【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 刊行物名 第34回大学院研究発表会抄録集 発行所 国立大学法人名古屋大学大学院教育委員会 抄録集発行日 平成20年12月8日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1>癌の悪性度の検知方法
本発明方法は、癌組織の細胞質内に存在するヘパラン硫酸糖鎖分子中のGlcA−GlcNH
3+構造の存在の程度を検出するステップを含む、癌の悪性度の検知方法である。
【0012】
本発明方法における「癌組織」は、癌の部位や種類に応じて、癌患者又は癌の疑いがある者から通常の方法で摘出された組織を用いることができる。すなわち、本明細書にいう「癌組織」は、癌であることが確定した組織のみならず、癌であることが疑われる組織をも包含する概念である。
検知の対象となる癌組織は、特に限定はされないが、乳癌組織であることが好ましく、なかでも乳管癌組織であることが好ましい。
【0013】
本発明方法では、悪性度の検知対象とする癌組織の、細胞質内におけるヘパラン硫酸糖鎖分子中のGlcA−GlcNH
3+構造を検出することが必要となる。細胞質内におけるかかる構造を検出する方法は特に限定されないが、細胞質内の状態を最も忠実に反映させるべく、免疫組織染色法により行われることが好ましい。免疫組織染色法は、組織切片の作成、抗原抗体反応(一次)、洗浄、抗原抗体反応(二次)、洗浄、発色等の一連の各ステップを含め、それ自体公知の、通常の方法で行うことができる。
【0014】
また、上記構造の検出は、かかる構造が特異的に検出できる方法である限りにおいて特に限定されないが、当該GlcA−GlcNH
3+構造に結合する抗体を用いて行われることが好ましい。
【0015】
抗体の種類は特に制限されず、モノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体がより好ましい。モノクローナル抗体はそのフラグメントであってもよい。モノクローナル抗体のフラグメントとしては、例えば、F(ab’)2化抗体、Fab化抗体、短鎖抗体(scFv)、ダイアボディ(Diabodies)及びミニボディ(Minibodies)などが挙げられる。
モノクローナル抗体の免疫グロブリンクラスは特に制限されないが、IgMであることが好ましく、IgM, κ-chainであることがより好ましい。
【0016】
上記モノクローナル抗体は、例えば、タンパク質とGlcA−GlcNH
3+とを化学的に結合させてなる物質を抗原として免疫した哺乳動物(好ましくはマウス)の抗体産生細胞(好ましくはリンパ球)と哺乳動物(好ましくはマウス)のミエローマ細胞との細胞融合によりハイブリドーマを作製し、得られたハイブリドーマからヘパラン硫酸糖鎖分子中のGlcA−GlcNH
3+構造に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択し、該ハイブリドーマの培養上清からモノクローナル抗体を回収することにより得ることができる。
【0017】
以下に、モノクローナル抗体を得るための方法を詳細に示す。
モノクローナル抗体を得るための第一段階としては、抗体を産生する単クローンハイブリドーマを確立することが挙げられる。このハイブリドーマを確立する方法の具体的詳細は実施例で示すが、簡単には次の3工程からなる。
1.免疫
2.細胞融合
3. ハイブリドーマの選択と単クローン化
【0018】
1.免疫
免疫の工程で用いる抗原は、タンパク質とGlcA−GlcNH
3+そのもの、あるいはその繰り返し構造(GlcA−GlcNH
3+)n (ここでいうnは1以上の自然数)よりなる糖鎖、あるいはGlcA−GlcNH
3+そのもの、あるいはその繰り返し構造(GlcA−GlcNH
3+)n (ここでいうnは1以上の自然数)よりなる糖鎖を含む糖鎖とを化学的に結合させてなる物質が好ましい。上記タンパク質は、ウシ血清アルブミン(以下、「BSA」という。)又はヘモシアニン(以下、「KLH」という。)であることが好ましい。
