを新たな木材Wに貼付して、木材加工ライン100へと投入することで、上述の様に、再加工すべき部品を飛び入らせたり、割り込ませたりすることができる。なお、上述のICタグ再発行の処理は、新規部品のICタグを発行するために実行してもよい。その場合、例えば、S740の処理で部品を特定できなかった場合は、新規部品であるとみなして、部品管理テーブル300に部品情報を登録する。これにより、急遽必要になった部品を飛び入らせたり、割り込ませたりすることができる。
【0076】
以上説明した様に、実施例2の木材プレカット加工システム2によれば、基本的には、予約情報に基づいて加工を実行する。これにより、稼働率や納期等を考慮して決定した予約情報に沿ってプレカット工場を稼働させることができる。一方、一部の部品に割れ等が生じた場合の様に、改めて同じ部品を製造する必要が生じた様な場合に、機械に対して手入力でデータを入力しなくても、ICタグTの再発行を行うことで、上述の様に命令を再度受信させて加工を実行することができる。そして、部品管理テーブル300には、こうした再加工の状況も反映した加工状況が記憶される。
【0077】
また、本実施例は、こうしたICタグTの再発行という形ではなく、予定よりも納期を早めなければならない住宅が生じた場合に、投入順序を変更したとときには、実施例1と同様の動作が連続的に実行されることになるだけである。従って、最適な稼働率等を考慮して予め組んでおいたスケジュールに変更が生じた場合にも、これに対して的確に対応することができるという作用・効果も、実施例1と同じく発揮される。また、新規部品を割り込みで加工することもできるので、急ぎで部品を準備することができ、顧客の要望に柔軟に対応することができる。
【実施例3】
【0078】
実施例3の木材プレカット加工システムは、図10に示す様に、実施例1で説明した木材加工ライン100を複数備えたものである。加工制御用サーバ200は、木材加工ライン100Aと木材加工ライン100Bの両方を統括的に制御する。各木材加工ライン100A,100Bの加工機10A等は、機械の種類は同じであっても、機械識別番号がそれぞれ固有となる様に割り当てられている。従って、図11に示す様に、部品管理テーブル300は実施例1と同様であるものの、機械管理テーブル500は、管理対象となる機械の数が増加したものとなる。
【0079】
実施例3の木材プレカット加工システム3では、各シーケンサ11A,11B,21A,21B,31A,31Bにおける制御処理は、実施例1において説明したものと同様に構成される。また、加工制御用サーバ200における制御処理も、実施例1において説明したものと同様に構成される。
【0080】
上述の様に、同種の機械であっても機械識別番号を固有のものとしてある結果、実施例1と同様の作用・効果が発揮される。この実施例では、同種の加工を行うことのできる複数の木材加工ライン100A,100Bのいずれに対して木材を投入しても、正しい加工をスムーズに実行することができ、そのための機械へのマニュアル入力等を行う必要がない。
【0081】
例えば、当初、木材加工ライン100Aのみで加工を行う予定だったが、スケジュール調整などにより、急遽、木材加工ライン100Bが手すきになったとする。この様な場合、作業者は、機械へのマニュアル入力等をし直さなくても、現場で、木材Wを木材加工ライン100Bにも投入するだけで、両方の木材加工ライン100A,100Bで並行して加工を行える。よって、工場の全体的な稼働率を向上させることができ、加工期間も短縮でき、生産効率も向上させることができる。
【0082】
また、木材加工ライン100Aで加工する予定だった木材Wを、全て、木材加工ライン100Bで加工させるなど、木材加工ライン100A,100Bの変更も、木材の投入先のライン100A,100Bを入れ替えるだけで済む。よって、加工予定だったライン100A,100Bにおいて、突然、機械メンテナンスが必要になった場合などについても、柔軟に適切に対応することができる。
【実施例4】
【0083】
実施例4の木材プレカット加工システム4は、図12に示す様に、実施例3で説明した様に同種の加工を行うための複数の木材加工ライン100A,100Bを備え、予約情報を利用した加工も可能なものである。加工制御用サーバ200は、実施例3と同じく、木材加工ライン100Aと木材加工ライン100Bの両方を統括的に制御する。また、各木材加工ライン100A,100Bの加工機10A等は、機械の種類は同じであっても、機械識別番号がそれぞれ固有となる様に割り当てられていて、実施例3の機械管理テーブル500と同じものが記憶されている。
【0084】