例えば、GlcA−GlcNH
3+またはその繰り返し構造とN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(以下、「SPDP」という)を反応させて、2−ピリジルジチオプロピニルGlcA−GlcNH
3+を得る。これをジチオスレイトール等の還元剤で還元し、チオール化GlcA−GlcNH
3+を得る。同様に、タンパク質とSPDPを反応させ、2−ピリジルジチオプロピニル化タンパク質を得る。次に、チオール化GlcA−GlcNH
3+溶液と2−ピリジルジチオプロピニル化タンパク質溶液を混合することによって、GlcA−GlcNH
3+とタンパク質間にSS結合を生成させ、GlcA−GlcNH
3+−SS−タンパク質を得る(以下、「GlcA−GlcNH
3+抗原」という)。
免疫される動物は豚、牛、マウス、ラット等の哺乳動物であることが好ましく、抗体産生細胞の相手となるミエローマ細胞がマウス由来のものであることが好ましいため、特にマウスが好ましい。例えば上記方法により調製したGlcA−GlcNH
3+抗原を哺乳動物に皮下注射することにより免疫を行うことができる。注射方法はこれに限らず、腹腔内注射、静脈注射でも良い。通常、免疫は数回に分けて行うが、免疫はアジュバントと共に投与することが好ましい。アジュバンとしては、ミョウバン、結核死菌、核酸、完全フロインドアジュバント、不完全フロイントアジュバント等、アジュバント効果が期待できるもので有ればよいが、特に、TiterMAX Gold(シグマ社製)が良い。
【0019】
2.細胞融合
最終免疫後にリンパ節或は脾臓を摘出し、得られるリンパ球を細胞融合に供する。細胞融合に使用される腫瘍細胞株としてはミエローマ細胞が好ましく、通常、マウスのBALB/c
由来のP3 -NS-1/1-Ag4-1、P3 -X63-Ag8-U1(P3 U1)、P3 -X63-Ag8-653、SP2/0-Ag14 等を用いることができる。
【0020】
3.ハイブリドーマの選択と単クローン化
ハイブリドーマの選択と単クローン化は下記に例示される方法により行うことができる。すなわち、ハイブリドーマの増殖の盛んな細胞培養上清を種々の分析法(例えばRIA法 、プラーク法、凝集反応法、ELISA法、フローサイトメトリー法、組織染色法、ウェスタンブロッティング法 等)でヘパラン硫酸糖鎖分子中のGlcA−GlcNH
3+に反応する目的の抗体を産生するハイブリドーマを選択し、次に、得られたハイブリドーマについてクローニングを行う。クローニングの方法としてはFACS(Fluorescent Activated Cell Sorter )もしくは、一般によく用いられる限界希釈法等が挙げられる。例えば、限界希釈法では96ウェルプレートの1ウェルあたり細胞が1個以下になるように行うことが好ましい。どの方法を用いてもクローニングは2回繰返し行うことが好ましく、単一クローンとすることが好ましい。
【0021】
モノクローナル抗体を産生する方法としては、得られた単一クローンを、大量にin vitro で培養する方法、in vivo で培養(腹水化)する方法が挙げられ、目的に応じて選択することができる。単一のハイブリドーマが作るモノクローナル抗体は、細胞培養液又は、ハイブリドーマを移植したマウスの腹水から分離精製することができる。これら粗抗体液からの抗体精製は、塩析、イオン交換、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動等、生化学的一般的手法を適宜組み合わせることによって達成することができる。
【0022】
本発明の方法に用いることのできるモノクローナル抗体として、上記構造に特異的に結合するものである限りにおいて特に限定されないが、具体的には、JM403抗体が例示される。JM403抗体(特表2005−524074号公報:Diabetologia, 37(3), p313-320 (1994))は、ヘパラン硫酸糖鎖分子中のGlcA−GlcNH
3+構造を特異的に認識するモノクローナル抗体である。その免疫グロブリンクラスはマウスIgMであり、抗原をヘパリチナーゼ処理することによって結合性が消失し、HA(ヒアルロン酸)、CS(コンドロイチン硫酸)、DS(デルマタン硫酸)、KS(ケラタン硫酸)とは実質的に結合しない。
このJM403抗体は生化学バイオビジネス株式会社から市販されており、その市販品をそのまま本発明方法に用いることもできる。
JM403抗体を用いる場合には、本発明方法は、「癌組織の細胞質内に存在する、JM403抗体に結合する抗原の存在の程度を検出するステップを含む、癌の悪性度の検知方法」と換言して理解することもできる。
【0023】
免疫組織染色によって癌組織の細胞質内に存在するヘパラン硫酸糖鎖分子中のGlcA−GlcNH
3+構造を検出する場合には、当該構造の「存在の程度」は、例えば免疫組織染色後の切片標本を光学顕微鏡で観察し、細胞質が免疫染色された細胞をカウントして、その全細胞数に占める割合を算出することによって示すことができる。また、前記構造の「存在の程度」は、細胞質が免疫染色された細胞の割合に応じて、例えば以下のように分類して示してもよい。
++:癌細胞の50%以上が染色されている
+: 癌細胞の10%以上50%未満が染色されている
−: 染色されている癌細胞が10%未満である
【0024】
癌の悪性度は、このようにして検出され示された「癌組織の細胞質内に存在するヘパラン硫酸糖鎖分子中のGlcA−GlcNH
3+構造の存在の程度」と関連付けることによって検知することができる。すなわち、当該構造の存在の程度が高ければ高いほど、それだけ悪性度も高い、と評価することで検知することができる。すなわち、例えば、前記の「−」、「+」、「++」にしたがって分類した場合には、「++」が最も悪性度が高い、と評価・検知することができる。
【0025】
ここにいう悪性度は、核異型度、核分裂指数、核グレード、腋窩リンパ節転移、及び/又は抗Ki−67抗体を用いたラベリング・インデックス(Labeling Index)として把握してもよい。すなわち本発明方法における「癌の悪性度の検知方法」は、これら各指標の検知方法、例えば「核グレードの検知方法」等としての概念をも包含するものである。
【0026】
<2>本発明診断剤
本発明診断剤は、GlcA−GlcNH
3+構造に結合する抗体を有効成分とする、癌の悪性度の診断剤である。
本発明診断剤の有効成分である、「GlcA−GlcNH
3+構造に結合する抗体」についての説明は、前記<1>と同様である。すなわち、本発明検知方法において用いることができる抗体を、そのまま本発明診断剤の有効成分として用いることができる。当該抗体に標識物質が直接結合していてもよいことはいうまでもない。
本発明診断剤は、「GlcA−GlcNH
3+構造に結合する抗体」を有効成分として含有している限りにおいて、さらに他の成分を含有してもよい。このような他の成分の一例としては、例えば試薬的に許容される安定化剤、保存剤、賦形剤等を例示することができる。
本発明診断剤は、「GlcA−GlcNH
3+構造に結合する抗体」をそのまま、又は必要に応じてさらに前記のような他の成分を添加して、通常の試薬・製剤等の調製方法にしたがって製造することができる。
また本発明診断剤は、前記<1>における本発明検知方法に記載の方法にしたがって使用することができる。
【0027】
また、本発明診断剤は、GlcA−GlcNH
3+構造に結合する抗体を検出する試薬をさらに含んでもよい。このような試薬としては、例えば、二次抗体(GlcA−GlcNH
3+構造に結合する抗体(一次抗体)に結合し、かつ標識物質が結合した抗体(当該一次抗体に係る免疫グロブリンに結合する抗体))を例示することができる。また、GlcA−GlcNH
3+構造に結合する抗体が標識物質と直接結合しているような場合において、例えば当該標識物質が酵素である場合には、当該酵素の基質(発色基質など)であってもよい。
さらに、他の構成成分として、例えば洗浄液、酵素反応停止液等を含んでもよい。また、測定バッチ同士の実施レベルを一定水準に保つための陽性コントロール(QCコントロール)を含有させることもできる。