実施例4の木材プレカット加工システム4では、各シーケンサ11A,11B,21A,21B,31A,31Bにおける制御処理は、実施例2において説明したものと同様に構成される。また、加工制御用サーバ200における制御処理も、実施例2において説明したものと同様に構成される。
【0085】
この実施例によれば、例えば、木材加工ライン100Aに対して加工の予約をした後、当該加工ラインの機械の刃物交換等を行う必要が生じた様な場合に、もう一方の木材加工ライン100B側に加工ラインを変更して木材を投入するだけで、当初は予約していなかった方の木材加工ライン100Bで的確な加工を実行することができる。
【0086】
このような場合、従来の木材プレカットシステムであれば、作業者が加工済み部品と、未加工の部品とを選別し、未加工の部品を別の木材加工ライン100A(又は100B)で加工できるように、未加工の部品について、機械等へマニュアル入力が必要であった。この作業は、非常に煩わしく、入力ミス等も発生し易い。そのため、機械の刃物交換等が終了するまで、加工を中断させておく場合もあった。しかし、本実施例であれば、上述した様に、別の木材加工ライン100A(又は100B)へ木材Wを投入するだけで済む。よって、作業者の負担を軽減できる。また、工場の全体的な稼働率も向上させることができ、加工期間も短縮でき、生産効率も向上させることができる。
【実施例5】
【0087】
実施例5の木材プレカット加工システム5は、図13(A)に示す様に、一つの木材加工ライン600に対して、中間加工機及び木口加工機について、同種の加工を実行できるものをA1,B1、A2,B2、A3,B3と、複数台備えたものが、加工制御用サーバ200の制御対象となっている。また、切断機と中間加工機A1,A2の間に印字・タグ取付機を設置し、予約情報に従って切断を実行すると共に、ICタグTを木材Wに取り付ける構成となっている。
【0088】
この木材加工ライン600は、A側とB側のパラレルに設置された中間加工機の稼働状況、加工残状況などに基づいて、手動又は自動によってA側とB側のいずれかへと木材を流すことにより、稼働状況の平準化や加工時間の短縮を図る。このとき、各加工機の上流位置に設置された部品ID読取装置が部品識別番号を読み取ると、実施例1等で説明した様に、各シーケンサは、読み取った部品識別番号と機械識別番号とを加工制御用サーバ200に対して送信することで、当該シーケンサの制御対象となっている加工機用の制御指令を要求し、この要求に対して、加工動作若しくは通過のための搬送動作のみからなる制御指令を受信する。
【0089】
この結果、図13(A)に矢印で示した様に、一部の加工機をパスする様なルートになっていても、加工機をパスすることなくA側あるいはB側へ流されたとしても、さらには、A側とB側を渡る様に木材Wが流されたとしても、どの場合も、各シーケンサは、加工制御用サーバ200との間で命令の要求と命令の受信とを実行することにより、誤った加工を行うことなく、必要な加工を木材Wに対して実施することができる。そして、各シーケンサにおける加工の完了状況を加工制御用サーバ200に対して送信して部品管理テーブル300の加工状況記入欄への書き込みを実行させることにより、未処理の加工を的確に把握することもできる。
【実施例6】
【0090】
実施例6の木材プレカット加工システム6は、図13(B)に示す様に、同種の加工ラインではなく、「横架材の加工ライン」、「柱材の加工ライン」、横架材と柱材の両方を加工可能な「横架材・柱材加工ライン」及び「羽柄材の加工ライン」を、加工制御用サーバ200と接続した構成となっている。
【0091】
この実施例では、各ラインに設置されている加工機毎に固有の機械識別番号を割り当てられており、加工制御用サーバ200の機械管理テーブルは、これら全ての加工ラインに設置されている加工機を網羅するものとなっている。
【0092】
この実施例6においても、実施例1等で説明したのと同様のシーケンサ側制御処理による制御処理が各加工機毎に設置されたシーケンサで実行され、加工制御用サーバ200においても、実施例1等で説明したのと同様の制御指令生成・送信処理による制御処理及び加工状況更新処理による制御処理が実行される。
【0093】
この結果、例えば、本来は羽柄材の加工ラインで穴開けをすべき部品を、他の加工ラインに流して、そこに設置されている穴開け加工を実行可能な加工機で穴開け加工するといったことも可能になる。
【0094】