これらの構成成分は、それぞれ別体の容器に収容し保存しておくことができる。
【0028】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、これにより本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
1.癌組織
悪性度の検知の対象として、60名の乳癌患者から外科手術により切除した乳管癌組織を用いた。この60名の年齢は27〜87歳(平均54.6歳)であり、その他の各種指標の内訳は以下のとおりであった。
(1)浸潤/非浸潤の別 非浸潤癌:5例、浸潤癌:55例
(2)T分類 T1:40例、T2:13例、T3:2例
(3)腋窩リンパ節転移 陽性17例、陰性38例
(4)ホルモンレセプター ER陽性:37例、PgR陽性:23例
(5)HER2過剰発現 あり:10例、なし:50例
(6)浸潤性癌の核グレード グレード1:22、同2:22例、同3:11例
核グレードは、日本乳癌学会編「乳癌取扱い規約 第16版」(金原出版株式会社)に記載された基準にしたがって判定した。
【0030】
2.切片標本の作製と免疫組織染色
上記の乳管癌組織について、フォルマリン・パラフィン切片を作成した。免疫組織染色は、抗ヘパラン硫酸モノクローナル抗体であるJM403、10E4及びNAH46(いずれも生化学バイオビジネス株式会社販売)、並びに抗Ki−67抗体(MIB-1, Abcam社, Cambridge, UK))を用い、ABC法(Avidin-Biotin Complex法)によって行った。具体的には、以下のとおり行った。
【0031】
パラフィン包埋した組織を4マイクロメートルの厚さに薄切した。この切片を脱パラフィン処理して内因性ペルオキシダーゼを0.1%の窒化ナトリウムと過酸化水素で不活化し、次いで内因性アビジン、ビオチン結合部位をAvidin/Biotin Blocking Kit SP-2001(Vector Laboratories Inc., Burlingame, CA)を用いてブロックした。次いで、この切片を0.05%のカゼインと10%のヤギ血清を含有するリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中で30分間インキュベートして非特異的吸着をブロックした。
次いで、この切片を0.1%のカゼインを含有するPBSで0.5から5マイクログラム/mlに希釈した一次抗体(JM403、10E4、NAH46又は抗Ki−67抗体)中でインキュベートした。インキュベートは、摂氏4度で一晩行った。その後、切片を0.05%のカゼインを含有するPBSで洗浄した。
次いでこの切片を、ビオチン標識化されたマウス免疫グロブリンに対するヤギのF(ab')
(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA) 中で30分間、室温でインキュベートした。その後、この切片を0.05%のカゼインを含有するPBSで洗浄した。
次いで、この切片をhorseradish peroxidase-streptavidin (Vectastain Elite ABC kit PK6100, Vector Laboratories Inc.)と反応させた。その後、この切片を0.05%のカゼインを含有するPBSで洗浄し、3,3'-diaminobenzidine tetrahydrochloride(Sigma)で染色して、さらにメチールグリーン溶液でカウンター染色を行った。
【0032】
なお、JM403、10E4及びNAH46は、それぞれ、ヘパラン硫酸糖鎖分子中の次の構造を認識するものである。
JM403:GlcA−GlcNH
3+構造
10E4:GlcA−GlcNS構造(GlcNSは、N−硫酸グルコサミン残基を示す)
NAH46:GlcA−GlcNAc構造(GlcNAcは、N−アセチルグルコサミン残基を示す)
【0033】
3.観察・評価
(1)細胞質における免疫染色の程度
免疫組織染色後の切片標本を光学顕微鏡で観察し、細胞質が免疫染色された細胞の数をカウントし、以下のとおり免疫染色の程度を評価した。
++:乳癌細胞の50%以上が染色されている
+:乳癌細胞の10%以上50%未満が染色されている
−:染色されている乳癌細胞が10%未満である
【0034】
コントロールとして、正常乳腺部分の切片標本をJM403、10E4又はNAH46で免疫組織染色した結果を
図1に示す。その結果、60例のすべてにおいて、いずれの抗体を用いた場合にも、細胞質の染色は見られず、正常乳腺の基底膜及び血管壁に染色が見られた。
【0035】
乳管癌組織の切片標本をJM403、10E4又はNAH46で免疫組織染色した結果を
図2に示す。その結果、JM403又はNAH46を用いた場合に、細胞質の染色がみられた。
【0036】
また、上記の各免疫染色の程度に対応する像の一例として、乳管癌組織の切片標本をJM403で免疫組織染色した場合の結果を
図3に示す。
図3の「−」の像における矢印は、血管壁における染色を示すものである。
【0037】
これらの結果から、乳管癌組織の切片標本をJM403又はNAH46で染色した場合には、細胞質が染色されることが示された。このことから、これら各々の抗体に特異的に結合する構造を有するヘパラン硫酸糖鎖が、乳管癌組織の細胞質内に存在していることが示された。
【0038】
(2)乳管癌組織の細胞質内における染色の程度
乳管癌組織の切片標本をJM403、10E4又はNAH46で免疫組織染色した場合における、細胞質内の染色程度の分布(%)を表1に示す。表1から、JM403について陽性を示したもの(前記の「+」と「++」を合わせたもの)は、症例の約6割近くに及んだ。
なお、10E4で免疫組織染色したものについては、ほとんどが細胞膜のみ染色された。そこで、10E4で染色したものについては、細胞膜のみが染色されたものも含めてカウントした。
【0039】
【表1】
【0040】
(3)細胞質の免疫染色の程度と、癌の悪性度に関する各指標との関係
(3−1)浸潤性乳管癌について、上記の免疫染色の程度と、核異型度、核分裂指数、核グレード及び腋窩リンパ節転移の状況との関係をグラフ化した。
JM403で染色した場合の結果を
図4に、10E4で染色した場合の結果を
図5に、NAH46で染色した場合の結果を
図6にそれぞれ示す。
【0041】
その結果、JM403で染色した場合には、細胞質の免疫染色の程度が強いほど核異型度・核分裂指数・核グレードが高く、腋窩リンパ節転移も陽性症例が増加し、これらの諸項目とJM403の発現には強い正の相関が各々認められた。また10E4で染色した場合には、免疫染色の程度と、核異型度、核分裂指数、核グレード及び腋窩リンパ節転移のいずれの間にも、有意な相関関係は認められなかった。
またNAH46で染色した場合には、免疫染色の程度と腋窩リンパ節転移との間において有意な正の相関は認められなかった。
【0042】
(3−2)非浸潤性乳管癌の評価については、上記の免疫染色の程度と核グレードは浸潤癌の評価に用いられるものであり、非浸潤癌の評価には使用されないので(日本乳癌学会編「乳癌取扱い規約 第16版」(金原出版株式会社))、Ki-67 Labeling Indexとの関係を悪性度の評価指標に使用した。非浸潤癌3例と浸潤性乳管癌標本内の非浸潤性乳管癌のうち評価可能であった21例を合わせて解析した。結果を
図7に示す。
その結果、JM403で染色した場合のみ、細胞質の染色の程度と公知の悪性度の指標であるKi−67ラベリング・インデックスとの間に有意に強い正の相関が認められた。
なお以上のデータ解析において、独立性の検定にはカイ二乗検定を、平均値の差の検定にはウィルコクソン(Wilcoxon)の順位和検定を用いた。
【0043】
以上の結果から、癌組織の細胞質内に存在するヘパラン硫酸糖鎖分子中のGlcA−GlcNH
3+構造の存在の程度を検出することにより、浸潤性・非浸潤性の癌を問わず、従来行われてきた病理組織学的判定に極めて近いかたちで、癌の悪性度の検知が可能であることが示された。