つまり、加工形状が同様であれば、系統(横架材、柱材、羽柄、パネル、合板など)の異なるライン(以下、「異系統ライン」と称する。)へも、木材Wを投入できる。通常は、木材Wの投入ラインを入れ替えるにしても、同じ系統のライン(以下、「同系統ライン」と称する。)同士でしか行われない。それは、機械へのマニュアル入力等の手間が掛かり過ぎて現実的ではないためである。しかしながら、本実施例の木材プレカットシステム6であれば、木材Wの投入ラインを容易に異系統ラインへ変更できる。
【0095】
よって、例えば、複数の同系統ラインが設けられており、その全ラインが稼働中であるものの、異系統ラインは空いている状況であったら、複数の同系統ラインでも加工しつつ、一部の木材Wを異系統ラインへも流し、異系統ラインで加工できる加工形状だけでも、先に加工を済ませておく。そして、異系統ラインに流した木材Wのうち、加工が残っているものを、同系統ラインに流し、全ての加工を済ませる。この様にすれば、工場の全体的な稼働率を向上させることができ、加工期間も短縮でき、生産効率も向上させることができる。
【0096】
以上、本発明の実施形態として種々の実施例を説明した。これらの実施例から分かる様に、本発明は、工場の備えている設備の状況、レイアウトの状況が様々な状態であっても、現場の判断で木材を流すことができ、その場合に、機械に対してマニュアル入力でデータを入力しなくても、適切な加工を実行することができる。この結果、プレカット工場に設置された加工機を効率よく使用し、予定変更等があっても的確に対応することができ、効率的なプレカット工場の稼働状況を実現することが可能となる。また、一部の加工機を更新したり新規追加した様な場合、当該加工機に関する機械管理テーブルの内容を書き換えたり追加したりしてやればよい。これも、部品識別番号と機械識別番号とによって加工命令作成手順と加工パラメータとを特定して制御指令を生成した上で送信するという制御処理を行う構成であるからこそ、大幅なプログラムの書き換え等を行うことなく対応することができるという特有の効果が発揮される。
【0097】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例に限られることなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の態様にて実施することができる。
【0098】
例えば、ICタグを貼り付けるのではなく、バーコードを木材に印字して部品識別番号を付す様にしてもよいし、部品識別番号だけでなく、作業者が読んで理解できる様な可読情報を文字で含ませたり、二次元バーコードをハンディスキャナで読み取って可読化できる情報とした部品識別情報を用いても構わない。
【0099】
また、複数の加工ラインを有する設備において、加工ラインごとにサーバを設けておき、サーバ同士が情報を共有できるようにしても良い。部品識別情報を印字する場合、不可視インクで印字しても良い。印字が勝手に消える様にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
木造住宅用の木材プレカット加工に有益であり、プレカット工場の効率的な稼働状況を実現しつつ、確実な加工を実行するのに適したものである。
【符号の説明】
【0101】
1,2,3,4,5,6・・・木材プレカット加工システム、10,10A,10B・・・切断機、11,21,31・・・プレカット加工用シーケンサ、12,22,32・・・部品ID読取装置、20,20A,20B・・・中間加工機、30,30A,30B・・・木口加工機、41,42,43,44・・・ラインコンベア、51・・・投入コンベア、52・・・排出コンベア、100,100A,100B,600・・・木材加工ライン、200・・・加工制御用サーバ、300・・・部品管理テーブル、400,500・・・機械管理テーブル。
【要約】
【課題】予定変更等があっても的確に対応することができ、効率的なプレカット工場の稼働状況を実現する。
【解決手段】固有の機械識別番号が割り当てられた加工機10等、ラインコンベア41等、各加工機毎に設置されたシーケンサを備えた木材加工ライン100と、個々のシーケンサに対して制御指令を送信する加工制御用サーバ200とを備える。各加工機の上流位置には部品ID読取装置が設置され、木材Wに付されたICタグTから部品識別番号を読み取り、シーケンサを介して加工制御用サーバに送信する。サーバは、部品識別番号と加工データとを対応付けた部品管理テーブル300と、各加工機による加工内容を特定する情報を機械識別番号と対応付けた機械管理テーブル400を備え、部品識別番号と機械識別番号を受信してからテーブルを参照して制御指令を生成してシーケンサに送信する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図14
図13